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 わたしは年間40本ぐらいは映画館で映画を観ているわけだが、そんなわたしが一番好きな映画監督は、現役では間違いなくClint Eastwoodおじいちゃんである。1930年5月生まれだからあと2カ月で89歳だよ? そんなおじいちゃんが、今もなお旺盛に映画を撮っていて、ほぼ毎年、多い年は年2本とか作品を生み出してるんだから、もうマジで信じられないよね。あっ!? ちょっと待って!? うおお、今まで全然気にしてなかったことを発見しちまった!! 1930年って、昭和5年じゃん? てことは、20年以上前に亡くなったわたしの親父より1つ年上じゃん! つうかほぼ同じかよ。すげえ、つうか、親父が生きてたら今年88歳か。そんな歳になってたんだなあ……。そうなんだ……。
 というわけで、わたしは今日、会社帰りにEastwoodおじいちゃんの最新作、『THE MULE』を観てきたのです。Muleってのは、騾馬のことですな。Wikiによると、騾馬ってのは雄のロバと雌の馬の交雑種で、、メキシコに多く生息しているそうだが、まあ、荷物運搬によく使われていたわけで、そこから転じて、メキシコから密輸されたドラッグの「運び屋」って意味で使われているわけだ。本作は、90歳になろうかという老人が、メキシカン・カルテルの末端として「運び屋」となった事件(?)に着想を得て作られたフィクション、のようだ。
 結論から言うと、わたしとしてはもう超最高に面白かったと思う。なお、Eastwoodおじいちゃんが自分で監督して自分で主演を務めるのは2008年公開の『GRAN TRINO』以来だそうだ。マジかよ、もう10年前の映画かよ……はあ……オレも年取ったなあ……。
 というわけで、以下、決定的なネタバレに触れるかもしれないので、まだ観ていない人はここらで退場してください。つうか、今すぐ映画館へGO!でお願いします。コイツは超おススメであります!

 というわけで、もう物語は上記の通りである。なので、問題は2つであろう。
 1つは、なんでまた運び屋になっちゃったのか? そしてもう1つは、最終的にどうなるのか、である。まあ、誰だってそう思うよね。わたしもそう思った。
 そして映画は、まず現在時制である2017年の12年前、2005年のとある情景から始まる。ここで説明されるのは、主人公のおじいちゃんが、ユリの栽培家で、品評会的なものの常連であり、メキシコからの違法移民の労働者と、口は悪いけど楽し気に働く姿だ。そして品評会でも、同業者に口汚いジョークをかまし、女性たちにも軽口を飛ばしつつ、賞を貰ったスピーチでも小粋なことを言って場内から拍手されるような、要するに、「営業トーク」が自然と出る、トークで相手の懐に入り込むのが得意な、口の達者なおじいちゃんという姿が描かれる。しかも、おそらく「狙ってる」ワケではなく、「天然」で面白トークをしてしまうおじいなのである。この点は後々極めて重要になるのだが、わたしは観ていて全然気が付かず、観終わって、そうか、冒頭のシーンにはそういう意味があったんだ、とハタと気づいた。
 そしてこの2005年のシーンではもう一つ、重要なことが描かれる。それは、その品評会のパーティーが、なんと娘(※娘と言っても結構歳がいっていて、既に娘(つまり孫)までいる)の結婚式の日で、思いっきりダブルブッキングしているのだ。だけど、おじいちゃんは結婚式にはいかず、パーティーにとどまる。そう、主人公は完全に「家族を顧みない」男であることが示されるのである。
