というわけで、今日もWOWOWで録画した映画を観たのでその感想です。正確にいうと観たのは昨日だけど、これまた奇妙な映画であった。タイトルは『AFFLICTED』。日本語訳すると、「悩み」とか「●●に苦しめられた」とかそんな意味合いだと思う。例によって例のごとく、なんでまたこの映画を録画しようとしたのか、1ヶ月前の自分が全く記憶にないわたしであった。
 
  というわけで、今回も一体どういう映画なのか、さっぱり判らないまま見始めたのだが、開始してすぐに、この映画がいわゆる「POV」モノの低予算映画だと言うことが分かる。「POV」(=Point of View)とは、いわゆる一人称視点(First Person)の、作中人物がビデオカメラを回して撮ったもの、という設定の作品である。おそらくはその先鞭をつけた映画として一番有名なのは、1999年に公開された『The Blair Witch Project』だろう。今や誰もが4K画質で映像を残せる時代、自分で動画を撮影したことのある人なら十分実感できると思うが、異様に綺麗な映像をごく簡単に、いまやスマホでさえ余裕でフルHD動画を撮れる時代である。なので、『The Blair Witch Project』以降、さまざまなPOV作品が世にあふれている訳だが、本作もまた、とある二人組が、BLOGにUPする動画を撮影しているという設定である。物語としては、中国系(?)アメリカ人のデレクと、その親友クリフが世界一周の旅に出る、その旅先での行動を動画で公開するので、みんな観てねーというわけで、二人は多くの友人たちに見送られて旅立つところから始まる。なんでも、デレクは脳の血管に血栓が溜まる持病があり(このことがちょっとした伏線になっている)、これが最後の自由を謳歌する時間である、というわけで、思い出旅行でもあるらしい。
 スペインから始まった二人の旅は、出発して7日目、パリに至る。そしてその夜の出来事が大きく二人の運命を変えてしまうことになる。デレクがナンパした女がいて、ホテルに連れ込むことに成功するのだが、ホテルにしけこんだ二人を、クリフがドッキリで撮影しちゃおう、と部屋に乱入する、と、女はいない。そしてデレクは、血を流して失神している。なんだなんだ、何が起こった? よく分からないが、デレクは部屋に入るなりぶん殴られて、それっきり記憶がないという。幸い怪我はたいしたことはなかったのだが、翌日からデレクの体に異常な変化が起きてきて……とまあそんなお話である。
 はっきり言って、たいしたことのないお話なのだが、POVを駆使した映像は、これは一体どうやって撮影したんだ!? というようなモノが多く、デレクとクリフが本名のまま、共同監督&共同脚本を担当しているようだが、なかなかの技術と才能が垣間見える作品であった。ただし、POV以外の作品をこの二人が撮れるのかどうかはさっぱり分からない。現状では、一発ネタとしか言いようがないので。
 わたしが激賞しているPOV作品といえば、『Cloverfield』と『Chronicle』の2本だが、『Cloverfield』を撮ったMatt Reeves監督は(この人はJJ Abramsと子供の頃からの親友)、その後数々の作品を撮ってメジャー監督となり、2014年には『Dawn of the Planet of the Apes(猿の惑星 新世紀)』に抜擢されてビックバジェット作品を手がけるようになったし、『Chronicle』で監督デビューしたJosh Trank監督はその後、マーベルヒーロー映画『Fantastic 4』に抜擢された。そんな実例もある通り、今や才能ある新人が映画界に名乗りを上げるのに、POVという形式は非常に有効な形であるとも言える。何しろ機材に金がかからないし、登場人物も少数に絞り込むことができる。どうやら本作もクラウドファンディングで金を集めたようだけれど、低予算で実現できる形としては非常にやりやすい。
 おそらくは、POV作品で一番キモになるのは、「なんで登場人物は撮影しているのか」という初期設定だろう。大抵の場合は、なにか異常なことがあって、その真相を解明しに行く調査チームの記録映像、みたいな場合が多い。なので次に重要となるのは、その「異常なこと」だ。本作の場合は、デレクの体に起こる異常現象なのだが、これはこれで、結構面白かった。意外とチープなところはなく、しっかり撮られている。結構わたしは、やられた感があって、正直くやしい。クソ、結構いい画撮ってんなあ、というのが今回のわたしの感想である。まあ、物語はありがち? なので、素直に褒めてあげないもんね、と、とりあえずの負け惜しみを言っておこうと思います。
 というわけで、結論。
 『AFFLICTED』は、画的にはかなり悪くない。正直素人な二人組だが、相当頑張っていると思う。かと言って万人におススメかというと、そういうわけにも行かず、だがしかし、映画界に興味がある人には必見と言っていいような気もする。特に、日本の映画界の若手のみなさんには、少なくともこのレベル以上のものを撮って欲しい。なんで日本の低予算作品って、すぐにふざけちゃうんだろうな……この映画は、相当真面目に相当頑張ってますよ。以上。

↓ なんと、いきなり『Cloverfield』の続編の予告が公開されました。どんな話になるんだろう? 楽しみです。