タグ:彩みちる

 わたしは小学校低学年から毎週月曜日は「週刊少年ジャンプ」を読み、当時は兄貴が買ってきたものだったが、中学生の後半ぐらいからは自分で買って読むようになった。そして今現在も、電子版を毎週買って読んでいるわけで、もう、わたしのジャンプ歴は40年を超えてるのではないかと思う。
 そんなわたしなので、愛する宝塚歌劇で「CITY HUNTER」を上演するというニュースを知った時、マジでとても驚いた。もうすでに、宝塚歌劇では「るろうに剣心」の上演実績があって、ジャンプの漫画を宝塚化する前例があったわけだが、まさかあの、「CITY HUNTER」に目をつけるとは、まさしく想像の斜め上を行ってると思わざるを得なかった。なにしろ、「CITY HUNTER」は下ネタバリバリなのだ。だ、大丈夫かよ……? と思ったのはわたしだけではないだろう。しかし、その後徐々にビジュアルも発表されて行くに従って、おおっと!? こ、この再現力はさすが宝塚歌劇! と思わせるクオリティの高さを見せつけてくれ、期待と興奮も高まって行ったわけだが、それでもやっぱり、どうなんじゃろうか? という思いもぬぐえずにいたのである。
 というわけで、そんなドキドキを胸に抱きながら、わたしは日比谷に向かったわけである。しかも本公演は、新たな雪組TOPスターに登極した彩風咲奈さんと、同じくTOP娘役に登極した朝月希和さんのTOPコンビ大劇場お披露目公演だ。そういや先々代の雪組TOPコンビ、早霧せいなさんと咲妃みゆさんの大劇場お披露目の時も『ルパン三世』だったわけで、状況的にはちょっと似ているのだが、まあ、とにかく、コイツは早く観たいぜ!! と思っていたわけです。
 チケットは、いつも通り宝塚友の会の会員限定先行抽選で無事ゲット、しかもまたも前から3列目(の下手側ブロック)という良席がわたしに舞い降りてきており、ホント、友会のチケット神には感謝の祈りをささげる毎日であります。ありがとう、チケット神様! これからも善行を重ねて、徳を積む毎日を過ごそうと存じます!
CITYHUNTER
 というわけで、『CITY HUNTER』であります。
CH01
 まあとにかく、まずビジュアル表現はもう完璧と言ってよかろうと思う。わたしが一番ドキドキしていた「海坊主」も、お見事だったとしか言いようがないほど、完璧でしょう。さらに、コミック作品が宝塚化される時、わたしが一番素晴らしいと思うのは、いつも、タイトルロゴや(アニメ化された際の)テーマ曲を、きっちりとそのまま使うことにあると思う。
CH02
 これは、業界人ならばわかると思うけれど、様々な権利関係の処理が必要な、きわめて「めんどくさい」事柄だ。たとえば、「ルパン三世」なら、絶対にあの「ルパンだだ~~(ルパン・サ・ザード~~)!」が使われないと、全く話にならんわけで、宝塚歌劇団はきちんとそういった権利処理もクリアしているのが本当にすごいと思う。これは、おそらく元のコンテンツホルダーにとって、宝塚歌劇で上演されることがとても光栄で嬉しいことなんだと思う。だからすごく協力してくれているのではなかろうか。
 そして、わたし的には、『CITY HUNTER』をやるならば、絶対に、『GET WILD』がかかってくれないとダメだろ、と思っていたのだが、きっちりと劇中で彩風さんが熱唱するシーンが組み込まれていて、わたしはもう、その点だけでも素晴らしかったと申し上げたくなりました。
 が、しかし……。
