はあ……マジで宝塚歌劇は最高だなあ。。。
というわけで、老いた母の介護で地獄の毎日を送っているわたしですが、今日は母に昼飯を出すのを兄夫婦に任せ、わたしは午前中から日比谷に向かい、東京宝塚劇場で明日千秋楽を迎える月組公演『グレート・ギャッツビー』を観てまいりました。
前回の観劇、星組公演を観てからもう2カ月半、実はその間上演されていた花組公演は、8月に奇跡のSS席が当たっていたものの、COVID-19の蔓延によって公演は中止と相成り、観ることが出来なかったのでした。なので、現在のわたしの唯一の生きる希望であるヅカ観劇は、花組を飛ばして月組公演、となったわけであります。ちなみに次の宙組公演は、チケット全滅で観られないことが確定してしまったため、次は順調に行けば11月に大劇場の星組公演、そしてその次が12月の東京での雪組公演、の予定であります。無事に観ることが出来るとよいのだが……。星組推しのわたしとしては、星組公演だけは見逃すわけにはいかないので、万一東京でチケットが獲れない場合に備えて、大劇場遠征をもくろんでおります。
で。
今回の月組公演は、アメリカ文学が誇る名作、Francis Scott Fizgerald氏による「The Great Gatsby」のミュージカル版、『グレート・ギャッツビー』であります。本作は、1991年に宝塚歌劇団雪組による初演の後、2008年には月組で2幕物にスケールアップされ、今回はその再演となるものでありますが、2010年にヅカ道に入門したわたしは、映像でも観たことのない、全くの初見の作品でありました。でも、何年か前に、井上芳雄氏がWOWOWの番組で主題歌を歌っている(※芳雄氏は2017年に主役ギャッツビーとして日生劇場での公演を行った)のを見て、これはいい歌だなあ、とか思っていたので、わたしとしては今回の公演はとてもとても楽しみにしておりました。
さらに言うと、今回の2022年月組版は超観たい作品であったため、実は8月に大劇場に遠征する予定でチケットも当選していたのだが……これまたCOVID-19によって公演中止となり、涙を呑んでいたため、今日の観劇は、もう待ちに待っていたわけであります。
とまあ、またどうでもいい前置きが長くなりましたが、ついに観ることができた最新版『グレート・ギャッツビー』は、もう一言で言えば、最高でした! いつも同じことを言ってますが、マジで劇場にいる3時間だけは、地獄のような日常をすべて忘れさせてくれますね。しかし、本当に月組は層が厚いというか、演者の皆さんそれぞれが、本当に素晴らしく、完璧だったと存じます!
はい。というわけで、『ギャッツビー』であります。
わたしは、文学部卒の文学野郎として、当然原作は大学生時代の30年前に読んでおります。もちろん1974年版の映画(主演はRedford氏)も、2013年版の映画(主演はDiCaprio氏)も観ております。なので、ストーリーはよく知っております。そして、そのストーリーが、「男にとって結構キツイ」ことも十分わかっております。
かつて大学生時代には、ヒロインであるデイジーは、はたしてクソ女なのか否か、で、ガキくさい論争なんかもした覚えがあります。そう、クソガキだったわたしには、デイジーはなんてヒドイ女なんだ! としか思えなかったんすよね……。懐かしい。。。まあ、男のわたしから見ると、結構ヒドイ、とは今でも密かに思うし、当時若かったころ論争した相手の中には、女子も何人かいましたが、その女子たちも、デイジーはヒドイよね~、とか言う人もいました。
けどですね……薄くなってきた髪を日々嘆く初老の男となり果ててしまった今のわたしから見ると、まあ、こういうもんだよね……とデイジーにも理解が出来ちゃうんすよね……。
以前もこのBlogで書いたことがありますし、もうわたしにとっては事実としか思えないのですが、明らかに、男は「名前を付けて保存」、女性は「上書き保存」なんだよな……。つまり、男は、過去の恋愛ファイルを後生大事に、一つずつきちんと保存しておき、たまに眺めては勝手に美化して書き換えて取っておく、のに反して、女性はもう、恋愛ファイルは一つだけ、どんどん上書きして行っちゃうから、過去の恋愛なんてもうさっさと消し去ってしまうんすよね……。男にとってはなかなか理解しがたいんだけど、もう、これは厳然たる事実だと思うので、こりゃもう、どうにもならんす。
