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 わたしは映画や小説、漫画などの「物語」というものを、ほぼ毎日味わっているわけだが、好みとして、やっぱり主人公の言動に共感し、ともに物語の世界を歩みたいわけで、主人公に共感できないと、どうしても面白いとは思えないし、読んでいてあるいは観ていて、実に苦痛である。
 これは別に、主人公には善人であってほしい、というわけではなく、悪党であっても、きちんと「だからこうする」という理由のようなものがあって、それが徹底されていればいいわけで、一番わたしが嫌悪するのは、考えの底が浅く、「なんでお前はそんなことを?」というのが全く理解できないような、うすらトンチキ、あるいは悪意の塊、のようなキャラである。そういうキャラは、ああ、コイツはさっさとくたばらねえかなあ、とか思いながら物語を見物することになるが、それが主人公がそういうトンチキだと、もはや結末もどうでもよくなってしまうというか、つまんねー話、という最終結論に至るのである。
 というわけで、わたしは今日、東宝作品『来る』を観てきたのだが……これは……我ながら面白いと思ったのか、つまらねえと思ったのか、まだよくわからないという不思議な作品であった。今現在、わたしが確信を持って言えそうなことは、役者陣の熱演は極めて上質で素晴らしかったことだけであろうと思う。脚本(=物語)、演出、これについては……どうなんだこれ……ズバリ言うと、全然怖くなかったすね。つうか、極論かもしれないけど、この映画って、ひょっとしてコメディだったのかな? そんな気さえしている。
 というわけで、以下はネタバレに触れる可能性が高いので、これから観ようと思ってる人、あるいは超最高だったぜ、と思っている人は読まずに退場してください。

 わたしがこの映画を観ようと思ったのは、この予告を観て次のことを思ったからだ。一つは、うおお、岡田くんカッコいいなあ! ということ、そしてもう一つは、久しぶりに松たか子様の強力な演技が観られそうだぞ!? という2点で、物語としては、幸せな夫婦の娘を狙う「アレ」なるものを祓う話だろう、とうすらぼんやりと見当をつけていた。
 が。ズバリ言うとわたしの予想は大筋では間違っていないものの、物語はかなり予告から想像していた展開ではなく、かなりの変化球であったと思う。物語の具体的な流れはもう説明しないが、おそらく原作小説は、まさしく湊かなえ先生の『告白』的な、1人称小説&章ごとに語り手が変わるタイプなんだと想像する。しかし、映画としてその構造がうまくいってるかは、かなり疑問だ。
 普通に考えて、1人称で語り手がチェンジする物語の面白さは、芥川の『藪の中』、あるいは黒澤明監督の『羅生門』的に、一つの共通した事象について、観る人が変わるとその内容も全然違ったものになる、という点にあると思う。さらに言えば、それぞれのキャラクターの言い分も実は全然事実と違ってた、という展開もよくあって、そこに、な、なんだってー!?という真実が明らかにされる(あるいはまさしく真相は藪の中で終わる)というのが王道だろうと思うのだが……。
 本作では、まず最初に夫がいかに満点パパだったかというなかなか気持ち悪い物語を観せられる。次に妻の視点から、夫は100点どころか0点でさえなく、マイナス100点のクソ野郎だったことが語られる。しかし観客としては、そんなこたあどう観ても分かってて、でしょうな、としか言いようがなく、妻もまた、(夫がクソ野郎だったからとはいえ)なかなか香ばしい人物だったことが提示される。そして、二人がこの世を去った後、第三者が必死で後始末をつける顛末が最後に描かれるわけだが、残念なことに、事件の核心たる「アレ」については、問題とされないのだ。「アレ」こそが核心であり、それを様々な視線から見た時の違いが、映画的に面白くなるはずだったと思うのだが……単に夫婦の裏の顔ともいうべき本性が暴露されるだけなので、はっきり言って底が浅く陳腐だ。結果として、そもそもの「アレ」が何故いつまでも娘を狙っているのかがさっぱり分からない。まあ、「アレ」の行動原理など分かりようはないので、それはそれでいいのかもしれないけれど、わたしにはどうも釈然とせず、結論として、なんだったんだ……としか思えないのであった。
 というわけで、各キャラクターと演じた役者をメモして行こう。
 ◆田原秀樹:夫。最初の語り手。たぶんそもそもの元凶。一言で言えばクソ野郎で、見事死亡する。わたしは心の底からざまあとしか思わなかった。が、コイツが死んでも「アレ」は収まらず。コイツはどうやら幼少時に一人の少女の失踪事件に関係があったようで、それがそもそもの元凶だったのだと思うが、その事件が何だったのかは結局なにも描かれず。単に、その失踪した少女に、「うそつきだからお前もそのうち狙われるよ」と言われていた過去だけが描かれる。そして大人になったコイツは、まさしくとんでもない「うそつき」野郎で、救いようのないゲス野郎に成長。結婚前も後も会社の女に手を出しまくっていたらしい。つうか、お前は結局何だったんだ? なんで「うそつき」な人間なのか、説明が欲しかった。あの実家のクソどもに育てられたからってことかな? こんなゲス野郎を、超見事に演じた妻夫木聡くんは本当に演技派だと思う。何が見事って、コイツのような外面だけよくて実はゲス野郎、っていう人間は、もうそこら中に普通にいそうなんですよね……。そのリアルさが超見事だと思います。しっかし……結婚式などでいかにも訳アリげだった会社の女は、物語において何の役も果たさなかったのは何だったんだ……。
 ◆田原香奈:妻。第2の語り手。この人は恐らく完全に被害者(だよね??)なので許してもいいかも……まあ、精神的に虐待されてたともいえそうだし、実の母もクソ女だし、気の毒だったと思うべきなんだろうな……。余裕で浮気してた(? しかも夫は知ってたっぽい。NTRを喜ぶ変態だったってこと?)ことは、利用されたってことで許してもいいか。でも、まあ、男を見る目がなかったってことですな。そんな薄幸の女子を演じたのが、若干幸薄そうな昭和顔でお馴染みの黒木華さん。これまた超見事な演じぶりで、控えめでおとなしそうな妻の顔、何もしない夫と言うことを聞かない娘にブチギレる母の顔、そして珍しくドぎついメイクで男に抱かれる女の顔、の3つを超見事に演じ分けてらっしゃいました。実際素晴らしかったと思う。初めて黒木華さんをエロいと思ったす。
 ◆津田大吾:どっかの大学の准教授。秀樹の高校時代の親友。ホントに親友なのかは相当アヤシイ。お互いがお互いを利用してただけというか、ま、薄っぺらい友情だったんでしょうな。そしてコイツも残念ながらクソ野郎で、どうやら秀樹が生きているうちから英樹の会社の女や、あまつさえ香奈にも手を出してた模様。しかも、コイツが「アレ」を呼び寄せるお札を仕掛けていた事件の張本人(?)なのだが、この伏線というか仕掛けをもっと物語に上手に盛り込めたはずなのに……ほぼ詳細は語られず。ま、最終的には見事死亡して、心底ざまあです。演じたのは青木崇高氏。優香嬢の旦那ということ以外、よく知らないす。まあ、あんな准教授はいないでしょうな。リアル感ゼロ。
 ◆野崎:第3の語り手。フリーライター。口は悪いけど、本作では一番の善人。とにかく演じた岡田准一氏がカッコイイ! ルックスのカッコ良さはもちろん、しゃべり方もカッコいいし、非常にそれっぽい。要するに演技的に一番素晴らしかったと思う。さすがはジャニーズ演技王ですよ。しかし、野崎についても、元カノと堕胎した子供に関するエピソードは、部外者たる野崎が「アレ」と対峙する重要な動機であるにもかかわらず、中途半端にしか描かれていないのは残念に思った。結果的に野崎はかなりお人よしにしか見えないことに……。
 ◆比嘉真琴:野崎の現・恋人なのか? 職業はキャバ嬢らしいが(キャバシーンは一切ナシ。普段何してるのかちゃんと描写してほしかった)、沖縄のシャーマン的な一家の出身で、霊感バリバリなパンク女子。真言を唱えていたので仏教系術者か? メイクはアレだけど相当可愛い。秀樹→津田→野崎と依頼されて、最初に「アレ」と対峙するが……。演じたのは小松奈菜ちゃん。今までの可愛らしい顔を封印した、気合の演技だったと思う。素晴らしい!
 ◆比嘉琴子:真琴の姉で、超絶パワーの持ち主として、裏では知られた人物らしい。警察さえも動かせる権力を持っている。姉は神道系術者か? 儀式は仏教系と神道系が両方タッグ?で行われていて、あの描写は非常に興味深かったです。きっとこのお姉さまは政治家とかのスピリチュアル顧問のようなことしてるんでしょうな。真琴では手に負えない「アレ」を祓うため、一人術者を派遣したのちに満を持して登場する。演じたのは松たか子様。いやあ、たか子様の演技は相変わらず完璧ですなあ……しかし、演出に問題があるのか、完全にもう、笑わせに来てるというか、極端すぎて漫画のようになってしまったのがとても残念。この演出によって、わたしは「怖さ」をまったく感じなくなったわけで、たか子様の演技が完璧だっただけに、陳腐な漫画的演出は全くの無用だったとわたしは感じた。笑わせたかったのなら、成功だけど。
 ◆逢坂セツ子:真琴では手に負えず、琴子お姉ちゃんが最初に派遣した霊能者。演じたのは柴田理恵さん。どう見ても柴田さんなんだけど、今までにこんな柴田さんは見たことのないような、強力に雰囲気バリバリな霊能者で、素晴らしく超熱演だったと思う。一切笑わない柴田さんは初めて見た。
 とまあ、こんな感じであった。最後に監督について短くまとめて終わりにしよう。
 本作の監督は、中島哲也氏だ。わたしは中島監督の作品をいくつか観ているが(全部は観てない)、まあ、特徴的な画を撮る監督としてもお馴染みだろうし、物語的にも、かなりイヤな人間が多く登場することでもお馴染みだろう。ただ、今までの作品は、クソ野郎であっても、きちんと観客として共感できる面を持つキャラクターが主人公だったと思う(大抵女性が主人公なので野郎ではないけど)。しかし、今回は……まあ、主人公が誰かというのはもう観た人が決めればいいことだし、複数いる場合だってあるので、別に主人公にこだわるつもりはないのだが……とにかく、観せられたのは、薄汚れた人間が謎の「アレ」に狙われ、まともな部外者が一生懸命助けようとする話で、どうにも共感しようがなかった、というのがわたしの抱いた感想だ。しかも「アレ」については一切説明ナシ、であった。妙な時間経過もどうも意味不明というか……その間なんで平気だったのか、どうして急にまた怪異が起き始めたのか、など、まったく触れられずである。
 これはひょっとすると、わたしが世界で最も好きな小説家であるStephen King大先生的な物語を狙っているのかもしれないし、実は原作小説はそれがうまくいっていて超面白いのかもしれない。けれど、この映画だけでは、それが見事に決まったかというと、全然そうは思えなかった。むしろ、これってコメディなの? としか思えず、かといって全く笑えず、怖くもなく、なんだかなあ……というのがわたしの結論である。ただし、何度でも言いますが、役者陣の熱演はとても素晴らしかったのは間違いない。その点では、観た甲斐はあったと思います。
 あ、あと、どうでもいいけど、エンドクレジットはアレでいいのかなあ(今回は2~3秒で全面書き換わっちゃうものだった)……わたしは結構、エンドクレジットで、なんていう役者だったんだろうか、とか真面目にチェックするのだが……あのエンドクレジットでは全く目が追いつかず、であった。わたしはエンドクレジットに関しては、興味のない人はさっさと席を立ってもOKだと思ってるけど、実は柴田理恵さんの演じた役は、柴田さんだろうと観ながらわかっていたものの、あまりにTVなどでお馴染みの柴田さんとはかけ離れていたので、クレジットで確かめたかったのだが……それに、野崎の元カノを演じた方や、秀樹の会社の女を演じた方など。確かめようもなかったのも残念。誰だったんだろうか。ああいう不親切なクレジットは、好意的にはなれないすなあ……。あれって中島監督作品はいつもそうなんだっけ?

