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 わたしは結構本を読む男の部類に属していると自分でも思うし、周りからも思われている。そんなわたしだが、近年はすっかり電子書籍野郎にトランスフォームしたものの、電子書籍は紙の本より後に発売されることがままあり、そんな時は、軽くチッ、と舌打ちをして、紙の本を買うわけだが、まあ、やっぱり紙の本にも紙の本ならでは、の魅力は当然ありますな。電子書籍最大のメリットは、「本を収納する・保管する・置いておく空間を要しない」ことに尽きると思うが、逆に言うとそれしかない。そして一方紙の本には、電子書籍では味わえない、なんというか、質感? 物体としての存在感? みたいなものがあって、まあやっぱり、ページをめくること自体が楽しく、特に面白い作品を読んでいるときには、ああ、あとこれだけで終わっちゃう……みたいなのもリアルに味わえて、より一層、本を読む楽しみが増す、ような気がする。
 というわけで、おととい買った本をもう読み終わってしまい、読みながら、なんとも終わりまで読むのが惜しいというか、淋しくなっちゃったわたしである。そして、その本とは、これです。
アンマーとぼくら
有川 浩
講談社
2016-07-20

 ご存じ、有川浩先生の最新作『アンマーとぼくら』であります。
 有川先生の作品は、すべて文庫まで待てず、電子まで待てず、出たら即買っているのだが、本作も発売日に神田三省堂本店にて購入した。レジ前ワゴンに陳列されてました。
 有川先生の作品は、いつも、「おてんとうさまに顔向けできないことはしない」という「正直さ」というか「まっとうさ」が根底にあって、登場人物はそういった人なので、読んでいてとても気持ちがいい。真面目に生きることを信条としているわたしには、いつも大変心に響くものがあるわけで、結論から言うと、今回も大変満足、ではある。のだが、今回は……ネタバレは一切しちゃダメ、という気がするので、いつもネタバレ満載の記事を書くわたしとしてはちょっと書きようがなくて困っている。なお、いつもはタイトルに公式Webサイトへのリンクを貼って記事を書いてますが、どうもネタバレの恐れがあるような気がするので、今回はやめておきました。

 今回は、ネタバレなしで言ってもいいかなと思うのは、
 ◆沖縄のお話である。
 ◆30代半ば? の男が、家族を回想するお話である。
 ああ、こりゃイカン。やっぱり何も書けないや。
 なので、わたしとしては、とりあえず、有川先生の作品が好きな人は、今すぐ本屋さんへ行き、本書を買い、むさぼるように読み始めてくれ、としか、もう書けない。帯に書いてあるのだが、有川先生は本作を「現時点での最高傑作です」と堂々と宣言されているわけで、ならば、読まない理由は何一つない、よね。

 なお、本作は、「かりゆし58」というバンドの曲がモチーフとなったそうだが、一つだけ言っておくと、おそらく本書を買うと、その「かりゆし58」なるバンドのチラシが封入されていると思う。だけど、そのチラシを、絶対に読んではダメだ。なぜなら、わたしは、本作のタイトル『アンマーとぼくら』について、
 「アンマーって、なんじゃろか?」
 と思いながら読み始め、ちょっと中断するときに、うっかり、くだんのチラシをしおり代わりに使ってしまったのだが、そこには思いっ切り「アンマー」という沖縄言葉の意味が書いてあったのだ。もう……台無しだよ……と思ったのはわたしだけかもしれないが、これは、作中で意味が分かる時が来るので、正直、その時に知りたかったわ……と強く思ったのであります。もう、マジ勘弁、と思いました。わたしは。なので、封入されている「かりゆし58」のチラシは、見てはいけません。
 なお、これはわたしが興味がないから、というだけの話だと思うけど、ひょっとすると、「かりゆし58」なるバンドを知っている人は、とっくに「アンマー」の意味は知ってるのかもしれないね。まあ、しつこいけれど、本書のタイトルを見て、「?」と思った方は、絶対に「かりゆし58」なるバンドのチラシは読了前には見ることすら避けた方がいいと思います。本作を読み終わった後に、存分にチラシを読んでください。わたしは、全く興味がないので、つい、カッとなって捨てちゃった。八つ当たりしてしまって、ファンのみなさんホントにサーセン。あ、もちろん、インターネッツなる銀河でその言葉の意味を検索してもダメですよ!!
 絶対に、読みながら意味が分かる方が、グッと来ます。これは断言できる。と思う。

