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  このBlogで何度か触れてきたが、わたしが愛する宝塚歌劇団には、轟 悠さんというお方がいらっしゃる。1985年入団の71期生であり、1995年から2002年まで雪組TOPスターを務め、その後、2003年には劇団理事となり、去年理事を退任して特別顧問に就任された、まあ控えめに言ってLEGENDなお方だ。
 たぶんわたしが初めて轟さんを生の舞台で観たのは、2014年の『The Lost Glory』という作品で、もう7年前か、当時星組TOPスターだった柚希礼音さん(以下:ちえちゃん)との共演作であった。当時のわたしは、ヅカ歴5年ほどの駆け出しファンであったため、おいおい、なんでちえちゃん主演じゃねえんだよ! とかひどいことを思ったものだが、実際の舞台を見て、わたしはもう、凄くびっくりしたのをよく覚えている。
 「こ、この人が轟さんか……! す、すげえ!!」
 わたしがなにに一番衝撃を受けたかというと、その「立ち姿」だ。『The Lost Glory』という作品は1920年代のアメリカを舞台とした作品で、要するに「スーツ(とタキシード)」姿が多い物語なわけなんですが、「(わたしのような実際の)男では絶対できない立ち姿」に、わたしはもう、これはやっぱりすげえ、なるほど、これが轟さんか! と、激しくそのすごさに圧倒されたのである。
 これはなあ……説明するのが難しいんだけど……男の立ち姿では、どうしても足が開いちゃうというか、轟さんのような「ピシッ!」とした足、が絶対無理なんすよね。あー、言葉では説明できん! とにかく、生で初めて観た轟さんは、わたしに深い印象を植え付けたのでありました。
 そして時は流れ……2021年。とうとう、そのLEGEND轟さんが退団を発表されたわけです。淋しいっすねえ……本当にわたしとしては淋しいです。。。なので、最後の主演舞台となる『婆裟羅の玄孫』という作品は、絶対に観たい!! と思っていたものの、宝塚友の会の抽選に外れ、ああ、観ることが出来ないのか……と思っていたところ、わたしのヅカ友のお姉さまたちの中で最も美しく気品あふれるお方が、「あら、じゃあ、チケット1枚、まだ誰も誘ってないから、あなた、いかが?」とお誘い下さったのでした。わたしはもう大歓喜でそのお誘いを受け、昨日、平日の昼の回に池袋へ向かったわけです。
玄孫01
 池袋駅前の「芸術劇場」は、わたしは初めてではないんだけど、「プレイハウス」という若干小さめの劇場は初めてでした。小さいと言ってもキャパは834席だそうで、なかなか雰囲気のある内装でいい劇場っすね。
玄孫02
 こちらは柱に貼ってあったポスターなんですが、いやあ、なんつうか……やっぱりカッコいいっすねえ! 轟さん主演作とはいえ、星組公演と銘打たれており、去年の暮れの『シラノ・ド・ベルジュラック』も星組若手を引き連れての公演だったので、最後の公演『婆裟羅の玄孫』が星組での上演となったのは、星組イチオシのわたしとしては嬉しかったですね。轟さん主演作だからなのか、理由は若干アレですが、お客さんの年齢層はかなり高め、歴戦のつわものヅカ淑女たちが多かったような気がします。わたしは今年で研12なので、完全にひよっこでした笑
 で。物語は、いわゆる江戸人情もの(?)で、とある理由があって、本所の長屋に住む侍と、町人たちの交流が描かれ、悪い奴を退治するという痛快時代劇だ。
 そして、随所に感じられる「轟さん、今まで本当にありがとう!」的な雰囲気が、なんか泣けてくるようなお話で、本作は植田紳爾先生による作/演出なんすけど、植田先生は1957年に宝塚歌劇団に就職し、1994年から2004年まで劇団理事長を務められたという、存命の方の中では最強の大御所であり、轟さんへの感謝があふれる作品だったと思います。
 というわけで、各キャラと演じたジェンヌメモです。
 ◆細石(さざれいし)蔵之助こと佐々木高久:町のみんなには「いしさん」と呼ばれる浪人者。ちなみに轟さんは本名から「いしさん」と呼ばれてるわけで、当然この役名はそういうことです。で、設定としては、婆沙羅大名と呼ばれた佐々木道誉の子孫で、わたしは全然知らなかったけど、この佐々木道誉という人は南北朝時代、足利尊氏の部下(?)だったみたいですね。現在月組で上演中の『桜嵐記』と少しつながってますな。で、その「玄孫」たる主人公、高久は、庶子として江戸屋敷生まれの江戸育ち、で13歳の時に庶子だということで廃嫡されて細石蔵之助と名乗り、失意の日々を送る、けど、江戸庶民たちと楽しく暮らしてた、みたいな設定になってます。演じたのはもちろん「いしさん」こと轟さん。寺子屋の先生として子供たちに論語を教え、その親たちからも慕われ、ラスト、佐々木家の家督を継ぐべく江戸を発つシーンでは、教えを受けたみんなが「いしさん、ありがとう! 忘れないよ!!」的にお見送りするエンディングは最高に泣けたっす。。。ほんとありがとうだよね。最後の教えとしての最後の舞台を共にすることができた星組のみんな、君たちホントに幸運だよ。いしさんの教えを、これからも忘れずに、そして今後も君たちの後輩たちに教え、伝えていってください……! わたしも、轟悠という最強のジェンヌのことは絶対忘れません! きっと、数十年後のジジイになった時、わたしは「昔、轟悠というそれはそれは立派なジェンヌがおってのう……わしはその退団公演も生で観たのじゃ……」とか語ることになると思います。
 ◆小久保彦左:佐々木家家臣で、ずっと高久のことを見守ってきた、いわゆる「じいや」。演じたのは専科の汝鳥 伶さん。1971年入団の57期だって。すごいなあ……。年齢のことは野暮なので書きませんが、Wikiに書いてある通り、「登場するだけで舞台が引き締まる」ウルトラ超ベテランすよ。轟さんの退団を誰よりも淋しく思ってらっしゃるかもしれないすね……今回は、とにかく長いセリフが多かったけど、当然、一回もかむことなく、素晴らしいお芝居でした!
 ◆お仲&お鈴:姉妹。彦左が高久の身の回りの面倒をお願いしていたお女中さんがお仲、そしてその妹で、江戸市中で焼きイモ屋をやってる元気娘がお鈴。お仲を演じたのが、ロミジュリのジュリエットのお母さんを先日演じた夢妃杏瑠さん。93期ということで、今やすっかりベテランですね。素顔は超かわいいお方です。そしてお鈴を演じたのは音波みのりさん(以下はるこさん)。91期なのでさらにベテランだけど、はるこさんはいつ見てもかわいいっすねえ! ヒロイン経験が多いけど、轟さん最後の作品でヒロインを演じられて、なんかわたしはとてもうれしいす。ベテランだけど全く色あせないかわいさは、下級生にない独特の味ですよ。最高だと思います!
 ◆1幕では阿部四郎五郎/2幕では西川頼母:1幕の悪者、2幕の実直侍を演じたのは98期の天華えまくん(以下:ぴーすけ)。ちょっと役柄的にはあまりがっつり出演できなくて残念だったね。でも、何気にいろいろな場面で町人としても出てたよね。ぴーすけくんは轟さんと共演するのは今回が初めてかな? いっぱい学びがあったことでしょう。マジでぴーすけくんには今後一層頑張ってほしいと思うす。応援してるよ!
 ◆権六:町のかわら版屋であり、情報屋として高久の命に従う男。演じたのは100期の極美慎くん。きわみくんは『シラノ』にも出ていたから、轟さんとは2回目か。今回は歌もソロがあって、かなり上達しているようにお見受けしました。とても期待してますので、ビジュアルだけじゃないぞ、ってことろを今後も見せてください! 歌えるようになったら、きわみくんはもうTOP候補一番手だよね。マジで期待してます!
 ◆麗々&真々:長崎から親の仇を追って江戸にやってきた清国人姉弟。麗々を演じたのは『シラノ』でヒロインのロクサーヌを演じた99期の小桜ほのかちゃん、そして真々を演じたのが、105期の稀惺かずとくん! ついに! ついに稀惺くんに台詞付きの役が来た!!! おまけに一瞬ソロ曲もあって、歌もイケそうな予感でわたしはちょっと興奮しましたよ! 稀惺くんが歌えるようなら、今後抜擢もありそうすね! そりゃあまあすごいプレッシャーがあると思うけれど、君が選んだ道なんだから、小林一三翁のリアル玄孫として、その名に恥じない芸を見せてくれることを期待します!
 ◆そのほか江戸の人々:まずやっぱりわたしとしては、一番応援している星組TOPスター礼真琴さんと同期であり、礼さん主席に続き次席、2番としてずっと礼さんのそばで支えている、ひろ香祐くん(以下ひーろー)に目が行きますね。今回は長屋に住む魚屋の旦那として、やっぱり細かい演技とか、とっても上手い人だと思うす。今回のような別箱公演は、普段は台詞の少ない役、あるいは台詞のない役、に付くみんなが、生き生きとしているのが観られるので、とてもイイっすね。ほかにも、これまた95期同期の紫りらちゃんとか、若手では魚屋の息子を演じた紘希柚葉くんとか、皆とても良かったと思います。みんなが、轟さんからきっと何かを学んだと思うので、それを大切に、そして轟さんと共演してともに舞台を作ったことを誇りとして、今後も頑張ってほしいと強く思いました。

