やっぱり最初に言っておいた方がいいと思うので書いておきますが、ズバリ結末までのネタバレを書いてしまうと思うので、未読の方は今すぐ見なかったことにして立ち去った方がいいと思います。知らないで読む方が絶対楽しいと思いますよ。

 さてと。前巻が出たのが去年の9月だから、4カ月ぶりか。この度、わたしの大好きな時代小説のシリーズ『居眠り磐音』シリーズの続編で、主人公を磐音の息子、坂崎空也に据えた新シリーズ『空也十番勝負』の第3巻が発売になったので、よっしゃ、待ってたぜ! と発売日に買い求め、さっそく読み始めた。ら、1.5日ほどで読み終わてしまったのでありました。

 まあ、結論から言うと、今回の三番勝負は面白かったけれど、肝心の三番勝負の相手がなかなか登場せず、登場したと思ったら結構あっさり敗れ、空也くんのスーパーマンぶりが増してきていて少し心配になってきたのである。まあ、仕方ないよな……敗北=死、だし。
 そしてズバリ今回の三番勝負の相手は何者が、を書いてしまいますが、わたしがこのシリーズの1巻目の感想をこのBlogで書いたときに、こんな相手もアリっすよねえ、と妄想したことが現実になってしまったのであります。そう、今回の相手はなんと異人! サーベル使いの狂える(?)自称プロイセン人でありました。まあ、タイトルからして「剣と十字架」なわけで、実際わたしは読む前から、もしや……と思っていたので、わたしと同じように想像した方も多いでしょう。正直に告白すると、わたしとしてはもう少しその相手のバックグラウンドや人となりが知りたかったように思う。そういう点ではキャラが薄く、若干の物足りなさを感じたのは事実である。
 ただし、その三番勝負へ至る直前に出てくる、一人の女性が大変キャラが立っていて、この新キャラ女子にはまた会いたいな、と強く感じたのも間違いない。彼女については、大体の経緯は説明されるけれど、まあ、間違いなく美人でしょうな。というわけで、ヒロイン眉月ちゃんの出番が少ない中、空也くんを中心とした恋のライバルになりえるような気もするので、今後の展開も大変楽しみであります。
 というわけで、ざっと物語をまとめておこう。今回も、空也くんの武者修行の旅と江戸での磐音ご一統様たちの様子、という二元中継な形であった。そりゃ当たり前か。
 まず空也くんだが、前巻ラストで本人もどこに行くかわからない船に乗って、東郷示現流の追手から逃れたわけだが、着いた先はなんと五島列島最大の島、福江島である。

 おっと、今は空港もあるんですなあ。当時は福江藩五島家の支配地であり、お城もあったけれど、本作の空也くんが訪ねた時代には、城はもう焼失していて陣屋だけしか残ってない、ようなことになっていた。そして空也くんは福江島にある道場にまた居候させてもらいながら修行をつづけ、また山に登ったりと、ほんのひと時の平和な時間を味わうけれど、八代でとある事件が発生して、ここにも示現流の手が伸びる、が、その直前に、ここまで船に乗せてくれた船頭さんが手配した船で、さっさと中通島へ移動。さらに、船頭さんとの密談で、さらに北の野崎島で落ち合う約束をする。
 しかし、野崎島へ行く前に、中通島で出会いがある。それが、わたしの言う新キャラ女子で、新キャラ女子は、どうやら長崎会所に所属する密偵?的な役職らしく、長崎で謎の通り魔殺人を犯した犯人を追跡中なのだとか。かくして出会ったふたりは、お互い信頼できないような関係ながらも、西洋剣術使い討伐のためにチームを結成、隠棲していると思われる野崎島へ上陸するのであったーーー的な展開でありました。
 一方江戸の様子はというと、小梅村が超気に入ってしまった薬丸新蔵くんのお話を中心に、武左衛門さんと新蔵くんがちょっと仲良くなったり、睦月ちゃんの恋の行方がちょっと進展?したり、あるいは真面目な常識人でおなじみの品川柳次郎くんがちょっと出世したりというエピソードを交えながら、基本的には空也くんが心配でならないおこんさん、暇そうな(?)磐音、の元に何度か熊本から手紙が届いて一喜一憂するーーー的な、いつもの展開でありました。熊本の眉月ちゃんは今回あまり出番なし、です。手紙はよく書きますが。

