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 ミュージカル『エリザベート』という作品は、宝塚歌劇をたしなむ淑女なら知らない人はいないだろうし、日本のミュージカルファンなら誰でも知っている作品だろうと思う。日本での初演は1996年の宝塚歌劇団雪組公演で、3年前、初演から20周年となり、今でも数年ごとに再演が繰り返されている大人気作品だ。
 事実、去年も月組によって公演が行われ、わたしも宝塚と東京、両方観に行ったほど好きな作品だが、宝塚歌劇ではない、普通に男も出演する「東宝・帝劇版」もあって、こちらも数年ごとに再演が繰り返されているのである。
 わたしはこの「東宝・帝劇版」は2015年に上演された時に観に行ったことがあるが、まあとにかくチケットを入手することが難しく、この度、3年ぶりに上演されることとなった帝劇版も、観に行きてえなあと思っても、そのチケット獲得の道のりは極めて困難なものであった。何が言いたいかというと、とにかく超人気作品なわけです。
 で。今年上演される2019年版は、その人気をさらに過熱させる要因が一つあった。それは、タイトルロールであるオーストリア皇后、エリザベート(通称「シシィ」)を、去年の宝塚歌劇月組版で同じ役を演じ、それをもって宝塚歌劇団を卒業された愛希れいかさん(以下:ちゃぴ)が、帝劇版でも演じることが決まったからであります。宝塚生活の最後を、エリザベートで、しかも超迫真の演技と歌をもって飾ったちゃぴちゃん。またあのちゃぴシシィを見られるなんて!! と、わたしのように興奮し、コイツは観てえぜ! と思った淑女の皆さんは、恐らく日本全国で100万人ぐらいいたはずだ。
 なお、メインキャストはWキャストになっていて、もちろんシシィと言えば花さま(=花總まりさん。宝塚版初演のシシィを演じた美しいお方)に決まってるでしょ! と仰る淑女も数多いだろう。花さまはこの帝劇版には2015年以来登板を続けており、たしかに、その花さま独特のノーブル感、透明感、そして無邪気な少女から決然と自分の道を征く姿までを完璧に演じるお姿は、控えめに言っても最高であり、至高であることは論を待たないのだが、やはり、今年観るならちゃぴシシィであろうとわたしは思った。そして、冥界の王トート閣下は、今回も2015年版から演じ続けているプリンス芳雄氏(井上芳雄氏)が登板、その声楽で鍛えた歌と若干平たい民族系のクールさは絶妙であるものの、もう一人のトート閣下として、今回初登板となった古川雄大くんがどんなトート様を演じるのかについても、きわめて興味深く、結論としてわたしは、ちゃぴ&古川くんVerが一番観てみたい、と思うに至った。古川くんは、このBlogで何度も書いている通り、その歌声は男ミュージカル役者の中でわたしが一番好きなアクターである。2015年に観たルドルフはわたしの中で最高のルドルフで、あの古川くんが満を持してトート閣下に挑む、というのは、もう超期待なわけであります。
 しかし、とにかくそのチケット争奪戦は熾烈を極め、実はわたしは6月に、1枚、ちゃぴ&古川くんのチケットが取れていたのだが、どうしても都合のつかない急用で行けず、泣く泣く可愛い後輩女子に譲った経緯があった。そのことをわたしの美しきヅカ師匠に話したら、師匠があっさり昨日のチケットを譲ってくれたので、やっと、超楽しみにしていたちゃぴ&古川くんを観に行けたのであります。師匠、ホントいつもありがとうございます!
 というわけで、前置きが長くなったが、昨日のどんよりした小雨の中、わたしはウキウキ気分で帝国劇場、略して帝劇へ向かったのであった。
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 で。いきなり結論を言うと、「マジでちゃぴシシィは最高だったぜ、つうかもう、震えたね!! そして古川くんトート閣下もなんか新しくていいじゃねえか! 要するにもう、最高だよ!!」というのがわたしの感想であります。なので、以下、たぶん同じことばかり言うと思うので、飽きた方はこの辺で退場していただいて結構です。つうか、映像でも最高なのは伝わると思うので貼っておこう。

