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 この年末、わたしはせっせとHDDにたまっている未視聴の映画(主にWOWOWで録画)を観ていたわけだが、まあ、残念ながらハズレが多くこのBlogに書くネタとしてはちょっとなあ……と思うような作品が多かったのだが、読書の方は、結局1冊しか読まなかった。
 その1冊とは、買ったのは2週間ぐらい前なのだが、発売をずっと楽しみにしていたコイツであります。なお、紙の本ではもう数年前にとっくに出ていた作品なので、正確に言うと、電子化されるのを待ってたわけです。

 去年2016年に、わたしをとても楽しませてくれた上橋菜穂子先生による「守り人」シリーズの番外編第2巻、『炎路を行く者』である。本編は既にちょっと前にこのBlogで書いた『天と地の守り人』で美しく完結しているが、この番外編は2つの中編から成っていて、一つはタルシュ帝国の密偵であり、元ヨゴ皇国民であったヒュウゴの幼き頃のお話であり、もう一つは、シリーズの主人公バルサの15歳当時のお話であった。
 まず、ヒュウゴを主人公とした中編「炎路の旅人」は、なぜヒュウゴが自らの故国を攻め滅ぼしたタルシュ帝国の密偵となる道を選んだのか、が語られる、なかなか泣かせるお話でありました。このお話によると、ヒュウゴは元々ヨゴ皇国内における帝の親衛隊「帝の盾」の家系であり、いわば裕福層の武人家庭に育ったお坊ちゃんだったのだが、タルシュ帝国の侵略により、ヨゴ皇国は吸収併合され、枝国となる。その際、タルシュ帝国は、一般のヨゴ皇国民の生命は保証する代わり、後の復讐を抑えるため、軍人(=武人)階級のみ、一切の例外なく粛清する。その粛清の嵐の中、ヒュウゴは母と妹とともに逃げる際、自分一人だけ助かってしまい、落ち伸びると。で、瀕死のところをとある少女に助けられ、なんとか少年時代を過ごすのだが、その少年時代は常に虚しさを抱えたものであり、街の悪ガキとなってヤクザ予備軍として顔役的な存在までのし上がっていた頃に、自らも別の枝国出身であるタルシュの密偵と出会い、その男の話を聞いて心が揺らぐという展開である。
 曰く、彼もまたタルシュに征服された国の出身なので、ヒュウゴから見たら卑怯な男に見えるかもしれない。しかし「<帝の盾>の息子殿にはとうてい許せぬ、やわな忠誠心だろう。え? 卑劣な風見鶏に見えるか? いいや、おれは石よりも硬い忠誠心を持っているよ。仕えているいる相手への忠誠心じゃないがな。おれは、自分に忠誠を誓っている。――それは決して揺るがぬ。殺されてもな。」
 いやはや、大変カッコイイセリフだと思う。
 つまりこの密偵は、「自分の目で世界を見極めろ」という話をしているわけで、彼の言葉をきっかけに、ヒュウゴは自らの狭い視野に映っていた小さな世界からの脱出を決意するわけだ。それは、それまでヒュウゴがまったく考えていなかったものであり、たとえばタルシュに併合されたことで、逆にヨゴ枝国の生活インフラがどんどん整っていったり、武人は殺されたのに帝本人はどうやら生きているらしい、といった現実など、様々な思惑の結果としての現在を改めて見つめ直すきっかけとなるわけで、この後のヒュウゴの活躍の基礎となる話なので、シリーズとしては結構重要なお話だと思いました。ヒュウゴがいなかったら、チャグムは故国を救えなかったし、そんな重要キャラの行動の動機を知ることができて、わたしは大満足です。ズバリ、面白かった。

 そしてもう一本収録されているバルサの話「十五の我には」は、『天と地の守り人』でチャグムと別れる直前の夜に交わした会話をバルサが思い出し、もっと気の利いたことを言ってやればよかったと思いながら、自分がチャグムぐらいの時なんて、もっともっと幼かった……と回想するお話である。
 『天と地の守り人』で、バルサとチャグムが別れる時に話していたのは、殺人を経験してしまったチャグムが、この苦しみはいつか心の折り合いをつけられるのか、それとも永劫に続くのか、と問うものであった。その時バルサは、その苦しみはなくならない、というよりもなくしちゃいけない、と答えた。その答えに自信のないバルサが、かつて自分にはジグロという素晴らしい先生がいたことを想い、自分はチャグムの心を支えてあげられたのだろうか……と想いながらかつての少女時代を思い出すという展開である。バルサの過去話というと、番外編第1巻『流れ行く者』でも語られたバルサの少女時代と重なっているお話で、当時、いかにジグロに守られていたか、そして厳しいながらもなんと幸せだったか、という感謝となつかしさ、そして、それをまるっきりわかってなかった自分に対する自嘲めいた痛み、が語られる。
 いまや30歳を超え、15歳の時に見えなかったものがたくさん見えるようになった。けれど、それでもまだまだ分からないことが多い今。あの日のジグロのように、わたしはチャグムにとって良き先達となっているのだろうか、と述懐するバルサは、やっぱりとてつもなく優しく、まっとうな女だと思う。
 用心棒稼業で、身を守るためとはいえ、人を傷つけあまつさえ命を奪うことすらある毎日を、バルサは悩みながらも、「仕方なかった」と心を麻痺させることなく、常に痛みを忘れずにいるという覚悟をバルサは持っている。やっぱり、カッコいいですな。カッコいいってのは違うか、なんだろうこれは。バルサに対するわたしの敬意、なのかな。まあ、現代日本に平和に生きる我々には持ちようのない、想像を絶する境地だろうと思う。しかし、想像を絶するけれど、想像してみることに意味があるんだろうな、きっと。ホント、わたしは上橋先生による「守り人シリーズ」に出会えて良かったと思います。ちょっと大げさか、な。バルサやタンダ、そしてチャグムに幸あれ、と心から願いたいですね。素晴らしい物語でした。

 というわけで、結論。
 上橋菜穂子先生による「守り人シリーズ」の、最後の物語『炎路を行く者』を読み終わってしまい、本当に、これでもうお別れとなってしまった。とても淋しく思う一方で、読者としてとても幸せな余韻がまだわたしの心の中に漂っている。いやあ、本当に面白かった。いよいよ今月から始まるNHKの実写ドラマ第2シーズンも楽しみですね。成長したチャグムに早く会いたいですな。そしてもちろん、綾瀬バルサにも、また会いたいです。以上。

↓ しかし第1シーズンのバルサとチャグムの別れのシーンは泣けたっすね……あそこのシーンは原作を超えたといっても過言、じゃないと思うな。
精霊の守り人 シーズン1 Blu-ray BOX
綾瀬はるか
ポニーキャニオン
2016-08-17


 

 いやー。マジで泣けたというか、これは「感動」だろうな。
 悲しいのではなくて、何か熱いものがこみ上げるというか、……何かとてつもなく大切なものを感じ、心が動かされたわけで、わたしはこの作品が大好きだと全世界に宣言したい気分である。本当にラストは泣けました。最高です。


  わたしは、この上橋菜穂子先生による『守り人』シリーズと呼ばれる一連の作品を、存在は知っていたが、実際に読んだのは今年の春である。紙の本は、もう10年?近く前に刊行されている作品なので、もはや世の中的にはお馴染みだろうし、アニメにもなった作品なので、大勢のファンがいるだろうと思う。だから、わたしがこうして感動に打ち震えているのも、実のところ、超いまさら、な話ではあろう。わたしはこの『守り人』シリーズを読むよりだいぶ前に、『獣の奏者』や『鹿の王』などを読んで、これまたいたく感動していたので、上橋先生の作品が素晴らしいことはもちろん分かっていたつもりだが、この『守り人』シリーズも、ホントにまあ、素晴らしく、心に残る作品であった。
 わたしが読み始めたきっかけは、実のところNHKの実写ドラマ化だ。そのドラマ化に合わせて、電子書籍化もなされたため、それじゃ読んでみるか、と今年の春に買ってみたわけである。
 しかし、春の段階では、まだ電子書籍では全巻発売になっておらず、最後の完結編である『天と地の守り人』の3部作だけはおあずけ状態となっていたのだ。なので、早く出ないかなー、つかもう紙の本で買っちまおうかしら、と何度も悩んでいたところ、ようやく先週、わたしが愛用する電子書籍販売サイトBOOK☆WALKERから、「新刊が出ましたよ~」とお知らせが来たのである。このときは、わたしはものすごくうれしくて、すぐさま購入し、読み始めたわけである。
 一応、この完結篇たる三部作以外は、このBlogでもいちいち記事を書いたので、ちょっと自分用にまとめてリンクを貼っておくとしよう。
 1作目の『精霊の守り人』の記事はこちら
 2作目の『闇の守り人』の記事はこちら
 3作目の『夢の守り人』の記事はこちら
 4作目の『虚空の旅人』んぼ記事はこちら
 5作目の『神の守り人<来訪編><帰還編>』の記事はこちら
 6作目の『蒼路の旅人』の記事はこちら

