おとといの月曜日の夜に、『母と暮らせば』を観て大いに感動したわたしは、昨日はずっと、黒木華ちゃんの天然昭和フェイスに頭の中が占領されていたわけです。
 なので、昨日はさっさと帰って、WOWOWで録画したはずの『小さいおうち』を観よう、と思い、いざHDDの発掘作業をしてみたわけです。
 確かに録ったはず。それはたぶん間違いない。ので、まずはデッキのHDDから手を付けた。しかし、2TBの容量なのにあともう100GBぐらいしか残ってないことからも明らかなように、録っただけで観ていない映画がごっそり詰まっていて、30ページぐらいスクロールしてみないと一体どこにあるのかすらわからない状態であった。
 しかし、全ページチェックしても、ない。おかしい。次に、USB接続しているHDDは、3TBの容量で、こちらにも録画した映画を結構移してあるので、最初からせっせと探してみるも、やっぱりない。あれえ!? 嘘だろ、消しちゃったのか?  バカバカ!! オレのバカ!! というわけで、あきらめて、WOWOWのWebサイトで、次に放送があるのはいつなんだろう、つーか、また放送してくれるかしらん? と調べてみたら、来月、1回だけ放送されるようなので、とりあえず自宅PCのディスプレイに、「1/16:WOWOW:小さいおうち」と付箋を貼って、Googleカレンダーにも、予定を書き込んでみた。
 そこで、ふと、未整理の、Blu-ray DISKの山が目に入ったので、ひょっとしたら、BD-REに焼いたんだっけ? という気がしてきたので、中身のインデックスを書いていないDISKを片っ端からPCのドライブに突っ込んで、中身をチェックしてみた。わたしはたいてい、50GBのRE-DLに焼くので、それぞれのDISKは10本ぐらいは映画が入っている。そのDISKの山を、この際だから何が入っているか、ちゃんと書いておこうと、メモを取り始め、ああ、このDISKにはこんなの入ってら、あ、これ、観てないな、とか、延々と作業をしていたら、9枚目のDISK に、『小さいおうち』が入っているのを発見した。良かったー、消してなかった。さすがオレ、抜かりないぜ。と、60分ほどの作業を要したことを棚に上げて思うわたしは、もう、本当にダメな男だと思いました。
 というわけで、山田洋次監督作品『小さいおうち』を、今さらながら昨日初めて観たわけである。

 結論から言うと、やっぱり素晴らしい作品であった。物語・脚本・演出・そして役者陣の芝居ぶり。ほぼパーフェクトと言っていいような気がする。そして、この作品でもやはり、黒木華ちゃんの天然昭和フェイスは非常に美しく、そして可愛らしく、大変わたしとしては満足のいく作品であった。ヤバイ。どんどん華ちゃんが好きになってきたんですけど、どうしたらいいのでしょうか。
 物語は、詳しくはWikipediaの方を参照していただくとして、どうやら中島京子先生が直木賞を受賞した原作小説と、今回の映画版では、微妙に物語が違うようだ。
小さいおうち (文春文庫)
中島 京子
文藝春秋
2012-12-04

 わたしは残念ながら原作を読んでいないので、以下、あくまでも映画版の物語限定で記します。
 映画では、現代の平成の世と、戦前・戦中の昭和10年代とが入れ替わりながら物語は進む。冒頭は、とある老女のお葬式。その遺品整理中に、遺族の若者が老女の自叙伝を見つける。それは、自分が自叙伝でも書いたら? と勧めていたもので、映画はその自叙伝で描かれる昭和初期と、自叙伝執筆中の老女の生前の姿と、亡くなって以降と3つの時制で語られる。
 昭和10年代。タキは山形から住み込みの女中奉公のために東京へやって来て、とある小説家の娘が嫁いだ先の平井家に奉公することになる。平井家は比較的裕福で、新築したばかりの、赤い瓦屋根が可愛らしい小さなおうちに住んでいた。奥さん、時子は美しく聡明な女性で、タキを「タキちゃん」と呼び妹のようにかわいがってくれた素敵な奥さんだった。旦那はおもちゃ会社の常務で毎日を忙しく過ごしており、決して悪い奴ではないけれど、まあ昭和初期の男なので、家庭にはあまり興味がない。また、子どもも一人いて、小児まひにかかってしまうけれど、タキの懸命な看護で小学校に上がる頃にはすっかり元気ないい子に育っていた。
 そのような、いわば「家政婦は見た」的な平井家の生活が、平和に、そして楽しく過ぎていく。そしてある正月、旦那の会社に入社した、美大出身のデザイナー(?)が挨拶にやって来て、時子奥さまとそのデザイナーが出会い、次第にお互い魅かれて行き……というお話。