 というわけで、以下、キャスト別に思ったことを書き連ねてゆこう。わたしが『エリザベート』という作品を観るのは、宝塚版・帝劇版・ガラコンなど含め、恐らく9回目か10回目なので、もちろん主役の二人やフランツ・ルキーニ・ルドルフと言ったメインキャストは勿論だけど、今回は結構アンサンブルキャストの皆さんのすばらしさに目覚めたような気がします。皆さんホント、いいっすね、やっぱり!
 ◆愛希れいかさん as エリザベート皇后:まあ控えめに言ってちゃぴシシィは最高でしたね。明らかに宝塚版からさらに1段上に登ってるとお見受けいたしました。演技、歌、そして少ないけどダンス。すべてが最高レベルに到達していると思います。ちゃぴと言えば、わたしはダンサーとしての技量を最も素晴らしいと思っているけれど、演技もまた最上級のクオリティであり、歌も当然素晴らしかったすな。とりわけ今回は演技、でしょうな。男のわたしには、どうして皇后は息子ルドルフが大ピンチの時に「無理よ」の一言で手を差し伸べるのを拒否したのか、全然理解できないのだが、あのシーンでのちゃぴの、もう完全に心を閉ざした表情は、ヤバかったすね。今回はかなり前の方だったし、双眼鏡でその表情が良く見えました。しかもその時って、ベールをかけてるんだけど、あの冷たい・全く心動かされていない・完全無関心な表情は、ホント双眼鏡越しに観ても心が凍り付いたすね。母親にあの眼で観られたら、ああ、こりゃあもう何を言ってもダメだ、もうオレ、死ぬしかねえ……とルドルフが絶望したのも理解できますよ。しかも、我々観客は、冒頭の超無邪気な可愛いガール時代のシシィを観ているわけで、その変貌は演技として極上だったと思います。ホント、ちゃぴは可愛いし、最高ですなあ。ルイ・シャルルを演じた頃から観ていたわたしは、もう完全に親戚のおじさん目線で、あのちゃぴが立派になりおって……と感無量でありましたね。最高です。
 ◆古川雄大くん as トート閣下:まあ控えめに言って古川くんトートは最高でしたね。トート様は、まあいわゆる「死」を擬人化した、人間にあらざる超常的存在で、この役は演じる方によって相当違いがあって、その違いもまた見どころの一つなわけですが、なんつうか、古川トートは、今まで観たことがないような、無邪気さのようなものを感じたっすね。冒頭の、木から落っこちて死にかけたシシィを発見し、「な、なにぃ! 何だこの可愛い子は!?」的な驚きの表情だったり、後半、夫の浮気についうっかり「命を絶ちます!」とシシィが言った時に、超嬉しそうに、やった、ついに来た!とワクワク顔で「待っていた!!!」というところの笑顔は、とても無邪気で、なんというか、わたしはDEATH NOTEの死神リュークを思い出したっすね。なんか、「人間っておもしれー」的な。古川トート様は、あまり苦悩しなかったように観えました。でも、それもまたアリだと存じます。最高です。
 ◆山崎育三郎氏 as ルイジ・ルキーニ:まあ控えめに言って育三郎ルキーニはやっぱり最高でしたね。2015年版でもわたしは育三郎氏のルキーニを観たけれど、ノリノリ感はもう貫禄すらあって、素晴らしかったと存じます。でも、若干、調子の乗ってる感は抑えめだったような気もする。少し重厚になったというか、ビジュアル的にも顔が重量感増したか? もっとシャープでとがっている印象だったけれど、少しおっさん感があったような……。でも、カッコイイのは間違いなく、その歌声も相変わらず、ありゃセクシーと言っていいんだろうな、淑女の皆さんが聞いたら痺れるであろう、カッコ良さは満点でありました。最高です。
 ◆田代万里生氏 as フランツ・ヨーゼフ1世:まあ控えめに言って最高でした。万里生氏も2015年版で観たけれど、安定のフランツは流石です。つうか、アレなんすよね、宝塚版と帝劇版でわたしが一番違うと思うのは、ラスト直前のフランツで、宝塚版だと「最終答弁」としてルキーニが召喚した幽霊ヤング・フランツが、俺こそシシィを愛した男だ、お前はシシィに振られるのが怖いんだろうが!! と、どちらかというとトート様を攻撃する一方で、帝劇版だと、生きているオールド・フランツが見る「悪夢」という設定になっていて、「お前がハプスブルグを滅亡に追いやったんだ! シシィは俺を愛してるんだ!」とトート様に責められる中で、もっと「やめろ! 俺がシシィ大好きナンバーワンだ! お前は引っ込んでろ!」と髪を振り乱す勢いの激しさを見せるんすよね。ここでの万里生氏の怒り爆発はとても素晴らしかったす。他にも宝塚版と帝劇版は細かい違いがあるんだけど、わたしはこのラスト直前の「最終答弁」と「悪夢」の違いが一番興味深いっす。最高です。
 ◆木村達成氏 as 皇太子ルドルフ:わたしは木村氏を見るのは初めてのようだが、なるほど、イケメンであるのは間違いないすね。歌も大変良いと思います。が、うーん、やっぱりわたしのBESTルドルフは2015年の古川くんかなあ……ルドルフの甘さというか若さ? は、古川くんの声が似合うんすよ……わたしとしては今回の2019年版では、ぜひとも三浦涼介くんVerも観たかったのだが……くそう、マジでBlu-ray出してくれないかなあ……。いずれにせよ、木村氏も大変カッコ良く切なく、今後の活躍を祈りたいすね。
 ◆アンサンブルキャスト:今回一番わたしの目を引いたアンサンブルの方として、美麗さんという方を記録にとどめておかなくてはなるまい。とにかく、顔が小さくスタイル抜群の美人。プログラムを見て初めて知ったけど、なんと宝塚歌劇団月組出身、しかも2009年入団! てことはですよ、わたしイチオシの95期で月組ってことで、それすなわち、ちゃぴと同期でずっと一緒だったってことですよ! マジかよ、全然気が付かなかった。在団当時は麗奈ゆうという名前だったみたいすね、すごく背も高くて、やっぱり男役だったみたい。でも今や、超美人でとにかくセクシー! 娼婦マデレーネはもうヤバかったすね。目立ってましたなあ! ありゃあもう、フランツじゃなくとも男なら100%イチコロっすね。この2ショットが最高です!
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今日は一回公演だったので✨ れいかちゃんとご飯に行きました🍝🥰🍝 パスタ盛り盛り食べました🍝🍝🍝🍝🍝🍝❤️❤️❤️❤️❤️❤️ その後は久々のタピオカ🤣❤️❤️ Chatime行ったよ〜❤️❤️❤️ 沢山食べてお話して今はお風呂でのんびりしてます♨️♨️♨️♨️ この写真、美麗お姉さんぽくて、 れいかちゃん妹っぽい🤣🤣 れいかちゃんきゅるるんてしてて可愛いっ🥰🥰❤️❤️❤️ そういえば、音楽学校時代にれいかちゃんのことをお姉ちゃんって呼んでて笑 組配属になったばかりの時にお稽古場でお姉ちゃんって呼んだら上級生に姉妹なの?って聞かれて笑 れいかちゃんが咄嗟に違いますっっ!!!て言ってたのを思い出した🤣🤣 昔からしっかり者のれいかちゃん✨ 美麗もしっかりしなきゃ🥺✨👍👍👍👍👍 明日も公演頑張ろうっ☺️☺️☺️✨✨✨✨✨ #エリザベート#エリザ#愛希れいか#ちゃぴ#れいかちゃん#美麗#95期#タピオカ#チャタイム

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 うお、ちゃぴも可愛いですなあ……。ほかにも、アンサンブルキャストの皆さんの中には宝塚歌劇団OGの方も多くいて、『エリザベート』きってのかわいそうキャラ、姉のヘレネ(や娼婦などたくさん)を演じた彩花まりさんも95期宙組出身だし、ヴィンディッシュ嬢を演じた真瀬はるかさんも、92期宙組出身とのことで、歌も、そして冒頭の幽霊としてのバレエ的な舞も、実にクオリティが高く、素晴らしかったすね。もちろん、OGと言えば、ゾフィー様を演じた元月組TOPスター剣幸さまも、超おっかないゾフィー様で大変満足です。

 というわけで、もう長いのでぶった切りで結論。

 帝劇では3年ぶりとなるミュージカル『エリザベート』を観てきたのだが、観たかったキャスト、愛希れいかさん&古川雄大くんVerは、期待を上回る素晴らしさでありました。とりわけ、やっぱりちゃぴはすごいね。あの芝居力は本当にすごいす。ぞくぞくしたっすなあ……! そして古川くんトートも、妙に無邪気のような、面白がっているようなトート様はとても新鮮で、大満足であります。もちろん育三郎ルキーニは安定のルキーニであり、万里生フランツも、何一つ文句のつけようはありません。最高でした。そして、アンサンブルキャストの皆さんも本当にブラボーっすねえ! 上には書かなかったけれど、黒天使軍団はやっぱり凄いダンスと肉体で、ありゃあ淑女の皆さんだったら目がハートになるのもやむを得ないでしょうな。そして女性陣も、とても美しくセクシーで言う事ナシであります。最高でした。しっかし、東宝よ、なんで今時DVDなんだ!! Blu-rayで出してくれたら、おれ、全Ver買ったっていいんだぜ!? つうかNHKが8K中継してくれねえかなあ……そしたら今すぐ8K環境を揃えるのに! とにかくチケットが獲れない人気公演だけに、映像化を強く望みます。可能な限りの高画質で!! そこんとこよろしくお願い存じます! 以上。

↓ まずは入門としてこちらをお勧めします。みりおトート&みちこフランツのバトルが良い!

