先日、と言ってももう何か月か前だが、後輩女子のK嬢が、熱くそして激しく『ごちゃごちゃ言わないで絶対観ろ!』とわたしに強く勧める映画があった。わたしとしても、観ることには全くやぶさかでなかったのだが、いかんせん近所で上映しているところがなく、K嬢の熱意に対して「お、おう……?」とビビりながらも、さてどうすっか、と若干困っていたところ、さすがわたしの愛するWOWOWである。その映画の放送が先日あったので、さっそく予約し、そして実際に観る機会を得たのであった。
 その映画とは、インド映画で国内最高興収を上げたという『BAAHUBALI:The Beginning』という作品で、そのタイトル通り前編というか、いわゆる「1」である。既に後編である『BAAHUBALI:The Conclusion』もとっくに公開され、一部でやけに盛り上がっていると評判の作品であった。
 そしてとりあえずWOWOWにて観てみた『The Beginning』は、なるほど、確かに熱いし面白いことはよーくわかった。が、そこまで世の中的に盛り上がるのはよくわからん、と言うのが素直な感想である。しかしまあ、世の熱狂はさておき、映画オタクのわたしとしては十分面白かったし、こりゃあ続編『The Conclusion』も観たいぜと思うに十分な映画であったのは間違いないのだが、わたしが一番ビビったのは、インド映画界のCG力がすさまじく高品位で、圧倒的に日本映画よりハイクオリティな点である。こりゃあもう、日本の映画界はホントに世界で置いてけぼりを喰らっちまったなあという軽い絶望感を味わってしまうほどのCG力は、さすがにIT大国インドだという見当はずれな感想まで抱いてしまうほどだ。まあとにかく、これはすごい。先日、同じくWOWOWで『銀魂』を観たけれど、残念ながら比べ物にならんなあ……。本作のすげえCGクオリティにはもう完全脱帽である。
 そして、ボリウッド映画らしく本作は歌がかなり豊富に流れていて、ミュージカル好きなわたしとしては、役者が実際に歌っているのかわからないけど、大変良いと思った。映像自体はともかくとしても、なんとなく、歌にダンス、そして恋にバトルに、という大河ロマンな構成は、わたしの愛する宝塚歌劇的でもあったように思う。要するに、ええ、しつこいですがわたしは大変楽しめたっすね。
 というわけで、日本で公開されたのは去年のようだし(映画の製作自体は2015年らしいが)、そこらじゅうで取り上げられているだろうから、もうネタバレには一切考慮せず、書きたいことを書くつもりなので、ネタバレが困る方はさっさと退場してください。

 物語は、説明らしい説明はほぼなく、かなりいきなり開幕する。インド人なら常識なのかもしれないが、わたしにはさっぱり知識のない時代のお話で、そもそも西暦で言うとどのあたりの話なのか、場所はどこなのか、などわたしにはわからない。つうか、これは神話的な物語で、そういった年代とかはそもそも無意味なのかもしれない。ファンタジーなのか? そんなことすらわたしにはさっぱり分からん。ついでに言うと、本編内で使用されている言語が何語なのかもわたしには全く分からなかった。Wikiによれば、テルグ語およびタミル語に加え、映画内独自の架空の言語もあるそうだ。つうか、ヒンディー語・ウルドゥー語でない時点でボリウッドとは言わないのかな? 定義が良くわからん。
 で。物語は現代パートと後半の過去の回想パートに別れているのだが、わたしのような低能には、とにかく言語的に耳になじまず、その結果頭に入ってこないため、キャラの名前も、国などの名前もなかなかすんなり記憶に残らず、対立構造もどうも分かりにくい。何とかまとめてみようと思うが、まあ、こんなお話である。
 冒頭は、何やら女性が一人、赤ん坊を守りながら逃げている描写から始まる。その女性は刺客をあっさり撃退するものの、傷つき、もはや体力も限界というところで、川に流されそうになるが、気合で(?)赤ん坊を水面の上に持ち上げつつ、絶命寸前に、川辺の民が発見し、赤ん坊を救助する。そしてその女性は最期に、巨大な滝の上を指しながらは水中へ没し消えていく。