 やはり、この映画でも役者陣の芝居は本当に素晴らしい。
 筆頭に挙げたいのは、この作品では華ちゃんでなく、はやり時子奥さまを演じた松たか子ちゃんであろう。この人は本当に上手ですな。演技にかけては、現役最強と言っていいような気さえする。もちろん、エルサですっかりおなじみになったように、歌も、ミュージカルで鍛えた実力派だ。わたしは20年ぐらい前に、松たか子ちゃんが歌手としてCDを出し始めたころから彼女の声がすごく好きで、CDも持っていたほどだったのだが、歌はうまいけど、顔は微妙かな……と大変失礼なことを思っていた。のだが、どういうわけか、これまた10年ぐらい前、たぶん、山田洋次監督の『隠し剣、鬼の爪』を観て以来だと思うが、あれっ!? 松たか子って、こんな人だっけ? ちょっと可愛いんじゃね? つーかすげえ可愛いじゃんか!! と急に彼女の可愛さに目覚めた謎の過去がある。今ではすっかり大ファンなのだが、今回の時子奥さまの品のある所作や悩める表情、そしてタキちゃんにぶつける激情など、完璧だと言っていいほどお見事であった。
 そして、もちろん、本作でも華ちゃんこと黒木華さんはおそろしく可憐で、おそらくは日本全国の男全員が、タキちゃんに惚れることは確実であろうと思われる見事な芝居であった。いやあ、ホントにいい。今回の華ちゃんは、女中さんなので基本的に常にうつむき加減なのだが、時に見せる笑顔が最上級に素朴かつ魅力的である。また時に涙を流す姿は、誰しもが、どうしたの、大丈夫か? と思わず肩を抱きしめたくなるような、放っておけないオーラが放出されており、もうわたしは一緒に泣くしかない有様であった。
 まあ、これ以上書くと、我ながらキモイのでやめておきますが、この松たか子ちゃんと黒木華ちゃんの素晴らしい演技を劇場に観に行かなかった、そしてあまつさえ録画しておいたにもかかわらずさっさと見なかったわたしは、オレは本当に観る目がねえなあ、と絶望的な気持ちになりました。まったくもって映画オタを名乗る資格なしである。情けない。
 そのほかの役者陣に関しては、平成部分の老いたタキを演じた倍賞千恵子さんと、タキの妹の孫にあたる若者を演じた妻夫木聡くんの二人が素晴らしかったことを付け加えておこう。長年、寅さんの妹さくらを演じてきた倍賞さんは、山田洋次監督の信頼厚い役者さんだろうと思うが、やっぱり上手なのは間違いなく、非常に良かった。すっかりおばあちゃんとなった、かつての可憐なタキちゃんが、長年抱えてきた秘密。その想いから、長く生き過ぎたと涙を流す姿は、猛烈にわたしのハートを揺さぶるものだった。そして、平成の若者らしく調子のいい青年を演じた妻夫木くんも、何気におばちゃん思いのイイ奴で、悪くない。非常に良かったと思います。

 しかし、改めて思うのは、やはり山田洋次監督は、日本が誇る名監督である、という事実である。もちろん、そんなことは知ってるよ、お前が知らなかっただけだろうが!! と年配映画ファンに怒られてしまうのは確実だと思うが、一体、この事実は、どうしたら現代の若者に伝わるのだろうか? おそらくは、20代や30代の若者は、まったく山田洋次監督の作品に興味はなかろうと思うし、実際、興行はシニア中心である。もっともっと、若い人に見てもらいたいのだが……おととい観に行った『母と暮らせば』のように、若者を呼べるキャストを使っていくのが一番手っ取り早いのかな……。昨日も書いた通り、『母と暮らせば』には、おそらくは二宮くん目当ての若い女性客が結構入っていた。この『小さなおうち』の、時子奥さまと魅かれあうデザイナーが、吉岡秀隆ではなく、もっとイケメンだったらなあ……と思ってしまったわたしは、実は……ファンの方には大変申し訳ないのだが……吉岡くんがあまり好きではないのです。サーセン。まあ、とにかく、若者層が劇場へ来るようなキャストで、次回作を撮っていただきたい。と思うのだが、実はもう、山田監督の次回作は既に完成しちゃってるんだよな……↓これ。2016年3月公開『家族はつらいよ』。

 わたしはもう、心を入れ替えて、今後の山田洋次監督の作品は、ちゃんと劇場へ観に行くことにするが、はたしてこの『家族はつらいよ』が、若者に届くかどうか……難しいだろうなあ……もう、ずっと二宮くんを起用すればいいのに……!!
 
 というわけで、結論。
 『小さいおうち』は2014年の作品なので、ちょっと前の作品だが、もし観ていない人は是非、今からでも観てほしい。極めて上質な役者陣の芝居に没入していただきたいと思います。松たか子ちゃん、黒木華ちゃんがとにかく最高です。なお、松たか子ちゃん演ずる時子奥さまの旦那は片岡幸太郎氏が演じておりますので、歌舞伎ファンも是非!! 以上。

↓ この映画での松たか子ちゃんは、超可憐でけなげな女中さん。最強に可愛い方言遣い。この映画で惚れた。 ヤバいな……また観たくなってきた。今日もさっさと帰って、久しぶりに観るか……。
隠し剣 鬼の爪 [Blu-ray]
永瀬 正敏
SHOCHIKU Co.,Ltd.(SH)(D)
2010-12-23