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 まったく、ワシは何をしとったんじゃあ……
 と、わたしは昨日の夜、WOWOWで録画しておいた映画を観て、つくづく思った。2018年5月公開の作品なので、間違いなく言えることは、この映画を劇場へちゃんと観に行っていたならば、確実に2018年にわたしが観た映画ベストの3位ぐらいにランクしていただろう、と断言できる。なんなら1位にしてもいいぐらいだ。
 ほんとに、ワシは去年、なんでこの映画を劇場に行かなかったんじゃ……アホだった……と深く後悔したわけだが、その映画とは、東映作品『孤狼の血』であります。わたしの髪を切ってくれているイケメンのヘアスタイリストさんとわたしは、どういうわけか『仁義なき戦い』シリーズが大好きという共通点があって、去年、この映画について、観に行かねえとダメなんじゃないすかねえ、とか言っておきながら、わたしもイケメンさんも、まんまと見逃してしまったのだが、さすがわたしの愛するWOWOWですよ。公開から1年もたたずに放送してくれたので、さっそく録画し、昨日の夜、もはや何もかもやる気にならず人生について軽い絶望を抱いたわたしは、そうだ、アレを観よう、と思ったのであった。
 そして観た結果思ったのが上記のことである。本当にこの映画は劇場でちゃんと観るべきだった! と後悔するほど素晴らしい出来で、おまけに予想外な展開には泣けるほどの感動?すらあり、わたしとしてはもう、この映画は大絶賛いたしたく存じます。
 ただまあ、基本ヴァイオレンス&血まみれアリな映画だし、いきなり冒頭からショッキングな拷問シーンから始まるので(※ただしその拷問シーンは物語上とても重要)、そういう方面が苦手な方にはお勧めできないけれど、そうだなあ……これは全おっさんに向けては超おススメ、であります。これは観た方がいいっすよ!
 というわけで、以下、なるべくネタバレしないよう気を付けるつもりだけれど、とにかくまだ観ていない人は、ここらで退場して、観てから戻ってきてください。絶対に何も知らないで観る方がいいと思います。

