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 はーーー……やっぱ面白いすなあ……
 というのは、今朝読み終わった小説の感想である。そうです。わたしがずっと読み続けてきた『居眠り磐音』シリーズの続編ともいうべき『空也十番勝負』最新刊が発売になったので、すぐさま買って読み始め、もったいないからちょっとずつ……とか思ってたのに、上下巻を3日で読み終わってしまったのでありました。たまには書影を載せとくか。こちらであります。
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 というわけで、もはやこのBlogでも散々書いてきたので詳しい説明はしないが、本作『空也十番勝負 青春篇 未だ行ならず<上><下>』は、磐音の息子、坂崎空也くんの武者修行の旅を追ったもので、今回は5作目となるわけだが……上記に貼りつけた写真の帯に書かれている通り、「完結編」と銘打たれている。なので、わたしはその「完結」という文字を見た時、おいおい、十番勝負なのに、5番勝負で終わりなの? うそでしょ!? うそって言ってください佐伯先生! ぐらいわたしは大きなショックを受けた。
 この「完結」ということに関しては、ズバリ言うと<下巻>のあとがきに佐伯先生自身の言葉で理由が明確に記されているので、まあそちらを読んでいただければと思う。ただし、本編を読み終わった後に読んだ方がいいと思いますよ。そして、せっかちな方に申し上げておくと、あくまで「青春篇」の完結であって、空也の旅はまだ続くものと思われますので、ご安心いただければと思う。つうかわたしが安心しました。
 さてと。物語としては、前作の続きで、平戸から長崎へ向かい、五島で出会った長崎会所の高木麻衣ちゃん、そして対馬で出会った長崎奉行所の鵜飼寅吉くんと再会し、長崎に結構長く逗留することになるのだが、その逗留期間で空也くんが出会った人や出来事、そして当然、空也くんを狙う東郷示現流の酒匂一門との対決へ、という流れで締めくくられる。まあ、それはもう、シリーズを読んできた人なら誰でも想像がつくことですな。そしてもちろん、愛しの眉月ちゃんとの再会もあるし、一方そのころ江戸では、という部分も丹念に描かれ、薬丸新蔵くんのその後も描かれるのだが、まあとにかく、今回は上下巻ということで、様々な出来事が起こり、非常に読みごたえのある物語だったと思う。
 今回は物語の流れについて記すのはやめにして、本作を読んで、わたしの心に残った出来事について、箇条書きでまとめておこうと思う。書いていく順番は、物語の流れとは一致しません。単に思いついた順に記します。
 ◆福岡藩士・松平辰平はさすが空也の兄弟子ですよ!
 空也くんが長崎へ到着し、長崎には福岡黒田家と佐賀鍋島家が長崎警護のために詰めている、ということを知って、わたしとしては当然、かつて自らも武者修行の旅に出て、途中で磐音一統に合流した佐々木道場の弟子、松平辰平くんが登場するものかと思っていた。辰平くんは、博多のとあるお嬢さんと恋に落ちて、黒田家に仕官して福岡住まいとなったのに、『磐音』シリーズのラストで磐音たちが九州にいた時は入れ違いで江戸に赴任していたため、空也くんの旅立ちには立ち会えなかったのがわたしはとても残念に思っていたのだが……いよいよ長崎で会えるか!? と期待したわたしの考えは、まったくもって甘すぎたのであります。どういうことかというと、ズバリ、会いたい、けど会えない、けどやっぱり会いたい……という思いの詰まった「ぶ厚い」手紙だけを託して、辰平くんは空也に会いに来なかったのです。それは、空也が物見遊山で長崎にいるわけではなく、武者修行の身であり、そんな旧交を温めてる場合じゃねえ、と思うからなわけです。さすが辰平、こういう点が、空也にとっては尊敬する兄弟子なわけですよ。あれっすね、これが利次郎だったら、きっと普通に会いに来てるでしょうな。そして辰平の手紙に書かれていた「初心を忘れるな」が空也くんの胸にも響くわけです。真面目な朴念仁だった辰平らしいと、わたしはとてもグッと来たっすね。
 ◆狂剣士ラインハルトとの死闘は意外と(?)大事だった。
 前々巻で闘ったラインハルトは、長崎会所と長崎奉行所のおたずね者で、空也くんは見事勝利したわけだが、そのことは結構大きなことだったようで、空也くんは長崎の様々な場所で、あのラインハルトを倒した男か、と歓迎を受けることになる。中でも印象的だったのは、出島の阿蘭陀商館からも大歓迎を受けて、オランダ製(?)の短刀を頂くことに。この時、空也くんは麻衣ちゃんが用意した南蛮衣装を着せられていて、その情景が非常にわたしの脳裏に印象に残ったすね。ちなみにその衣装と短刀は、江戸へ向かった眉月ちゃんに託され、磐音やおこんさんのもとに届けられました。この、眉月ちゃんと磐音たちの対面も、とても良かったすね。そうなのです。今回、とうとう眉月ちゃんは江戸へ戻ることを決意し、まずは長崎へ行って空也くんと再会したのち、眉も長崎に残りとうございます、的な泣かせることを言いながら、江戸へ先に向かったのです。超積極的な眉月ちゃんと空也くんが江戸で再会できるのはいつの日でありましょうなあ……その日が楽しみですなあ……。
 ◆長崎と言えば……奈緒どのの悲劇のスタート地点でしたなあ。