 そして時は2017年に移る。いきなり映されるのは、12年前主人公が丹精込めて育てていた農園が荒れ果て、家は差し押さえにあい、荷物をおんぼろトラックに積んで出ていくシーンだ。どうやらインターネッツの通販によって事業が傾いてしまったらしい。そして主人公は、そのおんぼろトラックで成長した孫の婚約パーティー(?)会場に乗りつける。孫は唯一、おじいちゃん擁護派で、大喜びするも、娘と妻(しつこいけど孫にとっては母とおばあちゃん)がいて、険悪な雰囲気に。こっぴどくののしられて、しょんぼりなおじいちゃんは、一人おんぼろトラックで帰ろうとしたとき、娘の婚約者の友達(?)から、金に困ってて車の運転が好きなら、いい仕事があるよ、と言われ……てな展開で「運び屋」まっしぐらとなるお話であった。
 というわけで、わたしが観る前に感じていたポイントの、「なんでまた運び屋に?」に関しては、冒頭10分ほどで、なーるほど、と理解できる展開になっている。そして、わたしが一番この映画で面白いと思ったことは、主人公のおじいちゃんが「トークで相手の懐に入っちゃう」その様相だ。
 まず最初に、おじいちゃんの面白トークで篭絡(?)されるのは、街の末端の連中だ。最初はおじいちゃんに、おいおいメールも打てねえのかよこのジジイ! ぶっ殺すぞ!的な悪党どもなのに、3回目ぐらいになると、おじいちゃんの車が入ってくれば、YO!元気かい!みたいにフレンドリーになってて、だからさ、ここをこうやんだよ、的にスマホの使い方を優しく教えてあげちゃったりするんだな。
 そして次はカルテルから直々に送り込まれてきた悪党だ。カルテルのボスが、ちゃんと見張っとけ、というので、おじいちゃんの車に盗聴器を仕掛けて、後ろをついてくるわけだけど、おじいちゃんが超のんきに、ラジオに合わせて歌なんか歌ってると、あのジジイ、のんきに歌ってんじゃねえよと最初はおっかない顔をしていたのに、つい、つられて歌っちゃったりするし、白人しかいないような店に寄って、おいジジイ、みんながジロジロ見るじゃねえか、なんでこんな店にしたんだよ!と凄んでみせると、おじいちゃんは、いやあ、この店のポークサンドは世界一美味いんだよ、どうだ、美味いだろ? なんて返され、まあ、美味いけどね……みたいな、悪党たちの調子が狂うというか、その篭絡ぶりが観ていてとても面白いのです。悪党だけじゃなくて、2回、ブツを運んでいる時に警官と遭遇しちゃうのだが、そのかわし方?が 上手すぎて最高だったし、1回目の時の、ど、どうしよう?という超不安な表情も演技として素晴らしかったすね。
 そして、あまりにおじいちゃんが仕事に次々と成功するので(DEA=麻薬取締局が網を張ってるのにおじいちゃんすぎてノーマークだった)、カルテルのボスが気に入っちゃって、メキシコの大邸宅に呼びつけて、二人で盛大に酒を飲んで女もあてがってもらって(!)、楽しいひと時まで過ごしちゃうんだから凄いよ。
 しかし、後半、そのカルテルのボスが暗殺されて別の人間に交代したことで、完全に空気が変わってしまう。その新ボスは、寄り道禁止、スケジュール通り運ばねえとぶっ殺す、と別の凶悪な手下を送り込んできたのでした。そして折しも元妻が病魔に侵されているという知らせも入り、そっちに行きたい、けど、おっかねえ連中が見張ってる、そこで主人公のおじいちゃんが取った行動とはーーーというクライマックス(?)になだれ込むというお話でありました。
 なので、果たして最終的な結末は―――という最初の疑問は、かなり美しく描かれますので、それはもう、映画館でご確認ください。わたしはあの結末はアリだと思います。大変面白かったすな。
 というわけで、以下、キャラ紹介とキャスト陣の紹介をして終わりにしよう。ホントは篭絡されていく悪党たちを紹介したいんだけど、知らない役者なので、有名な人だけにします。