  というわけで、今回はわたしにしては全然短いけれど、もうこれ以上は書けないので結論。
 本作『アンマーとぼくら』は、これまでの有川先生の作品とは、ちょっと違う、うまく言えないけど、どこかふわふわした空気感が漂うお話で、わたしは非常に楽しめた。沖縄か……行ったことないんだよな……一度、行っとかないとダメかもな……チャリを輪行して、沖縄を自転車で走るのもアリかもな……なんて思いました。そして、もう老いた母を持つ身としては、やっぱりグッと来るものがありますね。有川先生の作品は、やっぱり発売即購入が正しいと思います。以上。

↓ 沖縄っつーと、わたしが思い出すのは、やっぱりこれっすね。ある意味、『弱虫ペダル』以上の、熱い物語です。ま、今読むと、ちょっといろいろ古いですが、年に1回は読みたくなりますな。最後の『ツール・ド・おきなわ』が超泣ける!!



 

 この秋~冬は有川浩先生大忙しである。
 10月に『図書館戦争 The Last Mission』が公開され、 また10/28には『だれもが知ってる小さな国』という新刊が発売になり、そして今回の『レインツリーの国』の映画公開である。また、来年かな、『植物図鑑』もすでに撮影済みで公開を待つばかりというからすごいものだ。というわけで、『レインツリーの国』を男一人で観てきた。
 予告は以前貼り付けたけれどもう一度貼っておこう。

 お話としては、↑の予告を観ていただけば分かると思うが、以前書いた通り、とある青年が、とある本のことがきっかけで、とある女性が運営するWebサイトに行きつき、運営者たる女性と恋に落ちるが、彼女は聴覚障害を背負っていて……というお話である。世に「ベタ甘」と評される有川先生の作品の中では、若干のビター・スウィートであろうか。原作は、聴覚障害のある方々にも非常に好意的に受け入れられているようなので、その点で大変リアルなのだと思うが、健聴者でその苦悩を知らないわたしとしては、観ていて少々痛々しい場面が含まれている。
 聴覚障害を知られたくないヒロイン、そしてなんでそれを先に言ってくれないんだと思う青年。どちらの言い分も、そりゃそうだよなと頷けるものの、どうしてもすれ違う二人。わたしが「痛々しい」と思う事すら、それは同情か、同情ならいらない! とヒロインを怒らせてしまうかもしれない。ヒロインが障害を知られたくないという気持ちも、理解できる。だって、そりゃそうだよ。初めて会う相手、しかもこれ一度きりしか会わないかもしれない相手に、そんな自分の心の傷をさらけ出すことはしないだろうし、女子として、「普通のデート」にあこがれる気持ちも理解できる。まあ、男としては、そりゃ当日はスーパーハイテンションだろうね。やったーー! 会える! どうしよう可愛い子だったら! と思って、のこのこ約束の場所にやってくることは、全男を代表して断言してもいい。浮かれてるにきまってるよ。そして実際に会って、想像をはるかに超えたスーパー美女だったら、もう完全にブッ飛ぶね、いろんなものが。完全に。
 で、青年がヒロインの障害に気付くのは、初めて実際に会って、ちょっとしたデートの最中に、エレベーターの定員オーバーのブザーにヒロインが気づかないシーンだ。わたしとしては、初めて会った女子に、あそこまで 言わなくたっていいじゃんと思うのだが……わたしが主人公の青年だったら、たぶん、もう少し前にヒロインの異常に気付けたと思うし、エレベーターの前であんなひどいことは言わない。と思う。思いたい。もっと静かなところがいい、と言われり、映画は字幕がいいとこだわるあたりで、わたしなら、えっと、それはまたなんで? とズバリ聞いてしまうと思う。まあ、おそらくはそれでも、しれっと何かそれらしい理由を聞かされて流しちゃうかもしれないけれど、それでも、もうちょっと連想が働くのではなかろうか。いや、でもやっぱり無理かなあ。主人公の青年は、劇中に出てくる通り、恋愛偏差値が非常に低いので仕方あるまいと思うが、しかしなんというか、もうちょっと察していただきたいと思いながら観てました。基本的に主人公の青年は真面目でいい奴だけれど、正直、わたしとはまったく違う感性の持ち主なので、残念ながらこの男には感情移入できなかったが、ヒロインは、そのかたくなな心のありようや、次第に心がほどけていく過程もがっちり心に響いた。こんな女子が周りにいたら、まずほっとけないと思う。だいたい、超美人でウルトラ可愛いし。なので、わたしとしては観ながら、青年のある種不器用な言動にいちいちイラつく気持ちもあったが、いつもしょんぼりしているヒロインがやがて笑顔を見せるようになる物語は非常に好感が持てた。最終的には、お熱いこって! 幸せにな、お二人さん! あばよ!! という若干柳沢慎吾めいた気持ちで映画館を出ました。はーーー。リア充めw