 時は流れ、「シヴドゥ」と名付けられ、育てられた赤ん坊はかなりあっという間に青年に。そしてシヴドゥは、自分では何故かわからないけど、巨大な滝の上にいつか行くんだ! 的な心の衝動を抱えて成長して、何度も滝を登ろうとして失敗に終わっていたのだが、ある日、滝から仮面が落ちてきて、その仮面に魅入られていると、なにやら天女めいた幻想にとらわれ、その天女を追う形で、なんと滝登りに成功、「滝の上」の世界に足を踏み入れることに。そして仮面の持ち主の女子戦士と出会い、ぞっこんLOVEとなり、なにやら女子の属する一族の悲願である、囚われの妃を助けるミッションにシヴドゥは参加するも、そこには運命の出会いが待っていたのであった―――てなお話です。適当なまとめでサーセン。で、無事に妃を救出したのちの後半は、シヴドゥの先祖の話になっていくのだが、とりあえず、キャラ紹介しながら説明してみるか。
 ◆シヴドゥ:主人公。冒頭の赤んぼが成長し、滝の下の世界でのんきに暮らしていた青年。演じたのはPrabhas氏というお方。まったく知らんす。ズバリ、イケメンとは思えないが……顔が若干ふっくらしていて、そこはかとなく大関・高安関めいた風貌の持ち主だが、超ウルトラ強く、眼力も凄い。結構あっさり「滝の上」の女子戦士とぞっこんLOVE each otherとなる。後に、「バーフバリ」の息子であることが判明。最初から誰だって分かってると思うけど。
 で、「バーフバリ」とは何かというと、「滝の上」に栄える王国を建国した男がいて、その王は若くして亡くなると。そして同時に遺された王妃も、出産後間もなく死亡、ということで、赤ん坊(=バーフバリ)だけ残されるが、そのバーフバリ坊やを育てたのが、その王の兄貴の嫁さんシヴァガミで、王の兄貴自身はダメ人間なんだけど、このシヴァガミさんが超有能な人で、その赤ん坊バーフバリと、自らの子供パラーラデーヴァ、この二人を同時に、そして平等に育て、優秀な方が次の王になるのじゃ! (ついでに次の王が即位するまでは自分が政治を担うけど文句ないわね!?)という宣言をすることになる。
 で、まあ、誰しも想像する通り、バーフバリ(シヴドゥを演じる役者の一人二役)はとても強くて優しく頭もイイ、そして一方のパラーラデーヴァは、それなりになかなか強いけれど、残念ながらずる賢く残忍、な性格で、表面的には仲良し風であっても、パダーラデーヴァの方が一方的にバーフバリぶっ殺す、と思っている。そして、王国に蛮族が攻めてくる展開となり、二人の王子のいずれかのうち、相手の蛮族の長をぶっ殺した方が王になるのじゃ、という話になる。
 で、まあ、結局蛮族の長をぶっ殺すのはパラーラデーヴァなんだけど、誰がどう見ても横から手柄をかっさらっただけだし、それ以前に民を見殺しにするような行動をとっていたり、超おっかない「草刈り機型殺戮兵器」を搭載した馬戦車を乗り回してヒャッハーと暴れまわっていたので、当然ながらパラーラデーヴァが王と指名されることはなく、バーフバリを称えるシヴァガミ(=つまり自分の実の母)に対して、ぐぬぬ、今に見てろよクソが! という恨みを抱くところまで、が本作前編で描かれた。
 で、まあ、要するに本作の主人公シヴドゥは、そのバーフバリの息子なわけだが、その後、どういうことが起きたのかは後編にて、でありました。
 ◆アヴァンティカ:シヴドゥが惚れる「滝の上」の住人。女戦士。演じたのはTamannaah嬢28歳。大変な美人。ボリウッド映画界では超スター女優のようですな。知らんけど。で、このアヴァンティカが属する一族が何者かは、この前編では正直良くわからなかった。「王国」民ではない模様。そして囚われの妃、に忠誠を誓っているところを見ると、どうやら彼女たちの一族も王国とはかなりの因縁がある模様。