 観劇後の今は、お話的には、正直イマイチだったかな……とわたしは思っています。ちょっとですね……エピソードを盛り込みすぎているというか、お話がまっすぐ進まないというか、ごちゃついてる感じを受けました。これは大変残念で、結果的にメインキャラの活躍が減ってしまっているように思えたっす。女優と息子のエピソード、亡国の姫のエピソード、主人公・冴羽遼自身のエピソード、海坊主やミック、親友の槇村とその妹、香とのエピソード、などなど、盛り込みすぎたように思います。まあ、宝塚歌劇の演目では、役が少ないといろいろと困ることになるので、仕方なかったかもしれないけれど、もうチョイ、メインに絞った方が良かったのではなかろうか。。。
 とはいえ、最初に書いた通り、ビジュアルは素晴らしいし、なにより「GET WILD」が聞けただけでもわたしは満足であります。では、いつも通り各キャラと演じたジェンヌをまとめてまいりましょう。
 ◆冴羽遼:新宿の厄介ごとを解決する街の「スイーパー=掃除屋」。腕はピカイチだが、超女好きのダメ人間、と思われているけれど、実際はそんなことはなくド真面目。背景はいろいろあるけれど、今回一見さん向けに説明しすぎてたかもしれないすね。ちなみに、物語の舞台は、ジャンプ連載当時と同じく80年代に設定されております。そうじゃないと「新宿駅の掲示板にXYZの伝言を残して依頼を行う」という設定ができないもんね。つうか、30代でももはや「駅の伝言板」の存在を知らんでしょうな。。。
 で、演じたのは勿論、新たなる雪組TOPスター、彩風咲奈さん。彩風さんと言えば、わたしには八重歯が見分けるポイントだったけど、数年前に削って差し歯にしたのか、八重歯はなくなっちゃいましたな。わたしは結構好きだったのに、まあ、やむないことなんでしょう。実はわたしは彩風さんに対してそれほど詳しくないままこれまで観てきたので、演技の人なのかな、と思っていたけれど、どうやら一番の持ち味はダンスなのかもしれないすね。はっきり言うと『CITY HUNTER』は脚本的にアレだったけれど、ショーの『Fire Fever!』は超最高だったす。雪組生全員(?)によるロケット(ラインダンス)は圧巻だったすねえ!! だって、男役も彩風さん以外、あーさ含め全員が金ぴかのだるま姿だぜ? こ、こんなの初めて! とわたしは圧倒されたっす。素晴らしかった! Fire, Fever~! という主題歌も良かったし、彩風さんのダンスもキレてるし、『Fire Fever!』の方は最高でした。
 ◆槇村秀幸:元刑事で、遼の元パートナーで故人。エンジェル・ダストという合成麻薬の事件で殺されちゃうものの(その話が原作では泣けるんすよ……)、今回の宝塚版では、幽霊的存在としてチョイチョイ登場してました。演じたのは、元星組生で98期の綾 凰華くん。扱い的には雪組3番目、のはずだけど、101期の縣くんにバウ主演は先を越されちゃったし、おまけに96期の和希そらくんが雪組に異動してくることが発表されているし、綾くんの今後が心配でならないす。。。実は女子としての素顔も大変可愛いお方なんすけどね。。。
 ◆槇村香:槇村の妹で現在の遼の「パートナー」で物語のヒロイン。演じたのは当然、新生雪組TOP娘役の朝月希和さん。コミックの香はいつもデニムのミニスカだけど、雰囲気はとても良かったすね。朝月さんも、わたしは実際今まであまり注目してこなかったので詳しくないですが、最近だと花組の時の『はいからさん』で演じた吉次姐さんはとても良かったですね。花→雪→花→雪、と波乱?に満ちた異動を強いられてきたけれど、報われて本当に良かったね。これで96期からTOP娘役は4人目となったわけで、しかも研12でのTOP就任はすごいことだと思います。とっても綺麗な顔立ちで、和美人ですな。歌もわたしはほぼ初めてソロをちゃんと聞いたような気もします。ダンスもいいし、非常にレベルの高いお方ですね!
