世はお盆休み真っ只中であるが、わたしは全くカレンダー通り出勤しているので、実のところいつからいつがいわゆる「お盆休み」なのか良くわかっていないのだが、今日はまだ電車がガラガラだったので、きっとまだ休みなんだろう。その、お盆休み期間特別セールとして、先日わたしが愛用している電子書籍販売サイト「BOOK☆WALKER」にて、還元率の高いフェアを実施していたので、なんか面白いものはないか知らん? とインターネッツなる電脳銀河を渉猟していたわたしであるが、ふと、もう15年ぐらい前にわたしの周りで大層流行っていた漫画を見つけ、おお、懐かしいと思わず目が留まった。紙の単行本では持っているものの、かなりお得に買えてしまうので、ええい、ままよ! とばかりに全13巻を買ってしまった作品がある。
 それが、『コミックマスターJ』という作品だ。

 この作品は、今現在わたしが買い続けて愛読している『ニンジャスレイヤー』のコミック版を描いている田畑由秋先生と余湖裕輝先生の黄金コンビによる結構初期の作品で、後に週刊少年チャンピオンで『アクメツ』という作品を連載されたりしており(『アクメツ』も最高に面白い)、現在連載中の『ニンジャスレイヤー』が面白いと思う人ならば、100%確実に、この『コミックマスターJ』も気に入ってもらえるものと思う。とにかく熱く、漫画好きならば絶対に見逃してはならない作品だとわたしは思う。
 わたしにとって田畑先生と余湖先生の黄金コンビは、完全に翼くんと岬くん並の切り離すことのできないコンビであり、そうだなあ、例えていうならば……いや、サーセン、面白い例えが浮かばないや。ビールに枝豆とか言おうと思って自分で却下しました。とにかくもう、この二人はセットで語るべきであろうことは、お二人の作品を味わい楽しんだことのある方なら同意してもらえるだろう。
 二人が紡ぎ出す作品の特徴は、まず脚本担当の田畑先生による、いちいちグッとくる熱いセリフ、そして作画担当の余湖先生による、ハイクオリティ画力で描かれる絵と大胆なコマ割りで表現される演出力、この3つが極めて高いレベルにあるという点で、それらが高純度に結晶化した作品が、『コミックマスターJ』であり、『アクメツ』であり、そして現在の『ニンジャスレイヤー』に至るまで貫かれているのである。まあ要するに、最高なんです。ええ。
 で。この『コミックマスターJ』という作品がどんな物語か、簡単に紹介すると、主人公「J」は、どんなタッチも再現する最強のコミック・アシスタントで、締め切りに間に合わない作家や出版社の依頼を受けて、助っ人に来るという男で、その依頼料は500万円、依頼するには渋谷駅の掲示板(!そうなんです、この漫画は200年代初頭なので、色々な点で古いのです)に、「コミックマスターJの作品が読めるのは●●●だけ!」と書き残すことで、その●●●の編集部に彼はやってくるという形式になっている。まあ、『Cat's Eye』方式ですな。間違えた、『CITY HUNTER』方式でした。
 そしてJは、「面白い漫画」=「魂のある漫画」でないと依頼は受けてくれず、そこにさまざまなドラマが生まれるわけで、Jが受けてくれた結果、あまりのJのクオリティに自信を無くす作家もいたり、Jに負けじと奮起する作家、あるいは、そもそもJが引き受けてくれなかったことにショックを受けたり、かえっていつかJに認められる作品を描く、と燃える作家もいたりと様々で、まあ、とにかく熱くて最高なのである。J以外のキャラクターも実に魅力的で、基本は1話完結なのだが、以前Jに助けられた作家やJをライバルと認めた作家たちが結構何度も出てきて、そのユニバースは非常に魅力的なものとなっている。
 ちょっと、以下にページの一部を紹介しよう。わたしが何を描いても言葉では全く伝わらないと思うので画像を貼るが、ちょっと引用の域を超えて違法性が高いかもしれない。本作の魅力を伝えるためにお許しいただきたいが、ダメならすぐ削除します。
 例えば、↓ 以下は15年ぐらい前に、わたしの部署の壁にコピーを貼っていたもので、これをよく打ち合わせの時に使ってました。
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 いやあ、最高です! ↑ これは、同人作家が軽い気持ちで商業に転向しようとして失敗し、それまで毎回のコミケでJが買ってくれていたのに、今回は買わない、なぜなら……とその理由を無駄にカッコ良く発表するシーンだ。
 あと、↓ こちらは、とあるダメな雑誌の依頼を断るシーン。カッコ良すぎる! でも公衆電話! 古いww ちなみに、作中世界の三大コミック誌は”合優社”の「週刊少年ダッシュ」、”公蘭社”の「週刊少年マシンガン」、”学書簡”の「少年ストライカー」という名称になっていて、勿論少女漫画誌もいっぱいあります。
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 そして↓ こちらは、Jと唯一酒を酌み交わせることができる、業界一の熱い編集者、”泣きの山下”氏の暑苦しい叫び。
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 こちらは、↓ Jが認める作家が、根を挙げそうになった時、Jが作家を鼓舞するキメポーズ。そう、要するにJは、ブラックジャック的なキャラでもあって、美形で真っ白なコートを着ていて、そのコートの内側には漫画作画道具がぎっしり詰め込まれているという設定になっている。ちなみに、ブラックジャックに対してドクター・キリコがいるように、Jにも「終わらないでずるずる引き延ばしている漫画を終わらせる」男、「ジ・エンド」というライバルキャラも登場します。ホントにもう最高です!
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 こちらは、↓ どういうわけか漫画を描くことで世界が破滅しそうになった時(?)、それでも描くのか、何故描くのか、世界を破滅に導いてでも!? みたいな展開になって、それでも描く! というJの熱い宣言。
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 ↓ ラストに引用するのは、物語の前半の大きなお話で、実はJも、アシスタントとしてではなく、自身の漫画を描くという強い野望(?)があって、その漫画が発表されるとすべての文化がクズになる、という作品だけど、描かずにはいられないというJの魂の叫び。もう意味わからないでしょ?
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 とまあ、こういう作品です。今の20代の若者はその存在すら知らない漫画かもしれないけれど、30代~40代なら知ってるかもしれない。わたしは「ヤングキング・アワーズ」に連載されていた頃(1996年~2005年)にリアルタイムで読んでいたので、まあ、毎月大興奮して周りのみんなと読んでました。
 そして連載終了から12年経った2017年に今再び、電子版で全巻まとめ買いして一気に読んでみたのだが、やっぱりその熱さとスタイリッシュな作風は色あせることなく、まさしく現在も連載している『ニンジャスレイヤー』の源流はここにあるな、ということが感じられる大傑作であった。久し振りに堪能出来て本当に楽しめました。名言ばっかりで最高です。

 というわけで、なんかもう書くことがないので結論。
 15年ぶりぐらいに全巻一気読みした『コミックマスターJ』はやっぱり名作だった。その面白さは読んでもらわないと全く通じないと思う。しかし、もしわたしが上記に引用したコマを読んで、「なんだこの漫画は!?」とハートに来るものを感じた方は、ぜひ、とりあえず1巻だけでも読んでみていただきたい。最後はまあすごい展開になってびっくりすると思うが、毎回毎回心に響く名言があるので、ぜひ楽しんでもらいたいと思う。以上。

↓ 今連載しているこちらも、大変面白いです。凄いクオリティですよ。