デイジーにとっては、娘と共に生きることが最も優先すべきことであり、ギャッツビーへの愛はもはや保存しておく価値がなくなっちゃったってことなのかな……。特に、当時の世情からすれば、クソ野郎でも、きっちり金をもっているトムと共に生きるしかないわけで、自身が言う「バカで可愛い女」であることに徹底したその姿は、第三者のわたしが、ヒドイよ! なんて思っても、痛くもかゆくもないもんね。生きることが最優先なんだから。。。
なので、わたしは今回、観劇にあたっては、果たして若き頃のわたしが「クソ女」だと断定したデイジーを、わたしの大好きな海乃美月さまがどう演じるか、が最重要ポイントでありました。そして、天才・小池修一郎先生が、デイジーに対して、どのような演出をされるのか、を楽しみにしておりました。
というわけで、以下、各キャラと演じたジェンヌをまとめてみようと存じます。
◆ギャッツビー:わたしから見ると、彼は稀に見る純情BOYで、デイジーLOVEを貫こうとしている生真面目な男としか思えません。他にいろんな女子と出会っただろうに……。そこまで固執する必要はなかったはずのに……まあ、若さなんでしょうな……。生まれはそんなに悪くないけど、それほどでもないフツーの青年だったギャッツビー。軍人時代に名家の娘であるデイジーと運命的に出会って恋に落ちるが、デイジーの母から、大したことのない男判定されて恋を禁じられ、第1次世界大戦終結後に暗黒街の中で成り上がり、デイジーの住む家の対岸に豪邸を構え、夜な夜なパーティーを開催する謎の男としてデイジーとの恋を成就させようと超・超・超頑張ってきた健気な男ですよ。その頑張りだけでも泣けるよね。すべてはデイジーとの再会のために、という思いで今まで頑張ってきたけれど、再会したデイジーにはクソ野郎の旦那がいて……と、なかなかキツイ状況にある。
演じたのは当然、月組TOPスター月城かなと氏(以下れいこ)。実はわたしは、れいこがちなつさんに対して微妙にタメ口なのが若干アレだなあ、とか思っていたのですが、今回のギャッツビーは最高に素晴らしかったと絶賛したいです。まずビジュアルは、現役TOPスターでもナンバーワンクラスの「クラシカル・ダンディ」で、ギャッツビーにぴったりだし、歌唱力もグッと良くなった、と言ったら失礼か、ますます良くなった、と思いました。衣装も良かったすねえ! 今回のお話は1920年代なわけですが、そのクラシカルなスーツが、れいこに超似合ってましたね! あの背中、あらゆる感情を伝える後姿が泣けたっすわ……。実に見事なギャッツビーだったと思います。おそらく、観てないですが、芳雄氏のギャッツビーよりも美しさと儚さでは上回ってたのではないかと存じます。見事でした!
◆デイジー:超美女。名家の娘であり、奔放かつ天真爛漫(?)な、天然系小悪魔。なんつうか、天然小悪魔ほど男にとってタチの悪いものはないっすよ。ただ、今回の小池先生の演出においては、天然小悪魔というよりも、うーーーん……難しいな……なんと言えばいいのか……計算高いというのも違うし……うーーーん……まあ、やっぱりいわゆる「ファム・ファタール」ってやつなのかなあ……。一応、男のわたしから見ると、デイジーは明確にギャッツビーを愛しているとは思うし、旦那に対して愛はないはず、だと思う。だけど、最終的には旦那を選ぶわけで、その選択に、若き日のわたしは「クソ女」判定したのだが……。
演じたのは、これも当然月組TOP娘役の海乃美月さま(以下:うみちゃん)。わたしとしては、ラストでギャッツビーのお墓にバラを「ポイッ」と投げ入れて、くるっと回れ右して立ち去るシーンのうみちゃんの表情に、小池先生の演出を見た思いがします。あそこでのうみちゃんは、もう完璧に「無表情」に近く、何の感情も感じられないものでした。はっきり言って、わたしはかなりゾッとしたっす。そしてそれこそ、小池先生の演出なんだろうと思うわけです。デイジーにとっては「終わった恋」であり、これからは「バカで可愛い女」を徹底して生きるんだという決意の表情。うみちゃんの演技も完璧だったと思うっすね。まあ、男のわたしとしては、女子のあんな表情を観たら、マジでもう生きていけないかもしれないな。つらいっすわ……。とにかく、うみちゃんのデイジーも完璧&最高だったと存じます。
