確か2年前、2014年のCOMI-CONで予告が公開されて結構話題となった『THE MAZE RUNNER』という映画がある。わたしもその原作小説が、いわゆるYA小説としてUS国内で大変人気があり、今度映画になると知っていたので、その予告を見て、おお、面白そうじゃん、と思ってたのだが、その映画は日本では2015年の5月に公開になった。わたしはそれよりちょっと前に発売になった原作小説の日本語訳を読んで、十分に予習してから、劇場へ観に行ったのだが、残念ながら小説のエッセンスを巧みに凝縮してはいるものの、若干薄味で随分とカットされているように感じてしまい、同じ年の10月に日本公開された第2作目は、劇場へ観に行くことはなかった。正直、WOWOWで十分だろう、と思ってしまったわけだが、このたび、WOWOWでその第2作目『THE SCORCH TRIALES』(邦題:メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮)が放送されたので、さっそく観てみることにした。
 結論から言うと、まあ、WOWOWで十分かなという予感はわたし的には的中したものの、ラストのヒロインのまさかの行動に、またしても「ここで終わり!?」という内容であったため、実は続きが気になってしまっている。原作小説も、1作目しか読んでいないので、どんなオチとなるか、大変楽しみというか、興味はある。


 とりあえず、上の映像が1作目の予告で、下の映像が、わたしが今回WOWOWで観た2作目の予告です。あれっ!? 2作目の予告は、後半にキャストインタビューが入ってるのはいいんだけど、結構ネタバレな内容になってるんじゃねえかこれ。いいのかな……まあ、いいか。
 まあ、内容は基本的に予告に描かれている通りである。気が付くと、謎のエレベーターに乗っている主人公。全く記憶を奪われ、自分が何者かすらわからない。そしてエレベーターの行き着く先では、同じような少年たちがいっぱいいて、壁に囲われた謎空間に隔離されている、という状況であった。そして壁は毎朝開き、毎夜閉じる。開いた壁の先には、謎の迷路が広がっていて――というのが1作目、2作目は、無事に迷路をクリアした少数の少年たちが、今度は謎の組織に救助され、謎の施設に監禁される。そこでとある事実を知り、施設の外の砂漠へ脱走する――というのが2作目のお話だ。
 なので、ポイントとなるのは、一体全体、迷路は何だったのか、組織は何者なのか、なぜ主人公は、組織から追われているのか、ということになる。
 で、実際、それらの謎は、ほぼすべて、きちんと説明され、解明される。のだが、正直なところ、非常に実感しにくいというか……なんでまたそんな回りくどいことを? という気もするし、なにより、ズバリ言ってあまり面白くない。まあ、まぎれもなくこの原作小説はライトノベルなので、10代の若者向けなのだが、日本のライトノベルの方がよっぽど面白いとわたしは思ってしまった。
 なので、物語自体は全くわたしには響かないというか面白く感じられないのだが、やはりその映像クオリティは、ハリウッドが本気で作っているだけあって圧倒的に素晴らしい。役者陣も非常にいいし、とにかく、こりゃあ日本では無理だ、という立派なハリウッド映画に仕立てられており、お見事である。
 今、調べてみたところによると、
 ◆1作目:予算34M$(=約35億円)、US興収102M$(=約107億円)、全世界興収348M$(=約365億円)
 ◆2作目:予算61M$(=約64億円)、US興収81M$(=約85億円)、全世界興収312M$(=327億円)
 と、ハリウッド基準でいえば低予算ながら、実に立派な興収をたたき出しており、当然この成績なら、当初予定通り3作目も製作間違いなしである。ただ、主演の青年がけがをしてしまって、現在撮影中断中というニュースを見かけたので、早く元気に回復してくれることを、おそらく大勢の関係者が待ち望んでいるはず、だと思う。
