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「1作目が思わぬヒットとなって、続編が作られることになった」という経緯はもうよくあることだが、映画オタクとしては、その続編では監督やキャストが変わってしまい、なかなか香ばしい地雷映画となってしまった悲しい事例をこれまで何度も観てきた。
 そんなわたしなので、日本では2年前に公開され、わたしも大興奮したあの映画の続編が作られるというニュースを知った時、わたしはひそかに、うーん、大丈夫かなあ? と要らぬ心配をしたのである。そしてその、続編が公開となったので、地雷か否かを確認するため、さっそく観てきた。
 その「あの映画」とは、メキシカン・カルテルとの麻薬戦争を描いた『SICARIO』という作品である(邦題:「ボーダーライン」)。この映画に関しては、2年前に書いた記事を読んでもらうとして、とにかくわたしが興奮したのは、監督のDenis Villeneuve氏の素晴らしい手腕で、最初から最後まで貫かれる高い緊張感と不安を煽るような音楽の使い方、また撮影の巧みさなど、映画としての完成度は著しく高い傑作であった。Denis監督は、こののちに『ARRIVAL』や『BLADERUNNER 2049』などのウルトラ傑作を生みだしていくことになるのだが、やはり『SICARIO』のクオリティの高さが後の活躍を決定づけたと言ってもいいのではなかろうか。
 しかし、である。わたしが今日観てきた続編『SICARIO : DAY OF THE SOLDATO 』という作品ではDenis監督は去ってしまい(恐らくもう売れっ子なのでスケジュール的に無理だったのだろう)、イタリア人のStefano Sollima氏へ引き継がれたのである。この時点でわたしはかなり心配だったのだが、まあ、脚本は前作同様Taylor Sheridan氏だし、メインキャストの二人も変更なしだし、大丈夫……かな? という気持ちで劇場へ赴いたのだが、結論から言うと、全く大丈夫、今回もとても興奮する作品に仕上がっていたのである。いやあ、やっぱり世界は我々一般人の知らない恐ろしいことが起きてるんですなあ……とにかく緊張感が高い、一級品の映画だったと思います。
 というわけで、まずは予告を貼って、中身を見ていこう。いつも通りネタバレに触れる可能性大なので、まだ観てない方は予告を観たら今すぐ退場して、劇場へ観に行ってきてください。これは大変オススメであります。