 というわけで、もう書いておきたいことがないので結論。
 予告を観て、おっと、これは面白そうだぞ、と思って観に行った映画『来る』。確かに役者陣は素晴らしく、その演技合戦は極めてハイクオリティではあった、が、脚本と演出なのかなあ……まず第一に、全く怖くない。それは「アレ」の説明が一切ないからなのか、それとも過剰な演出が漫画的であったからなのか、各エピソードが散らかっていて中途半端だからなのか、もはやよくわからないけれど、結果として、なんかよくわからねえ、という感想を抱くに至ったのである。まあ、とにかく第1の語り手である秀樹のクソ野郎ぶりがホントに気持ち悪かったすね。そしてわたしにそう思わせた妻夫木くんの演技は、抜群だったってことでしょうな。そして初めて黒木華ちゃんをエロいと感じました。お見事だったすね。岡田くんも実にカッコ良かったし、松たか子様の余裕の演技ぶりは大変満足です。が、演出と脚本が……漫画みたい&説明不足で残念す。以上。

↓ 原作を読めってことかもな……ちょっとチェックしときますわ。

 先日、わたしが大変お世話になっている美人のお姉さまに、「あなた、そういえばこれをお読みなさいな」と勧められた小説がある。へえ、面白いんすか? と聞いてみると、既にシリーズは全10巻で完結しており、また以前TVドラマにもなっていて、ヒロインをDAIGO氏と結婚したことでおなじみの北川景子嬢が演じたそうで、その美人お姉さま曰く、「面白いわよ。でも、わたしは、TV版の北川景子さんではちょっと小説でのイメージよりも美人過ぎるというか、彼女よりも、あなたが最近イイってうるさく言ってる、黒木華さんなんががイメージに合うような気がするわ」とのことであった。
 ええと、それはオレの華ちゃんが美人じゃあないとでもおっしゃるんですか? と思いつつも、「まじすか、じゃ、読んでみるっす」と興味津々の体で、すぐさま、その場で調べてみるも、どうも電子書籍版はないようなので、その後すぐに本屋さんへ行き、まずはシリーズ第1巻を買ってみた。それが、高田郁先生による『八朔の雪 みをつくし料理帖』という作品である。

