最新ラノベを読んでみよう、という自己企画を進行中のわたしだが、第3弾として、スニーカー文庫から『保育の騎士とモンスター娘』という作品を選んでみた。
 
 以前も書いた通り、タイトルとイラストだけ、あらすじはチェックしない、というオレルールで適当に選んだ作品である。カバーイラストからは、騎士が保育園の先生的な話であるらしい想像はつく。モンスター娘というのも、カバーイラストに描かれているちびっ子たちだろう。なんとなく話は見えたような気がするが、また同時に、タイトルの音・リズム? のようなものが、なんとなく気に入った。ただ、タイトルのセンスとしては、新人の応募作っぽさというか素人くささも感じるが、まあそれはご愛敬という事で別に気にはならない。分かりやすいことはそれだけで美点であると思う。

 で。実際読んでみたところ、大方は事前の予想通りの物語の展開であったが、今回はいい方向に裏切られた。実に面白かったのである。
 主人公は、騎士見習いの少年といっていい年頃の男。文中の言によれば――カバーイラストからはまったくそうは見えないが――17歳だそうだ。物語は、彼が保育園に派遣され、当地に到着するところから始まる。なんでも、人間と魔族の戦争があって、それがこのたび休戦に至ったと。で、魔族側から、「魔族の幼体をひとところに集め、人間の管理を受けさせる」ことが休戦条件の一つだったと。で、作られた国立保育園ができたわけだが、そこへ派遣された主人公は非常に真面目で、院長代理を務める人間の娘とともに、魔族の子供たちの面倒を見ることになる――というのがあらすじで、途中で、どうして魔族はそういう条件を出したのか、また主人公はなぜ派遣されたのかという内情がほのめかされる。ほのめかされるだけで、明確な回答はおそらくは今後、きっちりと説明されるのだろうが、この作品の中ではまだ、ふんわりとした説明しかない。また、院長代理の娘についても、その素性は明かされるが、なぜ彼女が選ばれたかについては明確には説明されない。
 というわけで、そういった設定部分での説明不足はあるものの、それがまったく気にならないのは、ひとえにキャラクターが魅力的だからであろうと思う。主人公のまじめぶりがもたらすミスマッチの笑いもいいし、本人は全く本気で取り組んでいる姿も好感が持てる。いわゆる、お仕事小説の面も少しだけ併せ持っていると思う。わたしのようなおっさんからすると、こわもて男が幼稚園に、とくれば、Arnold Schwarzeneggerのなつかしい『KindergartenCop』(邦題:キンダーガートン・コップ)を思い出すが、基本的なノリは近いものがある。いや近くないか。まあ、ちょっと思い出しただけです。サーセン。
 そして、なにより保育園に通ってくるちびっ子どもが可愛いのだ。非常にステレオタイプな描かれ様だとは思うが、やっぱり可愛いものは可愛い。可愛いは正義であろう。主人公に突っかかる子、すぐに慣れて大好きになっちゃう子、ちょっと大人びた子、いつまでもオドオドしている子、といった、本当にテンプレといったら失礼だが、それでも、それぞれの子どもに個性付けが明確になされており、読んでいてとても楽しかった。
 一方、登場する大人も、おっかない、けれど実際話せば非常に理論的で、かつスーパー親ばかな魔族の女王とか、超腕が立つけど、この保育園に魔族側として派遣されてきているおっかない魔女将軍とか、魔族側の大人も、当然人間は嫌いなんだけど、主人公のまじめ一徹な行動に、ちょっとだけ魅かれ始めるという展開は読んでいて非常に好ましい。子どもたちも、最初は怖がったり、嫌ったりしているけれど、当然徐々に懐きはじめ、みんなが主人公を好きになっていく展開である。なにしろ、主人公は、まったくぶれないのだ。そして読者への媚びのようなものもなく、ただひたすら真面目に自分の任務を考え、それを全うしようとする。そのまっすぐさがとてもすがすがしく、作中のキャラクターだけでなく、読んでいる読者もきっと、主人公に好感を持つようになる。
 これだよ、こういうのをわたしは読みたいのだ。王道展開でとりわけひねったようなところもなく、スッと読み終わってしまうが、構成もしっかり組み立てらえており、山場の盛り上がりが少しおとなしめではあるが、非常にわたしの満足度は高かった。これが応募原稿なら、間違いなく選考に残すと思う。大変気に入った。
 読み終わった後で調べてみたところによると、著者の神秋昌史先生は、わたしは聞いたこともない知らない作家だが、どうやら集英社のスーパーダッシュで賞を獲ってデビューした人らしい。なので、一応の実績はあり、素人ではないと。また、イラストを担当する森倉円先生も、どうやら今まで実績がそれなりにある方らしい。そういえば電撃文庫で描かれていたなということも思い出した、というか分かった。どういう経緯で神秋先生がスニーカーで描いてくれたのかは知らないが、スニーカー編集部は神秋先生を大切にした方がいいと思う。面白かったです。

 というわけで、結論。
 2巻が出たら買います。主人公の今後の奮闘を、もっと読みたいし、ちびっ子どもの成長を見守りたいものだと思った。院長代理の女の子とのラブ展開は、まあどうでもいいかな。どうせちびっ子がやきもち焼くんでしょw

 ↓ シュワちゃんの『KindergartenCop』は1991年の映画か……懐かしいのう……。
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ジェネオン・ユニバーサル
2012-05-09