 いつもわたしは予告の出来が悪いと容赦なく批判するのだが、上記予告の出来は大変よろしいと思う。日本版予告でありがちな、全く不要なナレーションや下品な文字ワイプもないし、実際、物語は上記予告から想像できる通りで、もはや細かい説明は不要だろう。
 舞台はメキシコとの国境地帯。そしてメインキャストの二人、CIAマンのマットと、SICARIO=暗殺者のアレハンドロも、前作通り、ハリウッド強面オヤジ選手権で優勝を争いそうなJosh Brolin氏とBenicio del Toro氏のままである。ただ、今回は、実のところ麻薬戦争を描く作品ではなく、ちょっとだけ変化球であった。
 冒頭で描かれるのは、US国内へ密入国しようとするメキシコ人の一団を一網打尽にするUS国境警備隊の模様と、(US側の)国境の町に住む少年の様子だ。いかにもフツーな少年でいて、何も考えてなさそうで、なんとなく底なしの虚無を抱えていそうな極めて冷ややかな目が印象的で、きっと物語のカギになるんじゃないかと予感される少年だ。なんでも、今現在、メキシカンカルテルがUS国内に運ぶ最も高価な商品は、もはやコカインではなくて、「人間」なのだそうだ。というわけで少年は、いかにもチンピラな「親戚」の男の手下として、密入国の手引きをする下っ端になり果てる。
 そして一方では、US国内ではスーパーで自爆テロが勃発し、実行犯はイエメン人で、どうやらメキシコから密入国したようだ、という情報がもたらされる。この結果、手引きをしたメキシカンカルテルをUS政府はテロ組織と認定、カルテル同士を戦争させるためにマットが招集され、BLACK OPs(=極秘作戦)が発動されるーーーという展開である。
 というわけで、マットは「戦争」を演出するために、さっそく旧知のアレハンドロを招集する。作戦としては、最大カルテルのボスの娘を誘拐し(=アレハンドロは元コロンビアの判事で、カルテルに妻子を惨殺された過去があるのでカルテル壊滅のためなら何でもやる男)、それをライバル組織の犯行と偽装することで戦争を起こさせるというDirtyなもので、極めてプロの仕事としてとんとん拍子に進むため、こりゃきっと誘拐された娘が物語のキーになるのかな、そして冒頭の少年と出会って……みたいな展開だろうかと思いながらスクリーンを観ていたのだが、このわたしの予感はまるで間違っていて、思わぬ展開が待っていた。
 実は、メキシコ政府は、まったくUS政府からこの作戦を聞かされておらず(?)、作戦を察知したメキシコ政府の意をくんだメキシコ警察の裏切り(?)で、あっさり作戦は頓挫してしまうのだ。ここは、わたしは最初どういうことかよくわからなかったのだが、想像するに、メキシコ政府はカルテルとケンカはしたくないし(ひょっとしたら癒着しているのかも)、カルテル同士の戦争なんて起きてほしくない、ということだと思う。そのため、結果としてマットとアレハンドロは窮地に陥る。マットはすぐさまUS国内に脱出し、アレハンドロは、激しい銃撃戦のさなかに逃げ出した娘を追って一人追跡にーーという展開で、ますます娘の物語上の重要性は増していくのだが、わたしはてっきり、アレハンドロは前作のラストで描かれた通り、全くNO MERCY、超無慈悲な暗殺者なので、娘もラストは殺るんだろう、と思ったのだが……そんなわたしの愚かな想像の斜め上を行くエンディングは、実に見事だったと思うし、極めて優れた脚本であったと思う。わたしとしては、傑作認定したいと思うハイクオリティな映画であったと結論付けたい。
 というわけで、各キャラとキャストについてメモしておこう。
 ◆マット:前作にも登場したCIAのBLACK OPs指揮官。前作では、FBIのゆとり捜査官に、あぁ? お前何言ってんだ? これは戦争だよ、とあっさりつき放つような、恐ろしく迫力のあるおっさんだったが、今回は、意外とハートのある男になってたのが驚いた。前作のエンディングはかなり苦いものだったけれど、一応、本作はすべてスッキリするエンディングだったと思う。演じたのは、前述の通りTHANOS様でお馴染みJosh Brolin氏。ホントにわたしとほぼ同級生なのか疑いたくなる迫力オヤジですな。見事な演じぶりでした。
 ◆アレハンドロ:前述の通り、メキシカンカルテル壊滅なら何でもやる決意を持ったSICARIO=暗殺者。徹底したプロ。ラスト近くでとんでもない目に遭い、な、なんだって――!? とわたしはもう絶句。そしてキッチリと、エンディングではBenicio del Toro氏の迫力オヤジの面目躍如で、「お前の将来の話をしようか」なんて密室で迫られたら、普通の人はその時点で失神・失禁してしまうと思います。冒頭の少年が、タトゥーまみれのチンピラになり果ててイキがってるのをガツンとやる強面オヤジぶりがもう最高でしたね。
 ◆イザベラ:カルテルのボスの娘。推定15~17歳ぐらい? わたしは冒頭から、この娘が気に入らなくて、いずれ恐怖で泣き叫ぶがいい……とか思ってました。なにしろ、血まみれの金でぬくぬくと育ち、血まみれの父親の影響力で偉そうにしてるだけのクソガキだったので、さっさとひどい目にあえ、とか思っていたものの……アレハンドロとのちょっとした心の交流は、まあ、一時の心やすめになったような気もします。演じたのは、Isabela Monerちゃん17歳。結構可愛いです。あ、へえ~? Broad Wayの『EBITA』で芸能界デビューした娘なんですな。この娘さんは将来もっと有名になる予感はあるっすね。大変な熱演だったと思います。↓こちらはIsabelaちゃんのインスタより、W強面オヤジに囲まれるの図、であります。Wオヤジの笑顔が似合わねえw!

 ◆ミゲル:US側の国境のすぐそばに住む少年。わたしとしてはこういう底知れない悪意の塊のようなガキにはさっさと死んでほしかったのだが……物語のカギを握るキャラと言ってもいいような気もする。ここでこうつながるのか、というのはとてもよくできた脚本だったと思う。とにかくその眼に宿る、底なしの虚無のような、どーでもいいよ……みたいな態度が非常にムカつくけれど、演技だったのならすごい演技力だと思う。何気に空気を読んで危険を察知するその能力は、次世代SICARIOの才能アリでしょうな。彼のとある行動で、「ヒャッハー! 戦士(=Soldado)の誕生だぜ!」とチンピラどもが盛り上がるシーンがあって、その意味では本作のタイトル「DAY OF THE SOLDADO」にも通じていて、実は物語の主人公だったともいえるかもしれない。演じたのはElijah Rodriguez君は年齢がいくつか分からないけど……イケメンに育ってほしいすな。大変良い芝居ぶりだったと思います。