 なお、インターネッツという銀河を検索すれば、TV版の映像も出てくるが、どれも違法動画っぽいので、ここに貼るのはやめておきます。小説を読み終わったばかりのわたしとしては、ははあ、なるほど、お姉さまの言う通り、北川景子嬢ではちょいと感じが違うかもね、というのはうなづけた。もちろんそれは北川景子嬢が悪いと言う話ではなくて、美人過ぎる、からなのであって、北川景子嬢のファンの皆さまにはお許し願いたい。そもそもわたし、ドラマ版を観てないので、とやかく言う資格もないし。俄然見たくなってきたけれど。
 で。この作品は、主人公「澪」ちゃん18歳が、「牡蠣の土手鍋」を店で出して、客から、なんじゃいこりゃあ? と言われてしまうところから始まる。どうやら澪ちゃんは大坂出身であり、江戸っ子たちには牡蠣の土手鍋は未知の料理であると。そして、どうやら「種市」さんというおじいちゃん経営の蕎麦屋「つる屋」の料理人として雇われていて、「お寮さん」と呼ぶ奥様と一緒に、神田明神の近くに住んでいるらしいことがすぐわかる。その後、料理の話を中心に、澪ちゃんとお寮さんの関係や、江戸に来たいきさつなどが判明してくると。で、現在の蕎麦屋に雇われるきっかけとなった出来事も語られたり、何かと澪ちゃんや種市爺さんを気に掛けてくれるお医者さんの「源斉先生」や、謎の常連客の浪人風なお侍「小松原さま」と知り合って、話が進んでいく。
 基本的には、いわゆる短編連作という形式で、1話につき一つの料理を巡って話が進む。その時、必ずカギとなるのが、江戸と大坂の味覚・料理法の違いだ。大坂人の澪ちゃんにとっての常識は江戸では非常識であり、当然逆に、江戸での常識は澪ちゃんにとって、「ええっ!?」と驚くべきものなのだ。このカルチャーギャップが本作の基本で、毎回読んでいて非常に興味深い。例えば、冒頭の「牡蠣の土手鍋」は、関西以西では普通でも、江戸っ子にとって牡蠣は、焼いて食うものであって、「せっかくの深川牡蠣を」「こんな酷いことしやがって、食えたもんじゃねえ」とお客に怒られてしまう始末なのである。こういったカルチャーギャップは、現代の世の中でも話のネタとしては鉄板だ。わたしの周りにも大阪人や名古屋人などが存在していて、よくそういう食べ物系カルチャーギャップの話をする。江戸人に限らず、我々現代人の場合においても、自らのソウルテイストに固執して、違うものを拒絶する傾向が多いと思うが(かく言うわたしも関東人の味付けじゃないと嫌だし)、澪ちゃんはプロ料理人として、江戸風味を理解し、生かしながら、自らの大坂テイストとの融合を模索する。その工夫は特に後半で問題となる、「出汁」の話が非常に面白い。昆布出汁で育った澪ちゃんが、江戸の鰹出汁とどう折り合いをつけ、澪ちゃんオリジナルとして昇華させるか。おそらく読者たる我々も、なんだか作中に出てくる料理を味わいたくなるのが、この作品の最大の魅力の一つであろうと思う。なお、文庫巻末には、作中料理のレシピが付いてますので、誰かわたしに作っていただけないでしょうか。
 ところで、澪ちゃんの最大のビジュアル的特徴は、「眉」である。澪ちゃんは数多くのピンチに苛まれるわけだが、その度に、「地面にくっついちまうぜ」と小松原さまにからかわれる通り、「下がり眉」なのだ。わたしは、しょんぼりと困った顔をして眉が下がっている様の女子が大好きなので、もうのっけから澪ちゃん応援団になってしまった。「下がり眉」愛好家のわたしとしては、現在の芸能界で最強に可愛い下がり眉と言えば、元AKB48の大島優子様だが、澪ちゃんのイメージとしては、優子様ではちょっと美人過ぎるか。もうチョイあか抜けない素朴系……と考えたら、確かに、この作品をわたしに教えてくれたお姉さまの言う通り、愛する黒木華ちゃんが候補に挙がるような気がする。ただ、澪ちゃんはまだ18歳なので、もうチョイ若い方がいいのかな。ま、そんなことはどうでもいいか。
 いずれにせよ、澪ちゃんは非常な困難に何度も直面し、しょんぼりとよく泣く、気の毒な娘さんだが、彼女は一度泣いたあと、きっちりと気持ちを立て直し、常に努力を続ける。じゃあ、これはどうだろうと考えるし、周りの人々のちょっとした話からも、解決の糸口を見つけ出す。その「常に前向き」な姿勢が非常に健気で、わたしとしては彼女を嫌いになれるわけがない。とても良いし、応援したくなる。まさしく彼女は、物語の主人公たる資質をきっちりと備えているわけだ。もちろん、周りのキャラクター達も、そんな澪ちゃんを放っておけない。いわゆる江戸小説らしい人情が溢れており、とても読後感はさわやかである。これは売れますよ。人気が出るのもうなずける作品であるとわたしは受け取った。
 この作品を貫いている一つの大きな柱として、「雲外蒼天」という言葉がある。これは、澪ちゃんが子供のころに占い師に言われた言葉で、曰く、「頭上に雲が垂れ込めて真っ暗に見える。けんど、それを抜けたところには青い空が広がっている。――可哀そうやがお前はんの人生には苦労が絶えんやろ。これから先、艱難辛苦が降り注ぐ。その運命は避けられん。けんど、その苦労に耐えて精進を重ねれば、必ずや真っ青な空を望むことが出来る。他の誰も拝めんほど澄んだ綺麗な空を。ええか、よう覚えときや」という意味である。
 まさしく澪ちゃんは、「雲外蒼天」の言葉通り、艱難辛苦に遭う。そして、それでも頑張り通して、最後には笑顔になることができる。それは澪ちゃんだけでなく、周りの人々をも笑顔にするもので、当然、読者たる我々にも、笑顔を届けてくれるものだ。こういう作品を、傑作と呼ばずして何と呼ぶ? わたしはこの作品が大変に気に入りました。
 
 というわけで、結論。
 『八朔の雪 みをつくし料理帖』は大変面白かった。澪ちゃんにまた会いたいわたしとしては、もはやシリーズ全10巻を買うことは確定である。これはいい。最後どうなるのか、楽しみにしながら、せっせと読み続けようと思います。幸せになっておくれよ……澪ちゃん……。そしてこの作品をわたしに教えてくれた美しいお姉さま、有難うございました!! 以上。
 
