わたしが宝塚歌劇を愛していることは何度もこのBlogで書いてきたし、そのきっかけが、2010年に観た星組公演で、その時のTOPスター柚希礼音さん(通称:ちえちゃん)のあまりのカッコ良さに一発KOを食らたためであることも、何度も書いたと思う。そしてそのちえちゃんは、2015年5月に宝塚歌劇を卒業・退団し、その後、さまざまなチャレンジを続けて、今もなお、前へ前へと前進しているのは、少なくともヅカファンならだれでもご存知の通りだろう。
 しかし、これまでの挑戦は、比較的「柚希礼音」というブランドの元に、ちえちゃんファンをメインのお客さんと見立てた舞台が多かったように思う。『Prince of Broadway』や『バイオハザード』、そして今年の初めの『お気に召すまま』という3作品は、全く根拠がない単なるわたしの印象なので、全然テキトーな意見なのだが、わたしが観た限り、お客さんの9割方は「ちえちゃん」ファンであったように思う。実はわたしは、そのことについて、非常に残念に思っていた。なぜなら、ちえちゃんはもっともっと、広い人々に知られるべきだし、ちえちゃんの歌やダンスなど、ちえちゃんを知らない人にこそ見てもらいたいと思うからだ。そしてもっともっと多くの人を魅了する力がちえちゃんにはある、とわたしは信じているからだ。
 なので、わたしは常々、ちえちゃんは主役ではなく、脇役で、そしてこれはわたしとしては絶対に譲れない条件だが、とにかく「歌が素晴らしい名作と呼ばれるような作品」、そういうものに出演してほしいと思っていた。
 そんな風に思っていたわたしであるので、ちえちゃんがとうとう本格的な「名作」と呼ばれるミュージカル『BILLY ELIOT THE MUSICAL』の日本初公演に出演すると聞いた時の喜びはとても大きく、しかも演じるのは主人公の少年ビリーを教え導くウイルキンソン先生の役と聞いてさらにその喜びは増大したのである。やったー! ちえちゃんが、BILLYに、しかもウィルキンソン先生役! コイツは絶対観に行くしかねえぜ! というわけで、チケットも早々に確保し、待ちに待った今日、赤坂ACTシアターに推参したわたしである。そして結論から言うと、非常に素晴らしい作品で大興奮となったのであった。

 わたしは、すでにこの作品を、WOWOWで去年の初めごろだったかな、とにかく結構前に放送されたユニバーサル映画・WORKING TITLE製作(=映画のレミゼを作った会社)の、『BILLY EIOT THE MUSICAL LIVE』で観ていた。なので、物語も歌も、まあ歌は英語版だけど、知っていた。わたしが観たのは、舞台をそのまま撮影したもので、お客さんのリアクションや拍手もそのまま撮影されており、とても臨場感が高くて、大変面白く、Elton John氏の手による楽曲の素晴らしさも知っていた。だからわたしは、その日本版公演にちえちゃんが出演すると聞いた時は、本当にもう、うれしくてたまらなかったのである。ちなみに、わたしは映画版の『Billy Eliot』(邦題はリトル・ダンサー)は観ていないのだが、ミュージカル版を見た記憶から言うと、今回の日本版はほぼそのままであったように思う。一部セットの仕掛けが違ってるぐらいで、お話や歌はそのままだと思う。本場の『BILLY』は、あの特徴的なビリーの部屋(階段上がっていくアレ)は、奈落からセリでせりあがってくる造形だったが、今回は袖から引っ張り出してくる形に代わってましたな。まあ、その辺は別にどうでもいいけど。
 