 作中時間で20数年前、身売りした奈緒が最初に連れていかれた場所であり、そして、その後を追って若き磐音が、医者の中川順庵先生とともにやってきた地でもあるわけです。しかし奈緒の超絶美人ぶりに、こりゃあ長崎じゃもったいない、江戸の吉原へ、とすぐに連れていかれ、長崎には数日しかいなかった奈緒。そして入れ違いに会えなかった磐音。そして磐音は、奈緒が描いた絵と句を見て運命の残酷さを知った若き日。今回、そのかつての悲恋がちょっとだけ触れられ、そんなことは全く知らなかった空也くんは初めて父の若き日のことを知るわけです。このエピソードは、今回折に触れて語られ、わたしとしては非常に時の移ろいを感慨深く思ったし、空也の心のうちにも、非常に大きなものを残したようですな。大変結構なことかと存じます。
 ◆武左衛門、お前って奴は本当に……。
 今回、江戸パートでは、新蔵が新たに自分の道場をたてることになるけれど、江戸の人間からすると新蔵の道場は土間で稽古も裸足という点で、ちょっとアレだなあ、と全然弟子希望者が集まらないような状況に。そこで武左衛門が、かわら版屋にテキトーで盛りに盛った話をして、そのおかげで弟子殺到、みたいな展開となるのだが……ホントに武左衛門よ、お前って奴は……まあ、ある意味今回は結果オーライだけど、わたしはこの男を『居眠り』シリーズの時からどうしても好きになれないす。こういう奴って、ホント、いるんだよなあ……いつの時代も……。
 ◆憎しみの連鎖は、一体どうすれば……酒匂家の運命は……。
 空也くんと新蔵には非はないとしても、憎しみや恨みというものは理屈ではないわけで、今回も当然、酒匂一派に狙われているわけだが、本当にどうしようもないことなんだろうか……。
 酒匂家当主:空也1番勝負で敗北。尋常な勝負であるときちんと理解していた。
 長男:謎に包まれた酒匂家最強剣士。今回とうとう登場。結果は本編を読んでください。
 次男:江戸在府の剣士。今回、新蔵に挑む! 結果は本編を読んでください。
 三男:兄弟で一番体がデカイ剣士。空也2番勝負で敗北したが、空也に一太刀浴びせ重傷を負わす。
 しかしまあ、なんというか、死をもってしか決着できないというのは、現代人としてはとても悲しく、つらいすね……。剣術は、どうしても「人殺しの技術」に過ぎないんすかねえ……だとすれば、それを極めようとするってのは、非情に尽きるのかなあ……。
 今回の空也くんは、端的に言えば「武者修行」ってなんなんだ? という壁に突き当たることになる。折しも時代は銃や大砲が実用化され、武力としての「剣術」も、形骸化しつつある世の中だ。そんな時代に「剣の道」を征こうとする空也くん。おまけに言うと、空也くんは、武者修行と言いながらも、相当な超リア充でもあって、行く先々で人々の好意に助けられ、お互い愛しあう人もいて、さらに今回の長崎では、そのリア充ぶりは拍車がかかっているようにも思える。カステイラを食して喜んでる場合じゃないだろうにね。
 こんなリア充の空也くんが、いかんいかん、こんなんじゃダメだ、と思うのは、自らが命を狙われているからであって、逆に言うと、酒匂一派との因縁がなければ、果たして空也くんは厳しい「武者修行」を続けることが出来たのだろうか、という気すらしてくる。空也くんは、当然のことながら無用な戦いはしたくない、けれど、命を狙われている状況だからこそ、武者修行にも魂がこもる、とも思えるわけで、わたしは今回の空也くんの悩み?に対して、実に皮肉だなあ……と感じたのでありました。まあ、その皮肉な運命にケリをつけようと、空也くんは今回長崎へ来たとも言えるわけだが……この後どうするのか、続きがとても楽しみですなあ!
 ◆「捨ててこそ」とは?
 この言葉は、武者修行を行う空也くんが一番心に留めているものだ。「捨ててこそ」。超リア充である空也くんには、いろんな「捨てたくない」ものがあるはずで、眉月ちゃんへの愛、そして偉大なる父に感じる無意識のプレッシャーなど、背負っているものがいっぱいある青年だ。決して、失うものなど何もない、ような状況ではない。そんな空也くんが思う「捨ててこそ」とは、一体いかなるものか。これが、わたしが思う本作の最大のポイントである。本作を読んで、わたしはまだ空也くんが悩みまくっているように思えたし、そりゃ当たり前だとも思っている。だからこそ、本作はタイトルが「未だ行ならず」なわけだしね。
 空也くんは、高野山の奥で生まれたことから、大師様=空海からその名を「空也」と名付けられたわけだけど、「くうなり」とも読めるのがわたしとしては大変興味深い。仏教でいう「空(くう)」。この概念をわたしは理解しているとは言い難いし、大学時代、「空」について卒論を書いた哲学科の友達の受け売り程度の知識しかないわたしだが……別に全てを捨て去ることが「空」ではないと思うのだが……空也くんの考える「捨ててこそ」は、若干、命すら投げ捨てる方向のようにも感じられて、かなり心配である。まあ、それが正しい解釈なのかどうか分からないけど……難しいというか、まだわたしにはわからんすね……。とにかく思うのは、空也よ、お前は絶対に、生きて江戸に戻らないとダメなんだぞ! という親心のようなものです。きっとそれは、この作品を読んでいる人全員が思ってることだと思います。