 とまあ、主なキャラとキャストは以上です。問題は、ズバリ言うと今回のマットとアレハンドロに関して、前作のような徹底した冷徹さが、若干ハリウッド映画的な正義の味方に変化してしまっている点で、ここは賛否両論のような気もする。その、善と悪の境界線があいまいである点が邦題の「ボーダーライン」であったはずだと思うのだが、今回は分かりやすく「イイ人」になってしまっているように思えた。まあ、わたしとしては、今回のような若干の甘口も、悪くないと思った。血まみれの金でぬくぬくと育った娘に、まだ改悛の余地はあるのかどうか。前作のアレハンドロだったら、躊躇なくぶっ殺していたはずだけど、一応の救済を示したのは、まあ、人間としては、許せるというか、否定はしたくない、ですな。あと、そういえば前作にも登場した、マットの部下の眼鏡の人は今作でも出演してましたね。それと80年代のYAスターの一人、Matthew Modine氏がSDUS(=合衆国国防長官)の役で出演されてました。今59歳か……『FULL METAL JACKET』の主人公ジョーカーも年取ったなあ……。
 しかしまあ、なんつうか観終わって、本当にもう、どうにもできないというか、人間の悪意の連鎖にはとても心痛みますな。これじゃあ、元不動産王のスケベオヤジこと現職US大統領が、国境に壁を作るとか言い出す気持ちも理解できるよね。もちろんそれは、幼稚で浅はかな考えかもしれないし、メキシコ側の主張である、US側で需要があるのが悪いという意見も、分からんでもない。
 でも、間違いなく言えそうなことは、この麻薬戦争に象徴されるUS-MX間の問題は、恐らくもう解決不能なのではなかろうか。壁を作っても乗り越えてくるだろうし、US国内の需要もなくならないだろうし、そして、US側で密入国を手引きする連中も絶滅することはないだろうと思う。
 現代社会に生きる我々には、もはや禁忌、タブーのようなものはなくなってしまっているわけで、みんなで決めたはずのルール=法律も、全くもって万能ではない。どんな刑罰があっても、犯罪がなくならないのは、みつお的に言えば、にんげんだもの、なんだろうけれど、それでいいかと言えば、全く良くない。なんか、真面目に生きることを信条とするわたしとしては、悪には明確に罰が下されることを祈りたいすなあ……真面目に生きることでバカを見る社会が続くようなら、まあ人類は絶滅してもいいんじゃないすかね……。なんて暗~~い思いが晴れなかったす。なので、わたしは悪党がぶっ殺される映画は大好きであります。
 ところで、本作は監督は変わってしまったものの、前作で特徴的だった音楽は健在で、実に緊張感を高めるのに貢献した音楽・音響だったと思う。ただ、わたしは知らなくて、エンドクレジットで初めて知ったのだが、エンドクレジットには、「To Jóhann Jóhannsson」という追悼メッセージが映される。これは、まさしく前作の音楽を担当したJóhann Jóhannsson氏のことで、どうやら本作はJóhannsson氏のオリジナルスコアを使いながら、別の方が音楽を担当されたようだ。Jóhannsson氏は前作の後、Denis監督の『ARRIVAL』でもとても素晴らしい仕事をされた音楽家なのだが、今年亡くなっちゃっていたんだね……。わたしはすごい好きだったのだが、大変残念です。

 というわけで、結論。
 監督が代わってしまってとんでもない地雷映画と化すことはよくあることだが、今日わたしが観に行った映画『SICARIO : DAY OF THE SOLDADO』は、前作にして超傑作の『SICARIO』とは確かに別物、ではあったものの、そのテイストは十分受け継がれていて、大変面白かった、というのが結論であります。多分、とても気を使って、前作を意識しまくっているように思えますね。ともに共通する、あの音楽ですよ、とりわけ特徴的なのは、とにかく最初から最後まで緊張感が維持される演出?は見事だと思うし、脚本的にも若干変化球で、わたしは大変楽しめました。しかしホント、人類は救い難いというか、もうどうにもならんとしか思えないす。マジで、壁作っちゃうのも、対処療法としてはアリなんじゃねえかとか、そんなことすら思っちゃいますな。あーあ、人類の精神は、あんまり進化してないみたいで、しょんぼりすね……どうにもなんねえなあ……もう。以上。

↓ 前作は超傑作です。超おススメです。つうか、観てないと今回の『DAY OF THE SOLDADO』は楽しめないと思います。
ボーダーライン(字幕版)
エミリー・ブラント
2016-08-09

 いやーーー。これは難しい。そして素晴らしい! 今年2017年の暫定1位だな。
 なんの話かって!? 映画『ARRIVAL』(邦題:メッセージ)を今日会社帰りに観てきたのだが、その感想である。これは相当歯ごたえあるぞ……そして、映画としての出来はものすごくイイ! 撮影、そして音楽(というより音響設計か)。実にクオリティが高い。いやはや、素晴らしかった。
 そして、わたしは実に愚かなことに、本作が有名なSF小説が原作だということを全然知らなかった。知ってれば読んでから観に行ったのに……ちくしょー! 原作小説に関するプロモーションってあったのかなあ? 有名な作品らしいが、わたし、恥ずかしながら読んだことのない小説で、その作品の名は『Story of Your Life』(邦題:あなたの人生の物語)。わたしの大好きな早川書房から発売されているので、わたしは帰りの電車内で即、電子書籍版を買いました。くっそーーー読んでから観るべきだったかもなあ……。
あなたの人生の物語
テッド チャン
早川書房
2014-09-30

 なぜそう思うかというと、冒頭に記したように、本作『ARRIVAL』は、正直かなり理解が難しい、非常に歯ごたえのある作品なのだ。もちろん、きちんとストーリーは追えるし、あ、そういうことなんだ!? という最終的なオチというか結末も、ちゃんと映画を観ていれば理解できるとは思う。しかし、ええと、ホントにオレの理解は合ってるのかな? と自信が持てないんすよね……。
 一応、パンフレットを読む限り(パンフには結構詳しい解説が何本も収録されているのでおススメ!)、わたしの理解は正解だったようだが、やっぱり、これはさっそく買った原作を読んでみた方がいいような気がしますね。多分この映画、ゆとりKIDSには全く理解できないと思う。これはホント、早川文庫が似合う、正統派なハードSFですよ。以上。
 で、終わらせるにはまだまだ語りたいことがいっぱいあるので、まずはいつも通り予告を貼り付けて、以下で少し語らせていただくッッッ!! もちろんネタバレもあると思うので、読む場合は自己責任でお願いします。