 それでは最後はいつもの「今回のイケ台詞」をご紹介して終わりにしたいと思います。
 ※「イケ台詞」=わたしが、かーっ! カッコええ!と感動した台詞のこと
 「この道の先に、わたしはいる。わたしにつながっている、会いたければ会えるさ」
 うろ覚えなので、正確にはちょっと違うと思いますが、今回はやっぱり、最後にいしさんがみんなに伝えるこのセリフを選びました。今回は、テーマソングもねえ、グッとくるんすよ……轟け、轟け、我が心、この命、燃やし尽くすまで! もちろん作詞は植田先生です。いや、なんつうか、ホント、宝塚歌劇は最高っすね!! 

 というわけで、結論。
 ついに……宝塚歌劇団の至宝とも言うべき轟悠さんが退団する時が近づいてきております。。。そしてその最後の主演舞台『婆裟羅の玄孫』は、植田先生と共演者全員による轟さんへの感謝と愛の詰まった最高の作品でありました。なんか、この主人公で小説化してほしいっすね。しかし本当に轟さんをもう舞台上で観られないのがとても淋しいです。退団後はどうされるのかしら……まあ、わたしが心配することではないと思うので、きっとまた、どこかで出会えるさ! と思うことにします。本当にお疲れ様でした。轟さんは間違いなく、宝塚歌劇団107年の歴史に残る、素晴らしいスターでありました。忘れません! そして、ついに役のついた稀惺かずとくんの今後に、期待が膨らみますなあ! もちろん極美くんたちも、負けてられないぜ!? これからもわたくし、星組イチオシとして応援仕りたく存じます! 以上。
 
