これまで何度もこのBlogで書いていることなのだが、わたしが初めて宝塚劇を観たのが2010年2月の星組公演で、その時の星組TOPスターちえちゃんこと柚希礼音さんのあまりのカッコよさに一発KOされ、以来、すっかりはまったわけだが、そんなわたしが2回目に観たのが、2010年6月の月組公演『The Scarlet Pimpernel』である。その公演でも、わたしは世に言う「まさみり」時代の月組の魅力にくぎ付けとなり、やっぱ宝塚歌劇っておもしれえな、とますますのめり込んでいくことになるのだが、この時、物語のキーキャラであるルイ・シャルル王太子を演じたのが、当時まだ入団2年目の愛希れいかさん(以下:ちゃぴ)であった。ちゃぴはこの時、男役としてキャリアを始めたばかりで、実際この新人公演ではピンパーネル団の青年の一人を演じていて、去年買った『The Scarlett Pimpernel Blu-ray BOX』で確認してみたところ、実に初々しくけなげに演じている姿を観ることができる。
tyapi
 ↑こんな感じ。2010年のスカピンのパンフからスキャニングしてみた。しかしその後ちゃぴは、もはや誰もが知る通り娘役への転向というちょっと珍しい進路を選択し、2012年には晴れて月組TOP娘役へと登極、以来、現在まで6年にわたってTOP娘役に君臨している最強プリンセスなわけだ。
 そして、その”最強プリンセス”ことちゃぴも、とうとう秋の『エリザベート』で退団することとなった。ほぼわたしのヅカ歴とリンクするちゃぴの退団はとても淋しく残念なお知らせだが、受け入れるしかあるまい。そして、6年にわたってTOP娘を頑張り続けたちゃぴに、宝塚歌劇団はその功績に対して異例のプレゼントとして、娘役が主役の単独バウ公演を企画したのである(ここ数年では、娘TOPが一人で退団する時は、宝塚ホテルでのミュージックサロン(ディナーショー的なもの)が一般的)。これはなかなか粋な計らいであり、わたしとしては、絶対に観に行くしかあるまい! と思っていたのだが、まあとにかくチケットが激戦で、最後の一般発売まで頑張ってみたものの獲ることはできず、しょんぼりしていた、のだが、劇団はここでもファンに向けて粋な計らいを見せてくれたのである。そう、今や定番?となった、全国の映画館でその千秋楽の模様を中継配信する、ライブビューイングを企画してくれたのだ。というわけで、わたしも地元シネコンのチケットに応募し、無事に今日、観ることができたのであります。タイトルは、『愛聖女(サントダムール)-Sainte♡d’Amour-』。とにかくビジュアルがスゴイ!
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 つうかですね、ポスターからしてヤバイよね。物語も、かの聖女、ジャンヌ・ダルクが現代に召喚されてさあ大変!! という少女漫画的?トンデモストーリーで、結論から言うと、「キューティー・ステージ」のサブタイトルの通り、超かわいくて、超楽しく、要するに最高であったのであります! いやあ、やっぱりちゃぴはいいすねえ!
 わたしのような男目線で言うと、例えば同期で退団済みの元宙組TOP娘だった実咲凛音さん(以下:みりおん)のような方は、男なら誰しも美人だと思う正統派美形だが、ちゃぴちゃんは……舞台メイクでない素顔のちゃぴちゃんは……まあ、若干癖がある微妙な可愛さであろうと思う。しかし、ちゃぴちゃんのすごいところは、やっぱり舞台の上での存在感で、とりわけ演技において神がかった輝きを放ち、そしてダンスが超キレていているのである。ダンサーちゃぴの凄さは、おそらく誰しもその眼にしたら、うおお、と感動するレベルだとわたしは思っている。普段のちゃぴはどちらかというと若干おとなし目だけど、明るく可愛い娘なのに、とにかく舞台上のちゃぴは、完全に役に入り込み、ある種の貫禄というか、オーラがバリバリな人物に変身するのだ。まあ、退団公演は『エリザベート』ということで、ダンサーちゃぴを観ることはできないけれど、演技者としてのシシィちゃぴはやっぱり超楽しみですな。