 というわけで、まあ、物語は予告から想像されるものとは、そう遠く離れていない、とは思う。わたしは去年、何度かこの予告を劇場で観て、まあ、アレかな、Denzel Washington氏がアカデミー主演男優賞を受賞した名作『Training Day』的なお話かな、とか思っていた。要するに、あの作品でDenzel氏演じた悪徳警官を日本が誇る最強役者である役所広司氏、そしてEthan Hawke氏演じた正義漢の若い警官を、若手イケメン松坂桃李くんが演じるのかな、的な想像である。
 実際、その想像は間違ってはいなかったと思うが、わたしは全然わかっていなかったことがあった。それは、ちょっと考えればわかることなのだが、本作は、日本映画であり、東映作品であり、そして舞台は広島、である。つまりそれは往年の『仁義なき戦い』シリーズのDNAを内包していて、日本人のわたしが観ると、『Training Day』とは違った恐ろしさというか、身近な恐怖というか、要するに、より一層リアルでおっかねえ、のである。加えて、本作の時代設定が1988年=昭和63年=暴対法制定以前というのも、当時大学に入りたてだったわたしとしては、十分に時代の空気を知っているため、さらにそのリアル感は増強されていたようにも感じた。
 現代社会では、いわゆる暴力団のことを反社会的勢力とか言って、上場企業の経営企画の人間としては「反社」という略称を使って、あらゆる契約には必ず、「反社との付き合いはないですよね?」と相手先の表明保証を求めたり、取引先の「反社チェック」なんかもよくやるのだが、北野武監督の『アウトレイジ』シリーズがまさしくその「反社」そのものを描いた作品である一方で、本作の主軸はあくまで「警察」である。そこが大きく違うし、また、本作は悪徳警官(としか見えない)役所氏と、若干青臭い正義漢の松坂くん、という二人の演技合戦が真っ向勝負でぶつかっていて、その点も『アウトレイジ』とは大きく印象の違う作品であろうと思う。言うなれば、『アウトレイジ』は「悪VS悪」の対決であるのに反し、本作は「悪VS善」の対決が描かれるわけだが、問題は何をもって善悪を判断するか、という境界線にあって、そこに本作最大のポイントがあると言っていいだろう。
 こう考えると、そういうテーマはわたしの大好きな作品『SICARIO』にも通じるモノがあるのだが、『SICARIO』は完全にドライに割り切った、屈強で冷徹な男たちだったのに対し、日本はですね、やっぱりもっとウェット、というか、ハートがあるんですなあ……! そこにわたしは相当グッと来てしまったのであります。いやあ、本当になんつうか、感動したっすね。役者の芝居も、脚本も撮影も、それらが一体となって見事な作品だったと絶賛したいと思う。
 あーーーくそう、ネタバレを気にすると本当に何も書けない!
 ので、キャラ紹介と演じた役者陣をまとめて終わりにします。が、登場キャラがすごく多いので、あくまでわたしが、重要キャラと思った方だけにします。どうでもいいけど、女優陣はことごとくエロいす。つうか、マジで見た方がいいっすよ!
 ◆大上省吾:おおがみ、と読むことから通称「ガミさん」。広島県警呉原署刑事課所属の巡査部長。マル暴担当で、もうその捜査は違法行為満載で、誰がどう見ても真っ黒け。また、なにやら14年前に殺人に関与したという噂もあって、呉原(=一応架空の街)を仕切る反社組織の尾谷組と仲がいい、ようにみえるが、実は――なキャラ。演じたのは散々書いている通り役所広司氏。とにかく凄い、迫真の芝居ぶりが素晴らしい! 本当に役所氏は日本最高レベルの役者だと思うすね。最高でした。
 しかし思うに、この物語から30年を経た現代では、ガミさんのような刑事はもう絶滅してるんすかねえ……なんでも録画して、なんでも正論をかざした自称正義がまかり通る現代では、生きていけないだろうなあ……。悪には悪を、毒には毒を、的な理論は通じないでしょうなあ。普通で平和な毎日を送っている我々としては、反社なるものは若干の他人事感のような、自分とは関係ない的な感覚を持っていると思うけれど、実際は我々の暮らす日常のすぐ隣に間違いなく存在しているわけで、「法」が我々を守ってくれる、みたいにのんきには思わない方がいいんでしょうな。もはや警察がが守ってくれるとは思えないし、出来ることはやっぱり、君子危うきに近寄らず、しかないような気がしますね。我々、ちっとも君子じゃねーけど。