 ところで、この聴覚障害というものについては、わたしもまったく詳しくないので、いろいろ調べたいところではあるが、この作品のヒロインは、
 1)後天的である。10年前の事故で外傷を負い、その結果聴覚障害を背負うことになった。
 2)なので(と言っていいのかすらわからないけど)、しゃべることはできる。
 3)可聴音域に問題を抱えていて、高音の周波数帯が聞こえない。そのため、男の声はなんとか聞こえるが、女性の声が極めて聞こえづらい。つーかほぼ聞こえない。結果、会社の意地悪なOLたちにいじめられる。わたしとしてはこのOLどもが一番腹が立った。もちろん、スケベオヤジには心の底から怒りを感じたし、街でぶつかってヒロインを突き飛ばしたクソ野郎には、わたしならあの瞬間ブチ切れて絶対に後ろから蹴り飛ばしてボコってやるけれど、それでも、一番悪質で悪意のカタマリなのは、同僚のいじわるOLだと思う。
 おそらく、現実に同じような症例は多いのだろう。なお、ヒロインは補聴器は装着しているものの、ダメな音域はダメで、なまじ一部聞こえる故に、なかなか理解を求めることは難しいのではなかろうか。それは非常に厄介なことだと想像する。けど、あの会社はダメだ。もっと、優しい会社はいくらでもあると思うな。そもそも、障碍者雇用は会社の義務なので、小さめの会社だとむしろ歓迎してくれると思うな。ヒロイン程度であれば、といったら全国の聴覚障害を持つ方々に失礼かもしれないけれど、彼女は全く普通に仕事できるレベルだと思う。本人もしっかりしているし賢いし。なにもあんなに嫌な奴ばっかりの会社で働く必要はない。
 しかしまあ、これからもいろいろな難しい問題が二人に降りかかるかもしれないけれど、主人公の青年は、心の真っ直ぐな好青年なので、ホント、二人には幸せでいていただきたいと思います。