 わたしは宝塚歌劇をたしなむ男として、当然『ベルサイユのばら』はきちんと学習しているわけだが、宝塚歌劇においては、いわゆる『ベルばら』なる演目は、実はいろいろなヴァリエーションがあって、「オスカルとアンドレ編」とか「フェルゼンとマリー・アントワネット編」とか、物語で中心となるキャラクターが違うVerがそれぞれ存在している。まあ、これはヅカファンなら誰しも知っていることだと思うが、おそらくそうでない人には、へえ~? と思うのではなかろうか。
 で。その中で、人気があるのかどうか、わたしは実のところ知らないのだが、『ベルばら』において、一つのカギとなるキャラクターがマリー・アントワネットである。映画や演劇で良く登場する人物だが、これは世界的な人気なのか、日本での局所的な人気なのかもわからないけれど、いずれにせよ、日本においてマリー・アントワネットというお方は、少なくとも知名度としてはかなり高いと思う。
 そして、マリー氏に関してちょっと特徴的なのは「悲劇の王妃」という面と「贅沢三昧で放蕩の限りを尽くした悪女」的な、相反するイメージを同時にお持ちであるということだ。ま、それは作品での描かれ方によるものなので、当然と言えば当然なのだが、歴史的に一つだけ言えることがあるとしたら、マリー・アントワネットという女性は民衆の前でギロチンで首をはねられて死んだ、という事実であろう。それが悲劇なのか、あるいは、ざまあなのか。それはもう、見方次第であるし、非人道的だとか現代的価値観でモノ申しても、ほぼ意味はなかろうと思う。日本だって同じようにバンバン首を斬ってきたわけだし。
 というわけで、わたしは昨日、ミュージカルの聖地でお馴染みの帝国劇場、略して帝劇にて絶賛上演中のミュージカル『マリー・アントワネット』を観てきたのだが、史実にどのくらい忠実なのかよくわからないけれど、とにかくキャスト陣の素晴らしい歌に酔いしれ、大変確かな満足を得たのであった。かなり台詞少な目の歌率の高いミュージカルで、その数々の歌がもうことごとく素晴らしく、とにかくブラボーとしか言えない体験であった。
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 というわけで、帝劇に集った観客の推定90%ぐらいが淑女の皆さんで、これはおそらくはキャストの人気を反映したものと思われる。当たり前か。なんつうか、ミュージカルはまだまだ女性コンテンツなんですかねえ……面白いのになあ……確かにわたしの周りでも、ミュージカルをたしなむ男はほぼおらず、実際わたしも一人で観に行くか、まわりのミュージカル好きな女子と行くかの2択であり、昨日も、ミュージカル好きな女子と帝劇へ推参したのだが、彼女は聞くところによると、マリー・アントワネットというキャラクターが大好きなのだそうだ。それも、『ベルばら』の影響らしいのだが、面白いことに、女性の彼女から見ると、マリーの愛人?であるハンス・アクセル・フォン・フェルゼン様は嫌いなのだという。わたしはまた、フェルゼン様とのロマンスがグッとくるんじゃないの? と聞くと、そうではなく、むしろフェルゼン様はただの女たらしであり、使えない男、という認識なのだそうだ。わたしはその彼女のフェルゼン様観を聞いて、あ、そういう見方をする人もいるんだ、と結構驚いた。実際、なるほど、である。
 そして今回のミュージカル『マリー・アントワネット』は、遠藤周作先生の『王妃マリー・アントワネット』という作品が原作にあたるそうで、それをミュージカル化したものである。なお、本作は2006年に初演が上演されたのち、今回の再演となったのだそうだ。わたしは初演は観ていないのだが、今回の再演ではキャストも一新され、演出も「新演出版」と銘打たれている。そして、数々の素晴らしい楽曲を担当しているのが、これもヅカファンにはお馴染みのMichael Kunze氏とSilvester Levay氏という『エリザベート』を作り上げた黄金コンビだ。まあ、控えめに言って、素晴らしすぎて最高の歌の数々でしたね。
 ちなみに、恥ずかしながらわたしはドイツ文学を専攻していたのに、Stefan Zweig氏の『マリー・アントワネット』は読んでいないし、遠藤先生の作品も読んでいない。なので、わたしのマリー・アントワネット知識は『ベルばら』や映画の物語をベースにしているのだが、特に今回、その知識で困るようなところはなかったす。
 物語は、冒頭、まずはフェルゼン様が、マリー処刑の報を受け取り、なんてこった……と嘆くシーンから始まって、回想に入るという枠構造になっている。そして1775?年から処刑される1793年までが描かれるわけだが、メインとなるのは有名な「首飾り事件」で、その事件によって一気に転落人生となるさまが描かれている。そして、キーとなる人物がマルグリット・アルノー(架空の人物)という、同じ「MA」のイニシャルを持つ女性で、市井で貧しく暮らしていた彼女は、贅沢暮らしのアントワネット憎しの想いが強く、その憎悪を革命派に利用される、的なお話である。つまり、二人の「MA」の対称的な人生模様、が主題となっているわけだ。
 というわけで、以下、各キャラと演じた役者陣をメモしていこう。
 ◆マリー・アントワネット:神聖ローマ帝国皇帝フランツ1世とオーストリア大公国のマリア・テレジアの娘であり、要するにハプスブルク家のお姫様。14歳で後のフランス王ルイ16世(嫁いだころはルイ15世が健在。後のルイ16世は15世の孫。ブルボン朝)に嫁ぎ王妃に。本作を観てわたしが思ったのは、アントワネットに罪があるとしたら、あまりに想像力が欠如していた点であろうと思う。想像力とは、自らの暮らしが如何にして成り立っているのか、に対する認識であり、例えばドレス1着でも、どのようにしてつくられて今自分の手元にあるのか、そしてそれを購入した金はどこから、どうやって国庫に入ってきたのか、を理解する責任と言い換えてもいいだろう。そして、これは何も国家に限らず、普通の企業にも言えることだが、100%間違いなく、TOPに立つ者の周りには、TOPの耳に聞こえのいいことしか言わない奴らが跳梁跋扈してしまう。王や企業のTOPは、そいつらからだけ話を聞いていては、あっという間に腐敗してしまうのが残念ながら事実なので、もうチョイ、きちんと全体を見張る「目」が必要だったはずだ。そしてそういう「目」は、間違いなくTOPの想像力が要求するものだと思う。ホントに大丈夫なのかな、とあらゆる事態を想像する力がTOPには必要なのに、それを持ち得なかった。それが、アントワネットの罪であり、結局のところ、王妃の器ではなかったと言わざるを得ないのではなかろうか。とはいえ……実際のところ、フランス財政はもうルイ15世の頃からヤバかったわけで、たぶんアントワネット一人ではもうどうにもできなかっただろうな……それでも、やっぱりTOPとして、国の現状をきちんと客観的に理解する責任はあったのは間違いないだろうから、やっぱりアレですかね、もうチョイ、マリア・テレジアお母さんと緊密に連絡を取り合ってればよかったのかもしれないすな……。ああ、でもそれだとまたスパイとか言われちゃうか。八方ふさがりだったんですかねえ……。
 で、今回演じたのは、Wキャストだけどわたしが観た回は花總まりさまがアントワネットを演じておられました。わたしは2010年にヅカ道に入門したので、花さまの現役時代は生で観ていないのだが……まあ、いつ観ても、どんな作品でも、お美しいですよ。もう45歳だそうですが、まったく見えないね。なんつうかな、花さまのもつ、ノーブル感、そして透明感は完全にオンリーワンですな。歌も演技も、もちろん超最高でした。ブラボーでありますね。
 ◆マルグリット・アルノー:もう一人の「MA」。市井に暮らす貧しい女性。ラストで、な、なんだってーーー!? という驚愕の出生の秘密が明かされる。マルグリットは、食べるものもなく、単純にもう生きていくのが限界で、王宮で贅沢三昧のアントワネットに対する憎悪を燃やしていたのだが、その怒りのパワーがすさまじく、王座を狙うオルレアン公や後のジャコバン派の連中に利用されていくが……ラストの、憎しみの連鎖を断つのは生きている我々だ的な歌が胸にしみましたなあ……。
 演じたのは、こういう怒りパワーが炸裂する熱い女子を演じさせたら恐らく日本一のソニンちゃん。Wキャストの昆夏美ちゃんVerもきっと素晴らしかったんだろうけど、とにかくソニンちゃんの熱く激しい歌は超最高でした。やっぱりこのお方はその若干ちびっ子な体をフルに使って、我々観客のハートを鷲掴みにしますな。勿論ブラボーであります。実はわたし、大ファンす。
 ◆ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン:スウェーデンの貴族で軍人。アメリカ独立戦争にも出征している。今回は、仮面舞踏会でアントワネットと知り合って後、愛人だのと悪いうわさが流れるのを嫌って一度帰国した後、アメリカに行って、帰って来て、再びアントワネットのいるフランスに駐在することになったあたりから物語が始まる。男のわたしの視点では、頑張ったけどどうしようもなかった、と思えるため、別にフェルゼン様は嫌いではないのだが……確かに、本作ではアントワネットに何もしてやれなかった男という感じに描かれてはいた。わたし、ヅカ版でフェルゼン様が歌う「駆けろペガサスの如く」の歌がすげえ好きなのです。「行く手~に~ なーやみ多くとも~ 行け! 行け! 我が命の、つ~づ~く~か~ぎ~り~~~!」の盛り上がりが大好きなんすよ……でも、今回は、フェルゼン様の大活躍はほぼありませんでした。残念。
 そして演じたのは、わたしが男のミュージカル俳優でイチオシの古川雄大くん31歳。彼の声は、まあ、甘い声なんでしょうな。彼のルドルフは最高だと思うわけですが、今回のフェルゼン様も、まあ切ない感じが大変結構なお点前であったと思います。素晴らしかったすね。
 ◆オルレアン公ルイ・フィリップ:今回、王位を自ら手中にするために、「首飾り事件」の黒幕として暗躍する悪い人。わたしは、コイツって、アレか、ナポレオン没落後、7月革命で即位するオルレアン公ルイ・フィリップ(通称「フランス国民の王」)のことか、と思ったのだが、どう考えても時代がズレていて、どういうことだ?? と謎に思ったので調べてみたところ、どうやら、その父親も、同じくオルレアン公ルイ・フィリップ2世という人物で、今回出てきたのはこの父親のようです。史実でも、「首飾り事件」でアントワネットを攻撃した人物みたいですな。なので、本作で悪役として出てきたアイツの息子が約40年後の1830年の7月革命でフランス王になるってことのようだ。
 で、演じたのは吉原光夫氏というお方で、まずデカイ! 190cmはありそうなぐらいデカい! そして、おっそろしく声がイケボで、超カッコ良し!であった。どうやらこの吉原氏のパフォーマンスを観るのはわたしは初めてのようだが、元劇団四季のお方だそうで、『レミゼ』にもバルジャンやジャベールで出演されていた方だそうだ。ひょっとしたら、わたしが観た時のジャベールだったかも……という気もする。ちょっとこのイケボイスは覚えておきたいと思った。素晴らしかったです。悪役ですが。

