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 ミュージカル『エリザベート』という作品は、宝塚歌劇をたしなむ淑女なら知らない人はいないだろうし、日本のミュージカルファンなら誰でも知っている作品だろうと思う。日本での初演は1996年の宝塚歌劇団雪組公演で、3年前、初演から20周年となり、今でも数年ごとに再演が繰り返されている大人気作品だ。
 事実、去年も月組によって公演が行われ、わたしも宝塚と東京、両方観に行ったほど好きな作品だが、宝塚歌劇ではない、普通に男も出演する「東宝・帝劇版」もあって、こちらも数年ごとに再演が繰り返されているのである。
 わたしはこの「東宝・帝劇版」は2015年に上演された時に観に行ったことがあるが、まあとにかくチケットを入手することが難しく、この度、3年ぶりに上演されることとなった帝劇版も、観に行きてえなあと思っても、そのチケット獲得の道のりは極めて困難なものであった。何が言いたいかというと、とにかく超人気作品なわけです。
 で。今年上演される2019年版は、その人気をさらに過熱させる要因が一つあった。それは、タイトルロールであるオーストリア皇后、エリザベート(通称「シシィ」)を、去年の宝塚歌劇月組版で同じ役を演じ、それをもって宝塚歌劇団を卒業された愛希れいかさん(以下:ちゃぴ)が、帝劇版でも演じることが決まったからであります。宝塚生活の最後を、エリザベートで、しかも超迫真の演技と歌をもって飾ったちゃぴちゃん。またあのちゃぴシシィを見られるなんて!! と、わたしのように興奮し、コイツは観てえぜ! と思った淑女の皆さんは、恐らく日本全国で100万人ぐらいいたはずだ。
 なお、メインキャストはWキャストになっていて、もちろんシシィと言えば花さま(=花總まりさん。宝塚版初演のシシィを演じた美しいお方)に決まってるでしょ! と仰る淑女も数多いだろう。花さまはこの帝劇版には2015年以来登板を続けており、たしかに、その花さま独特のノーブル感、透明感、そして無邪気な少女から決然と自分の道を征く姿までを完璧に演じるお姿は、控えめに言っても最高であり、至高であることは論を待たないのだが、やはり、今年観るならちゃぴシシィであろうとわたしは思った。そして、冥界の王トート閣下は、今回も2015年版から演じ続けているプリンス芳雄氏(井上芳雄氏)が登板、その声楽で鍛えた歌と若干平たい民族系のクールさは絶妙であるものの、もう一人のトート閣下として、今回初登板となった古川雄大くんがどんなトート様を演じるのかについても、きわめて興味深く、結論としてわたしは、ちゃぴ&古川くんVerが一番観てみたい、と思うに至った。古川くんは、このBlogで何度も書いている通り、その歌声は男ミュージカル役者の中でわたしが一番好きなアクターである。2015年に観たルドルフはわたしの中で最高のルドルフで、あの古川くんが満を持してトート閣下に挑む、というのは、もう超期待なわけであります。
 しかし、とにかくそのチケット争奪戦は熾烈を極め、実はわたしは6月に、1枚、ちゃぴ&古川くんのチケットが取れていたのだが、どうしても都合のつかない急用で行けず、泣く泣く可愛い後輩女子に譲った経緯があった。そのことをわたしの美しきヅカ師匠に話したら、師匠があっさり昨日のチケットを譲ってくれたので、やっと、超楽しみにしていたちゃぴ&古川くんを観に行けたのであります。師匠、ホントいつもありがとうございます!
 というわけで、前置きが長くなったが、昨日のどんよりした小雨の中、わたしはウキウキ気分で帝国劇場、略して帝劇へ向かったのであった。
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 で。いきなり結論を言うと、「マジでちゃぴシシィは最高だったぜ、つうかもう、震えたね!! そして古川くんトート閣下もなんか新しくていいじゃねえか! 要するにもう、最高だよ!!」というのがわたしの感想であります。なので、以下、たぶん同じことばかり言うと思うので、飽きた方はこの辺で退場していただいて結構です。つうか、映像でも最高なのは伝わると思うので貼っておこう。

 というわけで、以下、キャスト別に思ったことを書き連ねてゆこう。わたしが『エリザベート』という作品を観るのは、宝塚版・帝劇版・ガラコンなど含め、恐らく9回目か10回目なので、もちろん主役の二人やフランツ・ルキーニ・ルドルフと言ったメインキャストは勿論だけど、今回は結構アンサンブルキャストの皆さんのすばらしさに目覚めたような気がします。皆さんホント、いいっすね、やっぱり!