↓漫画にもなってるんですな。ドラマ版は、探したのだけれどどうもDVD化されていないっぽいです。

 年末に、山田洋次監督の『母と暮らせば』を観て、大いに感動し、その後、『小さいおうち』も観て、まったくもって今さらながら、やはり山田洋次監督はすげえなあ、と思ったわけであるが、同時に、わたしはすっかり黒木華ちゃんにぞっこんLOVEとなり、年末から現在に至るまで、華ちゃんの天然昭和フェイスが頭から離れないわけであります。だいたい、華ちゃんは1990年生まれのれっきとした平成生まれなのに、昭和顔ってなんなんだ、と思われる方も多かろうと思う。敢えて言おう。だが、それがいい。のである。
 で。どんどん華ちゃんが好きになったわたしとしては、当然ながらいろいろ調べさせてもらった。ほほう、大阪出身ね、ほほう、身長164cmね、ほほう、NODA・MAP出身ね、なるほどなるほど、タバコを吸うらしい? いいよ、全然OKだよ、などと、年末ごろのわたしは半ば変態じみた様子であったに違いない。そしてそんな時、華ちゃん主演の舞台演劇が年明けから始まるという情報を得た。……のだが、既にもうチケットは発売中で、わたしが気が付いた時はもう、あまりいい席はなかった。なので、どうしよう、せっかくの生のお姿を見られるチャンスなのだから、席はどこでもいいから行くか? と、かれこれ14日間ほど悩み、いや、やはり行くべきである!! とわたしの内なる叫びが聞こえたような気がするので、チケットを取得し、おととい観てきた。その舞台とは、『書く女』という作品である。
kakuonna
 ↑公演パンフの表紙ですが、どうですか。かわええ……そしてカッコイイ。
 物語は、パンフによれば日本最初の女性職業作家、樋口一葉の生涯を描くものである。しかし、わたしはこれほど樋口一葉のことを知らなかったのかと、若干愕然とし、また同時に情けなくも恥ずかしい思いをするに至ったのである。わたしの周りの人はご存知の通り、わたしは文学修士であり、それなりに勉強してきたつもりなのだが、国文学専攻ではないとはいえ、これほど無知とは、我ながら呆れてしまった。そんなことも知らなかったのか、と大変恥ずかしいのだが、わたしが樋口一葉という作家個人について初めて知ったことを以下にまとめると、大きなものは3つある。
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 ■本名について
 「樋口一葉」がペンネームであることは知っていたけれど、本名が「樋口夏子」ちゃんという可愛らしい名前であることすら知らなかった。なっちゃん……可愛いじゃないですか。どうでもいいけどわたしは、断然●●子という名に魅かれます。
 ■生涯について
 1872年(明治5年)生まれで、1896年(明治29年)に短い生涯を終えてしまったことも知らなかった。わずか24歳。死因は肺結核だそうだ。なんて気の毒な……。なお本舞台では、樋口一葉の『たけくらべ』を絶賛した森鴎外(=お医者さん。樋口一葉の10歳年上)が、腕利きのお医者さんを紹介してくれたことになってました。
 ■作家としての活動期
 一番わたしが驚いたのが、彼女のメジャー作品の大半は1894年12月から1896年2月までの14カ月間に集中して刊行されたものだそうで、その期間は「奇跡の14カ月」と言われているんだそうだ。マジか……全然知らなかった……。
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 おそらく、これらのことは国文学をちょっとでも勉強したことのある人には常識かもしれないけれど、わたしは何よりもあまりに若く亡くなり、そしてあまりに集中した作家生活だったことにかなり衝撃を受けた。
 で。今回の物語は、1891年(明治23年)、樋口夏子ちゃん(19歳)が入門してた歌塾「萩の舎」の内弟子生活から、新たな生活に踏み出そうとするあたりから始まる。この時既に、夏子ちゃんは父を亡くし、若干17歳で「戸主」になっている。つまり、一家の稼ぎ手であり、大きな義務と権限を持つ存在で、現代の世帯主なんかよりももっと重い。母と妹を養うのが義務であり、極めて重いプレッシャーを背負っている。本舞台では、そんな夏子ちゃんが「萩の舎」で出会った親友の伊藤夏子(この人も夏子、なので、この人は「いなつ」と呼ばれ、樋口夏子ちゃんは「ひなつ」と呼ばれる)と田邊龍子から、とある作家を紹介されるところから始まる。常にお金に困っていた樋口家は、「萩の舎」の内弟子としての給料ではとても妹の樋口くに、母の樋口たき、を養っていくことが出来ないため、「プロ小説家」になろうとしたわけだ。そしてその弟子入り先が、半井桃水(なからい とうすい)である。新聞記者でありながら、新聞小説も書いていた半井の元で、最初の修業を始めるのだが、ここでの経験が、どうやら決定的に樋口一葉を形作ったらしい。しかし、この半井という男は残念ながら若干のだめんず気質があり、第1幕は、イケメン半井に心惹かれながらも、半井の元を離れることを決意して、一人でバリバリ頑張るぞー! 行くぜ!! という威勢のいいところまでであった。
 ここまでの上演時間は1時間15分ぐらいだったと思う。そして15分ほどの休憩を経て、第2幕はとにかくお金に困っている樋口家が、夏子ちゃんの稼ぎだけではやっていけず、吉原の近くで荒物屋を開業したり、やっぱりそれではうるさくて集中できないので、店をたたんで引っ越したり、と執筆以外にもなにかと落ち着かない様子が描かれる。また、執筆の方は、「文学界」という雑誌に参加して経験を積んで、作家としての腕はどんどん上がっていく。そして亡くなる直前に出会った斎藤緑雨という小説家兼批評家との文学論争(?)が、おそらくはクライマックスだ。第2幕は上演時間1時間20分ほどだっただろうか。生の黒木華ちゃん体験はあっという間に終了を迎えてしまった。
 というわけで、以下、いろいろ思ったことを書いていこう。
 ■物語構成について
 ちょっとまず、うーむ? と思ったことは、なんとなく山場がないというか、比較的どんどんと話が進むので、盛り上がりが薄い。そういう意味では、劇的=ドラマチックではあまりない。運命の逆転のようなものもなく、いやあるんだけどごくあっさりしている。もちろんだからと言って面白くなかったかというとそんなことは全くなく、各役者の演技も確かで、もちろん、華ちゃんは抜群に良かった。
 ■黒木華ちゃんについて
 やっぱり、わたしは何度か書いているように、声フェチなんだと思う。華ちゃんの声が、わたしはどうも非常に好きなんだなと改めて感じた。今回は当然、ずっと和服、着物なわけだけど、所作もきっちり決まっていて、非常に美しかった。ちょっと笑わせるようなギャグシーンも、とても可愛らしい。やっばいな、マジ華ちゃんいいわ。
 ■競演陣について
 共演陣でわたしがこの人はいい、と思ったのが、やはり半井桃水を演じた平岳大氏と、樋口夏子ちゃんの妹、「樋口くに」を演じた朝倉あきさんだ。もう、平岳大氏は、平幹二郎の息子という看板は全く不要ですね。今回の舞台はたぶん、マイクナシの生声だったと思うのだが、岳大氏の声は明瞭に通るいい声だし、もちろんルックスもいいし、なにより堂々としていてカッコイイ。今回の芝居振りは非常に良かった。そういえば、NHK大河『真田丸』での武田勝頼役も、実に貫禄のある、強いけど悲しく儚い勝頼を演じてくれてましたね。それから朝倉あきさんは姉を支えるしっかり者としてとてもいい演技を見せてくれた。この人、ちょっと今後わたしは応援したいと思います。
 また、競演陣には一人、わたしが特別の思い入れのある人が出演していた。その名も、兼崎健太郎くん。何故わたしが彼に特別なものを感じるかというと、この人、かの『ミュージカル・テニスの王子様』で、王者・立海中学の真田副部長を演じてたのです。約10年近く前、わたしが『テニミュ』を10回ぐらい観に行ったことは以前書いた通りだが、中でもわたしは兼崎くん演じる真田副部長の持ち歌「風林火山」が大好きだったのです。しかも、兼崎くんは『テニミュ』キャストの中でもNo.1クラスに、異様に滑舌が良く、ああ、この人はすげえ訓練を重ねてるんだろうな、と当時から思っていた。なので、今回の再会は、わたしは本当に嬉しく思った。この10年、きっとサボらず常に研鑽を重ねてきたんだろうな、ということがひしひしと伝わる、見事な芝居振りでした。 
 ■音楽について
 今回、音楽として、舞台後方にピアノが置かれ、ピアニストが即興で生演奏する形であった。これはちょっと面白いと思った。
 ■終了後のトークショーについて
 実はわたしがおとといの公演チケットを取ったのは、終了後になんと山田洋次監督と、本舞台の主宰である永井愛さんのトークショーがあったからだ。どうやら、山田監督と永井さんは付き合いが長いようで、今回の舞台に華ちゃんを起用するにあたっては、永井さんが山田監督を通じて声をかけたんだそうだ。実のところ、本作は10年ぶり再演で、10年前の公演は、寺島しのぶさんが樋口一葉、筒井道隆氏が半井桃水を演じたそうです。このトークショーでは、結構、へえ~と思うことが聞けたけれど、もうちょっとだけ、司会進行には頑張ってほしかったな。20分ほどであっという間に終わってしまったのが残念。

