というわけで、あっという間に月日は流れてゆき、2019年となった。ホント早いもんだなあ……おまけに正月休みもあっという間に過ぎ去り、今日、1月4日はいわゆる「仕事始め」である。ただし、まあ、一般的な企業の仕事始めは連休明けの1月7日のところの方が多いんじゃないかな。わたしの場合は、まったくもって自分で勝手に決められるため、ずっと家にいてばあ様(※80歳となった母のことです)の世話をするのも飽きたので、今日は朝から出かけ、その後出社してちょっくら仕事でもするか、という気になった。
 というのも。
 おとといの夜、電撃的に、そろそろ行かねえとなあ、と思っていた絵画展のチケットを買い、今日は朝の7時半前ぐらいに家を出て、まずは会社の前に上野へはせ参じたのである。そうです。コイツを鑑賞するためであります。
ferume-ru
 ご存知、というか、日本で大人気のJohannes Vermeer氏の作品9点を集めた、『フェルメール展』であります。まあ、わたしも絵画好きとしてはいかねばなるまいと思っていたものの、大混雑は必至であり、それを緩和するために「日時指定チケット」が発売されているわけだが、実際のところ、仕事をしている身としては、急に、明日行こう!とか思い立つわけで、なかなか事前に「日時指定」することが出来なかったので、思い立ったおとといの夜、チケットを購入してみた次第だ。
 ただし、である。やっぱりちゃんと前もって計画しないとアカンものですなあ……わたしとしては若干ガッカリしたポイントがあった。
 それは、本展覧会は、現存すると言われるVermeer氏の35点の絵画のうち、9点が観られるのだが、わたしが今日、観ることが出来たのは実は7点である。というのも、1点は去年中に展示終了となってしまっており、そしてもう1点は来週からかな、後の展示だそうで、今日は7点だったのです。おおう、マジかよ! でもまあ、もはや仕方ないしどうにもならんので、見損なった作品は今後、現地へ観に行くなどして、いつかお目にかかりたいもんだと楽しみにしておこうと思う。
 実は、わたしはそのことを知ったのは現地についてからなのだが、初めはとても、なんだよガッデム! と頭に来ていた。ま、八つ当たりも甚だしいのだが、とにかく、くそう! と思っていた。しかし、全てを観終わった今思うのは、なかなか気の利いた展示会だったな、という主催者への賛辞であります。上から目線でサーセン。
 気が利いてるポイント1):みんな大好き「音声ガイド」が無料!
 ま、わたしはめったに利用しないのでどうでもいいし、入場料も2,500円とクソ高いので、最初からガイド貸し出し料コミなんじゃね、と思わなくもないが、無料にしたことは大いに偉いと思う。ヒドイ言い方をすると、高いと文句があるなら観に来なきゃいいので、わたしとしては別に料金に文句をつけるつもりもないし、1段ハードルを設けて、普通なら超混雑する「フェルメール」をちょっとでも見やすくることにも貢献してんじゃねえかとも感じた。その代り、普通なら1500円ぐらい取られる(そんなしないか? 1000円とかだっけ? 利用しないからわからん)音声ガイドが無料ですよ、というのは、結構頭のいいやり方だと思った。ちなみに、音声ガイドの声を担当したのは石原さとみちゃんだそうです。
 気が利いているポイント2):作品一覧が小冊子になっとる!
 わたしは入り口でこの「小冊子」をもらって、中を見ずに入場したのだが、普通は各作品に付けられている「解説」の類が一切会場内に見当たらないことに、一瞬戸惑った。が、手元の小冊子を見て納得である。そう、作品解説も全てこの小冊子に収録されているのである。↓こんなの
フェルメール小冊子1
 うお、画像がデカイな……実物は天地147mm×左右105mm、要するに(ほぼ)文庫本サイズである。で、中身はもう味気なく文字だけで、こんな感じ↓
フェルメール小冊子2
 でもまあ、これって、アリですよ。普通の絵画展は、ぺら1枚の作品リストが入り口に置いてあるけど、こういう小冊子形式は実にアリっすね。ま、ここに作品の画像が入ってたら文句なしだけど、そしたら図録が売れなくなっちゃうから、無理でしょうな。そもそも、絵画展では作品横の解説を読むのも大変な時があるわけで、なかなか冴えたやり方だと感心したっすね。
 気が利いてるポイント3):やっぱり日時指定の効果はある……かも?
 近年ではビックネームの絵画展は、ホントにびっくりするぐらいの来場者なのはもうお馴染みの光景だが、わたしはぼんやりと鑑賞している時に人が前にいるとイライラするたちなので、イライラしないためにも、わたしはもう絵画展は「朝イチ」が絶対ルールだ。1時間とは言わないまでも、そうだなあ、たいてい、開場時間の45分前には会場についているのがオレルールである。そもそも土日しか行けないしね。で、普通、フェルメールともなれば超激混みは必至なわけだが、この日時指定チケットがあるから、どうだろうか、やっぱみんな早く来てるんだろうか、と思いながら、わたしが今日会場に着いたのが8時15分ぐらい。結果、待ち人数ゼロ、であった。時間指定なんだからそりゃそうかとは思うものの、実際びっくりしたっす。で、まあ、一人突っ立ってるのもアホくさいので、ちょっとタバコを吸ったり公園をぶらぶらして8時25分ぐらいに会場を遠めから見たら、5人ぐらい並び始めていたので、わたしも8時半ぐらいに並ぶことにした。わたしの前は20人弱ほど。このちょっと前に、わたしははじめて、今日は「7点のみの展示」であることを知ってガッデムと思っていたのだが、この人数なら快適に観られるぞ、と少し気分が良くなった。そして開場時は、控えめに言って200人ぐらいは並んでいたので、ああ、時間指定でもやっぱり早起きは得か、と思いながら入場した。ズバリ、時間ギリに来てもやっぱダメだと思うな。そして、時間指定チケットの人を入れた後に入場できる、フリーの当日券も売ってるんすね。そちらも、20~30人ぐらいは並んでたっすな。