 というわけで、今回の『天と地の守り人』は、シリーズ7作目にあたる。そして3分冊になっていて、ボリュームとしてはシリーズ最大の読みごたえがあり、物語としても非常に濃厚かつ劇的で、そして結末としては(ほぼ)すべてに明確な回答が描かれ、完結編として完璧な完成度であるといってよいのではないかと思う。
 シリーズを読み続けてきた人(そうじゃない人でいきなりこの7作目を読む人はいないよね?)であれば、間違いなく喜び、悲しみ、怒り、楽しんで、そしてラストは非常にすがすがしいものを感じるだろうと思う。これまで出てきたほぼ全てのキャラが今回総出演だし、何といっても、チャグムのまっすぐでりりしい成長には、誰しも目を細めることだろうと思う。
 そもそも、本作は、明確に前作『蒼路の旅人』のラストシーンからの続きである。1作目でまだ幼かったチャグム、バルサと出会い、成長し、バルサとの別れにしょんぼりするチャグム。あの少年がすっかり成長し、外交官的な役割をもって周辺諸国に赴き、世界を知っていく過程は、読者も一緒にこの物語世界を体験していくことにシンクロするわけだが、前作でとうとう戦争が起こり、囚われの身として南の大陸にあるタルシュ帝国の帝都に連行され、その後、海に一人飛び込み、行方不明になったわけで、もう読者としては心配で心配でならなかったわけだ。本書はそこからのスタートである。
 ここで、関係各国の思惑を簡単にまとめておこう。
 ◆タルシュ帝国
 領土拡大でどんどん栄えている新興軍事国家。南の大陸はほぼ手中にしており、侵略した国々を「枝国」として併合し、現地人を徴兵し、税を徴収することで国家を運営している。ただし、とりわけひどい圧政というわけではなく、有能な人間なら枝国出身者でも重要ポストに出世できる柔軟性を持っている(実際、皇帝の右腕である宰相や兄王子の右腕も被侵略国出身)。そして現在はもう拡大の余地は北の大陸しかない、という状況でもある。なんとなく、豊臣家的な、家臣に与える土地がなく朝鮮出兵するしかない的な状況だったり、M&Aで外見的には成長を続けているように見える(けど実際の本丸は何も変わらずシナジーとやらもまるで生み出していない)、よくある大企業のパターンと少しだけ似ているかもしれない。そしてこの国の皇帝は、もはや余命いくばくもなく、二人の王子が手柄を競って次期皇帝の座を狙っていて、実は一枚岩ではないという状況にある。
 前作で、チャグムが出会ったのは、「南翼」と呼ばれる弟王子の方で、北の大陸侵攻軍の総司令官的な立場にあるが、本作では「北翼」の兄王子も登場。その関係性が結構大きなポイントでもある。あ、各キャラクターにつていは、上記の過去の記事を参照してください。
 ◆ロタ王国
 第5作目の舞台となった国。騎馬民族。聡明な王がいるが病弱で、王弟が政務を任されている。国は実際のところ南部の富裕層と、北部の貧困層に分かれていて、その溝は深い。王弟は悪い奴ではないし、話の分かる男だけれど、北部に肩入れをしているため、南部では人気がない。タルシュ帝国の北の大陸侵攻に際しても、意見が分かれたままであり、あまつさえ、南部の富裕層は密かに「北翼」側のスパイたちと共謀していて……という状況。そんなことは知らないチャグムは、まずはロタ王国へ向かい、同盟を求めるが……。
 ◆サンガル王国
 第4作目の舞台となった国。すでにタルシュに下っている。海洋国家で、王はあくまで最も強く影響力のある人間=その人間について行けば利益がある、というような存在とみなされていて、悪い言葉で言えば日和見な国民性があり、この国も一枚岩ではない。ある意味ビジネスライクな国民性のため、利に聡いし、交渉力も強くしたたか。今のところ、おとなしくタルシュに従う体ではあるが、内心では、従うつもりはない。本作ではほとんど出てこない。
 ◆カンバル王国
 第2作目の舞台となった国。バルサの故国。高地民族。北の山の向こう側の痩せた地に住み、豊かではない。現王はまだ若く経験不足であり、王としての器も若干問題アリ。「王の槍」と呼ばれる屈強な男たちがいる。その「王の槍」の筆頭であるカームは、もはやタルシュに隷属するしかないと考えていたが、彼もまた「北翼」側のスパイにいい話しか聞かされておらず、チャグムとバルサの到来で、事件の背景を知るに至り――てな展開。
 ◆新ヨゴ皇国
 シャグムの故国。元々は200年前に南の大陸から侵攻・移住してきた人たちの国。設定として、帝=神の子であるとされていて、実に古めかしい政治体系を採っている。この国では、皇太子チャグムを追い落とそうとする勢力があって、そいつらは、基本的に戦争さえも神の力で何とかなると考えており、そんなのんきな連中が牛耳っている。もはや征服される一歩手前で状況は極めて切迫しているが、愚かなことばかりしていて、さっさとチャグムは死んだものとして盛大な葬式までやっちゃった。戦争に対しては、民間人を徴用して場当たり的にしのごうとしていて、タンダも草兵として徴兵されてしまうが――と、超ハラハラする展開が待ってます。
 
 というわけで、物語は、まず、バルサはチャグムと無事に再会できるのか(そりゃできるに決まってる)、そして北の大陸の各国は同盟が組めるのか(そりゃ組めるに決まってる)、そして、タルシュとの戦いの趨勢は――という点が重要なのだが、結論が分かっていても、その過程は非常に読みごたえがある。とにかくですね、チャグムはかなり傷だらけ&血まみれになるし、バルサももちろんいつも通り全身傷だらけ&血まみれだし、もうとにかく一瞬たりとも飽きさせないペースで、読者としてはもうずっとハラハラドキドキであった。
 今回、わたしが一番素晴らしいと感じたのは、やっぱり故国に凱旋したチャグムと、父である帝とのやり取りであろうと思う。このやり取りで、本作のタイトル「天と地の守り人」の意味もはっきり分かる仕掛けになっていて、わたしはいたく感動した。チャグムは、まったく現実を直視しようとしない父=帝に対して、もはや弑するしかないのか、と悩むわけですが、この葛藤はとでもグッときましたね。この国の現実的な人々はみな、もう帝をぶっ殺すしかない、と思っている中での、チャグムと帝のそれぞれの決断は、実にまっすぐで美しく、これしかない、と納得の結末であった。
 また、バルサとタンダの関係も、非常に良かったすねえ……。一兵卒として戦場に駆り出されたタンダ、そしてチャグムを見送った後に、戦場に消えたタンダを探すバルサ。この二人の最終的な結末も、読者として本当に良かったね、と心から安心したし、二人に幸あれと心からの祝福を贈りたいと思った。
 上橋先生の作品は、常に「まっとうに」生きる主人公が、時にひどい目に遭ったり、あるいは過去に苦しむことがあっても、真正面からそういった苦難に向き合い、逃げることなく、最後にはその「心にやましさのない、まっとうさ」故に救われるお話だと思う。そういう意味では、チャグムやバルサは、上橋作品の主人公たる資質を最後まで失うことなく、読者としては共感してしまうわけで、実に読後感も心地よいと思う。
 それから、サブキャラでは、やっぱりヒュウゴが光ってますね。命を懸けて、タルシュ帝国を変えようとするヒュウゴも、今回大活躍だったし、ヒュウゴがいなければ、この物語は成立しなかった大功績者ですよ。
 チラッとしか出てこなくて、若干残念だったのは、第5作目で出てきてバルサと戦ったシハナと、同じく5作目のキーキャラであるチキサとアスラの兄妹かな。シハナは、ロタ王国内でバルサとチャグムを助けてくれるけれど、あまり活躍の場はなかったし、結局どういう立場にいるのか、の明確な説明はなかったかも。チキサとアスラは、冒頭でタンダのところにやって来るけれど、物語的な役割としては特に重要ではなかったかな。どうせなら、サンガルのタルサンや、女海賊のセナも出てきてくれたら嬉しかったのだが、まあそれは贅沢というものかな。

 つーかですね、わたしは読み終わって、ますます来春放送予定のNHKでの映像化セカンドシーズンが楽しみになってきました。シハナを真木よう子さんが演じることが発表されているけれど、綾瀬バルサVS真木シハナは相当かっこいいでしょうな。大人になったチャグムにも、早く会いたいと思います。詳しいキャストは、NHKのWebサイトに載ってます。超期待すね。

 探したけれど、セカンドシーズンの予告動画はyoutubeにはアップされてないな……なのでDVD&Blu-rayセールス用の予告でも貼っとくか。NHKの公式Webサイトhttp://www.nhk.or.jp/moribito/には、一つだけ、30秒の短い動画が置いてあります。そちらでは、ちらっとだけ、綾瀬バルサVS真木シハナが収録されてますので、それを観てテンションを上げておくのが良いと思います。また、上橋先生のセカンドシーズンへ向けたお言葉なども掲載されているので、必見かと存じます。うおー、楽しみだ!

 というわけで、なんかまるで取り留めないけれど結論。
 上橋菜緒子先生による「守り人」シリーズは最高である! そしてその完結編、『天と地の守り人』三部作は感動のフィナーレであり、物語はすべて収まるところに収まり、美しくて心にグッとくる見事な作品であった。わたし的には、『守り人』『獣の奏者』『鹿の王』は甲乙つけがたく、どれも最高だと思います。読んだこののない人は、ぜひ一度読んでもらいたいものです。マジ最高です。以上。

↓ 後はこれだけ、外伝が1冊残ってますが、勿論すでに購入済み。正月ゆっくり読むんだ……

 

 先日の日曜日、午前中にぶらっと、久しぶりに京王線に乗って「芦花公園駅」に降り立ったわたしである。隣の千歳烏山は、親戚が住んでいて、わたしには大変お馴染みな街なのだが、わたしが芦花公園駅に降り立つのは、おそらく30年ぶり以上の久々だ。各駅しか止まらないため、何気に新宿から時間のかかるこの駅に、わたしは一体何のために降り立ったのか?
 えーと、サーセン。分かるわけないっすね。
 なので素直にお話しますが、↓コイツを観に行ってきたわけであります。setagaya05
 「世田谷文学館」というところで開催中の、『上橋菜穂子と<精霊の守り人>展』である。
 ロケーションとしては、京王線の芦花公園駅から歩いて5分もかからないぐらいの閑静な住宅街の中にある。駐車場もあるらしいので、最初は車をかっ飛ばしていくかとも思ったのだが、まあ、首都高の渋滞にイラつくのも嫌だし、ま、ここはおとなしく電車で行ってみるか、というわけで、久しぶりの京王線乗車と相成った。駅から、まっすぐ歩いていくと、↓こんな感じにズドーンと看板もあるので、実際迷いようはないです。
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 10時OPENということで、わたしが現地についたのは9:55頃だが、ガラガラだろうな、と思っていたら、5人ぐらい、親子連れや熱心なファン(?)と思われる方が既に並んで待っていた。わたしはNHKのドラマから入った超・にわかファンなので大変失礼ながら、上橋先生のファンの規模の想像がついてませんでした。さすがすね。
 で。すぐに会場になり、チケットを買って入っていくと、すぐ、チケットもぎりの横に、こんな風に、「バルサの短槍」がこれまたズドーンと展示してあって、さっそくテンションが上がってきました。
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 これは実際の放送で使った奴っぽいですよ(?いや、サーセン。興奮しててちゃんと文字読まなかったので未確認)。ここは写真撮っていいよゾーンでした。
 中は、まず前半は、「守り人シリーズ」関連の展示があって、後半は上橋先生ゾーンとなっている。これまでの「守り人シリーズ」の歴史が分かる展示、実際に上橋先生が使ってたPC(富士通のFM-Vだった)や、初稿ゲラや入稿原稿などを観ることができる。そして「国際アンデルセン賞」のメダルや、デンマーク王室からの手紙だったり、上橋先生の活躍の軌跡を知ることが出来る展示となっている。
 そしてメインの広い展示では、NHKドラマでの衣装や小道具などの展示や、残念ながら今年、若くして亡くなってしまった、挿絵を担当されていた二木真希子さんの生原稿なども展示されていた。
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 ↑ ここも、撮影していいよゾーンでした。左の衣装が、まさしく綾瀬はるかちゃんが着ていたバルサの衣装ですな。右と真ん中はチャグム君の衣装ですね。ホントはさらに右にも、ジンの衣装だったかな? も、展示されてます(シュガの衣装だったかな……いや、ジンだったと思う)。ちなみにジンを演じた松田悟志さんは、わたしにとっては「仮面ライダー龍騎」における、仮面ライダー・ナイトでお馴染みの、大変カッコイイ人です。
 ちなみに、わたしがとても、へえ~、と思ったのは、この「守り人シリーズ」の刊行前に、上橋先生が偕成社の編集に原稿を送る時に同封した手紙が展示されていたのだが、その中で、もし出版して、挿絵をつけるなら、二木真希子さんにイラストを担当してほしい、と要望していることが書かれていて、このこと自体は確かあとがきでも書かれていたと思うけれど、原稿を送る時点ですでに指名してたんだなあ、というのは大変興味深かった。
 で、後半は、上橋先生の文化人類学者としての研究史のような感じにさまざまなものが展示されている。文系で博士号を取得するのは非常に大変で、わたしは博士前期課程(=いわゆる修士)でさっさと見切りをつけてしまった男なので、修士論文を書くことで終わりにしてしまったが、文系の博士号取得者にはもう、無条件ですげえと思ってしまう。しかも文化人類学という、フィールドワークが基本の学問だ。机にかじりついていればいいものでは全くないだけに、わたしの上橋先生に対する尊敬は三倍増しである。ほんとうに、地道で孤独な日々だったと思う。修論を書くのにかなり苦労したわたしには、博士論文なんて、そりゃあもう、精神的にも肉体的にも相当過酷であったことは想像に難くない。

