この秋~冬は有川浩先生大忙しである。
 10月に『図書館戦争 The Last Mission』が公開され、 また10/28には『だれもが知ってる小さな国』という新刊が発売になり、そして今回の『レインツリーの国』の映画公開である。また、来年かな、『植物図鑑』もすでに撮影済みで公開を待つばかりというからすごいものだ。というわけで、『レインツリーの国』を男一人で観てきた。
 予告は以前貼り付けたけれどもう一度貼っておこう。

 お話としては、↑の予告を観ていただけば分かると思うが、以前書いた通り、とある青年が、とある本のことがきっかけで、とある女性が運営するWebサイトに行きつき、運営者たる女性と恋に落ちるが、彼女は聴覚障害を背負っていて……というお話である。世に「ベタ甘」と評される有川先生の作品の中では、若干のビター・スウィートであろうか。原作は、聴覚障害のある方々にも非常に好意的に受け入れられているようなので、その点で大変リアルなのだと思うが、健聴者でその苦悩を知らないわたしとしては、観ていて少々痛々しい場面が含まれている。
 聴覚障害を知られたくないヒロイン、そしてなんでそれを先に言ってくれないんだと思う青年。どちらの言い分も、そりゃそうだよなと頷けるものの、どうしてもすれ違う二人。わたしが「痛々しい」と思う事すら、それは同情か、同情ならいらない! とヒロインを怒らせてしまうかもしれない。ヒロインが障害を知られたくないという気持ちも、理解できる。だって、そりゃそうだよ。初めて会う相手、しかもこれ一度きりしか会わないかもしれない相手に、そんな自分の心の傷をさらけ出すことはしないだろうし、女子として、「普通のデート」にあこがれる気持ちも理解できる。まあ、男としては、そりゃ当日はスーパーハイテンションだろうね。やったーー! 会える! どうしよう可愛い子だったら! と思って、のこのこ約束の場所にやってくることは、全男を代表して断言してもいい。浮かれてるにきまってるよ。そして実際に会って、想像をはるかに超えたスーパー美女だったら、もう完全にブッ飛ぶね、いろんなものが。完全に。
 で、青年がヒロインの障害に気付くのは、初めて実際に会って、ちょっとしたデートの最中に、エレベーターの定員オーバーのブザーにヒロインが気づかないシーンだ。わたしとしては、初めて会った女子に、あそこまで 言わなくたっていいじゃんと思うのだが……わたしが主人公の青年だったら、たぶん、もう少し前にヒロインの異常に気付けたと思うし、エレベーターの前であんなひどいことは言わない。と思う。思いたい。もっと静かなところがいい、と言われり、映画は字幕がいいとこだわるあたりで、わたしなら、えっと、それはまたなんで? とズバリ聞いてしまうと思う。まあ、おそらくはそれでも、しれっと何かそれらしい理由を聞かされて流しちゃうかもしれないけれど、それでも、もうちょっと連想が働くのではなかろうか。いや、でもやっぱり無理かなあ。主人公の青年は、劇中に出てくる通り、恋愛偏差値が非常に低いので仕方あるまいと思うが、しかしなんというか、もうちょっと察していただきたいと思いながら観てました。基本的に主人公の青年は真面目でいい奴だけれど、正直、わたしとはまったく違う感性の持ち主なので、残念ながらこの男には感情移入できなかったが、ヒロインは、そのかたくなな心のありようや、次第に心がほどけていく過程もがっちり心に響いた。こんな女子が周りにいたら、まずほっとけないと思う。だいたい、超美人でウルトラ可愛いし。なので、わたしとしては観ながら、青年のある種不器用な言動にいちいちイラつく気持ちもあったが、いつもしょんぼりしているヒロインがやがて笑顔を見せるようになる物語は非常に好感が持てた。最終的には、お熱いこって! 幸せにな、お二人さん! あばよ!! という若干柳沢慎吾めいた気持ちで映画館を出ました。はーーー。リア充めw