↓ こういう本が出てるんすね。すげえ興味あるわ。
婆娑羅大名 佐々木道誉 (文春新書 1310)
寺田 英視
文藝春秋
2021-04-20

 もう30年前なのか……と、ちょっと調べてみて驚いたのだが、30年前、わたしは大学生から大学院生になるころで、すでに完全なる映画オタで、さらに言うと、わたしはドイツ文学科で戯曲を研究してたのだが、当時、わたしの専門外の「フランス戯曲」やShakespeare作品、さらにはロシア文学についても日本語で読めるものは結構かたっぱしから読んでいた時代があった。
 フランス戯曲と言えば、モリエールとかの喜劇が一番有名(かな?根拠ナシ)かもしれないが、わたしが読んで一番「コイツは面白い!」と思った作品が『CYRANO DE BERGERAC』という作品である。
 実はこの作品を読んでみたのは、大学生になったばかりの頃に観たハリウッド映画『ROXANNE(邦題:愛しのロクサーヌ)』が超面白くてグッとくるお話で、その原作に『CYRANO』という戯曲があることを知ったためだ。
 とにかく、主人公がカッコイイ。強いて言えばラオウ様的な? 強くて優しく、どんな困難の前でも決して自分の信念を曲げない主人公の生きざまに、まだクソガキだったわたしはもう、ぞっこん心酔(?)したのであります。
 で。わたしは『CYRANO』という作品は80年代終わりごろには知っていたのだが、その『CYRANO』が完璧に映画化された作品が今度公開される、というのをフランス語が堪能な哲学科の友達に教えてもらい、うおお、まじかよ、そりゃ観ないと! という勢いで当時渋谷のBunkamura単独で公開された映画を観に行ったのでありました。それが1991年のことだったらしい。そしてその時の前売り券の半券がこちらです。
CYRANO
 一応説明しておくと、わたしは映画オタなので、余人には全く理解されないような、ごみ同然のモノでも何でも収集しておく癖がある。ので、いまだ手元に30年前の映画の前売券の半券が残っているのだが、ご覧の通り、なんと3枚も持っていた。さっき思い出したけど、確かにわたし、渋谷に3回観に行ったすね。1回目は一人で。2回目はその哲学科の友人と。そして3回目は当時わたしが一番好きだった女子と、それぞれ観に行って、1回目はうっかり泣いてしまったぐらい好きな作品だ。ちなみにサントラCDも持っているぐらい、音楽も最高で、いまだに車で聴いたりしているし、とにかくこの映画は、わたしの生涯ベストに確実に入る作品であろうと思う。わたし、この映画を観て、「くっそう、オレは何でドイツ語を選んだんだ……フランス語にすりゃあ良かった……!!」と思ったことも思い出しました。とにかくセリフが流麗で、原語で読んでないから原作通りなのかわからないけど、要するに韻文で、発声すると美しい歌、のようにセリフが華麗なんですよ。現代的に言えば、ラップ的な? もう完璧な映画化で、完全フランス語な作品なのに、Wikiによればその年のアカデミー賞に5部門ノミネートされて、受賞したのは衣装デザイン賞だけかな、とにかく美しい!作品なのであります。もちろんフランス本国でのセザール賞は10部門受賞と、その当時大変話題になったりもしていて、わたしも映画版を観た後に興奮して指導教授に熱く感想を語ったところ、日本でもさんざん上演されてる戯曲だし、ひょっとしたら、世界で最も上演回数の多い作品かもしれないよ、なんてことを教えてもらったりした、思い出の多い作品なのであります。
 はい。以上は前振りであります。
 その、わたしの大好きな作品『シラノ・ド・ベルジュラック』が、わたしの愛する宝塚歌劇で上演される日が来たのであります!! やっほう! コイツは絶対観ないと!! と鼻息荒く、チケットもすぐに師匠に譲ってもらって入手したのだが……実はそもそもは東京では6月に赤坂ACTシアターだったかな、で上演される予定だったのに、COVID-19感染拡大によって上演はすべて中止となってしまったのでありました。超しょんぼりしたっす。。。しかし、その後の状況の変化によって、東京での上演は行われないものの、梅田芸術劇場シアタードラマシティにて、たった14公演だけ、上演されることとなったのでありました。
 わたしとしては、大好きな『シラノ』を観ないわけにはゆかぬ!! と思い、宝塚友の会でのチケット申し込みを行い、奇跡の3列目! という良席チケットをゲットしたので、やったーー! わーい! とか喜んでいたものの、折しも感染拡大は続き、果たして、わたしは大阪へ行って良いのだろうか……と正直悩みました。が、結論としては、完全防備体制で昨日、のぞみをぶっ飛ばして行ってきた次第であります。まあ、新幹線はほぼガラガラだったし、一人なので誰ともしゃべらず、マスクを外すこともなく、事あるごとに持参の消毒スプレーで手を殺菌していたので、出来ることはすべてやった、と思いたいものです。※自分用メモ:8:30ぐらいののぞみで大阪へ。11時過ぎころ到着。梅芸へ直行、14時半過ぎぐらいに終わり、すぐ大阪駅から新大阪を経て15時07分ののぞみで東京へ、と、思い返すと昼飯も食わなかったし、マジで誰とも一言もしゃべらなかったような気がするな。。。
 ともあれ。わたしは梅芸メインホールに1回だけ行ったことがありますが、ドラマシティは初めてでした。
ドラマシティ
 なんか、劇場の大きさとしては、東京で言うと青年館ぐらいなんすかね? ステージの幅がやっぱり少し小さいかな、こじんまりした感じだったと思います。そして、こちらがプログラムであります。なお、こちらも土曜日に日比谷のキャトルで先に買ったので、梅田では買ってません。遠征の際は、どうしてもプログラムが邪魔になるので、そういう時は先にキャトルで買っておくものよ、とヅカ友の超美人の淑女に教えていただいていたので、きちんとその教えを守ったっす。そうだよ、おれ、昨日、まったく財布触ってないわ。新幹線での飲み物はSuicaで買ったしな。
シラノ
 さてと。本公演は、「星組公演」となっていますが、ご覧の通り、主人公のシラノを演じるのは、宝塚歌劇団が誇るレジェンド、専科の轟悠さんであります。常々、轟さんは「理事」と呼ばれておりましたが、その理事職も先日お辞めになり、現在は「特別顧問」という職についてらっしゃいますので、わたしも今後は「顧問」と呼ばせていただこうと存じます。
 で、その顧問演じるシラノですが、シラノはそもそも、鼻がデカくてブサメンであることがコンプレックスになってるわけで、重要なファクターなんすけど……もう、どこからどう見てもカッコイイ、超イケメンなんですけど、どうしたらいいんすかもう! やっぱり顧問はカッコいいすねえ! 立ち姿からして、超・キマッており、また今回は衣装も実に美麗で、非の打ちどころがなかったすね。顧問に関しては、結構厳しい意見をお持ちのヅカ淑女が多いですが、わたしはやっぱりすごい人だと思うし、カッコ良さは別格だと思います。確かに、歌のパワーは落ちているのかもしれない、けど、はっきり言って存在感は完全に別次元ですよ。現在の5人のTOPスターすら凌ぐと思うすね。そして、そんな顧問にはシラノという役は超ピッタリでした。
 ただですね、今回の上演は、お話的に正直かなりはしょられていて、若干駆け足展開だったのが残念です。普通の宝塚歌劇の大劇場作品は、2幕モノだと90分∔60分、あるいは80分∔70分、みたいに2時間半がデフォルトなんすけど、今回は75分∔50分=2時間5分とちょっと短めでした。ホントはもっともっと、カッコいいんすよ。なお、ラストの「心意気だ!」で終わるのは原作通りなので、元々の原作や映画を知らない人は、あそこで終わるのはちょっとびっくりしたかもしれないすね。そういう意味でも、本公演を観る淑女の皆さんは、きちんと原典を予習していただきたいと思ったす。
 では以下、そのほかのキャストについて短くまとめて終わろうと思います。
 ◆ロクサーヌ:シラノの従妹の超美人。実際、男のわたしからすると、なんだよ、結局イケメン好き、男は顔なのかよ、と非難したくなる女子だけれど、ラストに至る流れですべて許します。男はやっぱり中身で判断してほしいす、とブサメンのわたしとしては願いたいところであります。で、今回のロクサーヌを演じたのは、99期生の小桜ほのかちゃん。歌うまとしてもお馴染みですな。今回も勿論、素晴らしい歌声を聞かせてくれました。芝居もいいですねえ! わたし、なんか今回のほのかちゃんを見ていて、元雪組TOP娘役の咲妃みゆちゃんに似てるように感じました。まあ、ゆうみちゃんレベルにはまだチョイ鍛錬が必要かもしれないけれど、十分その力はあると思うので、今後ますますの活躍を願いたいし応援したいすね。
 ◆クリスチャン:超イケメン、だけど文才がなく、シラノにラブレターの代筆をお願いすることに。でも、ただの頭の悪いイケメンではなく、シラノとロクサーヌの気持ちにも気が付ける心を持つ。馬鹿ではない。演じたのは、ますます色気と実力が高まっている瀬央ゆりあ君。せおっちは研9ぐらいからホントにグイグイ成長してきていて、今回はとりわけ歌がとっても良かったすね。見た目の華やかさも増しているし、わたしとしては、素直に星組2番手にしてあげたい気持ちす。人気実力ともに全く問題ないと思うんだけどなあ。とにかくカッコ良かった。今回は3列目(1列目は販売してないので事実上2列目)の超いい席で、生声も聞こえたし、キラキラオーラも溢れまくってるのが最高でした。
 ◆ド・ギッシュ伯爵:一応、本作では悪い人。結婚してるのにロクサーヌの美貌にぞっこんで愛人にしようとしたり、ロクサーヌがクリスチャンが大好きと知るや、クリスチャンとシラノを戦場に送ったりして、基本嫌な奴(だけど後に改心する)。演じたのは、91期首席のみっきぃでお馴染みの天寿光希さん。みっきぃさんも美しいですなあ。嫌な奴のお芝居もお手の物すね。大変結構だったと存じます。
 ◆ラグノオ:パリの街のパン屋さん(つうかパティシエ)で、詩を愛する男で、貧乏な詩人たちに店のパンやケーキをふるまったりしている男。シラノとも仲良し。映画版などでは、ラグノオは太っちょなおっさんなんだけど、なんと今回ラグノオを演じたのは、星組の期待の若手スター、極美慎くんですよ! 恐ろしくカッコいいラグノオでビビったわ。極くんも非常にキラキラしておりましたね。
 あと一人、わたしとしては、物売り娘とかいろいろな役で舞台に登場してくれた華雪りらちゃんをメモしておきたいです。りらちゃんはホント可愛いので、すぐわかるっすね。セリフも何気に多かったし、大変目立っていてうれしく感じました。
 あと、そういや本作は、エンディング後にパレード的ショーがついていて、ほのかちゃんと顧問のデュエットダンスも美しかったし、せおっちやみっきぃさん、極くんや若手たち男役勢揃いの群舞もきらびやかでありました。つうか、マジでほのかちゃんの歌はきれいですなあ。そしてせおっちの歌唱力がものすごく向上してるのを感じたっすね。2番手の実力は間違いなくあると思うんだけどなあ。。。まあ、とにかく、星組推しとしては、次の『ロミオ&ジュリエット』が楽しみでしょうがないですな。わたし、当然、税込55,000円の「ロミジュリBOX」買ったすよ! わたしが生で観たのは2011年雪組版と2013年星組版の2回なんすけど、ずっと観たかった新人公演版「珠城りょうさま×ゆうみちゃん」「礼真琴さま×しろきみちゃん」の2つをとうとう見ることが出来て、超最高でした! 来年2月からの新生星組版で、せおっちや極くんの活躍を超超期待したいすね! 希望としては、せおっち=ティボルト、極くん=マーキューシオのVerが観たいですねえ! そしてこっちんとわたしが呼ぶ礼真琴さまのお披露目公演を結局生で観られなかったわたしとしては、羽を背負ったこっちんを観て泣こうと存じます。
 とまあ、こんなところかな。もう書きたいことはないかな……。あ、一つ思い出した。シラノやクリスチャンが所属する軍の部隊なんすけど、若い衆が来ていたユニフォームのような青いカッコイイ衣装、ありゃ『ALL FOR ONE』の制服の流用だろうか?? デニムっぽい青に胸に黄色の十字架の服なんですが、実はシラノもダルタニアンも、二人とも「ガスコン(=ガスコーニュ地方出身の男)」であることを誇りに思っていて、共通してるわけで、時代もほぼ同じだし、制服が同じでも実は全く問題ないというか、あり得る話なので、わたしとしてはあの服が似てた(あるいは流用だった)のは、まったくアリ、だと思いました。

 さて、では最後に、毎回恒例の今回の「イケ台詞」を発表して終わりたいと思います。
  ※イケ台詞=わたしが「かーっ!! カッコええ!!」と思ったイケてる台詞のこと。
 「(迫りくる「死」に向かって)すべてを持っていくがいい。だがな! たった一つだけ、お前には奪えないものがある。それをオレは、折り目もつけず、きれいなまま、持っていくんだ。それは……オレの……心意気だ!」
 今回は、ちょっと前後が分からないと意味不明だと思いますが、有名なシラノのラストのセリフです。わたしがぼんやり憶えてるものなので、完全ではないと思いますが、要するにシラノは、権力だったり、理不尽だったり、妥協だったり、いろんな「敵」に対して、常に「ノン!」と言って生きてきたわけで、どんなにみじめな最期であろうと、「自分のハート」は誰にも渡さないで死んでいくぜ、というセリフなわけです。ああ、くそう、うまく説明できねえなあ! とにかくカッコイイの!文句は言わせません!!