 ◆ミック:US時代の遼のパートナー。コミック原作だと、かなり大変な目に遭うけれど、本作では特にそういった部分はなく、明るいアメリカ人でした。そして演じたのが、ついに!! 2番手羽根を背負うこととなった95期きっての美形の一人、朝美 絢さま(以下:あーさ)ですよ! いやー、ついにあーさが2番手だなんて、本当に胸が熱くなるっすねえ! 以前このBlogでも書いたけれど、わたしは過去2回、ばったり月組時代のあーさに出会ったことがあって(1回目はバウが終わった後の帰り道、もう1回は確か東京での星組公演の客席で、ちゃぴと一緒に観劇してました)、その美貌で、グラサン&帽子スタイルだったけれど、一発で「あーさだ!!」と分かったほどっす。ちゃぴは、その後で、あ、隣にいるのはちゃぴじゃね?と遅れて気が付いたっす。これでもし、のちにあーさもTOPになったとしたら、大変な事態ですよ。それに、どうやら花組&雪組&星組はそろって95期生が2番手になるわけで、すごいすね! ああ、マジで今年はタカスペやってほしかったなあ!!
 ◆海坊主こと伊集院隼人(ファルコン):遼と同じく元傭兵で凄腕の男。現在は喫茶キャッツアイの店主としての表の顔を持ち、かなり頻繁に遼を助けてくれたりもする頼りになる男。コミック原作ではその名の通りスキンヘッドの坊主でガチムチ系マッチョマン。女子と猫に弱いという弱点アリ。そして宝塚版で演じたのは雪組の御曹司と言っていいでしょう、101期の縣千くん。さすがに坊主にはできないけれど、バンダナを巻いてる設定はとても見事だったすね。常に着用しているグラサン(=原作では目が悪いために着用していて、確か失明に至ったと思う)を外すと、「キラキラタカラヅカ系」な目をしているそうです。あのシーンは笑っちゃいました。縣くんも、ショーでは本来の縣くん通り、まさしくキラッキラでしたね。バウ主演も控えているし、順風満帆ですな。
 ◆美樹:少女時代に海坊主に救われ、海坊主が大好きな元スイーパー。現在は海坊主と共に喫茶キャッツアイを営んでいる。演じたのは、残念ながら本作が退団公演となってしまった98期の星南のぞみさん。星南さんも、ゆくゆくはTOP娘になるのかなあ、と思っていたけれど、退団ということで大変淋しいすね。。。その美貌はTOPクラスの美人なんだけど。。。早くから抜擢されてきたけど、ここ数年、役が今一つだったので、早めの決断に至ったんですかねえ。。。まあ、退団後も素晴らしい人生を歩んでほしいですなあ。とてもとても残念す。。。
 ◆野上冴子:警視総監を父に持つ敏腕刑事。警官時代の槇村の同僚で、超美人。演じたのは、この後で月組に異動することが発表されている99期の彩みちるさん。まさかみちるちゃんが月組とは、発表された時は驚いたすねえ……月組はとても戦力が充実しているので、みちるちゃんの入る余地があるんだろうかと余計な心配をしたほどっす。わたし的には、みちるちゃんで一番印象深かったのは、『凱旋門』の時のユリアかなあ。あーさと恋人同士で、とっても健気で可愛かったすね。みちるちゃんは、わたしとしては基本ロリ系に分類していたけれど、今回の冴子のようなセクシー系お姉さまもイケるんすね。そこがちょっと発見でした。
 あーーもう長すぎるから以上にしておきます。が、一つだけ。本来なら本作には専科の英真なおき理事が出演されるはずだったのに、体調不良で休演となってしまったのが、わたしとしては大変心配です。わたしはそもそも星組イチオシの男なので、元星組組長のじゅんこさんは大好きなんすけど……どうか早い回復をお祈りしております! また劇場でお目にかかりたいっす!!