 とまあ、わたしとしては非常に満足な日本版『BILLY』だったわけだが、何から書こうかな……。まずは物語だが、実のところ物語は単純で、1984年、イギリスは国策として20の炭鉱を廃坑とする政策を打ち立てた。時の首相は”鉄の女”としておなじみのかのMaegaret Thatcher女史。そしてそんな政府の方針に炭鉱労働者たちはストライキを持って対抗したが、北部の炭鉱町に住む少年ビリー・エリオットは、母を亡くし、父と兄と暮らしていた。父も兄も炭鉱夫で、ストに参加している。そんな大人の事情の中でも、少年ビリーはある日、バレエと出会い、バレエダンサーとして生きる希望を抱くのだがーーーみたいなお話である。イカン、全然うまくまとまらないや。
 いずれにせよ、わたしが一番言いたいのは、本作の主人公は明確に少年ビリーであり、ビリーのパフォーマンスがとにかく素晴らしい作品である、ということだ。そしてその少年ビリーにバレエを教えるのが、ウィルキンソン先生という女性で、本場版では結構タフで元気なおばちゃんである。今回の日本公演では、ビリー役の少年は5人いるのかな。先日、ビリーの少年たちを追ったドキュメンタリーをTVで観たけれど、大変才能あふれた少年たちだと思う。1年にわたるトレーニングで特訓してきた精鋭とはいえ、ほぼ出ずっぱりで体力にも大変だし、ダンスも歌も満載で、5人でも、おっさんとしては大丈夫か心配なレベルである。ちなみに今日わたしが観た演者は、以下のメンバーであった。
Billy
 というわけで、キャラごとの紹介を軽くやっておくか。
 ◆ビリー:今日のビリーを演じてくれたのは前田晴翔くん。2004年生まれで現在中学1年生だそうだ。彼はなんとアポロシアターのアマチュアナイトで年間グランドチャンプになったことがあるそうで、そのダンスはもう、完全に本物ですよ。美しく、素晴らしかったね。きっとあと5年もすれば、相当なイケメンに成長するんじゃなかろうか。ほんと、大満足のビリーであった。素晴らしい! 見せ場としては、やっぱり2幕の最初の方、クリスマスにバレエへの思いをぶちまけるダンスシーンでしょうな。あの、未来の大人になった自分、と一緒に踊るシーンはもうホント感動的でしたなあ! フライングも実に美しく、バッチリ決まっていたと思います。この子はホントすげえというか、本物ですよ。間違いないす。ダンス・歌・芝居、すべて120点を差し上げたいと思います。きっと、他の4人のビリーも素晴らしいんだろうな。ほんと、素晴らしい頑張りに惜しみない拍手を送りたいと思います。つか、手が痛くなるほど拍手をしてきました。最高です。
 ◆お父さん:今日のお父さんは益岡徹氏であった。無名塾出身なんすね。不器用なお父さんを熱演されていたと思う。大変失礼ながら、歌えるお方とは存じませんでした。ビリーのバレエへの想いを知って、それまではダメだと言っていたのに、ビリーを応援するために、ストを破って街の仲間から裏切り者呼ばわりされちゃうなど、ビリーのために頑張るお父さんはとても良かったです。そう、わたしは英語版を見たときは全然意識になかったんだけど、きっと英語もすごい方言バリバリな英語だったんだろうな。今回の日本版では、お父さんや大人たちは、どういうわけか博多弁(?)でしゃべります。まあ、炭鉱節でおなじみの三池炭鉱=福岡県ってことなんだろうと思います。
 ◆お兄ちゃん(トニー):今日のトニーは中河内雅貴氏が演じられていた。おお、久しぶりですなあ! 彼は、わたしが観に行っていた『テニスの王子様ミュージカル』第1シリーズで、王者・立海中学の仁王という役でわたしにはおなじみですね。彼が出た比嘉戦、ドリライ5、そして最後の立海戦の前編・後編、わたしは全部生で観に行きましたなあ。なつかしい。もう10~7年ぐらい前か。彼は今やすっかり日本のミュージカル界では有名なイケメン役者として頑張っていて、今回もおっかないお兄ちゃんを好演されていたと思います。ああ、まだ31歳なんだ。じゃあ当時はホントに若かったんだなあ。まあ、わたしも当時は若かったよ……。
 ◆ウィルキンソン先生:今日は当然ちえちゃんが演じる回で、だから今日のチケットを獲ったのだけれど、まあ、ちえちゃんがすっかり女子になっていて、ホント感無量ですよ。やっぱりちえちゃんは女子としても大変かわいく、歌も普通に女子の声で歌うのは初めてじゃなかろうか? ラストのカーテンコールでは、バレリーナ風な衣装で、実に可愛かった。実にナイスバディと言わざるを得ないす。そしてウィルキンソン先生としても、時におっかなく、時にやさしく、とても良かったと存じます。ちなみに、島田歌穂さんがダブルキャストでウィルキンソン先生役にクレジットされており、島田さんVerも観てみたいと思いました。今日は、やっぱりちえちゃんファンと思われる淑女の方が半分以上はいたと思うけれど、今までのちえちゃん出演舞台と違って、どうやらちえちゃんファンではない、親子連れや、純粋に『ビリー・エリオット』を観に来たと思われる方々も多かったように思う。わたしとしてはそれが非常にうれしく思う。ちえちゃんを知らない方々が観ても、ちえちゃんの素晴らしさが伝わったとわたしは確信できる、満足の出来でありました。
 ◆マイケル:ビリーの親友のちびっこ。女装趣味があり、どうもゲイ?らしい少年。今日のマイケルを演じてくれたのは持田唯颯くん。2006年生まれだって。まあ、芸達者というか、彼も素晴らしかったすねえ! ビリーだけじゃなく、彼、マイケルや女子チームのちびっこたちが本当に素晴らしく、まあ、とにかくわたしのようなおっさんには、彼らちびっ子たちの頑張りはとにかく胸にグッと来ますよ。マイケルのラストの「またな!」が心に残りますね。そして幕が下りてきて、降りきらないうちに自転車で去っていくタイミングは、完全に本場Verと同じでした。お見事っす!