 というわけで、結論。
 黒木華ちゃんは当面、わたしの大好き女優第一席として君臨するようです。今回の舞台は、もっといい席で見られたらもっと良かっただろうな……これから全国ツアーで回るそうなので、お近くの劇場へぜひ足をお運びください。わたしはさっそく、樋口一葉の作品を読み始めました。が、やっぱり「雅文調」は読むのが難しいね。やっと少し慣れてきたところです。あと、わたしの大好きな夏目漱石は、完全に同時代人なんだけど、漱石が作品を書くようになる頃にはもう、樋口一葉は亡くなっていたということも初めて知った。ああ、樋口一葉があと10年長生きしていたら、口語体の作品も書いていたかもしれないと思うと、本当に残念です。以上。

↓ まずはコイツから読み始めています。
たけくらべ (集英社文庫)
樋口 一葉
集英社
1993-12

 おとといの月曜日の夜に、『母と暮らせば』を観て大いに感動したわたしは、昨日はずっと、黒木華ちゃんの天然昭和フェイスに頭の中が占領されていたわけです。
 なので、昨日はさっさと帰って、WOWOWで録画したはずの『小さいおうち』を観よう、と思い、いざHDDの発掘作業をしてみたわけです。
 確かに録ったはず。それはたぶん間違いない。ので、まずはデッキのHDDから手を付けた。しかし、2TBの容量なのにあともう100GBぐらいしか残ってないことからも明らかなように、録っただけで観ていない映画がごっそり詰まっていて、30ページぐらいスクロールしてみないと一体どこにあるのかすらわからない状態であった。
 しかし、全ページチェックしても、ない。おかしい。次に、USB接続しているHDDは、3TBの容量で、こちらにも録画した映画を結構移してあるので、最初からせっせと探してみるも、やっぱりない。あれえ!? 嘘だろ、消しちゃったのか?  バカバカ!! オレのバカ!! というわけで、あきらめて、WOWOWのWebサイトで、次に放送があるのはいつなんだろう、つーか、また放送してくれるかしらん? と調べてみたら、来月、1回だけ放送されるようなので、とりあえず自宅PCのディスプレイに、「1/16:WOWOW:小さいおうち」と付箋を貼って、Googleカレンダーにも、予定を書き込んでみた。
 そこで、ふと、未整理の、Blu-ray DISKの山が目に入ったので、ひょっとしたら、BD-REに焼いたんだっけ? という気がしてきたので、中身のインデックスを書いていないDISKを片っ端からPCのドライブに突っ込んで、中身をチェックしてみた。わたしはたいてい、50GBのRE-DLに焼くので、それぞれのDISKは10本ぐらいは映画が入っている。そのDISKの山を、この際だから何が入っているか、ちゃんと書いておこうと、メモを取り始め、ああ、このDISKにはこんなの入ってら、あ、これ、観てないな、とか、延々と作業をしていたら、9枚目のDISK に、『小さいおうち』が入っているのを発見した。良かったー、消してなかった。さすがオレ、抜かりないぜ。と、60分ほどの作業を要したことを棚に上げて思うわたしは、もう、本当にダメな男だと思いました。
 というわけで、山田洋次監督作品『小さいおうち』を、今さらながら昨日初めて観たわけである。

 結論から言うと、やっぱり素晴らしい作品であった。物語・脚本・演出・そして役者陣の芝居ぶり。ほぼパーフェクトと言っていいような気がする。そして、この作品でもやはり、黒木華ちゃんの天然昭和フェイスは非常に美しく、そして可愛らしく、大変わたしとしては満足のいく作品であった。ヤバイ。どんどん華ちゃんが好きになってきたんですけど、どうしたらいいのでしょうか。
 物語は、詳しくはWikipediaの方を参照していただくとして、どうやら中島京子先生が直木賞を受賞した原作小説と、今回の映画版では、微妙に物語が違うようだ。
小さいおうち (文春文庫)
中島 京子
文藝春秋
2012-12-04

 わたしは残念ながら原作を読んでいないので、以下、あくまでも映画版の物語限定で記します。
 映画では、現代の平成の世と、戦前・戦中の昭和10年代とが入れ替わりながら物語は進む。冒頭は、とある老女のお葬式。その遺品整理中に、遺族の若者が老女の自叙伝を見つける。それは、自分が自叙伝でも書いたら? と勧めていたもので、映画はその自叙伝で描かれる昭和初期と、自叙伝執筆中の老女の生前の姿と、亡くなって以降と3つの時制で語られる。
 昭和10年代。タキは山形から住み込みの女中奉公のために東京へやって来て、とある小説家の娘が嫁いだ先の平井家に奉公することになる。平井家は比較的裕福で、新築したばかりの、赤い瓦屋根が可愛らしい小さなおうちに住んでいた。奥さん、時子は美しく聡明な女性で、タキを「タキちゃん」と呼び妹のようにかわいがってくれた素敵な奥さんだった。旦那はおもちゃ会社の常務で毎日を忙しく過ごしており、決して悪い奴ではないけれど、まあ昭和初期の男なので、家庭にはあまり興味がない。また、子どもも一人いて、小児まひにかかってしまうけれど、タキの懸命な看護で小学校に上がる頃にはすっかり元気ないい子に育っていた。
 そのような、いわば「家政婦は見た」的な平井家の生活が、平和に、そして楽しく過ぎていく。そしてある正月、旦那の会社に入社した、美大出身のデザイナー(?)が挨拶にやって来て、時子奥さまとそのデザイナーが出会い、次第にお互い魅かれて行き……というお話。

 やはり、この映画でも役者陣の芝居は本当に素晴らしい。
 筆頭に挙げたいのは、この作品では華ちゃんでなく、はやり時子奥さまを演じた松たか子ちゃんであろう。この人は本当に上手ですな。演技にかけては、現役最強と言っていいような気さえする。もちろん、エルサですっかりおなじみになったように、歌も、ミュージカルで鍛えた実力派だ。わたしは20年ぐらい前に、松たか子ちゃんが歌手としてCDを出し始めたころから彼女の声がすごく好きで、CDも持っていたほどだったのだが、歌はうまいけど、顔は微妙かな……と大変失礼なことを思っていた。のだが、どういうわけか、これまた10年ぐらい前、たぶん、山田洋次監督の『隠し剣、鬼の爪』を観て以来だと思うが、あれっ!? 松たか子って、こんな人だっけ? ちょっと可愛いんじゃね? つーかすげえ可愛いじゃんか!! と急に彼女の可愛さに目覚めた謎の過去がある。今ではすっかり大ファンなのだが、今回の時子奥さまの品のある所作や悩める表情、そしてタキちゃんにぶつける激情など、完璧だと言っていいほどお見事であった。
 そして、もちろん、本作でも華ちゃんこと黒木華さんはおそろしく可憐で、おそらくは日本全国の男全員が、タキちゃんに惚れることは確実であろうと思われる見事な芝居であった。いやあ、ホントにいい。今回の華ちゃんは、女中さんなので基本的に常にうつむき加減なのだが、時に見せる笑顔が最上級に素朴かつ魅力的である。また時に涙を流す姿は、誰しもが、どうしたの、大丈夫か? と思わず肩を抱きしめたくなるような、放っておけないオーラが放出されており、もうわたしは一緒に泣くしかない有様であった。
 まあ、これ以上書くと、我ながらキモイのでやめておきますが、この松たか子ちゃんと黒木華ちゃんの素晴らしい演技を劇場に観に行かなかった、そしてあまつさえ録画しておいたにもかかわらずさっさと見なかったわたしは、オレは本当に観る目がねえなあ、と絶望的な気持ちになりました。まったくもって映画オタを名乗る資格なしである。情けない。
 そのほかの役者陣に関しては、平成部分の老いたタキを演じた倍賞千恵子さんと、タキの妹の孫にあたる若者を演じた妻夫木聡くんの二人が素晴らしかったことを付け加えておこう。長年、寅さんの妹さくらを演じてきた倍賞さんは、山田洋次監督の信頼厚い役者さんだろうと思うが、やっぱり上手なのは間違いなく、非常に良かった。すっかりおばあちゃんとなった、かつての可憐なタキちゃんが、長年抱えてきた秘密。その想いから、長く生き過ぎたと涙を流す姿は、猛烈にわたしのハートを揺さぶるものだった。そして、平成の若者らしく調子のいい青年を演じた妻夫木くんも、何気におばちゃん思いのイイ奴で、悪くない。非常に良かったと思います。

