と、いうわけで先日の日曜日に今年の大相撲初場所は千秋楽を迎えた。
 その千秋楽において、日本全国の大相撲ファンが注目したのは、大関【琴奨菊】関による10年ぶりの日本出身力士の優勝が決まるか!? というものであった。わたしも、かなり興奮しながらその瞬間をTVで観戦させていただいた一人である。
 ところで、相撲に全く興味のない方に一応説明しておくと、「日本出身力士」って何よ? 「日本人」って言えばいいじゃん? と思っている方もいるだろう。そりゃそうだよね。知らなきゃ、誰でもそう思うと思う。これはですね、2012年の5月場所で優勝した力士、【旭天鵬】関が、モンゴルから帰化した日本人ということなんですな。 彼は2005年に日本国籍を取得しているのです。なので、「日本人の優勝」と言うと、この2012年5月場所の【旭天鵬】関以来なので、まあ約4年ぶりという事になる。
 実はこの【旭天鵬】関が優勝した時も、日本人の優勝は、さかのぼると2006年初場所の【栃東】関以来だったので、6年ぶりとかなり久しぶりだったのだが、要するにこの【栃東】関の優勝から数えて10年目に、ようやく「日本出身力士」の優勝がかなった、というわけであります。 
 で。大相撲のヒエラルキーについても、ちょっとだけ説明しておこう。()内の数字は、平成28年初場所での人数です。
■横綱(3人)・・・神様クラス。引退しない限りずっと横綱。落ちることはない。
--------<超・巨大な壁>--------
■大関(4人)・・・選ばれし者たち。負け越すと「カド番」と呼ばれ、「カド番」で負け越すと地位喪失。
--------<巨大な壁>--------
■関脇(2人)・・・神への挑戦者たち。負け越し1回で地位喪失が基本。
■小結(2人)・・・神への挑戦者予備軍。負け越し1回で地位喪失が基本。
--------<大きな壁>--------
■前頭(31人)・・・筆頭から15~16枚目まで存在しているメジャーリーガー。通称「平幕」。
--------<大きな壁>--------
■十両(28人)・・・マイナーリーガー。定員東西14名ずつ。十両以上を「関取」と言い、●●関と呼ぶことが許される。付け人もついて大銀杏もやっと結うことが許されるなど十両以上とその下では大きく待遇が変わる。
--------<巨大な壁>--------
■幕下(120人)・・・正式には、幕下以下は「力士養成員」で7戦しかしない。定員は東西筆頭から60枚目の120名。
■三段目(200人)・・・定員は東西筆頭から100枚目までの200名。
■序二段(196人)・・・定員は特にナシ。もちろん、筆頭が一番上で枚数が下ほど下位。 
■序ノ口(45人)・・・番付最下位。怪我や病気で全休してしまうと番付外へ陥落
--------<ハードル>--------
■番付外・・・新弟子試験に合格した人、序ノ口から陥落した人。1番でも「前相撲」を取れば序ノ口に行ける。

 というわけで、普通の人が見るNHKの相撲中継は基本的に幕内(前頭より上)の取組なので、大相撲全体からするとほんの一握りのメジャーだけ、ということがお分かりであろう。で、そのメジャーの中でも、横綱を頂上として、大関、関脇、小結という三役が存在し、その下に前頭と呼ばれる平幕力士がいる。当然、全15戦の取組は、この3+4+2+2+31人=東西合わせて42人で行うわけだが、力の差が大きいので、例えば前頭15枚目にいる平幕下位の力士と横綱が闘うことは、事実上ない。基本的には自分の番付に近い力士と闘うのだが、大相撲の素人のわたしから見ると、一番厳しい闘いを強いられるのは、おそらく「前頭筆頭」という番付に位置する力士なのではないかと思う。
 何故そう思うか?
 まず、「前頭筆頭」という番付になると、ほぼ確実に、「全横綱・全大関・全関脇・全小結」という、確実に自分よりも強い力士との取組があるはずだ。今年の初場所で言うと、要するに全15戦中3+4+2+2=11戦が格上力士との闘いになる。また、「前頭筆頭」は当然、東西の二人いるので、自分と同格の力士とも闘う。もうこれで12戦である。残りの3戦だけ、自分より格下ということになるわけで、これは相当厳しい闘いだということが分かってもらえると思う。
 もちろん、平幕下位の力士も、事実上自分より格上ということになるが、平幕の力士たちの実力は、当然のことながら明らかな力の差はなく、三役以上とは比べ物にならない。
 なので、「前頭筆頭」という立場から勝ち越すには、同格の筆頭を含めて平幕力士との闘いを4戦全勝したとしても、三役以上から4勝以上勝たないといけない。これは相当厳しい戦いであろうと想像するので、わたしは「前頭筆頭」が一番厳しいのではないかと思うわけであります。

 実はここまで全部前置きです。
 わたしが愛し、応援しているのが【松鳳山】関であることは、何度も書いているが、先場所、去年の九州場所において、十両から幕内に復帰したばかりの【松鳳山】関は、これがまたものすごく頑張って、なんと驚きの13勝2敗という立派な結果を残し、今場所では、「西前頭筆頭」という番付となったのだ。わたしはこの番付が発表になったとき、もちろん上位番付は嬉しかったものの、あーーコイツは厳しいことになるな……という予感がしていた。理由はさんざん述べた通りである。全横綱、全大関と闘う宿命を背負う「前頭筆頭」。こりゃあ、頑張っても5勝から6勝ぐらいではなかろうか……と番付発表時から想像していたのだが……その予想は的中してしまった。
 結果は、5勝10敗である。この戦績をどう評価すべきか、というのが問題なのだが、わたしはこれを、本当によく頑張ってくれたと思うし、その15日にわたる闘いをねぎらいたいと思う。
 なにしろ、2日目には横綱【日馬富士】関から金星をあげ、さらに大関【豪栄道】関からも勝利をあげ、小結【勢】関にも勝てたのだから。まあ、だったら同格以下にも着実に勝利してあと2つ3つの白星を重ねて欲しかったが、実際、今場所の【松鳳山】関の相撲は、基本的に真っ向勝負の取組みが多く、観ていて非常に興奮したし、全取組通して、常に気合が入りまくっていたと思う。もちろんそれは当たり前かもしれないけれど、なんだかとても、もっと応援したくなる男であることを再認識しました。

 というわけで、結論。
 今場所は5勝10敗と厳しい成績となったけれど、オレは応援しているぜ! 頑張れ黒ブタ! ちなみに、平幕力士が横綱に勝利することを「金星」と言いますが、【松鳳山】関はこれで2回目の金星。金星は、毎月の給料に2万円×金星回数のお手当てが加算されるそうですよ。よかったね!! 松鳳山関、お疲れっした!! 来場所も応援します!!