 ◆愛希れいかさん as エリザベート皇后:まあ控えめに言ってちゃぴシシィは最高でしたね。明らかに宝塚版からさらに1段上に登ってるとお見受けいたしました。演技、歌、そして少ないけどダンス。すべてが最高レベルに到達していると思います。ちゃぴと言えば、わたしはダンサーとしての技量を最も素晴らしいと思っているけれど、演技もまた最上級のクオリティであり、歌も当然素晴らしかったすな。とりわけ今回は演技、でしょうな。男のわたしには、どうして皇后は息子ルドルフが大ピンチの時に「無理よ」の一言で手を差し伸べるのを拒否したのか、全然理解できないのだが、あのシーンでのちゃぴの、もう完全に心を閉ざした表情は、ヤバかったすね。今回はかなり前の方だったし、双眼鏡でその表情が良く見えました。しかもその時って、ベールをかけてるんだけど、あの冷たい・全く心動かされていない・完全無関心な表情は、ホント双眼鏡越しに観ても心が凍り付いたすね。母親にあの眼で観られたら、ああ、こりゃあもう何を言ってもダメだ、もうオレ、死ぬしかねえ……とルドルフが絶望したのも理解できますよ。しかも、我々観客は、冒頭の超無邪気な可愛いガール時代のシシィを観ているわけで、その変貌は演技として極上だったと思います。ホント、ちゃぴは可愛いし、最高ですなあ。ルイ・シャルルを演じた頃から観ていたわたしは、もう完全に親戚のおじさん目線で、あのちゃぴが立派になりおって……と感無量でありましたね。最高です。
 ◆古川雄大くん as トート閣下:まあ控えめに言って古川くんトートは最高でしたね。トート様は、まあいわゆる「死」を擬人化した、人間にあらざる超常的存在で、この役は演じる方によって相当違いがあって、その違いもまた見どころの一つなわけですが、なんつうか、古川トートは、今まで観たことがないような、無邪気さのようなものを感じたっすね。冒頭の、木から落っこちて死にかけたシシィを発見し、「な、なにぃ! 何だこの可愛い子は!?」的な驚きの表情だったり、後半、夫の浮気についうっかり「命を絶ちます!」とシシィが言った時に、超嬉しそうに、やった、ついに来た!とワクワク顔で「待っていた!!!」というところの笑顔は、とても無邪気で、なんというか、わたしはDEATH NOTEの死神リュークを思い出したっすね。なんか、「人間っておもしれー」的な。古川トート様は、あまり苦悩しなかったように観えました。でも、それもまたアリだと存じます。最高です。
 ◆山崎育三郎氏 as ルイジ・ルキーニ:まあ控えめに言って育三郎ルキーニはやっぱり最高でしたね。2015年版でもわたしは育三郎氏のルキーニを観たけれど、ノリノリ感はもう貫禄すらあって、素晴らしかったと存じます。でも、若干、調子の乗ってる感は抑えめだったような気もする。少し重厚になったというか、ビジュアル的にも顔が重量感増したか? もっとシャープでとがっている印象だったけれど、少しおっさん感があったような……。でも、カッコイイのは間違いなく、その歌声も相変わらず、ありゃセクシーと言っていいんだろうな、淑女の皆さんが聞いたら痺れるであろう、カッコ良さは満点でありました。最高です。
 ◆田代万里生氏 as フランツ・ヨーゼフ1世:まあ控えめに言って最高でした。万里生氏も2015年版で観たけれど、安定のフランツは流石です。つうか、アレなんすよね、宝塚版と帝劇版でわたしが一番違うと思うのは、ラスト直前のフランツで、宝塚版だと「最終答弁」としてルキーニが召喚した幽霊ヤング・フランツが、俺こそシシィを愛した男だ、お前はシシィに振られるのが怖いんだろうが!! と、どちらかというとトート様を攻撃する一方で、帝劇版だと、生きているオールド・フランツが見る「悪夢」という設定になっていて、「お前がハプスブルグを滅亡に追いやったんだ! シシィは俺を愛してるんだ!」とトート様に責められる中で、もっと「やめろ! 俺がシシィ大好きナンバーワンだ! お前は引っ込んでろ!」と髪を振り乱す勢いの激しさを見せるんすよね。ここでの万里生氏の怒り爆発はとても素晴らしかったす。他にも宝塚版と帝劇版は細かい違いがあるんだけど、わたしはこのラスト直前の「最終答弁」と「悪夢」の違いが一番興味深いっす。最高です。
 ◆木村達成氏 as 皇太子ルドルフ:わたしは木村氏を見るのは初めてのようだが、なるほど、イケメンであるのは間違いないすね。歌も大変良いと思います。が、うーん、やっぱりわたしのBESTルドルフは2015年の古川くんかなあ……ルドルフの甘さというか若さ? は、古川くんの声が似合うんすよ……わたしとしては今回の2019年版では、ぜひとも三浦涼介くんVerも観たかったのだが……くそう、マジでBlu-ray出してくれないかなあ……。いずれにせよ、木村氏も大変カッコ良く切なく、今後の活躍を祈りたいすね。
 ◆アンサンブルキャスト:今回一番わたしの目を引いたアンサンブルの方として、美麗さんという方を記録にとどめておかなくてはなるまい。とにかく、顔が小さくスタイル抜群の美人。プログラムを見て初めて知ったけど、なんと宝塚歌劇団月組出身、しかも2009年入団! てことはですよ、わたしイチオシの95期で月組ってことで、それすなわち、ちゃぴと同期でずっと一緒だったってことですよ! マジかよ、全然気が付かなかった。在団当時は麗奈ゆうという名前だったみたいすね、すごく背も高くて、やっぱり男役だったみたい。でも今や、超美人でとにかくセクシー! 娼婦マデレーネはもうヤバかったすね。目立ってましたなあ! ありゃあもう、フランツじゃなくとも男なら100%イチコロっすね。この2ショットが最高です!