 というわけで、わたしとしては面白かったものの、若干の物足りなさもあって、読み終わったそばから続きが読みたくてたまらない状態であります。しかしなあ、せっかく熊本にいたのに、剣聖・武蔵がらみの話はなかったのが残念す。そして適当にわたしが妄想した、西洋人との戦いが実現して驚いたすね。本作ラストで、再び船に乗ってどこかへ向かった空也くん。今度は、どうやら空也くんの希望の地へ行くようで、どうもそれは、対馬~朝鮮半島のような気がしますね。
 というのも、実は設定として、空也くんの愛する眉月ちゃんには、高麗の血が混ざっていて、空也くんとしては、その源流の地を訪ねてみたい、と思っているようなんだな……。わたしは全く詳しくないのだが、当時の朝鮮半島事情はどうなっているのだろうか? 秀吉の侵攻以降、100年以上経過してるのかな。100年じゃすまないか。えーっと? 物語の現在時制は……1798年かな? てことはもう朝鮮攻めから200年経ってるか。てことは当時の朝鮮半島は……? わからん! Wikipedia先生教えてください! とサクッと調べてみると……高麗が滅んだ後のいわゆる李氏朝鮮の後期で、カトリックが中国経由で伝来していた頃、なんだな。ああ、でも弾圧されているっぽいな……てことは今回の西洋剣術使いの因縁もありうるのだろうか? つうか、どういう武術が盛んだったのかはわからないな……基本は中国拳法的なものだろうか? わからんわ。
 まあ、もし空也くんが高麗(正確には李氏朝鮮)を目指したとしても、そう簡単にはたどり着けないような気もするし、まだまだドラマが待っていそうですな。対馬あたりで止まっちゃうかもしれないし、おまけに示現流の追手も絶対に追跡をやめないだろうし、今後の空也くんがどんな旅をして、どんな出会いを経験するのか、大変楽しみですな。
 あと、もう一つ、今回ちょっとわたしが興味を持ったのは、もう既に、この時代、鉄砲が進化した短筒、つまり拳銃の元があったわけで、そんな「もはや剣の時代は終わった」時代に、何故剣術修行をするのか、という根本的な問いだ。
 空也くんも、今回大砲や短筒を目にして、そんな時代であることを実感するわけだが、彼は、とある人に「なんで今どき剣なのか?」と尋ねられた時にこう答えるシーンがあった。
 「剣術とは、技を磨くことだけが目的ではございますまい。万が一の大事に至った折り、肚が据わっているかどうか、そのために鍛錬するのではありませんか」
 わたしはこの言葉に、結構グッと来た。まあ、精神修行だってことだろうし、剣は手段であって目的は別にあるってことなんだろうな、と思う。要するに、相手を倒すことが目的では全くなく、強いて言えば相手は自分自身であり、自分自身をより高めるための修行、という事なんでしょうな。
 まだ空也くんは18歳(本作ラストで19歳)。とてもしっかりした男ですよ、やっぱり。さすがは磐音の息子ですな!

 というわけで、さっさと結論。
 わたしの大好きな時代小説シリーズ3作目となる『空也十番勝負 青春篇 剣と十字架』が発売になったので、さっそっく買ってきて読んだ私であるが、実際面白かったのは間違いない、けれど、ちょっとだけ物足りないかなあ、というのが偽らざる感想である。今回、主人公坂崎空也くんは、五島列島の島々で修業を行い、とある新キャラと出会って、西洋剣術使いとの死闘を演じることになり、三番勝負を終える。しかし、この時代にプロテスタントが日本いたってことには驚きでした。これって常識なんだろうか? ともあれ、残りは7番。どんな戦いが待ってるか、大変楽しみです。そしてわたしとしては、今回の新キャラ、高木麻衣ちゃんのいる長崎にもぜひ立ち寄って、再会してもらいたいと存じます。そしてもちろん、大きく成長した空也くんが江戸でヒロイン眉月ちゃんと再会する日が楽しみであります。以上。

↓ ちょっと興味がわいてきたっすね。色々調べてみたいす。