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 というわけで、やっと行ってきました。
 わたしは絵画を中心とした美術鑑賞も大好きなわけだが、このところ、せっかくチケットを事前に買っておいても結局行けない、なんてことがたびたびあって、我ながら大変残念に思うことが多かった。けど、今回はちゃんと行ってまいりました。
 そうです。こちらの↓「ゴッホ展」であります。
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 わたしの絵画の好みに関しては、もうこのBlogでも何度も書いている通り、ゴッホ・ターナー・マグリットの3人の画家がオレ的三大巨匠であります。それぞれ時代も国も全く別の画家たちだけど、好きなんすよねえ……よく考えたらフランス人がいねえじゃん。まあ、特にフランス人が嫌いということは全くないけど、結果的にそうなっているだけです、はい。
 で。現在、上野の森美術館で開催中の『ゴッホ展』。まあ、日本人に大人気のゴッホは、数年に一度はこうした「ゴッホ展」が開催されるわけで、そのたびにせっせと足を運ぶのは、何もわたしだけではあるまい。つうか、何万人もいらっしゃることでしょう。
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 わたしは美術展を観に行くときのお約束として、会場30分前現地到着、を自分ルールとしている。これも何度も書いてきたことだが、とにかく昨今の美術展はすごい混雑で、ビッグネームの作家の単独企画展となるとえらいことになる。それが嫌だから、朝イチに限る、と思っているわけだが、今回わたしは9時半開場のところ、8時55分ごろに現地に着いた。その時すでに待っている方々は20名弱。まあこれなら余裕であろうと寒空の下、待つこと30分で開場となって入場した。
 ま、だいたい1/2~1/3ぐらいの人は音声ガイドを借りるので、さらにわたしの前は人が減ってガラガラになる。大変良い鑑賞環境で観られたのは言うまでもなかろう。なお、チケットは、上記画像にある通り「当日券」だけど、行こう、つうか今週末行く!と心に決めた日の帰りに上野駅構内のチケットブースであらかじめ買っておきました。当日買うのはさらに並ぶのでダメですよ。開場時はながーーーい列になってました。
 今回の『ゴッホ展』は、展示総点数が83点、そのうち、ゴッホじゃない作品が31点というわけで、ゴッホ率は過半数を超えている。最初の方をかっ飛ばしてメインまで行っちゃう人をよく見かけるけど、今回は冒頭からゴッホ作品で、独学で練習というか勉強していた時代の作品から、影響を受けた作家とその影響が見える作品、そしてアルルを経て、さらなる研究へ、という構成になっていた。今回はジャポニズム系はナシ、です。
 そして今回のメイン作品は、おそらく上に貼ったチケット画像にある通り『糸杉』だろうと思う。だけどわたし、この作品はMYCのThe Metropolitan Museum of Artでじっくり観たので、おお、お久しぶりだね、ぐらいの感覚であったのだが、そのすぐ近くにあった、『薔薇』という作品の方が今回一番気に入りました。どうやらこの『薔薇』はWashingtonのNational Gallery of Art所蔵作品みたいすね。行ってみたいなあ……。
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 前もどっかで読んだけど、ゴッホは「色」の研究のために、お花の絵をかなり多く描いているわけですが、背景の淡いミントグリーン? がとてもいいすねえ……。色の研究に「白」のバラを描くってのは、非常に意味があるような気がしますな。もちろん言うまでもありませんが、現物はこんな画像の1億倍の美しさとオーラに包まれています。
 はっきり言って、昨今の絵画展は入場料が高いと思う。今回は当日券1800円だ。まあ、映画も同じ料金だけどさ、高いよね、やっぱり。でも、わたしとしては高いからやめよう、というハードルとして機能するなら、混雑解消の一つの解でもあるような気がするので、甘んじて受け入れることにやぶさかではないです。そして、やっぱり「本物」を目の前にしたときの、なんつうかな、心の高揚? のようなドキドキ感みたいなものは、ほかでは代えられないものだと思うので、高いけどアリ、だと思う。まあ、この入場料の価値があるものかどうかは、自分の胸に聞いてください。

