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 物理学における「三体問題」というのをご存知だろうか?
 そう言うわたしも知らなかったので、Wikiから軽く引用しつつ、超はしょって言うと、万有引力によってお互いに作用する3つの天体の軌道を数学的にモデル化しようとするもの、で、コイツはもう計算できない! とされている問題だ(たぶん)。正確には、いろんな条件下では、こうだ、という解はそれぞれあるようだが(?)、わたしも実は良くわかっていない。ガンダム世界で言う「ラグランジュポイント」ってのがあるでしょ? アレは地球と月(と太陽?)の重力(引力?)の均衡が取れているポイントのことで、この「三体問題」のひとつの解であるらしい。いや、サーセン、わたしもまるでニワカ知識なので、正確にはよくわからんですが。大森望氏によるとそういうことらしいです。
 というわけで、話題の小説『三体』がとうとう日本語化されたので、わたしも遅まきながらやっと読んでみたわけなのだが、これがまた強力に面白く、大興奮であったので、今から感想などを書こうと思っているわけです。
 この小説『三体』は、中国人作家の劉慈欣(日本語読みで りゅう・じきん)氏によるSF小説であり、中国のSF雑誌に2006年5月から12月まで連載され、単行本として2008年に刊行された作品だ。その後、「The Three-Body Problem」として英訳もされ、2015年のヒューゴー賞長編小説部門をアジア人作家として初めて受賞、2017年には当時のUS大統領Barack Obama氏がすげえ面白かった! とインタビューで発言したことなんかもあって、話題となっていた作品だ。
 それがとうとう、日本語訳されたわけですよ! さすがわたしの愛する早川書房様! 当然電子書籍版も、各電子書籍販売サイトで取り扱っていると思うので、自分の好きなところで買って、読み始めてください。Kindle版も当然発売になってます(しかも若干お安い)。
三体
劉 慈欣
早川書房
2019-07-04

 で。―――もしこれから読んでみようかな、と思う方は、以上の前知識だけにして、今すぐ作品自体を読み始めた方がいいと思います。恐らく、ある程度のネタバレは事前に知っていても十分楽しめるとは思うけれど、なるべくまっさらな状態で読み始めた方がいいと思いますので、へえ、そんな小説が発売になったんだ? と興味がわいた方は、以下は読まず、今すぐ退場してください。その方がいいと思いますよ。

 はい。じゃあ、いいでしょうか?
 本作は、冒頭は1967年(たぶん)、文化大革命真っ盛りの中国から開幕する。そこで一人の女性、葉文潔(推定25歳ぐらい?)に降りかかった悲劇と、その後の体験が描かれるのだが、これがまたかなり生々しくて非常に興味深い物語となっている。わたしは、ああ、今の中国って、文革のことを書いてもいいんだ、とちょっと驚いた。勝手な先入観として、天安門事件のように、誰も口にしてはならないことなのかと思ってたけど、そういやいろんな本が散々出てるんですな。
 そしてこの文革での体験が、葉文潔の生き方、そして人類に対する観方を決定づけるわけだが、すぐに物語は「40数年後」の現代に移り、もう一人の主人公、汪森の話が始まる。汪森は、とあるナノマテリアルを研究している科学者なのだが、彼の元に警察と人民解放軍の軍人がやってきて、「科学フロンティア」なる団体に、加入して、その内部を探るよう依頼してくる。実は最近科学者の自殺が相次いでおり、その対策本部があって、そこにはNATOの軍人やCIAまでおり、「今は戦時中だ」とか言っている。汪森は、なんのこっちゃ? と思いつつも、科学フロンティアに加入することを受諾するが、すると謎の「カウントダウン」が始まり、その謎を解くために科学フロンティアの主要メンバー?である女性科学者を訪ねる。が、逆に「今すぐあなたのやっているナノマテリアルの研究を中止しなさい」とか謎の言葉ばかりかけられ、やむなく汪森は、ふと思いついて女性がプレイしていた「三体」というVRゲームをプレイしてみるのだが、その背景には恐るべき秘密が隠されていた!! という展開となる。
 ここから先の物語は、もう書かないで読んでもらった方がいいだろう。正直わたしは、えっ!? と思うような、トンデモ展開だと感じたのだが、とにかくディティールが非常に凝っていて、わたしのようなまるで知識のない人間でも、だんだんと何が問題になっているのかが分かる仕掛けになっている。
 その理解を助けてるくれるのがVRゲーム「三体」だ。
 これは完全没入型のゲームの形を取っていて、3つの恒星を持つ惑星、という謎の異世界を体験しながら、「三体問題」がどういうものか、理解できるようになっている。なお、このVRゲームは、VRスーツを着用してプレイする(=READY PLAYER 1的なアレ)ものなので、この描写されている現在は、今よりちょっと先の近未来なのかな、とわたしは思ったのだが、思いっきり「40数年後」って書いてあったし、よく考えてみると、本書が最初に発表されたのが2006年なんだから、まだiPhone発売前の世であり、その当時の状況からすると、執筆時に想定されていた作中での現在は、2010年代後半ぐらいなのかもしれない。
 で、とにかくこのVRゲームの部分がすっごい面白いわけですよ。いろんな歴史上の人物が出てきて「三体問題」に挑むのだが、クリアできないで文明は滅んでリセットされ、また次の人物が挑んで……を繰り返しているらしく、200文明目ぐらいでフォン・ノイマンが出てきて、「人力コンピューター」が登場するくだりは最高に面白かったすねえ!
 そしてこのVRゲームによって「三体問題」の基本理解が出来たところで、このゲームが実は謎組織のリクルーティングのためのものであることも判明し、汪森は謎組織の中に入り、驚愕の事実を知るわけだが、同時に冒頭の文革で悲劇に遭った葉文潔の半生が語られていき、如何にして文潔が「人類に絶望したか」が、じわじわと生々しく読者に理解できるようになっている。
 そして文潔の「人類に対する裏切り」がどんなことを引き起こしているのか、という怒涛のラストになだれ込むのだが、わたしはもう、ラスト辺りで語られる異星人の話には大興奮したものの……ここで終わり!? というエンディングには、若干唖然とせざるを得なかったす。これは電子書籍の欠点?かも知れないけれど、自分が今どのぐらい読み進めているか、自覚がなくて、わたしの場合、興奮してページをめくったらいきなりあとがきが始まり、えっ! ここで終わり!? とすごいビックリしました。
 そうなんです。本作は、実は3部作の第1作目、ということで、この先がまだまだあるんすよ! あとがきによれば第2巻の日本語訳は来年発売だそうで、オイィ! 続き早よ!! と恐らくはラストまで楽しんで読んだ人なら誰しもが、思うのではなかろうか。そして一方では、ラストまでついて来れなかった人も多いとも思う。まあ、最後の1/4ぐらいの異星人話はちょっとキツかったかもね……。
 というわけで、もういい加減長いので、来年続きを読むときのために、主要キャラをメモして終わりにしよう。
 ◆葉文潔:冒頭の1967年の文革期で25歳ぐらいで、元々、父と同じく天文物理学を勉強していた。作中現在では70代のおばあちゃん(※作中に「60代ぐらい」という容姿の描写アリ。てことは作中現在は2000年代後半か?)。文革後、「紅岸プロジェクト(=実は地球外生命体探査計画)」に半強制参加させられたのち、名誉回復が叶い、大学教授となってその後引退。人類に対して深く絶望しており、とある「人類に対する裏切り行為」をしてしまう。物語の主人公の一人。
 ◆楊衛寧:文潔の父の教え子だった男。文潔を紅岸に引き抜いて救う。後に文潔と結婚するも、実に気の毒な最期を迎える。
 ◆雷志成:楊とともに文潔を紅岸に引き抜いた男。政治委員。文潔の研究を自分の名前で公表して地位を築いたりするが、わたしの印象としては悪い奴ではない。楊ともども気の毒な最期を迎える。
 ◆汪森:もう一人の主人公。妻子アリ。ナノマテリアルの研究をしている科学者で、いわば巻き込まれ型主人公。ただし、ラスト前で彼の研究していたものがスゴイ役立つことに。実はそれゆえに、最初から「科学フロンティア」勢力は汪森の研究を中止させたがっていた。つまり巻き込まれたのは偶然では全然なかったというわけで、読者に代わってえらい目に遭う気の毒な青年と言えるかも。
 ◆史強:元軍人の警官。汪森をつかって事件の真相に迫る。キャラ的には強引で乱暴者で鼻つまみ者で脳筋、と思わせておいて、実はどうやらすごく頭はイイっぽい。非常に印象に残るナイスキャラ。
 ◆楊冬:文潔と楊の娘で科学者。「これまでも、これからも、物理学は存在しない」と書き残して自殺。
 ◆丁儀:楊冬の彼氏で同じく科学者。酔っ払い。なかなかのリア充野郎で、チョイチョイ汪森と行動を共にするが、正直イマイチよくわからない野郎。
 ◆申玉菲:中国系日本人科学者。超無口。元三菱電機勤務で、当時は汪森と同じくナノマテリアルの研究をしていた。汪森が初めて会いに行ったとき、VRゲームをしていた。科学フロンティア会員で、汪森に対して「プロジェクトを中止しなさい」と謎の言葉をかける。
 ◆魏成:申玉菲の夫。数学の天才。ものぐさで浮世離れしたふらふらした男。紙と鉛筆で三体問題を解こうとしていた過去があり、それで申玉菲と知り合った。VRゲーム「三体」のモニタリングと追跡を、それがどういう役目か知らないまま担当していた。
 ◆潘寒:有名な生物学者。科学フロンティア会員。化石燃料や原子力などをベースとした「攻撃的」テクノロジーを捨て、太陽光エネルギーなどの「融和的」テクノロジーを提唱している男。実は謎組織「地球三体協会=Earth Trisoralis Organization=ETO」の「降臨派」で、申玉菲の属する「救済派」と対立しており、ついに申玉菲を射殺するに至る。「オフ会」の主催者。
 ◆沙瑞山:文潔の教え子で、現在は北京近郊の電波天文基地に勤務。汪森が「宇宙の明滅」を確かめるために会いに行った男。たいして出番ナシ。
 ◆徐冰冰:女性警官でコンピューターの専門家。VRゲーム「三体」の謎を警官として追っていた。たいして出番ナシ。
 ◆マイク・エヴァンズ:文潔と同様に、人類に絶望した男。文潔と結託し、ETOを設立し、父親から受け継いだ莫大な遺産で、タンカーを改造した「ジャッジメント・デイ号」を「第2紅岸基地」として運用し、場所に縛られない移動可能な送受信設備を使って宇宙と交信する。
 ◆林雲:丁儀の元カノで、丁儀の研究のカギとなる貢献をした人物で、軍人? らしいが、本作では姿を現さず、丁儀の台詞にだけ登場。今は「あるところに……もしくはあるいくつかの場所にいます」と言われていて、ひょっとしたら第2作以降登場するかもしれないのでメモっときます。
 はーーーーとりあえずこんな感じかな。もう書いておきたいことはないかな……。

 というわけで、結論。
 話題のSF大作『三体』の日本語訳が早川書房様から発売となったので、わたしもさっそく買って読んでみたのだが……ズバリ言うと、面白い! けど、ここで終わりかよ! 感がとてつもなく大きくて、若干ジャンプ10週打ち切り漫画っぽくもある。わたしとしては、ホント続きが早く読みたい!気持ちがあふれております。相当歯ごたえ抜群のSFであることは間違いないけれど、それ故に、まあ、万人受けするかどうかは相当アヤシイとも思う。特にラスト近くになってからの怒涛の展開は、かなりトンデモ世界で、ちょっとついて行くのが大変かも。そういう点では、普通の人には全然おススメ出来ないけれど、SF脳な方には超おススメです。つうか、続きは450年後の世界が舞台なんだろうか?? すげえ気になるっすなあ……! まあ、おれたちの早川書房様は確実に第2作、第3作を発売してくれるのは間違いないので、楽しみに待ちたいと存じます。いやー、スケールでけーわ。なんつうか、すげえ読書体験でありました。以上。

↓ 英語版はとっくに最後まで出てます。読む? どうしよう……。


 

 はーーー暑い……そして湿気が不快だ……やっぱり寒い方がわたしは耐えられるのは間違いなかろう。夏はなんというか……酸素が足りないというか……すべての体機能が低下しているような気がする……。
 というわけで、昨日に引き続き、Isaac Asimov先生の『FOUNDATION』シリーズ最初の三部作、の3作目『SECOND FOUNDATION』について今日は書こうと思う。

