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 MARVELヒーロー映画は、現在DISNEY=MARVEL STUDIO謹製の、「MCU」と呼ばれる一連のシリーズと、主に20th Century FOX配給の「それ以外」に分類されるが、SPIDER-MANがSONY PicturesからめでたくMCUに組み込まれた現在、その、「それ以外」で最も重要なキャラクターが、「X-MEN」 である。
 「MCU」ことMarvel Cinematic Universに関しては以前、詳しく書いたのでもう説明しないが、 FOX配給によるX-MENの映画の歴史はもうかなり長く、1作目が公開されたのが2000年のことなので、もう16年前ということになる。公開された順番に、各作品をまとめるとこういう感じである。
 ◆2000年公開:『X-MEN』。まさかのWolvarineを主役に据え、WolvarineがProfessor Xと出会ってX-MENに加入するまでの話。なんでわたしが「まさかの」と言うのか、理由は後で。US興収157M$と大ヒット。
 ◆2003年:『X2:X-MEN United』。 純粋な続編。X-MENと宿敵ストライカーの戦いを描く。US興収214M$とこれまた大ヒット。Cyclopsの愛車の青いマツダRX-8がカッコイイ!! (けどWolvarineに勝手に使われて大破しちゃうんじゃなかったっけ? 忘れた)。おまけにラストではCyclopsが大変なことに……。
  ◆2006年:『X-MEN:The Last Stand』(邦題=ファイナル・デシジョン)。ミュータントを人間化するCUREという薬をめぐる戦い。ラストはダークサイドに堕ちたJean GreyとWolvarineの悲しいバトル勃発。実は評価がいまいち低い、のだが、US興収234M$と一番ヒットした作品。わたしは嫌いじゃない。なお、『X1』『X2』を撮ったBryan Singer監督は、この時、この作品を撮ることを蹴って『SUPERMAN RETURNS』を監督したことでも有名。
  ◆2009年:『X-MEN Origins:Wolvarline』(邦題=ウルヴァリン:X-MEN ZERO)。初のWolvarine単独主役のスピンオフ。評価は一番低い、かな。US興収も179M$と大ヒットと言っていいけれど、シリーズの中では低め。Wolvarineの悲しい過去と、彼のアダマンチウムの爪の由来もきちんと描かれていて、わたしは結構好き。悪くないと思うんだが……。そういえばこの作品で、少年時代のCyclopsと出会ってるはずなんだけどな……。
  ◆2011年:『X-MEN:First Class』(邦題=X-MEN:ファースト・ジェネレーション)。わたし的にシリーズ最高傑作。素晴らしかった。1960年代の、「第一世代」ミュータントの戦いを描く。若き日のProfessor XとMagnetoの悲しい決別が実にグッとくる。ここで、後のProfessor Xがなぜ車いすなのかも描かれる。評価はかなり高かったものの、US興収はシリーズ最下位?の146M$だった。冒頭のシーンが『X1』のあるシーンを完全再現していて超大興奮した。悪役として出てくる、わたしの大好きなKevin Bacon氏が超素晴らしい!!! また、わたしがJennifer Lawrence嬢をはじめて認識したのがこの映画。
 ◆2013年;『The Wolvarine』(邦題=ウルヴァリン:SAMURAI)。日本ロケバリバリの異色作。Wolvarine単独主演スピンオフ第2弾。あ、US興収最下位はこっちだ。132M$だったそうです。評価は悪くないけど良くもない微妙作。わたしとしても、ちょっと微妙。
 ◆2014年:『X-MEN:Days of Future Past』(邦題=X-MEN:フューチャー&パスト)。超・問題作。わたしは、正直今イチだと思っている。『First Class』の若き日の第1世代と、『X1』~『X3』の現代キャスト夢の競演!! ということでわたしも超・期待したが、かなり穴があるというか物語的に問題があって、なんと歴史が塗り替えられてしまい、『X1』~『X3』は「なかった過去」にされてしまった。わたしはもう、マジかよ……と、ただボーゼン。ただしUS興収は233M$と大ヒット、Rotten Tomatoesの評価もシリーズ最高スコア

 とまあ、以上がこれまでの『X-MEN』映画の歴史である。なんでこんなに冒頭に無駄なことを書いたかって? そりゃあ、今日、シリーズ最新作、『X-MEN:APOCALYPSE』を観てきたからである。そして、ズバリ、あまり書くことがないからである。