 というわけで、さっさと結論。

 なんか数年ごとに決まって開催される『ゴッホ展』。その度にわたしも足を運ぶわけだが、正直、切り口がもうネタ切れなんじゃなかろうかという気もする。単に来日作品が違うだけ、だよね。ズバリ言うと。かぶってる作品もあるし。でも、それでも。わたしはやっぱり観に行くんだろうな。だって、好きなんだもの。もうしようがないす。こればっかりは。だけど、わたしのようなゴッホ好きが日本に数万人いるからと言って、開催側はきちんとオリジナリティーを見せてほしいと思う。なんか、はっきり言ってそういう努力は全く感じられない、フツーのゴッホ展だったな、というのがわたしの感想です。あと、どうでもいいんだけど、そろそろ暗い会場に暖色系LED証明ってやめてくれないかなあ……直射日光はそりゃアカンだろうけど、わたしとしては「自然光」のもとで、ゴッホ作品を観たいす。ま、無理な話なのかな……以上。

↓ 今回も買いました。AERAムックの解説本は大変出来がいいです。図録よりいいかもよ。

 昨日の記事で書いた通り、わたしは昨日の土曜日、朝7時過ぎに出勤して、ちょっと気になっていた仕事をさっさと片づけて、9時になったところで一度切り上げ、会社の戸締りをして上野へ向かった。そうです。これを観に行くためであります。
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 そう、ずっと行きたかった、『生頼範義展』であります。今日が最終日かな、もうだいぶ前にチケットを買っておきながら、行く時間が取れずにいたため、昨日はもう絶対行かねえと、というギリギリのタイミングだったのでした。
 ところで、生頼範義(おおらい のりよし)大先生については説明はいらないすよね? えっ!? 知らないだって!? この『STAR WARS Ep-V: THE EMPIRE STRIKES BACK』のポスターを描かれた、日本のイラストレーション界の巨人ですよ! 2015年に惜しくも亡くなられてしまったけれど(享年79歳)、その作品はいまだ強い輝きを放っているのです。
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 映画のポスターや出版物のカバーイラストなど、様々なイラストを手掛け、日本国内ではスーパースターと言っても過言ではない巨匠だが、日本版の小説かな、かの「スター・ウォーズ」の挿絵を担当された生頼先生のイラストが、George Lukas氏の目に留まり、2作目の「帝国の逆襲」の公式イラストに起用されたわけです。もうそのあたりの話は半ば伝説化されていて、有名なエピソードだと思う。わたしはもちろん生頼先生のイラストは大好きで、この「帝国の逆襲」のイラストの下敷きを小学生から高校生ぐらいまでずっと使っていたこともあり、わたしとしては、その原画が来ているなんて、絶対に観に行くしかねえじゃねえか!とワクワクしていたのだ。
 この展覧会は、実は2014年だったかな生頼先生の地元である宮崎で開催され、その後2015年、2016年にも3回にわたって開催されていて、わたしも最初の2014年には、こ、これは行きたい!と周りの部下たちにも散々言っていたものの、2014年はわたしのサラリーマン人生で最も忙しかった頃合いであり、どうしても行けなかった。なので、今年とうとう東京で開催されると聞いて、さっさとチケットも買っていたのだが、最終日前日の昨日、やっと生頼先生の本物の生原画を観る機会に恵まれたのであります。
 一言で言えば、もう圧巻である。とにかくすごくて、もう大興奮であった。
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 わたしが昨日、↑この上野の森美術館についたのが9時25分。列が見えなかったので、お、これはガラガラか? と思ったら、すでに15人ほどの熱心な方々が寒空の中、並んでおられた。でもまあ、15人ならこれは最高の状態で鑑賞できるな、と思い、わたしも列に並ぶこととした。すると、10時の開場にはおよぞ100名弱の列となり、まずまずな盛況であったと言えるだろう。わたしが帰る頃にはもっと混雑していたようで、やはり絵画展は朝イチに限る。
 で、入ると、いきなりの「スター・ウォーズ」コーナーである。もうのっけから大興奮ですよ! ただ、上に貼った「帝国の逆襲」のポスターイラストは、原版はなくて、下絵として構図を試し描きした作品しか展示されてなかった。おそらく原画は、LUCASフィルムの倉庫に眠ってるんじゃないかなあ。分からんけど、きっと買い取られたんだと想像します。でもその下絵でもその迫力は尋常じゃない。そして続く展示は、様々な映画のポスター、となった原画である。
 実はわたしが今回一番観てみたいと思っていたのが、こちらの『MAD MAX2』だ。
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 このイラストは、わたしが持っている『MAD MAX2』のパンフレットに付属していたA3サイズのミニポスターに使われているイラストで(2つ折りで挟み込まれていた)、中学生当時のわたしの部屋にしばらく貼られていたことがある。超カッコよくて、今ではパンフと一緒に大事にしまってあるけど、中学生当時のわたしは無造作に画鋲で貼っていたので、もう結構ボロボロになってしまっているのが悔やまれる。中学生当時のわたしをぶん殴りたい気分だ。
 で、この作品も、本物の原画が展示してあって、わたしはもう失神するんじゃねえかというぐらい興奮した。まず、わたしはそもそも生頼先生の使っている画材は何なんだろう? 油彩じゃあないだろうし……? と思っていたのだが、どうやらほぼすべて、カラー作品に使われている画材は「リキテックス」のようだ。いわゆるアクリル絵の具ってやつですな。油彩のような厚塗りもできるし、とにかくその筆力に放つ迫力は、圧倒的である。これは原画をぜひ見てもらいたいものだ。そして、想像以上に原画のサイズがデカイ! ほぼすべてのポスター作品は、キャンバスサイズP40号であった。つまり、天地1000mm×左右727mmである。要するに、だ、通常の映画のポスターサイズは現代ではB1サイズが一番多く使われると思うけれど、B1=1030mm×728mmなわけで、要するに、「原寸大」で描かれている、ということだ。これって、凄くないですか? 今やイラストレータの大半はデータで描く方が多く、手書きの方もそれほど大きなサイズのイラストを描くことはまれなのではなかろうか。この原画を前に興奮しない奴とは友達になれないすね。ホント最高です。