 まずは、昨日も書いたおさらいをコピペしておくか。手抜きサーセン。
 今から数万年後の遠い未来、「帝国」が1万2千年の長きにわたって広大な銀河を統治していた。が、その長大な歴史は停滞をもたらし、崩壊が迫っていることを一人の男が警告を発する。その男の名は【ハリ・セルダン】。そしてセルダンは、人類の英知たる知識を保管・管理するために、【銀河百科事典第1財団】=【第1ファウンデーション】を、帝国の首都星【トランター】から遠く離れた辺境の星【ターミナス】に築き上げることに成功する(※第1巻時点ではほぼ謎に包まれているが、「セルダンは、銀河の反対側に第2ファウンデーションを設置した」ことも知られている)。その目的は、何もしないと、帝国滅亡後、人類は3万年にわたって無政府状態の闇に陥ることになるが、その3万年の闇を、1千年に縮めるために、ファウンデーションを設立したわけである。セルダンの主張はセルダンが編み出した【心理歴史学】という、統計科学を用いた複雑な方程式によって数学的に導かれたもので、第1巻は、そこから300年にぐらいの間に起きた、3回の重大な【セルダン危機】=ファウンデーションに降りかかる重大なピンチ、を描いたものである。
 そして続く第2巻では、冒頭に銀河帝国の滅亡に繋がる事件と最後の皇帝について描かれ、その後、【セルダン・プラン】の唯一の弱点である「イレギュラー」、【ザ・ミュール】と呼ばれるミュータントの出現により、セルダンの予言は初めて外れ、とうとうファウンデーションはミュールに占領・征服されてしまう。そしてミュールに唯一対抗することができる可能性として、第2ファウンデーションの謎を解くために人々は行動するが、その謎が解かれる寸前で、大事件が起きて―――というエンディングであった。
 で。本書、第3作目にあたる『SECOND FOUNDATION』は、冒頭のプロローグにおいて、Asimov先生直々に、次のように物語が紹介されている。
 「こうして謎の第2ファウンデーションが、みんなの探し求めるゴールとして残った。ミュールは銀河系征服を完遂するために、それを発見しなければならなかった。第1ファウンデーションの生き残りの忠誠心のある者たちは、まさに正反対の理由でそれを発見しなければならなかった。だが、いったいどこにあるのか? それは誰も知らなかった。というわけで、これは第2ファウンデーション探索の物語である」

 <第1部:ミュールによる探索>
 この第1部で描かれるのは、そのタイトル通りミュールによる【第2ファウンデーション】探索の物語である。第2巻のラストから5年後、第2巻で出てきた【ハン・プリッチャー】がミュールによって探索の命を与えられ、新キャラの【ベイル・チャニス】を引き連れて旅立つのだが、その宇宙船には追跡機が付けられており、ブリッチャーは疑心暗鬼の中で混乱する中、ついにミュールと第2ファウンデーションは対面する―――! という展開になる。そして第2ファウンデーションが告げた、ミュールに対する宣言とは! というのがお話の筋で、構成として特徴的なのは、短い章が次々連なる中で、第2ファウンデーションでの【第1発言者】たちの会議の模様?が交互に挿入されている点である。ラストでこのミュール側の話と第2ファウンデーション側の話が交わる形になっていて、ラストは、えええ―――!! という驚きの展開でした。
 主な登場人物と地名をまとめておこう。
 【カルガン】:ミュールの本拠星
 【タセンダ】:チャニスが怪しい、と目を付けた星系
 【ロッセム】:タゼンダに属する冬の惑星。1年のうち9カ月雪が降っており、かつては監獄星でもあった。
 【ミュール】:ミュータントであり、人間の感情をコントロールすることができる特殊な能力を持っている。そのため、ミュールによる征服は、一切戦闘が起きない。ミュールに反抗する心(だけ)を消されてしまうため、本人的には何も変わっていないように思えるけれど、ミュールに反抗できない状態になる。現在ミュールは、銀河系の1/10を支配して【世界連邦】を築き、その【第1市民】と名乗っている。痩せこけていて手足は棒のようで、5フィート8インチ(=172.7cm)、120ポンド(54.43㎏)に満たず、鼻が3インチ突き出ているそうで、まあ、異形、と描写されている。つーかですね、身長と体重はわたしとほぼ同じなんですけど! ちょっと笑えました。
 【ハン・プリッチャー】:第2巻にも出てきた、元ファウンデーション国防軍の諜報部員。現在は、ミュールに【転向】させられ、ミュールの第一の側近的な存在に。役職的には将軍に任ぜられている。真面目だけど、結構気の毒な人。ミュールの敵だったころのことを明確に覚えている。
 【ベイル・チャニス】:カルガン出身。ハンサムで頭が良い、28歳の若い男。【非転向者】であるが、ミュールの統治に不満はない模様。ミュールは、チャニスのコントロールされていない生の野心を第2ファウンデーション探索に必要なものと見込んで(※ミュールは、何者かが転向者に対して精神コントロールをしようとしていることを知っており、プリッチャーを100%信頼できずにいたため、非転向者が必要だった、ということらしい)、プリッチャーに同行させる。しかし、ミュールがチャニスを起用した真意は別のところにあり、さらにチャニスにも秘密があり、そして事態はミュールやチャニスの意図さえも超えて―――というラストの展開は大興奮でありました。
 【第1発言者】:謎の第2ファウンデーションの幹部的存在(?)。行政評議会の構成員。彼らの会議は、独特のもので、談話(声)をもって行うのではないらしい。Asimov先生の地の文の解説によると「ここに集合している人々の精神は、おたがいの働きを完全に理解する」そうで、説明不能だそうです。
 【ナロビ】:ロッセムの農夫。その上に【長老】がいて、さらにその上に【タゼンダ】から派遣されたロッサムを治める【総督】がいる。彼らはみなほぼチョイ役。

 <第2部:ファウンデーションによる探索>
 この第2部は、第1部から1世代分時間が経過している。すでに、第1部ラストでミュールは第2ファウンデーションに完全敗北し、ミュールの創り上げた世界連邦もほぼ崩壊している。そんな世界で、【トラン・ダレル】博士を中心とするファウンデーションの小グループは、「電子脳写」という技術で人の精神や感情がどうも「何者」かに操られている、人工的な精神状態にある、ということを発見し、これは【第2ファウンデーション】によるコントロールなのではないか、という結論に至る。そしてその謎を解くために、かつてミュールが本拠地としていた【カルガン】でミュールの記録を調査するために、仲間の一人をカルガンへ送り込む。しかしその船には、ダレル博士の一人娘、アーカディアもこっそり乗船していた――――という展開で、さらにカルガンを現在治める【ステッティン】という男や、ちょっとした戦争まで勃発し、果たしてダレル博士は第2ファウンデーションの謎を解けるのか、そしてアーカディアは無事に父の元へ帰れるのか、という活劇タッチで物語は描かれる。なお、ラストでとうとう、第2ファウンデーションの謎は完全に明らかになります。ちょっと意外な、そうきたか、というものでわたしは大変楽しめました。
 主な人物は以下の通り。
 【トラン・ダレル】:42歳。第2巻第2部の主人公、ベイタの息子。科学者。妻は死別。ターミナス在住。結果的に第2ファウンデーションのすべてを解き明かすことに成功する。
 【アーカディア・ダレル】:14歳。ベイタの孫娘。家にこっそり盗聴器を仕掛けて、父たちの計画を盗み聞きし、第2ファウンデーション捜索のためにカルガンへ向かう宇宙船に密航。結果的にはすごい大発見をして大活躍する。主人公の一人と言って過言ではない。
 【ポリ】:ダレル家に仕える家政婦のおばちゃん。
 【ベレアス・アンソーア】:若き科学者。トランのかつての共同研究者の最後の弟子として、トランのグループに参加してくるが、その正体は―――!! というラストがかなり驚きの展開。
 【ホマー・マン】:トランのグループのメンバー。図書館司書のおじいちゃん。すごい気弱でどもり癖もあるのに、ミュール研究の第一人者だったため、カルガン調査にはあなたが適任だ、と任命され、しぶしぶ1人で行くことに。そしてアーカディアが密航していることに気づいて大混乱するも、現地では意外と活躍する。
 【ジョウル・ターパー】:トランのグループのメンバー。報道記者。ほぼ役割ナシ。
 【エヴェレット・セミック】:トランのグループのメンバー。物理学教授。ほぼ役割ナシ。
 【第1発言者】:第1部に出てきた第1発言者の後継者で、同一人物ではない。この第2部も、第2ファウンデーション側の会話が交互に現れる構成になっている。
 【若者】:第1発言者の会話相手。評議会入りを控えた有能な若者らしい(?)。わたしはコイツこそが実はアンソーアなのかと思っていたのだが、どうも違うみたい。
 【ステッティン】:ミュール亡き後のカルガンを治める君主。ただしまだ在位5カ月の新米。完全にセルダン・プランは崩壊したと思っていて、第2ファウンデーションのことも信じていないのか、どうでもいいと思っているのか、良くわからないけど自分がミュールに代わって銀河を征服する、とかアホな野望を抱いている。ほぼ何も活躍せず、無駄にファウンデーションに戦争を吹っ掛け、あっさり敗退。
 【カリア】:ステッティンの正妻。カルガンにやってきたアーカディアを保護する。しかしその正体は―――! という意外な展開になるけれど、実際物語上の役割はそれほど大きくない。アーカディアに余裕で見抜かれるし。
 【プリーム・パルヴァー】:荒廃したトランターで農業を営む男。たまたま仕事でカルガンに来ていたが、アーカディアのカルガン脱出を手伝い、トランターの自宅へ彼女をかくまう。しかし、本作の一番最後の文章で、彼こそが実は―――!! という超驚きの正体暴露があって、売っそ、マジかよ!! とわたしは非常にびっくりした。

 はーーー。なんかまとまらない。要するにこの第3巻は、まず前半でミュールのその後が描かれ、後半ではとうとう第2ファウンデーションの謎が解かれ、というわけで、大変スッキリする完結編、と言っていいと思う。ただ、ホントに読みづらい、という印象は最後まで薄れなかったのが我ながら良くわからない。これは……翻訳の日本語文章の問題ではないと思うのだが……やっぱり、時間軸が長くて場面転換も多くて、キャラクターも多い、ってことなんだろうか。しかし、ふと思ったけれど、やっぱり『スター・ウォーズ』の元祖、みたいなことを言われるだけあって、確かに展開やキャラ造形は『スター・ウォーズ』を思わせる要素はいっぱいあるような気がしますな。基本的には、一人の主人公が、難問に対して頭脳で勝負する展開が多く、ほとんどの場合、主人公自身は戦わない。あくまで背景として戦争があるため、戦闘描写はほぼないという点も非常に独特ですな。大変面白かったです。
 わたしが非常に痛感したのは、
 1)超人、という個人に頼る体制はやっぱり永続しえない
 2)超人のスーパーパワーより組織の方が強い。
 ということです。そして第2ファウンデーションはなんというか、「ブギーポップ」シリーズでお馴染みの「統和機構」みたいすね。
 ちょっと関係ないけれど、わたしはいつも思うのだが、たとえば北の三代目将軍様は、ある日突然イイ奴になるかもしれないし、あるいはあの世に消え去るかもしれず、そうなったらあの国はガラッと変わり得る、けど、彼を支援してきた強大なGNP2位のあの国は、完全に組織として強固で、はっきり言えば誰がTOPになっても大きく変わることはなく、常に同じなんだろうな、ということも、なんとなく本作を読んで思い出しました。

 というわけで、もういい加減にして結論。
 時間がかかってしまったが、やっとSFの名作と呼ばれる『FOUDATION』三部作をずべて読み終わった。非常に長大な物語で、その規模は第1巻の冒頭から第3巻のエンディングまでは400年ぐらい経ってるのかな? 非常に読みごたえのある作品でありました。様々なSF宇宙モノの元祖、みたいなことを言われる古典作品だが、これはやっぱり読んどいてよかったわ。というのがわたしの最終結論です。以上。

