連載開始は2003年の3月だそうだから、もう15年も前のことだ。当時わたしは営業部にいて、この作品に関しても、結構な思い入れがあるのだが、先月の末に2年半ぶり? の新刊が出たので、買わないと、と思っていたものの、近年のわたしはすっかり電子書籍野郎になっているため、すっかり買うのを忘れており、昨日、ふと、ヤバイ、そういや買ってねえじゃん、ということに気が付いてさっそく本屋さんでとあるコミック単行本を購入してきた。
 それが『よつばと!』の最新第(14)巻であります。
よつばと!(14) (電撃コミックス)
あずま きよひこ
KADOKAWA
2018-04-28

 この作品に関しては、まあいろいろと言いたいことがあるのだが、それを端的にまとめると以下の2点に集約される。まず第一に、わたしは本作を制作しているよつばスタジオが好きではない。ま、理由はいっぱいあるのだが、電子書籍を出さないことやもろもろの理由はこの際どうでもいい。とにかく好きではない。しかし第二に、制作者がアレである一方で、作品そのものは――実に悔しいことにーー、超・面白いのである。この作品はおそらく誰もが楽しめると思うし、ある意味癒される内容だと思う。なので、いつも、ちっくしょう、おもしれえ……と思いながら読み、いつの間にか頬が緩み、あまつさえ、声に出して笑ったりしている自分を発見して、再び、くそう、とか思ってしまうのである。ええ、分かってます。自分が偏屈で狭量で歪んでいることぐらいは。そんな、ひねくれた心の優しくない冷血人間のわたしでも、このマンガをつまらないとか否定することは決してできないのだ。そうです。この漫画は、認めたくないけど、やっぱり最高に面白いのです。
 帯によると、既にシリーズ累計部数は、国内1,370万部+海外300万部だそうだ。まあすごい数字であるのは間違いないけれど、それでも日本国民全員が知っている国民的漫画であるとは全く思わない。知らない人の方が全然多いのは間違いなかろう。しかしまた、少なくともマンガを読む習慣がある人なら大抵はご存知の作品だろうと思う。なので、もういちいちキャラクターなどは詳しく説明しない。結構Wikiに詳しく書いてあるので、詳細はそちらへどうぞ。どういう物語かを端的にまとめると、5歳児の「小岩井よつば」なるチビっ子の日常を追うだけのもので、そこには劇的な何かがあるわけでもなく、そこら中にある「日常」が描かれているだけのものだ。
 じゃあ、なんでそんな物語がそこまで面白い、とわたしが絶賛するかというと、やっぱりキャラクター造詣がお見事だからというほかなかろうと思う。完全なる自由なふるまいのよつばはもちろんのこと、そのよつばの自由を守る大人たち(子供もいるからよつばより年上の人々というべきか)が、本当にそこらにいそうな普通の人なのに、素晴らしく共感できてしまうのだ。
 まず、よつばは5歳児である。まあ、一般的に5歳児なら幼稚園に通うものかもしれないが、よつばは幼稚園には通っていない。現代社会ではかなり稀なのではないかと思うが、実際のところ幼稚園に行く義務なんぞはなく、在宅で仕事をしている「とーちゃん」こと小岩井葉介が毎日そばにいるので、行く理由も実際のところほぼなかろう。日々、起きて、とーちゃんの仕事を邪魔しながら過ごし、昼飯を一緒に喰って、午後も一緒、そして夕飯を食って寝る。それだけだが、よつばの言動は実に5歳児らしく生き生きしている。
