宝塚歌劇を愛するわたしであるが、星組を一番応援しているわけで、実際のところ、他の組に対しては若干テンションは通常というか、それほど熱狂的ではない。一応可能な限り全組の公演を楽しんでいるものの、去年暮れの雪組公演はチケットが取れず、見逃してしまった。そして年が明けて東京宝塚劇場では花組公演『雪華抄/金色の砂漠』が始まったのだが、今回はチケットを得ることができたので本日の15時半の回に馳せ参じたわけである。
  花組と言えば、今や最古参TOPスターとなってしまった明日海りおさん(通称:みりおちゃん)が率いており、円熟期にあると言っていいような気がする。いつまでみりお政権が続くかわからないけれど、この度、今回の作品をもって相手役の花乃まりあちゃん(通称:かのちゃん)が退団することとなった。ここ数年、娘役にも興味の出てきたわたしとしては、かのちゃんはちょっと癖のある顔立ちだけれど、間違いなくかわいいし、TOP娘役としてどんどん歌も芝居も良くなってきただけに、大変淋しい限りである。わたしはとくにかのちゃんの声が好きで、とりわけ気の強い下町娘的なキャラが大好きなのだが、今回は王女ということで、実に激しい役であった。今日は、もうずっと、かのちゃんを双眼鏡で見つめ、かのちゃんの最後の舞台を見守ってきたのである。そして結論から言うと、超最高でした。かのちゃん、君は本当に成長したと思うよ。本当に素晴らしかったぜ。