↓ 次は、とうとうコイツを読みます! ずっと日本語訳を待ち望んでいたぜ! 昨日やっと電子書籍で買いました。昨日はコインバックフェアがあったので。
ダークタワー IV‐1/2 鍵穴を吹き抜ける風 (角川文庫)
スティーヴン・キング
KADOKAWA / 角川書店
2017-06-17


 はーーーやっと読み終わった……。そして面白かった!
 6月の末に、わたしはIsaac Asimov先生のSF古典ともいうべき作品、『FOUNDATION』を読んだのだが、これがめっぽう面白く、(最初の)3部作はもう全部読むしかねえ、と続く2巻目3巻目をせっせと読んでいたのだが、今日の朝の電車内でやっと全部読み終わった。超満足です。
 で、2冊まとめてレビューしようと思ったけれど、分量的にかなり長くなるような気がするので、やっぱり1冊ずつ取り上げることにした。
 ちなみに、わたしは電子書籍で読んだのだが、わたしの読んだフォーマットは46文字×24行で、2巻は276ページある。それをわたしは333分かかって読んだと記録が残ってました。3巻目は同じフォーマットで277ページで、362分だったようです。そう、読むスピード自体はそれほど遅くないんだけど、途中で別の本を読んだりしてたので、結構時間がかかっちゃったな……。
 まあというわけで、まずは2巻目を今日、そして3巻目は明日、書こうと思う。そしてその第2巻はこちらの『FOUNDATION and EMPIRE』(日本語タイトル「銀河帝国興亡史(2) ファウンデーション対帝国」)であります。

 すでに基本的な世界観は、1巻目を書いた時に散々書いたので、もう短くまとめるが、今から数万年後の遠い未来、「帝国」が1万2千年の長きにわたって広大な銀河を統治していた。が、その長大な歴史は停滞をもたらし、崩壊が迫っていることを一人の男が警告を発する。その男の名は【ハリ・セルダン】。そしてセルダンは、人類の英知たる知識を保管・管理するために、【銀河百科事典第1財団】=【第1ファウンデーション】を、帝国の首都星【トランター】から遠く離れた辺境の星【ターミナス】に築き上げることに成功する(※第1巻時点ではほぼ謎に包まれているが、「セルダンは、銀河の反対側に第2ファウンデーションを設置した」ことも知られている)。その目的は、何もしないと、帝国滅亡後、人類は3万年にわたって無政府状態の闇に陥ることになるが、その3万年の闇を、1千年に縮めること、であり、そのためにファウンデーションを設立したわけである。セルダンの主張はセルダンが編み出した【心理歴史学】という、統計科学を用いた複雑な方程式によって数学的に導かれたもので、第1巻は、そこから300年にぐらいの間に起きた、3回の重大な【セルダン危機】=ファウンデーションに降りかかる重大なピンチ、を描いたものである。そしてラストでは、いよいよ帝国の滅亡間近、までが描かれていた。
 そして第2巻である。
 第1巻が5つの章からなり、それぞれの章の間には結構な時間経過があって、登場人物も移り変わっていくのが形式的な特徴であったが、今回の第2巻は、大きく分けて二つの章で構成されているという微妙な違いがあった。それでは、それぞれの章を簡単にまとめていくとしよう。
 <第1部:将軍>
 この第1部で描かれるのは、【帝国サイド】からの物語である。とある帝国の将軍が、「魔法使い」の噂を耳にし、【ファウンデーション】の存在を知り、帝国臣民としてファウンデーションの技術を奪うために長征を仕掛けてくるが、展開としてはファウンデーションVS帝国の戦争が勃発し、帝国有利で進むものの、最終的には帝国内の意志が統一されていない・つまらん勢力争い(?)といった状況を利用され、帝国はある意味勝手に破れ、1万2千年の歴史に幕が閉じられる、ということになる。これまたセルダンの計算通り!的な流れですな。
 主要人物は以下の通り。
 【ベル・リオーズ】:帝国の軍人(将軍・34歳)で、「帝国最後の臣民」と後に呼ばれることになる、なかなか頭のいい男。ドゥーセム・バーから聞いた「魔法使い」の話を確かめるために最初は単独遠征、そしてのちにVSファウンデーションの戦火を開くことに。実際のところ、全然悪者ではなく、むしろ、帝国に忠誠心の篤い真面目な男。可哀想な運命に……。
 【ドゥーセム・バー】:隠棲していた彼のもとにリオーズがやってくるところから物語が始まる。彼は第1巻ラストで、【ホバー・マロウ】と取引した【オナム・バー】が言っていた「6番目の息子」のことらしい。なお、どうやら時の経過としては、第1巻のラストから40年(か50年)が経っている模様。そしてカギとなる個人用フォース・フィールド発生機も、第1巻ラストでマロウが取引に使ったアレ、が50年を経て重要な役割を果たす。
 【クレオン2世】:帝国最後の皇帝。まったくファウンデーションのことを知らず、現状を分かっていないおじいちゃん。実際無能。
【ブロドリック】:クレオン2世の一番の寵臣。若き野心家。下賤の生まれのくせに可愛がられていて、と宮廷内で憎まれている。リオーズの遠征に皇帝名代として同行。しかしその野心をファウンデーション側に利用されてしまい……
 【ラサン・デヴァーズ】ファウンデーションの貿易商人。リオーズの艦隊に捕らえられ、ドゥーセムと出会い、かつて50年前にマロウと取引したオナム・バーの息子であることを知って、ドゥーセムが帝国に対して抱く憎悪を利用して、帝国打倒に協力する。そして、リオーズとブロドリックの関係に注目し、工作を始めるのだが……実質的にファウンデーションを救う一番の功労者になる。
 【セネット・フォレル】ファウンデーションの貿易商人。チョイ役と思いきや、どうやらデヴァーズを派遣した商人協会のお偉いさん、なのかな? 実は良くわかりませんでした。
 【モリ・ルーク軍曹】帝国の軍人。リオーズの忠実な部下だが、デヴァーズの看守として見張っている間に、デヴァーズからちょっとしたモノをもらったり話を聞いているうちに……

 <第2部:ザ・ミュール>
 どうやら帝国滅亡から80年が経過している時代が舞台。とうとう帝国は滅亡し、自由世界が広がる、かと思いきや、ついに【セルダン・プラン】に予定されていない突発事件が起こり、「プラン」崩壊の危機に陥るという超ヤバイお話。その、セルダンをもってして予期できなかったイレギュラー、それが【ザ・ミュール】と呼ばれる一人のミュータント(=超能力者みたいなもの)で、セルダンの「心理歴史学」が、あくまで総体としての人類の行方を計算したものであり、個人の動向を予知できない、という唯一の弱点を突いて、ファウンデーションは史上最大のピンチを迎える―――!!! というのがお話の筋。
 主な登場人物と地名は以下の通り。
 【ヘイヴン】:辺境の洞窟惑星
 【ターミナス】:第1ファウンデーションの母星
 【トランター】:旧帝国の首都星
 【カルガン】:保養地として有名な、リゾート惑星。ファウンデーション陣営の星だが、ミュールに(たった一つの戦闘もなく)征服され、ベイタとトランは新婚旅行を装って潜入する。
 【ベイタ】:ホバー・マロウの子孫で活動的な女子。24歳。歴史学専攻。ファウンデーション(ターミナス)出身。今回の主人公。セルダン危機が迫っていると考えている。なかなか賢く勇敢な女子。
 【トラン】:ベイタの夫。ヘイヴン出身。
 【フラン】:トランの父。59歳。貿易商人。事故により隻腕。ヘイヴンの商人の顔役的な存在。ファウンデーションのヘイヴン侵攻に不安を抱えているが、ここ1,2年、銀河に流れているミュールの噂に、ファウンデーションにミュールをぶつけることで有利な交渉ができるのでは、と考えている。
 【ランデュ】:トランの叔父。父の弟。
 【ハン・プリッチャー】:登場時は大尉。43歳。アナクレオン出身。ファウンデーション国防軍の秘密諜報員。非常に有能で「私の義務は国家に対するものであり上司に対するものではない」と言い切って無能な上司をぶん殴って軍を辞め、カルガンで小船員として働いていたが、ミュールの到来でカルガンが征服されたことをいち早くファウンデーションに報告した男。ベイタとトランの二人にカルガンで出会い、二人の脱出に手を貸す。が……のちにミュールに心理操作され、ミュール軍の大佐に(※第3巻では将軍として登場)。
 【インドバー市長】:現在のインドバーは三代目。初代インドバーは残忍かつ有能な市長で、市長職を世襲にした。2代目インドバーは残忍なだけの世襲市長。現在の三代目は残忍でも有能でもなく、生まれる場所を間違えた簿記係に過ぎない、と言われている。組織とお役所仕事が大好きな無能。
 【マグニフィコ】:ミュールに仕えていたという道化師。なんかちょっと良く分からない謎人物で、手足がひょろ長くその容貌も異様。そして唯一、ミュールの姿を見たことのある人間として彼の争奪戦が起こる。ベイタに懐き、ベイタにつき従うが、その正体はーーー多分誰でも、結構早い段階で正体に気付けると思う。わたしも想像した通りでラストはそれほど驚かなかった(※ただし、ラストのベイタの決断には超驚いた)。
 【エプリング・ミス】:第1ファウンデーションで唯一、事態を正確に洞察していた科学者。インドバー(三代目)市長にもずけずけモノが言える人物。ミュールの支配がファウンデーションを覆った後半、ベイタ・トラン・マグニフィコとともにターミナスを脱出し、ヘイヴンで一時避難したのちに、トランターへ。帝国の残骸と化した荒廃したトランターで、ミュールに唯一対抗できるのではないかと推測した【第2ファウンデーション】の謎をついに解明するが、その時、大変なことが起きる――!

 はーーもうきりがないのでこの辺にしておこうかな。とにかく、この第2巻での山場は間違いなく第2部の【ザ・ミュール】にあるといっていいだろう。一体全体、何者なのか。これがこの第2巻の最大の謎であろう。また、ターミナスがミュールによって占領、陥落する直前に出現したセルダンのホログラムも、これまですべて正確な予知のもとに、状況に合う「セルダン危機」に対する話をしていたのに、今回は全く予測がずれてしまったシーンも非常に印象深い。
 かくして、第2巻はミュールによるファウンデーション陥落と、ミュールの天敵、と思われる【第2ファウンデーション】の謎が示されて終わる。実に次が気になる終わり方で、果たして銀河はミュールによって支配されてしまうのか、それとも、ついに【第2ファウンデーション】が姿を現すのか、というドキドキな、2作目にふさわしいエンディングだとわたしは非常に感動?さえした。三部作モノはいっぱいあるけれど、これ以上ない「第2作目」のエンディングだと思うな。例えていうと、やっぱり、『帝国の逆襲』のエンディングに近いような気さえしますね。いやー、本当に面白かった!

 というわけで、結論。
 Isaac Asimov先生による『ファウンデーション』シリーズ第2巻、『FOUNDATION and EMPIRE』を読み終わったとき、わたしが真っ先に思ったのは、「2作目のエンディングとして完璧」という思いであった。本作はかなり時間軸も長いし、若干の冗長さもあるような気がするし、キャラクターも多いので、実は結構読みづらいかも、という気はする。しかし、ついに予言が外れた「セルダンプラン」と謎の「第2ファウンデーション」の存在をほのめかすエンディングは完璧であり、読み終えた瞬間に第3作目を読みだしたくなることは間違いないと思う。これは面白い! というわけで、明日は第3作目について書きます。以上。

↓ いやーーー実は第3作目も最高でした。詳しくは明日!

