今日は14日である。14日というと、わたしが映画を見るシネコンであるTOHOシネマズは、「トー・フォーの日」として、1,100円で映画が見られるので、お得なのです。世の女性には「レディースデー」なるお得な日が毎週あるにもかかわらず、男にはそのようなサービスデーがないのは非常に逆差別を感じざるを得ないが、まあ、仕方ない。
 というわけで、今日は帰りに『図書館戦争 THE LAST MISSION』を見てきた。個人的にこの作品にはいろいろ関係があるのだが、まあそれは置いておくとして、一観客として、十分に楽しめた作品であった。

 原作はもはや紹介の必要はなかろう。有川 浩先生によるベストセラーで、第1巻目に当たる『図書館戦』がハードカバー単行本で発売されたのは2006年。改めて考えるともう発売から9年が過ぎている。それは、発売当時すぐに読んだわたしからすると、ちょっと驚きだ。もうずいぶん経ったものだ……読んで、ああ、これはすごい小説だと思ったが、以降、シリーズとして、第2作目の『図書館内乱』、3作目の『図書館危機』、そして完結編となる『図書館革命』という4冊が発売になり、さらに加えて、番外編というかキャラクターごとのスピンオフも2冊出版されている。全て非常に売れている作品だ。また、既にアニメ化・漫画化も行われており、数多くにファンに愛されているすごいコンテンツである。
 実写映画は、今回2作目。前作は2013年に公開されたが、基本的には第1巻の『図書館戦争』に沿った展開であった。そして今回の『The Last Mission』は、原作でいうところの第3巻『危機』の内容を踏襲している。てことは、2作目の『内乱』はどうなった? とまあ普通は思うことだと思うが、その第2巻の内容は、先週TBSで放送された(この映画はTBS主幹事製作)、スペシャルドラマ『図書館戦争 ブック・オブ・メモリーズ』で描かれている。ので、そちらを見る必要がある。この『内乱』にあたるドラマでは、主人公・笠原郁と両親の関係を描くエピソードや小牧と毬江ちゃんのエピソード、それから手塚と兄と柴崎の関係性も描かれているので、派手な戦闘は控えめではあるものの、シリーズ全体から見るとかなり重要だと思う。すぐに再放送されることはまあ常識的に考えて難しいとは思うが、見逃した方は、どうやら今日、DVD/Blu-rayが発売になったようなので、そちらを見ていただきたい。こちらのドラマも非常に良かった。
図書館戦争 BOOK OF MEMORIES [Blu-ray]
岡田准一
KADOKAWA / 角川書店
2015-10-14

 で。今回の映画第2作『The Last Misson』である。原作とは若干の違いがあったが、正直全く問題なし。非常に流れもよく、うまく2時間にまとまっていた。監督と脚本は、第1作から引き続き佐藤信介監督と野木亜紀子さんのコンビだ。パンフレットによれば、有川先生がとても信頼する二人だそうで、野木さんはTVドラマ『空飛ぶ広報室』でも有川作品を手がけており、おそらく、有川作品への愛が最も深い脚本家ということのようだ。先ほども書いた通り、物語は若干原作よりも駆け足展開だが、映画として何ら齟齬はなく、問題はない。一つだけ注文を付けるとしたら、何か季節を表すセリフなり情景が欲しかった。何しろ、現在の現実世界は秋である。が、映画世界は春になる少し前(これ原作通り)で、キャラクターはコートを着ている。ひょっとしたら、原作を読んでいない人だと、年末に向かう冬だと思ってしまうかもしれないので、何かちょっとした季節感を表すものが欲しかったかもしれない。ちなみに、この『図書館戦争』という作品では、「カミツレ」という花が重要な意味を持っているのだが、さっきいろいろ調べたところによると、この花は春の花で、3月~5月あたりに咲く花なのだそうだ。花言葉は「逆境に耐える」。作中では極めて意味が深い。ちなみに、我々としては「カモミール」という名の方が知られているだろう。ハーブティーやハーブアロマオイルでおなじみのアレだ。「カミツレ」とは「カモミール」の和名なんですって。へえ~。まあ、「カミツレ」が咲いている=「春」ということで、季節感を表現できているとも言えるのかもしれないが、なんとなく、わたしにはクリスマスへ向かう雰囲気のように見えて、ちょっとだけ気になった。