 よし、それでは最後に、いつもの「今回のイケ台詞」をご紹介して終わりにしたいと思います。
 ※「イケ台詞」=わたしが、かーっ! カッコええ!と感動した台詞のこと
 「オレといたら、命がいくつあっても足りねえぞ」
 「その時はあんたが守ってくれるんでしょ?」
 「バカ、一緒に戦うんだよ!」
 「そうよね、わたしたちは二人でシティーハンターなんだから!」
 今回は、最後の二人の決め台詞的なこれにしました。まあ、めでたしめでたし、な終わり方で良かったと思います。新TOPコンビに幸あれ!ですな!

 というわけで、結論。

 新生雪組の始まりとなる大劇場公演『CITY HUNTER』ですが、まあ、正直、脚本に難アリかな、と思いました。ちょっとゴチャっとしてしまったように思えたのですが、それでも、さすがのビジュアル表現はお見事だし、ついにTOPスターに登極した彩風咲奈さんと、おなじく研12にしてTOP娘役に就任した朝月希和さんのコンビはとても良かったと思います。つうかですね、今回はショー『Fire Fever!』が最高でしたね! このコンビはダンスで魅せるコンビなのかな。今後の活躍が楽しみっすね! しかしそれにしても、日々全くいいことがなく、絶望的な毎日に、明日あたり世界が滅亡しねえかなあ、とか思っているわたしでも、宝塚歌劇の劇場にいる3時間だけは、本当にすべて忘れさせてくれますな。おっといけねえ、毎回おんなじこと書いてるな。。。もうオレ、ダメかも……いや、ダメじゃあない! オレには宝塚歌劇がある!!! いやあ、宝塚歌劇って、マジ最高っすね!! 以上。

↓ 海坊主は本当はこういう顔です。
シティーハンター 3巻
北条司
コアミックス
2015-06-08

 わたしが宝塚歌劇を愛していることはもう周囲の人々にもお馴染みだが、まあ、なんつうか、誰もが知っている「宝塚歌劇団」であっても、ファンでないと知らないことは数多く、5つの組の名前さえ、恐らくは一般的な常識ではないかもしれない。わたしは5つある組の中で、星組が一番好きで応援しているわけだが、もちろんのこと全ての組の公演を可能な限り観に行っているし、別の組に対して、アンチ的な感情は一切持っていない。むしろわたしは、舞台で頑張る全てのタカラジェンヌを応援しているし、それは、真ん中に立つTOPスターから舞台はじの端役の方まで、皆が全員、明らかに努力し、真摯に己を磨くその姿に、胸が熱くなるからだ。やっぱりですね、生で見ると、ホント、応援したくなるんすよ。頑張れ!って。 ま、完全にわたしの視線は舞台で頑張る娘を応援するお父さんめいた眼差しなんだろうと思うが、なんか文句ありますか?