 もうだいぶ前の話で、たぶん去年の暮れの頃だったと思うが、本屋さんの店頭で、とある漫画のお試し版を読んで、へえ、これは面白いかも、と思った作品がある。書店店頭では、プロモーション動画を小さい液晶パネルで流していて、それを見て、へえ~?と思った作品なのだが、さっきちょっと探してみたら思いっきりその動画がYou Tubeにアップされていたので、まずはその動画を貼っておこう。

 そうです。かの有名なSF界のレジェンド、Isaac Asimov先生による『FOUNDATION』の完全漫画化、であるらしいことを知って、わたしは結構驚いた。どうやら(3)巻の発売が去年の12月だったんだな。なるほど。まあ、とにかく、それじゃあ買って読んでみるか、と思ったものの、すっかり電子書籍野郎に変身しているわたしは、とりあえずその場ですぐ買うことはせず、まずは電子書籍で買えるのかしら? ということを調べてみた。のだが、結論から言うと電子化されていないようだったので、ま、電子化されたら買うか……という忘却の彼方に消えてしまっていたのである。そもそも、版元はよくわからん小さな出版社のようで、連載媒体は持っていないみたいなので、まあ描き下ろし単行本ということなんだろう。出版社というより編プロ的なのかな。よくわからん。
 というわけで、わたしは全くこの作品のことを忘れていたのだが、つい先日、わたしの愛用する電子書籍販売サイトBOOK☆WALKERにて、還元率の高いフェアがあった時になんかおもしろそうなのはねえかな~、と、大好きな早川書房の作品をあさっている時に、原作小説であるAsimov先生の『FOUNDATION』が売っているのを見かけ、よし、じゃあまず、原作小説を読もう!と買ってみたのである。ええ、実はわたし、原作未読なもので……。てなわけで、さっそく読みはじめた。

 結論から言うと、やっぱり面白い! のは間違いないのだが、キャラクターは多いし時間軸としても非常に長い期間のお話なので、こりゃあちょっと、最初からちゃんとキャラとか物語をメモっとかないと、後で訳が分からなくなるかもな……と思ったのである。
 というわけで、もはやわたしのBlog恒例のキャラ紹介というか、ざっと筋をまとめておこうと思います。まず、わたしが買ったのは最初の三部作、のようで、今日取り上げるのは一番最初の(1)巻である。そしてその(1)巻は、全5章で構成されていて、それぞれ前の章の30年後、とか、かなり時間が経過して登場キャラクターも入れ替わっていく、けど、肝心のキーキャラはそれぞれの時代で伝説的に語られる、みたいなつながりがあって、まさしく年代記的なお話でありました。なので、各章ごとにちょっとまとめてみるか。
 【本編の説明の前に、時代背景について】
 本作で語られる物語は、どうやら遠い未来のお話のようで、銀河は巨大な帝国が統べている。膨大な数の人類が銀河の隅々まで広がって生きているらしい。そして、もはや「人類の起源」がどの惑星であったか、すらもう忘れ去られていて、中にはウチが人類の起源たる聖なる惑星じゃ、と言い張っている星もあるみたい。ちなみに、銀河帝国は1万2千年続いているらしく、総人口はゼロが18個、だそうで、1京、ってことかな? 1万兆かな? もう良くわからんぐらい多いってことですな。
 【第1部:心理歴史学者】
 この第1部で語られるのは、本作の最大の(?)ポイントである「心理歴史学」についてである。それは、人間集団の行動を、一定の社会的・経済的刺激に対してどう反応するか、について心理学的(?)に究明することで、未来を予測する(=計算する)ことを可能にした統計科学の学問で、まあちょっと説明が難しいのだが、特徴的なのは、「個々人の動き」や未来は予測不可能なんだけれど、その総体である「人類」の進む(であろう)道は計算できる、という点がポイントだ。
 で、この第1部では、「心理歴史学」の開祖である【ハリ・セルダン】というおじいちゃんが銀河帝国の首都星である【トランター】という星にいて、その助手として就職が決まった【ガール・ドーニック】という若者がトランターにやってくるところから始まる。しかし、セルダン博士は、その心理的歴史学によって、銀河帝国の滅亡を予言していて、公安委員会ににらまれており、セルダン博士も、そしてドーニック君も到着して数日後には逮捕されてしまう。ちなみに逮捕されることも全てセルダン博士の計算通りで、実はセルダン博士は、とあるプロジェクトを18年かけて計画し、とうとう実行の時が来た、という話になる。そして尋問に掛けられるのだが、そこでのセルダン博士の話が非常に面白い。曰く、人々の心理歴史学的な流れは、極めて強力な慣性をもっているそうで、それを止めるのは膨大なエネルギーが必要になる(=要するに止められない)、銀河帝国の衰退と滅亡は確実、だが、その後の無政府状態に陥る期間は、3万年続くはずで、その3万年ののちに「第2銀河帝国」が勃興するであろう。しかし、自分のプロジェクトを実行するならば、その3万年の闇を1000年まで短縮することが可能になる。突進してくる巨大な出来事の塊を、ほんのわずか逸らす。それがプロジェクトの目的だ、ということだそうだ。そしてそのためにやることは、「人類の知恵を救う」ことで、社会の崩壊とともに科学知識も断片に分裂・消滅してしまうので、それを防ぐために「あらゆる知識の集大成=銀河百科事典」を作る、それがプロジェクトの内容だとセルダン博士は語るのであります。これは面白い考えですなあ!
 かくして、帝国の官吏たちはこのおっさん何言ってんだ? と思いつつも、じゃあ銀河の片隅で事典編纂でもやってな、と、世間を騒がせた罪でセルダン博士を【ターミナス】という辺境の惑星に追放することを決定する。しかし―――実はセルダン博士はそれすらも予測していて、ターミナスへの追放も博士が仕組んでいたのであった―――という感じで第1部は終わる。
 【第2部:百科事典編纂者】
 ターミナスへ移住させられた、第2世代(?)の【百科事典第1財団=第1ファウンデーション】の物語。移住開始から50年が経過しており、当然セルダン博士はとっくに死んでいる。そしてターミナスという惑星には金属鉱物が一切ない星として描かれており、要するに自給自足できない星であるというのが一つポイントになっている。そして、現在【アナクレオン】王国と緊張関係にあるらしい。なお、銀河帝国はまだ存在していて、緩やかに滅亡への道を進んでいるが、だれ一人気づいておらず、またターミナスも銀河の「辺境」にある=帝国からすっげえ遠い、こともポイント。【アナクレオン】【スミルノ】【コノム】【ダリバ】の4つ辺境星系を「4王国」と呼ぶらしい。
 この第2部での主人公は【サルヴァー・ハーディン】という男で、年齢ははっきりわからないけどまだ青年で、ターミナス市長に就任している頭のいい男である。ターミナスの運営は、基本的に「百科事典委員会の理事会」が権限を持っているのだが、アナクレオンとの緊張関係に、【ルイズ・ピレンヌ】というおっさんを理事長とする理事会は全く対応できず、アナクレオンの全権大使【アンセルム・オー・ロドリック】がターミナスを訪れ、軍事基地設置を要求してきた時も、ほぼ無力。理事会は、あくまで「皇帝直轄地」でありファウンデーションは国家公認の科学機関として要求をつっぱねようとするが、まあそんな主張は通りませんわな。この交渉でハーディンは、既にアナクレオンが【原子力経済】を持っていないことを確信する。そうなんです。なぜか、この物語では「原子力」が重要なキーになっているのです。どうやらこの世界ではあらゆる動力として原子力が使われていて(超小型の原子炉なんかもある)、原子力を持っているかどうか、が文明や軍事力において大きなアドバンテージになっているらしい。持っていても、原理的にきちんと理解している人間は少なく、ロストテクノロジーというか、オーパーツ的な扱いになっているのが非常に興味深い。もちろん、ターミナスの科学者たちはきちんと技術継承しているので、その点がターミナスの優位点にもなっている。
 で、この「アナクレオン危機」と呼ばれるターミナスのピンチも、実はセルダン博士によって予見されていて、ターミナス50周年イベントに、セルダン博士はホログラムで登場し、ついにファウンデーションの真相を告げるに至る。まず第一に、「百科事典財団=ファウンデーション」とは皇帝から勅許状を引き出し、必要な人員10万人を集めるための欺瞞であり、全て計算通りに進んでいる、そして、今後も危機に遭遇するが、必然的に一つのコースをたどることになる、と。
 第2部は、この秘密の暴露で終了する。事態がどのように展開したのかが語られずまま、このセルダン博士のホログラムによって理事会のおっさんたちが、くそっ!ハーディンの言うとおりだったのか……としぶしぶ認めて終わりだ。そして第3部でどうなったのかが分かるようになっている。
 【第3部:市長】
 いきなり第2部の終わりから30年が経過している。ハーディンはその30年間市長として、ある意味独裁してきた模様。そして、前回の「アナクレオン危機=第1セルダン危機」がどのようにクリアされ、そして今また危機に陥っている状況が描かれる。あ、冒頭にこの時のハーディンの年齢が62歳って書いてあった。てことは第2部では32歳だったってことか。なるほど。
 この第3部では、ハーディンと次の世代の【セフ・サーマック】という青年とのやり取りがメインのお話になる。そしてその話の中で、ハーディンがどのようにこの30年をかじ取りしてきたが分かる仕掛けになっている。サーマック青年は、ハーディンの30年間を否定し、辞任を要求するのだが、要するに彼の主張は、ハーディンが30年行ってきた、アナクレオンへの原子力技術の供与を止めろ、そんなのは相手を強大にするだけだ、今こそターミナスは自身を武装し、先制攻撃をもって戦いに臨むべきだ、というものだ。
 つまりハーディンは、どうやらアナクレオンとの危機を、ターミナスから歩み寄ることで回避し、それを軟弱な宥和政策だとサーマック青年は怒っているわけである。しかし! 実はハーディンの30年間には隠された意図があったのだ――!! という展開で、実に面白い!
 結論から言うと、ハーディンは、技術供与はしていたけれど、「銀河霊」というものを設定して、原子力技術を宗教にまで昇華させているのだ。特殊な技能は「聖職者」だけが扱えるものとし(ちなみに聖職者も、経験的に扱えるだけで、全然技術者ではない)、神聖なものという仮面もかぶせており、実は全然技術供与はしておらず(その結果としての武器などは与えていても)、技術自体はターミナスで独占されていることが判明する。そして、ターミナスに害成すものは「銀河霊」の怒りに触れる、的な迷信をアナクレオン人たちの間に敷衍させることによって、戦争一歩手前まで関係悪化した際に、アナクレオン人の平民兵士たち自身に反乱を起こさせ、ターミナスを守り、おまけにアナクレオン王国を乗っ取ることにまで成功してしまうのである。要するに、宗教家による洗脳、ですな。ハーディンの座右の銘「暴力は無能力者の最期の避難所である」が明確になる最後の大逆転が超爽快です。さっすがハーディンさん!カッコイイ!
 この第3部では、アナクレオン王の【レオポルド王】という若者と、その叔父であるキレ者の【ウェニス】という男がハーディンの前に立ちふさがる脅威として登場するが、レオポルドは既に洗脳にかかっているので、「しかし……心配だなあ……何か冒涜的な感じがするのだ……ファウンデーションを攻撃するなんて……」という調子なので、まあ要するに、全て計算通り!ということになってしまう。
 こうして、「第2アナクレオン危機=第2セルダン危機」も回避されるが、第3部のラストは再び30年ぶりに起動したハリ・セルダン博士のホログラムで終わる。そしてまたもやすべて、セルダン博士が80年前に計算した通りであることが判明するが、セルダン博士のホログラムは、消える前に2つ、重要なことを語る。ひとつは、これでやっとファウンデーションに対する攻撃をそらすことはできた、けれど、「こちらから攻撃」するには全く十分でないこと。そしてもう一つが、「銀河系の反対側に、もうひとつのファウンデーションが同じ80年前に設立されていること」を忘れるな……というメッセージだ。ホログラムは、ああしろ、こうしろという策は一切与えてくれない。いわば答え合わせ的な存在にすぎず、ハーディンも、まあ、生きてる間はもう現れないだろうな、やれやれ、といったところで第3部は終わる。
 【第4部:貿易商人】
 この第4部は【リマー・ポエニッツ】という宇宙貿易船の船長の元に、ファウンデーションから一通の指令が届くところから始まる。曰く、惑星【アスコーン】に収監された仲間の【エスケル・ゴロヴ】の身柄を確保せよ、という指令だった。実は二人とも、商人という表の身分に隠れて、ファウンデーションのエージェントでもあって、なにやらファウンデーションの秘密の活動があるらしいことがほのめかされる。
 どうも時間的にどのくらいたったお話なのか良くわからないが、どうやらすでにファウンデーションは「4王国」はもう支配下に置いているらしいが、この【アスコーン】はまだそうではなく、原子力を売りつけることで「銀河霊」の宗教的コントロールに置こうとしているらしい。で、アスコーンが欲しいのは、金、GOLDのAuだ。それをポエニッツは良くわからない錬金術原子力マシーンであっさり量産できるようにしてあげるのだが、アスコーンの太守は、邪教のまがい物として受け付けない。そこで、ポエニッツは、太守の後継を狙う若い【ファール】に目を付け、まんまと罠にかけてマシーンを売りつけることに成功し、アスコーンの原子力化=ファウンデーションの技術なしにはいられない状態にすることに成功するのだった―――てな感じで幕を閉じる。
 【第5部:豪商】
 この第5部の主人公は、【スミルノ】出身の【ホバー・マロウ】という男だ。そしてマロウが、現市長の秘書【ジョレイン・サット】から一つの極秘任務を受けるところから話は始まる。曰く、ファウンデーションの船が3隻、【コレル共和国】星域で消息を絶った。原子力で武装している船が姿を消す、それはコレルも原子力テクノロジーを保有しているのではないか。その調査に当たれ、というもので、マロウはスミルノ出身であるため、どうも生粋のファウンデーション人として信用されていないような雰囲気である(※どうやらすでに4王国は「ファウンデーション協定」を調印し、既に実態はなくなっている模様。よって4王国のひとつであるスミルノも、とっくにファウンデーション化されているため、そういった旧4王国出身者はかなりいるらしい)。あ、時間経過が書いてあった。どうやら、第3部の「第2セルダン危機」から75年経過しているのかな。つまりファウンデーション設立から155年、ってことか。なるほど。で、サットは、このファウンデーション以外に原子力科学を持つ敵が現れたのではないか、ということに対して、これは「第3のセルダン危機」なのではないかと心配するが、一方のマロウも、その危機を感じ取っていた。そしてコレルへ向かったマロウは、サットに仕組まれた罠をかいくぐり(罠であったことはだいぶ後で判明)、コレルの主席(コムドー)【アスパー・アーゴ】と「自由貿易」を行う提案をする。ここで、これまでファウンデーションが「宗教」を武器に勢力を増してきた方針から、「経済」によって影響力を強めようという方針に変わる転換期を迎える。第4部で語られたアスコーンを引き合いに出しながら、今や完全にファウンデーションの組織の一員に成り下がったようなことは、まっぴらごめんだ!と主張するアスパーに対して、マロウはあっさり、わたしは主任貿易商であり、金がわたしの宗教だと言ってのけるのである。「宗教はわたしの利益を削るものだと、はっきり申し上げておきます」と言い切ることでマロウはアスパーの信頼を得る。しかし、同時にマロウは、アスパーの護衛が持っている銃に気が付く。そこには、「宇宙船に太陽」の紋章が!それはまさしく「銀河帝国」の紋章であり、コレル共和国にも「原子力科学」が残っていることを知るが、調べてみるとそれはもう時代遅れなもので、技術継承もされておらず、ただ在るだけで別に脅威にならないことを確認し、マロウはファウンデーションへ帰還する。そしてマロウは裁判にかけられるがサットの陰謀を暴いて失脚させ、見事大逆転し、まんまと市長の座を手に入れる。が、その後、コレルと戦争が始まってしまう。それは、コレルが得たファウンデーションの製品を、買うのではなくてもう星ごと奪っちゃえばいいじゃん、という考えから始められたもので、失脚していたサットは、それみたことか、とマロウに告げる。だから言っただろ、貿易じゃダメなんだよ、宗教じゃないと。そうサットはマロウに政策変換を迫るが、マロウは聞き入れない。「いいかい、これはセルダン危機だ。我々はそれに直面しているのだ。この危機は、その時どきに入手可能になった力で解決されるはずなんだ。今の場合は、貿易だ! まあ見てろよ、コレルは我々が供給した機器に依存しまくっている。戦争でその供給が止まったら……戦争はやむさ」みたいなことを言って、結局その通りになるわけで、大変痛快でありますね。
 最後に、マロウはこんなことを言う。ファウンデーションの本拠星であるターミナスは、金属資源がない。だから、原子炉も親指サイズまで小さくなくてはならなかった。そのための新技術を開発しなくてはならなかった。それは帝国が追従できない技術だ。なぜなら、帝国はもはや真に生命力のある化学的進歩をすることができる段階を超え、退化してしまっているからだ。だから、彼らは艦艇を丸ごと守るのに十分な原子力フィールドを作れたけれど、一人の人間を守るフィールドはついに作れなかった。おまけにもはや自分の巨大技術すら理解できなくなっている。このマロウの演説に関しては、訳者あとがきで、まるで戦後日本の復活劇のようだ、と評されている。本書が書かれたのは、1942年から49年にかけて、つまり第2次大戦の真っただ中の期間であり、訳者Asimov先生の先見の明を大層ほめたたえているわけだが、まあ、なんというか、人類は1万2千年経ってもあまり変わらないようですな。私は本書を読んで、そんなことを深く感じました。