 しかし、改めて思うのは、やはり山田洋次監督は、日本が誇る名監督である、という事実である。もちろん、そんなことは知ってるよ、お前が知らなかっただけだろうが!! と年配映画ファンに怒られてしまうのは確実だと思うが、一体、この事実は、どうしたら現代の若者に伝わるのだろうか? おそらくは、20代や30代の若者は、まったく山田洋次監督の作品に興味はなかろうと思うし、実際、興行はシニア中心である。もっともっと、若い人に見てもらいたいのだが……おととい観に行った『母と暮らせば』のように、若者を呼べるキャストを使っていくのが一番手っ取り早いのかな……。昨日も書いた通り、『母と暮らせば』には、おそらくは二宮くん目当ての若い女性客が結構入っていた。この『小さなおうち』の、時子奥さまと魅かれあうデザイナーが、吉岡秀隆ではなく、もっとイケメンだったらなあ……と思ってしまったわたしは、実は……ファンの方には大変申し訳ないのだが……吉岡くんがあまり好きではないのです。サーセン。まあ、とにかく、若者層が劇場へ来るようなキャストで、次回作を撮っていただきたい。と思うのだが、実はもう、山田監督の次回作は既に完成しちゃってるんだよな……↓これ。2016年3月公開『家族はつらいよ』。

 わたしはもう、心を入れ替えて、今後の山田洋次監督の作品は、ちゃんと劇場へ観に行くことにするが、はたしてこの『家族はつらいよ』が、若者に届くかどうか……難しいだろうなあ……もう、ずっと二宮くんを起用すればいいのに……!!
 
 というわけで、結論。
 『小さいおうち』は2014年の作品なので、ちょっと前の作品だが、もし観ていない人は是非、今からでも観てほしい。極めて上質な役者陣の芝居に没入していただきたいと思います。松たか子ちゃん、黒木華ちゃんがとにかく最高です。なお、松たか子ちゃん演ずる時子奥さまの旦那は片岡幸太郎氏が演じておりますので、歌舞伎ファンも是非!! 以上。

↓ この映画での松たか子ちゃんは、超可憐でけなげな女中さん。最強に可愛い方言遣い。この映画で惚れた。 ヤバいな……また観たくなってきた。今日もさっさと帰って、久しぶりに観るか……。
隠し剣 鬼の爪 [Blu-ray]
永瀬 正敏
SHOCHIKU Co.,Ltd.(SH)(D)
2010-12-23

 最初にまず告白しておきたいのだが、わたしはこれまで、山田洋次監督の作品をほとんど見ていない。もちろん、『男はつらいよ』は何本か見ているが、とりわけファンというわけでもないし(もちろん、観た寅さんは大変面白かった)、最近の作品も数本しか見ていない。なので、山田洋次監督作品と聞いて、よーし観に行くか、という気にはあまりならない男である。また、井上ひさし先生の芝居も著作も、実際のところほとんど観たことがないし読んだこともほとんどない。なので、わたしが昨日観てきた映画『母と暮せば』という作品が、井上ひさし先生による『父と暮らせば』という作品と対になっているなんてことは、全く知らなかったし、今も、それは別にどうでもいいことだと思っている。
 というわけで、映画や小説や芝居を愛してやまないオタク野郎のわたしであっても、上記のようにまるで山田洋次監督や井上ひさし先生について思い入れがないわけで、じゃあ、なんでまた『母と暮せば』を観に行こうと思ったかというと、理由は2つあって、ひとつは、主役の二宮和也くん、吉永小百合さん、そして黒木華(くろき・はる、と読む)の3人の芝居ぶりを観たかったのと、もう一つは、現実に年老いた母と暮らすわたしとしては、タイトルが非常に気になったからだ。そして実際に観て、あろうことが劇場で号泣するという醜態をさらす結果となったのである。大変お恥ずかしい限りである。

 わたしは観る前にストーリーを少し知って、ああ、これは大林宣彦監督の名作『異人たちとの夏』のようなお話かな、と思っていた。死んでしまった大切なあの人にもう一度会いたいと思う主人公が、幽霊となって現れたその人に出会うという物語は、実際のところ洋の東西を問わず結構数多く存在しているものだが、わたしとしては日本映画の中では『異人たちとの夏』という作品が一番好きである。まあ、若干『牡丹灯籠』も混じったテイストの不思議な映画だが、この作品では、当時、たぶん役者として初めて本格的に映画に出演した片岡鶴太郎さんが演じるお父さんが非常に素晴らしい。

 たいていの場合、人生の岐路にある主人公が、既に亡くなった大切な人の幽霊と出会って、再び生きる道を見つけ、最後は幽霊とお別れして終わるというのが王道パターンであろう。なので、本作『母と暮せば』もまた、そういうお話であろう、と勝手に思い込んで観に行ったのだが、半分正解で、半分全然違っていたのであった。いや、サーセン。半分も正解じゃないか。8割方想像と違ってました。
 まずもって、これまでの既存のお話と大きく違うのは、幽霊となって現れるのは、息子、である。父や母といった、「通常であれば先に亡くなった人」が幽霊となって会いに来るのではない。先に息子が亡くなっていて、母が一人遺されているという「普通ではない」状態である。それは舞台が1948年の長崎であることからも明らかなとおり、1945年8月の段階では長崎医科大学の学生だった息子は、投下されたプルトニウム爆弾によって、一瞬のうちに亡くなっているわけだ。その悲劇から3年が経ち、遺された母がやっとの思いで、息子の生存をあきらめるところから物語は始まる。何しろ遺体もないし遺留品もない。亡くなったことが信じられない母は、3年かかってやっと、息子の死を受け止めようとするわけであるが、3年目の命日に、墓前で、亡き息子の婚約者だった女性に、あきらめよう、と言うことで心の区切りをつける母。その日から、ひょっこりと息子は幽霊となって母の前に現れる。息子の幽霊は言う。
 「母さんは、いつまでもぼくのことをあきらめんから、なかなか出て来られんかったとさ」
 この、出現の動機も、原理?的なものも、最後まで説明はないが、まあ説明できるわけがないよね。幽霊なんだもの。母を慰めるために出てきたのか、単に現世に未練があって出てきたのか。それは、最後まで観た人がそれぞれに思えばいいことなので、まあ、詳しくは書きませんが、「あきらめてくれたからやっと出てこられた」というのは非常に面白い。
 そして出てきた息子の幽霊に、思わず母は聞く。「元気だった?」と。それに対して息子は答える。
 「なーに言ってるの母さん。ぼくは死んどるよ。相変わらずおとぼけやね」
 こんなやり取りは、たぶん誰にも経験があるのではなかろうか。久しぶりに会う人に、見るからに忙しそうでゲッソリしていて、明らかに元気じゃないのに、つい、「元気か?」と声をかけてしまうような。わたしはもう、この冒頭のシーンからすっかり物語に入り込んでしまった。この息子の幽霊は、生前からおしゃべりだったという性格のまま、幽霊なのにやたらとおしゃべりで、全く変わることがない。母を心配し、遺してしまった婚約者のことを想っている。婚約者の幸せを望みつつも、誰かの妻となることに素直に祝福できない。そりゃあそうだろうなと、わたしもすっかり主人公の気持ちと同化してしまう。戦後の厳しい時代を懸命に生きようとする母と婚約者。母からその苦労や自分のいなくなった世界の話を聞いて、「悲しくなって涙を流す」と姿が消えてしまう幽霊。こんな3人の芝居は、本当に素晴らしいものであった。