◆トム:デイジーの旦那。名家の出身で金持ち。働いておらず親の遺産で悠々と暮らすいけ好かない野郎。デイジーという超美人の奥さんがいるのに、自動車工場の主婦であるエロ系女子のマートルと浮気中。現代人の我々から見れば、差別主義者で女性蔑視な、とにかく嫌な野郎だけれど、残念ながら1922年当時のUSAにおいては普通であり、ある意味まったくありふれた存在なんだと思う。つうか、1922年って、えーと、大正11年か。日本だって同じようなもんだよね。だから現代人の我々が、トムに対してとやかく思ってもあまり意味がないけれど、まあ、とにかく嫌な野郎ですよ。
演じたのは月組正2番手の鳳月杏さん(以下:ちなつさん)。ちなつさんはこのところ、面白イケおじさん的な役柄が多かったけれど、今回は花組時代によく見た、根っからの悪党系役柄でしたね。その端正なスーツ姿はさすがだし、遊び人風な姿も見事にキマっておりました。お見事だったと思います。
◆ニック:デイジーの従弟であり、トムの大学時代の友人であり、退役後NYの証券マンとしてギャッツビーの屋敷の隣に引っ越してきたイイ奴。本作で唯一、「良心」を持った素晴らしい男で、物語の狂言回し的役割を持ったキャラクター。
演じたのは、100期生伸び盛りの風間柚乃くん(以下:おだちん)。いやあ、今回もおだちんは最高でしたね! 素晴らしいですよ。芝居は確かだし、歌も見事だし、もう言うことないっす。いずれ来る世代交代で、間違いなくおだちんは2番手、そしてTOPスターへと昇りつめてゆくことでしょう。その日が来るのは意外と早いかもしれないすね。楽しみであります!
◆ジョーダン:デイジーの親友でプロゴルファー。この時代では恐らく珍しかった、自分の意見をはっきり持った自立した女。演じたのは雪組からの転校生彩みちるちゃん。今回は、CITY HUNTERの冴子ばりな、キリっとしたキャラだったすね。非常に見事な役作りだったと思います。みちるちゃんはやっぱり演技巧者なんですな。実にお見事でありました。まあ、99期生と学年も上がって来てしまったので、もし仮にうみちゃんが次で卒業ということになってしまったら、次期月組TOP娘役はみちるちゃんかもしれないすね。そのオーラはもういつでもTOPになってもおかしくないほどですよ。
◆マートル:トムの浮気相手の妖艶エロ系女子。しがない自動車工場の奥さん。まあ、いわゆる不倫相手なわけですが、男目線で言うならば、上流社会へのあこがれを利用された彼女もまた、被害者なんだろうと思います。演じたのは101期生の天紫珠李ちゃん。今のところ、月組の次期TOP娘役を争う有力候補なわけですが、わたしとしてはみちるちゃんでもじゅりちゃんでも、どちらも応援したいところです。とにかくタイミング、が問題となりそうっすね……。仮にうみちゃんが次の公演で卒業となって、みちるちゃんが後を継いだら、じゅりちゃんにチャンスが廻って来るのは早くても3年後でしょ。てことはその時じゅりちゃんは研11(?)ぐらいになってしまうわけで、うみちゃんの卒業が伸びたらもっと学年は上がってしまうわけで……わたしとしては、他の娘役にはあまりない、じゅりちゃんのちょっと濃い目のお顔立ちは非常に貴重だと思うし、そもそも超美人だと思うのだが……。
◆ジョージ:マートルの亭主。自動車工場の主。気の毒としか言いようがない……。演じたのは、月組組長の光月るうさん。この役はキーキャラでもあるわけで、組長が演じるよりも誰か若手にチャンスを上げてほしかったかもな……と言っても、若干の老け役でもあるわけだから、ちょっと難しいか……。でもまあ、組長の確かな演技は見事だったし、確かに組長以外には難しかったかもね……。もしまだありちゃんが月組にいたら、どの役を演じていたのかなあ。
とまあ、主なキャラは以上ですが、今回わたしの目に留まった3人も紹介しなければならないでしょう。
まず、今回で卒業してしまう晴音アキちゃん。今回はいろんな役でいろんな場面で登場していたね。そしてフィナーレでも、同期のれいことのシーンもあって、胸アツでした。ちょっと前なら、絶対マートルは彼女が演じてただろうなあ。もう舞台でみられないかと思うととても寂しいです。顔立ちがわたしの好みにジャストミートなんすよ……。声も特徴があってすごい好きでした。今後の活躍を楽しみにしております!