 最後に、出演者についてちょっとまとめておこう。
 ヒロインを演じるのは西内まりやちゃん。正直良く知らないけれど、ウルトラ可愛いのは間違いないところであろう。元々は「二コラ」のモデルからキャリアをスタートさせて、歌手でもあるんですな。芝居ぶりは、まだまだレベル。まあ経験少ないんだろうし、若いからこれからでしょうな。あ、意外と身長高いな。Wikiによれば170cmですって。
 青年は、Kiss-My-Ft2の玉森祐太くん。こちらも芝居ぶりはまだまだレベル。やっぱり、どうなんだろう、生粋関西人から見たら、若干インチキ関西弁っぽいのか、それとも完璧なのか、その辺は関東人のわたしには良くわからないが、この人はネイティブ関西人ではないんでしょうな、とは感じた。まあこれからも元気に活躍していただきたいものだ。しかし、玉森くんを否定するつもりは全くないけれど、どうせなら関ジャニの誰かを使ってもよかったのでは? ああ、錦戸くんは『県庁』で使っちゃったか……。
 ほか、脇を固める俳優陣では、やはりヒロインの母を演じる麻生祐未さん、青年の母を演じる高畑淳子さんがとてもいい感じなのと、青年と同じ会社の元気な可愛い女子を演じた森カンナちゃんが非常にわたしには魅力的に映った。イケイケでチャラけた娘ではあるけれど、オレならその仮面を外させてみせるさ、なーんて出来もしないことを妄想しながら観てました。森カンナちゃんといえば、わたしとしては仮面ライダー・ディケイドのヒロインとしておなじみではあるが、その後、いろんなドラマに出演して、順調に芝居ぶりは成長していると思う。元々可愛いしね。応援して行きたい所存である。

 というわけで、結論。
 『レインツリーの国』は、アリです。若干のビターテイストが甘さを引き立てていると言って良かろうと思う。だけど……オレならもっとヒロインを早く笑顔にできたね。と、まあ言うだけ詐欺ということで、ひとつよろしくお願いしたい。以上。
 
↓ おとといの記事にも書いたとおり、本作は、元々は『図書館内乱』の中で出てきた作品です。それを本当にまるまる一冊書き下ろすとは、すごいですな。

 若干恥ずかしながら、一つ告白せねばなるまい。
 わたしは、このblogを読んでいただければわかると思うが、かなりの数の映画を観たり、かなりの数の本を読んだりしている。まあ、それは好きだから、なのだが、実はわたしは……本を真面目に読むようになったのは、高校2年の後半ぐらいからで、漫画は別として、いわゆる物語、小説というものは、高校2年ぐらいまで、ほとんど読んでいない。なので、 子どものころの読書体験が、ほぼ、ない。結果として、わたしは児童文学や絵本をほぼ知らない。読んだことがないのだ。幼き日々を思い起こすと、読み聞かせをしてもらった覚えもないし、本が欲しいと駄々をこねたこともない。ほぼ毎日、外で遊んでいたし、夜は、日中フルパワーで遊んでいるので、たしか中学に入るまでは、毎日20時には寝ていたと思う。もちろん、ジャンプ・サンデー・マガジン・チャンピオンは読んでいたし、テレビもそれなりに見ていた。基本的には特撮ヒーローが大好きで、あまりアニメは観ていなかったので、実はアニメ知識も、後年学んで身に着けたものである。