 というわけで、わたしは『上橋菜緒子と<精霊の守り人>展』を楽しく堪能してきたわけであるが、わたしはつくづく思ったことがある。それは、おそらく「守り人シリーズ」は、その発表があと10年遅かったなら、完全にいわゆる「ライトノベル」に分類されるものだったのではないか? ということだ。もちろん、偕成社という児童書の出版社から刊行されていたらやはり児童書として区分されたかもしれないけれど、実際、10代20代、あるいはもっと上のわたしのようなおっさんが読んでも非常に面白い作品でもあるし、ライトノベルのどこかのレーベルから刊行されても全く違和感のない作品である。この「守り人シリーズ」を、ライトノベルではなく児童文学にカテゴライズさせた一番の要因は何なのだろう?
 時代? 出版社? そもそもの内容? おそらくはそれぞれが要因であることは間違いないが、おそらくもっとも重要なのは、会社の売上や利益よりも、作品本位で作品そのものを大切にする編集者や営業・宣伝との出会いが一番の要因ではなかっただろうかとわたしは思うのである。昨今のライトノベルは、無理矢理アニメ化してアニメが終わったらもう誰も見向きもしないような実に残念な状況だ。それじゃあ、作品が育つわけはない。
 ちなみにわたしが、日本の小説で最も好きで、今すぐ新作を読ませてくれるなら、そうだなあ、1,000万払ってもいいと思っている作品は、小野不由美先生の『十二国記』シリーズだ。あの作品も、元々は「講談社X文庫ホワイトハート」から刊行されたもので、女子向けラノベだったわけで、数多くの才能が、ライトノベル界には存在しているはずなのは、現在も変わりないと思う。だから、もっともっと、凄い作品が生まれてきていいはずなのだが……時代が許さないんすかねえ……それとも、幸せな作家と編集・営業との出会いが生まれてないのかなあ……もっと、第2第3の上橋先生や小野先生が生まれてこないと、ホントにもう、ライトノベルはつまらなくなってしまうだろうな、と、おっさんとしては思うわけである。まったくもって残念だ。

 というわけで、結論。
 上橋先生や、「守り人シリーズ」のファンの方は、ぜひ、京王線に乗って、芦花公園で降り、ちょっくら世田谷文学館へ足を運んでいただきたい。そして編集者も是非行ってみて、当時の上橋先生と編集部のやり取りの手紙などを見て、ちょっとだけでも自分の作家との付き合いを振り返ってほしいものである。しかし、それにしてもドラマの第2シーズンが待ち遠しいですな。また、綾瀬はるかちゃんのバルサに出会いたいものです。そして、それまでにはシリーズを全部読んでおきたいですな。「守り人シリーズ」は、読んでいないなら超おススメです。以上。

↓ 早く電子書籍出てくれ……もう耐えられそうにないんですけど……。紙で買ってしまいそう……。


 

 というわけで、このところずっと読み進めていた、上橋菜穂子先生による「守り人シリーズ」。
 読み終わるたびにせっせとレビューを書いてきたわけだが、もう7作目まで読み終わり、続きが気になるぜ!! と一人で盛り上がっていたところ、なんと来年1月にNHKで放送される実写ドラマ版の、第2シーズンのキャストがとっくの昔に発表になっており、それをさっき知って、おおお、なんてこった!! チェックが甘かったぜ!! と反省しているわたしである。しかも、その登場人物から、大体のお話も想像がつくわけで、まったくもって抜かってた!! と、わたしは先ほどから、大変自分が許せないのであります。
 というわけで、今日はこれから宝塚歌劇・星組公演を観に行くのだが、その前に情報をちょっと自分用メモとしてまとめておこうと思った次第であります。要するに、手抜きです今日は。

 まず、今のところわたしが書いたレビューをまとめておこう。
 ■シリーズ1作目『精霊の守り人』
 【舞台となる国】新ヨゴ皇国
 【登場人物】バルサ、チャグム、ジグロ(故人)、トロガイ、タンダ、シュガ、ジン、帝

 ■シリーズ2作目『闇の守り人』
 【舞台となる国】カンバル王国 (新ヨゴ皇国の北にあるバルサの故国)
 【登場人物】バルサ、ジグロ(故人)、カルナ(故人・バルサの父)、ログサム王(故人)、カグロ(ジグロの兄)、ユグロ(ジグロの弟)、カーム(カグロの長男)、ラダール王(現在の王)
 
 ■シリーズ3作目『夢の守り人』
 【舞台となる国】新ヨゴ皇国
 【登場人物】バルサ、チャグム、トロガイ、タンダ、シュガ、ジン、一ノ妃、ユグノ

 ■シリーズ4作目『虚空の旅人』
 【舞台となる国】サンガル王国 (新ヨゴ皇国の南にある海洋国家)
 【登場人物】チャグム、シュガ、タルサン(新サンガル王の弟)、カリーナ(新サンガル王の姉)、サルーナ(新サンガル王の妹)、ラダール王(カンバル王)、カーム(カンバルの王の槍)、ヨーサム王(ロタ王)、ラスグ(タルシュ帝国呪術師)
 
 ■シリーズ5・6作目『神の守り人<来訪編><帰還編>』
 【舞台となる国】ロタ王国 (新ヨゴ皇国の西にある騎馬民族の国)
 【登場人物】バルサ、タンダ、ヨーサム王(ロタ王)、イーハン(ヨーサム王の弟)、スファル(王に仕える呪術師)、シハナ(スファルの娘)、マーサ(商人)、アスラ・チキサ(ロタの民の兄妹)、トリーシア(故人・兄妹の母)

 ■シリーズ7作目『蒼路の旅人』
 【舞台となる国】新ヨゴ皇国→サンガル王国→タルシュ帝国
 【登場人物】チャグム、シュガ、ジン、帝、トーサ(チャグムの母方の祖父)、サルーナ、ヒュウゴ(タルシュの密偵)、セナ(サンガルの海賊の娘)、ソドク(ラスグの弟)、ラウル王子(タルシュ皇帝の次男)、クールズ(ラウルの右腕の宰相)

 はーーーー。またしても長くなってしまった。
 で。どうやら、NHKの実写ドラマ版、第2シーズンは2017年1月放送らしいのだが、どうもストーリーは、原作とちょっと順番や情勢が変更されているらしい。まあ、詳しいことは、以前もリンクを貼っておいた通り、上橋先生が直接説明してくれているWebサイトがあるので、そちらを観てもらうとして、キャストと共に、その変更点をまとめておこう。

 ■NHK実写ドラマ第2シーズンの舞台は「ロタ王国」だ!!
 これも以前書いたが、NHK実写版の第1シーズンのラストは、原作ファンからすると、「な、何だってーーー!?」と驚きの展開が待っていた。なんと、バルサの最大の仇である、カンバル王国のログサム王が健在なのだ。原作では10年前にもう死んでいるのだが、彼が生きている設定とすることで、大きく物語は変わってくる。で、上橋先生による今後のNHKドラマ展開をまとめると、
 シーズン2では、『神の守り人』でバルサのその後を描きつつロタ王国の内部事情を伝えながら、そこに『蒼路の旅人』と『天と地の守り人』<ロタ王国編>を平行して組み合わせ、タルシュ帝国の脅威に立ち向かわざるを得なくなるチャグムの姿を描いていく。
 そして、シーズン3で、『闇の守り人』を『天と地の守り人』に織り込みながら描くことで、バルサとチャグム、それぞれのクライマックスが絡み合っていく――
 という展開になるのだそうです。つまり、次のシーズン2は第5・6・7・8作目になるらしい。というわけで、それを念頭に置きつつ、上記の登場人物を誰が演じるのか、を想像するのが愉しみだったのだが、実際のところ、とっくに発表されていたのです。というわけで、キャストをずらずら並べておこう。
 ◆バルサ:綾瀬はるかちゃん。超イイ。カッコイイし、とてもいい芝居振りでした。
 ◆チャグム:板垣瑞樹くん。シーズン1の小林颯くんからスイッチ。成長したチャグムはかなりイケメンですね!!
 ◆シハナ:真木よう子さん。いいですねえ……原作ではバルサ並みの強さを誇る女性。カッコイイだろうなあ……。
 ◆スファル:柄本明氏。なるほど、そう来たか……というキャスティングですね。
 ◆アスラ:鈴木梨央ちゃん。まあこれまた可愛い娘さんですなあ。
 ◆イーハン:ディーン・フジオカ氏。マジか……。相当イケメンですなあ。
 ◆トリーシア:壇蜜様!!! キターーーー!! オレたちのみっちゃん!! 超楽しみ!!!
 ◆チキサ:福山康平くん。知らないけど期待の新人らしいすね。
 ◆ヨーサム王:橋本さとし氏。これもキターーー!! 元・新感線の方っすね。ミュージカルでもお馴染み。声優としてもあの「餓狼伝説」のテリー役でお馴染み。美声です。
 ◆トーサ:伊武雅刀氏:これまたキターーーー!! デスラー総統バンザーイ!!
 ◆マーサ:渡辺えりさん。これまたなるほどね、なキャスティングです。
 ◆ヒュウゴ:鈴木亮平くん。いいね!! 彼の演じるヒュウゴは相当期待できますな。
 ◆セナ:織田梨沙さん。知らない方だけど、大変な美人さんすね。
 ◆クールズ:小市漫太郎氏。顔は知ってたけど、サーセン、お名前は存じ上げませんでした。そこら中で見かけるお方ですな。

 はーーーー。疲れた。
 このキャストの中で、わたしの注目はイーハンとヒュウゴを演じる、ディーン・フジオカ氏と鈴木亮平くんだ。この二人……原作を読んでいる時のわたしが抱いたイメージでは、逆に、ヒュウゴこそディーン氏で、イーハンこそ鈴木亮平くんのほうがピッタリなんだけどな。ヒュウゴはクールで冷静沈着でいながら内面に熱いハートを持つ男だし、イーハンはもう根っからの熱血漢。逆のほうが合うと思うんだけどな……。いかがでしょうか? でもまあ、二人とも芸達者な確かな役者なので、きっと、映像を見たら、全然問題ないんだろうとは思います。
 そして、早く映像で観てみたいと今からワクワクするのが、バルサVSシハナのバトルシーンですね。シハナはたぶん、今のところ原作では唯一バルサと一対一で対等に闘える強い女性なので、綾瀬はるか嬢VS真木よう子さんの迫力ある戦いは、今からもう楽しみでならないすな。
 あとは、我らおっさんの永遠の偶像(IDOL)、みっちゃんこと壇蜜様ですよ。演じるトリーシアは、原作では姿は現さず人々が語る中でしか登場しないけれど、大きな役割を演じるキーキャラクターの一人なので、恐らく出番は少ないと思うけれど、大変期待しています。はーーー。楽しみっす。

