先日の夜、布団に入ってとある小説を読んでいたところ、元部下のYくんから、ぽろり~ん、とSKYPEメッセージが来た。とあるURLとともに曰く、「パン屋の漫画です。結構面白い」とのことであった。
 なんでそんなメッセージをくれたかと言うと、元々Y君はわたしよりも数倍漫画を読んでいる男であり、かつ、面白い作品があるとせっせとわたしに教えてくれているのだが、本作に限って言うと、わたしがいつも、「あーあ……パン屋になりてぇなあ……」とよくぼやくからである。
 わたしは結構マジメというか本気でベーカリー・カフェの経営を考えており、いつか実現して見せるぜ、と思ってはいるのものの、いかんせんパン知識がまったく乏しい男である。わたしは単純に、焼きたてのパンの香りと淹れたてのコーヒーの香りは、幸せの香りだと本気で思っているので、店をやりたいと思ってはいるのだが、肝心のパンについてはまるでド素人である。 まあ、本気だったらさっさと学校にでも通って勉強&技能を身に付けろ、ではあるのだが、そこに至らないということは、わたしはまだ本気ではないということなのかもしれない。情けなし。
 というわけで、Y君からのメッセージを受信して3分後には電子書籍版を購入完了し、読んだ漫画がこちらである。スクエニのWebサイトでは、第1話の立ち読みも出来るみたいですな。
聖樹のパン(1) (ヤングガンガンコミックス)
山花 典之
スクウェア・エニックス
2016-04-25

聖樹のパン (2) (ヤングガンガンコミックス)
山花 典之
スクウェア・エニックス
2016-10-25

 本誌を買って読んだことがないので知らないが、どうやらヤング・ガンガンに連載しているらしい作品で、そのタイトルを『聖樹のパン』という。結論から言うと、わたしとしては非常に面白かった。とにかく、パンに関する知識を相当わたしに教えてくれる内容になっており、これは大変イイじゃないか、と感じた次第である。
 どんなお話か、ごく簡単にまとめると……
 舞台は北海道の小樽。ベーカリー・ペンションを家族で経営する姉妹が、父が倒れたことで肝心のベーカリー部門が営業できず、パン職人を募集するところから物語は始まる。そして、父の旧知のパン職人(故人)の息子が東京からやって来て、姉妹と仲良くやりつつも 、亡くした父の焼いていたパンの味を求めて切磋琢磨する――的なお話である。
 で、各キャラクターは、以下のような感じです。
 ◆ほしの聖樹(まさき):22歳。東京からやってきた。幼少期に亡くした父はある意味伝説的パン職人。聖樹自身も東京でパン学校に通って、一時パン職人として仕事もしていたが、どうにも亡き父の名前が大きく、大人には「あのほしの君の息子か!」と注目され、同級生・同僚には、「ちっ!親の七光りが!」といじめられ、ということがあって、すっかり人間不信で引きこもっていた若干気弱な青年。母の勧めや、北海道に住む父の古い友人(=姉妹の父)からの誘いもあり、とりあえず小樽にやってきた。そして小樽で出会った善良な人たちに囲まれ、パン道精進のために一生懸命努力中。「人に生きる力を与えるパン」を作るのが目標。そして、結果的に、異常にモテる。出てくる女子キャラすべて(小学生から老女まで)に好意を持たれている。特にイケメンではないが、そのパン道への情熱と優しさゆえ、みたい。
  ◆雪森羽咲(うさぎ):28歳。美人&ナイスBODY。ファンの常連客の男がいっぱいいる。ペンション雪の森の支配人。聖樹のパン職人としての腕を信頼して雇うことに。聖樹のことを可愛い男の子と思っていて、やたらとモテる聖樹目当てにやって来る女性たちにちょっとした嫉妬を感じてしまう。
 ◆雪森桔音(きつね):?歳。羽咲の妹。ペンション森の雪のシェフ。料理学校出身の料理人。若干男らしいサバサバ系クール美人。聖樹のパン職人としての腕を認めている。姉の羽咲を「エロカワ」女子と表現し、時折聖樹が羽咲の無意識のお色気にどぎまぎするのを見て楽しんでいる。
 ◆雪森徳三:?歳。姉妹の父。2カ月前に過労?で倒れて入院。ただし、(1)巻の後半では退院するも、せっかく若い力でペンションを何とかしようと頑張っているため、家には戻らず独自になにやら新しいことを始めようとしている。パン職人としての腕は確か。聖樹の父とは古い付き合いがあったらしい。 
 とまあ、こういう聖樹と姉妹というレギュラーキャラを中心に、毎話ゲストキャラが難問?を持ち掛け、それに聖樹がパンで応える、という展開である。ちなみに、聖樹のパンを食べると、作中のキャラクターは「美味しい……まるでお母さんに抱かれているみたい……」のような幸せな妄想に浸るのがちょっとお約束なのだが、これはジャンプ連載中の『食戟のソーマ』のお約束の「おはだけ」に似てますね。まあ、『ソーマ』の場合は全裸でチョイエロ妄想シーンだけど、こちらの『聖樹のパン』は、服は破れませんw
 そしてこの漫画のもう一つの特徴は、毎話、聖樹のパン知識の説明がすごく、ある意味専門的で文字量も多い点であろうだ。これを読んでいると、聖樹の作るパンは一体どんな味なんだろうと妄想が沸くし、ホント、食ってみてえ!と思わざるを得ない。一部ではこの漫画は夜読んではダメ、まさしく飯テロ、とさえ言われているようだが、ま、わたしは夜読んでも全然平気でした。そもそも、味オンチで子供舌でジャンクフード好きなわたしは、果たしてうまいパンを作れるのだろうかと、そっちの方が実に心配である。
 わたしは、この漫画を読んでいて、北海道でパン屋さん……という連想から、この映画を思い出した。