 というわけで、書いておきたいことがなくなったので結論。
 現在帝劇にて絶賛上演中の新演出版ミュージカル『マリー・アントワネット』を観てきたのだが、まず、台詞率低めの歌率高めな作品であり、その数々の歌が超素晴らしかった。そして演じる役者陣のパフォーマンスも素晴らしく、とりわけ、アントワネットの花總まりさんは最高だし、マルグリットのソニンちゃんも熱く、フェルゼン様を切なく演じた古川雄大くんの声は甘く、そして悪党オルレアン公を演じた吉原光夫氏のイケボは男が聞いても圧倒的にカッコ良く、結論としてはもう、超最高でした! としか言いようがないす。これは絶対、劇場で、生のライブで観ないといけない作品だと思いますね。映像ではこの熱は伝わり切らないのではなかろうか。とにかく熱く、激しく、美しい3時間でありました(休憩含む)。やっぱり、ナマはイイですな! つうか、ナマに限りますな! ミュージカルは! 以上。

↓ やっぱり狐狸庵先生の原作も読んでみたいですなあ……。


 昨日は早めの昼食をとってから、一路有楽町へ馳せ参じ、ミュージカルの聖地でお馴染みの帝国劇場、略して帝劇へ行ってきた。理由はもちろん、現在帝劇で絶賛上演中のコイツを観るためである。
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 ジャニーズきってのミュージカル俳優として名高いKinki Kidsの堂本光一氏と、ミュージカル界のプリンスでお馴染みの井上芳雄氏のダブル主演作、『Knights Tale―騎士物語―』であります。まあ、結論から言うと、古臭いというとネガティブだが、ある意味様式美ともいえる非常にShakespeare的セリフ回しで、このBlogでも何度か書いたことがあるけど、わたしは日本語で読めるShakespeare作品をほぼすべて読んでいるので、なんか懐かしさも感じ、大変楽しめたのであった。そして、もちろん、光一氏&芳雄氏の歌は素晴らしいし、さらに言うと、二人のヒロインがもの凄く良かった! のである。いやあ、参ったすね。わたしは初めて上白石萌音ちゃんの歌を聞いたけど、この方は相当イイ! 全然知らなかったので、非常に驚いたっす。