 というわけで。入場すると、まず迎えてくれたのはオランダ絵画の人物画でありました。笑っちゃうのが、入場者のほぼ全員が「フェルメール作品」以外はスルーして、どんどん先に行っちゃったことすね。すげえというか、その潔さというか、なんか得体のしれないフェルメール欲旺盛な方々ばかりでびっくりしたす。わたしは一応、すべてじっくり見ました。この冒頭の人物画群は、17世紀前半の作品なんだけど、いわゆるRembrandt的な、黒バックに中央にズドーンと人物がいる的な作品が多いのだが、ホント、不思議というか当たり前というか、謎なんだけど、部屋のはじから見ても真ん前から見ても、描かれている人物とずーーっと「目が合う」んす。こちらが観ているというより、こちらを観られているというか……これは、NYCのメトロポリタン美術館で観た「Rembrandt-ROOM」もそうだったけど、なんつうか落ち着かないんすよね。じっと観られている感じがして。こわ楽しいす。
 で、ぐんぐん先に行くと、あっさり(実のところ総点数50点もないので、結構あっさり終わる)皆さんお待ちかねのフェルメール・ルームなんですが、まあ、とにかく来場者の方々は熱心で驚きでありました。もう、詳しいことは公式サイトを見てもらった方がいいので、一つ一つ感想は書きません。
 わたしが観た7点のうち、4点は既に日本で観たことがある作品で(そのうち1点はNYCでも観た)、既に日本に来たことある、けどわたしは観たことがなかった作品が2点、初来日でわたしが初めて観た作品は1点、であった。この、初来日&わたしも初見、な作品、「ワイングラス」が今回わたし的ナンバーワンだったような気がします。こんなの↓
wineglass
 構図としては、お馴染みの「左側に窓」&「中央やや右に人物」&「背景の壁に何やら絵画」&「超!目に鮮やかなカラフルな服」の、誰が観てもVermeer作品だと分かるものだと思う。これは買ってきたポストカードのスキャンだが、とにかく本物の色はもう、全然こんなものじゃあない! 女性の着ている服のオレンジ色が超鮮やかで、凄いです。そして謎のイケメンも超カッコイイ! さらに、よーく観るとワイングラスの透明感というか透けてる先に描かれる女性の口元が超すげえ! そしてもちろん、窓のステンドグラスがですね、これがまた超ヤバいんすよ! これは絶対実物を見るべきでしょうなあ! 実に最高でしたね。

 というわけで、わたしとしては大興奮でスゲースゲーとか思いながら会場を後にしたのだが、今回は図録は買わなかった。一番大きい理由はデカくて重いから、なのだが、実のところ、コイツが非常にいい出来立ったのでこっちを買ったから、であります。

 これはAERAムックだから朝日新聞出版かな、たぶんフツーの本屋でも買えるはずだけど、売店に売ってて、パラ観してみたところ、まさしくわたしの知りたいことが載ってたので買って、今、鋭意読んでいるところです。ズバリ、わたしが知りたかったことは、
 ◆一体全体、その「Vermeerの現存ずる35点」は世界のどこに展示されているのか?
 ◆で、その中で、日本に来た作品はどれなんだ?
 ◆さらに言うと、どの作品がいつ日本に来たのか知りたいんですけど?
 これらはすべて、上記の「フェルメール展公式ガイドブック」に解答が書いてありました。もちろん作品解説もキッチリしてます。ので、これはおススメっすね! 朝日のくせに、なかなかいい本だと思います。

 はあ、なんつうか、アレっすね、きっとわたしと同じ思いの方も大勢いらっしゃると思いますが、こうなったらその「35点」全てを制覇したいものですなあ! どうやらわたしが買った朝日謹製の「公式ガイドブック」によると、1点は個人蔵、1点は盗難されて行方不明、だそうなので、33点しか無理だろうけど、よーし、マジで全制覇の旅に出ようかしら! という気になった展覧会でありました。おしまい。

 というわけで、結論。
 日本人の大好きなJohannes Vermeer氏の作品を集めた「フェルメール展」にやっと行ってきたのだが、やっぱり作品の持つパワーは凄いすね。もう、うおお、とか、すげーとか、そんな言葉しか出ないっす。そして、今回の展覧会は、なかなか工夫された冴えたやり方がわたしにはとても好ましく感じられました。大変結構かと存じます。どうやらこの展覧会はまだ2月まで開催され(そして日本初来日作品が来週1点追加される!)、おまけに2/16~5/12の大阪展ではさらに1点追加されるらしいので、これは大阪も行かねえとダメかもな……つうか、ホント、Vermeer全制覇を目標とした旅に出るのもアリかもしれないすね。なんか、まったく生きる目標のないわたしとしては、ちょっと、いっちょ挑戦するか? という意味で生きる希望が湧いたようにさえ感じたっす。そして、朝日謹製の「公式ガイドブック」は大変面白いので、買いでお願いしたいと思います。いやあ、大変結構なお点前でありました。以上。

↓ なんかいつもVermeer氏のことを書く時に挙げてますが、この映画はおススメです。Vermeer氏本人役をColin Firth氏、そして「真珠の耳飾りの少女」を10代だったScarlett Johansson嬢が演じてます。ズバリ映画としてはイマイチですが、当時の人々の生活風俗など、大変興味深いっす。 
真珠の耳飾りの少女 (字幕版)
スカーレット・ヨハンソン
2013-11-26