 というわけで、この後はゴジラや小松左京作品のカバーイラスト、海外SF小説のカバーイラストなどのカラー作品が続き、その後、鉛筆によるモノクロ作品が圧倒的物量で展示されていて、もう窒息寸前、脳の血管ブチ切れ寸前の大興奮の嵐である。総数248点、圧巻である。
 わたしがひとつ、へええ!?と思ったことは、モノクロ作品(主に人物画)にみられる「点描」の手法である。なんと、生頼先生は、新聞広告に使われることを想定して、そのための技法として点描を選んだのだそうだ。これって、意味が分かりますか? 出版に携わったことのある人なら分かるでしょ? つまり、新聞(や印刷物)での、「網点」に、最初から自分で分解していたわけなんすよ!! だから、印刷された時に、原画の迫力がそのまま伝わるわけで、そこまで計算している現代イラストレーターはいないのではなかろうか。
 そしてもう一つ、重要なポイントとしてメモしておくと、生頼先生のイラストの最大?の魅力は、その構図、どのキャラをどう配置するか、というそのコラージュ力にあるわけです。これは、イラストレーターのセンスが一番問われるもので、多くの場合は編集者から、このキャラを真ん中にズドーンと、そしてこのキャラとこのキャラをテキトーに配置してほしい、みたいなオーダーがあって、イラストの構図やキャラが決まっていくものだと思うけれど、その配置や場面描写に、イラストレーターのセンスが強く反映されるわけです。で、生頼先生の場合は、まずは原稿(=小説)を完璧に読み込んで、キャラクターを完全に把握してから考えるのだそうだ。きっと映画の場合は、先に観てから考えるんでしょうな。だから、小説や映画という元の作品の世界観が完璧に再現されるわけで、これも、現代イラストレーターには失われつつある努力だろう。わたしが編集者時代には、先にきっちり原稿を読み込む人と、全く原稿を読まないで、特徴だけ書き出したメモを欲しがる人、両方のイラストレーターがいましたね。まあ、スケジュール感が違うだろうから、後者の人を非難するわけには全くいかないけれど、まあ、生頼先生は、きっちりと世界観をつかまないと描けっこないじゃん、という方だったのでしょうな。そしてその残された作品は、ある意味永遠に輝き続けるわけで、本当に素晴らしい作品群でありました。