 というわけで、もう長いしまとまらないので結論。
 シリーズ5作目にして最新作『空也十番勝負 青春篇 未だ行ならず<上><下>』が発売になったのでさっそく買って読んだところ、やっぱおもしれえなあ、というのが第一の感想でありました。そして主人公・坂崎空也くんの5番勝負が終わったところで、作者の佐伯泰英先生のあとがきによれば、次作の刊行はちょっと時間が空くらしいことが判明した。「青春篇」はこれにて完結だそうで、続く「再起篇」を期待したいですな。しかしなんつうか、わたしとしては長崎会所の高木麻衣さんが大変気に入っております。間違いなく美人でしょうな。空也くんはホントにリア充だなあ……。リア充で武者修行が出来るのかはともかく、ホントにマジで! 生きて江戸へ戻って来るのだぞ! そして眉月ちゃんの愛に応えるがいい! その日を楽しみにしたいと存じます! 以上。 


↓ なんと!『居眠り磐音』は文春文庫から出し直し&双葉文庫版は絶版になるらしく(?)、その新装版刊行に合わせて、こちらの描き下ろし新作も発売になるそうです。マジかよ……文春め……!

 というわけで、そろそろかな、と思っていた新刊が発売になっていたので、さっそく買って読んだ。昨日の土曜日、わたしは朝の8時ぐらいから会社で仕事をしていたのだが、駅前の本屋さんが開く10時過ぎに買い、そのまま仕事をして12時過ぎには一区切りついたため、やれやれ、かーえろ、と乗った電車内で読みはじめ、そのまま昨日はずっと読んでいたら18時くらいには読み終わってしまった。やっぱ面白いわ。というのが端的な感想である。
 で、何を読んでいたかというと、もうこのBlogではおなじみの、佐伯泰英先生による「居眠り磐音」の続編シリーズ最新刊、『空也十番勝負 青春篇 異郷のぞみし』であります。「十番勝負」というのだから、まあ、おそらくは全10巻になるんでしょうな。今回の新刊は、その「第4番勝負」の模様を描いたもので、主人公・坂崎空也くん19歳の冒険を読者は味わうことができる。

 以下はネタバレに一切考慮せずに書くので、未読の方は、ここらで退場してください。まあ、できれば今すぐ本屋さんに行って、買って読むことをお勧めします。こんなBlogを読んでる場合じゃないすよ。今回は、前回よりかなり面白かったように思いますぜ。
 さてと。これまでの空也くんの旅をざっとおさらいすると、「磐音」シリーズ最終巻での大団円ののち、磐音の息子である空也くんは、父の故郷である豊後関前藩(架空の藩・まあ大分のあたりなんでしょう)から武者修行の旅に出た。その時16歳。そして薩摩へ向かい、運命の出会いを経て、東郷示現流との「1番勝負」に勝利。そしてその後、人吉藩~熊本藩に出て、追ってくる示現流との「2番勝負」にも勝利、そこから船で今後は五島列島へ渡り、狂える神父剣士との「3番勝負」に勝利したところまでがこれまでのお話である。
 ちなみに旅に出てから既に2年半経過していて、今回の「4番勝負」は、1798年の正月、空也くんは19歳まで成長している。そして今回の場所は、五島から北上して対馬から物語は始まる。対馬は、朝鮮との貿易の窓口なわけだが、まあ、ある意味当然、外国貿易をしている裏にはなにやら「お上に知られたくない」ことがあるようで……という流れはまったく自然に読めるし、実際面白い。しかし、実のところそういった政治めいた部分は、あまり関係がない。そりゃそうだ。空也くんは武者修行であって、密偵でもないし、水戸黄門的な世直しの旅をしてるわけではないのだから。
 そもそも、空也くんが対馬へ向かった理由は、もうシリーズを読んでいる方には想像がつくだろう。そうです。空也くんがぞっこんLOVEな運命の女子、眉月さまには高麗の血が流れているわけで、愛する女子のもう一つの故国をその眼で見たかったから、でありますよ。冒頭で対馬の北の端っこの岬に立ち、「眉姫様、それがし、そなたの祖国をわずか十二里の海を挟んで見ておりますぞ」と見つめる空也くんは大変カッコイイというか、その情景が浮かびますね。
 で、当然今回は対馬での戦いになるのだろうと思ったら、そうではなかった。対馬での抜け荷をめぐる冒険で、幕府密偵?と出会い、さらには朝鮮剣士との戦いはあるものの、結構あっさり対馬を去り、壱岐島のすぐ北にある辰ノ島へ舞台は移る。そしてそこで、後々いろいろ影響が出てきそうな孤高の朝鮮剣士との無言の修行の日々があって、その後で平戸島に上陸する。そしてその地で若き平戸藩主・松浦清と出会い、充実の稽古と、今回の「4番勝負」に勝利したのち、いよいよ本土に戻り、長崎を目指すことになる。長崎と言えば、前巻で知りあった密偵女子の高木麻衣ちゃんを思い出すが、まあ、再会は次回あるものと思いたいですな。そして今回出会った幕府密偵のトラ吉も。きっと今後ちょいちょい出てくるのでしょう。つうか、平戸って島だったんですな。無知なわたしはそんなことも知らなかったす。今は橋でつながってるみたいだけど、平戸は元々は貿易港として栄えたけれど、鎖国以降の、本作の舞台となる時代ではその地位はすっかり長崎に取られてしまってたんですな。そんな歴史豆知識も今回は非常に興味深く味わえました。
 というわけで、空也くんは充実の武者修行継続中なのだが、なんつうか、やっぱり何度も書いている通り、『密命』シリーズの清之助くん的な、超人的強さがどんどん身について、スーパーマン化しつつあるのが、物語の面白さという意味において若干心配ですな。そしてもう4番勝負が終わってもまだ九州にいるわけで、これから今後当然江戸方向に向かうにしても、10番じゃすまないような気もしてきます。あれかな、どこかから船で一気に東上するのかしら。まあ、兄弟子ともいえる辰平の仕える福岡はもうすぐだし、利次郎の生地である土佐、それから自らの生地である高野山あたりも行かないとイカンのではなかろうか。
 で、本作でも当然、一方江戸では……という様子も描かれており、今回江戸での磐音周辺ではいくつかの、今後に影響する出来事があった。まず一つ目は、すっかり小梅村が気に入ってしまったことでお馴染みの薬丸新蔵くんの元に示現流一派が喧嘩を売りに来て、まあごくあっさり撃退するも、これ以上ここにいたら迷惑なのでは、と新蔵くんは出て行ってしまう。江戸での新蔵くんとの戦いが最後の十番勝負なんじゃないかという気もするけれど、彼もまた、間違いなく今後出演してくれるでしょう。
 二つ目は、現在の11代将軍・徳川家斉がなんと尚武館にお忍でやってきて、薩摩藩前藩主・島津重豪と対面するシーンがある。これは、速水様がしくんだっぽい対面なのだが、要するに、もう示現流の連中が空也くんと新蔵くんを追うのはいい加減にしとけ、という釘を刺すためのもの?とわたしは受け取ったが、この理屈がわたしには面白く感じられた。つまり、空也くんは、将軍様が直々に対面して授けた刀である「備前長船派修理亮盛光」を携えているわけで、ある意味天下御免の存在なわけだ。そして空也くんは賢いことに、薩摩入りした時はその刀を持っていかず、丸腰だったことも効いていて、「薩摩での出来事は(おれがくれてやった刀は持ってなかったから)許してやる、けど、今は、(その刀を持っている)空也になんかあったらマジ許さんぜ」と将軍は言ってるんだろうとわたしは理解した。まあ、薩摩藩としては最初から空也くんも新蔵くんも別に敵だとは思っておらず、示現流の連中の勝手な暴発なわけで、それはちゃんとお前の責任で何とかしろ、という釘を刺したということなんだろうと思う。困ったすね、薩摩藩的には。実のところ、将軍・家斉の正妻は島津重豪の娘なわけで、つまりは舅なんだけど、この対面シーンがわたし的には非常に印象に残った。
 そして薩摩で言うと、今回は江戸にいる眉月ちゃんのお父さんも尚武館を訪れ、磐音と対面するシーンもあったし、なにより眉月ちゃんも、そのお父さんから江戸に戻って来いとの文を受け、絶賛お悩み中である。眉月ちゃんは今後、空也くんの足取りを推理しながら長崎へ行くのか、それとも江戸へ直行するか分からないけど、まあ、江戸での再開は間違いないだろうし、おっさん読者としては、幸せにな、お二人さん! と見守るしかなかろうと思います。
 そして今回は、空也くんが人吉で知り合った常村又次郎くんもまた江戸にやってきて、空也くんが薩摩でもらった刀を磐音に届けるシーンもあった。ここでの、空也くんの妹である睦月ちゃんの素朴な疑問が大変良かったすね。
「兄がどうしてかくも皆様方に好意的に受け入れられるのか、妹のわたしにはわかりませぬ」
 まあ、そりゃ睦月ちゃんからしたら、兄貴は単なる朴念仁の剣術野郎だもんな。これに、又次郎くんが何と答え、睦月ちゃんは納得したのかは、ご自身で読んで味わってください。ま、要するに人柄ってことなんすかね。いずれにせよ、空也くんの武者修行の旅はまだ当分続きそうだし、出会いもこれからまだまだいっぱいあるのでしょう。江戸に帰ってきて、修行を終えた空也くんがどんな男になっているか、旅に同行しながら味わいたいですな。
 最後に、ひとつふと思ったことが。本書の舞台は冒頭に記した通り1798年であるわけで、それはつまり、明治維新の約70年前ってことで、ということは、空也くんの子供か孫世代=磐音の孫かひ孫世代は、幕末を生き抜いてるんだなあということだ。何が言いたいかというと、現代を生きる我々の5~6世代ぐらい前、なわけで、意外と近いような気がした、ということです。サーセン、それだけ。特にオチはないす。