そして、同期と言えば、専科に移った専科最年少の輝月ゆうまくん。もうこの人、ホントに男にしか見えないんですけど! 実に、実に渋い役作りで最高でした。この前、スカステの「Memories of 晴音アキ」で、輝月くんと最後の舞台で一緒になれて本当に嬉しかったって、晴音ちゃんが言ってたよね。きっと輝月くんも同じ思いでしょう。なにしろ、輝月くんは研4でロミジュリのヴェローナ大公を演じきった実力者だもんね。本当に見事だよ。BADDYでの銀塗宇宙人がもはや懐かしいすね。次は、ぜひ星組公演に出演して、こっちんと共演してください!
最後は、月組を見る時のわたし的お約束の蓮つかさくん。れんこんくんも、もう研12か。その発声の良さ、ピシッとした姿勢、若手へのお手本として常に成長してるよね。フィナーレでもやっぱり目を引くし、ひげダンディぶりも大変お似合いでした。今後も応援いたしたく存じます!
てなわけで、月組は本当に層が厚いので、もっと書きたいことはあるんだけど、もう長いので、最後にいつもの「今回のイケ台詞」をご紹介して終わりにしたいと思います。
※「イケ台詞」=わたしが、かーっ! カッコええ!と感動した台詞のこと
「幸せ? そうね、幸せ過ぎて、幸福にマヒしてしまったわ……」
今回は、イケてると言うよりも、わたしの胸に刺さった台詞にしました。これは冒頭でデイジーがニックに再会した時に言うセリフですが、全ての悲劇がこの台詞に凝縮しているような気がします。金持ちの男のトロフィーワイフとして、お人形のように「バカで可愛い」女となって愛を捨てたデイジー。もう、冒頭からずっとデイジーの未来はこの台詞に暗示されていたように思うっす。ギャッツビーには、ジョーダンのような女子の方がお似合いだったかもしれないすな……でも、ジョーダンから見ればギャッツビー的男はお断りだったかもな。難しいですのう……。
というわけで、結論。
夏ごろのCOVID-19蔓延によって、わたしの愛する宝塚歌劇も大きく影響を受けたわけだが、わたしが昨日観てきた月組公演『グレート・ギャッツビー』も、確か本拠地大劇場では4日ぐらいしか公演できなかったと思いますが、ようやく落ち着きつつあり、無事に東京でわたしも観ることが出来ました。退団者の皆さんの無念を思うと、わたしのチケが飛んだ事なんぞどうでもいいレベルの事故に過ぎず、ホント、東京で大千穐楽を迎え、完走できてよかったと思います。で、肝心の『ギャッツビー』ですが、ビジュアル面も歌も実に見事で完璧でありました。今の月組しか実現できなかった作品だと思います。物語は1922年、ちょうど100年前の出来事なわけで、日本で言えば大正11年を舞台としており、100年経って人類の生活様式はすっかり変わりましたが、人間そのものはあんまり変わってないすよね。100年前、たった一つの愛に準じたギャッツビー。男としては、彼の生きざまに涙するしかないっす。いや、泣いちゃあいませんが、とてもグッときました。そして、ある意味ではその愛に応え、きっぱりと過去を文字通り「葬って」未来へ進んだデイジー。30年前ガキだったわたしは、原作を読んでホントひどい女だと憤慨しましたが、今となっては「そういうもんだ」と理解はできます。納得は……したくないけどね。しかし月組は層が厚いですな。おだちんの未来を今後も見守りたいと存じます。以上。
↓ やっぱり読んどいた方がいいと思うし、観といた方がいいと思います。
というわけで、老いた母の介護で地獄の毎日を送っているわたしですが、今日は母に昼飯を出すのを兄夫婦に任せ、わたしは午前中から日比谷に向かい、東京宝塚劇場で明日千秋楽を迎える月組公演『グレート・ギャッツビー』を観てまいりました。
前回の観劇、星組公演を観てからもう2カ月半、実はその間上演されていた花組公演は、8月に奇跡のSS席が当たっていたものの、COVID-19の蔓延によって公演は中止と相成り、観ることが出来なかったのでした。なので、現在のわたしの唯一の生きる希望であるヅカ観劇は、花組を飛ばして月組公演、となったわけであります。ちなみに次の宙組公演は、チケット全滅で観られないことが確定してしまったため、次は順調に行けば11月に大劇場の星組公演、そしてその次が12月の東京での雪組公演、の予定であります。無事に観ることが出来るとよいのだが……。星組推しのわたしとしては、星組公演だけは見逃すわけにはいかないので、万一東京でチケットが獲れない場合に備えて、大劇場遠征をもくろんでおります。