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今日は一回公演だったので✨ れいかちゃんとご飯に行きました🍝🥰🍝 パスタ盛り盛り食べました🍝🍝🍝🍝🍝🍝❤️❤️❤️❤️❤️❤️ その後は久々のタピオカ🤣❤️❤️ Chatime行ったよ〜❤️❤️❤️ 沢山食べてお話して今はお風呂でのんびりしてます♨️♨️♨️♨️ この写真、美麗お姉さんぽくて、 れいかちゃん妹っぽい🤣🤣 れいかちゃんきゅるるんてしてて可愛いっ🥰🥰❤️❤️❤️ そういえば、音楽学校時代にれいかちゃんのことをお姉ちゃんって呼んでて笑 組配属になったばかりの時にお稽古場でお姉ちゃんって呼んだら上級生に姉妹なの?って聞かれて笑 れいかちゃんが咄嗟に違いますっっ!!!て言ってたのを思い出した🤣🤣 昔からしっかり者のれいかちゃん✨ 美麗もしっかりしなきゃ🥺✨👍👍👍👍👍 明日も公演頑張ろうっ☺️☺️☺️✨✨✨✨✨ #エリザベート#エリザ#愛希れいか#ちゃぴ#れいかちゃん#美麗#95期#タピオカ#チャタイム

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 うお、ちゃぴも可愛いですなあ……。ほかにも、アンサンブルキャストの皆さんの中には宝塚歌劇団OGの方も多くいて、『エリザベート』きってのかわいそうキャラ、姉のヘレネ(や娼婦などたくさん)を演じた彩花まりさんも95期宙組出身だし、ヴィンディッシュ嬢を演じた真瀬はるかさんも、92期宙組出身とのことで、歌も、そして冒頭の幽霊としてのバレエ的な舞も、実にクオリティが高く、素晴らしかったすね。もちろん、OGと言えば、ゾフィー様を演じた元月組TOPスター剣幸さまも、超おっかないゾフィー様で大変満足です。

 というわけで、もう長いのでぶった切りで結論。

 帝劇では3年ぶりとなるミュージカル『エリザベート』を観てきたのだが、観たかったキャスト、愛希れいかさん&古川雄大くんVerは、期待を上回る素晴らしさでありました。とりわけ、やっぱりちゃぴはすごいね。あの芝居力は本当にすごいす。ぞくぞくしたっすなあ……! そして古川くんトートも、妙に無邪気のような、面白がっているようなトート様はとても新鮮で、大満足であります。もちろん育三郎ルキーニは安定のルキーニであり、万里生フランツも、何一つ文句のつけようはありません。最高でした。そして、アンサンブルキャストの皆さんも本当にブラボーっすねえ! 上には書かなかったけれど、黒天使軍団はやっぱり凄いダンスと肉体で、ありゃあ淑女の皆さんだったら目がハートになるのもやむを得ないでしょうな。そして女性陣も、とても美しくセクシーで言う事ナシであります。最高でした。しっかし、東宝よ、なんで今時DVDなんだ!! Blu-rayで出してくれたら、おれ、全Ver買ったっていいんだぜ!? つうかNHKが8K中継してくれねえかなあ……そしたら今すぐ8K環境を揃えるのに! とにかくチケットが獲れない人気公演だけに、映像化を強く望みます。可能な限りの高画質で!! そこんとこよろしくお願い存じます! 以上。

↓ まずは入門としてこちらをお勧めします。みりおトート&みちこフランツのバトルが良い!