 というわけで、結論。
 わたしが新刊が出るのを楽しみにしている、佐伯泰英先生の『空也十番勝負』の新刊が出たので、さっそく買って読んだところ、なんか今回は一番? 面白かったような気がします。いや、1番?かどうかは分からないけど、前巻よりはかなり面白かったすね。しかし、わたしは五島も対馬も壱岐も平戸も行ったことがないけれど、なんか行きたくなりますな。空也は19歳で、まあ、言わば着の身着のままのぶらり旅を敢行中なわけだが、どんな景色を見て、何を思っているんすかねえ……現代人には想像がつかない旅だけど、まあ、なんつうか、カッコいいすな。ホント、どんな男となって江戸にもどってくるか、大変楽しみであります。もうほぼ無敵だし、重大なピンチもこれから訪れるだろうけど、きっと見事に修行を終えることでありましょう。まったく、お前は大した野郎だよ。そして空也よ、江戸で眉月ちゃんを娶って、幸せになるがよい! 以上。

↓ 今回のお話で登場する、平戸藩主・松浦清はかなりやり手の頭のいい男として描かれてました。参勤の折は尚武館に弟子入りしよう、とか思うほど、剣術の腕もある男で、なんかいい殿様だったすね。というわけで、平戸に今わたしは超興味津々す。
日本の城 改訂版 69号 (平戸城) [分冊百科]
デアゴスティーニ・ジャパン
2018-05-08


 やっぱり最初に言っておいた方がいいと思うので書いておきますが、ズバリ結末までのネタバレを書いてしまうと思うので、未読の方は今すぐ見なかったことにして立ち去った方がいいと思います。知らないで読む方が絶対楽しいと思いますよ。

 さてと。前巻が出たのが去年の9月だから、4カ月ぶりか。この度、わたしの大好きな時代小説のシリーズ『居眠り磐音』シリーズの続編で、主人公を磐音の息子、坂崎空也に据えた新シリーズ『空也十番勝負』の第3巻が発売になったので、よっしゃ、待ってたぜ! と発売日に買い求め、さっそく読み始めた。ら、1.5日ほどで読み終わてしまったのでありました。

 まあ、結論から言うと、今回の三番勝負は面白かったけれど、肝心の三番勝負の相手がなかなか登場せず、登場したと思ったら結構あっさり敗れ、空也くんのスーパーマンぶりが増してきていて少し心配になってきたのである。まあ、仕方ないよな……敗北=死、だし。
 そしてズバリ今回の三番勝負の相手は何者が、を書いてしまいますが、わたしがこのシリーズの1巻目の感想をこのBlogで書いたときに、こんな相手もアリっすよねえ、と妄想したことが現実になってしまったのであります。そう、今回の相手はなんと異人! サーベル使いの狂える(?)自称プロイセン人でありました。まあ、タイトルからして「剣と十字架」なわけで、実際わたしは読む前から、もしや……と思っていたので、わたしと同じように想像した方も多いでしょう。正直に告白すると、わたしとしてはもう少しその相手のバックグラウンドや人となりが知りたかったように思う。そういう点ではキャラが薄く、若干の物足りなさを感じたのは事実である。
 ただし、その三番勝負へ至る直前に出てくる、一人の女性が大変キャラが立っていて、この新キャラ女子にはまた会いたいな、と強く感じたのも間違いない。彼女については、大体の経緯は説明されるけれど、まあ、間違いなく美人でしょうな。というわけで、ヒロイン眉月ちゃんの出番が少ない中、空也くんを中心とした恋のライバルになりえるような気もするので、今後の展開も大変楽しみであります。
 というわけで、ざっと物語をまとめておこう。今回も、空也くんの武者修行の旅と江戸での磐音ご一統様たちの様子、という二元中継な形であった。そりゃ当たり前か。
 まず空也くんだが、前巻ラストで本人もどこに行くかわからない船に乗って、東郷示現流の追手から逃れたわけだが、着いた先はなんと五島列島最大の島、福江島である。