 というわけで、結論。
 2017年1月放送の、NHK実写ドラマ「守り人シリーズ」シーズン2は、今からもうとても楽しみです。キャストも、とっくに発表されており、その顔ぶれを観ると大変期待できるものであり、今からもう、わたしとしてはワクワクが高まっているのである。しかし……キャスト発表をスルーしてたのはホント抜かってたというか、お恥ずかしい限りです。サーセンっした。以上。
 
↓  これからこれを観に行ってきます。レビューは明日書きます。ヨハン・シュトラウス2世の『こうもり』の宝塚版です。超楽しみ!!
Le Cinq(ル・サンク) 2016年 04 月号 [雑誌]
宝塚クリエイティブアーツ
2016-04-08
 

 というわけで、このところずっと読んでいる、上橋菜穂子先生による「守り人シリーズ」。
 その第7作目『蒼路の旅人』を読み終わったので、その感想を書き連ねてみたい。
 結論から言うと、これまた超・面白かった。ひょっとしたら、今のところナンバーワンに好きかも。

 しかし自分で言っておいてナンですが、あくまでこの作品を一番面白いと思うのは、今までのシリーズを読んで来て、皇子チャグムのこれまでの人生を知っているから、そう思えるのであって、まあ、なんというか、シリーズ全体として物語を理解しないと意味がないので、シリーズの中で一番面白いのはどれか、と問うのも実に野暮な話のような気もする。
 いずれにせよ、今回は「守り人」ではなく「旅人」ということで、第4作の『虚空の旅人』同様に、今回はチャグムの冒険のお話であった。現在この作品世界では、『虚空の旅人』で示された通り、南の強大な「タルシュ帝国」が北の大陸への侵攻を意図していて、一番南に突き出している半島と島々からなる海洋国家「サンガル王国」が、「タルシュ帝国」と戦火を交えつつある状況にあり、本作では、既に「サンガル王国」が、「タルシュ帝国」に屈したところから物語は始まる。
 一方そのころ、「新ヨゴ皇国」の皇子、我らがチャグム君は、父である帝から疎まれている状況にある。その理由はいくつかあって、まず、チャグムを一度殺そうとした帝としては、チャグムのことは実際のところ嫌いだし、近年ますます、帝の血族に対する嫌悪を隠さないチャグムを憎んでいること、そして、第三の妃に男児が生まれ、チャグムが死んでも代わりが出来たこと、そして、まだ幼いその子を帝位に付けたがっている勢力があること、といった事情が絡み合っているためである。
 チャグムとしては帝位に何の興味もなく、譲れるものなら皇太子の地位なんて譲りたいのだが、死去した場合以外は帝位継承権を譲ることができない掟があるため、チャグムも日々、フラストレーションがたまっている状態にある。
 そんな中、「タルシュ帝国」による北の大陸侵攻作戦が始まり、南で国境を接する「サンガル王国」より、「新ヨゴ皇国」に援軍要請が来る。「新ヨゴ皇国」は、帝=神という設定の国であり、おまけに帝も祈ってれば大丈夫と本気で思っている愚かなかつのんきな国なので、もう完全に罠だとわかっているのに、チャグムは少ない艦艇で出陣する。そして予想通り捕らえられて、チャグムは「タルシュ帝国」の帝都へ連行されることに。そこで侵攻軍総帥であるタルシュ帝国の皇帝の次男・ラウル王子に謁見するのだが――というのが話の大筋。ええ、今回も相当はしょりました。

 今回、鍵になる人物はやはり2人かな。
 ■ヒュウゴ
 わたしの頭の中のイメージは、超イケメン。言動がなんとなくシャアっぽくて、とにかくカッコイイ。南の大陸にある、ヨゴ王国出身。ヨゴ王国は、チャグムの「新ヨゴ皇国」の祖先の国だが、現在はタルシュ帝国に征服・併合されているため、「ヨゴ枝国」と呼ばれる属州扱い。で、ヒュウゴはヨゴ出身だけれど、極めて有能で、タルシュ帝国でも出世していて、密偵として活動している。彼は、祖国の悲劇を「新ヨゴ」で繰り返させたくないと考えており、捕らえたチャグムを帝都に連行する旅の中で、チャグムに対して「いさぎよく、賢くて……心がやさしい。平時であれば名君と呼ばれるような、すばらしい為政者になっただろうに」と好意を抱く。今のところ、まだ帝国内での地位がそれほど高くないので、出来ることは少ないけれど、何かと助けてくれたりする人物。今後のキーキャラになる可能性大。※追記:おっと!! TV版では、このヒュウゴを鈴木亮平君が演じるらしいですな。楽しみだ!!
 ■ラウル王子
 タルシュ帝国の王子。帝国の「北翼」を治める。「南翼」を治める兄王子とはライバル関係にあり、 手柄を争う仲。北の大陸への侵攻軍総司令官。性格は傲慢で冷酷、のように今のところ描写されているが、今後どういうキャラになるか分からない。現状ではチャグムを子ども扱いし、さっさと降伏しろと迫る。タルシュに下れば、チャグムも民も命は保障すると言っている。ただし、現在の帝には死んでもらうと明言。チャグムと対面した時、ラウルはチャグムに世界地図を見せる。このときの二人の会話は非常に対照的だ。
 ラウル「このような地図を、見たことがあったか」
 チャグム「ありません――はじめて見ました」
 ラウル「これを見て、なにを思った」
 チャグム「世界は広いと思いました。――すべての国を、見てみたい」
 ラウル「十歳で、はじめてこの地図を見たとき。おれは、それとは逆のことを思った。世界は狭すぎる。――これからおれが手に入れられる国は、もうわずかしか残っていないと思った。そのとき胸に宿ったあせりにも似た気持ちは、いまもおれの中にある」
 そして、新ヨゴ皇国やロタ王国のある北の大陸を指して言う。
 ラウル「あそこは、おれに残されている獲物だ。」
 こんな男なので、もう話し合いの余地はない。戦いは不可避だ。

 そして、本作でチャグムは、タルシュ帝国の強大さを身を持って実感し、また、タルシュに下り、「枝国」となったらどうなるのかをその目で見る。この国にはかなわない、という絶望に近い思いを抱きつつも、チャグムはラストで、二つの大きな決断をする。その内容はもはや書かないほうがいいだろう。これはぜひ読んで確かめて欲しい。そしてわたしは、これまでの物語を思いながら、チャグムの成長に本当に胸が熱くなった。たいした男に成長したよ。どうやら本作は、第1作目から4年程が経過している時間設定になっているが、チャグムの決断は実に立派で、物語の主人公にふさわしい、魅力的なキャラクターに成長したものだと思う。実にいい。本作は、ラスト、チャグムが決断を下し、大きな一歩を踏み出すところで終わるのだが、わたしとしてはもう、先が気になって仕方ない展開だ。
 この先は、3部作の『天と地の守人』で、物語は完結を迎えるが、早く読みたい!!! と思っているものの、残念ながらまだ、電子書籍版が発売になっていないため、わたしとしては大変困っている。早く出してくれないかなー。どうやら、次の巻では、まずは「ロタ王国」が舞台となるようだが、チャグムの決断をバルサはどう受け止めるか。そもそも二人は再び出会えるのか。とにかくもう、期待でいっぱいである。そうだなあ、もし6月中に電子版が出なかったら、もうリアル本を買ってでも読みたいぐらいだ。というわけで、偕成社の電子化作業を心待ちにしていようと思います。

 というわけで、結論。
 「守り人シリーズ」第7作、『蒼路の旅人』は大変面白かった。今回は非常に現代的? というかファンタジー色は薄く、とうとうこの物語世界にも本格的な戦争が舞台となるが、実に読みごたえがあり、シリーズを読んできた人なら、皇子チャグムの成長に胸が熱くなること請け合いであろう。次巻は再びバルサが登場するはずで、最終エピソードに入るわけで、バルサとチャグムの活躍を心待ちにしたい。以上。

↓ こっちを買わずに、電子が出るのを我慢できるか自信なし……。もう、紙も電子も両方買っちゃえばいいしじゃん!!>オレ!! あ、でも買うなら偕成社版だぜ!!

 



 

 というわけで、今日も昨日に引き続き、上橋菜穂子先生による「守り人シリーズ」です。第5作目・6作目となる『神の守り人<来訪編>』と『神の守り人<帰還編>』を読み終わったので、その感想を書き連ねてみたい。
 昨日、シリーズ4作目の『虚空の旅人』について結構詳しく書いてしまったので、今日はあまり書くことがないのだが、 昨日書いた通り、本作『神の守り人』は、バルサとタンダが大活躍のお話であった。