 そんなわたしが、一番好きなのはやはり映画であると思う。映画は、小学校1年ぐらいから相当なオタク英才教育を受けていると思う。ま、幼稚園時代は、毎回必ず『東映まんが祭り』は連れていってもらっていたけれど、今でも鮮明に覚えている、わたしのハリウッド映画初体験は『STAR WARS』である。場所も、雰囲気も、何を買ってもらったかも明確に覚えている。今はなき「テアトル東京」という大スクリーンで、雨の日だったと思う。そして売店で「X-ウイング」の小さいおまけ付きのチョコボール的なものを買ってもらって、ずいぶん長いことその「X-ウイング」で遊んだ記憶がある。もちろん、当時のパンフレットは結構きれいなまままだ家に残っており、今でも大切にしている。オヤジと、下の兄の3人で観に行ったのだが「フォース」が字幕では「理力」と訳されていて、オヤジに「理力って何!? 何なの!?」と問い詰めたこともはっきり覚えている。それ以降、わたしはオヤジや兄に連れられて有楽町~日比谷に通う小学生として映画オタクの道を歩んできたわけだが、中学生になって自室を与えられ部屋にテレビが設置されると、そこからはもう、TBSの月曜ロードショー(解説は荻昌弘ですこんばんは)、日テレの水曜ロードショー(解説は水野晴朗っていいですね)、テレ東の木曜洋画劇場(解説は結構替わった。Hな作品多しw)、土曜はCXのゴールデン洋画劇場(解説はイエーイ高島忠男です)、日曜はテレ朝の日曜洋画劇場(解説は淀川長治。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ)と、ほぼ完全制覇して欠かさず見てきたし、中学からは地元の駅前の映画館の招待券を毎月2枚Getできる伝手を開発して月に2回は確実に映画館で映画を観てきた(たいてい2本立て)。また、夏休みと正月映画の大作はほぼ必ず有楽町方面に観に行っていた(このころから、自転車で有楽町まで行くようになった)ので、80年代映画は異常に詳しい今のわたしはこうして形成されていったわけである。
 
 で。わたしが小説に目覚めたのも、実は映画のおかげである。中学生ごろから、映画の原作やノベライズを読むようになり、文学に決定的に目覚めたのは、忘れもしない、夏目漱石原作、松田優作主演の『それから』を観て以降である。あの映画を観て、わたしは漱石を読むようになり、そこから「なんだこれすげぇ面白れえ!!」とむさぼるように文学作品や普通のエンタテインメント小説を読むようになった。どういうわけか、高校生当時のわたしは、漱石と大藪春彦先生にドはまりで、しかも、わたしはバカなクソ男子高校生だったので、「本を読んでるオレかっけえ」と、もう恥ずかしくて死にたいほどのスーパー勘違い野郎だったのが、今思い返すと笑える。アホだった……。
 ただ、その後大学生になったわたしは、ますます真剣に物語を読むことにのめりこみ、世界名著全集的なものはほぼ読破したし、とりわけ戯曲、シェイクスピアやギリシャ悲劇、フランス喜劇、ドイツ演劇といったものもだいたい制覇した。たぶんシェイクスピアは日本語で読めるものは全部読んだし、大学2年ぐらいのころにドストエフスキーにはまって(これは以前取り上げたColin Wilsonの『The Outsider』の影響)、これまた日本語で読める作品は全部読んだと思う。こうして、わたしの読書体験は相当変な方向というか、やたらと名作率が高いというか、妙に偏ったものとなり、逆に、誰しもが子供の頃に読んだであろう作品や、いわゆる日本のベストセラー小説の類は、ほぼ手を付けていないわけである。

 そしてサラリーマンとなってからも、仕事上ライトノベルや漫画を読む必要が生じたため、「よし、じゃあ会社の資料棚の左から、全部片っ端から読んでやる!!」ということをほぼ完遂し、自ら強化していったわけであるが、昨日、読み終わった作品の著者、有川 浩先生は、そんな中で出会った作家で、わたしが今、新刊が出ると必ず買う作家の一人である。

 というわけで、もういい加減にしろという声が聞こえてきそうなぐらい前置きが長くなったが、有川 浩先生の約15ヶ月(?)ぶりの新刊が先月発売になった。なんと、今回の作品は、あの、「コロボックル」シリーズの公式最新作である。恐らくは日本全国のコロボックルファン並びに有川先生ファンが待ち望んだ作品であろう。
 だがしかし。散々長い前置きで述べた通り、わたしは「コロボックル」というものを、知識としては知っていたものの、佐藤さとる先生による原典は全く読んでいないのだ。実はこの一言を言うためだけにクソ長くてつまらないわたしの過去を書き連ねたのだが、まあ、そういう事である。愚かなわたしの「コロボックル」という存在に対する認識は、えーと、あれでしょ、あの『シャーマンキング』の「ポックル」でしょ? ぐらいなインチキ知識しかない。アニメもやっていたことはうっすらとしか覚えておらず、まあ観たとしても年代的に再放送だと思うが、さっきちょっと検索してオープニングの歌をYouTubeで見てみたところ、全然記憶にないものないので、たぶん真面目には観ていなかったのだと思う。とまあこんなわたしであるので、果たして有川先生の新作とはいえ、読んで面白いものなのかしら、コロボックル知識がなくて大丈夫かしら? と若干の不安を抱きつつ、発売日に書店へ赴いた次第である。