 おっと、今は空港もあるんですなあ。当時は福江藩五島家の支配地であり、お城もあったけれど、本作の空也くんが訪ねた時代には、城はもう焼失していて陣屋だけしか残ってない、ようなことになっていた。そして空也くんは福江島にある道場にまた居候させてもらいながら修行をつづけ、また山に登ったりと、ほんのひと時の平和な時間を味わうけれど、八代でとある事件が発生して、ここにも示現流の手が伸びる、が、その直前に、ここまで船に乗せてくれた船頭さんが手配した船で、さっさと中通島へ移動。さらに、船頭さんとの密談で、さらに北の野崎島で落ち合う約束をする。
 しかし、野崎島へ行く前に、中通島で出会いがある。それが、わたしの言う新キャラ女子で、新キャラ女子は、どうやら長崎会所に所属する密偵?的な役職らしく、長崎で謎の通り魔殺人を犯した犯人を追跡中なのだとか。かくして出会ったふたりは、お互い信頼できないような関係ながらも、西洋剣術使い討伐のためにチームを結成、隠棲していると思われる野崎島へ上陸するのであったーーー的な展開でありました。
 一方江戸の様子はというと、小梅村が超気に入ってしまった薬丸新蔵くんのお話を中心に、武左衛門さんと新蔵くんがちょっと仲良くなったり、睦月ちゃんの恋の行方がちょっと進展?したり、あるいは真面目な常識人でおなじみの品川柳次郎くんがちょっと出世したりというエピソードを交えながら、基本的には空也くんが心配でならないおこんさん、暇そうな(?)磐音、の元に何度か熊本から手紙が届いて一喜一憂するーーー的な、いつもの展開でありました。熊本の眉月ちゃんは今回あまり出番なし、です。手紙はよく書きますが。

 というわけで、わたしとしては面白かったものの、若干の物足りなさもあって、読み終わったそばから続きが読みたくてたまらない状態であります。しかしなあ、せっかく熊本にいたのに、剣聖・武蔵がらみの話はなかったのが残念す。そして適当にわたしが妄想した、西洋人との戦いが実現して驚いたすね。本作ラストで、再び船に乗ってどこかへ向かった空也くん。今度は、どうやら空也くんの希望の地へ行くようで、どうもそれは、対馬~朝鮮半島のような気がしますね。
 というのも、実は設定として、空也くんの愛する眉月ちゃんには、高麗の血が混ざっていて、空也くんとしては、その源流の地を訪ねてみたい、と思っているようなんだな……。わたしは全く詳しくないのだが、当時の朝鮮半島事情はどうなっているのだろうか? 秀吉の侵攻以降、100年以上経過してるのかな。100年じゃすまないか。えーっと? 物語の現在時制は……1798年かな? てことはもう朝鮮攻めから200年経ってるか。てことは当時の朝鮮半島は……? わからん! Wikipedia先生教えてください! とサクッと調べてみると……高麗が滅んだ後のいわゆる李氏朝鮮の後期で、カトリックが中国経由で伝来していた頃、なんだな。ああ、でも弾圧されているっぽいな……てことは今回の西洋剣術使いの因縁もありうるのだろうか? つうか、どういう武術が盛んだったのかはわからないな……基本は中国拳法的なものだろうか? わからんわ。
 まあ、もし空也くんが高麗(正確には李氏朝鮮)を目指したとしても、そう簡単にはたどり着けないような気もするし、まだまだドラマが待っていそうですな。対馬あたりで止まっちゃうかもしれないし、おまけに示現流の追手も絶対に追跡をやめないだろうし、今後の空也くんがどんな旅をして、どんな出会いを経験するのか、大変楽しみですな。
 あと、もう一つ、今回ちょっとわたしが興味を持ったのは、もう既に、この時代、鉄砲が進化した短筒、つまり拳銃の元があったわけで、そんな「もはや剣の時代は終わった」時代に、何故剣術修行をするのか、という根本的な問いだ。
 空也くんも、今回大砲や短筒を目にして、そんな時代であることを実感するわけだが、彼は、とある人に「なんで今どき剣なのか?」と尋ねられた時にこう答えるシーンがあった。
 「剣術とは、技を磨くことだけが目的ではございますまい。万が一の大事に至った折り、肚が据わっているかどうか、そのために鍛錬するのではありませんか」
 わたしはこの言葉に、結構グッと来た。まあ、精神修行だってことだろうし、剣は手段であって目的は別にあるってことなんだろうな、と思う。要するに、相手を倒すことが目的では全くなく、強いて言えば相手は自分自身であり、自分自身をより高めるための修行、という事なんでしょうな。
 まだ空也くんは18歳(本作ラストで19歳)。とてもしっかりした男ですよ、やっぱり。さすがは磐音の息子ですな!

 というわけで、さっさと結論。
 わたしの大好きな時代小説シリーズ3作目となる『空也十番勝負 青春篇 剣と十字架』が発売になったので、さっそっく買ってきて読んだ私であるが、実際面白かったのは間違いない、けれど、ちょっとだけ物足りないかなあ、というのが偽らざる感想である。今回、主人公坂崎空也くんは、五島列島の島々で修業を行い、とある新キャラと出会って、西洋剣術使いとの死闘を演じることになり、三番勝負を終える。しかし、この時代にプロテスタントが日本いたってことには驚きでした。これって常識なんだろうか? ともあれ、残りは7番。どんな戦いが待ってるか、大変楽しみです。そしてわたしとしては、今回の新キャラ、高木麻衣ちゃんのいる長崎にもぜひ立ち寄って、再会してもらいたいと存じます。そしてもちろん、大きく成長した空也くんが江戸でヒロイン眉月ちゃんと再会する日が楽しみであります。以上。

↓ ちょっと興味がわいてきたっすね。色々調べてみたいす。


 



