というわけで、またこの季節がやってきました。
 何のことかわからない? ええ、まあそりゃそうでしょうな。
 本日より、わたしが毎回楽しみにしている『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』の最新作、『IV 運命の前夜』が公開になったので、さっそく観に行ってきたのである。わたしはいつも、ガンダムが大好きな元部下のMZくんがせっせと舞台挨拶付きの回のチケットを取ってくれるので、ま、それに便乗というか、行きましょうよ!! と熱く誘われるので、付いて行っているだけなのだが、いつもは、さいたま市民のMZくんの家に近いさいたま新都心のMOVIXさいたままで、わざわざ車をぶっ飛ばして1時間チョイかけて観に行っている。しかし今回は、珍しくMZくんが午前中は用事があって都内にいるので、新宿にしたいというので、はあ、さいでっか、と、わたしの最も嫌いな新宿ピカデリーへ赴いた次第だ。
 が、16時10分の舞台挨拶付きの回で、正直わたしは舞台挨拶はどうでもいいのだが、MZくんたっての希望なので付いて行ったものの……深く後悔した。とにかく、混んでいる。新宿ピカデリーは、今ではどうか知らないけれど、数年前までは日本で最も観客動員の多いシネコンとして業界的におなじみであるし、休日に行ったことのある人ならご存じのとおり、とにかく動線が最悪で、構造上とにかく混んでしまうのだ。今回もまあひどかった。まず、物販の列はなかなか進まない。これはオペレーション上の問題も残念ながらあると思う。要するに客さばきがド下手である。なので、上映開始ギリギリまでかかってしまう。そしてゲートはもう、朝のラッシュアワーかというぐらい、列は無秩序だし、もうどうしようもない。実際、わたしはもう二度と行かないと思う。そもそも、わたしは現在TOHOのフリーパス有効期限内なので、日本橋TOHOで観たかったのだが、明確に新宿は嫌だとMZくんに主張すべきだったと深く反省している。新宿ピカデリーの混雑は予想していたのだから、自分が愚かだった。以上、愚痴終了。
 しかし、そんなことはどうでもいいほど、作品の方はいつも通りハイクオリティで、期待通りの素晴らしさであった。

