アメリカでは大ヒットなのに、日本では全く売れない、という現象は、実のところ結構良くあることではあるが、この『HUNGER GAMES』も、残念ながらそんな映画のひとつである。シリーズ第1弾は、アメリカ国内で4億ドル(=約480億円)を稼いだ大ヒットだったが、残念ながら日本では、数値が明確でないけどたぶん5億円も行っていない。つまり百分の一以下という事になる。先週公開されたシリーズ完結編となる本作も、アメリカでは若干パワーダウンしたとはいえ、公開3日間で1.6億ドル(=約200億円)と日本では考えられない数字をたたき出している。ちょうどその公開時にニューヨークにいたわたしも、映画館の前の結構な行列を見て驚いたのだが、日本では、週末2日間で0.5億円ほどと、非常に淋しい数字であった。
 というわけで、わたしもこのシリーズは原作小説を最後まで読んだし、Jennifer Lawrenceちゃんを応援する身としては当然、映画もこれまでの全作を観ており、今回の完結編も、早速観てきた。

  はっきり言って、原作小説は全く面白くない。小説としてのクオリティはたいしたことはない。ただ、ひょっとしたら翻訳がイマイチなのかもしれないという疑惑は残るが、いずれにせよ、とにかく描写が分かりにくく、一体どのようなことが起きているのか、読んでいて想像しにくい。つまり、下手っぴなのだ。実のところ、この作品は児童文学出身の著者が手掛けた、紛れもないライトノベルで、完全に読者は中高生をターゲットとしているため、やけに表現やセリフ回しが子供っぽい。まあ、だからと言って下手で許されるかというとそれは全然別の話だけれど。
 ところで、何をもって「ライトノベル」と定義するか、おそらくはいろいろな意見があるだろうと思うが、わたしの定義はごく簡単である。ズバリ、主人公が10代の若者であれば、それはもうライトノベルと言っていいと思っている。この作品のストーリーをごく簡単にまとめると、こういうお話である。
 一種のディストピア、終末世界のお話である。「パネム」と呼ばれる国家がある。年代や地理的な説明は特になかったと思うが、その国家は「キャピトル」という首都を中心に、12の地区に分割されていて、各地区は「工業」地区、「林業」地区、「鉱山」地区といったように明確に役割が地理的に分割されていると。で、年に1回、「ハンガーゲーム」と呼ばれる行事があって、各地区から17歳以下の少年少女を男女1名ずつ選出して、最後の一人になるまで殺し合うデスゲームを行わせると。それは、「キャピトル」に住む贅沢暮らしの選民たちにとっては娯楽であり、各地区に住む国民にとっては政府に対する不満のはけ口というかストレス解消的な意味を持つものであり、勝者は一生ぜいたくな暮らしができるし、最終勝者を輩出した地区も1年間いろんな特典アリ、ということになっている。だけど、当然各地区は、自分の娘や息子が命がけのゲームに出ることを強要される可能性もあるわけだし、そもそもずっとキャピタルの選民に搾取され続けて貧しい暮らしをしているので、潜在的にパネムの独裁者(?)たるスノー大統領憎しの土壌があるわけだ。
 で、主人公カットニスは第12地区の娘さんで、妹が第74回ハンガーゲーム出場者に選ばれてしまったため(選出は名前の書いた紙をキャピトルの人間が引くくじで決まる)、それならわたしが出るわ! と志願すると。志願者がいればそっち優先で、抽選はチャラになるので。で、カットニスは普段から森で狩りをして暮らしていたので、弓矢だけは得意ですよと。で、同じ第12地区からはペータというパッとしないパン屋さんの息子がくじで選ばれると。彼は、特に特技はないけれど、日頃重い小麦の袋を持ち上げたりしてたので、何気に怪力だし、一応頭はいいというキャラで、実は昔からカットニスにぞっこんでしたという男の子ですよと。
 その後、二人はキャピトルに連れていかれていろいろ訓練を受け、いよいよ第74回ハンガーゲームが始まるのだが、この作品の一つのポイントとしては、終末世界の割にはやけに科学技術が発達していて、いろいろなテクノロジーは普通に機能しているんだな。その辺が妙にラノベチックというか、小学生が書いた小説のような荒唐無稽さがあって、わたしとしては若干苦笑せざるを得ないのだが、まあとにかく、最終的には、第74回ハンガーゲームはカットニスとペータが最後の二人に残ると。で、二人で殺し合って、最終勝者を決めないといけないのだが、そんなことをしたくない二人は、「わたしたち、愛し合ってるんです! だから、二人で一緒に死にます!!」という芝居を見せつけて、キャピトルの観客たちの共感を得て、「ちょっと待ったー!! 若い恋人たちよ、二人とも優勝でいいよもう!!」という判定を受けて終わると。以上が、第1作のあらすじです。ね? めっちゃラノベでしょ?
 もう、いろいろ突っ込みどころ満載なのだが、実際のところ、この物語は日本の『バトルロワイヤル』のパクリじゃね? という意見もあったようだが、あんなつまらん作品よりも、どちらかというとわたしの大好きなStephen Kingの、『The Long Walk』(邦題:死のロングウォーク)と、『Running Man』(邦題:バトルランナー)に近いと思う。