 ◆アール:主人公のおじいちゃん。朝鮮戦争に従軍した退役軍人。そのギリギリセーフ、つうか若干アウトな毒舌トークで相手の懐に入っちゃうキャラは、Eastwood作品ではかなり珍しいような気がする。いつも、眉間にしわを寄せてる強面おじいですが、今回はちょっと違いますね。ボスの家に招かれたときのシーンも良かったすねえ。「こりゃあ凄い、あんた、この家を建てるのに何人殺したんだ?」なんて、周りの悪党どもがドキッツとしてしまうようなことを平気で口にしてしまっても、ボスも笑顔で「そりゃあもう、たくさんだよ、はっはっは!」と逆に気に入っちゃう流れは、アールのキャラをよく表してましたな。アールは、朝鮮戦争から帰ってきたことで、ある意味もはや「怖いものなんてない」わけで、「したいことをする・思ったことは口にする」男となったわけだ。だけど、一つだけ、どうしても心残りなのが、家族を蔑ろにして生きてきたことで、それが内心ではとっても悲しく、Eastwoodおじいちゃんの表情はもう、最高にそんなアールの心情を表していたと思う。ホントにお見事でしたなあ! あと、最初の仕事の成功でもらった金で、いきなりおんぼろトラックからゴッツイ最新モデルのピックアップ(ありゃクライスラーかな?)に乗り換えちゃうところなんて、わたし的にはとても微笑ましく思えました。ちょっと調子に乗りすぎたかもね……この人……。
 ◆コリン・ベイツ:DEA捜査官。NYやDCで実績を上げてシカゴ支局に異動してきた花形捜査官。「タタ(=じいさん)」と呼ばれる謎の運び屋を追う。このDEAサイドの話も並行して進むのだが、ベイツとアールがとあるカフェで出会う、けど、アールはヤバい!と気付いているのに、ベイツはまるで気付かず、のあのシーンも大変良かったですね。ベイツを演じたのは、Eastwoodおじいちゃんのウルトラスーパー大傑作『AMERICAN SNIPER』で主人公クリス・カイルを演じたBradley Cooper氏。今回は出番はそれほど多くないけれど、大変良かったです。ラスト、あんただったのか……と逮捕するシーンの表情も、実に素晴らしかったすね。そして役名を覚えてないけどベイツの相棒のDEAマンを演じたのがANT-MANのゆかいな仲間でお馴染みMichael Peña氏。彼もEastwoodおじいちゃんのウルトラスーパー大傑作『Million Dollar Baby』に出てましたな。陽気な役が多い気もするけど何気に演技派なんすよね、この人は。それから二人の上司のシカゴ支局の偉い人、をLaurence Fishburne氏が演じてました。相変わらずのすきっ歯でしたね。実に渋いす。
 ◆カルテルのボス:「タタ」と呼ばれる運び屋の仕事ぶりが気に入って、自宅に呼びつけるボス。残念ながらその若干甘い体制が身を滅ぼしたようで……残念でした。演じたのはAndy Garcia氏。すっかり渋くなりましたなあ。一時期トンと見かけなかったような気がするけれど、ここ数年、また出演作が増えてきたような気がするっすね。『The Untachable』はもう30年以上前か……あの頃はイケメンでしたなあ……。
 ◆メアリー:アールの元妻。仕事人間で家庭を顧みないアールに三下り半を突きつけ離婚したらしい。しかし最後の和解は、ちょっと泣けそうになったすね。あの時のEastwoodおじいちゃん演じるアールの表情が超見事でした。この元妻を演じたのがDianne Wiestさん70歳。わたしがこの人で一番覚えているのは、『Edward Scissorhands』のお母さん役ですな。エイボンレディーの仕事をしているちょっと抜けた?明るいお母さんという役だったすね。あれからもう約30年か……はあ……。
 ◆アイリス:アールとメアリーの娘。結婚式に来なかった父と12年口をきいていない。そりゃ怒るよ……。演じたのは、なんとEastwoodおじいちゃんの本当の娘であるAlison Eastwoodさん46歳。この方は過去何度かEastwood作品に出演しているし、自らも監督として映画を撮っている方ですが、顔はあまりお父さんに似てないすね。わたし、実は観ている時はAlisonさんだと気が付いてなかったです。ウカツ!