 この映画で、何がわたしをして号泣せしめたか。物語? 脚本? 演出? どれも間違いなくYESであろう。だが、おそらくはわたしのハートに直撃したのは、役者の演技そのものだ。二宮くん、吉永さん、華ちゃん、この3人の演技がものすごく素晴らしいのだ。二宮くんは、わたしが最も好きな監督No.1であるClint Eastwoodに認められた男である。おそらく、ジャニーズにおける演技王決定戦を開催したら、岡田准一くんと優勝を争うことになろう素晴らしい俳優だ。彼の素晴らしいところはその表情とセリフ回しであろう。何とも普通な、自然な表情にかけては、岡田くん以上かもしれない。そしてしゃべり方、話し方も、極めてナチュラルでいて、観ている者のハートに突き刺さるのは何故なんだろう。たぶん、脚本上のセリフではなくて、表情や声や話し方という、演技そのものにグッとくるのだとわたしは思う。岡田くんも、もちろんのこと素晴らしい俳優だが、彼の場合は役になりきる系と言えばいいのか、ナチュラルというより作りこみの結果なのではないかと思う。上手く言えないが、そういう点で非常に対照的だと思うのだが、二人とも最高級に素晴らしい役者であるのは間違いない。とにかく、二宮くんの芝居は必見であると言って良かろうと思う。
 母を演じる吉永さんは、正直なところ、いつもの吉永さんの芝居であるとも言えそうだが、今回は、そもそもの脚本が吉永さんを念頭に当て書きしたものらしいので当然かもしれないけれど、キャラクター的にはちょっと天然で可愛らしい女性、だけど、母としては芯が強く、慈愛に満ちているという、恐らくは吉永さんご本人そのままなんじゃないかという人物設定で、「戦後の、美しく老いていく母」そのもののように感じた。とりわけ、後半以降の吉永さんが弱っていく過程は、わたしも観ていて本当に、母さん大丈夫かよ……と心配になってくるほどで、ラストシーンはもう、ぐすんぐすんと鼻をすすらざるを得ないことになってしまったわけである。吉永さん主演の作品は、わたしは結構見ているつもりだが、泣かされたのは初めてである。
 そして婚約者を演じた黒木華(くどいようだが「はる」と読む)ちゃんだが、この女性はまあ、世に「昭和顔」と称せられるように、どこか懐かしい感じの正統派和風美女であると言って良かろう。わたしは前々から気にはなっていたのだが、きちんとこの人の演技を観るのはたぶん初めてだ。が、観ていてなるほどと思ったのは、まず顔の昭和テイストが非常にわたし好みであるのが一つ、そして身体つきも非常に昭和っぽいといえそうな気がする。腰から足のラインが、現代風に作られた(?)美しさではなく、自然な女性らしさと言えばいいのかな、とにかく人工的・技巧的なラインではなく、きわめて自然な体形だとわたしには強く感じられた。妙にウエストや手足が細かったり、やけに胸はでかいとか、何か努力や作意が働いた結果のラインではなく、いわば、ド天然の女性のラインなのだ。たぶん、わたしはそこにグッと来たのだと思う。もちろん顔も、ド天然である。スーパーに並べられた、規格に沿った見栄えの美しい野菜ではなく、まったくの天然モノ。それがどうやらわたしが黒木華という女優に感じる魅力なのだとわたしは了解することにした。声もいい。芝居ぶりも自然。極めて上物である。大変気に入った。
 わたしが今回、非常にグッと来たのは、華ちゃんが、主人公を亡くし、その魂とともにずっと一人で生きていく、それは私の運命なのだから、と母に告げるところで、母は「それは違う。運命なんかじゃあない。地震や天災で亡くなるのは、そりゃあ運命かもしれない。どうにもできないのだから。でも、浩二は原爆で死んだ。原爆は人の行いで、避けることができたはずのものなんだから。だから、運命なんて言ってあきらめないで。あなたは幸せになっていいのよ!!」的なこと(※正確なセリフは再現できてないと思います)を言って華ちゃんを諭す。このシーンでの吉永さんと華ちゃんは非常に良かったです。
 あともう一人、今回の作品でわたしが素晴らしいと感じたのは、『上海のおっちゃん』という役名で出てくる加藤健一氏である。この人は、演劇人でテレビや映画にはほぼ出ていない役者だが、わたしがこの人で一番記憶に残っているのは、中学生のころに観た映画『麻雀放浪記』における「女衒の達」というシブイ役である。若き日の真田広之や鹿賀丈史と戦う雀士としての演技が非常にカッコ良かったのだが、今回は27年ぶりの映画出演だそうだ。ひそかに母に恋心を抱いていて、せっせと闇物資を運んでくるちょっとお調子者のおっちゃんを、とても印象的に演じてくれている。

 というわけで、わたしは結構何も考えずに観に行った『母と暮せば』という作品だが、この作品が観る人すべてに涙を約束するかというと、これは全く断言できない。おそらくは、女性が観ると全く違う感想を抱くのではないかと思う。この作品は、明確に母と息子の物語である。なので、たいていの男は、吉永さん演じる母に、自分の母を重ねることだと思う。その実際の母が年老いていれば、相当この物語にグッとくるとは思う。
 だが、女性が観たらどう思うか? これはかなり微妙かもしれない。例えば、華ちゃん演じる婚約者に対しても、女性目線であれば、わたしのようにコロッと簡単に好感を抱くかどうかはちょっと怪しい。また、幽霊である息子が、婚約者の女性に対してある種の執着を見せるのも、男ならそうだよなと思っても、女性からすればかなり、そりゃ違うと思うかもしれない。わたしが尊敬する、とある女性は、「女は過去なんて忘れるものよ。ごくあっさりね。先のことしか見ない生き物と思っていいわ」と仰っていたので、そうだとすれば、息子の婚約者に対する想いは、最終的には生きている婚約者の幸せを最優先に考えるものの、ちょっと引くかもしれないとは思った。なので、全女性に対してオススメかというと、正直なところ、わたしは良くわからんです。


 というわけで、結論。
 『母と暮せば』は、男に対しては強くオススメできる。特に、自分の母が年々老いてきて心配な男は観るべし、である。そして女性は……まあ、二宮くんの大ファンは必見ということで。結構若い女性客が多かったけど、まあ二宮くん目当てなんでしょうな。それはそれでアリです。
 あと、わたしとしては、この作品を「演劇」で観たいと強く希望する。
 これは、生の役者の生の演技で、ぜひとも見てみたい。場面転換も、登場人物も絞れるので、非常に舞台向きだと思う。そして、舞台化は、絶対のこの3人のキャストはそのままでお願いしたい。二宮くん、吉永さん、黒木華ちゃん。この3人でないと絶対ダメというか、この3人以外では観たくないかも……。こまつ座で実現してくれないかな……あ、こまつ座で実現したら、役者が変わっちゃうか。うーん。ジャニーさん、よろしくお願いします!! 以上。