 そして一緒にいるとーちゃんだけでなく、お隣の綾瀬家の人々、とーちゃんの友達のジャンボややんだ、そして綾瀬家の友達の人々や街の人々も、皆よつばを可愛がる。そりゃそうだ。だって、可愛いもの。わたしはいつも、人んちのガキなんぞ可愛かねえ、と思っているが、無責任に数時間だけならば、よつばを可愛いと思えるのは間違いないと思う。そう、恐らくわたしが本作を読んで面白いと思うのは、きっと所詮は人んちの可愛いガキ、という目線で単純に愛でているだけだからなのではないかと思う。ある意味、孫を愛でるおじいちゃん目線なのではなかろうか?という気もするが、まあ要するに、よつばに対して何の責任も負っていない他人だからなのではないかとわたしは感じている。
 冷静に考えれば、やっぱりよつばは幼稚園にやった方がいいんじゃないか、とか、5歳児にしてはもうチョイしっかりしてほしいとか、いろいろなんだか心配になって来るほどよつばは自由気ままな毎日を過ごしているのだが、それを一切感じさせないのは、よつばが可愛いから、と同時に、よつばに対して別に何の責任もない他人だから、のような気がする。
 まあ、実際のところそんなわたしの思いはどうでもよく、ただ読んで、楽しめればそれでいいわけで、今回の最新(14)巻も大変楽しませていただいたのは間違いなく、今回もまた、ちくしょう、おもしれえ、というのがわたしの感想である。
 というわけで、今回の(14)巻に収録された各お話をエピソードガイドとして短くまとめておくか。確実にどんなお話だったか忘れるのは間違いないので。なお、そもそも本書のタイトル『よつばと!』というのは、「よつばちゃんと〇〇」という意味で、各お話のタイトルもそうなっている。
 なお、以下は完全ネタバレですが……別に構わないすよね? いや、構うか。ネタバレが困る人は以下は読まないでください。
 ◆第91話:よつばと「しごと」
 冒頭、ジャンボととーちゃんが何やら荷物を搬入している。それは丸テーブルで、組み立てセッティングする二人。とーちゃん曰く、(よつばと)一緒に座れるし、おしゃれかと思い購入したらしい。そしてここでバリバリ仕事をする、出来る男、を演出したいらしい。それを聞いたよつばもさっそく椅子を持って来て、自分も仕事をするという。よつばの仕事は何だ? と問うジャンボが、よし、じゃあこれをやるといい、と手土産に持ってきたものは、ビーズのセット。それを使って三人はアクセサリーを作り始めるのだった―――的なお話。まあ、とにかくジャンボはイイ奴で、よつばもジャンボは大好き。色とりどりのビーズに心ときめかせたり、とーちゃんにビーズを嫌々?あげる様子など、とてもよつばらしい行動はやっぱり頬が緩みますなあ……。
 ◆第92話:よつばと「ヨガ」
 いつも通り部屋で、新調した丸テーブルで仕事をするとーちゃん。そしていつものように、とーちゃんに絡みついて来るよつば。そんなよつばが突然、ヨガに行ってきていい? ととーちゃんに問う。聞くと、どうやらお隣の女子高生、綾瀬風香ちゃんとその友達のしまうーが無料体験のチケットをゲットしたため、よつばを誘ったのだという。そんなわけで、ヨガ教室へ向かう風香・しまうー・よつばの楽しいヨガが始まるーーー的なお話。子供なので体の柔らかいよつばが、ヨガのポーズを自在にできるのに対し、体の硬い風香としまうーの苦戦ぶり、そしてテキトーぶりが読んでいて楽しい!