 キャストもまた、前作から引き続き同じメンバーである。主役の郁、堂上のコンビは、かの「ダ・ヴィンチ」の有川先生特集の号において実施された、「映画化するならキャストは誰がいい?」投票で1位になった榮倉奈々ちゃんと岡田准一くんのコンビである。原作では、この二人は背の高さのギャップがあって、女子の郁の方が背が高く、男の堂上の方がちょっと背が低い設定になっていてそこがまたひとつのポイントなのだが、きっちりそれも映画で実現している。しっかしホントに、榮倉ちゃんはデカイ。顔が非常に童顔なだけに、なんだかひょろっとした不思議な感じがするが、だがそれがいい、のであろう。前作のときに舞台あいさつで遠くから本人を目撃したのだが、実際非常にかわいい女子でした。なんというか、芝居ぶりが非常に、原作読者が想像していた「笠原 郁」そのものなのだ。とてもいいと思います。一方、岡田くんも、おそらくはジャニーズNo.1の演技力で、去年の日本アカデミー賞では、最優秀主演男優賞と最優秀助演男優賞を同年ダブル受賞した実力派である。去年のNHK大河ドラマ『軍師 官兵衛』でも、素晴らしい演技を披露してくれたことは記憶に新しい。また、この映画には、偶然なんだろうけど『官兵衛』のキャストが数人出ている。岡田くん演じる堂上の相棒である小牧を演じたのは、田中圭くん。『官兵衛』では、石田三成をイヤ~な奴として見事に演じていた。また、今回の映画からの新キャラ(※実際は2作目『内乱』にあたるスペシャルTVドラマで既にチラッとお目見え済み)である、手塚 慧には、わたしにとってはシンケンレッドでおなじみの松坂桃李くんがカッコよくエントリー。彼は『官兵衛』では岡田くんの息子、すなわち黒田官兵衛の息子たる黒田長政を演じた男だ。どこかで聞いた話では、桃李くんは今でも岡田くんのことを「父上」と呼んでいるそうですよ。そして長政といえば、三成ぶっ殺し隊のリーダー格であるので、不思議な因縁のキャストになっているが、まあ、偶然でしょうな。しかし、桃李くんは本当にカッコよくなった。もちろん、デビュー作の『侍戦隊シンケンジャー』のシンケンレッドの時からカッコ良かったが、どんどんそのカッコ良さは磨かれているように思う。また、劇中で弟役となる福士蒼汰くんも、デビュー作『仮面ライダー・フォーゼ』から見事に成長し、すっかりイケメンとしておなじみとなった。なんだか見るたびに痩せていっているような気がするが、今後も頑張って活躍してほしいものだ。
 ちなみに、どうでもいいことを一つ付け加えておくと、先ほど前作を観たときにキャストの舞台挨拶を観たと書いたが、その時のわたしの印象に一番強く残っているのが栗山千明様だ。劇中でも非常に、まさしく原作でイメージしていた通りの柴崎を演じているが、本人のちびっ子さ、華奢さ、そして、マジでハンパないオーラというか、完全に一般人が気安く声をかけることはできないような、超絶な可愛さは、本当にビビった。はあ……千明様と京都に旅に出たいわ……いや、無理ですけどね。

 というわけで、結論。
 脚本もキャストも演出も、すべて良かったと思う。おそらく、この映画を観た有川先生はきっとうれしいだろうなと想像する。有川先生の作品に共通するのは、キャラクターが常に、心にやましいところのないように、まったくもってまっとうで、真っ直ぐに生きようとしている人々を描いている点にあると思う。だから、読んでいる我々は、自らを省みて、ちょっと自らを恥ずかしく思うこともあるし、また、同時に深く感情移入できてしまう。「こうでありたかった自分」を思い出さずにいられないのだ。また、普段の生活ではまったく自覚していない、自らの不用意な言葉や行いが、どれだけ他者に影響を与えてしまうかを振り返らせてくれることもある。そういう点が魅力なのだと思う。『図書館戦争』も実際のところそういう部分はあり、映画でも存分にその魅力は伝わったのではなかろうか。興行収入が前作を超えるとうれしいのだが。
(※10/21追記:興行収入が2週目まで出ている→こちらを参照)


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