 今回の2本立ては、珍しくショーが先にある。しかも和物のショーで、いわゆる「チョンパ」、すなわち、暗転から拍子木がチョーーーンと鳴って照明がパッと付くと、キャスト全員が舞台に揃っているという開幕である。まあとにかく絢爛で華やかなショーだ。このショーでは、やっぱり3番手の柚香光ちゃん(通称:れいちゃん)の美しさが際立ってましたね。当然前々から、その恐ろしく小さい顔、恐ろしく細く長い手足など、れいちゃんの美しさは目立っていたわけだが、今日じっくり見て、改めてこの人は凄いと思った。今日、やけにわたしの目を引いたのは、手の、指先まで行き届いた所作の美しさだ。和モノということで、とりわけその指先まで神経が通っている美しさは際立っていたと思う。踊りのキレもいい。やっぱりこの人の魅力は顔だけじゃねえ、人気が高いだけはある、と納得の舞であったと思う。本当は、わたしは星組推しとして、元星組で花組へ異動になった2番手の芹香斗亜ちゃん(通称:キキちゃん)の方を応援したいのだが、指先までの所作の美しさでは、残念ながられいちゃんの方が上か、と若干悔しく思った。
 そして、後半は芝居『金色の砂漠』である。こちらは、全く予習していなかったので、そのストーリーの激しさに驚くこととなった。すっげえお話で、マジびっくりしたよ。そしてこちらの芝居では、とにかくかのちゃんとキキちゃんが素晴らしかった。ちょっとだけキャラ紹介しておこう。
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 ◆ギィ
 演じたのは当然みりおちゃん。砂漠の王国(?)の第1王女に仕える奴隷。奴隷の身ながら第1王女を愛している。実は前王の息子だが、本人はそのことを知らず、物語の後半にその秘密が明かされる。そして復讐者となって現王を弑し、タルハーミネの前に再び現れる。
 ◆タルハーミネ
 演じたのはかのちゃん。第1王女。ギィを使役するが、彼女もまた本当はギィが大好き。しかし、誇り高すぎてギィへの愛よりも王国の利益を取ることに。そして友好を結ぼうとする国の王子の求婚に応じ、ギィに死罪を通告する。そして後半、復讐者となって再び現れたギィに対して、彼女が取った行動は――というラストが見どころ。
 ◆ジャー
 演じたのはキキちゃん。第2王女に仕える奴隷。第2王女はジャーが大好きで、お互い相思相愛の二人。なので、第2王女は国のためとはいえ、異国の男からの求婚を受けたくないけれど、ジャーに諭されて、求婚を受けることに。そしてジャーも、変わらず仕える。後半、実は彼はギィの弟で、彼もまた前王の息子であることが判明するが、兄であるギィについて行かず、愛する第2王女の元を離れず王国に残る。
 ◆テオドロス
 演じたのはれいちゃん。タルハーミネに求婚する、友好国の王子。ギィを嫌っているわけではないが、常に付き従う様子に戸惑う。悪い奴ではない。ギィとタルハーミネが実は魅かれあっていることに(たぶん)気付いている。そして復讐者となって現れたギィの出した条件をあっさり飲み、故郷へ帰っちゃう。
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 というわけで、お話は奴隷と王女様のお話で、ギィも王女様もかなり激しい性格で、お互い大好きなのに誇りや立場が邪魔して結ばれず、最終的には二人ともに破滅する悲劇的なお話である。
 もう何度でもいうが、わたしとしてはかのちゃんの芝居が本当に素晴らしかったと思う。前半のギィを愛しながらも奴隷扱いし、ついに結ばれるも王の前で奴隷を死刑に処すことを宣言せざるを得なくなるくだりは、渾身の演技だったと思う。そして復讐者として再び現れたギィに屈服せず、砂漠へ逃れ、最後はギィとともに息絶えるシーンなんかは、これまでの集大成と言っていいだろう。正確なセリフは憶えられなかったが、ギィ、というか、みりおちゃんに抱かれながら、「あなたと出会えて本当に幸せだった」的なセリフを言うタルハーミネは、まさしくかのちゃん本人そのままの言葉だったんじゃないかと思う。本当にお見事でした。
 そして第2王女に仕える奴隷、ジャーを演じたキキちゃんも、素晴らしい芝居だったと思うな。歌も良かったすねえ。少なくとも、歌と、芝居ぶりはれいちゃんより上だと思うな。優しいジャーは、今回のお芝居の中では唯一の救いだったように思う。結局、ジャーがただ一人、自分以外の、自分が愛する人の幸せを優先した、いい人だったね。キキちゃんのイメージが重なるような気もしますな。なんか、今後ますますキキちゃんを応援したいと思った。しかし、今の、雪組の望海風斗さん(通称:だいもん)以外の各組の2番手は、わたしが最も愛する星組の礼真琴さん(通称:こっちん)は当たり前として、宙組の真風涼帆さん(通称:ゆりかちゃん)も、月組の美弥るりかさん(通称:みやちゃん)も、そして花組のキキちゃんも、この3人は揃って元星組だもんな。星組推しのわたしとしては大変うれしい状況ですよ。この中でも、若干地味なキキちゃん。どんどん歌もうまくなっているし、キキちゃんがいつかTOPとなれる日が来ると信じて、応援したいと思います。
 というわけで、毎度お馴染みの、「今回のイケ台詞」を発表して終わりたいと思います。
 ※イケ台詞=わたしが「かーっ!! カッコええ!!」と思った台詞のこと。
 「憎しみよりも、今は大切なものがあるのだ!!
 今回は非常に印象的な台詞が多くて、非常に悩んだのだが……敢えてキキちゃんのカッコいいセリフを選びました。キキちゃん、どうかれいちゃんに負けないよう頑張って! 応援してるぜマジで!

 というわけで、結論。
 花組公演『雪華抄/金色の砂漠』は、和モノのショーから始まる珍しい構成であったが、お芝居の「金色」は恐ろしく激しいお話で、物語としてもとても面白かった。もちろんTOPスターみりおちゃんの魅力あふれた作品だが、これが退団公演となるかのちゃんの芝居がすさまじく、迫力もあり。まさしく花乃まりあという素晴らしいTOP娘役の集大成ともいうべき、渾身の芝居ぶりが印象的な作品であった。また、いつも地味といわれがちなキキちゃんも、芝居・歌ともに素晴らしく、わたしは今後もキキちゃんを応援するぜ、と改めて思う作品であった。がんばれキキちゃん!カレーに負けるな! 以上。

↓ つーかですね、わたしの愛するこっちんのショーヴランがとうとう……!!  超・胸熱!!!