 わたしは宝塚歌劇をたしなむ男として、当然『ベルサイユのばら』はきちんと学習しているわけだが、宝塚歌劇においては、いわゆる『ベルばら』なる演目は、実はいろいろなヴァリエーションがあって、「オスカルとアンドレ編」とか「フェルゼンとマリー・アントワネット編」とか、物語で中心となるキャラクターが違うVerがそれぞれ存在している。まあ、これはヅカファンなら誰しも知っていることだと思うが、おそらくそうでない人には、へえ~? と思うのではなかろうか。
 で。その中で、人気があるのかどうか、わたしは実のところ知らないのだが、『ベルばら』において、一つのカギとなるキャラクターがマリー・アントワネットである。映画や演劇で良く登場する人物だが、これは世界的な人気なのか、日本での局所的な人気なのかもわからないけれど、いずれにせよ、日本においてマリー・アントワネットというお方は、少なくとも知名度としてはかなり高いと思う。
 そして、マリー氏に関してちょっと特徴的なのは「悲劇の王妃」という面と「贅沢三昧で放蕩の限りを尽くした悪女」的な、相反するイメージを同時にお持ちであるということだ。ま、それは作品での描かれ方によるものなので、当然と言えば当然なのだが、歴史的に一つだけ言えることがあるとしたら、マリー・アントワネットという女性は民衆の前でギロチンで首をはねられて死んだ、という事実であろう。それが悲劇なのか、あるいは、ざまあなのか。それはもう、見方次第であるし、非人道的だとか現代的価値観でモノ申しても、ほぼ意味はなかろうと思う。日本だって同じようにバンバン首を斬ってきたわけだし。
 というわけで、わたしは昨日、ミュージカルの聖地でお馴染みの帝国劇場、略して帝劇にて絶賛上演中のミュージカル『マリー・アントワネット』を観てきたのだが、史実にどのくらい忠実なのかよくわからないけれど、とにかくキャスト陣の素晴らしい歌に酔いしれ、大変確かな満足を得たのであった。かなり台詞少な目の歌率の高いミュージカルで、その数々の歌がもうことごとく素晴らしく、とにかくブラボーとしか言えない体験であった。
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 というわけで、帝劇に集った観客の推定90%ぐらいが淑女の皆さんで、これはおそらくはキャストの人気を反映したものと思われる。当たり前か。なんつうか、ミュージカルはまだまだ女性コンテンツなんですかねえ……面白いのになあ……確かにわたしの周りでも、ミュージカルをたしなむ男はほぼおらず、実際わたしも一人で観に行くか、まわりのミュージカル好きな女子と行くかの2択であり、昨日も、ミュージカル好きな女子と帝劇へ推参したのだが、彼女は聞くところによると、マリー・アントワネットというキャラクターが大好きなのだそうだ。それも、『ベルばら』の影響らしいのだが、面白いことに、女性の彼女から見ると、マリーの愛人?であるハンス・アクセル・フォン・フェルゼン様は嫌いなのだという。わたしはまた、フェルゼン様とのロマンスがグッとくるんじゃないの? と聞くと、そうではなく、むしろフェルゼン様はただの女たらしであり、使えない男、という認識なのだそうだ。わたしはその彼女のフェルゼン様観を聞いて、あ、そういう見方をする人もいるんだ、と結構驚いた。実際、なるほど、である。
 そして今回のミュージカル『マリー・アントワネット』は、遠藤周作先生の『王妃マリー・アントワネット』という作品が原作にあたるそうで、それをミュージカル化したものである。なお、本作は2006年に初演が上演されたのち、今回の再演となったのだそうだ。わたしは初演は観ていないのだが、今回の再演ではキャストも一新され、演出も「新演出版」と銘打たれている。そして、数々の素晴らしい楽曲を担当しているのが、これもヅカファンにはお馴染みのMichael Kunze氏とSilvester Levay氏という『エリザベート』を作り上げた黄金コンビだ。まあ、控えめに言って、素晴らしすぎて最高の歌の数々でしたね。
 ちなみに、恥ずかしながらわたしはドイツ文学を専攻していたのに、Stefan Zweig氏の『マリー・アントワネット』は読んでいないし、遠藤先生の作品も読んでいない。なので、わたしのマリー・アントワネット知識は『ベルばら』や映画の物語をベースにしているのだが、特に今回、その知識で困るようなところはなかったす。
 物語は、冒頭、まずはフェルゼン様が、マリー処刑の報を受け取り、なんてこった……と嘆くシーンから始まって、回想に入るという枠構造になっている。そして1775?年から処刑される1793年までが描かれるわけだが、メインとなるのは有名な「首飾り事件」で、その事件によって一気に転落人生となるさまが描かれている。そして、キーとなる人物がマルグリット・アルノー(架空の人物)という、同じ「MA」のイニシャルを持つ女性で、市井で貧しく暮らしていた彼女は、贅沢暮らしのアントワネット憎しの想いが強く、その憎悪を革命派に利用される、的なお話である。つまり、二人の「MA」の対称的な人生模様、が主題となっているわけだ。