 ◆テーヴァセーナ:「王国」に囚われ監禁されている「妃」。シヴドゥの実母であり、それすなわちバーフバリ王の妃。けど、実際バーフバリ王に何が起こって、なぜ彼女が監禁されているのかは、この前編ではよくわからん。とにかく、いつか息子が凱旋し、現王パラーラデーヴァに対して、今に見ておれ、生きたまま焼き殺してくれるわ! というイカレた信念だけを生きる糧としている。
 ◆パラーラデーヴァ王&パドラ王子:現在の「王国」の王とその息子の悪役コンビ。過去篇でのパラーラデーヴァは上に書いた通りの性格悪い青年。そして現在のパドラ王子も、かなり残忍な悪い奴、だけどコイツはシヴドゥに見事ぶっ殺されるのでご安心を。ただ、なにゆえパラーラデーヴァがバーフバリを差し置いて王位についたのか、に関しては前編では触れられず。
 ◆カッタッパ:「王国」に仕える老剣士。身分的には奴隷だが、王国の武器工房の長として尊敬を集めているおじいちゃん。超強い。わたし的には、このキャラが一番気に入ったすね。まるでユパ様的な。そういやユパ様も帽子をとるとハゲだったすな。いやいや、嘘です、ユパ様は超カリアゲ? なだけで、てっぺんには髪がふさふさに生えてたっけ。サーセン間違えました。このカッタッパおじいは、あくまで「王国」に忠節を誓っており、王個人でないところがカッコイイ。もちろん、現王は嫌いだろうし、囚われのテーヴァセーナ妃を、おいたわしや……と思っている。
 カッタッパおじいの語るところによれば、バーフバリは裏切りにあって命を落としたのだとか……。そして、本作のラストのこのシーンが超最高なのです。
 カッタッパ「戦場での刀傷よりも、痛ましいのは家臣の裏切り……!」
 シヴドゥ「家臣の裏切り!? いったい誰が!?」
 カッタッパ「(キリッとした表情で)裏切り者は、わたしだ!!!(ドーーーン!)」
 と、この衝撃? というかある意味想像通りの告白でブツッと本作は終了し、続きは後編で! ということになる。こりゃあ、もう後編が観たい! と誰もが気になるエンディングでありましょうな。ま、要するに漫画ですよ。どっちかというとジャンプ的な。

 はー疲れた。もう物語はこの辺にして、最後に、見どころを3つ挙げて終わりにします。
 その1)とにかくすごいCG
 たぶん、一番近いイメージは、わたしの大好きな『300』だと思う。あの映画は全編背景はCGで、まあとにかくすごい世界観だけれど、本作もあの雰囲気にとても近いです。本作はきちんと野外ロケもありつつのCGなので、とても独特すね。おまけに、いったいこれはどこでロケをしたんだという大自然振りも凄いです。CG的にわたしが一番気に入ったシーンは、豪雨の中、パトラ王子を打ち取ったシヴドゥに、カッタッパおじいが「槍をもてィ!」と槍を携え走り寄って行き、襲い掛かるのか!? からの、10mスライディング土下座をかまして「バーフバリィィィィーーーッ!」と称えるシーンでしょうな。あそこはもう、カッコイイやら笑えるやらで最高でした。マジハンパなかったす。
 ただし、ここまでホメておいてアレなんですが、CG自体のクオリティはとても高いけれど、その画としての見せ方のセンスは、はっきり言って若干ダサいというか古いというか、まあ、新鮮味は特にないと思う。センスはあまり感じられず、強いて言うなら、もはや古典となった『少林サッカー』的な、いわゆる「ありえない系」の画で、そういう意味では『300』のようなスタイリッシュなカッコ良さはないし、どっかで見たことのあるような感じでもある。それに、とにかくいちいちスローモーションを使うのもやや安っぽい。本作は2時間20分以上と長いけれど、スローモーションを多用しすぎているせいだと思うな。2時間でまとめられると思う。ただまあ、かえってそういう誇張した大げさな演出が、今の若人たちにウケてるんだろうな、という気がする。わたしがホメているのは、ただただCGのクオリティ面のみで、演出面ではないです(ちなみに『少林サッカー』は基本ワイヤーでCGではないす)。
 その2)愛は歌に乗せて!