 最後に、展覧会の運営としてちょっとどうなの、と思ったことをメモしておこう。ただし以下は完全なるわたしのいちゃもんであり、会期終了間際に訪れたわたしの罪であるので、自戒の意味を込めて備忘録としておこう。
 まず、入場列について。2列で並ばせるのはまあ当たり前だし、4列だっておかしくはない。でも、チケットもぎり要員が一人だけで、入場直前に1列にするのはどうなんだ? おまけに前売りを持っている人と持っておらず当日券を買う人を同じ列に並ばせるのも、まあ間違ったやり方だろうな。簡単に改善できるので何とかしてほしいものだ。
 そして、わたしが非常に困ったのが、普通の絵画展なら必ず入場口に置いてある作品一覧が、置いてなかったことだ。なんだ、ないんだ……とがっかりしていたわたしだが、帰りに聞いてみたところ、当日券を買う窓口に置いてあるから、欲しかったらもう一度、入場列に並べ、なんて言われ、ええっ!? それはひどくないですか? と列整理の女子に軽く文句を言ってみたら、見かねたのか?運営関係者のおじさんが1枚持ってきてくれた。聞くところによると、実はもう用意していた分がなくなってしまい、欲しい人だけ、とりわけ外人客に渡す用に、両面コピーをちょっとだけ用意してあったという。ううむ……まあ、終了直前だったから仕方ないのかな……まあ、めんどくさい客ですみませんでした。今後はやっぱり終了直前に観に行くのは避けないと、とわたしも深く反省します。
 あともう一つ。何と公式図録も売り切れていて、買えなかった。今回は買う気満々だったのだが……まあ……しょうがないか……在庫になるより売切れ御免の方が、ビジネスとしては正しいのは良くわかる。だから運営のせいだとは思わず、終了直前に行ったわたしの愚かさの戒めとして、やっぱり終了ギリギリに行くのはダメという教訓としたい。
 最後にもう一つ。本展は、珍しく一部で撮影OKとなっていた。のだが、やっぱり、撮影OKってどうなんだろう、という気がしますね。確かにね、わたしも興奮して撮影したくなる時は良くあります。なので、ファンとしては嬉しい配慮であるのは間違いないとは思う。しかし、わたしは今回結局撮影はしなかった。というのも、わたしが大興奮で、うおおお!と観ているわきで、一心不乱に撮影をバシャバシャして、ろくに作品を「自分の目」で見ることもなく、さっさと次々に作業のように撮影している人々がいっぱいいて、そいつら観てたら、なんか、ああはなりたくねえわ、と思ってしまったのである。撮影自体が悪いんじゃなくて、まずはその眼で、きちんと作品を味わったらどうなのよ、せっかく「本物」が目の前にあるのに! なんか、一心不乱に撮影している姿は実に気持ち悪かったす。ああ、そういや、本展は、わたしの年齢±10歳ぐらいのおっさん率が異常に高かったすね。そりゃそうだ。70年代以降の映画オタク・SFオタクいはもう、たまらない展覧会であったと思う。ホントに最高でした。

 というわけで、結論。
 日本が誇る稀代のイラストレーター生頼範義氏の作品展『生頼範義展:THE ILLUSTRATOR』を終了前日にやっと観に行くことができた。2014年に宮崎で開催されて以来、やっと御対面がかなった生頼先生の本物の肉筆原画は、想像以上のすさまじい迫力とオーラで、わたしはもう本当に失神しかけ、逝っちまいそうになるほど大興奮であった。とにかくすごいよ。これは本当に、自分の目で見ないとダメでしょうな。印刷や写真じゃ絶対に伝わらないと思う。本当に最高でした。そして、会期終了に行くのは絶対にダメ、という教訓も得られ、図録を入手することはできなかったけれど、自戒として受け止めたい。もうチョイ、長く開催してほしかったなあ。今回の東京展は1か月もなくて、非常にもったいないと思った。もっともっと、多くの方に生頼先生の放つオーラを感じてほしかったすね。はあ……それにしても最高でした。いまだ興奮が冷めないす。以上。

↓ 画集を買えってことなのかもしれないな……。
生頼範義: The illustrator
生頼範義
宮崎文化本舗
2014-02

生賴範義Ⅱ 記憶の回廊 1966-1984
生頼範義
宮崎文化本舗
2015-07

生賴範義Ⅲ THE LAST ODYSSEY 1985‐2015
生頼範義
宮崎文化本舗
2016-12-03

 人間の心理には「怖いもの見たさ」という謎の情動が存在しているが、どういうわけか、やめときゃいいのに、「怖いもの」に妙に惹かれてしまうわけで、現在、上野の森美術館で開催されている絵画展『怖い絵展』は、連日大変な混雑となっているそうだ。
 わたしは、↓この中野京子氏による著作を10年前、朝日出版から出た当時(※現在は下記の通り角川文庫から出ている)に、知り合いに勧められて読んだが、特に、ふーん、ぐらいの感想しか抱かなかった。
怖い絵 泣く女篇 (角川文庫)
中野 京子
角川書店(角川グループパブリッシング)
2011-07-23

