世の女子の中で、わたしが常々、謎に思っている人々がいる。いわゆる「だめんず」を愛してやまない女子たちだ。「だめんず」とは、ごく簡単に言えば、「ダメ」な男のことで、具体的には、ヒモ体質の働かない男や口先だけの男、あるいは広義ではDV暴力野郎など、わたしに言わせればクズ同然のゲス野郎どものことである。なんでまた、そんなダメ男を好きになるわけ? と真面目に生きる男としてお馴染みのわたしとしては憤懣やるかたないわけだが、 実際に生息するそのような女子を見ると、つまりキミは人を見る目が無いわけですな、と結論付けることにしている。そしてそんな自分が大好きな残念女子なのであろう。なるべく近づかないのが一番だ。ちなみに、さきほどわたしがお世話になっている美しいお姉さまから聞いたところによると、夢を追いかけると言っていつまでもうだつの上がらない野郎もここに含まれ、残念ながら、あんたもその傾向があるじゃないの、と言われてしまった。マジか……。そしてそういう男の世話をしたくなるのは、女子的DNAにプログラミングされているので、ある程度はやむなしだそうだ。なるほど……なんともはや、神様は残酷である。
 で。昨日わたしが観た映画、『CRIMSON PEAK』は、そんな「だめんず」野郎に恋した女子がとんでもない目に遭うホラーテイストあふれる映画であった。

 わたしは、この映画をホラーだと思って、どんな超常現象に襲われるのか楽しみに劇場へ向かったのだが、劇場を出たわたしは、若干ぽかーん、である。昨日は14日、TOHO(トーフォー)の日で1100円で観られるので観に行ったのだが、定価で観ていたら、ちょっといたたまれず、どこかでタバコを吸いながらコーヒーでも飲んで、気持ちを落ち着けてから帰ろうと思ったに違いなかろう。
 物語は、年代がはっきり分からないけれど、おそらくは20世紀初頭ぐらいだと思う。日本的に言えば、おそらくは明治の終わりごろから大正初期ぐらいだと思えばイメージしやすいだろう。主人公の女子は、ちょっとしたお嬢様で、小説家志望の、日本で言えばハイカラガールである。そして彼女にはひとつ特徴があって、ま、視えるんですな。ヤバイものが。そんな霊感ハイカラお嬢様はNYに住んでいるわけだが、以前から、お嬢様は幽霊から「クリムゾン・ピークに気をつけろ……近寄ってはならぬ……」と警告を受けているのだが、何のことかよく分からずにいると。そんな彼女は、ある日、お父様の会社に出資のお願いのためにイギリスからやってきた準男爵様と出会うと。で、典型的だめんずの夢追い人である準男爵は、自分の領地内で粘土採掘事業を進めるための運転資金が欲しいのだが、しっかりしている父はあっさり断る、のだが、とある大事件が起きて、結局、そんなダメ野郎(しかも重度のシスコン野郎)にすっかりFall in Loveで、一緒にイギリスに行ってしまう。そして、そのお屋敷の建つ地が「クリムゾン・ピーク<真紅の山頂>」と呼ばれていることを知り……とまあそんな話で、ともかくお嬢様はひどい目に遭う展開である。冒頭からの雰囲気は、これは『The Shining』的なお話なのかな……? と思って観ていたのだが、結論としては全く違ってました。
 とにかく、この映画は、監督Guillermo del Toroの趣味が全面的に炸裂していて、映像はいつもの通り豪華と言えばいいのか、なんだろう、絢爛? な画を見せてくれるが、登場キャラクターはどうにも変であった。
 霊感ハイカラお嬢様を演じたのは、わたしも大好きな素朴ガール、Mia Wasikowskaちゃん。なんかこの娘さんは、剥きたてのゆで卵のようなつるっとした美しい肌ですね。日本的に言うと、能年玲奈ちゃんに似ているような気がする。1989年生まれのオーストラリア人。『Alice in Wonderland』で世界的に大ブレイク後、順調にキャリアを重ねてますな。日本では今年の夏公開かな、『Alice2』の予告も既に公開されてますね。
 とんでもないシスコンで夢追い人のだめんず準男爵様を演じたのは、これまた宇宙一ダメな弟、ロキを演じたことでお馴染みの、Tom Hiddleston氏。マイティー・ソーの義弟として、宇宙規模のだめんずぶりを発揮した彼であるが、今回の映画もまたひどい。ロキも若干マザコンだったし、今回も重度のシスコンで、なんでこんな男がモテるんだと、わたしとしては理解できないが、世の女子たちは、だがそれがいい、と言うのだろう。あのですね、もうちょっと、男を見る目を養なった方が、幸せになれると思いますよ。と、モテない男を代表して申し上げておこう。まったくもって、ガッデムである。
 で、そのシスコン野郎のお姉さまを優雅に、そして恐ろしく演じているのがJessica Chastainさん。今回はとんでもなくおっかない、サイコ女子を迫力たっぷりに演じてくれたのだが、やっぱりこの人、綺麗ですね。わたしはまた、彼女や弟が、実は人外の存在で……という展開かと思っていたのに、まったくそんなことはなく、その点は非常になーんだ、で終わってしまったような気がする。もうちょっとひねった脚本であればもっと面白かったのにな、と思いました。
 最後。霊感ハイカラお嬢様を密かに愛する純情青年医師を演じたのが、Charlie Hunnam氏。彼は、del Tro監督の前作『Pacific Rim』の主人公パイロットですな。なんか半端なロンゲで、かなりイメージと違うけれど、今回唯一の常識人で、彼もまたとんでもなくひどい目に遭う気の毒なお医者さん役であった。確か設定は眼科医だったかな? でも、その眼科医という設定は一切、どこにも何にも生かされず、それなら普通に外科医とかの方がよほど物語に絡めることができたような気がする。まあ、主人公の霊感ハイカラお嬢様は眼鏡っ子なので、そこだけっすね、接点は。

 というわけで、結論。
 『CRIMSON PEAK』という映画を観に行って、一番なるほど、と思ったのは、Tom Hiddleston氏の女性人気の高さである。30代(と思われる)美人女子の一人鑑賞がすごく多かった。観た劇場が日比谷シャンテだったからかな?? つまりあれか、世にはだめんず愛好女子が多いってことか。まったくもって残念なお知らせである。ええと、映画としては、まあまあです。期待は下回りました。とは言え、Tom Hiddleston氏を愛してやまない淑女の皆さんは、ぜひ劇場へお出かけください。以上。

↓ 確かこの映画では、Tom Hiddleston氏は、かの有名な作家F Scott Fitzgerardを演じてましたね。『The Great Gatsby』とか、『Benjamin Button』の著者ですよ。
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