 昨日書いた通り、本作は、時系列的には、ほぼ、前作『虚空の旅人』と同時期で、『虚空の旅人』でサンガル王国に赴いたチャグムが活躍している頃、バルサとタンダは本作において、ロタ王国で別の事件に巻き込まれていた、という事になっているのだと思う。
 おおよその話の筋は、次のような感じである。
 タンダとともに、薬草の大きな市へ出かけたバルサは、幼い兄チキサとその妹アスラが人買いに連れられているのを見て、つい助けてしまう。何やら追われている二人だが、妹のアスラは、実は身に謎の存在を宿していて、バルサは妹アスラを助け、タンダは兄チキサを助けながら逃走を手助けする。しかし、アスラの身に宿る力を求めるロタ王国の勢力が迫り――てなお話である。サーセン。超はしょりました。
 ポイントとなるのは、ロタ王国国内の複雑な情勢だ。登場人物も多く、それぞれの思惑が微妙に違っているので、読んでいて混乱するレベルではないけれど、改めてまとめてみようとすると結構難しい。よし、ちょっとやってみるか。
 ■ロタ王国・国王ヨーサム
 国民の信頼の厚い善人。本作ではすぐに「サンガル王国」の「新王即位ノ儀」に出かけてしまうため(→それが4作目の『虚空の旅人』で描かれた話)、不在。体が弱い。弟を信頼しているが、弟は伝統を無視するところがあるため、万一自分のあとを弟が継ぐことになったら大丈夫か心配している。
 ■ロタ王国・王弟イーハン
 兄を敬愛する善き弟。ただし、かつて「タルの民」というロタ王国では虐げられ差別されている民族の女性に惚れてしまい、以来、なにかと伝統を無視するような言動を取っており、南部の裕福な豪族からは嫌われている。なお、イーハンが惚れてしまった女性は、自らの存在がイーハンに迷惑をかけることを憂い、自ら姿を消した。※追記:マジか!! TV版では、このイーハンをディーン・フジオカ君が演じるらしいですな。
 ■スファル
 カシャル<猟犬>という、王の密偵的な役割を果たす呪術師のリーダー的存在。王に忠誠を誓っていて、歴史も重んじる男。王(というより王国)にとって危険な存在であるアスラを狙う。
 ■シハナ
 スファルの娘でカシャル随一の使い手。バルサともいい勝負をするほどの腕前。歴史的な伝統よりも、イーハンの思想を支持しており、父さえも欺こうとする。アスラを手中にして、その身に宿る力を利用しようとする。※追記:うおー!! こっちもマジか!! TV版では、このシハナを真木よう子様が演じるらしい。コイツは超アリっすね!!
 ■南部の豪族たち
 ロタ王国の南部は肥沃な土地で、経済的に豊か。既得権益を守るため、イーハンの改革が気に入らない人々。ただし、とりわけ特別な行動を取ろうとはしていない。生粋のロタ人のため、タルの民を忌み嫌っている。
 ■北部の氏族たち
 一方でロタ王国の北部山岳地帯は、非常に厳しい気候風土で作物も生らず、経済的に貧しい。そのため、イーハンの改革を歓迎しているが、若干考えが甘く、彼らもまたロタ人のため、タルの民に対する同情はとくにない。
 ■タルの民
 何故「タルの民」が差別を受けているかというと、それは建国の歴史までさかのぼる話になるのだが、要するに、かつて、「ノユーク」(=新ヨゴ皇国で言うところの「ナユグ」)の神的存在を武器として用いて残虐なことをしたためで、以来、「タルの民」は、終生影の存在として生きることをロタ建国の祖に誓っているわけで、要するに、自ら謹慎してるようなものだと言える。だが、一部の人々はもはやそんな昔のことで今でも差別を受けるのはいやだと思っており、アスラの身に宿った力=ノユークの神の力を欲している。
 ■アスラ
 幼い少女。本作の鍵を握る存在。タルの民。母の処刑の場に立ち会った際に、ノユークの神の力を身に宿す。母から聞かされたタルの民の歴史とその雪辱のために、その力を行使することに喜びを見出してしまうが、バルサはその危険性を憂いている。特に、バルサは人を殺すことに対して身を持って知り尽くしているため、なんとかアスラに人殺しはさせたくないと思っている。※追記:な、なんだってーーー!? TV版では、母のトリーシアをみっちゃんこと壇蜜様が演じる!!。やっばい!!
 ■チキサ
 アスラの変容を心から心配しているが、なかなか再会できないかわいそうなお兄ちゃん。アスラに妙な信仰を植え付けた母に、内心腹を立てている。とてもけなげないい子です。

 というような人物関係で、少し複雑(?)なのだが、端的に言うと、抗いがたい波に飲み込まれようとしている幼い少女にかつての自分を見て、自分と同じような凄惨な人生を送らせてはならないということだけがバルサのモチベーションで、ロタ王国がどうなろうと、タルの民がどうなろうと関係ない。だから、まったく迷いはない。そして、今回も何度かひどい重傷を負ってしまう。そんなバルサと、そっと寄り添い癒そうとするタンダの姿に、我々読者はやっぱりグッと来てしまうし、もちろんそれは、きちんとアスラの胸にも届き、事件は何とか終結に至るというわけだが、今回のエンディングは、今までよりも若干、完全なハッピーエンドには至っていないので、まあ、続きがあるんでしょうな、とわたしとしては先の物語が大変楽しみであった。とはいえ、この先、アスラやシハナがまた登場してくるかどうかは微妙かな……わからん。
 とにかく、やっぱりバルサという女用心棒は大変共感できるというか、素晴らしいキャラクターだと思う。このお話が映像化されるのかわからないけれど、綾瀬はるか嬢が演じたら相当イイだろうな……という予感はする。タンダもなあ……とてもいい奴なんだが、バルサよ、タンダの想いも受け止めて、あんた自身が幸せになっておくれ……とおっさん読者としては思うのでありました。
 いずれにせよ、まだまだバルサの旅は続きそうだし、一方では今回一切登場しなかったチャグムも、どうやら次のお話では主人公として活躍するようだし、もう残ったお話は少ないけれど、楽しみに先を読み続けようと思います。

 というわけで、結論。
 今回のお話は、「ロタ王国」が舞台となって、幼い兄妹を助けるバルサとタンダの冒険であった。また、持たざる者、虐げられていた者が、思わぬ力を手にしたとき、その力を行使して、自分がやられていたことを相手に返そうとするお話なわけで、なんとなくテーマ的には、先日の『ズートピア』に繋がる話だと思いました。要するにですね、「論語」的に言えば「己の欲せざる所は人に施す勿れ 」ってことですよ。それはずっと心に刻んで生きていきたいですな。以上。

↓ 今回のお話読み終わって、ふと、改めて読んでみたくなってきたっす。

 というわけで、このところずっと読んでいる上橋菜穂子先生による「守り人シリーズ」第4巻、『虚空の旅人』について、読み終わったのはちょっと前だけど書こうと思います。

 最初に告白しておくと、愚かなわたしは4作目を勘違いして、先にシリーズ5作目の『神の守り人<来訪編>』を読んでしまったのであります。バカだよなあ……わたし、電子書籍で購入して読んでいるわけですが、 電子書籍だとですね、表紙が小っちゃくて、タイトルがもはや見えないわけですよ。で、買った時に電子の本棚に並べる際に、順番間違っちゃってたんだなあ、これが。何の疑いもなく『神の守り人<来訪編>』を読んで、よーし、次は『神の守り人<帰還編>』だ、と表紙をタップしたら『虚空の旅人』が立ちあがり、アレッ!? 並べ間違えてら、と気づき、さらには作品の順番も間違っていたことに気付いたわけです。アホでした。
 というわけで、5作目の『神の守り人<来訪編>』は読んでしまったものの、とりあえず前に戻って4作目の『虚空の旅人』を改めて読んだわけですが、どうやら実は、このわたしのうっかりミスは、結果的に一つだけ役立つことになったのであります。というのも、どうも時系列的には、『神の守り人<来訪編>』の冒頭部分というのは『虚空の旅人』よりちょっと前っぽいのです。なので、4作目『虚空の旅人』で舞台となる、「サンガル王国」の王の即位式には、5作目『神の守り人<来訪編>』で舞台となる「ロタ王国」の王も出席していて、しかも先に5作目を読んでしまっているわたしには、4作目を『虚空の旅人』を読み始めてすぐに、ああ、これがロタ王が(5作目で)言っていた即位式か、と分かったわけです。
 むむ……説明が難しいな。ま、とにかく、時系列的に偶然正しかったという事が言いたかっただけです、はい。まあ、正確に言うと、4作目と5・6作目は、ほぼ同時に起こっている出来事、という事かな。4作目では、「サンガル王国」における事件に巻き込まれたチャグムを描き、一方同じころ「ロタ王国」ではバルサとタンダがとある事件に巻き込まれていた、みたいな感じだと思う。でも、読む順番はやっぱり、先に『虚空の旅人』を読んでおいて間違いないと思います。 

 さて。というわけで、今回の4作目『虚空の旅人』である。
 今回の主人公は1作目で「精霊の守り人」にされた「新ヨゴ皇国」の皇太子、チャグム君と言っていいような気がします。今回、バルサやタンダは一切登場しません(=しつこいですが同時期にロタ王国で起こった事件に巻き込まれているバルサたちの活躍は5巻6巻で描かれる)。ともあれ、1巻目の事件から4年(3年?)経過していて、チャグム君もかなり立派にすくすく育っており、おっさんファンはもう胸が熱くなります。
 物語としては、チャグムの住む国「新ヨゴ皇国」と南で国境を接しているお隣の「サンガル王国」のお話で、サンガルでの新王即位式と、そこに出席するためにやってきたチャグムが、サンガル内部の陰謀とその背後に隠された、海を隔てた南の大国「タルシュ帝国」の陰謀に巻き込まれるお話でありました。
 わたし的に、一番興味深いと思ったのは、第1作目でチャグムが憑依(とは違うか?)された、「ナユグ」という異世界が、この物語のそれぞれの国で、同じように伝承されていることである。
 ちょっと、各国の情報を、今後のためにまとめておこうか。
 ■新ヨゴ皇国
 →チャグムの国。この国は、もともと南の海の先にあった「ヨゴ国」の人々が戦争から逃げて海を渡って渡来し、先住民族の「ヤクー」を制圧し建国した国。まだ250年程度の歴史しかないが、現在はもう、かなり混血化も進んでいる。で、建国の祖の直系の子孫が「帝」であり、高貴なる神のような存在として君臨している国。先住民ヤクーの間では、現世と同時に存在している「ナユグ」という異世界があることが認識されている(が、もうそれを伝承する人はかなり減ってしまっている)。なお、もともと南の大陸にあった「ヨゴ国」は、現在では新興国家「タルシュ帝国」に侵略・併合されて国としては消滅している(が、「枝国」と呼ばれる属州としては存在していて、チャグムの先祖たるヨゴ人たちはその帝国内で現在も生き延びている)。
 ■カンバル王国
 →バルサの故国。第2作目『闇の守り人』の舞台。王族と氏族がいて支配。新ヨゴ皇国の北の青霧山脈を超えた先にあり、峻厳な高山地帯であるため、基本的に貧しい国。この国には「ナユグ」に相当する異世界はどうも伝承されていないようだが、この国には独特の「山の王」という信仰(?)対象があって、ほかにも「ティティ・ラン(=オコジョを駆る狩人)」という小人がいたり、カンバル人を密かに監視する「牧童」と呼ばれる先住民もいる。なお、王を守る軍事組織の「王の槍」と呼ばれる男たちがいて、相当強い。バルサを鍛えたジグロは「王の槍」のいわば隊長だった最強の槍の使い手で、第2作目終了時はカームという男が最強の座に。ちなみにカームは第4作目にチラッとだけ登場する。
 ■サンガル王国
 →新ヨゴ皇国と南で国境を接していて、海に突き出た半島と島々からなる海洋国家。第4作目『虚空の旅人』の舞台。ここも王族がいるが、元々は海賊の出で、一番強いものが王となった経緯があり、有力氏族たちは単に、王についていれば利益があるという思いから従っているため、結束力は微妙。なお、王の長男に二人目の男児が誕生すると、王はその長男に王位を移譲するしきたりがあって、その際「新王即位ノ儀」が行われ、隣国の王族も招かれる。4巻の『虚空の旅人』は、まさにそれが舞台になっている。で、この海洋国家「サンガル王国」では、「ナユグ」に相当する「ナユーグル」という異世界があることが認識されている。サンガルでは、王族の女子たちが大きな力を持っていて、有力氏族へ嫁ぐことで王家の監視役にもなっている。また、海上生活を営む自由な民もいて、かなり緩やかな統治(それゆえ、海を隔てた大国・タルシュ帝国の陰謀に巻き込まれる)。土地は豊かで海産物もあり、富める国。
 ■ロタ王国
 →新ヨゴ皇国の西で国境を接している国。第5・6作目『神の守り人<来訪編><帰還編>』の舞台。ここも王族がいる。この国は、南部の肥沃な地に住む豪族と、北部山岳地方の痩せた地に住む氏族の対立があり、さらに人種間でも、多数を占めるロタ人の他に、「タルの民」という少数民族がいて、「タルの民」は虐げられた民族として不満を抱えている。また王家に代々仕える「カシャル(=猟犬)」と呼ばれる密偵的な「川の民」と呼ばれる民族もいる。この国では、「ナユグ」に相当する「ノユーク」という異世界が認識されていて、神々の世界と崇められている。王と王弟がいて、王はサンガルの「新王即位ノ儀」に出席するため、冒頭で旅立ってしまうので、5・6作目の事件の際には不在。
  