 ◆第93話:よつばと「おひめさま」
 童話を読んでいるよつば。なにやらよつばも女の子として、「お姫様」がブームになった模様。髪にビニールひもをながーーく垂らし、どうやらラプンツェルにインスパイアされてるらしい。それを理解できないとーちゃんにおかんむりのよつばは、隣の綾瀬家へ。そしてソファーでまったりしていた綾瀬家の長女で女子大生のあさぎは、よつばを一目見るなり、長い髪してどうしたの、とよつばの意図を理解して、よつばはご満悦。そんなよつばに、あさぎはゴミ袋を使ったドレスを仕立ててあげるのだったーーー的なお話。あさぎは本作に出てくる大人の女性の中で、一番のよつばの理解者だし、よつばも一番尊敬?しているような気がしますね。もちろん一番の美人。
 ◆第94話:よつばと「まえのひ」
 何の「前の日」かというと、次以降のお話でよつばは「とうきょう」へ「こはるこにくるまをもらいにいく」のです。そのため、よつばはいろんな人に「東京に行くならどこへ行くべきか?」を取材しているのです。綾瀬家のお母さんは銀座、あさぎ姉ちゃんは新宿と渋谷、綾瀬家三女で小学生の恵那ちゃんは東京タワー、そして風香は原宿、あさぎ姉ちゃんを迎えに来た虎子は代官山、と様々。そしてとーちゃんがスマホを買ったと知って家にやってきたジャンボは、人がいっぱいいるから迷子になるなと注意し、やんだは東京で一番気を付けるのは自動改札だ、なんて言う。そんな、翌日東京へ行くわくわくのよつばであったーーー的なお話。
 ◆第95話:よつばと「はらじゅく」
 というわけで、とーちゃんと東京へやってきたよつば。やんだに注意されていた自動改札で、ちょっと失敗して落ち込むも、すぐに元気を取り戻し、約束までに時間があるからどっかぶらつこう、というとーちゃんの提案に、ちょうど山手線は原宿に着き、原宿をぶらつくことに。とーちゃんとクレープを食べたり原宿を楽しむよつばであった―――的なお話。よつばのしょんぼりフェイスや怯え顔もイイすねえ。つうか、小岩井家はどうやら西武池袋線?の沿線の埼玉県ようですな。小手指あたりな感じ、みたいすね。
 ◆第96話:よつばと「よよぎこうえん」
 東京に来た目的である「こはるこ」と代々木公園で合流する話。合流するまでのよつばの行動もいちいち可愛い。そして「こはるこ」=小春子で、前巻(13)巻でばーちゃんの口から出ていた人物だが、なんととーちゃんの妹、であった。そして黒髪&眼鏡の大変な美人! そして、小春子が兄に、もう乗らないから、と譲った車はなんとMINIコンバーチブル! マジかよ、なんてシャレオツな車なんだ! まあ、こういう車の選択も、わたしがよつばスタジオを好きでない理由だけど、よかったね、よつば! これでどこにでも行けるぞ!
 ◆第97話:よつばと「ランチ」
 普段よつばが行ったことのないようなところ、として小春子が連れて行ってくれたのは、東京駅近くの高級ホテルのランチビュッフェ(ただしとーちゃんのおごり)。あまりに多くの料理に戸惑い怖がりつつもランチを楽しむよつばであった―――的なお話。そして正月にばーちゃんちでの再会を約し、電車で帰る小春子と別れ、帰りはMINIの屋根を開け、高速を使って帰る二人。これでいっぱいいろんなところへいける、と楽しみだなーと言うよつばで幕でありました。

 というわけで、結論。
 久しぶりの新刊となった『よつばと!』第(14)巻を発売から2週間ほどしてからやっと買ったわたしである。なので結構今さらなのだが、読んでみるとやっぱり面白く、ホント、たまに読みたくなるんすよね、この漫画は。全巻常に本棚に揃えておくべき作品とわたしは思うのだが、マジで電子書籍がないのが残念だ。電子書籍で発売されていたら、常に持ち歩いて、まだ『よつばと!』を知らない人にもすぐに読ませてあげられるのにな。そしてふとした時に、いつでもよつばに会えるのに。その点は残念ですが、まあ、とにかく読んでもらいたいすね。まず間違いなく、誰しも読んで頬が緩むこと請け合いだと思います。つうか、次はいつ発売になるんだろうなあ……まーた2年とか先なんだろうなあ……完結の日が来るのか知らないけど、それまでわたしは生きてないような気がしますな。よつばが小学生になる日は来るのだろうか。ま、生きている限り、孫の成長を愛でるおじいちゃん目線で、よつばの成長を見守りたいと存じます。以上。

↓ 全巻必携でしょうな、間違いなく。あ、こんなセットが売ってら。