 ◆日岡修一:広島大学を卒業した警官(たぶん単に大卒なだけでキャリア組ではない)。そのため通称「広大(ひろだい)」と呼ばれている若者。ガミさんと組まされて振り回されるが、実は県警本部から送り込まれた監察官でもある。これは観てればすぐわかるのでギリネタバレじゃない判定をしました。彼は社会経験も少なく、人間としてまだ未熟なわけで、縋るものは「法」しかないわけだが、その遵法精神はガミさんの捜査に同行しても揺るがず、相当な気合で耐え忍んで、ガミさんにちゃんと異議を唱えるガッツある若者でした。わたしはどんどん揺らいでいくのかと思っていたけど、結構軸がブレることがなく、実は相当立派な男なのではないかとすら思った。しかし後半、予想外の出来事にとうとう彼の心は、「境界線」を踏み越えることに―――? 的なキャラ。演じたのは、わたしが若手イケメンで一番カッコイイんじゃないかと思っている、シンケンレッドでお馴染み松坂桃李くん。わたしは彼はかなりの演技派だと思っているのだが、本作でも非常に素晴らしかったすね。本作は、何気にチョイチョイと長回しのシーンがあるのだが、中盤から後半にかけて、役所氏がすっごい長いセリフを言うシーンで、桃李くんは酔っ払っていてただ聞いているだけ、のシーンがあって、そこではもう、役所氏の圧倒的な演技力はもちろん素晴らしいんだけど、実は聞いているだけの桃李くんの方も、その聞き方というか、ちらっと役所氏を見たり、何か口を開きかけたり、というような、受けの演技も超素晴らしかったとわたしは絶賛したいと思う。ホント、桃李くんはイケメンだけじゃあない男ですよ。ラストもカッコ良かったすねえ! きっと広大は、今頃かなり出世していると思います。最高でした。
 ◆高木里佳子:尾谷組の縄張りにあるクラブ「梨子」のママ。とにかくエロイ。ガミさんを深く信頼しているが、その理由は後半明らかにされます。なんか泣けるんすよ……。演じたのは真木よう子さんで、このお方の演技がうまいと感じたことはあまりないけれど、今回は大変良かったすね。そしてなにより、控えめに言ってもエロいす。最高でした。
 ◆岡田桃子:ガミさんがよくけが人を連れて行く薬局のアルバイト女子。冒頭でボコられた広大を連れて行ったとこがきっかけで、その後広大と関係を持つのだが、実は――なキャラ。演じたのは阿部純子さんという方で、わたしは全く知らない初めて見るお方だったのだが、非常に印象に残る演技でした。……なんつうか、メイクやファッション、あるいは暮らしている部屋なんかが醸し出す絶妙な昭和感が、妙にリアルで、なんかエロいんすよ……。実に正統派の美人で、非常にイイすね。ラストに登場する姿も、実に極上です。最高でした。
 ◆上早稲潤子:冒頭の拷問シーンで殺された男の姉として、ほんのワンシーンだけ登場するキャラなのだが、とにかくまあ、エロイ雰囲気バリバリなお方。わたしは、あれはいったい誰が演じてたんだ? と分からなくて調べたら、元グラドル/現ママタレ?のMEGUMIさんであった。そのエロさ、衰えなしの強い印象が残るお役でしたね。最高です。
 ◆一之瀬守孝:尾谷組の若頭。現在尾谷組組長は鳥取刑務所で懲役中なので、実質TOP。わたしとしては本作で一番ヤバイ反社のお方。スーツ姿で頭が良さそうな極道は一番怖いすね。ただ、本作では実はそれほど大きな役割はなく、最終的には――なキャラ。演じたのは見た目クール But 中身凶暴な悪党が良く似合う江口洋介氏。大変カッコ良かったと思うすね。なお、対抗組織の加古村組若頭は、これまたイケメンの竹野内豊氏が演じているのだが、冒頭の拷問シーン以外、あまり出番がないんすよね……それがとても残念というか、イケメンの無駄使いだったような気がします。江口氏と竹野内氏の壮絶バトルもみたかったすね。そこだけ残念す。
 ◆五十子正平:加古村組の上部組織である五十子会の会長。一番の悪党、かな。ラストは超ざまあです。でも、クソ野郎成分としては、この会長よりも手下どもの方が上で、彼らの末路も見たかったかもしれないす。出来れば血まみれで。演じたのは石橋蓮司氏で、登場してきた瞬間に、ああ、このおっさんはタダじゃすまないでしょうな……と思わせるのは、やっぱり蓮司氏の芝居が素晴らしいからだと思う。実際、タダでは済みませんでした。
 ◆瀧井銀次:五十子会の下部組織である右翼団体の長で、ガミさんとは長い付き合い。通称「ギンさん」。ラストの決断は男を見せたっすね。大変良かったと思う。演じたのはピエール瀧氏で、おっかない中にも、本作で唯一コミカルっぽいところも見せてくれました。
 ◆嵯峨大輔:広島県警の監察官で、広大こと桃李くんを呉原署に送り込んだ人。実はコイツの狙いは……というのはまあ、予想通りかも。演じたのは滝藤賢一氏。残念ながらこの人も、出てきた瞬間に絶対悪い奴だろうな、と予感させるお方でした。
 とまあ、他にもキャラはいっぱいいるのだが、大体こんなところかな。とにかく役者陣の演技合戦はとても素晴らしいし、その芝居の元となる脚本も極めて上等、そして役者を引き立てる撮影・演出も大変お見事でした。くっそう、ホント、なんで俺はこの映画を劇場に観に行かなかったんだ……! マジで劇場に観に行かなかったことが悔やまれる傑作であり、大いにお勧めいたしたく存じます。