 はーーーー長くなっちまった……これでも大分はしょったのだが……まあ、とりあえず大変面白かったので、続巻が実に楽しみであります。サブタイトルからすると、いよいよVS帝国との闘いかしら、と非常にワクワクしますな。最後に、本作の一番最後のマロウのセリフを引用して終わりにしよう。
「未来など、おれの知ったことか? セルダンが予見して準備してあるに違いない。今、宗教の力が死んだように、将来、金の力がなくなった時にまた別の危機が発生するだろう。今日のおれがそのひとつを解決したように、それらの新しい問題は、おれの後継者に解決させるがいい」
 このセリフは、無責任では全くないと思う。頭脳を駆使して戦った男の本音として、わたしは非常に気に入りました。
※2017/06/29追記;昨日この記事を書いた翌日の今日、驚きのニュースを見た。なんとこの『FOUNDATION』が映像化されるんですって! おおっと! まさかこれも、心理歴史学的に計算通りなのか!? とビビったっすw →http://tv.eiga.com/news/20170629/1/


 というわけで、もういい加減にして結論。
 ふとしたきっかけで購入し、読み始めたIsaac Asimov先生による伝説的名作『FOUNDATION』を読んでみたところ、これは非常に面白かった。確かに、『STAR WARS』や『銀河英雄伝説』の元祖といわれるだけある凄いスケールで、続巻を読むのが大変楽しみです。そして、今後きっと出てくるであろう「銀河の反対側にあるもう一つのファウンデーション」の動向も大変気になりますな! ただ一つだけ、翻訳がやっぱりちょっと古いんすよね……なので若干読みにくいかもしれないけど、めげずに読み進めたいと存じます。以上。

↓ よーし、次は(2)巻に突入だ!

 先日、わたしの愛する電子書籍販売サイトBOOK☆WALKERにて、還元率の高いフェアをやっているときに、早川書房で絞り込んで、何か面白そうな小説はねえかなあ、と渉猟していたのだが、ふとそのタイトルに魅かれて、あらすじをチェックしてみたところ、なかなか面白そうだったので買った本がある。
 日本語タイトルは『幸せなひとりぼっち』 といい、原題はスウェーデン語で『En man som heter Ove』というらしい。意味としては、あとがきによれば「オーヴェという名の男」ということらしいが、ちょっと調べてみたらなんと映画も去年公開されていたそうで、わたしは全然知らなかったけれど、原作も映画も本国スウェーデンでは大ヒットした作品だそうだ。というわけで、へえ、そうなんだ、と思いつつ、さっそく読み始めてみた。
幸せなひとりぼっち (ハヤカワ文庫NV)
フレドリック バックマン
早川書房
2016-10-21

 そして、のっけから結論を言うと、わたしは猛烈に感動してしまい、これはもっともっと売れてほしい!と強く思う次第である。よって今回は、大絶賛の方向で本書の内容をまとめつつ、万人にお勧めしようと思う。
 たぶん、まずは映画の予告編を見てもらった方が、どんなお話か伝わるかもしれないので、こちらをさっそく貼っておこう。