 おととい、わたしが世界で最も好きな作家であるStephen King大先生の日本語で読める最新刊『FINDERS, KEEPERS』がもう店頭に並んでねえかなあ(正式発売日は今日の9/29)、と神保町の一番デカい本屋さん(と言えばきっとわかりますよね)に行ったところ、1階の新刊書・話題書のコーナーには見当たらず、ちょっと早すぎたか、とガッカリしたのだが、いつ入荷するんだろうな、と思って店内検索機で探してみて、ひょっとしたら入荷情報とか載ってるかも、と期待を込めて検索したところ、ごくあっさり、「店内在庫アリ」と出てきた。な、なんだってー!? と興奮し、良く見ると2階の文芸の棚にあるという表示なので、マジかよと慌てて2階に行ってみたところ、検索機の表示する番号の棚にきちんと置かれていた。というわけで、すぐさまGetしたのだが、その時同時に、げえーーーっ!? いつの間にか新刊が発売になってる! 超抜かってた! と慌てて買った作品、それが今回感想をこれから書こうとしている『空也十番勝負 青春篇 恨み残さじ』という作品である。
 わたしとしては、正直King大先生の新刊の方が読みたくてたまらないものの、100%間違いなく本作『空也十番勝負』の方が早く読み終わることは確実なので、先にこちらを読むことにした。その結果、3~4時間ぐらいだったかな、実にあっさり読み終えてしまった。結論から言うと、今回も大変楽しめたので、シリーズファンが読まない理由はないと存じます。というわけで、以下ネタバレ全開になると思うので、ネタバレが困る人は読まないでください。

 もう既に発売から2週間経ってたのか……くそう、抜かってたというか、ホントにわたしもダメな奴になっちまったもんだ……。
 ま、そんなことはさておき、本作は、かの佐伯泰英先生による一大人気シリーズ『居眠り磐音 江戸双紙』の直接の続編にあたる。主人公が前シリーズの坂崎磐音から、その息子の空也くんに代替わりしている作品で、今回はその第2巻にあたる。
 ちょっとまず振り返っておくと、前作、この『空也十番勝負 青春篇』の1巻目である『声なき蝉』は、『居眠り磐音』シリーズ最終第51巻のラストで、九州の関前藩(※架空の藩で、磐音の故郷)から武者修行の旅に出た空也くん16歳が、最初の修行の場として選んだ薩摩藩での様々な出来事が描かれており、確か2年(3年だっけ?)ぐらいの時間経過が描かれていたはずだ。
 薩摩藩は完全に異国であり、国境警備も厳しく、なにより、空也くんが一番の目的として考えていた、島津家御家流の「東郷示現流」も、門外不出で、とても道場に弟子入りすることはできない。まあ、結局空也くんは示現流を学ぶことはできなかったのだが、代わりに、運命的な2人の人間と出会うことになる。
 一人は、薬丸新蔵という男で、空也くんとは剣を通じて知り合い、新蔵の遣う「野太刀流」は空也くんに大きな影響を及ぼす。示現流ではない、けれど、源流は同じというか、まあ詳しいことは省くけれど、空也くんは新蔵と知り合って、示現流の基礎である技の修練法を身に着けていく。そして新蔵はとある事件があって薩摩を出奔し、江戸へ旅立ち、空也くんとは別れることに。
 もう一人は、おそらく将来的に空也くんの嫁となるであろう、お姫様だ。名を渋谷眉月といい、江戸の薩摩屋敷の生まれ&江戸育ちの美少女である。彼女は、おじいちゃんが島津家八代目の重豪(=天璋院篤姫のひい爺さんかな?)の側用人であったのだが、藩主代替わりで薩摩へ戻ったおじいちゃんに付いて来て、初めて薩摩暮らしとなったのだが、そんな彼女は、とある事件に巻き込まれて意識不明の半死半生となって川に流れついた空也くんを救い、献身的に看護したため、空也くんにとっては命の恩人でもある。まあ、若いお二人さんはもう完全にお互いぞっこんLOVEなのは言うまでもなかろう。
 で、1巻ラストでは、空也くんは姫にも別れを告げ、薩摩を去るわけだが、今回はまさしくその続きで、隣国の人吉藩~熊本藩が今回の舞台となっていた。もちろん、時折江戸にいる父の磐音や、母のおこんさん、また妹の睦月ちゃんといった、シリーズのファンなら絶対にご存知のメンバーもちらほら出てきて、ファン大満足の物語であろうと思う。わたしとしても、大変うれしい限りだ。さらに、江戸にたどり着いた新蔵のその後も語られており、後半ではとうとう新蔵は尚武館道場に現れ、磐音と対面もしたりして、大変わくわくする展開でもあった。どうやら新蔵は今後もちらほら江戸の場面では登場するようですね。
 しかし、問題は空也くんである。
 わたしとしては、やっぱりそうなるか……とある意味予想通りではあるのだが、空也くんは前作ラストで、示現流の達人と果し合いをして勝利、相手を死に至らしめたため、またしても「恨みは晴らさでおべきか!」と怒りに燃えた示現流の刺客に追われる身となってしまったのである。なんというか、完全なる尋常な勝負であり、死んでしまった達人も遺書に遺恨残すなかれ、と書いていたし(?)、現藩主たる九代目藩主の斉宣も復讐禁止を命じているのに、どうしても示現流の皆さん及び親族は許せない。その気持ちは痛いほど理解できるけれど……やっぱりちょっと悲しいすね。
 どうも、今後の展開としては、やっぱり空也は追われる身で、ゆく先々で死闘が待っているようだ。なんか……ますます『密命』シリーズの金杉清之助くん的な物語になっていきそうで、ちょっと心配だ。わたしは『密命』も好きだけれど、もう後半の清之助は強すぎというかスーパーマンになっちゃったからなあ……なお、空也くんは今回のお話で、下段から斬りあげる(?)必殺技を身に着けようとし始めており、ますます「寒月霞斬り」を思わせるような気もした。
 ところで、わたしが今回、んん? と思ったのは、中盤での空也くんの「山賊退治」のエピソードだ。空也くんは、人吉藩のタイ捨流丸目道場での修行を許されて、その長屋を仮の住まいとするのだが、何度か、その長屋から出て山籠もりの修行をしに行く。まあ、元々空也くんは高野山の奥の山の中で生まれ育った青年なので、どうも丸目道場が物足りないらしい。そんな彼が山奥で出会った人々の住む集落で、用心棒的な働きをするエピソードが出てくる。村人曰く、非常に貧しい村だけれど、年に一度、村の木材(?)を売ったお金が支払われるそうで、その金目当ての山賊がいるらしい。しかもどうやらその山賊には、その村の出身者がいるというのだ。そこで空也くんは山賊撃退チームを編成して待ち受け、返り討ちにしてやるわけだが、それがですね、妙にエピソードとして浮いているんだな。確かに、お話し的には『七人の侍』的で面白い、のだが、示現流とも何も関係がなく、ズバリ言うと本筋には全く関係ない。後々関係してくる……とも思えない。どうして佐伯先生はこのエピソードを入れたのか分からないけれど、正直あってもなくてもいいものだったと思う。特に得たものもないのだが、強いて言えば、こういう暮らしをしている人もいるんだ、というような、空也くんの見識が広がった、ぐらいな意味合いしかないような気がする。なんかオチも特になかったし。
 で。やっぱり薩摩とモメている空也くんとしては、人吉藩に迷惑をかけるわけにはいかず、本作ラストでは人吉を発って、熊本の八代へ向かうことになる。そこから、どこへ行くか聞かされていない船に乗って旅立つという計画を丸目道場に立ててもらい、それに乗っかったという形だが、一足違いで、人吉へやってきた眉月ちゃんと会えない。わたしは、ああ、こりゃあきっと、「吉川英治版・宮本武蔵」の、武蔵とおつうさんのように、これから先はずっとすれ違いの二人で、江戸の尚武館で、何年後かにやっと再開できる展開なのかな、と思っていた。
 しかし! 眉月ちゃんはわたしが想像していたような、か弱い女子じゃあなかった! 超積極ガールで、空也くんを追って船で先に八代入りし、空也くんの到着を待ち受けるという攻めの女子だった! そして今回もまた示現流との死闘を終えた空也くんが八代に到着、結果的に結構あっさり二人は再会、という展開であった。これも、わたし的にはちょっと驚いた。というか、あれっ!? と肩透かし? 的な気持ちになった。なんだよ……空也くん、君は武者修行のわりに、すげえリア充じゃん! やるじゃないの!
 というわけで、愛しい女子との再会も無事果たし、いつの日か江戸で、と約束も交わし、再び行先も知らぬ船で旅立つのであった、というエンディングであった。なお、その後、本書の一番終わりは、新蔵のその後が描かれ、なんと小梅村に逗留するようで、新蔵のことも含め、大変今後も楽しみな終わり方であったと思う。