 そんな風に、全員を応援するわたしでも、そりゃあ当然、より一層熱いまなざしを送る「贔屓」は各組に存在するわけだが、まず、ファンクラブに入ってまで応援している星組の礼真琴さん(以下:こっちん)は完全に別格として、他にも何人も、この組の公演を観る時はこの人に超注目する、という方がいる。いつか、この方が真ん中に立つ時の感動をオレは待ってるぜ、それまで全力で応援させていただくッ!みたいな、若いジェンヌの青田買いめいた応援姿勢がズカファンの基本だと思うのだが、その応援している方が、TOPに立てず退団してしまったりすると、猛烈にしょんぼりしてしまうのである。実は先週、わたしがここ3年ぐらいずっと応援していた方が、次の娘役TOPは大丈夫だよな……? と思っていたのに、残念ながらTOP就任できず、という残念なお知らせが発表された。それは月組の海乃美月さん(以下:うみちゃん)のことである。うみちゃんは新人公演ヒロイン3回、外箱ヒロイン3回、エトワール2回、と、TOP娘役への通過儀礼を順調にこなし、次のTOP娘役は、わたし個人としてはもう確実……だよね? と応援してきたのだが、残念なことに月組の次期TOP娘役は、2期後輩の美園さくらさん(以下:さくらちゃん)に決まってしまった。マジでホント残念だよ……さくらちゃんが悪いわけでは決してなく、むしろさくらちゃんは首席卒業の優等生、その実力は折り紙付きだ。一言で言うなら、うみちゃんにとってはタイミングが悪かった、そしてさくらちゃんにとっては絶好のタイミング、だったのだろうと思う。そうとしか言いようがなく、わたしはこの1週間、ずっとしょんぼりしている。まあ、うみちゃんは退団するわけではなく、TOP娘役の地位を得られなくとも、今後も頑張ってくれると思うし、応援も今まで以上にしたいと思うけれど、なんつうか……ため息が止まらないというか……はあ……ホント残念すわ……こうなったら、入団以来ずっと過ごしてきた月組から組替えして、どこか別の組でTOP娘役として活躍してくれないかなあ……はあ……つらいす……。。。
 とまあ、以上はまったくの余談である。わたしは昨日の会社帰りに、日比谷へ赴き、現在絶賛上演中の雪組公演『凱旋門/Gato Bonito!!』を観てきたのだが、今回のうみちゃんのことがなんだか頭から離れず、真ん中で光り輝くTOPスターだけでなく、周りでしっかりと支える、ひどい言葉で言えば「その他大勢」のみんなの頑張りというか、すべてをかけた舞台づくりに改めてグッと来たというか、たとえTOPスターになれずとも全力を尽くす宝塚歌劇団の団員たちの姿に、妙に胸が熱くなったのである。まあ要するに一言でいうと、いやあ、宝塚歌劇はやっぱり最高っすね、ということであります。そして今回の『凱旋門/Gato Bonito!!』は、文句なく大変楽しめたっす。最高でした。

 まずはミュージカル・プレイ『凱旋門』である。わたしは映画版も観ていないし原作小説も読んでいないので、まったくお話を知らずに観たのだが、大変興味深いお話であった。
 時は1938年。大戦への予兆に不安な毎日を送るパリが舞台である。そして登場人物は、ファシズムから逃げてきたドイツ人・イタリア人・スペイン人や、ロシア革命から逃げてきたロシア人青年だ。彼らはきちんとしたパスポートを所持しているわけではなく、見つかれば強制退去させられる運命にあり(※一部キャラはちゃんとパスポートを持ってるので大丈夫)、自由なパリであってもどこか陰に隠れたような生活を送らざるを得ないというのが基本設定だ。そんな彼らが、時代の奔流に流されながらも、愛を見つけ、必死に生きようとするさまを描いた物語である。
 ズバリ言うと、恐らくこの物語は男と女ではかなり感想が違うような気がした。わたしはモテない男として長年生きているので、主人公ラヴィックの気持ちはやけにリアルに理解できるし、一方のヒロイン・ジョアンの言動に関しては、正直良くわからないところが多い。ただ、双方ともに、わたしから見ると、なんでだよ!? どうしてお前は……という言動をとってしまい、ハッピーエンドとはならないで物語は終わる。しかし恐らく女性がこの作品を観ると、たぶん物語は、まあそうなるわな、という納得の進行なんじゃないかという気もするわけで、その男と女の考え方の違いが、恐らくはこの物語の中心にあるようにわたしには思えた。まったく……ラヴィック……お前って奴は……まったく世の中ままならねえなあ……。というのがわたしの感想である。