 はー、長くなってしまった。
 話を今回の4作目『虚空の旅人』に戻そう。
 お話的には、サンガル王国の「新王即位ノ儀」を舞台に、南の大陸にある強大な「タルシュ帝国」の陰謀が進められるわけだが、そのカギとして、現在はそのタルシュ帝国に侵略・併合された「ヨゴ」出身の術者が暗躍していて、その呪術に、 いち早く気づくのが「新ヨゴ皇国」の代表として訪問していたチャグムとシュガの二人で、何とかサンガル王国を助けるために奮闘するのだが――てなお話。
 しかしまあ、チャグムは本当にしっかりとした、利発な青年に成長しつつあって、外交にもきちんと頭が回るし、もちろん自分の立場もしっかり弁えているし、何気に、かつてバルサに特訓してもらった格闘術も使えて、大変素晴らしい若者として描かれている。もう、おっさんファンとしてはそのまっすぐな成長ぶりがまぶしくて、嬉しくてたまらないですな。今回、とにかくチャグムがカッコ良くてですね、わたしは次のセリフに大変グッときました。
 「シュガ。ひとつだけ、約束してほしいことがある。これからも、おまえがなにかの陰謀に気づいたとき、わたしを守るためにその真相を隠すようなことは、決してせぬと約束してくれ。……陰謀の存在を知りながら、だれかを見殺しにするようなことを、けっして、わたしにさせるな」
 このセリフを聞いては、思わずシュガも、「……誓います、殿下」と約束せざるを得ない。シュガは、今までは散々そういった謀略を目にしてきたけれど、チャグムは「自らの、かがやく玉のような清いものを汚して、何を守るって言うんだ!!」と、本気で言っていることに気づくわけで、甘い考えであろうと、その清らかなハートは守るべき尊いものだと思うわけです。この二人の主従関係は読んでいて非常に心地いいですな。

 結局のところ、この一連の「守り人シリーズ」という作品群の素晴らしさは、そういう、「人としての正しさ」というような、「まっとうさ」が事件を解決させるカギになるわけで、読んでいてわたしは大変気持ちがいい。真面目に生きることを旨とするわたしとしては、上橋先生の作品は万人にお勧めできる極めて質の高い物語だと思います。今回も大変楽しめました。

 というわけで、結論。
 チャグム君、本当に君は、いろいろつらい目に遭ったけれど、バルサと出会えて大きく成長したね。読者としては大変うれしい思いであります。そして、次の『神の守り人』も読み終わったので、明日レビューを書きます。以上。

↓ コミックもチェックしといた方がいいんすかね……どうしようかな。



 

 昨日に引き続き、NHKのTVドラマ版からすっかり気に入ってしまった上橋菜穂子先生による「守り人シリーズ」第3巻、『夢の守り人』について、読み終わったのはちょっと前だけど書こうと思います。本作では、舞台を再び第1作目『精霊の守り人』で描かれた「新ヨゴ皇国」に戻し、成長したチャグムや、タンダ、トロガイ、シュガといった人々が登場するお話で、第2作目『闇の守り人』が主人公バルサの過去の清算だったのに対して、今回は偉大なる呪術師トロガイの過去の清算がメインテーマとなる話であった。いや、どうだろう、それは違うか? トロガイの過去というより、第1作『精霊の守り人』の事件の後始末的な話と言うべきか? うーーん、ちょっと難しいな。まあいいや、ちょっとまとめてみよう。

 お話としては、第2巻の後、バルサが新ヨゴ皇国に戻ってからのお話である。
 タンダの姪っ子が謎の「眠り病」にかかり、昏睡してしまう事件が発生する。なんでも、王宮においても、第1皇女もまた同様に、眠りから目覚めないらしい。そして謎の病は、チャグムにも感染してしまう。そんな中、タンダは危険を承知で<魂呼ばい>の儀式を行い、姪の魂の糸をたどって追跡を開始するが――という話。
 本作では、ポイントが2つあって、まず1つは、「眠り病にかかった人々は、現世がいやで、夢の世界に逃避し、目覚めたくない」と思わされているということであろうか。タンダの姪は、勧められている結婚話が嫌でしょうがないと思っていたり、第1皇女は、第1作で息子を亡くした痛みから現実逃避し、チャグムもまた、本当は自分は皇太子になりたくなかった、バルサと旅を続けたかった、というように、各人がそれぞれ、現世でのつらい出来事から目をそらしたいという願望を、心の底で持っている。こういった思いをどう断ち切るか、が、第1のポイントであろう。
 そしてもう1つは、タンダの身に起きる出来事である。タンダは、背景としては親族からは白い目で見られているちょっとかわいそうな境遇にあると。それは、普通の農耕作業をするわけでもなく、トロガイに弟子入りして良くわからない呪術を勉強しているからであって、もちろん、一面では地域の医者的役割も果たしているため、一定の尊敬を受けてはいるものの、親族的には、あいつは変わりモンだ的な評価をされていると。そしてタンダは、ほんの少し、それを残念に思い、ちょっとだけ傷ついている状態にある。だから、自分に懐いてくれている可愛い姪っ子は、どうしても助けたいというモチベーションがあって、危険を承知で<魂呼ばい>の儀式を行い、いわば幽体離脱状態になって、霊体となって姪っ子を助けに行くと。しかし、まんまと人の魂を縛る<花>に捕まり、現世の肉体に戻れなくなってしまう。あまつさえ、現世の肉体は乗っ取られ、儀式を邪魔しようとするバルサに襲いかかり――、と、実に気の毒なことになってしまう。この状態で、タンダは夢に囚われた人々を救えるのか、そしてバルサはタンダの魂を取り戻せるのか、というように、2つの方向での戦いが繰り広げられ、さらにそこに、トロガイの若き頃のお話が関係してきて……というのが、シリーズ第3作『夢の守り人』のお話である。
 結論から言うと、実はわたしは、結局<花>と呼ばれるモノの目的というか、バルサやタンダと敵対する相手の勝利条件が良くわからなかった。これは、わたしがこの本を3時間ぐらいで読んでしまった付けであろうという気がしている。うーーむ……ちゃんと読んだはずなのだが、この部分がはっきり理解できなかったのはわたしの落ち度だろうと思う。トロガイの過去の部分も、ちょっと分かりにくく、夢の世界なのか現実なのか、その境界線が非常に付けにくいように感じた。なので、正直に告白すると、実はわたしは、キーになる<歌い手>のことが良くわからなかったのであります。ええと、あいつは別に、意図を持って人々に歌を聞かせ、人々を夢に誘い込んだわけじゃないんだよね? だとすると偶然ってこと?? 花に意識はなく、種に込められた生存・自己増殖のDNAプログラムに従ったまで、ってことだろうか? うーーむ……。サーセン。また今度、ちゃんと読み直してみようと思います。
 ただ、物語として、心地いい場所に浸っていたい、いやなことばかりの現実に戻りたくない、という本作のテーマは、誰しもが誘惑される、甘い蜜であり、その点はとても面白かった。そして真っ先に夢の世界から帰って来るチャグムの成長ぶりに、おっさんとしてはもう本当に嬉しくなりますな。1巻ラストで、強く成長したチャグム。TV版で、「逃げない」とバルサに誓ったチャグム。よく頑張ったな、とわたしはチャグムの成長が本当に嬉しく思った。
 まあ、別に、逃げたっていいんだけれど、気持ちのいいぬるま湯にずっと浸かって、逃げっぱなしじゃあダメだ。そんなことをこの物語は教えてくれたと思います。ぬるま湯は気持ちいからなあ、ずっと浸かっていたいと、誰だって思うよなあ……でもそれじゃあ、風邪ひいちまうし、体も弱っちまうし、エイヤッと気合入れて、ぬるま湯から出る必要がどうしてもあるんでしょうな。わたしもだいぶ長いことぬるま湯につかってたような気がするけど(いや、そんなことないか、むしろ熱湯風呂だったかもw)、オラァッと気合入れてぬるま湯から出たものの、まあ世の風は冷たいすな。超・孤独だし。さっさと体拭いて服を着て、冷たい風の吹く厳しい世界で頑張ろっと。上橋先生による「守り人シリーズ」第3作『夢の守り人』は、そんなことを思わせてくれる大変素晴らしいお話でした。

 というわけで、結論。
 まあ、もう結論は上記の通りですが、気持ちのいい、甘い蜜を吸いながらぬるま湯に浸かってたら、魂が死んじまうわけで、いつまでも寝ぼけてるんじゃねえ!! ってお話ですな。わたしとしては、『夢の守り人』という作品も大変楽しめたし、やっぱり心に響きました。引き続き、シリーズを読み続ける所存であります。以上。