 というわけで、なんかまとまらないのでもう結論。
 大人気シリーズ『居眠り磐音 江戸双紙』の直接の続編である『空也十番勝負 青春篇』の第2巻『恨み残さじ』が、いつの間にか発売になっており、抜かっていたわたしは発売から2週間たってやっと買い、そして結構あっという間に読み終えた。感想としては、もちろん今回も面白かった。しかし、タイトルにある通り「十番勝負」なわけで、残りはあと八番。いったいどんな強敵と戦うことになるのか。そして戦いの末に、空也くんはどんな男になるのか。現在空也くんは19歳ぐらいまで成長しているはずだが、もうすでに相当強く、父・磐音を超える男になれるのか。その成長を楽しみに見守りたいと思うわたしであった。八代からどこに向かうんだろうなあ……まずは長崎あたりなのかなあ……もっと進んで出雲の方まで行っちゃうのかな……それとも南下して九州をぐるっと回って、四国~紀伊方面なのかな……瀬戸内に回り込むのは遠回りすぎるし……尾張まで行っちゃうとかもありうるかもな……ともあれ、大変楽しみであります! 以上。

↓ こういう本もあるんですなあ……。東郷示現流といえば、やっぱり「チェストーー!」が頭に響きますな。




 去年のちょうど今頃、わたしがずっと読んできた、いわゆる時代小説のシリーズが51巻でめでたく完結した。NHKでも実写映像化されていた、『居眠り磐音』というシリーズである。完結に当たって、わたしは、主人公・坂崎磐音の息子、空也が武者修行の旅に出るエンディングに対して、空也の物語は読者が想像するのが良い、ここでシリーズを終わらせた、著者の佐伯泰英先生は素晴らしい、と、このBlogにも書いた
 あれから1年。
 この年末の新聞に出ていた広告を見て、わたしは驚愕し、げえーーー!! な、なんだって―――!? と声を上げ、マジか、マジなのか!? と、やおら興奮したのである。なんと、その空也を主人公とする新たな物語が、佐伯先生の手によって上梓されるという驚愕のお知らせであった。
 というわけで、年末に初めてそのことを知り(抜かってた……全然知らなかった……)、マジかよ、マジなのかよ……と発売を楽しみにし、発売日にすぐ買ったのだが、まだ読んでいる本があったので、ちょっとだけ待っててくれ、と興奮を抑え、一呼吸置いたところで、おとといから読み始め、上下本なのに3日で読み終わってしまった。
 そして、その作品は紛れもなく、正真正銘、坂崎空也の旅のお話だったのである。いやー、佐伯先生、ありがとうございます!!! まさか空也に、いや、磐音ファミリーみんなにまた会えるなんて、1年前は全く考えてなかったよ……というわけで、もうのっけから結論を申し上げますが、最高でした。「居眠り磐音」シリーズを読んできた人ならば、今すぐ最寄りの本屋さんへ走り、絶対に買って読むべきです!!! 