で。
今回の月組公演は、アメリカ文学が誇る名作、Francis Scott Fizgerald氏による「The Great Gatsby」のミュージカル版、『グレート・ギャッツビー』であります。本作は、1991年に宝塚歌劇団雪組による初演の後、2008年には月組で2幕物にスケールアップされ、今回はその再演となるものでありますが、2010年にヅカ道に入門したわたしは、映像でも観たことのない、全くの初見の作品でありました。でも、何年か前に、井上芳雄氏がWOWOWの番組で主題歌を歌っている(※芳雄氏は2017年に主役ギャッツビーとして日生劇場での公演を行った)のを見て、これはいい歌だなあ、とか思っていたので、わたしとしては今回の公演はとてもとても楽しみにしておりました。
さらに言うと、今回の2022年月組版は超観たい作品であったため、実は8月に大劇場に遠征する予定でチケットも当選していたのだが……これまたCOVID-19によって公演中止となり、涙を呑んでいたため、今日の観劇は、もう待ちに待っていたわけであります。
とまあ、またどうでもいい前置きが長くなりましたが、ついに観ることができた最新版『グレート・ギャッツビー』は、もう一言で言えば、最高でした! いつも同じことを言ってますが、マジで劇場にいる3時間だけは、地獄のような日常をすべて忘れさせてくれますね。しかし、本当に月組は層が厚いというか、演者の皆さんそれぞれが、本当に素晴らしく、完璧だったと存じます!
はい。というわけで、『ギャッツビー』であります。
わたしは、文学部卒の文学野郎として、当然原作は大学生時代の30年前に読んでおります。もちろん1974年版の映画(主演はRedford氏)も、2013年版の映画(主演はDiCaprio氏)も観ております。なので、ストーリーはよく知っております。そして、そのストーリーが、「男にとって結構キツイ」ことも十分わかっております。
かつて大学生時代には、ヒロインであるデイジーは、はたしてクソ女なのか否か、で、ガキくさい論争なんかもした覚えがあります。そう、クソガキだったわたしには、デイジーはなんてヒドイ女なんだ! としか思えなかったんすよね……。懐かしい。。。まあ、男のわたしから見ると、結構ヒドイ、とは今でも密かに思うし、当時若かったころ論争した相手の中には、女子も何人かいましたが、その女子たちも、デイジーはヒドイよね~、とか言う人もいました。
けどですね……薄くなってきた髪を日々嘆く初老の男となり果ててしまった今のわたしから見ると、まあ、こういうもんだよね……とデイジーにも理解が出来ちゃうんすよね……。
以前もこのBlogで書いたことがありますし、もうわたしにとっては事実としか思えないのですが、明らかに、男は「名前を付けて保存」、女性は「上書き保存」なんだよな……。つまり、男は、過去の恋愛ファイルを後生大事に、一つずつきちんと保存しておき、たまに眺めては勝手に美化して書き換えて取っておく、のに反して、女性はもう、恋愛ファイルは一つだけ、どんどん上書きして行っちゃうから、過去の恋愛なんてもうさっさと消し去ってしまうんすよね……。男にとってはなかなか理解しがたいんだけど、もう、これは厳然たる事実だと思うので、こりゃもう、どうにもならんす。
デイジーにとっては、娘と共に生きることが最も優先すべきことであり、ギャッツビーへの愛はもはや保存しておく価値がなくなっちゃったってことなのかな……。特に、当時の世情からすれば、クソ野郎でも、きっちり金をもっているトムと共に生きるしかないわけで、自身が言う「バカで可愛い女」であることに徹底したその姿は、第三者のわたしが、ヒドイよ! なんて思っても、痛くもかゆくもないもんね。生きることが最優先なんだから。。。