 というわけで、結論。

 わたしにとって、フランスの戯曲『CYRANO de BERGERAC』という作品は、数ある世界の戯曲の中でもTOP3に入るぐらい大好きな作品だが、その「シラノ」が、ついに! 我が愛する宝塚歌劇団において上演される日が来た!! わたしはその報に接し、非常なる喜びを抱き、絶対観に行きたい!! と思っていたのだが……6月に予定されていた東京公演は中止となり、深い悲しみを味わったものの……この度、ようやく大阪は梅田芸術劇場シアター・ドラマシティのみで上演されることとなった。この作品はわたしにとって極めて特別であり、いかなる困難があろうと観に行きたい作品であり、自分としては感染対策としてできることはすべてやる、という方針で観に行ってまいりました。感想としては、ええ、そりゃあもう、最高でしたとも! 轟顧問のシラノは抜群に良かったし、せおっちのクリスティアンも実にイケメンでありました。歌もすっごい良かったよ! ホントにせおっちは腕が上がりましたね! そして小桜ほのかちゃんの美声も最高でした。要するにですね、遠征してホント良かったです! 超満足! 以上。

↓ わたしはこの映画、たぶん30回ぐらい観てます。レーザーディスクも持ってたよ。今はNHK-BSで放送されたのを録画したのがわたしの宝物っす。
シラノ・ド・ベルジュラック ジェラール・ドパルデュー [Blu-ray]
リュディヴィーヌ・サニエ
IVC,Ltd.(VC)(D)
2014-10-24

↓そしてこちらはまだ買えるみたいすね。
シラノ・ド・ベルジュラック (岩波文庫)
エドモン・ロスタン
岩波書店
1951-07-05

↓そしてこちらも、とても笑えて泣ける超名作です。
愛しのロクサーヌ (字幕版)
マイケル・J・ポラード
2013-11-26

 轟悠(とどろき ゆう)というお方がこの世には存在している。
 おそらく宝塚歌劇を愛する人なら100%知っていると思うが、そうでない方は100%知らないだろう。轟悠さんは、年齢をアレするのは大変野暮だけれど、1985年に宝塚歌劇団に入団したそうだから、恐らくわたしと同じぐらいかチョイ上の年齢で、すでに芸歴35年ってことかな、いまだ現役の専科スターとして活躍する、いわゆるタカラジェンヌ、である。既に2003年には、宝塚歌劇団の理事職にも就いておられ(よって、通称:理事)、これは要するに普通の会社で言う取締役のようなものだと想像するが、とにかく、現役ジェンヌすべてが尊敬しているものすごいお人だ。
 そんな轟理事は、年に1回は主演作品が上演され、人気もまたすごいわけだが、一部のファンからは、轟理事が降臨すると贔屓のスターが喰われてしまうため、若干敬遠されてる気配も感じることもある。しかしわたしは声を大にして、轟理事はすげえからいいの!と擁護したい。何がすごいか。これはもう、生で観た方なら誰でも感じることだと思うが……ズバリ、その存在がすげえのである。全く説明になっていないが、そうとしか言いようがないのだ。
 というわけで、わたしは昨日は日比谷で雪組公演を観てきたわけだが、今日は、クソ暑い中をJR千駄ヶ谷からトボトボ15分ぐらい歩いて、建設中の国立競技場を横目で観ながら、日本青年館へと赴いたのである。目的はコイツを観るためであります。
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 見てよ、このポスター。もう完全に、あの有名な「チェ・ゲバラ」っすよ! すごくない? マジで。
 現在月組は、TOPスターたまきちこと珠城りょうさん率いるチームが梅田で別の公演(今年初めに国際フォーラムで上演された『ON THE TOWN』を再演中)を行っており、東京では若手主体で、轟理事のもとでこのミュージカル『チェ・ゲバラ』を公演中だ。明日もう千秋楽かな? わたしはそもそもこっちの轟理事チームの方に、月組で応援しているジェンヌが多かったので、こちらを観たいと思ったのだが、とりわけその中でも、月組で随一の美形、月城かなとさん(以下:れいこ)を目当てにこの公演チケットに申し込んだのだが、残念ながられいこはいまだ怪我が完治せず、休演となってしまった。うおお、そいつは残念だし心配だなあ……とか思って、友会の抽選が当たったので、劇場にチケットを発券に行ったら、席は、メールにも示してあったはずだけど全然見てなくて、実際にチケットを見てびっくりした。なんと奇跡の前から2列目!! である。うおお、ま、マジかよ、友会でもこんなすげえ席が当たることあるんだ!? と大いに驚いた。
 というわけで、今日、実際にその2列目を体験してきたのだが、やっぱり想像以上に迫力が増して、群衆シーンで舞台わきで一生懸命演技しているみんなの生の声まで聞こえてくるし、すげえ体験であった。
 で。物語は、「チェ・ゲバラ」でお馴染みの、エルネスト・ゲバラ氏が盟友フィデル・カストロと出会い、キューバ革命を成功させるまでが第1幕、そして第2幕は、理想に燃えるゲバラと現実主義(?)のカストロの決定的な別れと、ゲバラの死までが描かれている。ちなみに、ゲバラ氏は広島に来て、平和公園で献花したことでも有名だが、そのエピソードは入っていませんでした。あと、本作で出てくる「グランマ号」でメキシコからキューバにわたるのは史実通りだけど、その時ゲバラは妻子持ちで、本作のヒロイン、アレイダとは、奥さんと離婚してから再婚した相手みたいすね。
 ともあれ、そんな物語なので、ゲバラの理想とする、差別なく誰しもが幸せになれる国を作ろうという想いと、経済的にキューバを支配していたアメリカ打倒のために、アメリカの敵であるソヴィエトと接近していく現実主義のカストロに距離ができてしまうところが最大のポイントなわけだが、カストロとしては、元首として、どうしても理想だけでは国家運営はできず、親友ゲバラを一度たりとも裏切った覚えはなく、断腸の思いだったわけで、本作ではそんなカストロを、れいこに代わって熱演した風間柚乃くん(以下:おだちん)がとても素晴らしかったのでありました。
 というわけで、各キャラと演じたジェンヌを紹介しよう。
 ◆エルネスト・ゲバラ:有名な言葉、「もし私たちが空想家のようだと言われるならば、救いがたい理想主義者だと言われるならば、できもしないことを考えていると言われるならば、なん千回でも答えよう、「その通りだ」と。」が幕が閉じた後、投影されるわけですが、まあ、もう自分で、その通り、何が悪い!というお方なわけで、本人としては1mmも後悔はないんでしょうな。ただ、やっぱり、平和な日本でぼんやり過ごすわたしとしては、社会主義という考え方には賛同できないし、やり方の面では、どちらかと言えばわたしはカストロの方の実務的な行動に共感するっすね。やっぱり、理想を唱えるのはいいとしても、理想だけではどうにもならんのではなかろうか。
 そして演じたのはもちろん轟理事であり、そのビジュアルからしておっそろしくクオリティが高く、とにかく、なんつうか、男にはできない姿勢というか、とにかくピシッとしてるんすよ。ホントさすがであります。轟理事は、現役ジェンヌでは他に似ている人がいないような、シャンソン系の独特の歌い方をするお方ですが、そちらもやっぱりさすがっすね。
 ◆フィデル・カストロ:元弁護士。理想に共感するも、実現のためには毒をも喰らう実務家と言っていいのだろうか? これが現実のカストロ氏とリンクした人物像なのか、わたしには分からないけど、とにかくおだちんはお見事でした。演技もビジュアルも、そして歌も大変良かった! 100期生だから、まだ入団6年目か? 素晴らしい逸材ですね、やっぱり。おだちんは、結構顔の作りが男顔というか、濃い目のラティーノがすごく似合うっすね。大変結構かと存じます。
 ◆ミゲル:カストロの同志で最初はゲバラにキツく当たるも徐々に仲間として友情が芽生える男。演じたのは蓮つかさくん(以下:れんこんくん)。今回の公演は月組フルメンバーではないので、人数が限られていて、れんこんくんもたくさんいろいろな役で出てたっすね。声と顔に特徴があるから、すぐわかったよ。カストロとゲバラが出会うシーンでは、マラリアでブッ倒れてて、一人だけ歌に参加できず、ずっとベッドに横になってましたね。でも中盤からは目立つ役で、芝居としても大変な熱演でした。大変良かったと思います。
 ◆レイナ:ミゲルの妹かな。ミゲルがカストロたちとメキシコに亡命している頃、レイナはキューバに留まり、変態野郎への性接待を強要されちゃいそうになる踊り子さん。演じたのは晴音アキちゃん。彼女も顔に特徴があるからすぐ分かるすね。なんか痩せたような気がします。スタイル抜群で大変お綺麗でした。
 ◆アレイダ:革命に共鳴し女闘士としてゲバラを支え、後に結婚する女性。演じたのは、元男役で月組の前作で新公初ヒロインを演じた天紫珠李ちゃん。彼女もついに轟理事の相手役をやるまで成長したんですなあ。まず何より、芝居がしっかりしてますね。そして歌も大変上等。彼女も今後どんどん成長するでしょう。その行く末を見守りたいですな。
 ◆その他、わたしが月組で応援している方々として、やはり二人あげておかねばなるまい。まずは、なんだかもう、いつも月組公演を観る時に探してしまう叶羽時ちゃん。今回も、いろんな役で出ていて、台詞もしっかりあって、その芝居力は実に上等だと思います。時ちゃんももっともっと活躍してほしいですな。そしてもう一人は、去年入団したばかりのきよら羽龍ちゃん。彼女は今回、男の子というか少年?の役で、目立つおいしい役でしたな。ソロ曲はなかったけれど、今後、その歌声を堪能できることを楽しみにしたいと存じます。結構、普通に女子として可愛いすね。良いと思います。
 とまあ、こんなところかな。もう書きたいことはないかな……。
 では最後に、毎回恒例の今回の「イケ台詞」を発表して終わりたいと思います。
  ※イケ台詞=わたしが「かーっ!! カッコええ!!」と思ったイケてる台詞のこと。
 「国民を守るべき軍が、国民を攻撃している……この国は狂っている!」
 今回は、れんこんくん演じるミゲルの悲しい怒りのこもった叫びを選びました。まあ、昨日観た『壬生義士伝』もそうですが、同じ民族同じ国民で殺し合う内乱というものは、なんともやりきれないというか……内乱に限らず、戦争という名の殺し合いは、人類は永遠に克服できないんすかねえ……。