 相変わらず、20th Century FOXは予告が……なんというか、ズバリ、上記予告は時系列がめちゃくちゃである。まあ別にいいのかな……。おまけに、ちょっと、びっくりしたというか呆れたことに、入場時に、『First Class』を無料で視聴できるデジタルクーポンを配布していた。はああ? 『First Class』観ないで、本作を観る奴いるのか? いや、いるんだろうけど、いまさら無駄ッショ? なんでこれを、『DEAD POOL』上映時にやらなかったのか、全く理解できない。本作『APOCALYPSE』を観てもらいたい人にこそ、タダでいいから予習として『First Class』を観ておくとより一層面白いですよ、と配布すべきで、その対象者として最もふさわしいのは、まさしく『DEAD POOL』でせっかく開拓した若者客だろうに。もうチケットを買って、これから『APOCALYPSE』を観ようとする人に今更配ってどうすんだ? どういう意味なのか、ホントわたしにはさっぱり不明である。何なんだ一体……。
 ま、そんなことはどうでもいいや。本作の話に移ろう。
 本作は、前作『Days of Future Past』の続編である。前作のラストのおまけ映像で描かれた、古代エジプトに君臨していた謎のミュータントが、1983年に蘇ってさあ大変!! というお話である。以上。これ以上もう書くことがない。

 ちなみに、これは本筋に関係ないのでズバリ書くが、今回も、エンドクレジット後に、おまけ映像がある。が、もう、本当にもう……ぽかーんとしてしまうおまけ映像なので、これはもう、観なくていいんじゃないかな。今回も144分と長い映画なので、トイレが我慢できない人は、さっさと退場していいと思う。「MCU」のおまけ映像は、明確に次作へ繋がる、いわば最速「予告編」として重要なわけだが、今回は、上に貼り付けた予告動画で誰もが想像できる通り、ちらっと出てくるWolvarineの血液が、謎の男たち(原作的には、おお、あいつか!? 的なつながりがある)に持ち運ばれた……的なおまけ映像があるだけである。まあ要するに、その血液から、後にDeadpoolが生み出されたり、いろいろ利用されるわけだが、なんでも、Wolvarine単独スピンオフ第3弾にして最終作が企画開発中だそうで、そこにつながるのかどうか……若干怪しいと思う。
 実は、わたしが一番言いたいことは、この点にある。
 MCUのおまけ映像が、どうしていつも、わくわくさせる素晴らしいおまけになっているかという点が極めて重要で、それは、明確に、「複数作品で大きな視点からきちんとシリーズが考えられていて、各作品に役割が与えられ、事前にきっちりと設計されている」からであり、それ故に、次はアレか!? と観客をわくわくさせてくれるのだ。だが、このFOXによるX-MENシリーズには、残念ながらそれがない。もっと言うと、WarnerによるDCヒーロー映画にも、それがない。ないというか、あるんだけど成功していない。この違いは、おそらくは、MARVEL STUDIOが、自分自身がIPホルダーであり、「全てをわかっている」いわば原作者であるのに対し、FOXやWarnerは、そうではない、という点に由来するものなんだろうとわたしは考えている。
 だから、本作に関して言うと、わたしは十分面白かったし、結構興奮したのは間違いない。決して嫌いじゃあない、のだが、この物語を描いてしまったら。この後どうすんの? というのがさっぱり見えない物語なのだ。Professor XとMagnetoがまた仲直りして、え、じゃあもう、敵対しないの? というのは、ちょっと受け入れられないような気がするし、MagnetoとMystiqueは別の道を歩むのかよ? というのも、それはないッショ、と言いたくなる。その点では、『First Class』のエンディングは本当に完璧だったのになあ……。
 というわけで、わたしとしては、出てくるミュータントたちはとてもよかったし、『First Class』に出てきたHavok(Cyclopsの兄貴)のまさかの復活にはとても興奮したのは間違いない。けど、はっきり言ってCGによるディザスター・ムービー的な都市崩壊の図はもう見飽きているし、そもそも、今回のApocalypseは、強いんだか弱いんだか、かなり微妙な敵になってしまったのは、極めて残念だ。これは、脚本に問題アリ、なのではなかろうか。そしてそれは、長期的な視点の欠如、が最大の欠陥であろうと思う。だってもう、この先のX-MENを描けないもんね。そもそも、前作『Days of Future Past』のラストは、本作『APOCALYPSE』事件の後だし、描いても、まーたこの展開かよ、になっちゃうし。なので、わたしとしては大変残念に思う。そして、さっさとFOXは、X-MENの権利をMARVEL STUDIOに返還した方がいいと思う。もう、FOXでは無理ですよ、きっと。ついでに、Fantastic 4の権利も一緒に返還してください。それがファンが一番喜ぶことだと思うな。