 ◆ジニー:アイリスの娘であり、アールとメアリーの孫。おじいちゃん擁護派だったけれど、おばあちゃんが大変なのに来てくれないなんて! と激怒してしまうことに。わたしはこの顔知ってる……けど誰だっけ? と分からなかったのだが、エンドクレジットで名前が出て思い出した。この女子はTaissa Farmigaちゃん24歳ですよ! 2013年公開の『MINDSCOPE(邦題:記憶探偵と鍵のかかった少女)』の主役の女の子ですな。あの頃はギリ10代だったのかな、すっかり大人びて美人におなりです。そしてこの方は、『The Diparted』のヒロインを演じたVera Farmigaさんの妹ですね。えーと、Wikiによると21歳年下の妹だそうです。ずいぶん離れてますな。あ、7人兄弟だって。そしてTaissaちゃんが末っ子か。なるほど。

 というわけで、もう書いておきたいことが亡くなったので結論。
 わたしが現役映画監督で一番好きなClint Eastwoodおじいちゃん最新作『THE MULE』が公開になったので、初日の今日、会社帰りに観てきた。ズバリわたしは超面白かったと結論付けたい。とにかく、10年ぶりの主役を自ら演じたEastwoodおじいちゃんの演技が超秀逸です。アカデミー賞にかすりもしなかったのが大変残念ですよ。いつもと違う軽妙さはすごく新鮮だったし、時に見せる、老人らしい慌てぶりの、ど、どうしたらいいんだ?的なオロオロ感は観ててとてもグッと来たっすね。グッと来たというか、毎日、80代のばあ様になってしまった母と暮らすわたしには、こっちまで心配になってしまうような、絶望感のような表情が素晴らしかったと思います。わたしとしては、本作は大いにお勧めいたしたく存じます! 是非映画館で! 以上。

↓ 今週末は久しぶりにコイツを観ようかな。なんというか、キャラ的に今回と正反対、のような気がする。
グラン・トリノ (字幕版)
クリント・イーストウッド
2013-11-26

 わたしはこのBlogで何度も表明しているが、かなりの声フェチである。とりわけ、女子の、容姿とはギャップのある、ガラガラ声というか、低めの声が好きだ。そんなわたしが愛するハリウッドスターが、Jennifer Lawrence嬢である。まあ、彼女についてもこのBlogで何度も言及しているので今更詳しくは説明しないけれど、とにかく、彼女の声は極めてわたし好みで、ついでに言うと、やけにむっちりしたBODYも大変よろしい。1990年生まれでまだ26歳。すでに栄光のオスカーウィナーの座を手にし、全世界的にも人気の高い女優である。が、どういうわけかここ日本においては、映画は妙なガラパゴス的進化を遂げており、ハリウッド作品が全然売れなくなった今、どうもJenniferちゃんの人気はいまひとつなのかもしれない。人気というか、知名度的にも相当怪しいと思う。もちろん映画好きならそんなことはないと思うけれど、街の人々にアンケートでも取ったら、知らない人の方が断然多いのではなかろうか。
 わたしがそう思う根拠は、実際のところ無きに等しいのだが、2015年にUS公開された『JOY』という作品が日本では公開されなかったのがわたしはいまだにガッカリしている。この映画は、監督はJenniferちゃんにオスカーをもたらした『Silver Linings Playbook』(邦題はなんだっけ……「世界に一つのプレイブック」か)を撮ったDavid O Russell氏だし、 共演も、Bradley Cooper氏やRobert DeNiro氏なのに。まあ、実際『JOY』はUS興行で全然売れなかったし、評価としては微妙だったようだ。同じ監督共演陣の『American Hussle』も微妙作だったので、『JOY』が日本では売れない、と判定されてしまったのだろう。こういう見る目のないところが、またしても20th Century FOXのダメさ加減だが、ほんと、FOX JAPANはマーケティングセンスがゼロだとわたしとしては断罪したい。あれっ!『JOY』はちゃんとBlu-rayは発売されてるんだ!? しかも先月発売じゃん! なんだ、全然知らなかった! しかし……今どき売れるわけないのに……さっさとWOWOWで放送されることを祈ろう。どうせ、FOXもさっさと金にしたいだろうし、おそらく早晩放送されるとみた。早く観たいものですなあ……。
ジョイ 2枚組ブルーレイ&DVD(初回生産限定) [Blu-ray]
ジェニファー・ローレンス
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