 というわけで、結論。
 轟理事を主演に迎えた、月組若手メンバーによる公演『チェ・ゲバラ』を日本青年館へ観に行ってきたのだが、まず第一に、やっぱり轟理事はすげえ、のは間違いないだろう。そして第2に、怪我で休養?中の月城かなとさんに代わってカストロ議長を演じた風間柚乃くんの演技は堂々たるもので、歌もとても素晴らしく、実際ブラボーであったと言えよう。しかし、やっぱり月組は「芝居の月組」なんすかね。とても、演劇として上質で素晴らしかったす! そして、国立競技場ももうずいぶん出来上がってきたんすね。間近を通って、すごく実感したっす。まあ、オリンピックを観に行こうとは思わないけど、いろんな数多くの人の努力は、着々と形になってるんですな。そういうのを見ると、ホント人間ってすげえなあと思うけれど、いつか殺し合いをしないで済む日が来るのかどうか、その点は実にアヤシイすね。にんげんだもの、しょうがないんすかね……てなことを考えさせる物語でした。理想じゃ飯は食えないんだよなあ……残念ながら。以上。

↓ わたしのゲバラ知識は、ほぼこの映画によるものです。大変な傑作です。
チェ 28歳の革命 (字幕版)
ベニチオ・デル・トロ
2013-11-26

チェ 39歳別れの手紙 (字幕版)
ベニチオ・デル・トロ
2013-11-26

 わたしが宝塚歌劇を愛していることはもう周囲の人々にもお馴染みだが、まあ、なんつうか、誰もが知っている「宝塚歌劇団」であっても、ファンでないと知らないことは数多く、5つの組の名前さえ、恐らくは一般的な常識ではないかもしれない。わたしは5つある組の中で、星組が一番好きで応援しているわけだが、もちろんのこと全ての組の公演を可能な限り観に行っているし、別の組に対して、アンチ的な感情は一切持っていない。むしろわたしは、舞台で頑張る全てのタカラジェンヌを応援しているし、それは、真ん中に立つTOPスターから舞台はじの端役の方まで、皆が全員、明らかに努力し、真摯に己を磨くその姿に、胸が熱くなるからだ。やっぱりですね、生で見ると、ホント、応援したくなるんすよ。頑張れ!って。 ま、完全にわたしの視線は舞台で頑張る娘を応援するお父さんめいた眼差しなんだろうと思うが、なんか文句ありますか?
 そんな風に、全員を応援するわたしでも、そりゃあ当然、より一層熱いまなざしを送る「贔屓」は各組に存在するわけだが、まず、ファンクラブに入ってまで応援している星組の礼真琴さん(以下:こっちん)は完全に別格として、他にも何人も、この組の公演を観る時はこの人に超注目する、という方がいる。いつか、この方が真ん中に立つ時の感動をオレは待ってるぜ、それまで全力で応援させていただくッ!みたいな、若いジェンヌの青田買いめいた応援姿勢がズカファンの基本だと思うのだが、その応援している方が、TOPに立てず退団してしまったりすると、猛烈にしょんぼりしてしまうのである。実は先週、わたしがここ3年ぐらいずっと応援していた方が、次の娘役TOPは大丈夫だよな……? と思っていたのに、残念ながらTOP就任できず、という残念なお知らせが発表された。それは月組の海乃美月さん(以下:うみちゃん)のことである。うみちゃんは新人公演ヒロイン3回、外箱ヒロイン3回、エトワール2回、と、TOP娘役への通過儀礼を順調にこなし、次のTOP娘役は、わたし個人としてはもう確実……だよね? と応援してきたのだが、残念なことに月組の次期TOP娘役は、2期後輩の美園さくらさん(以下:さくらちゃん)に決まってしまった。マジでホント残念だよ……さくらちゃんが悪いわけでは決してなく、むしろさくらちゃんは首席卒業の優等生、その実力は折り紙付きだ。一言で言うなら、うみちゃんにとってはタイミングが悪かった、そしてさくらちゃんにとっては絶好のタイミング、だったのだろうと思う。そうとしか言いようがなく、わたしはこの1週間、ずっとしょんぼりしている。まあ、うみちゃんは退団するわけではなく、TOP娘役の地位を得られなくとも、今後も頑張ってくれると思うし、応援も今まで以上にしたいと思うけれど、なんつうか……ため息が止まらないというか……はあ……ホント残念すわ……こうなったら、入団以来ずっと過ごしてきた月組から組替えして、どこか別の組でTOP娘役として活躍してくれないかなあ……はあ……つらいす……。。。
 とまあ、以上はまったくの余談である。わたしは昨日の会社帰りに、日比谷へ赴き、現在絶賛上演中の雪組公演『凱旋門/Gato Bonito!!』を観てきたのだが、今回のうみちゃんのことがなんだか頭から離れず、真ん中で光り輝くTOPスターだけでなく、周りでしっかりと支える、ひどい言葉で言えば「その他大勢」のみんなの頑張りというか、すべてをかけた舞台づくりに改めてグッと来たというか、たとえTOPスターになれずとも全力を尽くす宝塚歌劇団の団員たちの姿に、妙に胸が熱くなったのである。まあ要するに一言でいうと、いやあ、宝塚歌劇はやっぱり最高っすね、ということであります。そして今回の『凱旋門/Gato Bonito!!』は、文句なく大変楽しめたっす。最高でした。