 というわけで、結論。
 超・期待して観に行った『X-MEN:APOCALYPSE』だが、登場キャラクターたちは素晴らしくて大変良かったけれど、長期的視点に立つと、極めて問題アリな物語であろうと思う。それはすでに前作『Days of Future Past』で露呈していた問題だが、本作でもう、取り返しがつかなくなってしまったようにわたしには思える。なので、さっさとMCUに参加してほしいな、というのが、クソオタクとしての意見である。なお、冒頭で、『X1』の主人公が「まさかのWolvarine」と書いたのは、わたしはX-MENのリーダーはCyclopsだと思っていたためで、それは何故かというと、わたしがX-MENを知ったのは、カプコンの格闘ゲームが最初だからです。意味わからない? ああ、分からないなら、それでいいです。どうでもいいことなので。以上。

↓ タダで視聴できるといわれても……おれ、Blu-ray持ってるんですけど……。FOXのマーケティングチームの意図がホントわからねえ……。もちろん、映画として『First Class』は超最高に面白いです。
X-MEN:ファースト・ジェネレーション [Blu-ray]
ジェームズ・マカヴォイ
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
2014-05-16

 

 というわけで、US国内で大ヒット中の『DEAD POOL』をやっと観てきた。
 日本でも、公開土日は結構稼ぎ、恐らくは15億は越える、そして20億もあり得なくない、というような数字で開幕したわけだが、わたしは平日の夜の渋谷TOHOシネマズでいつもの通りボッチ鑑賞としゃれ込んでみたところ、さすがに渋谷だけあって、歳若い男女カップルで意外と賑わっていたのを目撃したのである。
 しかし、である。残念ながら劇場でゲラゲラ笑っているのはわたしだけ、渋谷の若者どもは実におとなしくスクリーンを見つめるという奇妙な状況でもあった。まあ、そりゃそうだろう、と思う。何しろこの映画、恐ろしく玄人向けであり、少なくとも映画道の有段者クラスでないとまったく笑いどころが分からない、極めて難しい映画だな、とわたしは思ったからだ。これは……映画道三段ぐらいの黒帯じゃないと、まあ、まったく面白くないでしょうな。というのがわたしの結論である。ちなみにわたしも、結構な頻度で繰り出されるギャグにかなり笑わせてもらったが、まあ、正直、全然人におススメしたくなるような作品ではなかったというのが正直な感想だ。というわけで、以下、ネタバレ全開です。

 まず、DEADPOOLがしゃべりまくる細かいネタは、映画道黒帯でないと意味が分からないだろうし、それを公式サイトで「トリビア」としてまとめているのは、まあ、実際のところ、無駄な努力だろう。誰も事前に読みはしないし、映画を観ている最中に理解しないと面白くもなんともないので、ド素人のゆとりKIDSには通じるはずもない。そもそも、「解説」される時点でギャグとしてはもう寒いだろうし。それよりも、最低限、以下の2つのポイントを知らないと、ダメだと思う。おそらく、渋谷に集う平成ゆとりKIDSたちは、劇場でのリアクションから察するに、まったく知らないのだろう。つまりは、残念ながら20th Century FOXは、日本におけるプロモーションの方向性を完全に誤っているんだろうな、と思った。