 というわけで、キャラ紹介と演じたジェンヌをメモしておこう。
 ◆ラヴィック:ドイツ人外科医でパリに亡命中(というか不法難民)。もぐりの医師として働き、その腕は確かで、パリの病院からの依頼も多く信頼されている。どうやら過去に、ドイツでひどい目に遭って拷問され、恋人を亡くしている。そのため、いわゆる「もう恋なんてしない」的なかたくなさがあるが、イタリアからの亡命者、ジョアンと出会って運命の歯車が回り出す。超客観的に見れば、基本的にネガティブ野郎のウジウジ野郎だが、男としては、許してやってほしいと思う。男は大抵こういう生き物なんすよ……。演じたのは、専科の「理事」でお馴染み轟悠さん。一部では、雪組大劇場公演に理事が主役ってどういうことだ、と憤っている方も多いらしいが、わたしとしては全然アリ。ピシッとした立ち姿はさすが理事です。でも、やっぱり歌力は、若干アレなんすかね……。なんつうか、今年初めに理事が演じた『ドクトル・ジバゴ』と若干キャラが似てるような気がしますな。ちなみに理事が雪組TOPスターだった2000~2001年(17~18年前!)に本作は上演されていて、今回はその再々演、しかも役は同じという珍しい公演となっている。
 ◆ボリス:バーのドアマンとして働く亡命ロシア人。ラヴィックの親友。この人はちゃんと正式なパスポートを持っているので、こそこそする必要がない。そしてロシア人のくせに、恐らく一番のリアリストで、しっかりしている。本作ではボリスは狂言回しとして舞台に出てくる機会も多い。演じたのは、雪組TOPスター望海風斗(以下:だいもん)さん。とにかく歌ウマ。だいもんの歌はホントしびれるすな。その歌唱力は現役ナンバーワンだと思う。最高でした。なお、TOPスターなのに主役じゃない、という作品は、珍しいけど過去にもあることだし、歌が多く、結構おいしい役だったようにも思えた。なので、わたしとしてはボリス=だいもんはアリ、です。むしろだいもんがラヴィックをやったら若干アレだったような……だいもんはウジウジ野郎よりはボリス的キャラの方が似合ってるような気がする……けど、いや、やっぱりだいもんラヴィックも全然アリか? だいもんは何でもできるスーパーTOPなので、だいもんラヴィックも観たかったかも、すな。
 ◆ジョアン:イタリアからの亡命者。ジョアンはパスポート持ってたのかな? サーセン、設定忘れました。ともあれ、ジョアンは一緒にイタリアからやってきた男が死に、絶望に打ちひしがれてパリをふらふらしているところでラヴィックに出会い、出会って推定3分で死んだ男のことを忘れ、ラヴィックを愛するようになる。そしてボリスの勤めるバーで歌手デビューし、チャラい生活を愛するように。―――と書くとかなりわたしの主観バリバリな、若干の悪意がこもってしまうけれど、サーセン、そうとしか見えないんすよ、男からすると。しかし、女性目線に立って想像するに、彼女はただ単に生きることに一生懸命なだけで、過去の男を3分で忘れるのも女性としては当然の行為なんだろう、と思う。たぶん。男としては……キツイっすわ……。演じたのはもちろん雪組TOP娘役の真彩希帆さん(以下:まあやきー)。その可愛さ、ちょっと調子に乗った明るさ、そして歌のうまさと演技力は現役TOP娘役の中でも随一だと思う。大変可愛いですよ、まあやきーは。歌も見事だし、芝居も良かったですな。まあ、若干暗ーい影のあるお話だけど、まあやきーの天性の明るさは意外とキャラに合ってたように思います。お見事でした。
 ◆ハイメ:スペイン動乱からパリへ逃げてきた元軍人。砲弾を受けて足を怪我し、ラヴィックに治療を受けたことがある。演じたのは美貌のあーさでお馴染み朝美絢さん。役柄的にはあまり目立たないはずなのに、その華のある美貌は、どうしても舞台上で目立ちますな。あーさはほんとキレイな整ったお顔ですよ。あ、初演の時のハイメはとうこさんでお馴染み安蘭けいさんが演じたんすね。そうだったんだ。なるほど。