 この、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』というアニメシリーズは、元々の一番最初のTVシリーズの、いわゆる「1年戦争」を安彦良和先生が完全漫画化したものを原作とし、その中で、TVシリーズでは描かれなかった前史、つまり1年戦争勃発前から開戦初期のころの回想部分を映像化した作品だ。原作コミックでいうとジャブローの戦いでばったりキャスバル兄さんことシャアと出会ってしまったセイラさん、すなわちキャスバルの妹アルテイシアが、過去を回想する(9)巻~(14)巻の部分に相当する。映像化作品との対比は、以下のような感じである。
 『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN I 青い瞳のキャスバル』
 →(9)巻まるごと。ホントにもう、すべてのコマまで完全映像化
 『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN II 哀しみのアルティシア』
 →(10)巻のラスト直前の、キャスバルとアルテイシアの別れまで。
 『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN III 暁の蜂起』
 →(10)巻ラストのキャスバルとシャアの入れ替わりから、(11)ラスト前の暁の蜂起事件終結まで
 というように、基本的にはほぼ完全に原作コミック通りなのだが、前回の『III』で初めて、映像オリジナル要素がいくつか加わったのは、前作のレビューを書いたときにチェックした通り
 なので、わたし的興味は、今回はどこまでだろう、というのが一つ。そして、とうとう描かれる「人類初のモビルスーツ戦闘」の映像ならではの迫力、そして、実はこの頃に出会っていたという設定となったララァの登場、を大変楽しみに劇場へ向かったわけである。
 で、結論から言うと、今回の『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN IV 運命の前夜』は、(12)巻のラストまで、であった。ただし、前回からオリジナルの展開や、若干の順番の入れ替わりがあったように、今回は大幅なカットと順番入れ替わりが少しあった。
 カットされたのは、事前の予想通り、サイド7でのアムロの学校生活の模様で、残ってはいるがだいぶ短くなっている、原作コミックだとハヤトもちらっと出てくるけれど、今回出番なし。ま、仕方ないすね。ちなみに、アムロは、お父さんの部屋で見つけたガンダムの資料を読みふけっていて、実は事前にガンダムの知識があったことになっています。この点は、原作コミックを読んでいない人はびっくりだろうと思う。TVシリーズではなかった設定なので。
 そして、わたしが楽しみだった、「人類初のモビルスーツ戦闘」の迫力は大変素晴らしく描かれていたと思う。音響も、映像も、全く文句なし。なお、原作コミックでは、シャアはあまり戦闘に参加しないで観ているだけだったと思うが、今回の映画では結構積極的に、何気に派手な戦いをしていました。そして、やっぱりシャアという男は赤いモビルスーツが似合いますな。赤い旧ザクは大変カッコ良かったです。
 ただし、この戦いの後のデブリーフィングで、原作だとアムロの父、テム・レイがなぜジオンのモビルスーツが圧倒的に強く、ガンキャノンが惨敗したかの理由を連邦高官(だっけ?アナハイムの重役だったかな?)に説明するシーンがあって、それ故に新たな計画、「RX-78」、通称「ガンダム」が必要なんだと熱弁をふるうのだけれど、そこがちょっと短くなっていたのがとても残念に思った。ここはすっごく重要なポイントなので、ちょっと原作コミックからテム・レイの言葉を備忘録として引用しておこう。
 「用兵思想が違っていたのです! 戦車の話はいい例だ ご説明いたしましょう! もともと戦車という兵器は 歩兵を制圧するために造られた その後は戦車戦を想定した BT(バトルタンク)の発想が生まれたのです ジオンのモビルスーツは、BT(バトルタンク)です これに対してRX-77(=初期型ガンキャノンのこと)は対歩兵戦闘車ですっ! 勝てるわけがないっ!」
 要するにガンキャノンは対人兵器であり、(動かない)拠点制圧用の兵器なので、機動性よりも攻撃力と装甲の方が重視されているわけで、だから固定砲も装備されてるわけだ。いわば戦車の進化形だったわけで、人型である理由は、ガンタンクより機動性を高めることぐらいしかないんだな。しかし、一方のジオンのモビルスーツは、その戦車を攻撃するための対戦車兵器なわけですよ。それ故に機動性も高く、格闘戦も想定に入れているため、固定武器は装備されず、殴る・蹴る・タックルすることが想定されているし、手にする武装も多彩なわけで、人型である理由があるわけだ。しかも明確に宇宙空間での運用も想定されている。結果、勝てっこない、ということになるわけです。この説明はものすごく重要だと思うのだが、カットされたのが非常に残念に思った。
 そしてもう一つわたしが楽しみにしていた、ララァとシャアの出会いだが、このエピソードはほぼ原作コミック通りだったと思う。原作を読んでいない人は驚くと思うけれど、「暁の蜂起」事件の責任を取る形で、シャアは士官学校を退学となり、地球に降りてジャブロー基地建築の土木作業員になるのだが(この時の経験が、後のジャブロー攻撃作戦の際に役立つことになる)、そこで、すでにララァと出会っているんだな。ここのエピソードは、TVシリーズしか知らない方は超必見ですよ。そして、わたしが一番気にしていたララァの声なのですが、もうだいぶ前に、今回ララァの声を担当するのが早見沙織さんであることが発表されていたのだが……結論から言うとアリですね。大変良かったと思う。今日は舞台あいさつで早見さんも登壇されていたけれど、まあ大変可愛らしい方ですな。人気なのも頷けますね。声もとてもイイと思います。TV版で登場するララァを演じた藩恵子さんは、結構落ち着いた感じの女性としてララァを演じていたけれど、よく考えると実はまだ10代の少女なわけで、今回の早見沙織さんの声はとても似合っていたと思う。
 今日の舞台挨拶は、シャアの池田秀一さんやランバ=ラルの喜山茂雄さん、キシリア役の渡辺明乃さん、ララァの早見沙織さん、それから安彦先生、さらには、『F91』以来25年ぶりに劇場版ガンダムの主題歌を担当した我らがおっさんのアイドル、森口博子さんまで登壇してくれて盛り上げてくれた。
THEORIGINIV
 超ボケてるけど、写真撮影可で、どんどんネットにアップしてくれ、と言ってたので、わたしも貼ってみます。席は前から5列目だったので、結構近かったのだが、写真で見ると小さいなあ……しかし、森口さんはわたしと同じ年ぐらいなのに、本当にいつまでもお綺麗ですな。実際可愛いし美人だと思います。歌もうまいし。意外とちびっ子でした。
 あと、最後に書いておきたいのが、今後の展開である。特報映像として、「ルウム編」の映像がちょっとだけ観られました。とうとう始まってしまった「1年戦争」。次回はあの「毒ガス」と「コロニー落とし」で悪名高い「ブリティッシュ作戦」が描かれます。ランバ・ラルの「これは戦争ではない……殺戮だ!!」も予告に入ってました。まあ、原作コミック通りでしょう。公開は来年2017年秋で、その次が、安彦先生の話によれば2018年のあまり間を開けずに、とのことなので、きっと2018年の3月までには公開になるのだろうと思う。大変楽しみですな!

 というわけで、どうもまとまりがないけれど、結論。
 『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』は大変な傑作である。そして今日公開になったシリーズ第4作『運命の前夜』は、とうとうジオン独立から「1年戦争」の開戦までが描かれた。言ってみれば、この『THE ORIGIN』は完全に後付けの物語で、当初は想定されていないものだったはずなのに、ほぼ完ペキに、破たんなくつじつまが合っているのは、本当にすごいことだと思う。毎回書くけれど、30年前、ガンダムやガンプラに夢中になった40代のおっさんこそ、楽しめると思うな。ぜひ、世のかつてガンダムが大好きだったおっさんたちは、この『THE ORIGIN』を観て興奮し、是非とも自分の子供にも観せてやっていただきたいと思います。最高です。あと、もう二度と新宿ピカデリーには行かないこと。混みすぎてうんざりっす。以上。

↓ 通常版はチョイ先の発売です。世のおっさんたちにはぜひ買っていただきたい。わたしは今日劇場でクソ高い限定版を買ってきました。正直、通常版で十分なんすけどね……。
機動戦士ガンダム THE ORIGIN IV [Blu-ray]
池田秀一
バンダイビジュアル
2016-12-09