 で、買った。そして読んだ。結論は「コロボックル知識がなくても全然大丈夫」であった。わたしが買ったのは、三省堂書店神田本店である。発売日に行ったら嬉しいことにサイン本があったので、即購入。ちょっといろいろ忙しかったので、読み始めたのは先週末頃で、実質3時間ぐらいで読み終えた。
 物語は、現代である。といっても、主人公が少年だった日々の回想であるので、正確に言うとたぶん1990年代初めのころだと思う。その点に、わたしは少なからず驚いた。てっきり、ドファンタジーなのかと思っていたら、全然そんなことはなく、全くリアルな(20年前の)現代社会が舞台で、その中に一つだけ、ファンタジックな要素が混じる、という、有川先生の基本スタイルそのものであった。
 キャラクターも、有川先生の作品らしい「やましいところのないまっとうに生きる人々」が描かれているので、読んでいてとても気持ちがいい。また、これまた有川先生らしい「まったく無意識に人を傷つける人」も出てくるが、子どもたちには、きちんと「正しいことを毅然と教えてくれる大人」がついているので安心して読める。また、タイトルである『だれもが知ってる小さな国』という意味も、美しく判明する仕組みで、読後感も非常にさわやかで、大変面白かった。はちみつや花についての豆知識も得られ、わたしとしては満足な1冊でありました。しかし、なんというか、……幼馴染っていいですのう……。この本を読むと、来年の夏は北海道に行きたくなりますな。
 ところで、さっき、いわゆる養蜂というものについてちょっと調べてみた。物語の主人公の少年は、いわゆる養蜂家の息子なわけで、全国を引っ越しながら暮らしているのだが、そういう養蜂家は「転飼養蜂」というらしい。そして、各地を巡る際は、「養蜂振興法」という法律があって、その第4条(転飼養蜂の規則)に従い、その地の知事の許可が必要なんだそうだ。そんなこと全然知らなかったので、勉強になりました。

 というわけで、結論。
 有川 浩先生最新作『だれもが知ってる小さな国』は、往年のコロボックルファンはもとより、コロボックルを知らない有川先生ファンにも安心して読んでいただける作品です。ので、わたしのようなコロボックル読んでないんだよなー、と迷っている方がいれば、Don't Worry。全然大丈夫ですので、ぜひ、お手に取っていただきたいと思います。はい。それを言いたいがために、無駄な前書きが長くなってサーセンっした。


↓ やっぱり、これは原典も読んだ方がいいな。俄然興味がわいてきた。

  今日は14日である。14日というと、わたしが映画を見るシネコンであるTOHOシネマズは、「トー・フォーの日」として、1,100円で映画が見られるので、お得なのです。世の女性には「レディースデー」なるお得な日が毎週あるにもかかわらず、男にはそのようなサービスデーがないのは非常に逆差別を感じざるを得ないが、まあ、仕方ない。
 というわけで、今日は帰りに『図書館戦争 THE LAST MISSION』を見てきた。個人的にこの作品にはいろいろ関係があるのだが、まあそれは置いておくとして、一観客として、十分に楽しめた作品であった。