 ん……んん……ちょっとアレだなあ、自分で貼り付けておいてなんですが、ズバリ、原作の方が面白い、かもしれないなあ……原作を読んだ今、上記予告で描かれるシーンがどういうシーンか、分かるところと分からんところがあるのはちょっと驚いた。映画は原作通りじゃないのかもしれない。まいいや。ちょっと、まずは簡単に物語を紹介しよう。
 主人公・オーヴェは59歳。妻に先立たれ、会社を「早期退職」という名のリストラで放り出されたおっさんである。彼は、いわゆる「頑固おやじ」で、周囲には相当煙たがられている。それは、オーヴェには明確な「自分ルール」がいっぱいあって、それを忠実に守って生きているためで、決して妥協しない、口論上等、超けんか腰な、はたから見ると恐ろしくやっかいな、なるべく関わり合いになりたくないおっさんだ。ただ、しつこいけれど何度でも言うが、オーヴェにはオーヴェの理論があって、自分がまともであって、周りがおかしい、と本人は思っている。
 そんな彼が、妻を亡くし、仕事を失くした今、実行しようとしていることは、ズバリ自殺だ。もはや生きている理由はない。そして、愛する妻のもとへ行きたい。ならば死ぬだけ、というわけで、彼はすべての準備をきっちり、まさに一部の隙もないほど死後のことを手紙にしたため、妻の好きだったスーツを着用し、死のうとする――が、どういうわけかその度に邪魔が入り、ことごとく失敗する。例えば、さて、準備OK。さ、死ぬか、と思った矢先に、きっちり手入れした庭にへったクソな運転で車が入って来たり、よーしじゃあ、ガレージで車の中にマフラーから排ガス入れて死のう、とすると、ガンガンガンとガレージを叩く音がして誰かがやって来るし、別の日、じゃ、しょうがねえ、電車に飛び込むか、と思って駅へ行けば、後はもう轢かれるだけ、というタイミングで、ホームで卒中を起こしてぶっ倒れる奴がいて、思わず助けちゃってヒーローとして新聞記者がやってくるし、とにかくもう、ことごとく、ああもう!なんなんだよ! 死なせてくれよ! という展開が繰り広げられる。
 しかし、そんな出来事が続くうちに、煙たがっていた周りの人々は、あれ?このおっさん、実はすげえんじゃね? 何でも直せちゃうし、何でも超詳しいし、と気が付いて、どんどんオーヴェを頼りとし、オーヴェもまた、この馬鹿もんが!と怒鳴りつけながらも、どうにも放っておけない。それは、亡き妻が生きていたなら、絶対に、「あなた、助けてあげなさいな」と言ったに決まっているからで、死んでからあの世で妻に再会した時に、大好きだった笑顔を向けてくれないのではないかと思ってしまうからだ。
 とまあ、そういうわけで、本作は、超偏屈親父の生き様と、それに感化されていく周りの優しい人々を描いた物語だ。形式としては、短いエピソードが連なる短編連作(全39章からなる)と言ってもいいかもしれないが、その短いエピソードが非常に濃度が高くて、実に毎回面白い。そして作中では、時折オーヴェの生い立ちから妻との出会いも描かれ、それがなかなか美しく心に迫るものがあって、とても読後感は爽やかだ。
 実はわたしは、最初のうちは、オーヴェというおっさんが全く好きになれなかった。ただのイカレたクレーマー親父か? 老害もいい加減にしとけよな……みたいなヒドイ感想を持ってしまい、最後まで読み通せるのか心配になったほどだ。
 ところがですよ。最初の1/4ぐらいからもう、あれっ? このオヤジ……なんだよ、面白いな……と思い始め、ついにはわたしもオーヴェに好感を持ち、ラストはもう泣ける展開で、実に楽しめたのである。
 思うに、わたしはオーヴェに自分を見たのではなかろうか。59歳なんて、日本ではまだ全然おじいさんじゃないすわな。まだ普通に働いていている人の方が圧倒的多数だろうし。でも、オーヴェのように、「ひとりぼっち」でいる男は、ごまんと日本にもいると思う。そして実に残念なことに、まさしくわたし自身もそうなりそうな気配濃厚だ。そして、さらに残念極まりないことは、オーヴェをものすごく幸せでうらやましい、とさえ思ってしまったのだ。オレ……絶対こんな幸せな人生を生きられねえだろうな……と思ってしまい、自分が情けなく悲しくなってしまったのである。はあ……まったくもう、いやになるわ……何もかも。わたしも、きっと相当偏屈な親父と思われているだろうし、わたしの若者を見る目は、まさしくオーヴェ的だ。たぶん、わたしのことを知っている人がこの本を読んだら、マジでわたしのことを思い出すんじゃないかってくらい、十数年後の自分が描かれているようにさえ思った。やっばいなあ……どうしたらいいんでしょう……。
 ま、もはやわたしの人生はどうにもならんので、物語の各キャラクターを自分用備忘録としてメモしておいて、記憶が失われたときのヒントを残しておこう。
 ◆オーヴェ&ソーニャ夫妻
 オーヴェは、幼少期に母を喪い、少年期に父を喪った孤独な男。以後、黙々と働き続け、ひどい扱いを受けて過ごす。そのせいで、役所は大嫌いだし人も信用しない。作中の言葉を引用すると「人を信用しないただの偏屈屋だと一部の人から思われていることは、オーヴェもよくわかっていた。だがはっきり言ってそれは、信用すべき理由を他人から示されたことがいまだかつてなかったせいだ。」そんな彼は、一部の人からは、超真面目に仕事をきっちりやる男として評価を受けていたし、気に入られてもいたので、何とか最低限の暮らしはできていたし、いろいろな技能を教えてもらって生きていたのだが、青年期にソーニャに出会い、恋をする。この恋がまた不器用でイイんすよねえ……。ちなみに、オーヴェは頑固に「SAAB」以外の車は乗らないし認めない。同じスウェーデンのVOLVOもダメ。BMWやAUDIなんてありえない。トヨタ車なんておもちゃ同然。フランスのルノーを買おうなんて気が狂ってるし、韓国のヒュンダイはもう論中の論外という持論を持つ。このあたりの車の話は、車好きのわたしには大変笑えるポイントでした。
 そして妻のソーニャは、対照的に明るく社交的で超美人。周りからは、なんでまたあんな男と? と反対もされていたのだが、ソーニャはオーヴェの、「正義、公正、勤勉な労働、正しいものが正しくある世界、それを守ることでメダルや卒業証書や誉め言葉がもらえるわけではないが、それが物事のあるべき姿だという理由で、信念を貫く」姿に惚れ、「そうした男がもうあまりいないことを、ソーニャはちゃんと理解していた。だからこそ、この男をしっかりつかんだ」のだそうです。まったく、世の女子たちもこういう男を見る目を養っていただきたいものですよ。
 しかし、こんな幸せな二人も大変な不幸に襲われる。妊娠中に事故に遭い、子どもは流れソーニャは一生を車椅子となってしまう。幼少期からの辛い暮らしやこの事故によって、オーヴェは完全に神を憎悪する男になってしまうが、しかしそれでもソーニャは明るく楽しい女性だった。先生として数多くの生徒を育て、「ねえ、オーヴェ、神さまはわたしたちから子供を奪ったわ。でも、千人ものほかの子供を与えてくれた」と言うぐらい、いい先生として晩年まで過ごした。ほんと、ソーニャに関する記述は非常に泣けるイイ話が多い。
 ◆パトリック&パルヴァネ夫婦&七歳児&三歳児(ナサニン)の姉妹
 オーヴェのお向かいに引っ越してきた一家。まず夫のパトリックはかなり呑気な男で、極めて不器用かつスットロイ。車の運転も絶望的にヘタ(愛車はどうもトヨタ・プリウスらしい)。ちなみに名前が判明するのは結構あとの方で、ずっとオーヴェは「うすのろ」と呼んでいた。序盤で、オーヴェから梯子を借りて家の窓の修理をしようとして転落、以後、ずっと松葉杖のまさしくうすのろだが、性格は穏やかなイイ奴。そして妻のパルヴァネも、そんな夫にイラついていて、オーヴェに車を入れ直してもらったことから(一方的に)仲良くなる。イランからの移民。かなりオーヴェと気が合う。オーヴェに車の運転を習う。オーヴェが怒鳴っても負けない気合があって、オーヴェが認める、ほとんど唯一の人。妊娠中。ラスト近くで三人目の子を出産します。
 で、この夫婦の子供が二人の姉妹で、上の子が通称「七歳児」。名前が出てきたか全然覚えにない。ずっと七歳児と呼ばれている。おしゃまな子で、偏屈なオーヴェを最初のうちは嫌っているが、徐々にその心も溶けていき、最後はもう、かなり泣かせるとってもいい子。そして妹の通称「三歳児」はちゃんと「ナサニン」という名前が出てくる。この子は三歳児らしい天真爛漫なかわいい子で、最初からかなりオーヴェが大好き。この子がまたかわいいんすよ……。
 ◆猫
 名前のない猫。オーヴェの家の前で傷だらけで雪の中で半分凍えていたところを、オーヴェ&ご近所のみんなに助けられる。ちなみにオーヴェは全く猫が好きではないけれど、ソーニャが猫好きだったし、パルヴァネ達もうるさいので介抱してあげただけ、と本人は思っている。ちなみにその時、パトリックはネコアレルギーで病院行き。本当に使えないうすのろですよ。(間違えた!)猫アレルギーはイミーだ。オレの腹で温めよう!と言ってくれたはいいけど猫アレルギーで発疹ができちゃうんだった。なお、この猫は非常にオーヴェに似た、確固たる意志を持っているようで、実にその似た者同士振りが笑いを誘う重要キャラ。
 ◆ルネ&アニタ夫婦
 オーヴェ&ソーニャと40年前の同じころに新興住宅地に引っ越してきた夫婦。ルネは、昔はオーヴェの数少ない友の一人だったが、とある出来事がきっかけで仲は決裂、以後数十年、不倶戴天の敵として数々のご近所バトルを戦ってきたが、数年前からアルツハイマーを患い、戦線離脱。オーヴェはそのことが何気に淋しいと思っている。車はVOLVO派で、SAAB派のオーヴェとは何かと対立していたが、ある日BMWを買ったことで完全にその溝は埋まらないものに。日本でも、トヨタ派、日産派の、それ以外を認めようとしないおっさんっていますよね。この車の話はとても面白い。
 そしてアニタは、ずっとソーニャの一番の友人だった優しい女性だが、現在、体が弱り、ルネの介護も難しくなってきていて、在宅介護をちょっと申請してみたところ、あなたに介護能力なし、とお役所に判定されてしまって、ルネをホームに入れるよう勧告されてしまっている。このお役所バトルも本筋の一つ。しかし、福祉先進国として有名なスウェーデンも、こういうやりすぎ福祉というか、おせっかいともいえるお優しい現実があるんだなあ、と勉強になった。
 ◆アドリアン
 郵便配達員。郵便配達だけじゃ収入が心もとないので、カフェでバイトもしている。ゆとり青年。もともと、彼女の自転車を直してやろうと、自転車放置禁止の場所に自転車を置いていたことで、オーヴェに説教を喰らうが、その自転車をオーヴェが直す手伝いをしたことで急速に「オーヴェさんすげえっす!」と懐いてくる。実は、ソーニャの元教え子であり、オーヴェはそれを知って、このガキに冷たくしたらソーニャが怒るだろうな、と思って、手助けしてやっただけ。最初はルノー車を買おうとしていたけど結局トヨタ車を買った。オーヴェ的には、ルノーやヒュンダイに比べれば、まだ許せるみたい。
 ◆ミルサド
 アドリアンのバイトするカフェの店員。ゲイ。そのことを父親に言えずずっと苦しんでいる。オーヴェは、お前……あっちの人間か? という反応で、だからどうした、と特に差別意識はないようで、そのあけっぴろげな質問にミルサドはオーヴェを信頼し、後にカミングアウトするに至る。
 ◆アメル
 ミルサドの父。カフェオーナー。息子がゲイであることを知って大激怒。ミルサドを家から追い出す(そしてミルサドはしばらくオーヴェの家に居候する。オーヴェはうちはホテルじゃねえ!と激怒するもちゃんと泊めてやる)。しかし、オーヴェがカフェにやって来て、めったに飲まないウイスキーをアメルと二人で吞み、男同士の話し合いをすることでやっとアメルの心に息子を理解しようとする気持ちが芽生える。
 ◆イミー
 オーヴェのご近所に母親と一緒に住む、汗っかきのデブ。ITオタク。アプリ開発者。凍えた猫をその腹で温めてやる活躍を見せる。だけど猫アレルギーで病院行き。笑っちゃった。また、七歳児への贈り物(iPad)の買い物にも付き合ってくれたり、かなりイイ奴。後にミルサドと同性婚を挙げる。
 ◆アンデッシュ
 オーヴェのご近所さんの一人。オーヴェの家の前でいつも小便をする小さいわんこを連れた、通称「金髪の棒っきれ」というヒステリックな女と付き合っている。Audiに乗る「かっこつけ」と呼ばれていた。しかし女が「あの偏屈じじい、あたしの犬のことを「毛皮のブーツ」なんていうのよ、キ―――ッ!!!」と怒った時に、「毛皮のブーツ、最高じゃん、わっはっは!!」と大爆笑したことで破局。以来、オーヴェに好意を抱いたらしい。トレーラー会社経営で、ラスト近くでちょっとした活躍をする。
 ◆レーナ
 新聞記者。偶然オーヴェが駅で助けた男の話を聞いて、取材にやって来る。オーヴェとしてはずっと相手にしていなかったけれど、最終お役所バトルで活躍。のちにアンデッシュと結ばれる。

  とまあ、こんなキャラクター達が見せる、とても暖かいお話で、読後感はとても爽やかだ。今、ふと思ったけれど、そういえばこの物語は、なんとなく有川浩先生の『三匹のおっさん』に通じるものがあるような気がする。TVドラマも3シーズンまで作られた人気作なので、ご存知の方も多いだろう。そして、『三匹のおっさん』が人気になるこの日本においては、本作『幸せなひとりぼっち』も、大いに受け入れられる素地はあるのではなかろうか。ぜひ、ぜひ読んでいただきいたいとわたしは心から願います。最高でした。
 最後に、作家について備忘録としてまとめておくと、日本語で読める記事がインターネッツ上にほとんどないので良くわからないのだが、あとがきに結構詳しく書いてあった。なんでも、元々は雑誌などのライター出身で、ブロガーとして人気者になった人だそうだ。そのブログで人気を集めたのが、偏屈で頑固なおっさんの話をオーヴェという架空のキャラにのせて面白おかしく書いた記事だったんですって。で、その面白ブログがウケて、小説に仕立て上げたのが本作、ということらしい。2012年に発売になったらしいですな。へえ~。そして人口990万のスウェーデンにおいて80万部売れ、全世界でも注目されたんですと。そうか、スウェーデンって、日本の人口の1/10もいないんだ……てことは日本の感覚で言えば数百万部ってことか。それはすごいや。本作の後にも、年1作のペースで作品を発表しているそうで、他の作品も読んでみたいですな。宝塚に遠征した新幹線内で、いつもわたしはグースカ寝てしまうけれど、今回はずっとこの作品を読んでいました。いやー、ホント楽しかったよ。


 というわけで、結論。
 ふとしたきっかけで読んでみたスウェーデンの小説『幸せなひとりぼっち』という作品だが、最初のとっかかりは、若干イラッとするような、嫌なおっさんの図が描かれるけれど、まあとにかく読み進めてみてくださいよ。きっと、いつのまにか、この超偏屈なオーヴェというおっさんが好きになっていると思います。 つーかですね、やっぱり映画版も観ないとダメかなあ……先ほど調べたところでは、来週から新宿で上映があるみたいなんだよな……行くしかねえか……。よし、観に行こう!決めた! 以上。

↓ なるほど、英語版はタイトルがそのまんますね。邦題の『幸せなひとりぼっち』。読み終わった今思うと、なかなかいいタイトルじゃあないですか。。
A Man Called Ove: A Novel
Fredrik Backman
Washington Square Press
2015-05-05

 

 先日、わたしが愛用している電子書籍販売サイトBOOK☆WALKERにて大きなフェアがあり、買った電子書籍の値段の40~50%をコインバックする的なフェア(会員ランクによって返還率はまちまち)だったので、よーし、ごっそり買ってやるぜ!! と鼻息荒く、品定めをしていたわけだが、そういう時は普段はちょっと高くて気が引けるようなハードカバー単行本や、漫画のシリーズ一気買いなどをするのが、大人のたしなみである。ま、洋服バーゲンの時なんかも、普段手が出ない高いモノを買う、のが定石ですな。
 そんな中、わたしが大好きな早川書房から出ている翻訳モノで、なにか目ぼしいものはないかしら……と探していて目に留まったのが、ドイツミステリーの『プランD』という作品である。
プランD
ジーモン・ウルバン
早川書房
2016-06-09