 というわけで、結論。
 去年劇場公開され、観たかったけれど見逃していた映画『孤狼の血』がWOWOWで放送されたので、さっそく録画し、昨日の夜ぼんやり見てみたわたしである。結論としては超傑作、非常に面白かったと申し上げたい。まず脚本が素晴らしい出来であり、その脚本にキャスト全員が最高の演技で見事にこたえ、撮影や演出もばっちり決まっている、という近年まれにみる素晴らしい日本映画だったとわたしは思う。本当に久しぶりに、ちくしょー! なんで劇場に観に行かなかったのだ! と悔しい思いだ。なんつうか、ひょっとすると、わたしの琴線に一番触れたのは、わたしの青春時代である1988年という時代設定と、画面から伝わる絶妙な昭和感、なのかもしれない。キャラ設定も、実のところよくあるパターンのような気もするけれど、これがまた、現代社会では絶滅してしまった、昭和の男感が溢れているような気もしますね。というわけで、わたしはこの映画がとても気に入りました。恐らく今後、何度もまた繰り返し見るような気がします。控えめに言っても、最高ですね。以上。

↓ これは原作小説を読んでみたい気がしますね。
孤狼の血 (角川文庫)
柚月裕子
KADOKAWA
2017-08-25

そして配信でも観られますので、是非!
孤狼の血
役所広司
2018-11-02

 ミュージカルが大好きなわたしが、今、日本人女優で最も注目しているというか大好きなのは、高畑充希ちゃんである。実にかわいい。そして、実に歌が上手い。わたしの場合、女優でありながら情感あふれるドラマとしての歌を歌いこなせる女優は、それだけでもうグッとくる。全然関係ないが、この夏、現在Broadwayでも絶賛上演中の『Beautiful』というミュージカルが、帝劇でも上演されるのだが、大人気声優である水樹奈々嬢と、歌手として大活躍中の平原綾香嬢のWキャストで日本語版が上演されることになっており、わたしはもう平原綾香ちゃん主演Verでチケット確保済みだ。そちらも超楽しみである。
  というわけで、先日わたしは、↓この動画を観て、というより、この動画の『Day Dream Believer』という歌を聴いて、こりゃあ観に行かないとダメだな、と思ったのである。

 どうですか? 聴きましたか? 超良くないすか? 最高ですなあ、もう。歌声がなんともイイじゃあないですか! というわけで、三連休最終日、わたしはアニメ映画『ひるね姫~知らないワタシの物語~』を観るためにTOHOシネマズ日本橋へ参上した次第である。
 今日は、観終った後で午後からちょっと会社に行って仕事しようと思ったので日本橋へ観に行ったのだが、9時15分からの上映なのに、開場が9時で、今日はただでさえ他にも多くの作品を見るために集まったお客さんで場内はすざまじく大混雑であり、あともうチョイ、10分でも15分でも早く開場すればいいのに、実に腹立たしく思った。チケット販売/Web予約引き換えの列整理も全くないし、もう完全無秩序。わたしもイライラしてたら、どっかのおっさんがとうとうブチ切れたらしく、スタッフに激怒りしてたのを見かけたけど、まあ、残念ながらあの場にいた大半の人が、おっさんの怒りに同意していたと思う。わたしはTOHO日本橋でこういった状況を何度も見かけているが一向に改善されない。ホント、ダメなシネコンだと思う。新宿ピカデリーの次に行きたくないシネコンだ。
 ところで。なんでこんなどうでもいいことから書き始めたかというと、第一に大変不愉快だったこと、そして第二に、映画『ひるね姫』がわたしの趣味に合わず、残念ながらイマイチだったからだ。歌は最高なのになあ……なんか音響的に平べったくて立体感がなく、せっかくの充希ちゃんの歌も平板に聞こえて心の底から残念だ……。音量も足りないし、アレならうちのハイレゾオーディオの方が断然上じゃんか……。
 というわけで、本作『ねむり姫』に対して、わたしは結構がっかりしている。
 物語は、説明するのがちょっと厄介なのだが、実は単純で、夏休みの前日、父を警察に連行された倉敷に住む女子高生・ココネが、その謎のカギとなるタブレットを守りながら、父の連行された東京へ赴き、亡き母の残した秘密を知る、というような物語だ。
 で、なぜ厄介かというと、ココネの見る夢と現実が交互に語られる形式になっており、それぞれはちゃんと理解できるものの、どうもその関連がよく分からないのである。
 まず、現実世界の方は、正確に言うと、別に女子高生がなぞ解きをするわけではなく、ある意味勝手に謎は解ける?し、父の容疑も、警察的には証拠不十分なのか?勝手に解放される。そして、ポイントとなる、ココネが見る夢の方なのだが、その夢自体は面白いし映像的にも大変良いのだが、肝心の物語の役割としては、「?」である。寝てるはずなのに、なんで主体たる女子高生の体が移動しているのか、特にラストの宙づりになってた状況というのも、わたしはよく分からなかった。
 要するに、物語として、なんか変というか、繋がりが悪いのだ。とりわけ夢と現実の関係性が、情緒的な部分では、なるほど、そういうことかと分かるものの、実際的な、というべきか、現象的?というべきか、なぜそんな夢を見るようになったのかも分からないし、どうして一緒に東京に向かう幼馴染モリオも同じ夢を見るのかとか、そういった実際面での説明は一切ない。
 確かにスーパーナチュラルな出来事に対して、いちいちその理由がは説明されなくてもいいのかもしれないけれど、あまりに出来すぎているし、現実の出来事があまりに普通すぎて、なんだか妙に相性が悪いような気がした。なんか……なんか変というか、しっくりこないように感じてしまったのである。
 夢の中の、ロボットバトルも、正直なんのこっちゃ、である。確かに映像としての画は美しくかっこいいデザインですよ。でも、意味あったのアレ? せっかく舞台は倉敷で、父の名前もモモタローなんだし、夢の中で襲ってくる存在も鬼、と呼ばれているのだから、わたしはてっきり桃太郎的な展開、すなわち、きびだんごや猿・犬・雉が出てきて大活躍、かと思ったのに、まるで一切そういう展開はなかった。たぶん、キーキャラのぬいぐるみのジョイが、桃太郎の世界観からはみ出ているのが問題なのだと思う。父モモタローの友人に雉田さん、佐渡さんという名が出てくるだけであった。意味なくねすか? 舞台が倉敷であった意味も全くなかったと言える。東京の女子高生でよかったじゃん。どういうこと?
 確かに、倉敷の美しい風景は、また聖地巡礼の地になるような、とてもいいところだったけれど、肝心の物語がなあ……わたしは四国お遍路をした男なので、倉敷から高松まで車ですぐだってのは知っているけれど(作中で悪者が倉敷からすぐに高松空港に移動するシーンがあるのです)、まあ、大半の人は、言われれば、あ、そうかと分かるだろうけど、すぐには気付かず、不親切だろうね。とりわけゆとりKIDSたちにはさっぱり地理感もわかないのではなかろうか。
 
