というわけで、今日は今年1本目の宝塚歌劇、月組公演を観てきた。
 今回の演目は『舞音―MANON―』。かの有名なフランス文学『マノン・レスコー』の宝塚Verミュージカルである。プッチーニのオペラやバレエ、映画の題材としてもお馴染みのこの小説は、すでに2001年にも宝塚においてバウホール公演がなされていたそうだが、今回はまた別の設定でのオリジナル・ミュージカルである。

 今回の舞台は1920年代のフランス領インドシナ。そこに着任した貴族出身の将校が、美女マノンと出会って恋に落ちるお話である。マノンと言えば、いわゆる「ファム・ファタール」として文学史上でも有名な存在だが、要するに「男を破滅に導く女」である。しかし、マノンの場合、悪女や魔性の女というより、むしろ逆に、天真爛漫すぎて男がだめになっていくというもので、そこには打算や恣意はない。今回は、95分と短いので、出会いから主人公が恋するまでおよそ5分ぐらいなので、全く前知識なく観ていると、ええと、これって一体……と展開の速さに驚くかもしれない。でもまあ、宝塚作品にそういう細かい突っ込みは無粋極まりないので、まあ置いておくのが正しい鑑賞姿勢であろう。今回、わたしが一番、へえ~、と思ったのは、主人公の別人格というか、主人公の立場や建前を超越した、本音? のような別人格が、影となって常に主人公に付きまとう演出法である。これはちゃんと観ていればよく分かる仕掛けになっていて、なるほどと思えるものなのだが、もうちょっとだけ説明があっても良かったかもしれない。いや、いらないか、やっぱり。それを説明したらもっと無粋か。そうっすね。まあ、宝塚ファンの皆さんには不要であろうか。
 で。月組は、わたしは毎回必ず観劇しているわけではないけれど、わたしが初めて観たのは、以前花組公演のレビューを書いたときも触れたが、2010年の『スカーレット・ピンパーネル』である。当時のTOPスターは、霧矢大夢さん。そして、現在のTOPである龍真咲さん(りゅう まさき:通称まさお)は、現在の花組TOPスター明日海りおさん(通称:みりお)と事実上のダブル2番手であった。そしてたまたまわたしが観た回で、悪役のショーヴランを演じていたみりおちゃんをそれ以降応援してきたのだが(もうひとつの役を、まさおとみりおで役代わりで交互に演じていた)、たぶんこの時点ではまさおちゃんのほうが人気があったんじゃないかと思う。その後、まさおちゃんは見事月組のTOPとなり、みりおちゃんはその後に花組に移籍になってTOPとなった。それまで何かとまさおとみりおはセット扱いだったのだが、まさおが月組TOPになってからも、TOPお披露目公演の『ロミオとジュリエット』やその次の『ベルばら』では、TOPなのにまだ、みりおと役代わりで主役を演じられないこともあって、けっこう気の毒な扱いをされていたと思う(なお、みりおは『ベルばら』後に花組に移った)。
 しかし、そんなまさおちゃんだが、実際のところ、素顔の彼女は、わたしのセンスからすると、現TOPの中で一番女の子っぽい可愛い女子である。たぶん一番線が細く華奢で、舞台衣装・舞台メイクではない、素のまさおちゃんはとても可愛らしいと思う。その点で、男役としては、少年っぽい役が多かったような気がする。なので、いわゆるダンディー系の男役はほとんど演じていない。『風とともに去りぬ』では、男主役のレッド・バトラーではなく、なぜかヒロインのスカーレット・オハラを演らされていたし。おそらくは、まさおちゃんの線の細さと可愛らしさが、そういう配役になってしまったのだと思う。というわけで、まさおちゃんはTOPとしての美しさ、オーラを非常に高いレベルで持っているのに、今までどうも、THE 男役的な役を演じられなかった。今回の、マノンに恋する将校も、若干世間知らずっぽさの残るお坊ちゃんである。でもまあ、そこがまさおちゃんの魅力であるし、この役を轟理事あたりが演じたら全く別の話になってしまいそうだし、これはこれでいいんだろうな、と納得することにした。
 先日、とうとうまさおちゃんも、次の大劇場公演(宝塚6月、東京8月)をもって退団することを発表した。これで、2年前の「100周年TOPメンバー」は、花組のみりおちゃんだけが残ることになる(※正確に言えば、花組の100周年TOPは蘭寿とむさんと言うべきかも)。まさおが退団してしまうなんてとても淋しいけれど、きっとまさおなら、女優としてもっともっと輝けると思うよ。応援するから頑張っていただきたいと思う。
 そして最後に、毎回お約束の、今回のイケ台詞を発表します。
 ※イケ台詞=わたしが「かーっ!! カッコええ!!」と思った台詞のこと。
 「(マノンを後ろから抱きしめて)君はここにいる。わたしの腕の中に。君を得るためならわたしは何だってする・・・君は・・・わたしの女だ」 かーっ!! カッコええですのう!!
 
 というわけで、結論。
 月組公演『舞音―MANON―』は、まさおちゃんのカッコよさが十分楽しめる、かなりイケてるお話でした。なお、わたしの月組のイチオシは、珍しく娘役の海乃美月ちゃんです。超かわええ……前回の『1789』以来ぞっこんです。あと、今回のレビューショー『GOLDEN JAZZ』は、かなりノリノリですので、幕間ではグッズショップQuatre Revesへ走って、ミニタンバリンを買いましょう!! 相当楽しいですよ!! 以上。

↓ マノンと言うと、わたしの場合思い出すのはこれ。小学生だったかな、超エロくてドキドキしたわ……。当時のチラシとかポスターの写真は下のジャケ写とは全く別物の、超エロイものでした。
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2013-10-26