 高鳴る感情は歌に乗せるのがミュージカルの作法ですなあ……。わたしとしては、かなりツンツンガールだったアヴァンティカが、ついにデレてシヴドゥの愛を受け入れるシーンのミュージカルぶりが大変気に入ったすね。大変良いと思います。あのシーンでのアヴァンティカの服、というか羽衣? のヒラヒラ舞うCGがすごい! 色も次々変わっていくし。ただ、楽曲はまずまずなんだけど、とにかく言葉かわからんのが厳しかったすね……それに、シヴドゥがイケメンじゃないのがなあ……その点がやや残念だったかも。凄く美しい夢のようなシーンのはずなのだが、主人公が若干ブサメンなので、宝塚的なキラキラ感はあまりないす。そこがまた、ちょっとズレてるのもイイんでしょうな、きっと。
 その3)少年漫画的熱いストーリーに痺れろ!
 まあ、物語は日本の漫画世界ではお馴染みな展開ですよ。それが悪いのではなく、むしろ、だがそれがイイわけです。ただ、本来なら、ライバルキャラがいて、そいつが主人公と同じぐらいカッコ良く、そして強いのが王道だろうけど、今のところ、この前編ではそのライバルになり得たはずのパトラ王子はまるで雑魚であったのがわたしとしては残念。後編で描かれると思われる、父バーフバリとそのライバル、パラーラデーヴァの対立が、実際のところこの物語の本筋かも知れないす。わからんですが。また、まだ前編ではヒロイン・アヴァンティカの一族に関しても良くわからんし、その辺は後編のお楽しみなんすかね。サブキャラたちがもう少しキャラ立ちするともっと面白くなるような気がします。この前編においては、とにかく剣士カッタッパ氏が強力カッコイイすね。彼の葛藤も恐らく後編で描かれるだろうから、その辺りも見ものすね。

 というわけで、もうクソ長くてまとまらんので、ぶつ切りで現状の結論。
 今、なにやら一部で熱狂的に? 盛り上がっている『BAAHUBALI』の第1部である「The Beginning」をWOWOWにて観てみたところ、なるほど、これは実に漫画だし、その映像もCG的には非常にハイクオリティで撮られていて、いわゆるオタク受けしそうな作品であることはよくわかった。このCG力は、とりわけ目新しいものではないと思うけど、確実に日本映画のレベルはダントツで越えてますよ。お見事です。わたしも十分楽しんだし、この続きは是非観てみたいと思う。ただまあ、この暑苦しく仰々しい作品が一般受けするのかどうかはよくわからない。そもそも長いし。が、まあ別に、楽しめる人が楽しめばいいんじゃないすかね。わたし的には、主人公がもっとイケメンでカッコ良く、キラキラ感あふれる美しさがあったら文句なかったのだが……いや、それでは逆にこの作品の魅力は損なわれてしまうか。あくまでPrabhas氏演じる暑苦しさが必須だったのかもしれないな。まあ、いずれにせよ、続編たる『The Conclusion』も観たいと思います。しかし「The Conclusion」って、「結論」って意味だよな……。結論ってタイトルも何か凄いすね。楽しみっす。以上。
 
↓ 当然もう配信されているわけで、観るしかねえかなあ……まあ、WOWOW待ちでいいかな……。