↓ 4作目はこれか。もう買ってあるんだけれど、「暗殺者グレイマン」シリーズを先に読み終えたいので、ちょっとだけ、読み始めるのは待ちです。

 現在、わたしはNHKのTVドラマ版からすっかり気に入ってしまった上橋菜穂子先生による『守り人シリーズ』をせっせと読み続けているわけだが、第2巻の『闇の守り人』と、第3巻の『夢の守り人』を読み終わったので、まずは『闇の守り人』のレビューを書いておこうと思う。ズバリ、非常に面白かった。 
 この第2巻は、1巻目の『精霊の守り人』のちょっと後から始まる物語で、前巻で新ヨゴ皇国の皇太子となったチャグムとの旅を経て、自らの養父であるジグロの気持ちを実体験として理解した主人公バルサが、自分とジグロの故国であるカンバル王国へ赴く話である。
 その目的は、ジグロの弔いのためであり、ジグロの親族に会ってその最期を伝えたい、というものだった。 バルサは、自分とジグロに追っ手をかけたログサム王が10年前に既に亡くなっていて、もうほとぼりが冷めていると思っての里帰りだったのだが、現在のカンバル王国では、ジグロの弟が「天下の大罪人ジグロを討ち取った英雄」として、若き王の後見役に座り、実質的な実権を握っていた……という展開である。
 本作で重要なキーとなるのは、ジグロの過去と、カンバル王国の秘密である。ジグロが務めていた「王の槍」。そしてその中で最強の者が<舞い手>となり、<闇の守り人>と技を競う儀式おこなうこと。さらに、そこで勝者となって初めて、カンバル王国は貴重な鉱石である<青光石>を<山の王>から贈られること。その財をもって、カンバル王国のやせた地では収穫できない穀物を買い付けるのがこれまでのカンバル王国の在り方で、<山の王>から贈られる<青光石>がなければ民が飢えに苦しむことをはじめてバルサは知る。そして、かつてバルサやジグロを追ってきた刺客が全て<王の槍>と呼ばれる男たちであり、カンバル王国の秘密を知る人間がもうごくわずかになってしまったことや、現在実権を握っているジグロの弟が、でたらめを吹聴して、<山の王>の宝を奪おうとしている陰謀などを知って、バルサは少ない味方の人々の力を借りて、陰謀を阻止しようとする。
 非常に綱渡りな作戦で、読んでいてかなりドキドキするし、その最中で、今回もまた、バルサはジグロの想いを知ることになる。かつての友だった<王の槍>の男たちと戦わなければならなくなったこと、戦いの後に常に悲しみを背負っていたこと、そして、すべてはバルサのためだったこと。
 そのすべてに決着をつけ、バルサはジグロの遺した心をを弔い、自分もまた、解放された思いを得ることができるわけだが、ラストで、タンダの待つ新ヨゴ皇国へ帰るバルサの心はとても晴れやかだっただろうと読者としても納得のできるお話だった。
 亡くなった人に対して、出来ることとはなにか。これが本作の大きなテーマの一つだと思う。
 まあ、普通の物語では、恨みを晴らすとか、汚名を雪ぐとか、そういうことを描く場合が多いと思うけれど、そんなことじゃなくて、生き残った者が一番目指すべきこと、そして亡くなった人が、恐らくは一番喜ぶこと、それは、「自分が幸せになること」に他ならないんだということを、本作は教えてくれるものだと思う。もうね、どうでもいいんだよ、過去は。そんな過ぎ去ったことはどうでもいいから、幸せになっておくれ。それが、一番目指すべきことなんだ、ということを、わたしははっきり理解できた。そりゃそうだよ。人が死ぬとき、一番気がかりなのは、残された愛する人には幸せになって欲しいってこと以外に、ないもんね。そういう意味では、幸せを求めて生きることは、我々生者の義務なのかもしれないなあ。まあ、それが難しいわけだけれど。
 本当に面白く、グッときましたよ。非常に心に響きました。このお話を、綾瀬はるかちゃんが演じるのをぜひ見たいですな。

 というわけで、短いけれど結論。
 シリーズ第2作、『闇の守り人』も大変面白かった。前回も書いた通り、どうやらこの『闇の守り人』は、TVでは一番最後に描かれるらしいが、その意図が非常に良くわかる。このラストを迎えることで、バルサは本当に自由になるのだから、TV的に最後に回したのは実に物語を分かっている配慮なのではなかろうか。3年後だか2年後?の放送となるらしいが、心から楽しみに待っていたい。以上。

↓ 次はこちら、『夢の守り人』です。

 

 

 先日、第1シーズン全4話の放送が無事に終了した、NHK放送90周年記念の大河ファンタジー『精霊の守り人』だが、わたしも全話見て、大変楽しませてもらったわけで、ラストのチャグムとバルサの別れのシーンに、実にグッと来てしまったのだが、放送後、とりあえずすぐに読み始めた原作も、読み終わった。勢いですぐに第2巻となる『闇の守り人』、そして第3巻の『夢の守り人』まで現在み終わってしまった。
 というわけで、今回はまずは第1巻の『精霊の守り人』について書こうと思います。

 わたしが読んでいるのは上記の偕成社版の電子書籍版です。イラスト付き。新潮社版なんて読みたくないので。ま、比べていないので、偕成社版と新潮社版が同じなのか違うのかわからないけれど、少なくともオリジナル版ではあると思う。
 この、第1巻である『精霊の守り人』は、主人公である女用心棒、バルサと、水の精霊の卵を産み付けられてしまった「新ヨゴ皇国」の第2皇子チャグムのお話だ。ただ、読み終わって、だいぶTV版とお話の印象が違うなとは思った。とはいえ、大きく印象が違うのが、新ヨゴ皇国の帝と聖導師の二人なので、はっきり言って物語上はどうでも良い存在(そんなことないか)で、面白さを損ねているという事は全くなく、TV版も大変良かった。特に、バルサを演じた綾瀬はるかちゃんの熱演は素晴らしかったし、少年チャグムを演じた小林 颯くんも非常に良かったと思います。バルサの師匠・養父のジグロを演じた吉川晃司兄貴も抜群にカッコ良かった。
 TV版で、これは……? と思った改変は、第4話の一番ラストであろう。原作上、第2巻『闇の守り人』の舞台となる、バルサの故郷・カンバル王国の王様が、原作と別人なのだ。これって……大丈夫かな、と心配だが、まあ余計なお世話であろう。実際のところ、一番の悪党なので、この王様が今も生きている設定(原作ではバルサの悲劇の大元の悪党で、10年前にすでに死んでる設定)の方が、ドラマチックに描きうるとも思えるので、来年の放送を楽しみに待っていようと思う。
 おっと、NHKの公式Webサイトに、上橋先生が直接お話されている記事が載ってますな、ははあ、なるほど、TV版の第2シーズンは『神の守り人』『蒼路の旅人』『天と地の守り人』になるんだな……そうか、まだ読んでないけど、第2巻の『闇の守り人』は最後に映像化されるわけか。なるほど、これは既に第2巻を読んだわたしには何となくうなづけるところだ。第2巻でバルサは、過去の因縁ときっちり決着をつけるのだから、その話を最後に持ってくるのはアリかもしれない。そういうことですか。
 ま、いいや。原作第1巻『精霊の守り人』の話に戻ろう。
 上橋菜穂子先生は、以前書いた通り、文化人類学の博士号を持つ学者でもある。その作品群は異世界ファンタジーと分類されるもので、異民族や異種間の交流を描く場合が多く、常に、異文化に対する相互理解がテーマとして内包されているように思う。本作も、一つは舞台となる「新ヨゴ皇国」の文化、そして先住民である「ヤクーの文化」がそれぞれ存在し、謎を双方から解こうとする流れがあって、それぞれを代表する、星読博士のシュガ、呪術師のトロガイが「精霊の卵の謎」に迫る。ただ、それはあくまで物語の本流ではなく、あくまで、本作は、元・カンバ王国民であり現在は国を追われ、用心棒として生きているバルサという31歳の女性と、新ヨゴ皇国の第2皇子として生まれ、「卵」を産み付けられてしまったチャグムのお話と言っていいだろう。
 本作で、バルサの背景はあらかた語られ、これまでの生涯がおおよそ説明される。その説明を読んだ読者としては、バルサがチャグムに抱く母性は非常に分かりやすい。説得力は十分だろう。バルサは、チャグムを守り、鍛えることで、初めて、ジグロが自分に向けてくれた愛情を実感として理解するのだ。恐らくは、この点が本作で一番重要なポイントだろうと思う。最初は皇子として、高飛車な態度だったチャグムが、徐々に心を開き、バルサを頼っていく様は読んでいてとても心に響くし、強くあれとチャグムを見守るバルサも、大変カッコ良く、同時に、バルサの慈愛に満ちた母性も強く感じられた。
 これは、TV版でもそうなのだが、事件が終わり、二人が別れるシーンは非常にグッとくる。泣きはしなかったけれど、泣きそうになりましたね。
 迎えが来て、王宮に戻りたくない、バルサと一緒に旅を続けたいと言うチャグム。そんなチャグムを抱きしめ、耳元で「ひと暴れしてやろうか?」と囁くバルサ。チャグムは、バルサがここで暴れれば、逃げることはできるかもしれないけれど、その後ずっと追われる立場になってしまう事が分かっている。非常に甘く、心が望む誘いであっても、キッパリと断り、世話になったタンダやトロガイに抱きつき、それぞれへ「ありがとう」と明確な感謝を告げ、別れを告げるあのシーンだ。バルサも、チャグムと別れたくないし、「暴れてほしい」と言われること本心では期待しながらも、チャグムの決断の正しさを理解し、抱きしめてチャグムの感謝を受け入れる。ここは、TV版の役者の演技でグッと来たし、原作ではちょっとだけ違う、「いいよ。暴れなくていいよ。……暴れるのは、別の子のために取っておいてあげて」というチャグムのセリフにも、とても心に響いた。
 ホントに、このラストのチャグムの涙はTV版の映像ならではというか、ホントにもう、泣かされそうになりましたなあ。子役の小林くんは本当にお見事でした。一度迎えの輿に向かって歩いて行き、やっぱりもう一度、とバルサに駆け寄って抱きつきくあのシーンは、もう大感動ですよ。
 「ありがとう……バルサ、ありがとう……」
 「礼など必要ない……。わたしは……金で雇われただけだ」
 このバルサのセリフは、そしてそれを演じた綾瀬はるかちゃんは最高にカッコ良かった。わたしも、今後、いろんな場面でパクらせてもらうと思います。「礼はいらない……わたしは、金で雇われただけだ」。もう使いまくると思うな、きっと。この別れのシーンは、わたしにとってはここ数年でナンバーワンに完璧で、美しいものだったと思う。本当にお見事でした。今後のチャグムの成長を、心から楽しみに、シリーズを読み続けていきたいと思う。

 というわけで、結論。
 わたしは上橋菜穂子先生の作品を読むのは、『獣の奏者』『鹿の王』に続いて3作(3シリーズ)目だが、やっぱり、非常に好きです。この先の作品も順次読んでいますが、もう完全に、頭の中では、バルサ=綾瀬はるかちゃんです。やっぱりはるかちゃんは、あまり笑わない、寂しげな笑顔がとってもいいですな。小説もTVも、たいへん楽しませていただきました。これは読んでいない方には超おススメです。以上。

↓ 実はもう2作目も3作目も読み終わったので、明日レビューを書こうかな。



  

 2014年に、児童文学のノーベル賞と言われる「国際アンデルセン賞」を受賞したことで一躍注目され、またさらに2015年の「本屋大賞」を受賞したことで、日本文芸界における地位を不動のものとした作家、それが上橋菜穂子先生である。
 まあ、分かりやすく賞のことを取り上げたけれど、 実際のところ上橋先生は上記の二つの賞を受賞する前からとっくに素晴らしい作品を生み出す偉大な作家としてお馴染みだったのは間違いない。わたしは恥ずかしながら、『獣の奏者』と『鹿の王』しか読んだことがなく、まあ言わば単なるにわかファンなのだが、両作ともに非常に面白くて夢中になって読んだ覚えがある。『獣の奏者』ではその主人公エリンに惚れ、『鹿の王』ではその主人公ヴァンの揺るぎない男のカッコ良さに深く感銘を受けた。両作ともに、絶対の自信を持ってお勧めできる小説である。


 ところで、上橋先生は文化人類学において博士号を取得した研究者としても知られ、しかもフィールドワーク中心の現場主義者ということでわたしも上橋先生に非常に興味を持ち、上橋先生のノンフィクション作品『隣のアポリジニ』を読んでみたことがある。