 まずはミュージカル・プレイ『凱旋門』である。わたしは映画版も観ていないし原作小説も読んでいないので、まったくお話を知らずに観たのだが、大変興味深いお話であった。
 時は1938年。大戦への予兆に不安な毎日を送るパリが舞台である。そして登場人物は、ファシズムから逃げてきたドイツ人・イタリア人・スペイン人や、ロシア革命から逃げてきたロシア人青年だ。彼らはきちんとしたパスポートを所持しているわけではなく、見つかれば強制退去させられる運命にあり(※一部キャラはちゃんとパスポートを持ってるので大丈夫)、自由なパリであってもどこか陰に隠れたような生活を送らざるを得ないというのが基本設定だ。そんな彼らが、時代の奔流に流されながらも、愛を見つけ、必死に生きようとするさまを描いた物語である。
 ズバリ言うと、恐らくこの物語は男と女ではかなり感想が違うような気がした。わたしはモテない男として長年生きているので、主人公ラヴィックの気持ちはやけにリアルに理解できるし、一方のヒロイン・ジョアンの言動に関しては、正直良くわからないところが多い。ただ、双方ともに、わたしから見ると、なんでだよ!? どうしてお前は……という言動をとってしまい、ハッピーエンドとはならないで物語は終わる。しかし恐らく女性がこの作品を観ると、たぶん物語は、まあそうなるわな、という納得の進行なんじゃないかという気もするわけで、その男と女の考え方の違いが、恐らくはこの物語の中心にあるようにわたしには思えた。まったく……ラヴィック……お前って奴は……まったく世の中ままならねえなあ……。というのがわたしの感想である。
 というわけで、キャラ紹介と演じたジェンヌをメモしておこう。
 ◆ラヴィック:ドイツ人外科医でパリに亡命中(というか不法難民)。もぐりの医師として働き、その腕は確かで、パリの病院からの依頼も多く信頼されている。どうやら過去に、ドイツでひどい目に遭って拷問され、恋人を亡くしている。そのため、いわゆる「もう恋なんてしない」的なかたくなさがあるが、イタリアからの亡命者、ジョアンと出会って運命の歯車が回り出す。超客観的に見れば、基本的にネガティブ野郎のウジウジ野郎だが、男としては、許してやってほしいと思う。男は大抵こういう生き物なんすよ……。演じたのは、専科の「理事」でお馴染み轟悠さん。一部では、雪組大劇場公演に理事が主役ってどういうことだ、と憤っている方も多いらしいが、わたしとしては全然アリ。ピシッとした立ち姿はさすが理事です。でも、やっぱり歌力は、若干アレなんすかね……。なんつうか、今年初めに理事が演じた『ドクトル・ジバゴ』と若干キャラが似てるような気がしますな。ちなみに理事が雪組TOPスターだった2000~2001年(17~18年前!)に本作は上演されていて、今回はその再々演、しかも役は同じという珍しい公演となっている。
 ◆ボリス:バーのドアマンとして働く亡命ロシア人。ラヴィックの親友。この人はちゃんと正式なパスポートを持っているので、こそこそする必要がない。そしてロシア人のくせに、恐らく一番のリアリストで、しっかりしている。本作ではボリスは狂言回しとして舞台に出てくる機会も多い。演じたのは、雪組TOPスター望海風斗(以下:だいもん)さん。とにかく歌ウマ。だいもんの歌はホントしびれるすな。その歌唱力は現役ナンバーワンだと思う。最高でした。なお、TOPスターなのに主役じゃない、という作品は、珍しいけど過去にもあることだし、歌が多く、結構おいしい役だったようにも思えた。なので、わたしとしてはボリス=だいもんはアリ、です。むしろだいもんがラヴィックをやったら若干アレだったような……だいもんはウジウジ野郎よりはボリス的キャラの方が似合ってるような気がする……けど、いや、やっぱりだいもんラヴィックも全然アリか? だいもんは何でもできるスーパーTOPなので、だいもんラヴィックも観たかったかも、すな。
 ◆ジョアン:イタリアからの亡命者。ジョアンはパスポート持ってたのかな? サーセン、設定忘れました。ともあれ、ジョアンは一緒にイタリアからやってきた男が死に、絶望に打ちひしがれてパリをふらふらしているところでラヴィックに出会い、出会って推定3分で死んだ男のことを忘れ、ラヴィックを愛するようになる。そしてボリスの勤めるバーで歌手デビューし、チャラい生活を愛するように。―――と書くとかなりわたしの主観バリバリな、若干の悪意がこもってしまうけれど、サーセン、そうとしか見えないんすよ、男からすると。しかし、女性目線に立って想像するに、彼女はただ単に生きることに一生懸命なだけで、過去の男を3分で忘れるのも女性としては当然の行為なんだろう、と思う。たぶん。男としては……キツイっすわ……。演じたのはもちろん雪組TOP娘役の真彩希帆さん(以下:まあやきー)。その可愛さ、ちょっと調子に乗った明るさ、そして歌のうまさと演技力は現役TOP娘役の中でも随一だと思う。大変可愛いですよ、まあやきーは。歌も見事だし、芝居も良かったですな。まあ、若干暗ーい影のあるお話だけど、まあやきーの天性の明るさは意外とキャラに合ってたように思います。お見事でした。
 ◆ハイメ:スペイン動乱からパリへ逃げてきた元軍人。砲弾を受けて足を怪我し、ラヴィックに治療を受けたことがある。演じたのは美貌のあーさでお馴染み朝美絢さん。役柄的にはあまり目立たないはずなのに、その華のある美貌は、どうしても舞台上で目立ちますな。あーさはほんとキレイな整ったお顔ですよ。あ、初演の時のハイメはとうこさんでお馴染み安蘭けいさんが演じたんすね。そうだったんだ。なるほど。
 ◆ユリア:ハイメの彼女で同じくスペイン人。フランスにバイオリン留学をしていたため正規のパスポートを持ってる。演じたのは99期の彩みちるさん。わたしはこの方を今までほぼ意識したことがなかったけれど、可愛いですなあ!? オレの眼はまったく今まで節穴でした。今後注目したいと存じます。
 ほかにも大勢の雪組メンバーが本作を作り上げてくれましたが、長いのでとりあえず以上にしておきます。そして後半はショー、『Gato Bonito!!』であります。
Gatobonito
 「Gato Bonito」ってのは、ポルトガル語で「美しい猫」という意味だそうだ。まあ、Gato=Cat、bonito=beautiful、ということなんだろうと思うが、本作のサブタイトル「~ガート・ボニート、美しい猫のような男~」が示す通り、猫をモチーフとした大変キラキラショーであった。いわゆる「黒塗り」のラテンショーである。なんでも、雪組TOPスターだいもん様は、猫っぽいと言われるようで、そのイメージを具現化してみました的な作品なわけだが、わたしとしては、雪組で猫顔といえばそりゃあやっぱりあーさだろ、と思うわけで、わたしはずっとあーさを双眼鏡で追っておりました。今回もあーさは女装(女性に女装というのはかなりおかしいというか変けどそうとしか言いようがない)がありましたな。男のわたしとしては大変な俺得であります。
 そして、今回のわたしの席は、20列目、前のブロックの一番後ろで通路に面しており、しかも下手側ブロックだったのです。何が言いたいか、観た人なら分かりますね? そうです! わたしの30cm後ろを「黒猫のタンゴ」を歌うだいもん様が通ったのです! 一瞬聞こえた生声にもう大興奮! 最高でした! やっぱり細っそいし、顔も小さいし、華奢ですなあ……。『凱旋門』では抑え目なキャラだっただいもん様は、ショー『Gat Bonito!!』ではハジケまくり、とにかくキラキラでありました。マジ興奮したっす。
 
 とまあ、こんなところかな。もう書きたいことはないかな……。
 では最後に、毎回恒例の今回の「イケ台詞」を発表して終わりたいと思います。
  ※イケ台詞=わたしが「かーっ!! カッコええ!!」と思ったイケてる台詞のこと。
 「あの鳩たちは、いつまたこの街に戻って来るだろう……」
 今回は、ナチスがチェコへ侵攻したことが報じられ、迫りくる戦争への不安の中、街から鳩がバサバサバサっと飛んで行ってしまう(照明でうまーく表現されている)シーンで、主人公ラヴィックが言うこのセリフにしました。まあ、ヨーロッパにいる限り安全な場所はもう無くなってしまったわけで、アメリカに逃げるしかなかっただろうな……あの場面では……。戦後、ラヴィックとボリスが再び再会できたことを祈りたいすね……。