 というわけで、物語は、まさしく「居眠り磐音」第51巻の後のお話であった。以下、ネタバレもあると思うので、気になる方は今すぐ立ち去ってください。そして読む場合は自己責任でお願いします。
 さて。前作、あえて「前作」と言わせていただくが、「居眠り磐音」の最終巻51巻がどういうエンディングを迎えたか覚えているだろうか? わたしは明確に覚えていた。すべての事件が終結し、九州の関前藩(※架空の藩で実在しない。大分?のあたりっぽい)ですべての決着をつけた主人公磐音一行は江戸へ戻るが、16歳の嫡男、坂崎空也は一人、武者修行に旅立つところで物語は終わったわけである。
 空也の目指す地は、まず島津。薩摩藩である。しかし、これは世間一般にも知られている通り、島津家薩摩藩は超・閉鎖的かつ武門の誉れも高い、ヤバい国である。そんな地へ何もあてもなく赴く空也に、母親のおこんさんならずとも、読者一同大変心配していたわけである。大丈夫かしら、いや、大丈夫に決まってるよ、磐音の息子だもの、と読者たるわたしは思い、きっと空也は立派な青年となって、剣術もすさまじい腕に育つのだろう、空也よ、江戸に帰ってくる日を待っているぞ――と、物語に別れを告げたのであった。
 なので、まさかの佐伯先生による、その空也の武者修行の旅が読める日が来るとは! と感慨もひとしおであり、もう楽しみで仕方がないわけです。が、物語は、とんでもない衝撃的な幕開けから始まる。
 江戸の磐音の元へ、薩摩藩江戸屋敷から、一人の使者がやって来るのだ。そして伝えられた報せは―――なんと、空也、死す、の訃報であった。
 これには、磐音ならずともわたしももう衝撃のあまり絶句である。マジかよ、空也、お前何やってんだよ!!! と嘆くしかない。だが、である。江戸はおろか、日ノ本最強の武士である坂崎磐音の息子である。幼少期から体を鍛え、やっと道場でのけいこが許されたばかりとはいえ、きっちりと基礎体力は叩き込まれた若者だ。死ぬわけない!!! と、普通は思うだろうし、わたしもそう思った。
 というわけで、江戸では磐音が空也死す、の報を受け、一方九州では、利次郎と共に九州に残った霧子が、空也の誕生からずっと成長を見守り、ともに苦難を共にした姉として、危険な薩摩国境へ、空也のその後をたどるために、利次郎の許しを得て旅立っていた(時間軸的には磐音のもとへ訃報が届く半年前という設定)。そんなオープニングである。
 で、かつては忍びの者であった霧子にもなかなかその足跡はたどれず(なにしろ空也はある意味素人なので、動きが読めないし、とある事件に巻き込まれていた)、ようやく空也の姿を捕らえた霧子が観たのは、薩摩国境を守る影の集団に襲われ、滝つぼへ転落する場面であった――というのが上巻である。
 しかし、ある意味当然、空也は瀕死の状態ながらも生きており、きっちりと復活する。おまけに、なんと空也in LOVEですよ。今回、下巻で空也をかいがいしく看病し、その復活を手助けしてくれる姫さまがとてもいい。こりゃあ、空也ならずとも、もうぞっこんですよ。ただし、空也は平成の世に生きるゆとりKIDSとは違い、薩摩入りに際しては「無言の行」を己に課しているため、一切喋らない。この、しゃべらない空也と姫さまが心を通わす展開が実にイイのです。
 というわけで、下巻では、空也復活から、姫さまとの交流を描きつつ、薩摩藩内部の抗争に巻き込まれながらも、生涯の友、と言えそうな男との出会い、そして「野太刀流」という剣の流派の技を身に着けていく様など、非常に読みごたえがある。
 結局、空也が薩摩に行こうと思った本来の目的である「東郷示現流」を学ぶことはできないが(門外不出のため、どうしてもできなかった)、それでも薩摩へ来た価値は十分すぎるほどあって、ラストは空也の恋の行方も大変気がかりのうちに幕を閉じる。まあ、修行中ですから、恋はお預けですよ。江戸での再会が、もう、我が子のように空也を思ってしまうおっさんのわたしとしては、大変楽しみであります。
 なお、本作は、そのタイトルにある通り、「十番勝負」なわけで、今回が最初の「一番勝負」ということで、まだ先が読めそうで大変楽しみだ。また、今回のサブタイトルである「声なき蝉」というのも、上下巻を読み通せばその意味は非常に深く意味が分かるだろうと思う。いやはや、本当に素晴らしい物語で、わたしは大感激であります。

 ただ、ですね。わたしは佐伯先生の『密命』シリーズも大好きだったのですが、『密命』でのラストは、若干残念に思っているのです。つーかですね、『密命』シリーズの後半は、もはや完全に主人公が、元の主人公である金杉惣三郎から、その息子の清之助に移っていくのですが……この清之助も武者修行で各地を回る展開なのだけれど、とにかく強すぎなんですよね。
 無敵すぎて、なんというか……強さのインフレが進行してしまった感が若干あります。登場時は子供だったし、惣三郎のいうことを聞かないで、あろうことか年増の女と心中騒ぎまで起こす、ちょっとした問題児だったのに。まあ、その後、鹿島で修業を積んで、心身ともに鍛え抜かれたわけですが、とにかく後半の清之助はもう超無敵すぎで、父の必殺技である「寒月霞切り」をしのぐほどの「霜夜炎返し」を編み出して、もう事実上無敵になっちゃたんすよね……まあ、父を超えることは男の生涯の目標であろうし、牙をむく息子に真っ向から応える惣三郎もカッコイイし、納得はできるのですが……もう異次元の強さになんだよな……
 なので、この『空也十番勝負』も、そういった無敵すぎる空也、になってしまうような気がして、実はわたしは大変心配です。ただ、負けて死んでしまっては話が成立しないので、仕方ないかもしれないなあ……まあいずれにせよ、空也のこれからの修行の旅と、そして恋の行方の方も、大変楽しみであります。薩摩がらみの問題は、まだ完全解決したとは言えそうにないし、次はどこへ行くんでしょうかね……でも、空也もまた、柳生新陰流とは無縁でいられないだろうな……尾張での対決は避けられないだろうな……今のところまだ九州にいるから、まずは熊本で剣聖・武蔵がらみの話も出てくるのかなあ……長崎で、異人との闘いなんかもあってイイと思うな……いやあ、夢が広がりますねえ。マジ楽しみっす!!

 というわけで、結論。
 わたしにとっては突然の発売となった『空也十番勝負』という佐伯泰英先生による小説は、驚きの「居眠り磐音」事実上の続編であった。そしてさっそく読んでみたところ、シリーズのファン必読の、素晴らしい物語でありました。武者修行を続ける坂崎空也の旅の「一番勝負」は、島津・薩摩での死闘。生き残ることはできたものの、この先も、どんどん強敵が出てくることでしょう。しかし、空也よ、強くなるのだぞ! そして、江戸で姫さまと再会するのだ!! その日まで精進あるのみぞ!!! いやあ、マジ最高でした。以上。

↓こちらが『密命』シリーズ。佐伯先生の言によれば、「月刊佐伯」としてフルスピードで書いていたため、今思うとかなり直したいと思うポイントが多いそうで、「完本」として現在出し直し中です。

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