 今回は、この映画について、いくつかのポイントに絞って、その素晴らしさを記録に残しておこう。いやあ、すげえクオリティですよ。こいつは本物だ。
 【1.物語】
 まあ、物語としては、上記予告の通りである。ある日突然、地球に飛来した謎の宇宙船。しかも12機が地球の各地に「同時に」降り立った(※ちなみに日本(の北海道)にもやって来る)。しかし、地上から数メートルのところで静止し、とりわけ何もアクションを起こさない。世界各国は調査にあたるが、US国内にやってきた宇宙船の調査には、まずはコミュニケーションをとるため、言語学者のルイーズが選ばれる。そして、重力制御された宇宙船内で異星人とのコミュニケーションが始まるのだが―――というお話である。
 わたしも、上記予告はさんざん何度も見ていたので、おそらく物語のカギは、「一体全体、なにをしにやってきたのか?」という点にあるのだろうと予想していた。
 まあ、その予想は誰でもできるし、実際上記予告にもそう書いてあるのだが、最終的に明かされる「目的」について、正確な理解はちょっと難しいと思う。なにしろ、彼らは我々地球人と全く異なる思考をする生命体だ。それを、地球人の常識で計ろうとしても、そりゃあ難しいに決まっている。一番のカギになるのは「時間」の概念なのだが、我々地球人が、時間は一直線に流れ、不可逆なものと考えている一方で、異星人たちはそうではない。それがだんだんわかる仕掛けになっているのである。
 そして、それが決定的に判明するのはかなり後半だ。わたしは中盤のルイーズのある一言(「科学のことはお父さんに聞きなさい」のシーン。これは白黒反転させておきます)で、えっ!? ちょっと待った、てことは……まさか!? と仕組みが理解できたのだが、ここは相当注意深く観ていないと難しいと思う。実は冒頭から、ルイーズは愛する子を病気で亡くし、深い失意にある、というような、その愛する娘とのシーンが何度も何度もフラッシュバックで描かれるのだが、その意味が分かるラストは、やられた――!! やっぱりそういうことなのか!!! と誰しもが驚くものだと思う。
 ただ、最終的にわかっても、この作品は、そういう「理解するのが非常に難しい」という意味において、素晴らしい脚本だったと称賛すべきか、トリッキーで不親切な脚本で、もうチョイ説明が欲しかったと思うべきか、わたしとしては正直微妙だと感じた。観終わった後でも、じゃあなんで……? という疑問がわたしには結構多く残っている。ある意味、ぶった切りのエンディングと言ってもいいぐらいかもしれない。少なくとも万人向け、ではないと思う。
 しかし、だからと言ってつまらなかったとはこれっぽっちも思わない。それは、この難解な物語を支える、映画としての技術的なポイントが、おっそろしく高品位で、すさまじくクオリティが高いからである。
 【2.演出、撮影・映像そのもの】
 ちょっと前に、この作品のメイキング的な映像をチラッと観たけれど、画面は全く自然で本物そのものにしか見えないのだが、宇宙船をはじめ、実はすさまじくCGバリバリである。そして、宇宙船の全貌が画面に現れるまでの、チラ見せ具合も大変上品かつ上質だ。この映画はなるべくデカいスクリーンで観た方がいいと思う。その圧倒的な存在感は本当にそこに存在するようにしか見えないし、完璧に計算されてCG処理された風景の色味、それから雲、時にすごいスピードで画面を横切る戦闘機やヘリなど、まさしく本物にしか見えないCGは超見事である。宇宙船の巨大感も申し分なしで、これは日本の映画界では絶対に撮れない画だ。なんというか、マグリットの絵画を実写化したような、まさしく超現実(シュール・レアリスム)で、わたしはもう大興奮である。
 また、異星人の描写も、当然フルCGだと思うが、もう本当に生きているとしか思えない質感だし(デザイン的にも超秀逸!)、スモーク越しに現れる映像・演出も実に品がある。重要なキーとなる、異星人の描く文字も、そのデザインや描かれた方も、書道をたしなむ我々日本人には完璧に美しく、お見事だ。
 とにかく、本物そのもの、圧倒的な存在感。そして、全編に漂う、尋常ではない「緊張感」。わたしはこの映画を撮ったDenis Villeneuve監督の作品を観るのは4本目だが、去年、Denis監督の前作『SICARIO』を観た時もこのBlogで書いたけれど、その映像には、まるでJOJOで言うところの「ゴゴゴゴゴ」「ドドドドド」という書き文字が見えるような、あの緊張感が常に感じられるのが、Denis Villeneuve監督の作品に共通する特徴であろう。これは、観てもらわないと伝わらないだろうなあ。多分、観てもらえればわたしが言いたいことは通じるような気がする。この、Denis監督の作品に共通する「画面から伝わる緊張感」に非常に大きな役割を果たしているとわたしが考えているのは、音楽、音響設計、というか音そのものである。
 【3.音楽、音響設計、音そのもの】
 本作は、冒頭、非常に印象的な、弦楽器の奏でる音楽から始まる。わたしは音楽にはさっぱり詳しくないのでわからないのだが、おそらくはヴィオラかチェロで奏でられる、重く低い曲。それはエンドクレジットによるとMax Richterというドイツ(生まれのイギリス)人の「On The Nature of Daylight」という曲だそうだ。お、公式動画があるみたいだから貼っとこう。