 さてと。まずは物語からまとめると、二人の仲良しの騎士がいて(二人はいとこ同士)、同じ女性を好きになり、その取り合いで絆が壊れてしまうけれど、全く別の女子が片方の騎士を好きになって、まあ、結果めでたしめでたしになるというお話である。サーセン。超はしょりました。詳しくは公式サイトをチェックしてください。
 この物語は、Shakesperare作品を大抵読んでいるわたしであっても、実は全然知らなくて、こんな作品があることすら、情けないことに知らなかった。というのも、もともとGeoffery Chaucerの『The Canterbury Tale』(読んだことあるけど全然覚えてないす)の中の『The Knight's Tale』が原典だそうだが、どうやらこの作品の原作である『二人の貴公子』という戯曲は、ShakespreareとJohn Fletcher氏の合作だそうで、英文科の人なら常識かもしれないけど、そうでないわたしは恥ずかしながら全く知識がなかったのである。どうも、わたしがShakespeareを読みふけっていた1990年当時は全然日本で紹介されておらず、日本語訳も出版されていなかったみたいですな。しかし、わたしは今回舞台を観ながら、なんかこの話知ってるような気がする……という思いが離れず、さっき調べてみたらその理由があっさり判明した。そう、わたしの愛する宝塚歌劇で、一度上演されていたのだ。それは2009年のバウ公演、当時の月組の若手であった龍真咲さんと明日海りおさんの、世に言う「まさみり」時代に上演された『二人の貴公子』で、わたし、WOWOWで思いっきり観ていたのである。なので、さっき、そうか、アレか! と超謎が解けてスッキリしたのであった。あまりに懐かしいので、後ほどBlu-rayに保存してあるまさみり版も観てみようと思います。【2018/08/16追記:さっそく、まさみり版『二人の貴公子』を観てみたところ、大筋は同じでもエンディングはまったく違っていて、悲劇的エンディングだったので驚いた。原作に忠実なのはどっちなんだろうか? まあとにかく、まさおもみりおちゃんも若くて、大変結構なお点前でした。みりおちゃんが研7、この後すぐ『エリザベート』の新公でトート様をやる直前だったようです】
 というわけで、各登場キャラクターと演じた役者陣をまとめておこう。
 ◆アーサイト:二人の騎士A。テーベの騎士。敵国アテネに捕虜として連行され、牢獄の窓の外に見たエミーリアにひとめぼれ。後に彼は賠償金が払われて釈放されるも、森で出会ったダンサーたちに潜入し、アテネにとどまり、エミーリアの従者に。しかし残された親友との再会が悲劇を―――的な展開。演じたのはジャニーズの誇るミュージカルスター堂本光一氏。わたしは初めて生の光一氏のパフォーマンスを観た。一言で言えば、さすが、すね。歌もダンスもやっぱり一流ですよ。本作はShakespeare作品ではある意味お馴染みのギャグというか喜劇なわけで、意外なほど客席からは笑いが起こってました。光一氏はそんな辺りも余裕でこなしてましたね。お見事っす。ちなみに宝塚版で演じたのはみりおちゃんす。
 ◆パラモン:二人の騎士B。テーベの騎士。アーサイトと同じくエミーリアにひとめぼれ。ただし彼はずっと虜囚のままであり、ちくしょうおのれ、と思っていたところ、門番の娘がパラモンにぞっこんLOVEとなり、その手引きで脱獄に成功。そして親友アーサナイトとの決闘へ――的な展開。演じたのはプリンス井上芳雄氏。芳雄氏のパフォーマンスはもちろんいつも通り見事。喜劇もお手の物ですな。しかし、芳雄氏の歌い方は明らかに藝大で鍛えた声楽系で、光一氏の歌とのハーモニーは……どうだろう、合ってたのかな……その辺は観た人それぞれの評価にお任せします。わたしとしては……若干芳雄氏の声ばかり耳に入ってきたような気がする。宝塚版ではまさおが演じた役ですな。
 ◆エミーリア:アテネの大公の妹。二人の騎士に惚れられちゃう女子。演じたのは、元雪組TOPスター音月桂さん。わたしは宝塚時代の音月さんを何度も観ているが、まあ、やっぱり美しく、可愛いですよ。歌も素晴らしく、すっかり美しい女子に戻りましたな。とにかく、明らかに鍛えている体が素晴らしくキレイ。とりわけ、程よく筋肉の付いたほっそりした二の腕がウルトラビューティフル! 最高でした。あと、一つだけ、ショックなのは……エミーリアの台詞で「まあダメ男だけど顔はイイし」的な発言があって、ほぼ女性客9割の場内は笑いの渦でしたが、残念ながらイケメンに生まれなかったわたしは、ちぇっ、なんだよ! イケメンなら許されんのかよ! としょんぼりしたっす。まあ、しょうがないよね、それは。
 ◆牢番の娘:パラモンに惚れてしまい、脱獄の手引きをするが、パラモンはエミーリアLOVEであっさり振られてしまい、そのショックで一時気が狂ってしまうが、エミーリアの看護で正気に戻り、二人の騎士の決闘に割って入り――的な展開。演じたのは上白石萌音ちゃん20歳。わたしは彼女について、『君の名は』のヒロインの声の人でしょ、ぐらいしか知らなかったのだが、もうホントおみそれしました。超イイじゃあないですか! すっごいちびっ子(身長が座ってる芳雄氏と同じぐらいしかない!)のに、歌は猛烈にパワフルで、ダンスもすっごいエネルギッシュ! こういうある種のギャップは最強の萌えですよ! 足はサリーちゃんだし、腰のくびれもない、完全幼児体型だけど、この才能はホンモノすね。あまりにちびっ子なので、役が限定されちゃうかもしれないけど、今後、大人になって幼児体型も解消されていくことでしょう。彼女の今後には、マジでチェックが必要ですな。またその素晴らしいパフォーマンスを観たいものです。なお、宝塚版では蘭乃はなちゃんが演じたようです。後でチェックしてみよう。【2018/08/16追記:チェックした結果、蘭はなちゃんが月組時代、たぶん研4ぐらいか? 大変可愛かったす】
 ◆ヒポリタ:元々アマゾン族(?)の女性だが、ある意味虜囚としてアテネの大公の嫁に。物語上のキーキャラの一人。演じたのは、子役時代のロビンちゃんでお馴染み島田歌穂さん。歌穂さんは何歳なんだろうな……全く謎だけど、まあ綺麗ですよ。顔が小さく、非常なる美人です。そして歌ももう圧倒的存在感で、ソロで歌い出すともう場を支配しますな。お見事でした。
 ◆シーシアス:アテネの大公。演じたのは、Cube三銃士Non-STARSのメンバーでお馴染み岸祐二氏。この人は元々「激走戦隊カーレンジャー」(1996年だからもう20年以上前か!)のレッドでデビューしたお方で、声優としても様々な仕事をされているお方だし、ミュージカルアクターとしても有名人だが、わたしは今回初めて生のパフォーマンスを観た。ゴツイ体と迫力のイケボイスはさすがすね。大変カッコ良かったと存じます。
 とまあ、こんなところかな。あ、あと一つ。冒頭の「三人の王妃」が歌うハーモニーがすごく綺麗で、この三人は相当デキル方々だぞ……と思って、帰って来てパンフをチェックしたところ、TVのカラオケバトルでお馴染みの七瀬りりこさん、レミゼなどのミュージカルでお馴染みの青山郁代さん、折井理子さんのお三方だったようで、なるほど、さもありなん、と納得の実力者であった。お三方は多くの場面でコーラス的に歌っておられて、非常にお見事なハーモニーであったと思う。
 ところでわたしは今回、東宝のナビサーブでチケットを普通に申し込んで普通に買えたのだが、どうやらチケットはかなり獲るのが難しかったようで、先日わたしのヅカ師匠の美しきお姉さまに、おれ、今度帝劇で『ナイツテイル』観てくるっす、と軽~く報告したところ、「な、なんですって! わたしはナビサーブは落ちたし、光一君のファンクラブ経由でも獲れなかったのよ!」とすごい勢いで話し始めたので、あ、じゃあ、一緒に行きましょうよ、まだ誰も誘ってないすから、師匠なら大歓迎っす、というわけで、いつも宝塚歌劇のチケットを獲ってもらっている恩返しができて、その点でも良かったす。

 というわけで、結論。
 現在帝劇にて絶賛上演中の『KNIGHTS TALE―騎士物語―』を観てきたのだが、主役の二人である堂本光一氏と井上芳雄氏のパフォーマンスは、もちろんのこと文句なく素晴らしく、ブラボーであった。そして、わたしがとにかく素晴らしいと感じたのは二人のヒロインで、元雪組TOPスターの音月桂さんはすっかり美しい女性として、歌も芝居も素晴らしく、また体つきも明らかに鍛えていてとてもBeautifulであった。そしてもう一人、弱冠20歳の上白石萌音ちゃんは、わたしは全く知らなかったがこれまで舞台経験も多く、その非常にちびっ子&幼児体形BODYからは想像の付かないようなパワフルな歌と、エネルギッシュなダンスは観ていて感動的ですらあった。あれっすね、完全にわたしは、頑張る娘を見守るお父さん的まなざしで観ていたように思う。いやあ、素晴らしい女優ですよ彼女は。そして、書き忘れたけど、本作はオーケストラに加え、和太鼓&三味線&横笛も非常に印象的な使い方をしていて、特に和太鼓のビートがすっげえカッコ良かったす。ラストの決闘シーンの二人の騎士は、鎧武者のような衣装だったし、そこはかとなく漂う「和」のテイストは、演出としてとても良かったと存じます。一言でいうと、最高でした。以上。

