だいぶ前に、(1)巻を買ってみて、おお、これは面白いと思っていた漫画が、いつのまにか単行本の(3)巻まで出ていたので、まとめて買ってきた。ので、(1)~(3)巻をまとめて紹介しよう。タイトルは『闘獣士』。週刊少年サンデーに不定期掲載される作品で、いつのまにか掲載されたりコミックス単行本が出たりするので、わたしとしてはちょっと困るのだが、そもそも、この(3)巻で完結したのかも良くわからない。どうなんだろう?? お話的にはきれいに区切りが良いところで終わっているが、続きもあり得る感じであるし、ここで終わりと言われても、そうですか、という気もする。 ああ、今、小学館のサイトを見たら、【完結】となっているからこれで終わりっぽいですな。※追記:終わってませんでした。もう(4)巻も発売になっており、ちゃんと話は続いてました。これまた泣ける!小学館の嘘つき!

 この物語は、亜人類やドラゴンのいるちょっと不思議な帝政ローマ時代を舞台として、グラディエーターとして戦う奴隷の少年と、その少年を育て鍛えた「翼竜族<ワイバーン>」の異種親子の物語である。今調べてみたら、なんと(1)巻は、版元の小学館のコミックスサイトで冒頭45Pぐらいまで試し読みができるので、そちらを見てもらった方がいいかも。非常に気合の入った、強い線と描き込みの美しい力作で、実際面白いので、超オススメである。
 (1)巻では、翼竜族<ワイバーン>の【デュランダル】と、奴隷剣闘士【フィン】のお話と、その話の前日譚的な、別の<人間とミノタウロスという異種兄弟>の話から成っている。これがまた泣かせるお話で、非常にいい。
 (2)巻と(3)巻は長い続き物の話で、3人の少年が、一人の幼馴染の少女を救うお話。その3人の少年を鍛えるのが、(1)巻の主人公のフィンで、これまた泣ける、いいお話。恐ろしくカッコ良く、フィンやデュランダルの登場シーンなどはバッチリ決まって、とても爽快感もある。
 ただ、実際のところお話そのものはありがちなものであり、どこかで聞いたような話といえば否定できない。だが、柿崎先生の描くビジュアルは極めて強く美しいもので、オンリーワンの才能と言って良いだろうと思う。
 著者の柿崎正澄先生は、わたしが知ったのはたしか、週刊ヤングマガジンに連載されていた『GREEN BLOOD』という作品だったと思うが、非常に力の入った気合のこもる絵で、物語も極めて骨太で非常に好きだった作家である。おっそろしく渋く、カッコイイ。
 しかし、わたしがとにかく残念だと思うことは、これだけしっかりとした絵が描けるにも関わらず、実際のところ、それほど売れていないことだ。おそらくは、『GREEN BLOOD』も打ち切りであったのだと思う。終盤は非常に駆け足になってしまって本当に残念に思ったものだ。
 このような、良質の作品は、残念ながら世にはものすごい数埋もれていて、実にもったいないのだが、果たしてわたしが営業や編集で携わっていたらもっと売れていたか、というと、まったくもって自信はない。ただ、とにかくもったいない。こうした才能をなんとかもっともっと、売り出せないものだろうか。今のわたしは、こうしてインターネッツという銀河の片隅でつぶやくことしかできないけれど、ほんの少しでも、柿崎先生を知る人間が増えたら、それ以上の喜びはない。

 というわけで、今日は短いけど結論。
 柿崎正澄先生による、『闘獣士―ベスティアリウス』は、非常に高い画力で描かれた、大変クオリティの高い漫画である。ので、最近なんか面白い漫画がないかな~と思っている人は、とりあえず試し読みを読んでみて、気に入ったらぜひ買ってください。以上。

↓ 柿崎先生の別の作品。柿崎先生の一番有名な作品は、全22巻まで連載が続いた『RAINBOW』だと思うけれど、あえてこちらをオススメ。やたらとカッコいい。