2017-02-22

 さて。なんでこんなどうでもいいことを長々と書いたかというと、Jenniferちゃん主演の映画が去年US公開されて、これもまた日本で公開されねえのかなあ、とちょっと心配だったからである。しかし、今回はその心配は杞憂に終わり、無事、昨日から日本で公開されるに至ったのである。その映画のタイトルは、『PASSENGERS』。恒星間航行が一般化された未来、植民星へ120年の航海に出た宇宙船を舞台にした、バリバリのSF作品である。
 というわけで早速観てきたのだが、結論から先に言うと、映像と音響はとても素晴らしく、非常に気合の入った作品である、が、物語的にはちょっと意外な展開で、若干微妙かも? と思えるような作品であった。しかしそれでも、Jenniferちゃんと、その相手役Chris Pratt氏の演技ぶりは素晴らしく、わたしは結構楽しめました。ま、この映画に合わせてFOXが『JOY』のビデオ発売を決定したのは確定的に明らかで、そういう、人の褌で相撲を取る的なこすっからい点も、わたしのFOXに対する評価を下げるばかりである(ちなみに『PASSENGERS』はSONY作品、というかCOLUMBIA作品です)
 以下、どうしても決定的なネタバレを書かざるを得ないので、気になる人は即刻立ち去ってください。読む場合は自己責任でお願いします。

 物語はもう、上記予告の通りと言って差し支えないだろう。冷凍睡眠で120年の航海中の宇宙船内で、一人目覚めてしまった男。しかもまだ航海は90年続く。絶望的な孤独の中、さまざまな努力にもかかわらず、もはや再び冷凍催眠に戻れない。すなわち、船内で生涯を終えることが確定的というわけだ。しかしそんな中、もう一人、目を覚ました女性が現れ、しかもどうやら宇宙船にもなにやら異変が起きていて――てな展開を誰しもが予想するだろうし、わたしもそう予想していた。なので、問題は、なぜ目覚めてしまったのか、という点が一番のポイントなのだろう、と思っていたわけである。
 この、わたしによる完全なる予断は、およそ9割方は合っていた、のだが、わたしが全く予想外だったのは、2人目の女性の目覚めた原因である。ここから先はもう、本当に決定的なネタバレだけど、書かないと何も語れないので書いちゃいますが、なんと最初に目覚めた男が、あまりに寂しくてたまらず、眠れる美女に一目ぼれしてしまい、自ら装置をいじって目覚めさせてしまうのだ。こうして2人目の女性が、事故ではなく、男の手によって、ある意味無理やり目覚めさせられてしまったのである。この展開にはわたしは非常に驚いた。
 この行為に至るまでの、男の孤独や苦悩は、それなりに丁寧に描かれている。1年、どうやってもダメで、絶望していた男。彼が目覚めた原因は、相当後になって判明するが、まあ、要するに冒頭で描かれる通り、宇宙船が小惑星帯に入ってしまった際に宇宙船に穴が開き、そこから船体に異常が発生して男のカプセルだけ誤作動してしまった、というもののようで、何とか一人で頑張る姿は観ていて結構つらいというか、ああ、気の毒に……という同情がわくにやぶさかでない。そして彼は、偶然見かけた美女のことをいろいろ知っていくうちに、どうしても、彼女と話がしたいという思いが募っていく。彼女はどうやら有名な作家で、植民星での体験を本にするために搭乗していたらしい。しかし―――オレの手で目覚めさせてしまったら、二度と元に戻せない(冷凍ポッドのマニュアルを発見し、そのポッドは冷凍状態を維持するだけのもので、冷凍処置は船内ではできず、解除するだけなら方法があることを発見する)。彼女もまた、船内で生涯を終えるしかない。そんなことはオレにはできない! と何度も苦悩する。が、とうとう……やってしまったという展開であった。
 おそらくは、この男の行動を容認、理解できるかどうかが、本作を面白いと思えるかどうかの分水嶺だろう。そして、ほとんどの人が、理解はできても容認は出来ないだろうと思う。気持ちは分かるというか想像は出来る、けど、それをやっちゃあ、おしめえよ、であろう。わたしだったらどうするか……そうずっと考えているのだが、やっぱり、わたしだったら起こさなかったと思う。たぶん、だけど。しかし、そう考えると宇宙船のリスクマネジメントが、意外とザルってことなんだろうな。物語内では、絶対に起こらないアクシデント、として万一冷凍催眠から覚めてしまったらどうするかという対応策は一切用意されていないという鬼設定であった。
