以前ちょっとだけ紹介した、週刊少年チャンピオン連載漫画、『スメラギ・ドレッサーズ』の単行本が発売になったので、応援のために買ってみた。電子ですが。

 あらためて第1話から読んでみると、うーん、なんというか、頑張れ!! という感じだろうか。 
 お話については、秋田書店公式Webサイトに第1話の試し読みがあるので、そちらを読んでもらった方が早かろう。主人公はとある高校の2年2組所属、風紀委員長の三ノ宮かなで。超・ド真面目でお堅い性格なので、周囲から敬遠されている、気の毒なぼっち少女である。そんな友達のいない彼女の元に、ある日、謎の生命体(?)「てらす子」が施設(?)と呼ばれるところから逃げてやってきた。その動機は、外の世界を見たい、友達が欲しい、というもので、 かなではそのてらす子と友達になる。だが、その「施設」は、悪の秘密結社「ツクヨミ」というものだった。
 ちなみに、ここまで開始から9ページ。そして、ツクヨミが、施設から脱走したてらす子を探して連れ戻すためにかなでの高校に乗り込んでくる。 校舎を破壊し、てらす子を探すツクヨミからの刺客に、かなでは勇気を振り絞って震えながら立ちはだかるが、その時、てらす子が施設からかっぱらってきたアイテムで、「スメラギ・ドレッサーズ」に変身するのであった――とまあ、そういう話である。
 この漫画の、とりあえずのポイントは、その「スメラギ・ドレッサーズ」に変身する過程であろう。
 1)まず、アイテムを手に取って「ドレスチェンジ・スタンバイ」と発声すること。
 2)次に現れる「ドレス・ルーム」で「ドレス」に「着替える」こと。
 なのだが、ここにも妙なルールがあって、
 1)「ドレス・ルーム」は、最初は曇りガラスだけどだんだん透明に透ける
 2)20秒で「ドレスルーム」は開く
 3)着替え中(ドレスルーム)はあらゆる攻撃が効かない
 4)着替え終わったら、「スメラギドレッサーかなで!! サクラドライブ!!」と名乗らないといけない。
 というもので、公衆の面前で着替えないといけない、しかも20秒以内、ということで、当然、最初は着替え中にドレスルームが開いてしまって、いや~ん!! な展開になるわけだ。それでも着替えを続けて、ちゃんとドレスを着ないといけないわけで、オーバータイムが増えるごとにドレスの持つ力も減っていく。なので、20秒以内に着替えが完了すれば、ドレスの力を100%使えるが、なかなかそうもいかず、苦戦する、みたいな展開が多い。
 わたしは、この設定は非常に面白いと思った。なぜならわたしは「仮面ライダー」が大好きだからだ。まさしく、ここ数年の平成ライダー的な始まりである。良く、なんでライダーの変身中は攻撃を受けないの、とか、変身完了時にいちいち名前を名乗る必要あるの、というツッコミを受ける「仮面ライダー」であるが、この漫画では、一応、そういうルールなの!! という説明がなされているのも興味深い、つーか、ちょっと笑える。なので、わたしは連載開始時から、これは面白いかも、という予感を抱いて、これまで応援しているのだが、どうにも、うーーん、と唸ってしまうポイントがいくつもあって、周囲の人々に、これ絶対面白いよ!! とお勧めできないでいる。もちろん同じチャンピオンの『鮫島』や『ペダル』については、相当周りに読ませてファンを増やしているのだが、これはちょっとどうなんだと、まだ微妙な躊躇が残ってしまう。

 まず第一に、絵柄である。
 以前も書いた通り、悪くないと思う。女子はとても可愛らしいし、ある意味重要な下着姿中心のお色気シーンも、結構悪くない。桂正和先生のレベルまでぜひ極めていただきたい。しかし、だ。絵柄については2つ問題点がある。まず第一に、とにかく読みにくい点である。基本的に線にメリハリがないこと、そして線が多いこと、による弊害であろうと思う。どうやら作者の松本先生は、新人漫画賞出身で、初連載漫画のようなので、まだ経験が足りないからなのかもしれないが、基本的なスキルは非常にしっかりしていると思うので、今後もっともっと上手に「漫画」の絵を描けるようになるとは思う。どうだろう、この松本先生はデジタル作画かな……手描きではないのではないのかな。カラーの着色は明らかにデータだろうけど、本編もフルデジタルかな。デジタルを否定するつもりは全くないが、やっぱり手描き原稿の熱は感じられない。もうちょっとメリハリを持って、線を整理すればいいと思うのだが……。そして絵柄のもう一つの問題点は、キャラの頭身であろう。やけに顔がデカイ・体が小さい、という絵柄は、可愛らしいけれど、どうにも一枚絵、イラストっぽく見える。ひょっとしたら松本先生はイラストレーターとしてのキャリアの方が長いのではなかろうか? 頭身に関しては場面場面で結構変わることもあって、なんというか若干落ち着かないのも気になるところではある。

 で、次に物語と、演出・漫画力的な部分である。
 まずもって、とにかくセリフが多いのは、読みにくさに拍車をかけていると思う。ある意味致命的なのだが、なんとかならないものか……。最初の数回は、いろいろな設定紹介があってやむ無しなのかもしれないけれど、もっと説明を放置して、だんだん分かってきても良さそうなのだが、これはあれか、設定を詰め込みすぎたってことか? いや、そうでもないよね……。そうなるとやはり構成力・漫画ネーム力の問題だろうなあ。言ってみれば、どうもラノベっぽいのだ。もうちょっとネーム力の向上が望まれると思うのだが、絵でもそうだけれど、もうちょっと省略というか、線も物語も、「全部描かなくていい」のではないかしら。なんとなく、あれもこれも的な感じを受ける。
  物語自体も、展開としては王道の仮面ライダー展開になって来ていて、特に文句はないけれど、まあ、ライダーファンとしては、やはり、
 a)別フォーム・強化フォームの登場と使い分け
 b)「2号ライダー」の登場までのいきさつ
 c)前半敵なんだけど後半味方になる強いキャラ
 d)敵側の組織とその目的
 が重要になると思う。現在、連載では第21話まで進んでおり、すでに、a)~c)はクリアされている、が、いまだにd)敵側組織とその目的がイマイチ良くわからない。なので、実際のことろなんでまた主人公のかなでちゃんがここまでえらい目に遭うのか、どうもピンと来ないのである。おそらくはもっと、「てらす子」が主体的に動かないといけなのではなかろうか……。いつまでもオドオドしてちゃだめだと思うな。敵の目的も、「世界征服」であることは第1話で既に語られているけどさ、あの……すみませんが、もうちょっと具体的に教えていただけないでしょうか。

 というわけで、結論。
 なんだか文句ばかりつけてしまったが、わたしはかなり期待して応援しているので、ぜひとも、もっともっと面白い作品にしていただきたい。それだけのポテンシャルは十分に秘めていると思います。2巻も買うことを約束します。

↓ ヒーロー大好き桂正和先生の、ド・シリアス・ヒーロー(?)漫画。久しぶりに読んでみるか……。