 これは、わたしが日本人の芸能人で最も愛する原田知世様主演の、『しあわせのパン』という作品だ。詳しくは説明しないけれど、まあ、はっきり言ってちょっと狙いすぎというか現実離れしたおとぎ話めいた空気感が若干鼻につくけれど、知世様は最高だし、悔しいというかうらやましいというか、大泉洋氏の演技もとても良く、実に温かい映画である。
 漫画『聖樹のパン』という作品は、この映画とは全然違っていて、もっと現実的であり、商売としてのパン作りの方がメインであるため、もっとシビアな部分が多い。しかし、北海道でパン屋というのは、わたしにとってすさまじく憧れるもので、両作共にとてもわたしは気に入っている。
 しかし、やっぱり焼きたてのパンの香りと、淹れたてのコーヒーの香りって……これ以上に幸せをもたらすものは、そうそうないんじゃないかという気がしますね。わたしはパンは焼けないけれど、会社で毎朝、コーヒーを淹れるのが日課なのだが、コーヒー道もなかなか奥が深いというか、一筋縄ではいかないですな。もう何年もコーヒーを淹れ続けているけれど、こ、これだ―――!! という納得できる美味いコーヒーを淹れるにはまだまだ精進が必要のようです。パン作りはもっと難しいんだろうなあ……オレ……いつか、パン屋になるんだ……と寝言をほざいているうちは、ダメでしょうな。JOJO風に言うと、「オレはパン屋になるッ!!」なんて決意表明は口にする必要がなく、「オレはパン屋だッ!!」と自信をもって言うのが男ってことですな。まずは決意を固め、そしてとっとと研究に入るべきかもな、もうそろそろ……。

 というわけで、短いけどさっさと結論。
 教えてもらって読んでみた漫画、『聖樹のパン』という作品は、パン屋になりてえなあ、と日頃ぼやくわたしにはかなり楽しめた作品であった。そしてこの漫画は、意外にかなり高度なパン知識もわたしに授けてくれ、その点も大変良かったと思う。でも、普通の人にはどうだろう、ちょっと長いし専門的すぎと思う人もいるかも……。しかし、ホント、焼きたてのパンの香りはなんであんなに、幸せのイメージをもたらすんだろうか。そして、職人としては、自分が作ったパンをうまそうに食ってくれたら、そりゃあもう最高でしょうな。ちきしょう……さっさとそっちに進む決断しろ!オレ!! 以上。

↓ 知世様は永遠にわたしの女神です。誰がなんと言おうと、断じて変わらないす。