 というわけで、物語的にはちょっと問題ありのような気がする。音響も若干迫力が足りない。もちろん、美しい画と、表情豊かなキャラクター、そして充希ちゃんの声、そういった素晴らしい点はもちろん数多くあるけれど、お話がなあ……ちなみに声の出演としては、充希ちゃんのほかにもかなり豪華。お父さんのモモタローが江口洋介氏、そしておじいさんを、桃太郎侍でお馴染みの高橋英樹氏が演じている。ここで桃太郎を持ってこなくても……受け狙いか? と思いきや、高橋氏の声優ぶりがやけに渋くてカッコ良かった。実に堂々とした声優ぶりだったと思う。

 というわけで、もうだらだら書いてもしょうがないので結論。
 大好きな高畑充希ちゃんの歌う『Day Dream Believer』に魅かれ観に行ってきた『ひるね姫~知らないワタシの物語~』という映画であるが、キャラクターの表情などはとても良かったのだが、ズバリ、お話自体がイマイチであった。物語が夢と現実のつながりがイマイチピンとこないのが実に残念。そしてわたしが一番残念なのが音響設計で、せっかくのエンディングの『Day Dream Believer』がちょっと平板で、もっと立体感溢れる設計をしてほしかったと思う。もちろん、充希ちゃんの歌声は最高です。最高だけに、実にもったいなかったと思う。ホントは超面白かったと絶賛したかったのになあ。以上

↓ 充希ちゃんの歌う『Day Dream Believer』だけは、もうずっと永遠に聴いていたいと思います。
ひるね姫 オリジナルサウンドトラック
サントラ
ワーナーミュージック・ジャパン
2017-03-15
 

 というわけで年末である。
 大掃除、というものは、普段からせっせときれいにしていれば、とりわけ必要がないわけで、わたしも別に部屋の大掃除はしないが、それよりも……と、HDDにたまっている、WOWOWで録画したはいいけれど観てねえ、というたまった映画を大掃除する必要があった。
 ので、昨日の夜からせっせと観始めているわけである。まず一発目として、じゃ、観てみようと再生ボタンを押してみたのが、日本映画の『人生の約束』という作品だ。公開されたのは今年2016年の1月。ちょうど1年ほど前ということになるが、散々劇場で予告は観ていたものの、正直どんな映画なのか、まるで予備知識はなく、予告で観た竹野内豊氏のカッコよさと、江口洋介氏が相当怒っている表情が印象的だったので、観てみようと思った次第である。どうも、原作小説などは存在しない、オリジナル脚本のようですな。そして観終った今、結論から言うと、役者陣の熱演は素晴らしいし泣けるお話であある。しかし、どうも演出や、やっぱり脚本かなあ、とにかく、ポイントポイントで、若干残念というか、もっと面白くできたんじゃねえかなあ、と生意気な上から目線の感想を抱くに至ったのであった。