 これは、上橋先生が研究者としてオーストラリアの片田舎でインターンシップの日本語教師(?)として赴任していたころのお話で、たしか研究がメインで先生はボランティアだったと思うが、現地の人々(白人&アポリジニ系混血がメイン)との交流の模様が大変面白かった。
 なんでまたこんなことをわざわざ紹介するかと言うと、上橋先生の描く作品は基本異世界ファンタジーであり、異文化(異種族)コミュニケーションが大きな柱となる作品が多く、それらはやはり上橋先生の文化人類学者としての研究が下敷きになっているのだろう、と思うからである。
 で。恐らくは上橋先生の最も有名な代表作と思われる作品が『精霊の守り人』、通称「守り人シリーズ」と呼ばれる一連の作品群である。既にアニメ化やコミック化されている作品だが、わたしは恥ずかしながら全く読んでいない。のだが、この度、NHKにおいて実写ドラマ化されるというニュースが発表され、放送前からわたしは大変期待していたわけで、先日の放送を録画しておいて、昨日の夜、やっと見てみたわけである。
 基本情報はNHKの公式Webサイトへどうぞ。ちなみにアニメもNHKで放送されました。

 NHKからは、結構多くの予告動画がYouTube上にUPされているので、ちょっと探すといっぱい出てきます。今回のドラマは、なんと3年にわたって全22回放送されるらしい。まあ要するにNHKは相当本気と言う事だ。恐らくは民放では出来ないことだろうし、衣装やロケ、美術のクオリティから察するに、予算規模も到底民放では出せないものだろうと思う。
 お話は、(わたしはまだ全貌がまったく良く分かってないが)主人公の女用心棒バルサが、とある国の王子と出会い、その父たる王(正確には「帝」)から命を狙われている王子を守って逃げるというお話で、逃げる理由は今回の第1話でも描かれるが、当てのない逃亡生活なのか、どこかを目指しているのかはまだ良くわからない。恐らく今後の展開としては、追っ手の刺客との戦いを繰り返しながら、何らかの協力者と出会い、逃げるだけの状況から反撃をする、そしてその王子に秘められた謎が解き明かされる、という感じでお話は進むのだろうと思われる。わからんけど。
 秘密を持つ少年(or少女)と、彼(or彼女)を守る存在という組み合わせは、わたしが読んだ『獣の奏者』でも『鹿の王』でも共通する設定と言えると思うが、今回は、幼い少年と、30歳の女用心棒である。基本的に守る存在は強くて優しくてカッコ良し、というのがお約束だと思うが、どうやら今回も、ぶっきらぼうで、守ることは仕事だと割り切った様子を見せるものの、女用心棒バルサというキャラクターは我々の期待を裏切らない正しくカッコイイ存在であるようだ。大変期待できる。面白そうですよ、やはり。
 で。今回、その強くてカッコイイ女用心棒を演じるのが、わたしも大好きな綾瀬はるか嬢である。このお方は、どうも天然面白キャラといった部分が最近の売りになりつつあるような気がするが、この美しい女性が最も輝くのは、めったに笑わない、ちょっと幸薄い系のキャラクターを演じる時であるとわたしは信じている。去年の『海街diary』における幸薄いしっかり者の長女のお姉さん役は大変素晴らしかったし、古くは映画『ICHI』なんかでも、(まああの映画は映画としてはかなり微妙だが)綾瀬はるか嬢の美しさはこの上なかった。
 そして今回は、なにしろ「女用心棒」である。そりゃあカッコいいでしょうなとわたしの期待は高まる一方でだったが、実際の映像のはるか嬢は、汚れたメイクに汚れた衣装で、実に凛々しく、大変カッコ良かったのである。このお方はやっぱり、どんな格好でも美しいですな。これはまったくどうでもいいことだし若干セクハラだが、ちょっとインターネッツの銀河に検索の手を放てば、デビュー当時のはるか嬢の水着グラビアがいっぱい出てくるので、男性諸君はその美しさを堪能しておいていただきたい。素晴らしいBODYですよ、このお方は。
 今回の作品は、おそらくキャラクターも今後数多く登場してくるのだと思う。今回の第1話では、帝を藤原竜也氏が貫禄たっぷりに演じていたのが印象的であった。またもう一人、はるか嬢演じるバルサの、幼少時の回想シーンに出てくる師匠的存在(バルサの父の親友?)を演じた吉川晃司氏がいつも通りキレあるアクションで非常にカッコ良かった。この人は銀髪になってから役者としての活躍も多くなって、大変カッコイイですな。何しろガタイがデカイし、「シンバルキック」でおなじみの長い足を振り回す立ち回りもキマってますね。広島の名門・修道高校水球部で鍛えた体は伊達じゃないっすな。他にも、平幹二郎氏もいつも通り怪しい謎の「聖導師」を芝居の手本のようなきっちりした滑舌と表情で魅せてくれるし、林遣都くん演じる「星読み博士」も、まだ物語においてどのような役割を果たすのか良くわからない青年として、相変わらずのイケメンぶりを発揮してくれています。
 最後に、映像のクオリティについてちょっとだけ触れておくが、やはりわたしのような映画オタクの場合、ハイビジョン撮影された、おっそろしく綺麗な画の質感は慣れないというか、なんか違和感がちょっとだけありますな。しかもわたしは生意気に4Kテレビで視聴しているので、まあなんというか、不自然にきれいです。そしてそのために、CGがCGにしか見えず、その点では少し画の質感は、金がかかっていることは明白だけれど、わたしの好みではないです。劇場映画っぽく、敢えて少しノイジーな方がこういう物語にはふさわしいのではないかという気はしました。衣装や美術は相当お金がかかってますね。相当これは本気の制作だと思います。
 
 というわけで、結論。
 第1回はまだ物語の序章に過ぎず、今後の展開が楽しみです。十分以上に、わたしの期待には応えてくれている作品です。たぶん、我慢できなくなって上橋先生の原作を読んでしまうと思うな……電子書籍版も発売されているようなので、たぶん、買っちゃいますわ。以上。

↓ この作品における綾瀬はるか嬢は素晴らしいと思います。この作品では、次女を演じた長澤まさみ嬢も素晴らしいし、三女を演じた夏帆ちゃんも可愛い、そして、そこの三姉妹の元へやって来る広瀬すずちゃんも、ウルトラ可愛いっす。
海街diary Blu-rayスタンダード・エディション
綾瀬はるか
ポニーキャニオン
2015-12-16

↓そして今回の原作がこちら。もう読むしかねえなあ……。

 今日もネタがないので、困った時のマンガネタです。
 今日紹介するのは、『高台家の人々』 というマンガで、集英社の月刊YOUという女性コミック誌に連載中の作品です。確か2014年に、面白い漫画ねえかなー、とぶらぶらと探しているときに、試し読みを読んで、おお、こりゃいいね、と思って単行本の1巻と2巻を買ってみて、コイツは当たりだな、と思った作品である。現在は4巻まで出ている。

 お話は、例によって1話目が読める試し読みが公開されているので、そちらを読んでもらった方が早かろう。と思うので、こちらをどうぞ→http://you.shueisha.co.jp/lineup/koudaike.html
 ごく簡単に物語をまとめると、主人公・平野木絵はごく平凡な30歳OL。とりわけ秀でたものはなくむしろ地味系のアラサー女子だが、彼女はなんでもかんでも、すぐにぽわわわ~ん、と妄想にふける妙な性格である。そんな彼女が、社内一のスーパーイケメン・高台光正くんに見初められる。全く心当たりがない木絵ちゃんだが、じつはそのイケメンは人の心が読めるテレパスで、今までは人の醜い部分ばかりが見えてしまって、若干の人嫌いであったのだが、木絵ちゃんの、何にでも反応する心の中の「面白妄想」が読めてしまう光正くんはすっかり気に入ってしまい、「なんなんだこの娘……超面白い人!!」となるわけです。
 なので、この漫画の面白さは、第1に、ヒロイン木絵ちゃんの妄想の突拍子のなさにある。これがですね、本当に思わずくすっと笑ってしまうような、すっとぼけた妄想なんだな。上記の試し読みでも炸裂していますが、毎回大変に楽しく、笑えて面白い。
 で、話が進んでいくと、どうやらその光正くんには妹と弟がいて、その「高台家の人々」はみな同じ能力を持っていることが判明したり、その大元たるイギリス人のおばあちゃんが出てきたり、まあ、みなテレパス能力でそれなりに苦労しているんだけど、それぞれの恋模様が描かれたり、平凡な木絵ちゃんを認めようとしない、超厳しいお母さま(この人は能力なし)が出てきたりと、非常に読んでいて楽しい時間を過ごせる優良漫画だと思う。
 おそらくは、男が読んでも面白いし、女性は勿論、言わずもがな、であろう。ただし、とある女子に読ませてみたところ、木絵ちゃんはある意味何の努力もせずにイケメンGetなわけで、その点はちょっとなあ、と言っていたので、万人が揃って面白いと思うかというと、そうでもないかもしれない。とりあえず、わたしは大変気に入った。できればその面白妄想を、言葉で熱く語りだすような変な女子だったら、わたしも完璧Fall in Loveであろう。

 で。著者の森本先生だが、女子漫画界ではもうおなじみであろう。すでに、『研修医なな子』『ごくせん』『デカワンコ』といった作品はTVドラマ化、劇場映画化、アニメ化されており、それぞれ大変な人気のある作品だ。
 わたしはこの『高台家の人々』を読んだ時も、ああ、これは間違いなく近いうちにTVドラマ(あるいはTVアニメ)になって、2期ぐらいやった後に劇場版という黄金パターンで展開するだろうな、と確信に近いものを感じたが、なんと、TVドラマを飛ばしていきなりの劇場映画化がすでに発表されている。公開は今年の6月だそうだ。
 これがその予告なんですが、キャストはもう、動画の通りであります。
 ヒロイン木絵ちゃんは、芸能界きっての天然ガール綾瀬はるか嬢。絵のイメージとは、やっぱり違うかな。もっと地味で若く見える印象かもしれないけれど、まあ、綾瀬はるか嬢ならきっと、可愛らしく面白く演じてくれることでありましょう。そしてイケメン光正くんを、斎藤工 氏が演じるとのことです。設定ではイギリス人クオーターで、瞳は青いはずなんだが、カラコンでも使うのか、その設定はナシにするのか、動画じゃ良くわからんな……ああ、公式Webサイトのキャラ紹介ではちゃんと青い目をしてますね。カラコン着用みたいですな。斎藤氏は、わたしにとっては『テニミュ』における、氷帝学園の忍足郁士役でお馴染みなのですが、やはり、この人の一番のイケメンポイントは「声」でしょうな。なお、テニミュの時の彼のセリフで、わたしが一番カッコイイと思うセリフは「攻めるン遅いわ!!」ですw 

 というわけで、結論。
 『高台家の人々』は、男が読んでも結構笑える楽しいラブコメです。6月からの映画公開前に、ぜひ読んで予習しておきましょう。たぶん公開前に、(5)巻が発売になるんじゃないかな。楽しみです。以上。

↓ 超名作。歌もかなりいい。城田優氏の手塚部長、加藤一樹氏の跡部部長、そして斎藤工氏の忍足など、今見ると凄いキャストが揃ってます。ただなあ……映像が超引きの固定カメラだし、DVDだから現在のHDテレビで見ると、ほぼ顔が分からないんだよね……。
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