 この非常に印象に残る曲から始まる本作は、これもDenis監督作品に共通してみられる特徴なのだが、とにかく音の使い方が非常に素晴らしい。まったくの無音部分とのコントラスト、メリハリもきっちり効いていて、映像に緊張感を与えることに成功しているとわたしは思う。冒頭、主人公ルイーズが大学から外に出て、空には戦闘機が行きかい、いったい何事が起きているんだ? という最初のドキドキ感は本当に素晴らしいし、その緊張感は最後まで貫かれていると思う。ズズズズズ……ビリビリビリ……といった、ある意味では不快な重低音が重要なシーンでは常に背後に流れていて、観ている我々の不安を掻き立て、ドキドキさせるわけで、その使い方は、下手を打つと不愉快なものになるけれど、Denis監督の使い方は決してそんなことにならない。本作は、今年2月のアカデミー賞で作品賞をはじめ8部門でノミネートされたが、受賞できたのは音響編集賞のみ、であった。実にお見事であるし、この特徴は少なくともわたしが観た4本すべてに共通する、Denis監督の目印といってもいいだろう。おそらくは、Denis監督の次回作、『BLADERUNNER2049』においても、まず間違いなく発揮されるであろうと思うので、ぜひその点はチェックしたいと思う。

 というわけで、物語・映像・音楽(音そのもの)の3点について、まあテキトーなことを書いたが、役者陣の熱演ももちろん素晴らしい。今回は3人だけ挙げておこう。
 まずは主人公ルイーズを演じた、Amy Adamsさん42歳。おぅ……マジか、もう40超えてるのか……わたしがこの人が演じた中で一番好きな映画は、もちろん『Enchanted』(邦題:魔法にかけられて)だろう。あのジゼル姫は最高でしたなあ。2007年公開だからもう10年前か。最近では、DCヒーロー作品でスーパーマンの恋人、ロイス役でおなじみだけど、すっかり年を感じさせるというか……最近はちょっとアレすね……。でも『her』でのAmyさんはホントに可愛かったので、髪形やメイクで随分変わるんだと思う。本作では、若干疲れたような40代女子であったけれど、その美しく澄んだBlue Eyesが非常に印象的であった。そして娘とのシーンや、すべてを理解した時の表情、大変素晴らしかったと思う。
 次は、わたしの大好きなMCUにおけるHawk EyeでおなじみのJeremy Renner氏46歳。彼は、出世作『The Hurt Locker』でのジェームズ軍曹役や、今やレギュラーとなった『Mission Impossible』シリーズ、あるいはMCUでのHawk Eyeでもおなじみのように、不敵で抜け目ない男という印象が強いけれど、今回は知的な科学者である。登場時はちょっと生意気ないつものRenner氏だが、だんだんとルイーズに惹かれ、協力していく今までとはちょっと違う役柄であったようにお見受けした。本作では実はほぼ活躍しない、けれど、物語において重要な役割で、それが判明する流れはお見事である。まあ、この人の演技ぶりはほぼ関係なく、脚本のおかげだけど。
 最後。調査班の現場責任者?の軍人を演じたのが、ベテランForest Whitker氏55歳。わたしがこの人を知ったのは、かの名作『PLATOON』だが、ホントこの人、若いころは鶴瓶師匠そっくりだったんですが、最近ではすっかり渋い、脇を固める大ベテランですな。声に特徴のある人で、妙にカン高いんすよね。『ROGUE ONE』でのソウ・ゲレラ役も渋かったすねえ。まあ、役的にかなり微妙だったけど。彼もまた、本作ではほぼ何も活躍はしません、が、やっぱり非常に印象に残る芝居ぶりだったと思う。もうチョイ、活躍してほしかったなあ。
 
 最後に、ここまで絶賛しておいてアレですが、ここはちょっとなあ……という点も3つ挙げておこう。まず、一つ目がズバリ、中国に対する扱いだ。本作では、地球に飛来した12機の宇宙船の一つが、上海に現れ、あの国だけ宇宙船に対して好戦的というか、軍事行動を起こそうとする流れになる。ま、それに乗っかるロシアもおそろしあだが、その中国でキーとなるのが、軍人のなんとか将軍なのだが……あの国のシステムにおいて、あんなに軍人が突出して行動を開始しようとするなんてことがありえるのかな? いや、あり得るのか、あの国だからこそ。なんか、なんとか将軍が大物なんだか実感がわきにくかったす。
 二つ目のわたし的いちゃもんは、邦題である。なんなの「メッセージ」って。なんで「アライヴァル」じゃ駄目だったんだ? 作中では、arrivalという単語は何回も出てくる。ほぼ毎回「出現」という字幕がついてたかな。いっぽうのmessageという単語は、わたしのヒアリング能力では1度も出てこなかったように思う(字幕では1回だけあった)。メッセージ……どうかなあ……。物語的にも違う、ような気がするのだが……。arrivalというタイトルの意味は、わたしなりに思うところがあるのだが、これはクリティカルなネタバレすぎるので書くのはやめときます。とにかく、メッセージは違う、と思ったことだけ記しておこう。
 最後、三つ目のわたし的いちゃもんは……これは、完全に映画オタクとしてのどうでもいい文句なのだが……わたしはマジで、結構腹が立ったので書いておくけれど……あのですね、わたしはもう35年以上映画館に通う、40代後半のおっさん映画オタなんですよ。せっせと劇場に通い、パンフも必ず買う、業界的には模範的というか、大切にしてもらってしかるべき、だとすら思うオタク野郎なわけです。なので、言わせてもらいますが……あのさあ! パンフレット! 変なサイズにするのやめてよ!!! 保管するのに困るんだよ、妙に小さい判型は!!! そりゃあね、デザインに凝りたくなる気持ちはよーくわかりますよ? でもね、配給会社の皆さん、そんなデザイナーのこだわりなんて、まったく迷惑以外の何物でもないんすよ、購買者にとっては。今、入場者のどれぐらいがパンフ買ってくれるか、ちゃんとデータ取ってるでしょ? どんどん減っているって、知ってるでしょ? そして買ってるのが、もはや希少種のオタク野郎だけだって、分かってるでしょ? せっかく内容的には読みがいのあるいいパンフなのに、このふざけた判型だけはホント許せんわ……!! はーー。興奮してサーセン。邦題といい、パンフの判型といい、さらに言えばUS公開から半年経っての公開といい……SONYピクチャーズの人々は大いに反省していただきたいものです。