 そして今、上野で開催されている『怖い絵展』に関しても、あ、これ、アレか、とすぐに思い出したものの、実はあまり観に行く気にはなっていなかった。
 しかし、である。先週観劇した『Lady Bess』というミュージカルが大変素晴らしく、16世紀のイギリス史に大いに興味を持ったわたしとしては、そういえば今やってる『怖い絵展』のメインである「レディ・ジェーン・グレイの処刑」は、まさしくその時代で、『Lady Bess』に登場するメアリー1世、俗にいう”ブラッディ・メアリ―”に処刑されたシーンを描いたものだ、ということを連想し、やっぱ上野に行って来よう、とあっさり気が変わり、本日朝7時過ぎに家を出て、現地に7時54分に到着したわけである。
kowaikabe
 あちゃあ……朝日が射していて思いっきりボケてる……ホント写真の才能ねえなあ……。ま、そんなことはともかく、開場は9時というので、おっそろしく混んでいると噂の本展でも、1時間前に着けば何とかなるだろう、と根拠なく思い、実行したわけだが、わたしが到着した7時54分には、およそ5~60人の熱心な老若男女が集っており、へええ? と思わせる盛況であった。なお、開場時にはその列はおよそ10倍以上伸びており、わたしが観終わって出てきた時には同じぐらいかそれ以上の入場待機列となっていた。ちょっと早起きすりゃいいのに……そうしない理由がわからねえ。
 というわけで、小1時間、周りはみな複数での来場の中、わたしは一人突っ立って電子書籍を読んでいると、感覚的には結構あっという間に時間がやってきて、いざ入場となった。当然チケットは事前に購入済みだ。
kowaiticket
 入場に際しては、音声ガイドを借りる人と借りない人で分かれていて、驚いたことに2/3ぐらいの方は「借りる」人の列に並び、結果的にわたしは「借りない人」の最初の20人に含まれることとなった。そして開場して、借りる人20人、借りない人20人、と20人ずつの入場であった。なので、会場内は全くのガラガラで、気分よく見られたのが非常にありがたかった。
 音声ガイドは、わたしもたまーーーに借りることがある。実際、知らないことをいちいち教えてくれる便利なアイテムで、本展では女優の吉田羊さんがナレーションしてくれるらしい。まあ、借りる借りないは全く自由だが、今回わたしは元々の中野氏の著作を読んでいるのでスルーである。
 で。本展は、構成としては6章に分けられていて、総タイトル数は……83点かな、なかなか見ごたえのある作品が多く集められていた。意外と時代的に新しい作品が多いのがちょっと意外だったかも。
 が、作品ごとにちゃんと解説が展示されているのだが、ズバリ言って、わたしが怖いという意味で、コイツはヤバい、と感じた作品はごくわずかで、実際わたしは43分であっさり鑑賞を終えてしまった。
 主に前半は神話や聖書、ギリシャ悲劇をモチーフとした「怖い」作品がそろっている。この辺りは、わたしはほぼ知っているエピソードを題材にした作品で、興味深くは感じても、怖さは感じない。例えばセイレーンやオルフェウスだったり、あるいは現在絶賛公開中の映画『THOR:RAGNAROK』でもお馴染みの雷神トールがムジョルニアを振りかざしている絵だったり、映画に出てくる死の女神ヘラの元になったヘレネ―だったりと、キャラとしては有名人が多かったように思う。なので、怖いというより、おお、これはあの!的な感動の方がわたしは大きかった。
 そう、ズバリ言うと、わたしがこいつはヤバい!と感じたのは、『切り裂きジャックの部屋』とメインの『レディ・ジェーン・グレイの処刑』の2点だけだ。
 まず、『切り裂きジャックの部屋』である。1906-07年の作だというので、切り裂きジャック事件の約20年後という事になる。
Jackthelipper
 解説によると、作者のWalter Sicket氏は『スカーペッタ』シリーズでおなじみのPatricia Cornwellおばちゃんが7億円だったか、大金をかけた最新の科学調査によるDNA判定の結果、ジャック本人と推定されている人だそうだ。以前、切り裂きジャック関連の小説を読んだときに、調べてたことがあるのに、すっかり忘れていたよ。そうそう、画家だった、と思い出した。
 しかし、わたしとしては、その正体の真偽は実際どうでもいい。この絵そのものがはらむ、底知れぬオーラ、妖気めいたものに、わたしは漫然と怖さを感じたのである。上記の画像じゃあそれは全然伝って来ないと思うけれど、本物のこの絵は、実際ヤバイと感じた。なんだろうな……言葉にできないす。
 そしてもう1点は、メインの『レディ・ジェーン・グレイの処刑』だ。この絵の迫力はただ事ではないですよ。超生々しくて、マジ怖い!
LadyJaneGray
 そもそも、その大きさからしてわたしの想像を超えていた。この絵、どのぐらいの大きさだと思いますか? わたしは、120㎝×150㎝ぐらいかしら? と特に根拠なく思い込んでいたのだが……なんとその大きさは246㎝×297㎝、わたしの想像の倍のデカさであった。はっきり言って誰しもが圧倒され、息をのむのではないかと思う。この絵は、解説によると1833年の作で、その後ロシア貴族の手に渡り、長らく公開されずにいたものの、20世紀になってイギリス貴族が購入し、ロンドンのナショナル・ギャラリーに寄贈されたんだそうだ。そして、その後洪水で水をかぶった(?)ものの、修復リストの下の方に埋もれ、長らくその所在すらも忘れられていたところ、ひょっこり、こ、これは! と再発見されたものらしい。
 とにかくすごいのが、その強烈なコントラストで、黒と白のパキッとした色彩はおそろしく印象的だ。なんというか、奥行き感がすごく、白の衣装のグレイ嬢が浮き上がって見える超立体感がすごい。そして各人物の表情がこれまたヤバイ。ちなみに、右端の斧を手にしたタイツの男が処刑人です。ミュージカル『Ledy Bess』では処刑人をフランスから呼んだと言っていたけど、ビジュアル的にかなりイメージが違うし、やけにリアルで怖い! 現在の、いわゆる「ロンドン塔」での処刑だが、実際はこの絵に描かれているような室内ではなく、野外で執行されたらしいですな。くっそう……ロンドンもやっぱり1度訪ねてぶらついてみたいものですなあ……。