 ところで、この聴覚障害というものについては、わたしもまったく詳しくないので、いろいろ調べたいところではあるが、この作品のヒロインは、
 1)後天的である。10年前の事故で外傷を負い、その結果聴覚障害を背負うことになった。
 2)なので(と言っていいのかすらわからないけど)、しゃべることはできる。
 3)可聴音域に問題を抱えていて、高音の周波数帯が聞こえない。そのため、男の声はなんとか聞こえるが、女性の声が極めて聞こえづらい。つーかほぼ聞こえない。結果、会社の意地悪なOLたちにいじめられる。わたしとしてはこのOLどもが一番腹が立った。もちろん、スケベオヤジには心の底から怒りを感じたし、街でぶつかってヒロインを突き飛ばしたクソ野郎には、わたしならあの瞬間ブチ切れて絶対に後ろから蹴り飛ばしてボコってやるけれど、それでも、一番悪質で悪意のカタマリなのは、同僚のいじわるOLだと思う。
 おそらく、現実に同じような症例は多いのだろう。なお、ヒロインは補聴器は装着しているものの、ダメな音域はダメで、なまじ一部聞こえる故に、なかなか理解を求めることは難しいのではなかろうか。それは非常に厄介なことだと想像する。けど、あの会社はダメだ。もっと、優しい会社はいくらでもあると思うな。そもそも、障碍者雇用は会社の義務なので、小さめの会社だとむしろ歓迎してくれると思うな。ヒロイン程度であれば、といったら全国の聴覚障害を持つ方々に失礼かもしれないけれど、彼女は全く普通に仕事できるレベルだと思う。本人もしっかりしているし賢いし。なにもあんなに嫌な奴ばっかりの会社で働く必要はない。
 しかしまあ、これからもいろいろな難しい問題が二人に降りかかるかもしれないけれど、主人公の青年は、心の真っ直ぐな好青年なので、ホント、二人には幸せでいていただきたいと思います。

 最後に、出演者についてちょっとまとめておこう。
 ヒロインを演じるのは西内まりやちゃん。正直良く知らないけれど、ウルトラ可愛いのは間違いないところであろう。元々は「二コラ」のモデルからキャリアをスタートさせて、歌手でもあるんですな。芝居ぶりは、まだまだレベル。まあ経験少ないんだろうし、若いからこれからでしょうな。あ、意外と身長高いな。Wikiによれば170cmですって。
 青年は、Kiss-My-Ft2の玉森祐太くん。こちらも芝居ぶりはまだまだレベル。やっぱり、どうなんだろう、生粋関西人から見たら、若干インチキ関西弁っぽいのか、それとも完璧なのか、その辺は関東人のわたしには良くわからないが、この人はネイティブ関西人ではないんでしょうな、とは感じた。まあこれからも元気に活躍していただきたいものだ。しかし、玉森くんを否定するつもりは全くないけれど、どうせなら関ジャニの誰かを使ってもよかったのでは? ああ、錦戸くんは『県庁』で使っちゃったか……。
 ほか、脇を固める俳優陣では、やはりヒロインの母を演じる麻生祐未さん、青年の母を演じる高畑淳子さんがとてもいい感じなのと、青年と同じ会社の元気な可愛い女子を演じた森カンナちゃんが非常にわたしには魅力的に映った。イケイケでチャラけた娘ではあるけれど、オレならその仮面を外させてみせるさ、なーんて出来もしないことを妄想しながら観てました。森カンナちゃんといえば、わたしとしては仮面ライダー・ディケイドのヒロインとしておなじみではあるが、その後、いろんなドラマに出演して、順調に芝居ぶりは成長していると思う。元々可愛いしね。応援して行きたい所存である。

 というわけで、結論。
 『レインツリーの国』は、アリです。若干のビターテイストが甘さを引き立てていると言って良かろうと思う。だけど……オレならもっとヒロインを早く笑顔にできたね。と、まあ言うだけ詐欺ということで、ひとつよろしくお願いしたい。以上。
 
↓ おとといの記事にも書いたとおり、本作は、元々は『図書館内乱』の中で出てきた作品です。それを本当にまるまる一冊書き下ろすとは、すごいですな。