なので、わたしは今回、観劇にあたっては、果たして若き頃のわたしが「クソ女」だと断定したデイジーを、わたしの大好きな海乃美月さまがどう演じるか、が最重要ポイントでありました。そして、天才・小池修一郎先生が、デイジーに対して、どのような演出をされるのか、を楽しみにしておりました。
というわけで、以下、各キャラと演じたジェンヌをまとめてみようと存じます。
◆ギャッツビー:わたしから見ると、彼は稀に見る純情BOYで、デイジーLOVEを貫こうとしている生真面目な男としか思えません。他にいろんな女子と出会っただろうに……。そこまで固執する必要はなかったはずのに……まあ、若さなんでしょうな……。生まれはそんなに悪くないけど、それほどでもないフツーの青年だったギャッツビー。軍人時代に名家の娘であるデイジーと運命的に出会って恋に落ちるが、デイジーの母から、大したことのない男判定されて恋を禁じられ、第1次世界大戦終結後に暗黒街の中で成り上がり、デイジーの住む家の対岸に豪邸を構え、夜な夜なパーティーを開催する謎の男としてデイジーとの恋を成就させようと超・超・超頑張ってきた健気な男ですよ。その頑張りだけでも泣けるよね。すべてはデイジーとの再会のために、という思いで今まで頑張ってきたけれど、再会したデイジーにはクソ野郎の旦那がいて……と、なかなかキツイ状況にある。
演じたのは当然、月組TOPスター月城かなと氏(以下れいこ)。実はわたしは、れいこがちなつさんに対して微妙にタメ口なのが若干アレだなあ、とか思っていたのですが、今回のギャッツビーは最高に素晴らしかったと絶賛したいです。まずビジュアルは、現役TOPスターでもナンバーワンクラスの「クラシカル・ダンディ」で、ギャッツビーにぴったりだし、歌唱力もグッと良くなった、と言ったら失礼か、ますます良くなった、と思いました。衣装も良かったすねえ! 今回のお話は1920年代なわけですが、そのクラシカルなスーツが、れいこに超似合ってましたね! あの背中、あらゆる感情を伝える後姿が泣けたっすわ……。実に見事なギャッツビーだったと思います。おそらく、観てないですが、芳雄氏のギャッツビーよりも美しさと儚さでは上回ってたのではないかと存じます。見事でした!
◆デイジー:超美女。名家の娘であり、奔放かつ天真爛漫(?)な、天然系小悪魔。なんつうか、天然小悪魔ほど男にとってタチの悪いものはないっすよ。ただ、今回の小池先生の演出においては、天然小悪魔というよりも、うーーーん……難しいな……なんと言えばいいのか……計算高いというのも違うし……うーーーん……まあ、やっぱりいわゆる「ファム・ファタール」ってやつなのかなあ……。一応、男のわたしから見ると、デイジーは明確にギャッツビーを愛しているとは思うし、旦那に対して愛はないはず、だと思う。だけど、最終的には旦那を選ぶわけで、その選択に、若き日のわたしは「クソ女」判定したのだが……。
演じたのは、これも当然月組TOP娘役の海乃美月さま(以下:うみちゃん)。わたしとしては、ラストでギャッツビーのお墓にバラを「ポイッ」と投げ入れて、くるっと回れ右して立ち去るシーンのうみちゃんの表情に、小池先生の演出を見た思いがします。あそこでのうみちゃんは、もう完璧に「無表情」に近く、何の感情も感じられないものでした。はっきり言って、わたしはかなりゾッとしたっす。そしてそれこそ、小池先生の演出なんだろうと思うわけです。デイジーにとっては「終わった恋」であり、これからは「バカで可愛い女」を徹底して生きるんだという決意の表情。うみちゃんの演技も完璧だったと思うっすね。まあ、男のわたしとしては、女子のあんな表情を観たら、マジでもう生きていけないかもしれないな。つらいっすわ……。とにかく、うみちゃんのデイジーも完璧&最高だったと存じます。
