1巻を発売当時にすぐ買ったのはもう随分前だが、以来、新刊が出るたびに買って読んでいる漫画『亜人』の最新7巻が発売になった。
亜人(7) (アフタヌーンKC)
桜井 画門
講談社
2015-11-06

 この作品は既に発表されている通り、アニメ化が決まっている。しかも、ちょっと変則的というか、劇場版とTVの両方らしい。劇場版は3部作になっていて、その1作目が11/27より2週間限定公開で、TVシリーズは年明け1/15からだというので、TVシリーズ後に劇場版を2本公開するのか、そもそも劇場版とTVシリーズはどういう関係なのか、正直まだ良く分かってません、わたしは。というわけで、とりあえず↓こちらが、劇場版の予告映像である。

 この予告を観てもらえば、大体のストーリーは分かると思う。
 物語の始まる17年前、アフリカで発見された「亜人」という存在があって、それは、「不死身」の存在で、明らかに人間じゃない「人間の亜種」ということだ。一番気持ち悪い例で言うと、亜人は断頭されても死なない。頭が生えてくるのです。だから、銃器や刃物はまったく亜人には意味がなく、捕まえるには麻酔銃で眠らせないと捕まえられないのだが、仮に麻酔銃で撃たれても、麻酔が効く前に自分の頭を撃ち抜いて「1度死んでリセットすれば大丈夫」という気持ち悪い荒業も使えるのである。そういった、不死身の存在である亜人は、日本にも2体いると言うところから物語は始まるのだが、この「亜人」という存在は、「死なないと亜人かどうかわからない」というのがポイントで、主人公の永井圭くんは、当然自分が亜人だとは夢にも思っていなかったのだが、ある日、事故で完璧に死んだはずなのに死ななかった、ということが明らかになって、亜人であることに気づくと。
 この永井くんは恐ろしく頭のいい高校生だけれど、正直なところ性格が捻じ曲がっていて、とてもわたしとしては好きにはなれないのだが、それ以上に、普通人々の醜さも過剰に描かれていて、永井くんすらまともに見えるという皮肉な気持ち悪さがある漫画である。というのも、世間的に「亜人を捕まえると大金がもらえる」的な都市伝説めいた世の流言があって、永井くんが日本で3体目の亜人であることが分かると、誰もが血なまこで彼を捕まえようとするわけだ。まあ、そういうモブキャラたちは、あっさり永井くんに返り討ちに遭うのだが、逃走にも限界があるわけで、同じ亜人の仲間を探すと。しかし、仲間と思われた「先輩」亜人2人はまたとんでもない連中で……という感じで物語は展開する。
 上記の予告は、大体原作の3巻の途中までぐらいが描かれているように見える。ちょっとネタバレでストーリー展開を書いてしまうが、どうやら最初の映画は、3巻のラスト近くの、「佐藤」と呼ばれる日本の亜人第1号が、Webを通じて呼びかけを行い、存在を知られていなかった亜人が実はいっぱい他にもいて、わらわらと集合するところまで、だと思う。そこぐらいしか切りのいいところがないような気がするのだが、TVシリーズはその後を引き継いでいくのか、よく分からない。まあ、続けていくんでしょうな、きっと。
 
 「亜人」という存在がどう国家に扱われるか、については、2巻で永井くんが身をもって体験する様子が描写されるので、そこを読んでもらいたいのだが、まあ、完全に実験動物として、すさまじい拷問(?)というか、何しろ何をしても死なないので、まあひどいことをされるわけで、後に語られるところによれば、完全に「経済動物」として扱われる。例えば、製薬会社の新薬投与実験だとか、自動車会社の衝突安全性実験だとかに「貸し出されて」、管理する国というか厚生労働省はボロ儲け、みたいな事が描かれる。なので、そういった扱いから何とか脱出してきた永井くん以前の2人の先輩亜人は人間を憎んでいるわけだが、その攻撃が巻を追うにつれてどんどんとすさまじいものになっていく中で、永井くんがどう行動するか、というのが物語のメインと言っていいだろう。
 現状の最新7巻では、永井くんが、「佐藤」と呼ばれる国内第1号の先輩亜人のやり方には付いていけないと思っていて、何とか止めようとしているところである。ただ、その動機は、別に人間を守るためではなく、あくまで自分が周りの目を気にせず普通に暮らすためで(たぶん)、先輩亜人の「佐藤」のやり方ではダメ、と思っているから止めようとしているのだ。いわば、永井くんにとって佐藤の行動は迷惑千万で、邪魔だから何とかしよう、としているだけである。永井くんは進んで人間を殺したいとは思ってはいないと思うけれど、それは基本的に自分以外はどうでもよく、自分にとって都合が良ければそれでいい、というものである。だから平気で他人を犠牲にしたり利用したりする野郎なので、わたしにはどうにも主人公に感情移入しにくい漫画である。

 わたしは、『進撃の巨人』は9巻ぐらいで飽きて、単行本を買うのをやめてしまったが、正直この『亜人』も、若干飽きつつある。わたしがこの漫画をまだ面白いと思って買っているのは、この主人公・永井圭くんが、最終的に一体どうなるか知りたいためだ。しかし今回の7巻では、亜人第1号「佐藤」の過去が描かれ、その動機が垣間見えてきたところだが、正直、え、そういうことなの? と、この先読み続けるかどうしようか、微妙な過去話であった。なので、ちょっと付いていけなくなりつつある。落としどころが見えないというか、暗い将来しか見えないというか……。たぶん、キャラクターで唯一まともなのは、永井くんの元・親友の「海斗」と、亜人第2号の「田中」の二人ではなかろうかと思う。おそらく、海人は今後、何らかの役割を持って登場するのは間違いなかろうと思う。そして、田中は……きっと佐藤に利用されてポイ、なんじゃなかろうか。田中が人間を憎む動機は非常に良く分かるというか、きちんと説明されているけれど、それを利用されているだけなんだよな……うまくいけば、永井くんと仲間になれる展開もあると思うが、どうでしょうね……。

 というわけで、結論。
 とりあえず、こちらで第1巻の第1話を読んで、先が気になるようならば買いです。
 ただし、内容的にかなり残虐シーン満載なので、そういうのが苦手な人はやめたほうがいい。わたしは、もちろん面白いと思っているから買い続けているので、お勧めしたいところだけれど、万人向けではないだろうね。わたしも、実際ちょっと飽きてきた……まあ、映画は観に行きますよ。

↓ 不老不死、と聞いてわたしが真っ先に思い浮かべる映画はこれ。この映画の場合は「断頭されたら死」だけど、わたしはかなり好きです。カッコイイ。
ハイランダー/悪魔の戦士 [Blu-ray]
クリストファー・ランバート
ジェネオン・ユニバーサル
2012-04-13