 わたしは観ながら、壁に囲まれた環境に置かれた少年たち、ということで、日本で大人気のとある漫画とその映画化作品を思い出しながら観ていたのだが、物語自体はどちらも全く面白くないが、映画として、映像としてのクオリティはダントツにハリウッドの勝ちであることは、もう誰の目にも明らかだろうと思う。
 その違いはいったいどこにあるんだろう、と思いながら観ていたわけだが、やはり、わたしが何度かこのBlogでも指摘している、「質感」がすべてなんだろうな、という結論に至った。
 これは条件が違うので、直接的には比較できないけれど、例えば端的に違うのが、キャラクターたちの着ている服や汚れた顔のメイクだ。本当にいつも不思議に思うのだが、なんで日本映画の、汚れた顔って、完全に作り物というかウソっぽいんだろう? もう、メイクにしか見えない、わざとらしい汚れ具合。全く風呂に入っていない環境で、顔や体が汚れていくのは当たり前なわけで、それをメイクで表現するわけだが、本作のキャラクターたちの汚れ方は、もう、本当に風呂にずっと入っていないような、自然な汚れ方だ。服もしかり、である。しかし一方で、日本の大人気漫画を映画化したあの作品の、役者たちの顔のわざとらしく嘘くさい汚れ方や、服の不自然なありえなさ感は、なんなんだろう? これは、わたしは声を大にして言いたいのだが、メイクや服飾技術の差では決してないと思う。今やハリウッドには日本人メイクアップアーティストや衣装デザイナーがいっぱいいるわけで、技術の差じゃあない。たぶん、監督のセンスの問題だ。監督が、汚れメイクをしたキャストの顔を見て、「あーダメ、やり直し」と一言いえば済む問題なのに。服も、とにかく嘘くさい。日本の時代劇なんかは非常に細かな素晴らしい仕事をするスタッフがいっぱいいるのに、実になんというか、もったいないというか、その行き届いていない半端なクオリティが、ハリウッドとの大きな違いのように感じる。
 そりゃあもちろん、予算の差もあるだろう。金で解決できる問題も多く存在していると思う。だから、そう言い訳されたら、そりゃあ残念ですな、としか言いようがない。だけど、それで許すのか? それでいいのか? とも思うわけで、そこはクリエイターが、絶対に譲ってはいけないラインだと思うのだが……。夢はあきらめたらそこで終了ですよ。
 とまあ、物語に入り込めない分、映像のクオリティばかりをチェックしてしまったわたしだが、この映画は、日本のライトノベル業界の人々はぜひ観に行って、夢を膨らせてもらいたいと思う。日本でできないなら、できるところ、ハリウッドで映画化してもらえばいいじゃない。物語力は絶対に日本のライトノベルの方が上だとわたしは信じている。もう、国内だけじゃなくて、世界に市場を広げるためにも、ハリウッド映画化は絶対に目指すべき目標でしょ。まあ、今の国内出版社の人間で、そんな目標を掲げている編集者はいないのかな……だとしたら非常に残念だよ……。というわけで、わたしとしては先日発表になった、『ソード・アート・オンライン』のUS国内TVシリーズによる実写映像を、心から楽しみにしています。頑張ってほしいな、本当に。

 というわけで、結論。
 『THE MAZE RUNNER』という、ヤングアダルト小説の映画シリーズ第2弾『THE SCORCH TRIALES』をWOWOWで観た。物語は全く大したことはない。のだが、その映像クオリティは実に素晴らしく、さすがのハリウッドクオリティである。日本の映像関係者やライトノベル編集者は、この作品を観て、「けっ!! たいして面白くねーじゃん」で終わらせないで、自分たちもこのレベルの映画を作ることを本気で想像していただきたいと思う。夢や目標がないと、それは仕事じゃなくて、ただの作業ですよ。それじゃあ、楽しくないよね。目指せ1億ドル、でお願いしたいものです。以上。

↓ 原作の3作目は、まだ日本語訳が出てないんだよな……まあ、映画の公開に合わせるんでしょうな。それはそれで、販売戦略的にアリ、です。