 ところで、今日は、わたしは前から15列目ぐらいの端っこだったのだが、ACTシアターは録音なのかな、と思っていたけど、ちゃんと生オケみたいすね。指揮者の方はいたし、見えないけどオーケストラピットもあるのを初めて知ったす。ただ、音楽の音量がでかすぎてセリフが聞こえなくなるような部分がちょっとあったような……ま、7/19から始まったばかりで、これからもっとこなれていくんでしょうな。あ、あと一つ、備忘録としてメモしておきたいのは……なんで無駄にパンフレットを2Ver作るんだろう? 1つにすればいいのに……どっちを買ったらいいか、正直判断つかないよね。まったくそういう無駄なことはやめてほしいと強く感じた。そしてACTシアターは、ロビーがクソ狭いことでお馴染みなので、物販がすげえ行列になっちゃってる影響で歩きにくいし、いっそ物販は外でやるとか、パンフだけの専用売り場を作るとかすればいいのに。その辺は主催者の意識が全然甘いと感じました。

 というわけで、どうもまとまりのない記事になってしまったけれど、もう結論。
 待ちに待った日本版『ミュージカル ビリー・エリオット~リトル・ダンサー』を今日観てきたのだが、期待に違わず、少年ビリーは実に素晴らしかった。そして、やっぱりちえちゃんはいいすねえ! 着実に女子化が進行していて、男ファンとしてはとてもうれしく思う。歌も素晴らしかった。しかし、やっぱり本作の一番の見どころは主役のビリーですよ。今日ビリーを演じた前田君の名前は忘れないようにしておこう。絶対この少年は、大変なイケメンに成長すると見た。もうそろそろ、声変わりしちゃうんだろうな……今回の経験を生かして、今後もぜひ、活躍してもらいたいと思う。以上。

↓ 予習として、観ておくのもアリだと思います。少なくともわたしは、事前に観ておいてよかったと思いました。