 今年の初めに、「壁」によって分断されたベルリンを舞台とした映画『BRIDGE OF SPIES』のレビューをこのBlogで書いた時にも記したが、わたしは大学でドイツ語を専攻していて、おまけに1989年当時まさしく大学生だったわけで、「ベルリンの壁」の崩壊はリアルタイムで体験した世代だ。あの時は、当時わたしの周りにいた西ドイツ人の教授(おっさん×2+おばちゃん)も、スイス人の非常勤講師(綺麗な若い女子)も、オーストリア人の若い講師(冴えないあんちゃん)も、ドイツ語を母国語とするみんなは揃って、「東西統合はあり得ない」と、壁崩壊の直前まで断言していた。わたしはもう、この流れは止まらない、統合はあり得ると主張する一団に属して、何度も西ドイツ人たちと論争をしたのだが、戦車で人民をひき殺すようなどっかの国のような強硬手段に出ない限り、統合は止められない、と我々が主張しても、西ドイツ人(及びスイス人・オーストリア人)は、いや、東はまさしくそういうことをしかねない国だ、と結構ひどいことを言っていたことを覚えている。懐かしいというか、あれからもう26年、あっという間のような、遠い昔のような、わたし個人としてはなんだか妙な感慨がある。
 本作は、あの「統合」の後、再び「東」が門を閉じ、統合はなされなかったというIF世界を舞台としている。あらすじは、もうめんどくさいから、早川書房のWebサイトから勝手にパクって貼っておくとしよう。
1990年に東西ドイツが統一されなかった世界。そこでは東ドイツは〈再生〉という改革を経て、社会主義国として生き残っていた。2011年10月、東ベルリンの郊外で西側出身の教授が殺される。その手口は廃止されたはずの秘密警察のものだった。おりから経済的窮地を脱する決め手となる東西交渉が始まろうとしている。交渉の障害になることを怖れ、事件を速やかに解決すべく東西合同の捜査が開始される。だが捜査にあたる刑事の前には、不可解な壁が立ちはだかった……あり得たかもしれない世界を舞台に描く、異色のサスペンス。
 というわけで、当時のことを鮮明に覚えているし、Deutsche Demokratishe Republik=ドイツ民主共和国、略してDDR(デーデーエル)、通称「東ドイツ」の当時の事情を、おそらく普通の人よりも知っているわたしとしては、このあらすじを読んで、こ、これは面白そうだ!! と思い、購入に至ったわけである。全然関係ないけれど、先日TVで池上彰氏が、「国名に<民主>と入っている国は、たいてい民主的な国家じゃない」的なことを言っていて、その時わたしはまさしくDDRのことを思い出した。
 で、さっそく読んだ。
 ……のだが……これがまた超・読みにくい。この読みにくさは、主に3つの点から生じている。
 1)そもそもの文章が癖がありすぎ。
 これは、翻訳のせいではない、と言えるもので、おそらく原文がかなり癖があるものなんだと思う。日本語訳は、ある意味直訳になっていて、逆に元のドイツ語の構文が透けて見えるような翻訳になっている。なので、おそらく原文を読みながら、参考書としてこの翻訳を手元において確認しながら読む、といった、ドイツ文学科の学生には大変重宝する翻訳だと思うが、実際、単なる日本人読書好きとしてこの作品を読むと、まあとにかく読みにくい。
 文章的に、一つの名詞や動詞につながる形容詞的・副詞的な関係代名詞がすっごく数が多くて、つぎつぎつ積み重なっていて、一つの文章が、単純なのに妙に長い。これはもう、日本語には非常にしにくいというのは容易に想像がつく。ドイツ語として想像すると、意外とこういった関係代名詞や分詞構造の修飾語が連なるのは、普通によく見かけるのだが、それにしても長ったらしいし、はっきり言って読みにくいし、ズバリ、ストーリー展開を阻害していて、素人っぽいようにも感じる。わたしが専攻して、卒論と修論を書いた作家でHeinlich von Kleistという18世紀末~19世紀初頭の作家がいて、そのKleistという作家も、とにかく文章が長くて読みにくいことで、ドイツ文学を学んだ人ならおなじみなのだが、なんだかわたしは懐かしくKleistのことを思い出した。似てるとは言えないけど……読みにくいと言う点で。
 2)とにかく、固有名詞が分からねえ。
 これはどういうことかというと、商品・製品・地名・人名といった固有名詞が非常に多くて、人なんだかモノなんだかさっぱりわからないのだ。説明もほぼない。分からないまま読み進めていくと、ああ、なんだ、これはスマートフォンの商品名か、とハタと分かったりするような感じで、とにかく分からなくてイライラする。親切な翻訳なら、訳注を入れてくれることだろうと思うが、本書には一切そういった親切な訳注は付されていない。まあ、入れたら入れたでうるさすぎるのかな。また、実在の人物なんかも数多く登場するわけで、「分かっている人には分かっている」という暗黙の了解のように、訳注は入れなかったのだろう。ひょっとしたら、著者から訳注は付けるなという指示もあった可能性がある。
 ひとつ面白かったのが、現在の「ドイツ」のアスリートには、「東」出身の選手が結構いて(※もう若い世代は統一ドイツ出身ばかりなので、40代前半ぐらいの引退した選手に多いか)、例えばわたしの大好きな自転車ロードレースでも90年代終わりから2000年代に活躍し、1997年のツール・ド・フランスで総合優勝したJan Ulrich選手なんかも「東」出身なわけだが、本作には何度か名前だけ、サッカーのMichael Ballack選手の名前が出てくる。彼も「東」出身で、本作の世界では、Ballack選手はどうやら「東」の人民らしい。本作は2011年の刊行で、物語も同じく2011年なのだが、本作世界では2006年のドイツ・ワールドカップは開催されたんすかね。なんか一言ぐらい言及してほしかったな。
 しかし、それにしても、だ。とにかくわからんわけで、読者としてはイライラするし、非常にストレスだ。ほんと、最後まで読むには相当の気合が必要だと思う。わたしも、先日このBlogで書いたけれど、とにかく読了に時間がかかってしまった。途中で投げ出さなかっただけ、自分的には頑張ったと言えるかも。
 3)主人公の内面描写が多くて物語が進まねえ!
 読みにくさの最後、これは物語自体の問題だ。ズバリ、ストーリーが進まない。これがやっぱり一番キツイ! もちろんそれは、わざとであり、DDRの何もかもが霧の中、的な状況を反映してのことであるので(好意的に言えば、です)、文句を言う筋合いはないのだが、とにかくもう、イライラである。ある意味、Kafkaの作品のような不条理感が漂っていて、わたしはなんだか『Der Prozess』や『Das Schloss』のことを懐かしく思い出した。
 しかし、主人公の内面は、Kafkaのような文学的なものではなく、かなり多くを占めるのが、別れた彼女に対する未練たらしい想いだ。しかも主人公は、太鼓腹で髪もヤバくなりつつある56歳の警部である。そんなおっさんがずっと、別れた彼女への未練を抱きながら、エロ妄想ばかりしているわけで、正直、わたしはもう何度投げ出しそうになったことか……。そして描写が現実なのか警部の妄想なのか判別しにくい部分もあって、肝心の謎解きも、とてもついて行くのが難しい。正直に告白すると、わたしは電子書籍で読んだので、今、自分がどの辺を読んでいるのかの意識がなく、あとどのくらいで終わるのかも全く意識せず読んでいたために、ラストの部分を読んでページをめくったら、ここで終わり、と最終ページだったことに唖然としたほどだ。アレッ!? 終わり? ここで? うっそーーー!!? と、ホントにびっくりした。ちなみにラストは、森の中で拘束された警部がおしっこを我慢できなくて漏らしてしまって気を失うところで終了である。マジかよ……もうホント何なのこの物語!! と思うのもやむなしと、お許しいただきたい。

 というわけで、わたしにとっては非常に長くつらい読書だったわけだが、上記のようなわたしの指摘する問題点は、訳者あとがきでも触れられていて、どうやらこの作品を読んだ人なら誰しもが感じるものらしい。
 が、訳者は言う。
 「この(わたしが論ったような)批評は少し的外れの感がある」
 オイオイ……マジかよ……的外れと言われても……そう感じちゃったんだからしょうがないじゃない。たしかに、訳者の言う通り、「たぐいまれな空想力、創造力」であることは、まったく同意したいけれど、エンタテインメントとしてはどうかなあ……と、誰でも感じるのではなかろうか。まあ、訳者に対しては別に何も言いたいことはないので、どうでもいいのだが、訳者の言う「知識のない読者にも十分楽しめる作品に仕上がっている」かどうかは、わたしとしては相当怪しいと思うな。

 あーもう長いので、最後に作家であるSimon Urban氏について書いて終わりにします。でも、調べてみても、あまり情報がないというか、本作『PLAN D』の著者である以外の情報はあまりないすね。こんな方みたいです。

 どうやら本作が初めてのメジャー作品のようで、1975年西ドイツ生まれの現在41歳か。ドイツのナンバーワン(?)週刊新聞「Die ZEIT(=英語で言うとThe TIME)」のオンライン版でエッセイかな、なんか記事の連載を持ってるみたいですな。まだ小説ではほとんど作品はないみたいすね。今後の活躍はどうなんでしょうな……。まあ、まだまだ若いし、書き切る筆力は本物だと思うので、もっと、なんというか、物語がダイナミックに動く作品をお願いしたいと思います。まあ、単なるわたしの好みですけど。

 というわけで、結論。
 ドイツミステリーの『PLAN D』という作品を衝動買いして読んでみたところ、ひじょーーーに読みにくく、実際難しい作品であった。わたしとしては読了までに大変時間がかかってしまったわけで、全否定はしたくないけれど、この作品が面白かったかどうかで言うなら、正直イマイチ、としか言いようがない。興味深い作品であることは間違いないのだが……interessant ではあっても、Das macht mir Spassではなかったすね。ま、次回作にも期待します。以上。

↓ 続いてこちらを読んでいます。こちらは大変読みやすく、そしてかなり面白い!!
ハリー・オーガスト、15回目の人生 (角川文庫)
クレア・ノース
KADOKAWA / 角川書店
2016-08-25



 

 泣けた。いやあ、本当に心に沁みた。コイツは超名作です。
 先日、わたしが最も仕事上でお世話になり、最も尊敬している大恩あるお方から、ぽろりーんとメールが来た。曰く、
「先日、早川書房から出ている『ありふれた祈り』という小説を読んだけど、すごく良かった。君の大好きなStephen Kingの「スタンド・バイ・ミー」的なテイストでね。」
 とのことだったので、ほほう、それは読むしかないですな、と思い、即座に検索し、メールをもらって約50秒後には、電子書籍版を購入完了した。そして読んだ。結果、久しぶりに小説で泣いた。確かにこれは素晴らしい!! わたしは、この小説を読んで、初めて、キリスト教の、いや、宗教というものの本質的なものに触れたように感じたのであった。
ありふれた祈り (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
ウィリアム ケント クルーガー
早川書房
2014-12-10