↓これか……読んでみたくなったすね。面白そうす。
二人の貴公子
ウィリアム・シェイクスピア
白水社
2018-03-20

 たぶん、わたしの記憶によれば、わたしが平原綾香ちゃん(以下、あーやと略)をかわいい、と初めて思ったのは、2008年にCXで放送されたドラマ『風のガーデン』であったと思う。あーやちゃんは、ご存知の通り2003年に「Jupiter」でデビューして、その頃はすでにもう知名度は上がっていたはずだが、わたしはあーやちゃんに対してほぼノーチェックで、2008年の『風のガーデン』というドラマにチラッと出演しつつ、その主題歌を歌っている姿を観て、初めてわたしは、おっと、ちょっと可愛いんじゃね? と思ったのである。
 そのドラマは、中井貴一氏が主役で、東京の医者の役だったのだが、末期がんであることが判明して、倉本聰氏による脚本ということで舞台は東京から故郷(?)の富良野に移り住む。そして最終的には富良野で静かに亡くなる、というかなり泣ける物語であったが、あーやちゃんは主人公の東京での恋人(?愛人というべきか?)で無名の歌手、という設定で、最終回に、主人公を偲んで主題歌の「カンパニュラの恋」を切々と歌うシーンが素晴らしくて、わたしはもうやけに感動してしまったのである。歌声が素晴らしいのは世に知られている通りだが、とにかく、一筋流す涙に、わたしは完全ノックアウトされたのだった。
 以降、わたしはあーやちゃんをずっと気にしていて、コンサートに行ったことはないけれど、車ではCDをよく聞いていたのだが、まあ、実際それっきりであった。しかし、わたしは2015年に、再びあーやちゃんに大注目することになったのである。それは、わたしの大好きな作品『The Sound of Music』の制作50周年記念として発売されたBlu-rayにおいて、マリア先生の日本語音声版をあーやちゃんが演じたのである。これがもう、超魅力的で、歌はもちろん、演技ぶりも実に素晴らしく、これはすごい、やっぱりあーやちゃんは大変な才能ある人だ、という認識を深めたのであった。
 そして。ミュージカル好きのわたしとしては、その見事なマリア先生ぶりから、いっそ、あーやちゃんはミュージカルに進出すればいいのに、と思っていたのだが、実はすでに2014年の段階で『Love Never Die』に出演されており、まったく気が付かなかったわたしは当然観ておらず、うおお、マジかよ、抜かってた!と自らのボンクラぶりに失望していたのである。
 しかし。そんなわたしの願いをかなえてくれる、あーやちゃん主演のミュージカルが7月から帝劇で始まっており、わたしはもう3月ぐらいだったかな、チケットも早々に入手し、今日、ミュージカルの聖地たる帝劇へ推参した次第である。そのタイトルは『Beautiful~The Carole King Musical』。本場Broadwayでは2014年から今もなお上演されている、アメリカ音楽界のレジェンドともいうべきCarole King女史の伝記的ミュージカルである。
 そしてもう結論を言うが、あーやちゃんの圧倒的な歌唱力と、可愛らしい演技でわたしはもう大感動&大興奮&大満足となったのである。マジ最高でした!
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 ↑帝劇では絶賛上演中だが、来週でもう終わってしまいます。
 ↓そして、上の写真、下の写真でもわかる通り、主役のキャロルは、あーやちゃんと、声優として、そしてシンガーとして大人気の水樹奈々嬢のダブルキャストである。
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 わたしはあーやちゃんが観たくて観に行ったので、水樹奈々嬢Ver.は観ていないわけだが、動画が公開されている二人のパフォーマンスを観ると、相当の違いがあって、歌い方や声など、ある意味全然違う個性があって、水樹奈々嬢Ver.も観に行けばよかったと超今さら深く後悔している。実際のところ、ラスト1週間もまだ平日の昼の回とかならチケット買えるようだが……ちょっと無理だなあ……残念ながら。しかし、あーやちゃんには申し訳ないのだが、チケットの売れ行きはどうやら水樹嬢の回の方が売れているような印象を受けた。まあ、大人気声優だし、さもありなん、とは思うし、そもそもお二人を比べるつもりもないけれど、わたしとしては今日観たあーやちゃんVerは大満足であった。

 ↑こんな感じに、結構違いがあって、ホント両Ver.観に行けばよかったよ……まあ、もはや超今さらなのでどうしようもない。
 で。物語は、Carole King女史のサクセスを追ったものとわたしは思っていたのだが、実際にはそう単純なものではなく、夫となる男との出会いや、出産、大ヒットを飛ばすサクセスの後に訪れる別れ、そして良きライバルとしてしのぎを削った人々との交流などが丁寧に描かれ、大変見応えがあった。もちろん、全編Carole女史の名曲のオンパレードである。
 パンフレットによると、特定のアーティストが手掛けた楽曲でミュージカル・ナンバーを構成する作品を「ジュークボックス・ミュージカル」というのだそうだ。例えば『マンマ・ミーア!』はご存知ABBAの曲だけだし、『ジャージー・ボーイズ』はフランキー・ヴァリの曲で構成されていることは、映画版しか見ていないわたしでも知っての通りで、ああ、なるほど、ジュークボックスか、と納得である。で、こういったジュークボックス・ミュージカルは2系統あるそうで、『マンマ・ミーア!』タイプは「物語型」で、オリジナルの物語に上手く既成曲をあてはめているものを指し、もう一つは「伝記型」で、『ジャージー・ボーイズ』や本作『Beautiful』のように、主人公はそのアーティスト本人で、その人の人生を楽曲で綴るという形になっている。
 正直に告白すると、わたしはCarole King女史といえば、いわゆるシンガー・ソングライターの草分け的なお方だと思っていたのだが、本作を観てそれが全然間違いであることを初めて知った。彼女は、もともとソングライター(作曲担当)であって、自分では歌わない人だったんですね。そして詩は旦那が書いていたんですな。つまり、顔出しはしない、言ってみれば普通の主婦、だったんですな。さらに言うとその夫婦でソングライターをしていた時代の作品が、さまざまな有名な曲として大ヒットしていたんですな。しかし、その後、旦那との悲しいすれ違いの末に離婚を経験し、住み慣れたNYCブルックリンを離れて西海岸LAに引っ越し、そこから初めて、自分で歌うようになったんですね。そうだったんだなあ。全然知らなかったす。
 わたしが今日観て、非常に素晴らしいと感じたのは、あーやちゃんによる演技は、「普通の主婦」という人物像が見事に反映されている点で、確かにその才能は全く普通の人ではないけれど、子を育て、服もメイクも全く普通の女性である、という点にとても興味を持った。
 失礼ながら、あーやちゃんの、健康的な(わたし好みの若干むっちり目な)体つきも、その「普通」な人を表現するのに一役買っているような気がする。たぶん、素のあーやちゃんにもし街で出会ったら、その纏う「普通じゃない」オーラに圧倒されることになるのだろうと想像するが、本作ではそのオーラを封印し、実に「普通」で、実に見事だとわたしは感じた。この点は、かわいくてほっそりして、オーラがバリバリな水樹嬢がどう演じたのか非常に興味があるところだ。キャロルという人物は、ある意味天才タイプだと思うけれど、天才アーティストにありがちな、エキセントリックな行動もないし、まったくの常識人だし、その才能が稼ぎ出したであろう財産も別に浪費することもなく、ひけらかすこともなく、いたって「普通の人」なのだ。なので、正直物語が生まれようがないというか、ヤマ場が作りにくいようにも思う。だけど、そんな普通の女性が、夫との別れを経て、複数の曲を物語として、「アルバム」を出したい!と思うに至る流れは非常に感情移入できるもので、実際とても引き込まれたし、ラスト、とうとうカーネギーホールでのコンサートに至るラストは、観ていて、ホントに良かったね、と心から応援したくなるような爽快感があった。そして何より、あーやちゃんのソウルフルな力強い歌声がもう、ハートに突き刺さりますね。いやあ、本当に素晴らしかったよ。まさしくブラボー! でありました。
 そんなあーやちゃんを支える、5人のキャストを紹介しておこう。
 まず、旦那であるジェリーを演じたのが、伊礼彼方氏。わたしにとって彼は『ミュージカル・テニスの王子様』における六角中の佐伯さんですよ。彼の「一つやり残したことがあってね~」という歌がわたしはかなり好きでしたなあ。もう10年ぐらい前の、わたしが初めて生で観た比嘉中戦でしたな。今やすっかり日本ミュージカル界において様々な役を演じる実力派だけれど、あれから、伊礼氏もずっと鍛錬を重ねていたんだなあと非常に感慨深いです。今回の役は、精神を病んでしまう非常に難しい役だと思うけれど、大変カッコ良かったすね。もっと歌ってもらいたかったなあ。
 そしてCarole女史のライバルとして登場するバリーとシンシアのペアを演じたのが、中川晃教氏とソニンちゃんだ。二人とも、日本ミュージカル界ではおなじみの実力者ですな。中川氏の特徴であるファルセットは炸裂しまくるし、ソニンちゃんも本当に上手い。この二人は、Carole女史のライバルソングライターチームなのだが、決して足を引っ張りあうようなことはなく、常に切磋琢磨し、時に悩みの相談をお互いするような、美しい関係で、とても善良な二人であった。笑わせてくれるようなコメディ・リリーフの役割もあって、大変笑わせてもらいました。二人の歌・演技ともに素晴らしかったと絶賛したい。
 全然関係ないことだが、わたしは、常々、楽器が弾けたらカッコいいだろうなあ……とモテない男として妄想していたけれど、ミュージカルを観るようになってからは、ひょっとしたら楽器が弾けるよりも、歌がうまい方がカッコイイのではないだろうか? と思うようになった。どうすればあんなにカッコ良く歌えるようになるんだろう……訓練あるのみ、だろうけど、一体全体、何をどう訓練すればいいんだろうか……。どっかに教わりに行くしかないすかねえ。
 話がそれた。あと二人。Carole女史の才能を買い、何かと面倒を見てくれるレコード会社の社長ドニーを武田真治氏が、そしてCarole女史のお母さんを元宝塚TOPスター剣幸さんがそれぞれ演じていた。二人ともほぼ歌わないのだが、ドニーのキャラは大変良かったですなあ。こういうお話にありがちな、強欲な社長では全然なく、これがまた超善人だし。そしてお母さんは元々Carole女史を教職につけたくて、音楽の道に進むことを反対していたのに、ラストのカーネギーでのコンサート前には、あたしが歌を教えたのよ、この子ったら教師になるなんて言ってたのに、と調子のいいことをさらっと言っていて、まあそこは大変笑わせてもらいました。
 しかし、カーテンコールでぴょんぴょん飛び跳ねて喜びを全身で表すあーやちゃんは本当に可愛い女子だなあ、とわたしのあーや株はもう急上昇である。いや、この娘はかわいい! と思いを深めるわたしであった。本当に素晴らしかったよ。