 予告はいくつかのVerがあるようで、わたしが去年の今頃劇場で散々見た予告は別のものだったように思うが、上記の予告は、比較的物語を伝えてくれていてわかりやすい。まあ、だいたい上記予告のような物語である。ただし、少しだけ補足しておいた方が良かろうと思うので、ちょっと大まかな流れを説明しておこう。
 竹野内豊氏演じる主人公は、新興IT企業で、上場もしている大きな会社のCEO。現在大きなM&Aの最中であり、完全なワンマン社長で、200億でまとまりそうなバリュエーションも、180億まで叩け、と取締役たちや経営企画の若造どもといった、取り巻きのイエスマンたちに指示している。そのやり口は強引であり、一人異論をはさむ若者(演じたのはシンケンレッドこと松坂桃李くん)に対しては、あいつはクビにしろ、とイエスマンどもに命じるような男だ。
 そんなCEOのもとに、数日前からとある男から電話が何度もかかってきている。が、取らないで放置していたところ、あまりに何度もかかってくるので、ええい、なんだよもう!と取ってみたところ、無言電話。何なんだよ、と思うも、その相手は、かつて主人公とともにこの会社を起業した親友であり、経営方針をめぐって解任した男(当時の副社長)で、もう3年会っていないし消息も知らない男であった。そんな男の携帯からの着信、そして無言電話。そのやり取りを見守っていた有能な秘書(演じたのは優香ちゃん。相変わらずかわいい)は、何かあったのでは、一度お会いした方が良いのでは、確か故郷に帰られてるはず、と具申し、CEOもやけに気になるので、秘書を伴い、親友の故郷である富山県氷見市へ向かう。そこでは、まさにその親友の葬儀が行われていて――てなお話である。
 そして親友が大切にしていた地元の祭りで象徴として町中が大切にしていた山車が隣町に譲渡されてしまったことや、祭りを通じて「繋がる」ことの意味を知ってゆく主人公、さらには、東京では自分の会社が金融商品取引法違反(どうやら粉飾決算)で東京地検特捜部の強制捜査が入り、自らも任意出頭を求められるなど会社として超マズい状況にも陥り、すべてを失ったことで主人公は、亡くした親友の存在がかけがえのないものだったことを知ってゆくのだった――という展開である。
 わたしも経営企画として会社の経営に携わり、M&Aも数多く経験しているので、冒頭のあたりは思い当たる光景が続き、ああ、懐かしいと非常に身に染みて思った。ま、会社のTOPだけしか見ていない取り巻きのイエスマンなんてのはきっとどの会社にもいるんだろうし、わたしだって、そりゃあ積極的にイエスマンになった覚えはないけれど、結果的には、心の中でそりゃあ違うんじゃねえすか、と思っても明確に反対意見を表明するようなこともせず、へいへい、そうっすか、と従ってきた身としては、この映画で戯画化されているイエスマンどもと本質的な違いはなかろうし、明確に反対意見を述べる松坂桃李くんのキャラは、現実的にはこんな奴ほぼいないとは思っても、やっぱりとてもまぶしく見えた。そして会社側の人間であった身としては、CEOの気持ちもわからないでもない。はっきり言えば、多かれ少なかれ、会社のTOPはこの主人公に通じるものがあると思う。このあたりは、たぶん普通の人には全く伝わらないことだろうし、普通の人が観たら冒頭の主人公は単なるイヤな野郎にしか見えないと思う。
 というわけで、わたしはかなり主人公よりの視点でこの映画を観ていたわけだが、どうしてもここは……と思う点がいくつかあった。
 ◆やけに素直でイイ奴な主人公
 おそらくはまだ若いからかもしれないが、主人公はやけに素直でイイ奴だ。きっちり自分の非を認めるし、自分が起業した会社を手放すことになっても素直に応じる。それはそれで美しいし、泣かせるポイントでもあるけれど、まあ、現実はこうはいかねえだろうな、とわたしは冷ややかに思った。加えて言うと、IT企業のTOPたる男が、親友の正確な所在地を知らぬまま、取り敢えず故郷の町へ行ってみようと行動するのも若干違和感がある。親友の葬儀に偶然行き着いたわけで、あれは変というか、ばっちり調べてから行くか、秘書が知ってた、という流れであるべきだったと思う。空振りだったらどうするつもりだったんだろう。
 ◆ポイントとなる親友と、その残された娘
 この亡くなった親友は、逆光での影と声しか登場しない。キャストクレジットにも、誰が演じたか公開されていない(声は上川隆也氏っぽかったけれど、どうだろう?)。故にどうも実在感がない。おそらくこの親友とのやり取りがリアルであれば、主人公の改心にも説得力が増したはずだが、そこが若干薄いのが残念に思った。この親友を一切見せなかった演出は、結果論としてはかなり微妙だと思う。もちろんあからさまに登場させても全く別の感想になった可能性が高いわけで、どっちが良かったのかは正直分からないけれど……。また、カギとなる親友の娘も、どうしてもよく分からない。彼女は、亡くなった親友(彼女にとっては父)のことを、「あの人」と呼び、若干心の距離があるようなのだが、その点についてほぼ説明がない。彼女にとっての父がどういう存在だったのか、その点も非常にドラマとして重要だと思うのだが……そして父のことを嫌っていた的に描かれているのに、妙に主人公になついていく様子も正直よく分からない。もっと言えば、主人公がこの親友の娘の存在を知らなかったという点も、どういうことなのか分からない。ただし、娘を演じた高橋ひかるちゃんはウルトラ可愛くて、とても魅力的だった。超可憐です。名前を憶えておきたいと思った。
 ◆カット割りや演出面
 正直イマイチ、だと思う。間がわざとらしいというか……たとえば、主人公が東京の豪華マンションで携帯を机に置く。そして数秒そのままのカット。わたしはきっとこの携帯が鳴るんだろうな、と思うと、その通り携帯が鳴り、主人公はそれを取る、みたいに、意図が分かるというか先が読めるような場面が多いし、場面のつなぎもテンポが悪い。それに……ラストシーンの中途半端感が半端ないように思う。どうも余韻というか、え、ここで終わり感もあったように感じる。わたしはまたエンドクレジットでなにがしかのその後の物語を示唆する映像があるのかと思った。あそこで終わらすならもうちょっと別のラストショットがあっても良かったような気がしてならない。