 というわけで、以下、各キャラと演じた役者陣をメモしていこう。
 ◆マリー・アントワネット:神聖ローマ帝国皇帝フランツ1世とオーストリア大公国のマリア・テレジアの娘であり、要するにハプスブルク家のお姫様。14歳で後のフランス王ルイ16世(嫁いだころはルイ15世が健在。後のルイ16世は15世の孫。ブルボン朝)に嫁ぎ王妃に。本作を観てわたしが思ったのは、アントワネットに罪があるとしたら、あまりに想像力が欠如していた点であろうと思う。想像力とは、自らの暮らしが如何にして成り立っているのか、に対する認識であり、例えばドレス1着でも、どのようにしてつくられて今自分の手元にあるのか、そしてそれを購入した金はどこから、どうやって国庫に入ってきたのか、を理解する責任と言い換えてもいいだろう。そして、これは何も国家に限らず、普通の企業にも言えることだが、100%間違いなく、TOPに立つ者の周りには、TOPの耳に聞こえのいいことしか言わない奴らが跳梁跋扈してしまう。王や企業のTOPは、そいつらからだけ話を聞いていては、あっという間に腐敗してしまうのが残念ながら事実なので、もうチョイ、きちんと全体を見張る「目」が必要だったはずだ。そしてそういう「目」は、間違いなくTOPの想像力が要求するものだと思う。ホントに大丈夫なのかな、とあらゆる事態を想像する力がTOPには必要なのに、それを持ち得なかった。それが、アントワネットの罪であり、結局のところ、王妃の器ではなかったと言わざるを得ないのではなかろうか。とはいえ……実際のところ、フランス財政はもうルイ15世の頃からヤバかったわけで、たぶんアントワネット一人ではもうどうにもできなかっただろうな……それでも、やっぱりTOPとして、国の現状をきちんと客観的に理解する責任はあったのは間違いないだろうから、やっぱりアレですかね、もうチョイ、マリア・テレジアお母さんと緊密に連絡を取り合ってればよかったのかもしれないすな……。ああ、でもそれだとまたスパイとか言われちゃうか。八方ふさがりだったんですかねえ……。
 で、今回演じたのは、Wキャストだけどわたしが観た回は花總まりさまがアントワネットを演じておられました。わたしは2010年にヅカ道に入門したので、花さまの現役時代は生で観ていないのだが……まあ、いつ観ても、どんな作品でも、お美しいですよ。もう45歳だそうですが、まったく見えないね。なんつうかな、花さまのもつ、ノーブル感、そして透明感は完全にオンリーワンですな。歌も演技も、もちろん超最高でした。ブラボーでありますね。
 ◆マルグリット・アルノー:もう一人の「MA」。市井に暮らす貧しい女性。ラストで、な、なんだってーーー!? という驚愕の出生の秘密が明かされる。マルグリットは、食べるものもなく、単純にもう生きていくのが限界で、王宮で贅沢三昧のアントワネットに対する憎悪を燃やしていたのだが、その怒りのパワーがすさまじく、王座を狙うオルレアン公や後のジャコバン派の連中に利用されていくが……ラストの、憎しみの連鎖を断つのは生きている我々だ的な歌が胸にしみましたなあ……。
 演じたのは、こういう怒りパワーが炸裂する熱い女子を演じさせたら恐らく日本一のソニンちゃん。Wキャストの昆夏美ちゃんVerもきっと素晴らしかったんだろうけど、とにかくソニンちゃんの熱く激しい歌は超最高でした。やっぱりこのお方はその若干ちびっ子な体をフルに使って、我々観客のハートを鷲掴みにしますな。勿論ブラボーであります。実はわたし、大ファンす。
 ◆ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン:スウェーデンの貴族で軍人。アメリカ独立戦争にも出征している。今回は、仮面舞踏会でアントワネットと知り合って後、愛人だのと悪いうわさが流れるのを嫌って一度帰国した後、アメリカに行って、帰って来て、再びアントワネットのいるフランスに駐在することになったあたりから物語が始まる。男のわたしの視点では、頑張ったけどどうしようもなかった、と思えるため、別にフェルゼン様は嫌いではないのだが……確かに、本作ではアントワネットに何もしてやれなかった男という感じに描かれてはいた。わたし、ヅカ版でフェルゼン様が歌う「駆けろペガサスの如く」の歌がすげえ好きなのです。「行く手~に~ なーやみ多くとも~ 行け! 行け! 我が命の、つ~づ~く~か~ぎ~り~~~!」の盛り上がりが大好きなんすよ……でも、今回は、フェルゼン様の大活躍はほぼありませんでした。残念。