 なので、こうなると、果たして男はどんな償いをするのだろうか? という点に興味が移る。自分が目覚めさせたことを隠しながら、どんどんと二人はイイ仲になっていくが、とあることで自分の行為がバレ、女性に糾弾され、二人の仲は決裂する。しかし、宇宙船の異常はどんどんと危機的になり、とうとう二人は――という流れは、いかにも美しく、まっとうなストーリーなのだが、果たして万人が感情移入できるかとなると、若干怪しい。宇宙船の異常に関しても、ちょっとどうなんだろうという気もするし、第3の覚醒者(が出てくるのですよ!)についても、ちょっと都合が良すぎるような気もする。まあ、そのあたりは観た人の好みによるだろうと思うので、深くは突っ込まないが、わたしは決してつまらなかったとは思わないけれど、もうちょっと面白くできたんじゃないかなあ、という感想である。やっぱり、二人同時の覚醒で、二人で問題解決に当たった方が良かったんじゃなかろうか……1人目の男が目覚めて1年、そして2人目の女性を起こして1年、それから船体異常が深刻になる、という妙な時間経過がわたしは余計だったように思うのだが、どうでしょう? ああ、でもそれじゃあ、この映画の描く「孤独」が身に沁みないか。うーん。。。宇宙船の異常が出るのが遅すぎのような気がしてならないんだよなあ……。
 ま、いいか。しかし、いずれにせよ、エンディングは結構グッとくるものがあったと思う。最後の女性の決断は、一応の救いになっていて、わたしはアリだと思った。そういう決断を下したんだね、と分かるエンディングは、お見事でした。ズバリ、この映画はハッピーエンドですよ。
 しかし、120年の旅に出ることは、すなわち地球に残した人とはもう会えないわけで、事実上死んだも同然なわけだけれど、それでもやっぱり、人類は宇宙に旅立つものなんですかねえ。まあ、そんな時代が来るまで我々は生きてはいないけれど、なんか『銀河英雄伝説』の始まりで語られる人類の銀河への進出みたいですな。とにかく本作は映像がすごいです。宇宙船のデザインもカッコイイし、文句なしですな。そうだ、俳優と監督についてちょっとだけ。もう、主演の二人はいいよな? Jennifer Lawrence嬢は可愛いし、Chris Platt氏はまあイケメンですよ。そしてこの二人以外に、重要なキャストが二人いるのでメモしておこう。ひとりは、アンドロイド・バーテンダーを演じたMichael Sheen氏。どっかで見た顔だと思ったけれど、名前は知らなかった。わたしはどうやらいろいろな映画でこの人を観ているようだが、明確に名前と顔は一致してなかったすね。どうやら舞台で活躍している方みたいですな。演技ぶりは実にアンドロイドっぽくて、非常に良かったと思う。そしてもう一人が、第3の覚醒者として物語の後半に出てくる宇宙船のクルーを演じたLaurence Fishburne氏だ。『The Matrix』シリーズのモーフィアスでお馴染みですが、結構突然の登場でびっくりしたけど、渋かったすねえ。この映画に出てたことを、まさに画面に登場するまで全然知らなかったす。
 最後。監督について。本作を撮ったのはMorten Tydum氏というノルウェー出身の人。全然知らない人だなあ、と思ってパンフレットを読んで驚いた。この人、『The Imitation Game』(邦題:イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密)を撮った人だった。全然名前を思えてなかったよ。前作は20世紀の歴史ドラマ、今回はドSF作品と随分ふり幅が大きいすね。まあ、実に堅実かつ無難な演出だったと思います。

 というわけで、なんだかまとまらないのでもう結論。
 Jennifer Lawrence嬢とChris Platt氏という美男美女を迎えたSF作品『PASSENGERS』をさっそく観に行ったのだが、物語的には意外性もあって結構想像していたものとは違っていたものの、時間の経過を映像ではひげが伸びたりとかで表現しているのだが、やっぱり、「孤独」にかかわる重要な要素なので、若干実感としてとらえるのが難しく、微妙な点はあるとは思う。しかし、その映像と、あと音響がすごい。映像は予告でもわかると思うけれど、音がですね、相当ビリビリ響く迫力があって大変よかったと思います。そして、しつこいですが、Jennifer嬢の声は、ほんとイイすね!最高です。以上。

↓ おっと、配信も始まってるのか……くそう……観ちゃおうかな……いや、FOXに金を落としてやるのは腹立たしいのでWOWOWまで我慢だ!