 1)そもそも、DEAD POOLって何者?
 原作的な詳しい設定は、Wikiでも読むか、パンフレットを買って読んでいただくとして(パンフレットはかなり詳しい解説があるので、大変読み応えアリ)、ま、要するに「X-MEN」に出てくる、(人工的に作られた)ミュータントだということである。この点で、早くも日本の平成KIDSたちには、頭の中に「?」が浮かぶことだろう。すなわち、「X-MENって?」「ミュータントって?」という根本的な「?」だ。コレが分かってないと話にならないと思う。が、めんどくさいのでもうここではそれらについて説明しません。
 そして恐らく、20th Century FOXも、日本でそれら(US国内ではまったく説明を要しないで当たり前に知っていること)を説明することは完全にあきらめたのだと思う。故に、妙なDEADPOOLの言動だけ告知し、一人称を「俺ちゃん」と訳すことで平成KIDSどもに向けたある意味でのローカライズを意図したと思うのだが、それではダメだ。まったく本質からズレていると言わざるを得ない。
 おそらく、この映画を楽しんでもらうには、別に原作を読んでもらわなくてもいいので、少なくとも映画の「X-MEN」シリーズの何本かを観ておくべきであろうと思う。なので、わたしが20th Century FOXの関係者なら、おそらく過去の映画を期間限定でもいいから、いろいろなWebサイトで無料配信して、まずはタダでも観て知ってもらうことを優先したと思う。そしてもっと「X-MEN」について認知を広め深める方向のプロモーションを企画しただろう。もうとっくに投資回収されている映画だし、夏には本編の『X-MEN:Apocalypse』の公開が迫っているのだから。きちんと、まずは基盤となる「X-MEN」を知らしめるべきだったとわたしは思う。
 思うに、今回の作品を楽しむには、映画版の「X-MEN」シリーズは全部観なくていけれど、最低限『X-MEN』『X-MEN2』『X-MEN Origins:Wolvarine』ぐらいは観ておいたほうがいいんじゃないかな。「1」を観れば、だいたい「X-MEN」が何なのかぼんやり分かるだろうし、『Wolvarine』には、まったく違う性格のDEADPOOL(となる前のWeapon-X)も出てるし。しかも演じたのは今回DEADPOOLを演じたRyan Reynolds氏本人だし。これらを観ていれば、今回の背景も少し理解が深まるのは間違いなかろう。今回出てくる全身金属のミュータントであるコロッサスは「X-MEN」の映画で言うと『3』と『Days of Future Past』にも出てくるしね。あ、『2』にも出てたっけ。
 しかし、DEADPOOLに関していえば、今回の映画での性格が、原作的には一番近いと言っていいと思う。何しろ、彼に備わった能力で、他にない唯一の力(?)と言えるものが、「第4の壁の突破」能力だからだ。普通の人には、なんのこっちゃ? だよね。そう、彼は、自分がコミック世界のキャラであることを認識していて、(作品世界と現実世界の壁を突破して)頻繁に読者に向けて語りかけるのだ。これがまあ、今回の映画でも炸裂していて、頻繁にカメラに向かって(=観客に向かって)ペラペラしゃべりまくるわけである。なお、彼のあだ名である「Merc with a mouth」とは、「おしゃべりな傭兵」のことで、Merc=Mercenary=傭兵である。コミックのタイトルでもあります。
デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス (ShoPro Books)
ヴィクター・ギシュラー
小学館集英社プロダクション
2013-09-28

 とにかくおしゃべり野郎なのは、今回の映画の通りで、まあ、無理やりミュータントにされちゃったかわいそうな、そしてイカレた男なんだけれど、れっきとしたMARVELキャラなので、Avengersにも参加したことがあるし、なにかとSPIDER-MANとも絡んでくるおかしな野郎である。ちなみに、今回の映画でもさんざん銃で撃たれても治っちゃったり、腕が生えてきたりするけれど、これは、原作的な設定では、Wolvarineの能力(=治癒能力=ヒーリング・ファクター)を注射されているから。今回、ラストで恋人の前でマスクを取ったらその下にHugh Jackman氏の写真を顔に貼り付けていたというシーンがあるけど、あそこは爆笑していいシーンです。えっ!? ここまで書いても何故笑えるか分からない!? もう……あなた……なんでこの映画を観に行こうと思ったの……? その方がオレにはわからんわ!! わたしはもちろん吹きました、が、館内シーン、でした。
 というわけで、それなりの知識がどうしても必要な映画であることは間違いないと思います。
 
 2)そもそも、演じたRyan Reynolds氏って誰?
 この点については、まあ、あまり重要ではないとは思うけれど、上で書いた通り、【既に別の映画で1回DEAD POOLを演じていること(ただし性格は全然違う)】と、【DCヒーローのGreenLantarnを演じた】ということだけ知っていればいいかなと思う。これは、映画道・黒帯でなくとも既に知っている人も多い事実であろう。ごく初歩的な常識と言ってもいい。もっとも、この常識を知っていても、それほどDEADPOOLが面白くなるわけではないので、自分で書いておいてアレですが、実際どうでもいいかもしれない。今回、緑のコスチュームは勘弁、と言っているのは、もちろんGreen Lantarnのことだ。しかし、このギャグにはわたしはちょっとイラッとした。お前、自分の出た映画批判するぐらいならなんで出たんだよ、嫌なら断れよ!! と思ってしまったわけで、わたし的には映画『Green Lantarn』はそれほど酷評されるいわれはないと思っている。あの映画、相当真面目に作られていると思うのだが……。問題は、そもそもの原作がイマイチなだけで、映画としては十分アリだと思う。なお、ギャグネタがらみの『Blade3』に出演してたことはもうどうでもいいや。
 しかし……そもそもこの人、イケメン……なんですかね? わたしにはちょっと分からんというか……なんか、若干特徴がありますよね。何なんだろう……若干寄り目なのかな? 正直、わたしの審美眼からすれば、この人はどっちかっつーとイケてないと思うのだが、おそらく、わたしがこの人の芝居で一番印象的だったのは、Sandra Bullockさんと出演した『The Proposal』じゃなかろうか。日本での公開タイトルは『あなたは私の婿になる』という作品で、どうやら世間的評価は低い作品のようだが、わたしは、まあロマンチックコメディとして結構面白かったと思っている。