 原作はもはや紹介の必要はなかろう。有川 浩先生によるベストセラーで、第1巻目に当たる『図書館戦』がハードカバー単行本で発売されたのは2006年。改めて考えるともう発売から9年が過ぎている。それは、発売当時すぐに読んだわたしからすると、ちょっと驚きだ。もうずいぶん経ったものだ……読んで、ああ、これはすごい小説だと思ったが、以降、シリーズとして、第2作目の『図書館内乱』、3作目の『図書館危機』、そして完結編となる『図書館革命』という4冊が発売になり、さらに加えて、番外編というかキャラクターごとのスピンオフも2冊出版されている。全て非常に売れている作品だ。また、既にアニメ化・漫画化も行われており、数多くにファンに愛されているすごいコンテンツである。
 実写映画は、今回2作目。前作は2013年に公開されたが、基本的には第1巻の『図書館戦争』に沿った展開であった。そして今回の『The Last Mission』は、原作でいうところの第3巻『危機』の内容を踏襲している。てことは、2作目の『内乱』はどうなった? とまあ普通は思うことだと思うが、その第2巻の内容は、先週TBSで放送された(この映画はTBS主幹事製作)、スペシャルドラマ『図書館戦争 ブック・オブ・メモリーズ』で描かれている。ので、そちらを見る必要がある。この『内乱』にあたるドラマでは、主人公・笠原郁と両親の関係を描くエピソードや小牧と毬江ちゃんのエピソード、それから手塚と兄と柴崎の関係性も描かれているので、派手な戦闘は控えめではあるものの、シリーズ全体から見るとかなり重要だと思う。すぐに再放送されることはまあ常識的に考えて難しいとは思うが、見逃した方は、どうやら今日、DVD/Blu-rayが発売になったようなので、そちらを見ていただきたい。こちらのドラマも非常に良かった。
図書館戦争 BOOK OF MEMORIES [Blu-ray]
岡田准一
KADOKAWA / 角川書店
2015-10-14

 で。今回の映画第2作『The Last Misson』である。原作とは若干の違いがあったが、正直全く問題なし。非常に流れもよく、うまく2時間にまとまっていた。監督と脚本は、第1作から引き続き佐藤信介監督と野木亜紀子さんのコンビだ。パンフレットによれば、有川先生がとても信頼する二人だそうで、野木さんはTVドラマ『空飛ぶ広報室』でも有川作品を手がけており、おそらく、有川作品への愛が最も深い脚本家ということのようだ。先ほども書いた通り、物語は若干原作よりも駆け足展開だが、映画として何ら齟齬はなく、問題はない。一つだけ注文を付けるとしたら、何か季節を表すセリフなり情景が欲しかった。何しろ、現在の現実世界は秋である。が、映画世界は春になる少し前(これ原作通り)で、キャラクターはコートを着ている。ひょっとしたら、原作を読んでいない人だと、年末に向かう冬だと思ってしまうかもしれないので、何かちょっとした季節感を表すものが欲しかったかもしれない。ちなみに、この『図書館戦争』という作品では、「カミツレ」という花が重要な意味を持っているのだが、さっきいろいろ調べたところによると、この花は春の花で、3月~5月あたりに咲く花なのだそうだ。花言葉は「逆境に耐える」。作中では極めて意味が深い。ちなみに、我々としては「カモミール」という名の方が知られているだろう。ハーブティーやハーブアロマオイルでおなじみのアレだ。「カミツレ」とは「カモミール」の和名なんですって。へえ~。まあ、「カミツレ」が咲いている=「春」ということで、季節感を表現できているとも言えるのかもしれないが、なんとなく、わたしにはクリスマスへ向かう雰囲気のように見えて、ちょっとだけ気になった。