 というわけで、脚本や演出面でわたしとしては若干残念に思う所があったものの、一つ一つのセリフや役者陣の熱演は素晴らしく、その点ではとても美しくて良かったと思う。胸にグッとくる名セリフはいっぱいあったなあ。上記に貼り付けた予告にも、それらのグッとくる台詞は収録されていますね。
  つっぱしるだけじゃなく、立ち止まってしか見られない風景もある。
 人生の踊り場。過去も未来も見渡せる年齢。
 失くしてから気付くことばっかりだよ、人生は。 
 全くその通りなんだろうな、と、まさしく主人公たちと同年代のわたしには心に響く。まあ、わたしは主人公たちよりちょっとだけ上なのかな。もう人生の踊り場を過ぎて、先に登ってしまったわけで、後はもう登りきるだけ、なのかもしれない。キャスト陣も、良かったすねえ。町会長の西田敏行氏、親友の奥さんの兄の江口洋介氏、イヤーな隣町の町会長を演じた柄本明氏、など、皆さん芸達者でグッとくる演技を見せてくれます。その点では非常に上質で素晴らしかったと思います。

 というわけで、結論。
 『人生の約束』という映画は、美しく泣ける話、ではあるものの、演出や脚本には若干残念なところもある微妙作、というのがわたしの総合判定である。ただし役者陣の熱演は素晴らしく、見ごたえは十分であろう。興行的には10億に届いていないので、最終的には赤字かなあ。だとしたら大変残念だ。オリジナル作品が売れてくれないと、ホントに邦画の未来は暗いとしか言いようがないのだが……今に邦画はコミック原作とアニメしかなくなっちゃうぜ。なんか、とても残念です。以上。

↓ もうとっくに配信もされてるし、いつでも観られます。
人生の約束
竹野内 豊
2016-07-06

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