◆トム:デイジーの旦那。名家の出身で金持ち。働いておらず親の遺産で悠々と暮らすいけ好かない野郎。デイジーという超美人の奥さんがいるのに、自動車工場の主婦であるエロ系女子のマートルと浮気中。現代人の我々から見れば、差別主義者で女性蔑視な、とにかく嫌な野郎だけれど、残念ながら1922年当時のUSAにおいては普通であり、ある意味まったくありふれた存在なんだと思う。つうか、1922年って、えーと、大正11年か。日本だって同じようなもんだよね。だから現代人の我々が、トムに対してとやかく思ってもあまり意味がないけれど、まあ、とにかく嫌な野郎ですよ。
演じたのは月組正2番手の鳳月杏さん(以下:ちなつさん)。ちなつさんはこのところ、面白イケおじさん的な役柄が多かったけれど、今回は花組時代によく見た、根っからの悪党系役柄でしたね。その端正なスーツ姿はさすがだし、遊び人風な姿も見事にキマっておりました。お見事だったと思います。
◆ニック:デイジーの従弟であり、トムの大学時代の友人であり、退役後NYの証券マンとしてギャッツビーの屋敷の隣に引っ越してきたイイ奴。本作で唯一、「良心」を持った素晴らしい男で、物語の狂言回し的役割を持ったキャラクター。
演じたのは、100期生伸び盛りの風間柚乃くん(以下:おだちん)。いやあ、今回もおだちんは最高でしたね! 素晴らしいですよ。芝居は確かだし、歌も見事だし、もう言うことないっす。いずれ来る世代交代で、間違いなくおだちんは2番手、そしてTOPスターへと昇りつめてゆくことでしょう。その日が来るのは意外と早いかもしれないすね。楽しみであります!
◆ジョーダン:デイジーの親友でプロゴルファー。この時代では恐らく珍しかった、自分の意見をはっきり持った自立した女。演じたのは雪組からの転校生彩みちるちゃん。今回は、CITY HUNTERの冴子ばりな、キリっとしたキャラだったすね。非常に見事な役作りだったと思います。みちるちゃんはやっぱり演技巧者なんですな。実にお見事でありました。まあ、99期生と学年も上がって来てしまったので、もし仮にうみちゃんが次で卒業ということになってしまったら、次期月組TOP娘役はみちるちゃんかもしれないすね。そのオーラはもういつでもTOPになってもおかしくないほどですよ。
◆マートル:トムの浮気相手の妖艶エロ系女子。しがない自動車工場の奥さん。まあ、いわゆる不倫相手なわけですが、男目線で言うならば、上流社会へのあこがれを利用された彼女もまた、被害者なんだろうと思います。演じたのは101期生の天紫珠李ちゃん。今のところ、月組の次期TOP娘役を争う有力候補なわけですが、わたしとしてはみちるちゃんでもじゅりちゃんでも、どちらも応援したいところです。とにかくタイミング、が問題となりそうっすね……。仮にうみちゃんが次の公演で卒業となって、みちるちゃんが後を継いだら、じゅりちゃんにチャンスが廻って来るのは早くても3年後でしょ。てことはその時じゅりちゃんは研11(?)ぐらいになってしまうわけで、うみちゃんの卒業が伸びたらもっと学年は上がってしまうわけで……わたしとしては、他の娘役にはあまりない、じゅりちゃんのちょっと濃い目のお顔立ちは非常に貴重だと思うし、そもそも超美人だと思うのだが……。
◆ジョージ:マートルの亭主。自動車工場の主。気の毒としか言いようがない……。演じたのは、月組組長の光月るうさん。この役はキーキャラでもあるわけで、組長が演じるよりも誰か若手にチャンスを上げてほしかったかもな……と言っても、若干の老け役でもあるわけだから、ちょっと難しいか……。でもまあ、組長の確かな演技は見事だったし、確かに組長以外には難しかったかもね……。もしまだありちゃんが月組にいたら、どの役を演じていたのかなあ。
とまあ、主なキャラは以上ですが、今回わたしの目に留まった3人も紹介しなければならないでしょう。
まず、今回で卒業してしまう晴音アキちゃん。今回はいろんな役でいろんな場面で登場していたね。そしてフィナーレでも、同期のれいことのシーンもあって、胸アツでした。ちょっと前なら、絶対マートルは彼女が演じてただろうなあ。もう舞台でみられないかと思うととても寂しいです。顔立ちがわたしの好みにジャストミートなんすよ……。声も特徴があってすごい好きでした。今後の活躍を楽しみにしております!