 この二つを足して2で割ると、『HUNGER GAMES』になると思う。そもそも、『バトルロワイヤル』こそこの2作を日本流に換骨奪胎したものだしね。このStephenKingの作品2つは超面白いのでスーパーおすすめです。『バトルランナー』は、Schwarzenegger主演の超B級面白映画があるので、あっちを見てもいいけれど、まあ、小説の方が面白いかな。映画も最高です。原作小説とはだいぶ話が違いますが。
 
 で。『HUNGER GAMES』の第2作は、翌年の話。スノー大統領は、前年の戦いの最中に、カットニスがなにかと反抗的で、国家に対してけしからん人間だと思っていると。というのも、カットニスの戦いぶりが、これまでの出場者たちが無慈悲に殺し合う姿勢だったのと違って、なんで私たちにこんな無意味な戦いをやらせるのよ、喜んでいるのはキャピトルだけ、スノー大統領だけでしょ! こんな殺し合い、したくないわ!的なアピールがあって、各地区の労働者たちも、そうだそうだと反キャピトル的気運が高まってきていると。そういう中で、じゃ、今年のハンガーゲームは第75回記念大会なので、これまでの優勝者を集めたチャンピオン・カーニバルにしよう、ということになる(えーと、ツッコミ禁止です)。というわけで、せっかく前年生き残ったカットニスがまた召集されると。で、今回は過去の優勝者ばっかりなので、癖のある連中ぞろいで、しかも強い奴らばかりだと。カットニスも、ペータと一芝居打ったけれど、わたし、ペータが好きなのかしら、いや、そんなことないわ、だってわたしにはゲイルという頼りになるイケメン幼馴染がいるもの、とまた微妙な三角関係に陥っており、ペータはペータで、カットニス大好きなので、僕はカットニスを守る、命に代えても、みたいな決意で第75回ハンガーゲームに挑むわけです。結局、最終的には、歴代優勝者たちも実は前年のカットニスの戦いぶりに感化された連中がいて、ゲーム中に反逆すると。で、最後はゲームフィールド大爆発で、カットニスは半死半生のまま反乱組織に救出され、ペータは生死不明で闘技場に消えた……というところまでが第2作。しつこいけど、やっぱりラノベ展開ですわな。
 続く第3作では、カットニスが目を覚ますところから始まる。彼女を救ったのは、かつて反乱を起こしてキャピトルに廃墟とされて生存者はいないとされていた、幻の第13地区の連中だったことが判明すると。で、カットニスは反乱の象徴としてアイドル的に祭り上げられ、本格的な対キャピトル反乱戦争に巻き込まれていくと。で、ピータはピータで生きていて、逆にキャピトル側に洗脳(?)されていて、反乱はやめるんだ!というキャピタルサイドのプロパガンダに利用されてしまう。映画版では、ピータをキャピトルから救出して、二人が再会するところで第3作目は終了。そして先週公開された完結編で、いよいよ最終戦闘が始まる、という物語の流れである。なお、原作小説版は一気に最後まで書かれていて3部作になっている。

 とまあ、こんなお話なので、相当微妙というか、えーーーっ!? というツッコミを入れたくなって仕方ないところではあるが、映画は結構面白い。なにしろ、小説ではピンとこなかったゲームフィールドの状況とか、周りの様子が映像で明確に示されるのでわかりやすい。その映像もきちんと金がかかっていて、日本映画のようなチャチさはなく、それなりに見ごたえがある。そして、やっぱり俳優陣の熱演が、やっぱり小説よりも共感を生みやすいと思う。特に、わたしは最初からJennifer Rawrenceが大好きなので、応援せざるを得ない。貧しく厳しい環境で生きてきた割には、やけに発育が良くむっちりしているのは、まあご愛敬ということで許していただきたい。大人陣も、非常に良いと思う。特に、カットニスと同じ第12地区出身で、数年前のハンガーゲームを勝利したヘイミッチというキャラクターが、ずっとカットニスのサポートというか家庭教師的な世話役で出てくるのだが、この役を演じたWoody Harrelsonが非常に良い。ヘイミッチは、小説では飲んだくれのダメな奴イメージが強いが、映画版では、もちろん飲んだくれではあるけれど、かなりカットニスの強い味方として頼りになる(いや、そりゃ言いすぎかな……)し、いつも悪役や危ない野郎の役が多いWoody Harrelsonにしては、(態度はアレだけど実は)とてもいい奴なのが新鮮。また、スノー大統領を演じるDonald Sutherlandも、御年80歳、相変わらず怪しく渋い演技を見せてくれているし、第3・4作目に出てくる反乱組織の長・コイン首相を演じるJurianne Mooreも、何か裏のありそうな首相を貫禄たっぷりに演じている。なお、去年亡くなったPhilip Seymour Hoffmanはこの作品が遺作となったのかな、彼の演じるキャラが最終的に微妙にあいまいなのは、最後のシーンが撮れなかったからかもしれないね。

 というわけで、結論。
 『HUNGER GAMES:MOCKINGJAY part2』 は、少なくとも小説よりは全然面白いです。シリーズを見てきた方はもちろん必見だし、Jennifer Lawrenceちゃんを応援したい人は是非、劇場へGO!! 以前書いた通り、Jennifer Lawrenceはキメキメばばっちりメイクよりも、すっぴんに近い素顔の方が魅力的だと思います。

↓ まあ一応……。