 というわけで、今回の『愛聖女』は、お話的にはかなりハチャメチャで、騒々しいコメディーであったけれど、基本的にうるさいのは周りのキャラ達で、ちゃぴ演じるジャンヌ様は中世の人物ということで、話し方は少し時代がかっているような、そしてやっぱり、その放つオーラは別格で、大変に輝いていたと思う。歌も断然レベルが違うぐらいのお見事な歌声でした。まあ、要するにちゃぴの、ちゃぴによる、ちゃぴのための公演だったのは間違いなかろう。チョイチョイ入るギャグも大変笑わせてくれました。本作はタイムスリップものなわけだが、時を超えて生きる人物として『瑠璃色の刻』でサンジェルマン伯を演じた美弥るりかさんの写真が出てきたときは声を出して笑っちゃったすね。
 というわけで、ちゃぴワンマンショーを一緒に盛り上げてくれた月組メンバーを4人だけ紹介しておこう。
 ◆パメラ:本作の狂言回し的キャラ。タイムマシンで現代へやってきたジャンヌの世話をすることになった現代のオルレアン工科大学学生。演じたのは、天紫珠李ちゃん101期生。彼女も元々男役だったのだが、前作からかな、ちゃぴと同じように娘役に転向したちょっと珍しいお方。かなり可愛い。そしてデカイ! 前作『BADDY』の時、鳥?というかちゃぴ演じるグッディの部下のようなパトロール・バードを可愛く演じていたのが印象的。今回は歌もオープニングナンバーを任されるほどの抜擢と言えそうな気がする。いいじゃないですか。大変気に入りました。
 ◆クララ:パメラをやたらとライバル視するモテ系お嬢様女子。演じたのは、ちゃぴと同期の晴音アキちゃん。とても美人。かなり好きっす。彼女はちゃぴとずっと一緒に月組で頑張ってきたわけで、その想いもひとしおでしょうな。次の『エリザベート』では、女官のリヒテンシュタインを演じるみたいすね。すっと一緒で一番近くにいる同期としてちゃぴも心強いでしょう。今回もとても良かったと思います。今回は同期95期生としては、晴音さんと、後半のキーキャラの議員を演じた楓ゆきさんの二人だけかな。
 ◆ファン・ドゥ・ファン:ジャンヌが大好きでともに100年戦争を戦った男。そしてジャンヌ同様、600年のタイムスリップの果てに現代へやってくる。演じたのは千海華蘭さん。92期生か。月組一筋の生え抜きの一人ですな。てことはやっぱり、ずっとちゃぴと一緒だった先輩ってことすね。パンフによると、現代にやってきたジャンヌの髪をカットしてあげる美容師も彼女が演じてたみたいだな。美容師さんがちょっとした『エリザベート』女官ギャグをブッ込んできたので、わたしは晴音ちゃんか?と一瞬思ったんだけど、千海さんでした。「~でござる!」と若干調子はずれなファン・ファンは最高でしたな。
 ◆ジル・ド・レ:歴史上でもお馴染み、ジャンヌに従い100年戦争を戦った戦士。演じたのは、どうもこの公演での月組生の中で最上級生だったっぽい紫門 ゆりやさん。イケメンですな! 紫門さんも月組一筋の生え抜きすね。91期の最上級生として、カーテンコール後のあいさつは紫門さんが仕切ってました。新公主役経験もあるベテランとして、ジル・ド・レというジャンヌ一筋のボディーガード的役柄はとても頼もしかったよ。
 とまあ、今回の公演は20名という少数精鋭での作品で、結構いろいろ役を掛け持ちしてたみたいすね。でも、ちゃぴを中心にとてもよくまとまっていて、なんかアットホーム感もあって、とても好ましく、楽しめました。

 というわけで、さっさと結論。
 おそらく今後、伝説となるであろう稀代のTOP娘役、愛希れいかさん、通称ちゃぴが、とうとうこの秋、退団することになった。そして6年にわたる最強プリンセスの座についていたちゃぴに報いるために、宝塚歌劇団が企画したスペシャル”キューティー・ステージ”『愛聖女(サントダムール)-Sainte♡d’Amour-』。こいつは絶対観たいぜ! と思ったものの、わずか9公演ということで、チケットは全く取れず、観ることができないのか……と思っていたら、劇団はライブビューイングを用意してくれて、無事、今日の千穐楽を地元シネコンで観ることができた。やっぱりちゃぴは可愛いですなあ……! 大変キュートで楽しく、そして部分部分でサヨナラを予感させる物語は大変楽しめ、ちょっとグッときたっす。そして退団が本当に淋しいよ……頑張って大劇場遠征もしたいと思います。そしてちゃぴの最後の、おそらくは魂のこもった『エリザベート』を楽しみにしたいと存じます。以上。

↓ この本、買っといてよかった……ヅカ本はすぐに品切れで買えなくなるんすよね……二人のプリンセスの写真集。麗しく、大変良い本です。
Deux Princesses―Reika Manaki & Rion Misak (タカラヅカMOOK)
小川友次
宝塚クリエイティブアーツ
2016-11-24