 というわけで、結論。
 このところ、なんとなくわたしの身の回りでは、しょんぼりするようなことばかりが起きていて、ホント、わたし自身暗ーい気持ちでいたのだが、やっぱり宝塚歌劇を観に行くと、気分もアガりますな。まあ、今回の雪組公演『凱旋門』は、そんなわたしの気分に同調するような暗ーいお話ではあったけれど、まあ、ちょっとだけ元気が出たっすわ。そしてショー『Gato Bonito!!』は大変キラキラしたショーであり、黒塗りメイクはちょっとギラギラ感がアップするっすね。なんか元気ももらったような気がします。結論としてはですね、いやあ、宝塚歌劇は本当にいいっすね! であります。以上。

↓ 原作小説の著者、Erich Maria Remark先生は、「西部戦線異状なし」でお馴染みのドイツ人で、1938年にアメリカに亡命した方です。読んでみたい。
凱旋門(上)
エーリッヒ・マリア・レマルク
グーテンベルク21
2015-03-04

凱旋門(下)
エーリッヒ・マリア・レマルク
グーテンベルク21
2015-03-04

 昨日の2月25日の日曜日、わたしは宝塚歌劇の公演を2本ハシゴして観てきた。というのも、本命の花組による大劇場公演『ポーの一族』のチケットが全然取れず、久しぶりに、こりゃあ観られないか、と半ば諦めていたのだが、ある日、宝塚歌劇の公式Webサイトに、とあるチケットの販売に関する告知が出ていて、どうせ当たりっこないんでしょうよ……と思って申し込んだ「W観劇チケット」なるものが当選したから、であります。
 そのチケットは、わたしが見逃すかもと危惧した花組公演『ポーの一族』@東京宝塚劇場のチケットと、赤坂ACTシアターにて開催される星組公演『ドクトル・ジバゴ』のチケットがセットになったもので、11時からの『ジバゴ』@赤坂、15時半からの『ポー』@日比谷の二本立て、というわけである。
 まあ、ズバリ言えば、『ジバゴ』のチケットの売れ行きが渋かったための、いわゆる一つの抱き合わせ商法であることは否めないだろう。わたしも、星組を一番応援している身とは言え、実はあまり見たいとは思ってはいなかったので、まあ、いいか、ぐらいのテンションであったのだが、結論から言うと、わたしとしては『ポー』よりも、『ジバゴ』の方がずっと面白く、楽しめたのである。
 というわけで、まずは『ジバゴ』についての記事をまとめ、『ポー』については別記事として明日以降アップしようと存じます。それではまずは『ジバゴ』である。
DR_GIBAGO
 本公演は、星組公演と銘打たれているものの、主演を張るのは専科の轟悠さん(以下:理事)である。というのも、わが星組のTOPスター紅ゆずるさんとTOP娘役の綺咲愛里さん率いるチームが名古屋の中日劇場で公演中(昨日が千穐楽かな)であり、また2番手スターでわたしが一番応援している礼真琴さん(以下:こっちん)は、先日まで単独ディナーショーを開催していた(既に終了)ためだ。わたしとしては、愛するこっちんのディナーショーへ行きたかったのだが、全くチケットが取れずダメでした。
 というわけで、星組はこの『ジバゴ』を含め、3チームに分かれていたわけである。そのため、『ジバゴ』の主演には理事がやってきたわけだ。ちなみに、理事は、なんで理事と呼ばれているかというと、劇団理事(=会社で言えば取締役のようなものか?)の肩書を持つ現役最強のジェンヌであり、数々の伝説を持つすごいお方で、おそらく年齢もわたしよりも上(たぶん50歳ぐらい)、の超歴戦の勇者なのである。それだけにファンも多く人気も高いお方なわけだが、ヅカ歴が浅いときちんと理事の出演作を観ていないという人もまた多いと思う。わたしも、2014年だったかな、当時の星組TOPスター柚希礼音さん(以下:ちえちゃん)と共演した『The Lost Glory』でしか観たことはない。当時、わたしは、なんでちえちゃんが主役じゃねえんだよ! とか思ったものだが、実際に観劇してみると、悪役?のちえちゃんの方がおいしい役だったので、これはこれでアリ、と納得した思い出がある。そしてその時初めて生で観た理事は、やっぱり歌も芝居もすげえ、貫禄というかオーラが段違いだ、とその実力に唸ることとなったのである。なんつうか、理事の歌い方はシャンソン系で、現役の中ではあまり見かけない、若干、昭和なテイストがあって、非常にオンリーワンな魅力を持つジェンヌであることを認識するに至ったのである。
 というわけで、わたしは昨日、正直に告白すると、理事主演の『ジバゴ』は積極的に観たいとは思わなかったものの、観られるならやっぱ観たい、という中途半端な気持ちで赤坂ACTシアターに推参したのである。そして結論は既に書いた通り、大変素晴らしいものであった。しかし、そのわたしの絶賛は、実は理事へ向けたものが25%ぐらい、残りの75%ぐらいは、若き星組メンバーへ向けたものである。とにかく、ヒロインの有沙瞳ちゃん(以下:くらっち)や、こっちんと同期の瀬央ゆりあさん(以下:せおっち)たちがもの凄く良かった。これはやっぱり観に行って良かったわ、とわたしとしては大感激であった。
 まず、物語を軽くまとめておこう。原作小説はノーベル文学賞を受賞し、映画化された作品はアカデミー賞5部門を受賞した超名作なので、今更かもしれないが、大変恥ずかしながらわたしは原作も映画も味わっておらず、昨日初めて物語を知ることとなった。これがまた、超面白くて、これは原作を読むしかねえ! と思いますね。
 時は1905年、場所はモスクワである。この年号を観てぱっと思いつくのは、日露戦争終結の年であり、ロシア革命のはじまりの年であるということだ。つまり、日本に負け、貴族たちの抑圧に農民を中心とした人々の怒りが頂点へ向かおうとしているころであろう。物語は二人のキャラクターを軸として展開される。一人は、下級貴族の青年ユーリ・ジバゴ。彼の父親は悪徳弁護士のコマロフスキーに先祖伝来の土地をだまし取られ、失意のうちに亡くなり、孤児となったユーリは父の兄弟(つまり叔父さん)の家に引き取られて育った男で、詩を愛し、同人誌なんかを出版するような男だが、医師として人を救うことを天職と定めた、貴族ながらも優しい男である。そしてもう一人は、お針子として働く仕立て屋の娘、ラーラだ。彼女は、恋人パーシャが革命思想に染まり、デモに参加していることを心配しているが、ある日、デモでけがをしたパーシャを家で介抱していることが悪徳弁護士コマロフスキーに目撃され、そのことで脅迫されてレイプされてしまう。そう、このコマロフスキーは、仕立て屋を出店する時に母を(愛人にして)援助したパトロンだったのだ。悲しみに暮れるラーラは、その後、ユーリの自宅で開かれた、ユーリとトーニャ(叔父さんの娘なので親戚)の婚約祝いパーティーの場に銃を持って乱入、町の有力者としてそのパーティーに参加していたコマロフスキーを撃つという暴挙に出る。コマロフスキーを医師として手当てするユーリは、お、お前は!?と父の仇であることを認識するが、それでも、オレは医者だ!と復讐心をぐっとこらえて治療するのだった――。
 そして少し時が流れ、第1次世界大戦が勃発。ユーリは、周囲の反対を押し切って、軍医として従軍することを決意し、妻や叔父さん(くどいけど妻の父)を残してモスクワを去る。そして戦地の野戦病院で、ユーリは看護婦として働くラーラに再会する。なんでも、ラーラは、コマロフスキーにレイプされたことを恋人パーシャが良く思っておらず、どうせ今でも繋がってんだろ、とかひどいことを言って、やけっぱちになって軍に志願し、行方が分からなくなってしまったのだという。そのため、パーシャを追って、自らも戦地へ身を投じたのだとか。そんな状況で出会った二人は、一瞬心が通じ合うが、戦地に届いた報せで、軍は撤退を決意、ユーリとラーラはそこで分かれ離れとなってしまう。その軍に届いた報せとは、皇帝の退位、すなわちロシア革命の勃発であった(※このあたりは去年の宙組公演『神々の土地』と時代が重なってますな)。
 ユーリは無事にモスクワに帰るが、革命の嵐が吹き荒れ、既に家も接収されており、妻たちは不自由な暮らしを強いられていた。そこでユーリは、貴族ではなく、一人の医者として、母の故郷であり、母の墓のある遠く離れた田舎へ移住することを決意し、叔父さんや妻を伴って列車でモスクワを去る。そしてその途中で、貴族ということで革命勢力に目をつけられ、ユーリはとある将校の元に連行されると、その将校こそ、ラーラの恋人パーシャだった。すっかり、冷血&残酷な男になり果ててしまったパーシャに、ユーリは、ラーラはお前を心配して探し回ってんだぞ!と説くも、パーシャは、けっ!知ったことかよ!的態度。実はパーシャも苦しんでいたのだが、もはや取り返しがつかない。釈放されたユーリは、目的地である母の故郷へ辿り着き、そこで静かで平和な日々を過ごす……と思いきや、ある日、医者のいない隣町で急患が出たということで、妻たちを残してその村へ急行、しかしその村には、ラーラが住んでいて、二人は運命的に再開し、とうとう、一夜を共に過ごすのだった―――てなお話です。はーーー全然短くまとまらねえわ。
 お話は、この後も怒涛の展開で、わたしはもうずっと、こ、これはどうなっちゃうんだ……と固唾をのんで見守ったわけだが、いろいろとどうしても駆け足展開で、分からないことも多く、これはもう、原作小説を読むしかねえ! と思うに至ったわけであります。はっきり言って物語はすっげえ面白かったすわ。超ドラマチックな展開で、すごいお話ですよ。
 というわけで、このすごい物語を熱演したキャスト陣をキャラとともにまとめておこう。
 ■ユーリ・ジバゴ:主人公。演じたのは勿論、轟悠様aka理事。芝居は大変素晴らしかった。けれど、どうも喉の調子が悪かったのだろうか? 歌は若干伸びやかさがなくて、なんだか少し苦しげに歌われていたような印象だ。それとも、役に合わせてわざと苦しそうに歌ってたのだろうか? わたしには良くわからなかったが、セリフ回しさえ少し聞き取りずらいような気もして、なんか、本調子でなかったよな気がしてならない。どうなんでしょう?? でもまあ、ビジュアルはもう、ホントにもう、男、すね。実に美しくカッコ良く、なにより立ち姿のピシッとしたシルエットはもう、さすがっすね。足が超まっすぐなんすよ。最強ジェンヌの名は伊達ではないと存じます。
 ■ラーラ:ヒロイン。ただ、わたしがどうも分からないのは、ラストでラーラは何故ユーリに会いに行かなかったのか? ということなのだが……おそらくここが男と女の違いで、男は、過去の女をじっと、ある意味未練がましく待つ生物であるのに対し、女性はきっと違うんだろうな……きっと、新たな人生を、過去を振り返ることなく生きてるんだろうな……とわたしは理解することにした。女性の皆さん、教えてください。なんで会いに行かなかったんすかねえ……。そしてこのラーラという女性を演じたのが、今、星組の娘役でナンバーワン歌姫とも言えるくらっちであります。いやあ、マジ素晴らしかったすなあ……歌は勿論、芝居もいいですねえ……くらっちは。わたしとしては是非ともこっちんの嫁となっていただきたいのだが、ちょっと難しいかもな……くらっちの方が先にTOP娘になってしまうような気がしますね……まあ、とにかく今回のくらっちは過去最高レベルに素晴らしかったと存じます。
 ■パーシャ:ラーラの恋人で革命思想の若者のち残虐な将校。演じたのはこっちんと同期の95期メンバーせおっち。やっぱりせおっちも、去年の夏の『阿弖流為』のように、役として目立つとその実力が非常に光りますなあ。大変良かったと思います。日々努力・研鑽を積んでいるのは間違いなく、歌も良くなってきたし、非常に将来が嘱望されますな。TOPになれるかどうかは分からないけれど、応援し続けたいすね。最高でした。
 ■トーニャ:ユーリの恋人のち妻。健気なイイ子。実はわたしはトーニャもまたよくわからない。なんでさっさとパリへ亡命してしまったんだろうか……もはやユーリの体も心も(この場所へ、そしてわたしの胸へ)戻ってこない、と見切ったってことなのでしょうか? それとも単に情勢としてもう待てない危険が迫っていたということだったのかな……つらいすね……そんなトーニャを演じたのは99期生の小桜ほのかさん。大変可憐でありました……今後の星組公演では、注目していきたい所存であります。
 ■コマロフスキー:悪党弁護士のち革命政府要人。まあ、とにかく悪い奴でしたが、ラストのウラジオストックへの逃避行は、どう理解したらいいんだろう……ここも実は良くわからなかった。コイツは要人なのに、逃げる必要があったのか……その関係性がもうチョイ理解したかったす。そして演じたのは星組ではなくてはならない貴重なバイプレーヤーの天寿光希さん。91期なんすね。素晴らしい悪役ぶりで、ほんとムカつきましたわ。でもそれこそが悪役の存在意義なわけで、実に目立っていたし、超渋かったす。
 