 というわけで、以上のことを知らない平成KIDSどもが観て楽しめたのかどうかはわたしには良く分からない。なので、そういう背景をまったく考慮せずにこの映画はどうだったのか、と考えると、はっきり言えばごく普通のB級アクション以上のものではないと言えるだろうと思う。物語を要約するとこうなる。
 街の傭兵として生きる男が、ある日とある女性と恋に落ちる。が、これまたある日、自分が重篤なガンにかかっていることも判明する。すると、ある男が、ガンを治せる方法がありますよ、と近づく。胡散臭い野郎で得体が知れないけど、まあ、それじゃお願いしますわ、とその男の元へ行く。すると、謎の注射をされる。そして、注射した謎物質を活性化させるためには、肉体的な苦痛を与えないとダメ、とあと出しじゃんけんで言われ、拷問される。で、散々拷問を受け、どういうわけかあらゆる傷も治っちゃう無敵BODYを手に入れる。が、その代償として、全身ケロイドめいたagryな姿に。どういうこっちゃ、あの野郎、ゆるさねえ、オレの顔と体を綺麗に戻しやがれ!! と復讐する。
 とまあ、こんなお話である。ね、普通ッショ。つか、B級臭がぷんぷん漂ってますな。それでも、やっぱり面白くて笑えるのは、どう考えても、主人公DEADPOOLがX-MENキャラで有名だからという理由以外ないと思うのだが、それを知らない人が観て面白いのか、わたしにはさっぱり分からんのである。会話としての面白さは、連射されるギャグの元ネタが分からないとダメだろうし、物語的な面白さはそもそもの背景を知らないとわからんだろうし……しかし映像はとても良かったし、その点では、低予算映画と言ってもやはり非常にクオリティは高くて、見ごたえは十分である。本作は、どうやら予算規模は5800万$(=約62億円)だそうで、今やMARVELヒーロー映画は1.5億$~2億$が当たり前なので、邦画の予算からすれば62億円は巨額で邦画なら10本は撮れてしまうけれど、ハリウッド的には、普通かやや安いぐらいの予算規模といえるだろう。
 また、ストーリー展開も、大乱闘のワンシーンから、なんでこんなことになった? と時が巻き戻る形式で、実際良くあるパターンではあるが、これはいわゆるハードボイルド小説なんかでよく使われる手で、主人公の一人称によるぼやきも含め、意外とDEADPOOLというキャラクターにマッチしていて、小気味良い演出であったと思う。まあ、その辺も、平成ゆとりKIDSどもにはまったく通じないと思いますが。

 というわけで、もう飽きてきたのでぶった切りで結論。
 映画『DEADPOOL』という作品は、はっきり言って玄人向けである。映画道・三段以上の黒帯所持者向けであり、白帯の初心者には太刀打ちできないと思う。なので、まずはきちんと勉強してから観てもらいたい作品だな、と思うのである。ちなみに、なんですが、わたしが一番笑ってしまったのは、「ワムじゃねえよ、ワァムッ!だよ!! もう、わかってねぇなー」という台詞でした。まったくその通りだと思います。以上。

 ※2016/06/20追記:3週目までで興行収入的には15億を超えているようなので、さんざんわたしは日本の若者にはどうなんだろう、と書いてきたけれど、全然平気のようで、きっちり売れている模様。そういうもんなんだなあ……わかってねえのはわたしでした。


↓ そもそも、映画道・黒帯の有段者にとって、DEAD POOLと聞いたら先にこっちが思い浮かぶはずです。こちらは、わたしとしてはシリーズで一番……イマイチかなあ……。わたしは字幕絶対主義者ですが、イーストウッドの古い作品は、やっぱり「不機嫌なルパン」こと山田康雄さんに限りますね。
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