 とまあ、こんな感じに、ラストにこのメイン『レディ・ジェーン・グレイの処刑』がズドーンと展示されているのだが、まあ、これは混雑の中で観るとそのすごさが実感できないのではなかろうかと思う。この絵の前に人が立ってほしくないし、全体を見渡せないとダメなんじゃなかろうか。わたしが観たときは、部屋に10人ぐらいしかいなかったので、超快適に、視界に絵以外誰も入らないというほぼ独り占め状態で鑑賞することができた。
 そして観終わって、今回はどうするか少し悩んだけれど、読み物としても面白そうだし、人に見せる機会もあろうと思われたので、図録は買うことにした。2500円ナリ。ミュージアムショップも、きっと普段は混雑していると想像できるが、わたしが行ったときは3人しかいなかったっす。ま、結論としては早起きは三文の徳、ですな。

 というわけで、さっさと結論。
 10年前に読んだ中野京子氏の著作『怖い絵』を題材にした(?)『怖い絵展』を上野に観に行ってきた。やっぱり絵画鑑賞は朝イチに限ります。全く快適でした。そして、正直、本当に怖い作品は、わたしには2点しかなかったです。ただ、全く怖くないけれど、わたしの大好きなTuner氏の作品も1点展示されていて、わたしとしては大満足でありました。会期は残り約1か月かな、気になる方は今すぐGO!でお願いしたいですが、まあ、ちょっと早起きして、朝イチに行った方がいいですよ。観終わる頃に、上野の町のお店は開店し始めて、お茶でも飲んで買い物でもして下さい。わたしも、観終わった後、出来たばかりの上野パルコをぶらついてきました。以上。

↓ そういやこれもチケット買ったはいいけどまだ行けてないので、そのうち行ってきます。くそ、今日一緒に行ってくりゃ良かったかも……。
hokusaiandjaponism

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