↓ というわけで俄然、山田洋次監督作品および黒木華ちゃんが観たくなってきたので、コイツを見てみようと思います。たしか、WOWOWで録画して、HDDの中に埋もれているはずなので……発掘してみるか。
小さいおうち Blu-ray
松たか子
松竹
2014-08-08
 

 というわけで、月曜日は毎週恒例の週末興行収入データです。
 この週末は、 邦画で新作が3つ、東宝の『orange』、松竹の『母と暮らせば』、東映の『仮面ライダー』と邦画大手3社のお正月作品が出そろった。1位は見事に『orange』が獲得。なお、わたしも、今日は14日、トーフォーの日という事で、帰りに『母と暮らせば』を1100円で観て号泣してきたが、それは明日詳しく書くことにして、まずはランキングである。

 いつも通り、興行通信社による大本営発表を見てみよう。
 1位:『orange』 が3.1億を稼ぐ。まずまずのスタートで、これなら15億は超えそうだ。原作のどこまで映画化したのか、気になるところではあるが、今のところ観に行く気はナシ。
 2位:『007』が累計で15億を突破したそうです。順調な推移ですな。
 3位:『母と暮らせば』が2.4億稼いで3位。恥ずかしながら泣いた。詳しくは明日書きます。山田監督前作の『小さいおうち』が1.2億スタートだったので、倍の興収を稼いだ。最終で12.6億だったので、15億以上は固そう。20億まで伸びて欲しい。やっぱり、二宮くんは抜群にうまかった。
 4位:『仮面ライダーゴースト 超MOVIE大戦ジェネシス』 2.2億スタート。これは、夏ライダー(2.1億)、春ライダー(1.8億)、去年の年末ライダー(2.0億)の各公開週末数字よりいい。このところ数字が落ちる一方であったが、ほんのちょっとだけ持ち直している。
 5位:『I LOVE スヌーピー』は累計で3.7億ほど。これは結構悪くない数字かも。
 6位:『杉原千畝』は累計4.3億ほど。うーん、10億は厳しいか?
 7位:『海難1890』は苦戦か、累計2.9億ほど。良くても6~7億程度か?
 8位:『ガールズ&パンツァー』が累計5億突破。たいしたもんだ。興味ないけど。
 9位:『映画 ハイスピード』は累計で2億をチョイ越えか。興味なし。
 10位:『リトルプリンス 星の王子さま』が累計5億突破。頑張った数字だと思うな。
 で、この後に『レインツリーの国』が11位で累計4.4億と厳しい展開。『MOZU』はやっと11億を超えたぐらい、『グラスホッパー』も9.5億ほどとまだ10億に届かず。もう一声頑張ってくれ……!!

 というわけで、今週末は以上のような結果となったが、今週金曜日にはいよいよ『STARWARS』がやって来る。土日だけの2日間で、 現状のチケットの販売状況からすると、まあ10億は余裕で超えていくと思っているが、わたしがデータをせっせと記録し始めた2010年以降で、公開初週の数字のTOP10を挙げておくと、以下のような作品になる。
 1位:『妖怪ウォッチ』:16.2億スタート→最終90億チョイ(?)。2014年12月公開。
 2位:『ONE PIECE Z』:13.7億スタート→最終68.7億。2012年12月公開。
 3位:『アリス・イン・ワンダーランド』:13.1億スタート→最終118億。2010年4月公開。
 4位:『ハリーポッター』の最終作:13.0億スタート→最終96.7億。2011年7月公開。
 5位:『パイレーツ・オブ・カリビアン生命の泉』:12.0億スタート→最終88.7億。2011年5月公開。
 6位:『ヱヴァンゲリオン:Q』:11.3億スタート→最終53億。2012年11月公開
 7位:『バイオハザードIV』:11.1億スタート→最終47億。2010年9月公開。
 8位:『トイ・ストーリー3』:9.7億スタート→最終108億。2010年7月公開。
 9位:『踊る大捜査線3』:9.7億スタート→最終73.1億。2010年7月公開。
 10位:『風立ちぬ』:9.6億スタート→最終120.2億。2013年7月公開。
 なお、最終254.8億まで伸びた『アナ雪』は、7.6億スタートだった。手元に記録が残ってないが、確か2009年12月公開の『アバター』(最終156億)も、公開週末は10億行ってなかったと思う。
 このデータから傾向を読み取るとすると、初動に偏ってしまって、その後はあまり伸びない作品もあると。例えば上記では、6位の『ヱヴァQ』などはその典型であろうし、7位の『バイオIV』も極端な初動型と言って良かろうと思う。まあ、初動10億を超えたら、最低でも累計で50億は超えるだろうし、うまく行けば100億にも届くと。ただ、やはり『アナ』や『トイスト3』『風立ちぬ』のように、100億を超えるために絶対な必要な要素は、ファミリー層の取り込みだ。
 現時点で、『STARWARS』にワクワクしているのは、確実にわたしのようなおっさん層がメインである。なので、問題は、盛り上がっているおっさんが、きっちり家族に『STARWARS』教育をしているかどうかにかかっている。つまり、おっさんがきちんと家族を、具体的には子供を連れていくかどうか、がカギであろう。実のところ、現在30代前半から10代中盤の、いわゆる若者層は、おそらく『STARWARS』にそれほど思い入れはないはずだ。事実、わたしの周りの女性たちも、『STARWARS』をすべて観て、今回ももちろん観に行くと言っているのはごく少数だ。なので、どのような興行成績となるかは非常に興味がある。間違っても80億とか70億とか、半端な数字にはならないと思うが、100億を優に超えるかどうかは、ちょっと今のところ想像はつかない。
 なお、新三部作は、『Ep.I』が配給収入で78億(≒興行収入換算で倍、とすれば150億)、『Ep.II』が興行収入 93.5億、『Ep.II』で興行収入91.7億である。今回の作品としては、『Ep.I』の150億程度が目標値であろうか。当然100億以上と関係者たちは考えているはずだが、果たして楽勝で100億に達するのか、90億程度で終わってしまうのか、おっさんたちの動向にかかっていると言っても過言ではなかろう。
 もちろん、内容も重要だ。あまり面白くないなんて口コミが広がったら、確実に客足は遠のいてしまう。ただでさえ、子ども映画的には『妖怪ウォッチ』という伸び盛りの作品が競合している中、おっさん客までも来なくなったら相当厳しいことになるのは間違いない。まあ、監督のJJは、分かっている男だと信じているので、余裕で100億を超えることを期待したい。おっさんたちがどのくらいリピートで観に行くかも、大きく影響するだろう。わたしは、とりあえず12/18(金)の初回上映は地元で見て、その後、DOLBY Atmos版とIMAX版を観に行ってしまうような気がしているが、普通のおっさんは1回見れば十分だろうし、うーん、わからないね、どこまで伸びるか。
 まあ、いずれにせよ、あと4日。楽しみに金曜日を待つことにしよう。

 というわけで、結論。
 12月2週目の興行収入ランキングは、『orange』の1位スタートとなった。来週は『STARWARS』と『妖怪ウォッチ』が公開となり、まあ確実にどちらかが1位であろう。現状、既に土日のチケットまでも完売に近い『STARWARS』が勝つとは思うが、一方で、その状況下で『妖怪』がどれだけ稼ぐかについても見ものである。去年の16億はちょっと難しいとしても、10億近いスタートが切れるかどうか。こちらも楽しみにしていよう。以上。

↓ さあ、あと実質3日。準備は万全ですか?
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20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
2015-11-13

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