 そして演じたのは、わたしが男のミュージカル俳優でイチオシの古川雄大くん31歳。彼の声は、まあ、甘い声なんでしょうな。彼のルドルフは最高だと思うわけですが、今回のフェルゼン様も、まあ切ない感じが大変結構なお点前であったと思います。素晴らしかったすね。
 ◆オルレアン公ルイ・フィリップ:今回、王位を自ら手中にするために、「首飾り事件」の黒幕として暗躍する悪い人。わたしは、コイツって、アレか、ナポレオン没落後、7月革命で即位するオルレアン公ルイ・フィリップ(通称「フランス国民の王」)のことか、と思ったのだが、どう考えても時代がズレていて、どういうことだ?? と謎に思ったので調べてみたところ、どうやら、その父親も、同じくオルレアン公ルイ・フィリップ2世という人物で、今回出てきたのはこの父親のようです。史実でも、「首飾り事件」でアントワネットを攻撃した人物みたいですな。なので、本作で悪役として出てきたアイツの息子が約40年後の1830年の7月革命でフランス王になるってことのようだ。
 で、演じたのは吉原光夫氏というお方で、まずデカイ! 190cmはありそうなぐらいデカい! そして、おっそろしく声がイケボで、超カッコ良し!であった。どうやらこの吉原氏のパフォーマンスを観るのはわたしは初めてのようだが、元劇団四季のお方だそうで、『レミゼ』にもバルジャンやジャベールで出演されていた方だそうだ。ひょっとしたら、わたしが観た時のジャベールだったかも……という気もする。ちょっとこのイケボイスは覚えておきたいと思った。素晴らしかったです。悪役ですが。

 というわけで、書いておきたいことがなくなったので結論。
 現在帝劇にて絶賛上演中の新演出版ミュージカル『マリー・アントワネット』を観てきたのだが、まず、台詞率低めの歌率高めな作品であり、その数々の歌が超素晴らしかった。そして演じる役者陣のパフォーマンスも素晴らしく、とりわけ、アントワネットの花總まりさんは最高だし、マルグリットのソニンちゃんも熱く、フェルゼン様を切なく演じた古川雄大くんの声は甘く、そして悪党オルレアン公を演じた吉原光夫氏のイケボは男が聞いても圧倒的にカッコ良く、結論としてはもう、超最高でした! としか言いようがないす。これは絶対、劇場で、生のライブで観ないといけない作品だと思いますね。映像ではこの熱は伝わり切らないのではなかろうか。とにかく熱く、激しく、美しい3時間でありました(休憩含む)。やっぱり、ナマはイイですな! つうか、ナマに限りますな! ミュージカルは! 以上。

↓ やっぱり狐狸庵先生の原作も読んでみたいですなあ……。


 16世紀中期~末期、というと、日本では1560年の桶狭間以降の織田信長の隆盛と、その後の豊臣秀吉による政権から1600年の関ヶ原へ至る、歴史が大きく動いた期間と言っていいだろうと思う。戦国オタクとしてわたしはそれなりに詳しいつもりだが、一方そのころイギリスではどんなことになっていたか。わたしとしては真っ先に思うのは、Shakespeareが生まれて活躍してた頃だな、という事で、それ以外では、イギリスの政治史、というより王室史、というべきか、とにかく、どんな政治変遷があったのか、実はあまり詳しくなかった。
 そんな、16世紀中期のイギリスの歴史を振り返るには大変興味深いミュージカル、それがわたしが今日、帝劇で観てきた『レディ・ベス』という作品である。とはいえ、まあ歴史の流れというより後にエリザベス1世として即位する女性の若き頃の恋を描いた作品なので、それほど歴史的な詳しいことは描かれないが、わたしとしては俄然、そのころのイギリスの歴史に興味がわいてきたので、ちょっといろいろ調べてみたいと思わせる作品であった。

 本作は、初演は2014年で、そのころのわたしはサラリーマン人生において最も忙しい頃で、ほとんど観劇をしていない。いや、まあ宝塚歌劇だけはちゃんと観に行っていたのだが、東宝・帝劇系の作品は観てぇなあと思っても全然行けておらず、再演されるのをひそかに待っていたのである。
 というわけで今日はe+の貸切公演で、席も6列目とまずまずのチケットを獲ることができ、大変満足であった。本作は、初演の時も、今回の再演も、メインキャストがダブルキャストである。わたしとしては、あまり迷わず、平野綾ちゃんVerを観たいと思ったので今日の観劇となった。おそらく、人気はもう一方の花總まりさんVerの方が高いと思うが、わたしは2013年に帝劇で観た『Le Miserable』でのエポニーヌがとても印象的だった平野綾ちゃんVerの方が観たかったのである。結論から言うと、平野綾ちゃん演じる主人公ベスは、とても可憐で、歌も文句なしであり、要するに最高でありました。いやあ、本当に綺麗で可愛くて、そしてわたしの大好物な、眉間にしわを寄せて眉の下がった「しょんぼりフェイス」が実に極上であった。ヤバいす。超今さらだけど、ファンになりそうなぐらい素晴らしかった!