 キャストもまた、前作から引き続き同じメンバーである。主役の郁、堂上のコンビは、かの「ダ・ヴィンチ」の有川先生特集の号において実施された、「映画化するならキャストは誰がいい?」投票で1位になった榮倉奈々ちゃんと岡田准一くんのコンビである。原作では、この二人は背の高さのギャップがあって、女子の郁の方が背が高く、男の堂上の方がちょっと背が低い設定になっていてそこがまたひとつのポイントなのだが、きっちりそれも映画で実現している。しっかしホントに、榮倉ちゃんはデカイ。顔が非常に童顔なだけに、なんだかひょろっとした不思議な感じがするが、だがそれがいい、のであろう。前作のときに舞台あいさつで遠くから本人を目撃したのだが、実際非常にかわいい女子でした。なんというか、芝居ぶりが非常に、原作読者が想像していた「笠原 郁」そのものなのだ。とてもいいと思います。一方、岡田くんも、おそらくはジャニーズNo.1の演技力で、去年の日本アカデミー賞では、最優秀主演男優賞と最優秀助演男優賞を同年ダブル受賞した実力派である。去年のNHK大河ドラマ『軍師 官兵衛』でも、素晴らしい演技を披露してくれたことは記憶に新しい。また、この映画には、偶然なんだろうけど『官兵衛』のキャストが数人出ている。岡田くん演じる堂上の相棒である小牧を演じたのは、田中圭くん。『官兵衛』では、石田三成をイヤ~な奴として見事に演じていた。また、今回の映画からの新キャラ(※実際は2作目『内乱』にあたるスペシャルTVドラマで既にチラッとお目見え済み)である、手塚 慧には、わたしにとってはシンケンレッドでおなじみの松坂桃李くんがカッコよくエントリー。彼は『官兵衛』では岡田くんの息子、すなわち黒田官兵衛の息子たる黒田長政を演じた男だ。どこかで聞いた話では、桃李くんは今でも岡田くんのことを「父上」と呼んでいるそうですよ。そして長政といえば、三成ぶっ殺し隊のリーダー格であるので、不思議な因縁のキャストになっているが、まあ、偶然でしょうな。しかし、桃李くんは本当にカッコよくなった。もちろん、デビュー作の『侍戦隊シンケンジャー』のシンケンレッドの時からカッコ良かったが、どんどんそのカッコ良さは磨かれているように思う。また、劇中で弟役となる福士蒼汰くんも、デビュー作『仮面ライダー・フォーゼ』から見事に成長し、すっかりイケメンとしておなじみとなった。なんだか見るたびに痩せていっているような気がするが、今後も頑張って活躍してほしいものだ。
 ちなみに、どうでもいいことを一つ付け加えておくと、先ほど前作を観たときにキャストの舞台挨拶を観たと書いたが、その時のわたしの印象に一番強く残っているのが栗山千明様だ。劇中でも非常に、まさしく原作でイメージしていた通りの柴崎を演じているが、本人のちびっ子さ、華奢さ、そして、マジでハンパないオーラというか、完全に一般人が気安く声をかけることはできないような、超絶な可愛さは、本当にビビった。はあ……千明様と京都に旅に出たいわ……いや、無理ですけどね。

 というわけで、結論。
 脚本もキャストも演出も、すべて良かったと思う。おそらく、この映画を観た有川先生はきっとうれしいだろうなと想像する。有川先生の作品に共通するのは、キャラクターが常に、心にやましいところのないように、まったくもってまっとうで、真っ直ぐに生きようとしている人々を描いている点にあると思う。だから、読んでいる我々は、自らを省みて、ちょっと自らを恥ずかしく思うこともあるし、また、同時に深く感情移入できてしまう。「こうでありたかった自分」を思い出さずにいられないのだ。また、普段の生活ではまったく自覚していない、自らの不用意な言葉や行いが、どれだけ他者に影響を与えてしまうかを振り返らせてくれることもある。そういう点が魅力なのだと思う。『図書館戦争』も実際のところそういう部分はあり、映画でも存分にその魅力は伝わったのではなかろうか。興行収入が前作を超えるとうれしいのだが。
(※10/21追記:興行収入が2週目まで出ている→こちらを参照)


↓ 次の有川先生の新作。なんと「コロボックル」ですよ!


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