そして、同期と言えば、専科に移った専科最年少の輝月ゆうまくん。もうこの人、ホントに男にしか見えないんですけど! 実に、実に渋い役作りで最高でした。この前、スカステの「Memories of 晴音アキ」で、輝月くんと最後の舞台で一緒になれて本当に嬉しかったって、晴音ちゃんが言ってたよね。きっと輝月くんも同じ思いでしょう。なにしろ、輝月くんは研4でロミジュリのヴェローナ大公を演じきった実力者だもんね。本当に見事だよ。BADDYでの銀塗宇宙人がもはや懐かしいすね。次は、ぜひ星組公演に出演して、こっちんと共演してください!
最後は、月組を見る時のわたし的お約束の蓮つかさくん。れんこんくんも、もう研12か。その発声の良さ、ピシッとした姿勢、若手へのお手本として常に成長してるよね。フィナーレでもやっぱり目を引くし、ひげダンディぶりも大変お似合いでした。今後も応援いたしたく存じます!
てなわけで、月組は本当に層が厚いので、もっと書きたいことはあるんだけど、もう長いので、最後にいつもの「今回のイケ台詞」をご紹介して終わりにしたいと思います。
※「イケ台詞」=わたしが、かーっ! カッコええ!と感動した台詞のこと
「幸せ? そうね、幸せ過ぎて、幸福にマヒしてしまったわ……」
今回は、イケてると言うよりも、わたしの胸に刺さった台詞にしました。これは冒頭でデイジーがニックに再会した時に言うセリフですが、全ての悲劇がこの台詞に凝縮しているような気がします。金持ちの男のトロフィーワイフとして、お人形のように「バカで可愛い」女となって愛を捨てたデイジー。もう、冒頭からずっとデイジーの未来はこの台詞に暗示されていたように思うっす。ギャッツビーには、ジョーダンのような女子の方がお似合いだったかもしれないすな……でも、ジョーダンから見ればギャッツビー的男はお断りだったかもな。難しいですのう……。
というわけで、結論。
夏ごろのCOVID-19蔓延によって、わたしの愛する宝塚歌劇も大きく影響を受けたわけだが、わたしが昨日観てきた月組公演『グレート・ギャッツビー』も、確か本拠地大劇場では4日ぐらいしか公演できなかったと思いますが、ようやく落ち着きつつあり、無事に東京でわたしも観ることが出来ました。退団者の皆さんの無念を思うと、わたしのチケが飛んだ事なんぞどうでもいいレベルの事故に過ぎず、ホント、東京で大千穐楽を迎え、完走できてよかったと思います。で、肝心の『ギャッツビー』ですが、ビジュアル面も歌も実に見事で完璧でありました。今の月組しか実現できなかった作品だと思います。物語は1922年、ちょうど100年前の出来事なわけで、日本で言えば大正11年を舞台としており、100年経って人類の生活様式はすっかり変わりましたが、人間そのものはあんまり変わってないすよね。100年前、たった一つの愛に準じたギャッツビー。男としては、彼の生きざまに涙するしかないっす。いや、泣いちゃあいませんが、とてもグッときました。そして、ある意味ではその愛に応え、きっぱりと過去を文字通り「葬って」未来へ進んだデイジー。30年前ガキだったわたしは、原作を読んでホントひどい女だと憤慨しましたが、今となっては「そういうもんだ」と理解はできます。納得は……したくないけどね。しかし月組は層が厚いですな。おだちんの未来を今後も見守りたいと存じます。以上。
↓ やっぱり読んどいた方がいいと思うし、観といた方がいいと思います。