 ◆ユリア:ハイメの彼女で同じくスペイン人。フランスにバイオリン留学をしていたため正規のパスポートを持ってる。演じたのは99期の彩みちるさん。わたしはこの方を今までほぼ意識したことがなかったけれど、可愛いですなあ!? オレの眼はまったく今まで節穴でした。今後注目したいと存じます。
 ほかにも大勢の雪組メンバーが本作を作り上げてくれましたが、長いのでとりあえず以上にしておきます。そして後半はショー、『Gato Bonito!!』であります。
Gatobonito
 「Gato Bonito」ってのは、ポルトガル語で「美しい猫」という意味だそうだ。まあ、Gato=Cat、bonito=beautiful、ということなんだろうと思うが、本作のサブタイトル「~ガート・ボニート、美しい猫のような男~」が示す通り、猫をモチーフとした大変キラキラショーであった。いわゆる「黒塗り」のラテンショーである。なんでも、雪組TOPスターだいもん様は、猫っぽいと言われるようで、そのイメージを具現化してみました的な作品なわけだが、わたしとしては、雪組で猫顔といえばそりゃあやっぱりあーさだろ、と思うわけで、わたしはずっとあーさを双眼鏡で追っておりました。今回もあーさは女装(女性に女装というのはかなりおかしいというか変けどそうとしか言いようがない)がありましたな。男のわたしとしては大変な俺得であります。
 そして、今回のわたしの席は、20列目、前のブロックの一番後ろで通路に面しており、しかも下手側ブロックだったのです。何が言いたいか、観た人なら分かりますね? そうです! わたしの30cm後ろを「黒猫のタンゴ」を歌うだいもん様が通ったのです! 一瞬聞こえた生声にもう大興奮! 最高でした! やっぱり細っそいし、顔も小さいし、華奢ですなあ……。『凱旋門』では抑え目なキャラだっただいもん様は、ショー『Gat Bonito!!』ではハジケまくり、とにかくキラキラでありました。マジ興奮したっす。
 
 とまあ、こんなところかな。もう書きたいことはないかな……。
 では最後に、毎回恒例の今回の「イケ台詞」を発表して終わりたいと思います。
  ※イケ台詞=わたしが「かーっ!! カッコええ!!」と思ったイケてる台詞のこと。
 「あの鳩たちは、いつまたこの街に戻って来るだろう……」
 今回は、ナチスがチェコへ侵攻したことが報じられ、迫りくる戦争への不安の中、街から鳩がバサバサバサっと飛んで行ってしまう(照明でうまーく表現されている)シーンで、主人公ラヴィックが言うこのセリフにしました。まあ、ヨーロッパにいる限り安全な場所はもう無くなってしまったわけで、アメリカに逃げるしかなかっただろうな……あの場面では……。戦後、ラヴィックとボリスが再び再会できたことを祈りたいすね……。

 というわけで、結論。
 このところ、なんとなくわたしの身の回りでは、しょんぼりするようなことばかりが起きていて、ホント、わたし自身暗ーい気持ちでいたのだが、やっぱり宝塚歌劇を観に行くと、気分もアガりますな。まあ、今回の雪組公演『凱旋門』は、そんなわたしの気分に同調するような暗ーいお話ではあったけれど、まあ、ちょっとだけ元気が出たっすわ。そしてショー『Gato Bonito!!』は大変キラキラしたショーであり、黒塗りメイクはちょっとギラギラ感がアップするっすね。なんか元気ももらったような気がします。結論としてはですね、いやあ、宝塚歌劇は本当にいいっすね! であります。以上。

↓ 原作小説の著者、Erich Maria Remark先生は、「西部戦線異状なし」でお馴染みのドイツ人で、1938年にアメリカに亡命した方です。読んでみたい。
凱旋門(上)
エーリッヒ・マリア・レマルク
グーテンベルク21
2015-03-04

凱旋門(下)
エーリッヒ・マリア・レマルク
グーテンベルク21
2015-03-04

↑このページのトップヘ