 というわけで、結論。
 わたしが今、一番注目している映画監督、Denis Villeneuve監督による『ARRIVAL』が、US公開から半年経ってやっと公開されたので、初日の金曜夜、早速観てきた。そのクオリティはすさまじく、極めて上物であったのは間違いない。そしてその物語にも大興奮だったわけだが、一方で、この映画が万人向けかというと、その難解な物語はかなりハードルは高いように思えた。しかしそれでも、わたしとしては、現時点における今年ナンバーワンに認定したいと思う。こいつはすごい。この作品を観ると、もう、Denis監督の次回作『BLADERUNNER2049』に対する期待がいやがうえにも高まりますな!! SONYよ、BLADERUNNERのパンフの判型がまーた変なサイズだったら許さないぞ。1982年のオリジナルのパンフ、貸してあげてもいいので、ちゃんと研究してくれ。頼むよマジで。以上。

↓ わたしは中学生の時、たしか臨海学校から帰ってきた翌日に、今は亡き東銀座に存在した「松竹セントラル」という映画館にチャリで観に行きました。いろんなVerがあるけれど、当然、劇場公開版が正典です。ファイナルカットじぇねえっつーの。

 善良な市民生活をここ日本で送る我々には、ほぼ関係ないのだが、残念ながらこの世は悪意に満ちており、ほんのちょっと裏へ行けば恐ろしいことが山積みである。と、いう事は、口には出さなくても、おそらく誰もが知っていることだろうと思う。そしてインターネッツなる銀河には、決して検索してはならない言葉があることも、大抵のは人は承知しているもではなかろうか。わたしは実に愚かな馬鹿者なので、かつて、好奇心からとあるワードを検索して、そこに現れた大量の凄惨な写真を観て絶句し、深く後悔したことがあるが、まあ、マジでやめておいた方がいいことが、この世には意外と多くあると思う。
 昨日わたしが観た映画は、その検索してはならない言葉として有名な、メキシコのとある街で行われている麻薬戦争を題材にしたもので、非常に完成度が高く、実に面白かった。面白い、と言ったら変というか不謹慎か。なんて言えばいいのだろう、映画として極めてハイクオリティで、作品として素晴らしいものだった、とでも言えばいいのだろうか。同じように、メキシコ麻薬戦争を題材とした映画と言えば、Steven Soderbergh監督の『Traffic』(アカデミー監督賞や助演男優賞、脚本賞など受賞した傑作)や、Sir Ridley Scott監督の『The Counselor』(えーと……邦題を思い出せない……「悪の法則」か。邦題もひどいが、映画としても、非常に恐ろしいものの、あまり面白くない。とにかく怖い)などが思い出されるが、それらに比しても全く引けを取らない、素晴らしいクオリティであった。これはわたしとしては今年の暫定3位としたいと思う。ちなみに現時点でのオレベスト2016の暫定1位は『The Martian』、2位は『CAROL』です。なお、調べてみたところ、やはりRotten TomatoesMetacriticといった格付けサイトでも非常に高評価になっている。ただし、あまり売れなかったようだが……。
 というわけで、昨日は14日(トーフォーの日)ということで、TOHOシネマズではお安く映画が観られるため、今日はこれを観ようと前から決めていた作品、『SICARIO』(邦題:ボーダーライン)を観てきた。しかしこれまた非常に公開スクリーン数が少なく、わたしの嫌いな六本木まで観に行くしかなかったのだが、まあ、会社から電車で15分ほどなので、十分許容範囲内であろう。