 読書好きなら常識だが、そうでない人には全くなじみがないと思うが、早川書房という出版社がある。散々わたしはこのBLOGにおいて、嫌いな出版社のことを挙げてきたが、逆に好きな出版社ももちろんあって、わたしの中では、早川書房は好きな出版社の相当上位に位置している。ここ数年ぜんぜん買っていなかったが、早川書房が出しているシリーズに、「早川ポケットミステリー(通称:ポケミス)」というレーベルがあって、判型がちょっと特殊な、新書とも文庫とも言い難い、独特の、縦長サイズのレーベルなのだが、本書、『ありふれた祈り』は、ポケミスから2014年に刊行された作品である。なので、ちょっと古いのだが、全然ノーチェックだったことが悔やまれる。本書を読め、とわたしに教えて下さったお方は、とある1部上場企業の代表取締役なのだが、超忙しいのにわたしよりも本を読んでいて、おそらくは日経の書評か、いろいろなところがやっている海外小説ランキングに入っていたことから本書のことを知ったのだと思うが(文春の2015ベストで海外部門3位、「このミス」海外編でも3位だったそうだ)、こういう情報を教えてくれる先輩がいてくれることをわたしは嬉しく思うし、まあ、ちょっとした誇りに思っている。こういうのを、幸せというのだろうと思う。実に有り難いことです。
 で。本書は、ジャンルとしてはミステリーなのかもしれないが、これは、とある家族を襲った悲劇と癒しの物語であり、成長の物語だ。物語を詳しく説明することは避けるが、まずはその家族について簡単にまとめておこう。
 ■お父さん:名前はネイサン。大学で法律を勉強し、弁護士を目指していたが、第2次世界大戦の勃発により出征、戦地での深い心の傷によって、戦後は神学校に通い、現在は牧師として地域の信頼を集めている。
 ■お母さん:名前はルース。明るく社交的で、お父さんや子供たちを深く愛している。音楽が大好きでピアノの名手。現在は聖歌隊を指導しながら教会運営を支えている。料理が下手なのが玉に瑕。
 ■お姉ちゃん:名前はアリエル。18歳。家族の太陽として皆に愛される少女。音楽の才能に恵まれ、ジュリアード音楽院への進学が決まっている。彼氏アリ。
 ■お兄ちゃん:名前はフランク。13歳。平和な田舎町に住む、普通に明るく元気で活発な少年。両親やお姉ちゃん、弟を心から愛している。本作の語り部。
 ■弟:名前はジェイク。10歳(?)。吃音があるため、人前ではめったに喋らない、おとなしい少年。周りをじっくり観察し、洞察力に優れた心優しい少年。いつもお兄ちゃんの後にくっついて行動する。家族みんなを愛している。
 物語は、大人になったフランクが、人生を変えた「あの夏」の出来事を回想する形で描かれている。1961年、ミネソタ州の片田舎で穏やかに暮らす家族に悲劇が起きるのだが、実のところ、本作はその悲劇の謎を解こうとするミステリーでは決してない。犯人候補の怪しい人物が何人か出てくるのだが、この物語の本質は、語り手であるフランクと家族が、如何にしてその悲劇を乗り越えていくかという心の旅路にあり、そこに深い感動があるのだ。
 あらすじを追いかけてもあまり意味はないので、わたしの心に沁みた場面を紹介しよう。とにかく、本書には、ずっと大切にしたいような、感動的な名シーンがたくさん詰まっている。ああ、たくさんありすぎて選ぶのも難しいな……。よし、じゃあ、ベストシーンではないかもしれないけれど、とにかくわたしが感動したシーンを一つだけ紹介しよう。
 家族に起きた悲劇にによって、弟とちょっと気まずくなってしまったお兄ちゃん(主人公)。そんな中、お父さんが牧師として信徒に説教をする姿を見たお兄ちゃんは、心を改めて、弟に話しかける。そのシーンにわたしはとてもグッと来た。
--------
 わたしは自分のベッドにすわって言った。「おまえに言ってないことがあるんだ。重要なことだ」
 「へえ?」どうでもよさそうにジェイクは言った。
 「おまえはぼくの一番の友達だ、ジェイク。世界一の友達だ。ずっとそうだったし、これからもそうだろう」
 表で信徒たちが別れの挨拶を交わしあい、ドアがあちこちでしまる音、車が教会の駐車場の砂利を踏んで走り去る音がした。ジェイクは両手を頭のうしろで組んで天井をじっと見あげていた。ピクリとも動かなかった。ようやく通りの向こうのざわめきがすっかり消えて、ジェイクとわたしと静寂だけが残った。
 <略>
 「全部が正しくない気がするんだ、フランク」
 「全部?」
 「昼も。夜も。食べてるときも。ここに寝転がって考えごとをしているときも。正しいことがひとつもない。<略>」
 「わかるよ」
 「ぼくたち、どうしたらいいのかな、フランク」
 「進みつづけるんだ。いつもしていることをしつづけるんだ。そうすればいつかまた正しいと感じられるようになる」
 「そうなの? 本当に?」
 「うん、そう思う」
 ジェイクはうなずいてから、言った。「今日はなにする?」
 「ひとつ考えがあるんだ。でも、おまえはいやがるかもしれないな」
--------
 こうして兄弟は、毎週日曜日に必ず行っていた、おじいちゃんの家の庭仕事をしに出かける。そして、いつもは口うるさくてがめつい爺さんだと思っていたおじいちゃんの、意外な優しさに触れて、お兄ちゃんは少し気分が軽くなる。しかし、帰り道、車で送るというおじいちゃんの誘いを断って、二人歩いて帰る兄弟。その帰りのシーン。
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 ジェイクがいきなり足をとめ、急に空気が体から抜けてしまったかのように、しょんぼりとたたずんだ。
 <略。どうしてもジェイクは悲しくてならないという>
 「そのうち楽になるよ」
 「いつだよ、フランク?」
 <略>
 わたしは弟の肩に腕をまわした。「わからない。でも、きっと楽になる」
--------
 なんて美しいんだとわたしはもう、感動に打ち震えたね。
 ああ、うちの兄貴たちもこうだったらなあ、と心底うらやましく感じました。
 おそらく、誰もが経験したことがあるだろうし、またこれから必ず経験することになると思うが、人間は、どんなに悲しいことがあっても、腹は減るし眠くもなる。そしてそのことに腹立たしく思ったり、さらに悲しみが深まったりする。だけど、それを乗り越えなくてはならない。毎日をこれまで通り過ごす。それがどんなに尊いものか。ここは本当に素晴らしい場面で、わたしは弟ジェイクのように泣いたね。
 とにかく、こういった心に残るシーンが多くて、感動の嵐である。そして、タイトルの『ありふれた祈り』の意味が分かるのが、35章である。ここで、弟ジェイクにちょっとした奇跡が起こる。ほんの「ありふれた祈り」をささげたジェイク。その祈りで母は救われ、父も魅入られたような、幸せな表情を浮かべる。そんな弟を見たお兄ちゃんも、畏敬の念に近いものをもって弟を見、心の中で思う。「神よ、感謝します」と。わたしもこのシーンでは、この家族に幸あれ、と心から祈りたくなった。

 最後に、著者についてちょっとだけ備忘録。著者のWilliam Kent Krueger氏は、その名の通りドイツ系移民でしょうな。1950年生まれの現在65歳か。本作で、エドガー賞を受賞しているとのこと。ミネソタ州在住だそうで、毎日05:30に起床して近くのカフェで執筆しているそうだ。他の作品も読んでいたいものです。
  
 というわけで、いつものようにまったくまとまりはないが、結論。
 『Ordinary Grace』、『ありふれた祈り』という作品は超名作である。もう全人類に読んでもらいたいほどだ。わたしの今年の暫定ナンバーワン、どころか、これまでに読んだ小説の歴代ベストに入れてもいいような気さえする。超おススメです。そして、この本を教えてくれたお方にも、心から感謝の念を捧げたい。わたしにこの本を紹介してくれて、本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。以上。

↓この著者の作品は、他にどんなのがあるんだろう? と調べたら、日本語で読めるのはこのシリーズだけっぽいですな。あーーでも、くそう、これも在庫切れ……電子で読むしかないね。
凍りつく心臓 (講談社文庫)
ウィリアム・K.クルーガー
講談社
2001-09-14

 

 もうだいぶ前になるが、とある小説が全世界で大ヒットした。
 『ミレニアム ドラゴンタトゥーの女』である。 

 著者は、スウェーデンの作家Stieg Larsson。この作品以降、いわゆる「北欧ミステリー」が全世界の書店の本棚を席巻することになるわけだが、彼はなんとも不幸なことに、2005年の第1巻発売より前の2004年11月に、心臓発作で亡くなってしまった。ので、自作が大ヒットすることを知らぬまま、この世を去ってしまったのである。
 だが、彼の死後発売されたこの『ミレニアム』シリーズ全3作は、スーパー大ヒットとなり、本国スウェーデンで3部作すべて映画になり、後にハリウッドでも、かのDavid Fincher監督、Daniel Craig主演でリメイクされるほど世界中の人々に熱狂をもって迎えられたわけである。

 ↑ これはハリウッドリメイク版の、一番最初の予告。超カッコイイ!! ただし、ハリウッドリメイクは雰囲気や演出は格段にスウェーデン版オリジナル映画よりも優れているものの、はやり、一番肝心な主人公のリスベットに関しては、あきらかにスウェーデン版の方が上だと思う。演じたNoomi Rapaceも、このスウェーデン版の出来のよさからハリウッド進出を果たすことになった。
 ハヤカワ文庫から発売になったのが2011年なので(? なんかもっと前のような気がしてならない)、わたしが読んだのはひととおり熱狂が落ち着いた頃だったわけだが、読んでみて、こりゃあ面白い!! とその魅力を堪能し、大興奮したわけである。だが、つくづく惜しいと思ったのは、著者が既に亡くなっており、この続きが読めないなんて拷問だよ!! という残念なお知らせであった。
 というのも、これも全世界的に知られていることだが、Larssonはすでに4作目を書いている途中であり、プロット的にはもうだいぶ先の方まで完成していたのである。そしてその著作権をめぐって、遺族・出版社・そして内縁の妻が訴訟を起こして泥沼化してしまったのである。本当に残念なことだが、内縁の妻といってももう何十年(?)も活動をともにしてきたパートナーなので、わたしが思うに一番作品のことを知っている女性だと思うが、その彼女と結婚していなかったがために、こんな泥沼抗争となってしまったわけで、あーあ、続きはもうないのか……とあきらめていた。

 しかしである。
 今年2015年の9月、なんとシリーズ第4作が世界35カ国で発売となった。
ミレニアム 4 蜘蛛の巣を払う女 (上)
ダヴィド ラーゲルクランツ
早川書房
2015-12-18

 これはもう読むしかねえでしょうが!! と思った人は、おそらく日本国内でも20万人ぐらいはいたはずだ。も~~……早川書房さんよ……とっとと出せよこのノロマ野郎が!! と、イライラしながら日本語訳を待ち望んでいた人も、20万人ぐらいいたはずで、ようやく今月、日本語版の発売と相成った。ありがとう早川書房様!! とコロッと手のひら返しで感謝の念をささげたのは、わたしだけではあるまい。とにかくこれで年末は決まりですよ、というわけで、じっくり楽しませてもらいましょうと、本をうっかり開いてしまったわけです。
 しかし、これはイカン。何を言っているか分からないと思うが、わたしに起こったことをありのままに言うと、ぺ、ページをめくる手がと、止まらねえええ……!! という有様である。
 本作は、結局、出版社側が、既に存在するLarssonの手による4巻の途中までの原稿やプロットなどをすべてなかったことにして、新たに別の作家を立てて書かせた作品である。なので、厳密な意味では二次創作と言っていいだろう。だが、これはかなり期待できる。相当面白い、と現時点では感触を得ている。
 まあ、読み終わったらまた詳しく感想を書くので、それまで結論は保留だが、今、読み始めて3時間弱、上巻の228/349ページまで来たところだが、今のところかなりいい。特に、ミカエルがリスベットと再びコンタクトが取れたシーンは極めて上等。いいね。リスベットが、ミカエルからのコンタクトに思わずニヤリとするシーンでは、わたしもニヤついていたと思う(※リスベットはほぼ笑わない女子です)。
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 ※追記:さっき上巻読了。詳しくは明日書きます。ちょっと、場面転換が若干下手かも、とは思ったけれど、肝心のストーリー自体は非常に良いです。これは面白い。まだ上巻だけど。
 あと、ストーリーの本質には関係ないけれど、Christopher Nolan監督の『Intersteller』を観ている人には、序盤でリスベットが語る理論がすんなり理解できると思う。非常に難しい話だけど、まさしく『Intersteller』で語られるものなので。
 もうひとつ。わたしが9月ごろにレビューして、クソつまらなかったと書いた、『人工知能 人類最悪にして最後の発明』を読んでおくと、今回のキーとなる理論が良く理解できると思います。↓これね。
人工知能 人類最悪にして最後の発明
ジェイムズ・バラット
ダイヤモンド社
2015-06-19

 この二つは、本作を読む前に観たり読んだりしていると、本作をより楽しめると思います。
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 というわけで、結論。
 まだまったく作品評価できる段階ではないが、『ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女』は「今のところ」かなりイイです。と、大興奮でいるわたしを記録にとどめておこうと思います。まあ、読み終わって、なんだよFUCK!! と怒り狂う可能性もありますが、楽しみに読み進めたい。
 ※12/28追記:読了しました。レビューはこちらへ

↓ スウェーデン版も結構いいです。比較的、こちらの方が原作に忠実。だと思う。いや、どうだろう?
ドラゴン・タトゥーの女 ミレニアム<完全版> [DVD]
ミカエル・ニクヴィスト
アミューズソフトエンタテインメント
2012-02-03

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