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 今日も帝劇は大変お客さんがいらっしゃっておりました。
 そして今日のキャストは↓こんな感じ。
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 まずは物語をざっとおさらいしよう。
 イギリス王ヘンリー8世は1509年に即位し、以降1547年までイングランド王として君臨したチューダー朝第2代の王である。彼はカリスマを持つ強いリーダーだったわけだが、男子に恵まれず、なんと6回結婚している。要するに離婚を5回しているわけだが、思い出してほしい。キリスト教、カトリックの教義では離婚禁止である。そのため、ヘンリー8世はイギリス国教会を作ってローマ教皇から離れ、一種のプロテスタントとしてキリスト教に帰依していたわけだ。
 その結果―――まあたくさんの女王候補の女子たちが生まれたわけで、本作は、そんな運命に翻弄された後のメアリー1世となるメアリー・チューダーと、後のエリザベス1世となる少女ベス、二人の女性の生き方を追ったものだ。この二人がどう対立するかをまとめると、こういう感じだと思う。
 ◆メアリー:母は、ヘンリー8世最初の妻であるキャサリン・オブ・アラゴン。しかし男児に恵まれず離婚され、追放されてしまったため、父であるヘンリー8世とイギリス国教会を憎み、熱心にカトリックを支持して、強烈にプロテスタント(=国教会)を弾圧。その苛烈なプロテスタント弾圧は「ブラッディ・メアリー(=血まみれメアリー)」と呼ばれるほど強烈なものに。ついでに、母を追放させた2番目の後妻であるアン・ブーリンも大っ嫌いで、結果としてその子であるエリザベスも大っ嫌い。
 ◆ベス(エリザベス):母はヘンリー8世の2番目の妻であるアン・ブーリン。元々アン・ブーリンは、メアリーの母キャサリンの侍女だったが、まあ見初められちゃったんでしょうな。で、どうやら意外とアンはしたたかな女子だったようで、あたしを妃にしないならHしないわ! と迫ってヘンリー8世はキャサリンと離婚し、アンを妻としたらしい(Wikiによれば)。しかし晴れて正式な妻となったのもつかの間、わずか3年で国王暗殺容疑及び不義密通を行ったとして処刑されてしまう。その結果、アンとの間に生まれたベスは一度庶子の立場に落とされ、おまけに国教会信者であるため、姉であるメアリーに何かと目を付けられてしまう。しかし、(少なくとも本作では)聡明で心優しいベスは、そのおっかないお姉さんに従う姿勢で、決して対立するつもりはなかったのに、完全なる言いがかりで牢に入れられてしまうのだったーーーてな展開である。
 この二人の女性に大きな影響を与えるのが、二人の男である。
 ◆ロビン・ブレイク:平民の吟遊詩人。まあ、今風に言えばストリートミュージシャン。どうやらモデルはまさしくShakespeareらしいが、ベスに出会い、ベスを愛し、ベスに愛を説くイケメン野郎。
 ◆フェリペ:スペイン王カルロス1世の息子であり後のフェリペ2世。ハプスブルク家の男でもある。メアリーと結婚するためにイングランドへやって来るが、本作ではかなりのチャラ男風でいて、なにかとベスを助けてくれる、これまたイケメン野郎。正直、彼の本当の目的は本作では良くわからない。スペインの野望としては、イングランドを再びカトリックに戻すことにあり、そのためにメアリーと結婚したわけだが、一方ではベスを何度も助けてくれるわけで、どうもそれは、人気のあったベス(→メアリーがとにかく苛烈すぎて人気がなかった)を処刑してはイングランドで内乱が起きてしまうので、それを防ぐため、というのが大義名分のようだったが、わたしには、要するにベスがかわいくて助けてやった、ぐらいにしか思えなかった。
 ともあれ、本作はこんな女子二人と男子二人を中心に描かれるラブロマンスと言っていいだろう。ベタではあるが、まあとにかく、各キャストの熱演と数々の素晴らしい歌がブラボーであった。以下、キャストをまとめてそれぞれ思ったことを書き連ねてみよう。
 ◆ベス:今日のベスは何度も書いている通り平野綾ちゃんが熱演。歌も良かったし、やっぱりどう見ても可愛いですよ、このお方は。すっごい華奢で、ちびっ子で、1幕ではずっとしょんぼりした困った顔をしていて、それなのに歌は力強くてカッコよく、ホント最高でした。衣装も抜群に似合っているし、ラストでエリザベス1世として即位するお姿は実に神々しく、わたしとしては最大級の賛辞を贈りたい。全くもってブラボーでした。もう、完全にミュージカル界になくてはならない女優の一人になったね。きっと、我々には想像の及ばない努力をしてきたんだろうと思う。どうかこれからも、いろいろな役に挑戦してください。また、会いに行くよ。本当に素晴らしかったす。