 さてと。理由は書かないが、今回はUS版の予告を貼っておくことにした。日本語字幕付きの公式予告もあるのだが、そっちは却下。ま、物語は上記予告の通り、ではある。 48秒頃に画面に出るように、In Mexico, SICARIO means hitman =メキシコでは、SICARIOとは暗殺者を意味する。
 これは、本編の冒頭にも出てくる言葉である。本作のタイトル『SICARIO』とはそんな意味だ。なので、わたしはいつも通り、「ボーダーライン……センスねえ邦題だなあ……」と思って劇場に向かったのだが、観終わって、意味を考えると、確かに「ボーダーライン」という邦題は、その舞台となるアメリカとメキシコの国境であり、また同時に、心の境界線、そのラインを跨ぐことができるかどうか、という主人公の葛藤をも表したタイトルだったわけか、と理解はできた。なるほど、である。しかし、うーん……でもやっぱり、考え過ぎじゃないかなあ……「シカリオ」じゃダメなんすかね。どうだろう? ま、いいや。
 物語は、予告にある通り、FBIの誘拐即応班(←字幕ではそうなっていたが、有名なFBI-HRT、 Hostage Rescue Teamのことなので、「人質救出部隊」というべきか)の指揮官の女性がUS国内で囚われているとされる人質救出のため、とある家を強襲して、その壁に数十体の遺体が隠されていることを発見するところから始まる。しかし、いくらそういった摘発をしても、根源たる大元の悪党は遥か彼方にいて、とても逮捕できないし、こういった犯罪はなくなることがない。そんなジレンマの中、現場での的確な指揮を買われて、麻薬戦争を戦うチームに主人公の女性はスカウトされる。とはいえ、元々FBIの人間なので、参加するには本人の意思表示が必要で、まあ当然主人公も志願して、参加することになるのだが、そこで彼女の見たものは、想像を超える凄惨な現実だった――的なお話である。
 なので、残念ながらわたしは、いちいち主人公がチームの行動の違法性を指摘したりするのが、ちょっとイラついた。勿論、主人公は非常に真面目でFBI=連邦捜査局=司法省の管轄下にあるので、その反応は当然だし、キャラクターの性格も理解できるのだが、嫌ならもう帰りなさいよ、とずっと思いながら観ていた。何しろ、この麻薬戦争は、完全なるBLACK-OPPsである。もちろん主人公も、作戦の指揮官がCIAだと分かっている。作戦を共にする屈強な男たちは、今回はNavy-SEALsではなく、US-Army所属のDELTAチームだったが、もう、完全に戦争なのだ。だから、作戦指揮官のCIAマンも、CIAが顧問として雇っている恐ろしく存在感のある男も、主人公に何度か言う。「嫌なら帰れ」と。でも帰らない。そして、やめろと言われていることを平気でやって、後で痛い目に遭う。アンタ何してんすか、というツッコミを何度か観ながら言いたくなった。極めてゆとり臭ただようお嬢さんである。
 まあ、わたしは常日頃、ジャックライアンシリーズなどの小説を読んでいるため、こういったBLACK OPPsに慣れているというかマヒしているのでそう思うわけだが、この様相は、おそらく普通の人には、どちらが悪党なんだかわからないものに映るのかもしれない。その、善と悪との境界線が非常にあいまいであり、主人公は、自身の心にある境界線と、現実の境界線の食い違いに葛藤するというのが、本作の一番の見どころと言っていいのだろうと思う。そう考えると、邦題の「ボーダーライン」は、正直わたし的にはイマイチだとは思うけれど、内容的には、なかなかいいタイトルだったのかもしれない。文句ばっかり言ってサーセン。
 で。役者3人と監督のことについてまとめておこう。
 まず、この映画で一番最初に紹介すべきは、 アレハンドロというコロンビア人(?)を演じたBenicio del Toro氏だろう。アレハンドロは、かつて検察官として法の執行者であったが、麻薬戦争によって妻は斬首され、娘は酸の浴槽に浸けられて虐殺されたという凄惨な過去を持つ男であり、その後、どうやらフリーのSICARIO=暗殺者として、政府やいろいろな組織に雇われているという設定の男である。彼の目的は、妻と娘を殺した男を殺害することであり、完全にOUT LAW、である。彼をBAD GUYと観るかどうかは、かなり人によって受け取り方が違うだろう。わたしは、ラストでの彼の非情すぎる行為に、実はまったく心が痛まなかった。悪は滅びるべし、であって、些細な禍根も立つべきだという彼の思考は十分わたしには理解できた。そんな冷酷なSICARIOを演じられるのは、ハリウッド映画でスペイン語を話す殺し屋的キャラと言えば、やはりdel Toro氏が最高峰であろう。前述の『Traffic』でアカデミー助演男優賞を受賞した、演技には定評のある男である。アレッ!? 嘘、マジで!? 今、Wikiで初めて知ったが、このおっさん、まだ40代なんだ!? もう50代後半ぐらいかと勝手に思ってた。なんだ、わたしよりちょっと上なだけじゃん。マジか……全然知らなかった。ま、そんなことはどうでもいいけれど、今回も恐ろしくクールで、素晴らしい芝居だったと思います。この人、なんでMarvel作品を引き受けたんだろう……『Gurdians of the Galaxy』での「コレクター」役は、いつもと違って若干コミカルでしたね。本人は超真面目に演じてましたが。