 とまあ、こんなところかな。しかし、フランス革命とロシア革命って、やっぱりずいぶん違うもんだなあ、というような漠然とした感想も抱いたわたしであるので、少しいろいろ文献を当たってみたいと思う。両者に共通するのは、「踏みつけられてきた怒り」であるわけで、その怒りを「自由・平等・博愛」の精神でぶちまけたフランス革命は、後に恐怖政治を生み出し、王政復古にも至ってその後ナポレオンを登極させ、その先も混乱が続くわけだが、ロシアの場合も、「自由・平等」の旗印で怒りが爆発したものの、手段としては「社会主義」という壮大な国家実験に至り、それも大失敗に至ることを我々はすでに歴史として知っているわけだ。なんつうか……わたしが言いたいのは、最終的に失敗に終わろうとも、人類に憑りつく「怒り」というものは抑えようがなく、一定のキャパを超えたら確実に爆発するものなんだろうな、ということで、人を怒らせていいことなんか一つもねえ、というわたしの持論は間違ってないかもな、と感じる次第であります。まあ、怒らせてもいいことないし、怒っても同じく、いいことは一つもねえと思いますよ。
  では最後に、毎回恒例の今回の「イケ台詞」を発表して終わりたいと思います。
  ※イケ台詞=わたしが「かーっ!! カッコええ!!」と思ったイケてる台詞のこと。
 「誇りは、この家にあるのではなく、心にあるのです!」
 今回は、主人公ユーリが1幕ラスト近くで叔父さんに言うこのセリフを選びました。モスクワを離れよう、と主張するユーリに、家が……とグズグズ言う叔父さんに対してピシャッというセリフです。まあ、生きてこそ、だし、誇りは胸に抱くものでしょうな、やっぱり。それにしても、大変グッと来た物語でありました。

 というわけで、もう長いので結論。
 昨日、W観劇チケットなるものを入手したわたしが、若干、まあ、観に行きますか程度の低めのテンションで観に行った星組公演『ドクトル・ジバゴ』は、そのわたしのボンクラ頭を吹っ飛ばすほど素晴らしくグッとくる物語で、非常に面白かった。そりゃそうだよな、もう超名作として世に知られた小説&映画だし。というわけで、わたしとしては原作小説を読みたくてたまらない気持ちであります。そしてキャスト陣も、理事こと轟悠さんは若干のどの調子が悪かったのではないかという気がしたけれど、星組の若いメンバーの熱演は素晴らしく、結論としては大満足でありました。実によかったす。最高でした。以上。

↓なにーー!? 小説はどうも絶版らしく、クソ高いプレミア価格がついてる! マジかよ! つうことは、こちらの映画を観ろってことか……ぐぬぬ……!!!

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