 ◆ロビン:今日のロビンは加藤和樹氏。わたしにとって加藤氏は、テニスの王子様ミュージカルの初代・跡部様であり、仮面ライダー・ドレイクの大介なわけだが、あれからもう10年以上の時が過ぎ、彼も今ではミュージカル界を背負う有力男優の一人になりましたなあ。彼もこの10年をたゆまぬ努力で精進してきたのは間違いないわけで、活躍がとてもうれしいです。ラストのベスとの別れでの表情はとてもグッときましたなあ。大変カッコよかったと思います。なお、Wキャストで山崎育三郎氏もロビンを演じているのだが、育三郎Verもカッコイイんだろうな……歌い方が二人は全然違うから、聞き比べたいですなあ。CD買おうかしら……。
 ◆メアリー:今日のメアリー様を演じたのは、元・劇団四季のベテラン、吉沢梨絵さん。本作では、メアリーは実におっかない女性だけれど、実際のところ、メアリーの立場なら、そりゃあベスが憎いでしょうなあ。それはもうしょうがないと思う。なのでわたしとしては別に悪役には思えず、自らの死期を悟った時、ベスと和解(?)するシーンにはやけにグッときましたね。素晴らしいパフォーマンスでした。
 ◆フェリペ:今日のフェリペは古川雄大くん。あ、もう古川くんも30歳なんだ……そうか、わたしが彼を初めて観たのは、これまたテニスの王子様ミュージカルでの天才・不二周助を演じているころだから、やっぱり10年以上前か。わたしは彼の声がかなり好きで、『エリザベート』での悲劇の皇太子ルドルフを演じたときの、「闇が広がる」「僕はママの鏡だから」がとても好きなんすよね。本作では歌は少なかったのが残念す。
 ◆アン・ブーリン:幻影としてベスの前に現れる母、アン・ブーリンを演じたのが和音美桜さん。元宙組の宝塚歌劇出身。わたしは現役時代を知らないのだが、非常に歌ウマな方で素晴らしかった。あ、87期なんだ? てことは、龍真咲さん(まさお)や早霧せいなさん(ちぎちゃん)と同期なんですな。ああ、でもそうか、2008年にはもう退団されてたんだな。あ! なんだよ、過去のパンフを漁ってみたところ、わたしが2013年に観たレミゼでファンテーヌを演じられていた方か! その時のエポニーヌを演じた平野綾ちゃんの印象が強くて忘れてた。アホだ……くそう、ホント失礼いたしました。いやー、和音さんの歌は本当に素晴らしかったす。
 ◆キャット・アシュリー:ベスをずっと支える侍女のキャットを演じたのは、これまた宝塚の元TOPスター涼風真世さん(かなめさん)。わたしとしては舞台でお会いするのはお久しぶりすね。相変わらずお美しく、歌ももちろん素晴らしかったす。綺麗な方ですなあ……ホントに。もう57歳だって。全く見えないすね。
 とまあ、こんな感じかな。なんだか同じことばかり書いているけど、とにかく平野綾ちゃんがかわいくて、わたしとしては大満足な作品でありました。そしてしょんぼり顔の平野綾ちゃんは、日本人最高レベルに可愛かったと思う。東京公演はもうあと2週間ぐらいで終わりなのかな。その後大阪へ会場を移して公演は続くわけだが、キャストの皆さん、どうぞ最後まで駆け抜けてください。最高です。

 というわけで、まったくまとまらないので、もう結論。
 2014年以来となる東宝ミュージカル『Lady Bess――レディ・ベス』を帝劇にて観てきたのだが、今日のベスを演じた平野綾ちゃんの可憐さはもう最高レベルに素晴らしく、そして歌も実に見事で、わたしとしては大満足であった。そしてこの時代のイギリスについてもっといろいろ調べたくなったわたしである。ところで、なんで「Beth」じゃなくて「Bess」なんだろう? これって英語的には当然のことなのかな?? そして、現在、非常に混雑しているという噂の、「怖い絵展」も俄然興味が出てきたすねえ。メアリーの前に女王として即位し、すぐに処刑されてしまったジェーン・グレイの処刑を描いたあの絵を観に行く必要があるような気がしますな。来週あたり行ってくるとするか。しかし……やばいす。どんどん平野綾ちゃんが好きになってきた……超今さらなんですが、これって……恋なんでしょうか? 以上。

↓ これっすね。本物の絵の迫力はホントヤバそうす。金曜は夜20時までやってんだな……いや、やっぱり朝イチに行くべきだな。よし、これは行こう!
怖い絵 泣く女篇 (角川文庫)
中野 京子
角川書店(角川グループパブリッシング)
2011-07-23




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