 というわけで、もう結論。
 今日、帝劇にて絶賛上演中の『Beautiful~The Carole King Musical』を平原綾香さんVer.で観てきたのだが、まあとにかく大興奮であった。あーやちゃんの歌はホントに凄い。どうすればあんなに歌えるんだろうか? ちょっと想像がつかない。そして、あーやちゃんの演技も実にお見事で、わたしはCarole Kingという人がこんなに普通な女性であることを初めて知った。あーやちゃんは何というか……その声も可愛いし、その体つきも実に普通というか……なんか、人工的じゃないんですよね。無理にダイエットして作り上げた体じゃないというか、実に女性らしいラインで、大変魅力的だと思う。要するに、今日わたしは再び、平原綾香という女性にぞっこんとなったのである。また、ぜひともミュージカルに出演していただきたいと思う。その才能は、本物ですよ。まさしくビューティフル! とにかく、最高でした。以上。

↓ ホント、なんでオレはドレミの歌でこんなにも胸にジーンとくるんだ? というぐらい、平原綾香嬢の吹き替えは素晴らしいと思います。こちらも超必見ですよ!
サウンド・オブ・ミュージック 製作50周年記念版 ブルーレイ(3枚組) [Blu-ray]
ジュリー・アンドリュース
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
2015-05-02

 わたしは正真正銘、男である。中学高校は男子校で過ごし、好きなマンガは何かと聞かれれば、そんなの『北斗の拳』に決まってんだろうが! と答える、おっさんである。
 そして、わたしはかれこれ20年以上、いわゆるエンターテインメント業界、コンテンツ業界に身を置いているわけだが、仕事としてもそうだし、個人的にも、ずっと、「女性ファンをがっちり抱える」コンテンツに非常に興味があった。何でそんなに人気があるんだ? という単純な疑問である。なので、わたしはこれまで、少女マンガを読み漁って勉強してみたり、一時はBLも読んでみたし、ハーレクイーンすら読んだことがある。実際に読んでみて、まずどんなものを知ってみるのが重要だと思うからそうするわけだが、さすがにBLなどはまったく理解の外にあるわけで、そういうときは、実際のファンの女性に話を聞いてみないと、消化できない場合がある。まあ、そういうものは、そもそも最初から、ファンの女性に「どれ読んでみればいいかな? お勧めはどの作品?」と聞いてからはじめるので、いきなり自己流で勉強をしても、埒が明かないものだ。幸い、わたしの周りには仕事柄そういう「熱心なファン」がたくさんいるので、この分野ならあの人に聞いてみるか、みたいな、わたしの脳内にはオタク生息マップが出来ているので、意見を聞く人材には事欠かない状況でもあった。
 
 で。
 わたしが2010年から調査を始めて、完全にミイラ取りがミイラになっているカテゴリーがある。それが禁断の王様(女王?)カテゴリーに属する『宝塚歌劇』である。実は、宝塚に至る前に、わたしがはまっていたカテゴリーがあった。それは、いわゆる「2.5次元ミュージカル」と呼ばれるもので、要するに、コミックを原作としたミュージカルで、中でも最大規模を誇り、一番初めの公演から既に10年以上も世の女子を熱狂させているのが『テニスの王子様ミュージカル』、通称『テニミュ』だ。なお、マンガが2次元、そして生身のミュージカルが3次元、ということで、両者が融合しているために「2.5次元ミュージカル」と称されている。
 わたしが『テニミュ』を初めて観たのが2007年。週刊少年ジャンプを30年以上読み続けているわたしは、無論のこと原作である『テニスの王子様』は知っているし、そのミュージカルなるモノがやけに人気だと言うことも知っていた。ならば一度見てみたいものだと、わたしのネットワーク内に存在する『テニミュ』に足しげく通っている女子を探し、今度一緒に連れて行ってくれ、と頼んで、それから数ヵ月後にやっと連れて行ってもらったのが始まりだ。
 結論としては、驚いた。そして面白かった。なんだよ、すげえすげえ、これは面白い、と思った。イケメン学芸会と揶揄されていた当時、実際に観てみると、確かに歌などは、冷静に聞くとこれはひどいwという場合もあるが、キャストの頑張っているさまは、やっぱり生で観ている観客にもしっかり伝わるもので、ははあ、なるほど、これは人気があるのもうなずける、と納得できるものであった。
 なお、わたしを連れて行ってくれた女子によると、「下手なことはもちろん十分に分かっている。けど、なんというか親の気分になるっていうか、頑張れって思えてくるの」という事らしい。なるほど、いわゆる母性本能をくすぐるものと理解していいのかもしれない。というわけで、わたしは『テニミュ』にその後10回ぐらいは行ったと思う(「DREAM LIVE」、通称ドリライ2回含む)。
 このような背景からわたしは、俄然「ミュージカル」というものに興味を持ち、その後いろいろなミュージカルを見るようになるのだが、そこで立ちはだかったのが、誰もがその存在を知っている『宝塚歌劇』という巨人だ。それまでわたしは、wowowでの放送で何度か『宝塚歌劇』の公演を観たことがあったが、正直、ちょっとピンとこなかった。やはり生でないとダメかもな、と思ったわたしは、なんとしても「ヅカ」を一度生で観てみたいと熱望し、これまたわたしのネットワーク内に存在する、ヅカファンのお姉さまたちにコンタクトを取ったのである。「おれ、一度生でヅカを観てみたいんすよね」、と。
 やはり、自分が大好きなものに興味を持ってくれると、誰でも嬉しいものだと思うが、わたしがお願いしたお姉さまは、ごくあっさりチケットを用意してくれ(思えばすげえいい席だった)、わたしのヅカ探求の道は2010年1月に始まったのである。最初の衝撃は今でもはっきり覚えている。わたしのヅカ初体験は、星組公演で、そのときの主役である、いわゆるTOPスター柚希礼音さんに完全にFall in LOVEしてしまったのだ。
 たぶん、わたしが柚希さん(愛称:ちえちゃん)に感じたカッコよさは、ヅカファンのお姉さまたちが感じるものとはちょっと違うんだと思う。わたしは、あくまでちえちゃんを女性として愛しており、ちえちゃんの醸し出す男オーラも、あくまで女性の魅力の一部として受け取っていた。わたしにとってちえちゃんは、あくまでも完全に女子なのだ。