 次もおっさんです。今回、主人公をスカウトするCIAのベテラン現場管理官を演じているのがJosh Brolin氏だ。あれーーっ!! マジか、これも驚いた。この人もまだ40代、つーかdel Toro氏と同じ歳なんだ。知らなかったなー。この人完全に50代でしょ、と信じて疑わなかったのに。ハリウッド強面オヤジ選手権が開かれたら、確実に上位ランカーに挙げられるのではないかと思うが、今回は表面的にはいつもにやにやしているものの、主人公のゆとりめいた行動には、ああ? なに甘いこと言ってんのお前? みたいな感じで相手にせず、軽く扱うさまは非常にキャラクターとしてブレがなく、冷徹で凄惨な現実をよく表していたと思う。そして、CIAとFBIの関係は、アメリカ人的には常識だろうから、ほとんど説明はなかったけれど、要するにCIAはあくまで対外諜報組織なので、国内での活動は(あくまで基本的には)できず、国内の活動はFBIが担当なわけです。だからこそ、FBIたる主人公をチームに入れたわけで、主人公が参加していることで、かろうじてこれはFBI主導の作戦で合法なんですよ、と言い張るためのお飾りであったわけだ。この辺の事情は、知らない人には良く分からなかったかもしれないっすな。
 で、主人公たるFBI-HRT隊長の女性を演じたのがEmily Blunt嬢33歳である。彼女は非常に特徴ある顔立ちだけれど、やはり美人ですな。今回は男たちの中の紅一点なのだが、そういう色気は一切なく、殺伐とした空気の中で正義を信じようとする法執行官を健気に演じていました。まあ、キャラクターとしては、常識ある第三者目線での語り部、という意味があるのだろう。その役割はきっちり果たしてくれていると思う。
 そして最後に監督なのだが、Denis Vileneuveというカナダ人の男である。ケベック出身なので、デニス、ではなく、フランス語読みで、ドゥニ・ヴィルヌーヴと発音する必要がある。この監督の作品と言えば、わたしは『Prisoners』と『Enemy』(邦題:複製された男)の2本しか観ていないのだが、この2本も、そして今回の『SICARIO』でも、共通した特徴としてあげられるのは、作品に常に漂う緊張感だろうと思う。『Prisoners』でのHugh Jackmanも、『Enemy』でのJake Gyllenhaalも、大変に素晴らしい演技で、とにかく緊張感あふれる秀作だとわたしは思っているが、本作でもその緊張感は120分維持され、常に張り詰めた緊張感あふれる空気感は、どうやらこの監督の持ち味のようだ。そして、その緊張感は、JOJOの奇妙な冒険を知っている人なら分かってもらえると思うが、要するに、ずっと、「ドドドドド」「ゴゴゴゴゴ」という、JOJOでお馴染みのアレが、画面から伝わるのである。そうだ、書いてみて良く分かった。この緊張感は、荒木飛呂彦作品に似てるんだ!! そういうことか。そして、もう一つ、今日はっきり分かったのは、それがまさしく、音楽で表現されているんだ、ということである。流れる音楽は、極めて低い重低音で、非常に観客の不安を掻き立て、思わずゴクリとつばを飲み込むような、緊張感を表現することに成功していると思う。なるほど、これか、とわたしは唸った。この映画は、作曲賞と音響効果賞と撮影賞でアカデミー賞にノミネートされたが(惜しくも受賞ならず)、この音楽の使い方は確かに非常に素晴らしいものであった。また、撮影も非常に巧みで、暮れなずむ、とても美しい夕焼けを背景に、逆光で真っ黒な影で表現された軍人たちが、ザッザッザと進軍していく様も、緊張感をあおることに貢献していると言えるだろう。ラストの暗視ゴーグル視点の映像は、恐らくPC上でネガポジ反転して加工されたものだと思うが、従来の暗視ゴーグル映像とはちょっと違うもので、わたしは思わず、こりゃあ凄い画だと、正直感動すら覚えた。もう脱帽である。そして音響効果も、とりわけ銃声の処理がかなり迫力があって良い。とにかく、この音楽と撮影と音声効果は、極めてクオリティが高いと断言できる。そういう点でも、素晴らしい作品ですよこれは。音楽に関して、『Prisoners』と『Enemy』がどうだったのか、もう全然忘れているので、もう一度音楽に気をつけて観てみるとしよう。
 なお、この監督は、なんとかの名作『BLADE RUNNER』の30数年ぶりの続編の監督にも指名されており、今後の活躍はもう約束されたも同然であろう。Denis Vileneuveという名前は、ぜひ覚えておいていただきたい。この男、かなりやる男ですよ。

 というわけで、もういい加減長いので強引に結論。
 『SICARIO』は、極めて緊張感の高い、非常にハイクオリティの映画であった。物語的な流れもまったく破綻なく、とても冷徹で非情な結末を迎えるが、役者陣もいいし、音楽も撮影も極めて上物である。これは劇場で観た方がいいだろう。大きなスクリーンと迫力ある音響設備で観るべき映画だと思います。この映画、わたしは大変気に入りました。今年暫定3位です。以上。

↓ あのハリウッドきってのいい人キャラでおなじみのHugh Jackman氏が超おっかないです。すっごく重~~い映画で、観終わってぐったりしますが、観てない人は超必見です。
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2014-10-02

↓そしてこちらは、ノーベル文学賞受賞作家Jose Saramago氏の小説「The Double」を映画化したもので、これまた超重~~い映画です。
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2014-12-24




 

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