 はっ!? いかん!! ちえちゃんのことを語りだすと96時間ぐらいは必要だから、この辺でとめておこう。ともかく、First Contactから5年ほどが過ぎたが、今ではわたしは、年間7~8公演ぐらい観にいくほどのヅカファンになってしまったわけである。

 で、『エリザベート』だ。


 ファンなら誰でも知っているが、そうでない人はまったく知らないと思うのでちょっとだけ解説しよう。『エリザベート』というミュージカルは、元々ウィーンで初演がなされたドイツ語ミュージカルである。それを日本語化したものなのだが、日本の初演は宝塚歌劇なのである。1996年の初演以降、今のところ8回再演され、公演回数は通算800回、観客動員200万人を突破した、『ベルサイユのバラ』に次ぐ人気タイトルと言っていいだろう。その後、2000年からは男性キャストを交えた東宝ミュージカル版も、何度も再演されており、非常に高い人気を誇るコンテンツとなっている。
  わたしは、ヅカファン暦5年の、まだまだ駆け出しの身分なので、『エリザベート』という作品が高い人気を誇っていることは知ってはいたものの、宝塚版を初めて観たのは、2014年版の花組公演だ。花組の新TOPお披露目となるその公演は、わたしはほかの公演を知らないので、すさまじくカッコよく大満足だったが、どうやらベテランのヅカファンのお姉さまたちから見ると、まあ、みりおちゃんのトート様はかわいかったわね、まあいいんじゃない? 程度の扱いらしい。そうなんだ、マジか、と歴戦のお姉さまたちの厳しい目には、ただただ敬意を表するばかりである。(注:みりおちゃん=明日海りおさんという花組TOP男役、トート様=ドイツ語のDer Tod。英語で言うとDeathの意味。エリザベートの主役たる冥界の王。恐ろしくカッコいい)

 とりあえず、『エリザベート』という作品が、非常に曲もよく、ビジュアルイメージもすばらしい作品であることは、2014年に認識した。これは面白い。
 そして2015年、今度は東宝版の再演が始まり、まったく同じ話を、男性キャストを交えたものとしてみる機会を得た。そして昨日行ってきたわけである。

 キャストを見て、わたしは、おお、マジか! と嬉しくなったことがある。
 それは、主役であるエリザベートと、もう一人の主人公、冥界の王トート閣下の二人が、わたしのよく知る役者だったからだ。まず、エリザベートの蘭乃はなさん。彼女は、まさに2014年にわたしが観た花組公演でもエリザベートを演じた女優だ。わたしが見た花組公演は、まさに彼女の退団公演だったのだ。退団後も、持ち前の可愛さとダンス力を武器に、女優として活躍中だが、わたしが非常にお世話になっているヅカファンのお姉さま曰く、まだまだね、今回の公演はWキャストでエリザベートを演じる花總まりさんのほうが断然上よ、とおっしゃっていたので、世間的にはそうなのかもしれない。が、昨日の公演での蘭乃はなさんは、宝塚版とは違う発声で、一部苦戦している部分もあったのは確かだが、宝塚版とはまた別のエリザベートを見事に演じきっていたと思う。十分にすばらしかった。
 そして、トート様である。宝塚版では当然TOP男役の「女性」が演じていたわけだが、今回トート様に扮するのは、城田優という若手俳優である。この男、世間的にはまだ認知が低いかもしれない、が、わたしにとって彼は、『テニミュ』における2代目手塚部長なのだ。わたしは彼が手塚部長を演じた公演を生で観ていないのだが、わたしが『テニミュ』道にはまる前に、指南してくれた女子から「これを観ておいてください。予習として。」と渡されたDVDが何枚もあって、その中で、おお、こいつ、抜群に歌がうまいな、つーかデカイ! そしてカッコいいじゃん! と思っていたのがまさに、城田優だったのである。わたしが観たDVDの中では、2005年の氷帝学園との試合の公演が一番クオリティが高く面白かったが、その時の手塚部長役が、城田優だ。一人だけ抜群に歌がうまく、一人だけ頭ひとつデカイ。城田優はなんと身長190cmもある。とにかく目だってカッコよかったのを鮮明に覚えている。なお、この2005年の公演は、今観てみるとすごい豪華キャストだ。現在すっかり人気俳優となった、斎藤工も出演している(カッコいいが歌は下手なのが残念)し、ライバル校の部長、跡部役は加藤和樹が演じている(彼は歌もうまい)。加藤和樹はその後、仮面ライダーに出たり、現在ではミュージカルにも結構出ている俳優で、知名度はまだ低いかもしれないが、非常に人気は高い。
 そんな、テニミュ時代から抜群に歌のうまかった城田優が、トート様を演じるとなれば、わたしとしてはもう、あれから10年……よく頑張って努力してきたのう……と、もはや孫を愛でるおじいちゃんのように思わざるを得ない。だから、昨日はもう、楽しみで楽しみで仕方なく、勇んで劇場に向かったのでした。
 そして、劇場でキャストを見てみたら、もう一人、テニミュOBを見つけた。エリザベートの息子である、ルドルフ皇太子を演じた古川雄大君。彼もまた、4代目青学メンバーとして、天才不二周助を演じた経験を持ち、わたしは彼の出た公演を生で観ている。
 このように、わたしとしては本当に久しぶりに観るキャストが、今を懸命に、おそらくは不断の努力を続けてきた姿を見ることができて、その意味でも大変感慨深く、とても楽しめたのであった。また、今回は、ルキーニを演じた山崎育三郎という才能あふれる俳優も知ることが出来た。彼もいいね、すごくいい。
 ミュージカルというものは、今の日本では一部の熱心なファンに支えられてはいるものの、メジャーコンテンツと言っていいか微妙な位置にあるエンターテインメントだが、今後、才能あふれる俳優たちがどんどん育ち、もっともっと、メジャーな王道コンテンツになることを祈ってやまない。

 というわけで、結論。
 東宝版『エリザベート』は、すっごい良かったです。
 もう公演は終わってしまうが、また再演の機会があれば、ぜひ、劇場へGO!!


↓ こちらは宝塚版。みりおちゃんは可愛い。そして可愛いは正義ッ!
『エリザベート ―愛と死の輪舞―』 [Blu-ray]
宝塚歌劇団
宝塚クリエイティブアーツ
2014-11-06

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