ジョイ (字幕版)
ジェニファー・ローレンス
2017-02-08

 以前、ここで、わたしがいつもチェックしている映画予告編を集めたポータルサイト「Traileraddict」のことを紹介したことがあったような気がするが、2014年の初めのころ、このサイトで見たとある映画の予告編がちょっと気になっていたものの、一向に日本公開される気配がなく、完全に記憶から消滅していた映画があった。まあ、そんな風に、Traileraddictで観て、うお、なんか面白そうと思っても日本公開されない映画は山ほどあるのが現実である。
 しかし、その映画は、去年2015年の5月に、ぽつんと日本公開されるに至り、わたしも日本版予告編を見て、あれっ!? これ知ってるような……ああ、あれだ!! と思い出した。なので、さっそく観に行くか、と思ったのだがいかんせん公開スクリーン数が少なく、東京ではあっさり劇場公開が終わってしまって、まあしょうがない、WOWOWで放送されるのを期待しようと思っていたところ、去年の9月に鹿児島を旅した時に、夜予定が狂ってヒマになってしまい、じゃあ映画でも観るかと天文館に行ってみたのだが、そこでこの映画が上映されているのを発見して、おお、マジか!! と思ったものの……結局その夜は、これまた東京で見逃していた『CHILD 44』も上映していたので、結局そちらを観ることにして、結局、今日これからレビューを書く映画は見逃していたわけであります。
 はー……我ながら長い文章。こういうのを駄文と言いますね、おそらく。 
 で。その映画のタイトルは『THE SIGNAL』。邦題はそのまま『シグナル』である。先日やっとWOWOWでの放送があったので、おお、やっと来たか、とさっそく観てみたのだが、観終わって言えることは、お話的にはちょっとこれはアカン奴や、という程度のものであったものの、かなり映像のセンスは良い、と思える作品であった。

 まずは予告編を観ていただきたい。どうだろう、結構面白そうに観えませんか?
 物語は、まあほぼ、上記の予告編で語りつくされていると言っていい。ニックとジョナという二人の男子大学生。彼らはMITの学生らしく、かなりITスキルが高く、なかなか頭がいい。そんな彼らの通うMITのサーバーに、NOMADと名乗るハッカーがMITのサーバーに侵入してきて、何かと挑発的な言葉を残す事件が起こったらしい。二人は、ニックの彼女のヘイリーが西海岸に引っ越しをすることになったため、彼女の車を運転して引っ越しを手伝い、見送りながら、ついでにNOMADを追跡してみようと車を走らせる。そして西海岸へ向かう道中、あまり気が進まない彼女とともに、ここがIPアドレスの示す土地か? と思われるネバダ州のとある廃屋までやって来る。どう見ても完全に廃屋で、人が住んでいる気配はない。彼女を車に待たせて、廃屋の中を捜索する男子二人。その時、彼女の悲鳴が!? なんだなんだ!? と慌てて外に出る二人。しかしそこで二人の記憶は途切れる。――はっ!? と気づくと、ニックはなにやら謎の施設? 病院? で車椅子に座らされていた。ここは一体? ジョナは? ヘイリーは? そして、なんでオレ、車椅子? 全然足の感覚がないんだけど? とまどうニックの前に、全身防護スーツを着込んだ怪しいおっさんが現れる。そのおっさんから語られたのは、「キミは地球外生命体と接触し、感染している」という衝撃の事実だった。そしてニックの足は、既に――とまあこんなお話です。

 まあ、お話的にはいわゆる「アプダクション(=第4種接近遭遇)」モノとしてありがちだし、正直オチもイマイチなので、もはやその辺は触れないけれど、この映画の最大の見所は、その映像であろうと思う。ただ、演出が若干素人っぽいので、やや飽きてしまうのだが、シーンごとの「画」のセンスは非常に観るものがあると思った。CGの質感も極めて高い。上記予告でも、それっぽいシーンが結構あるでしょ? 大変良いと思います。
 公式Webサイトには、<『第9地区』『クロニクル』を凌ぐ、SFスリラーの傑作>なる惹句が誇らしげに掲載されているが、まあ、凌いではいないと思うな。ただし、同等(あるいはもうチョイで同等)、ぐらいのCG力はある。確かにわたしも、観ながらこのCGの質感は『第9地区』のCGに近いな、と思っていたので、まさか公式サイトで「凌ぐ」とまで謳っているとは思わなかった。非常に本物っぽい、レベルの高いCGだと思う。この監督は、演出はともかくとしても、画はセンスアリ、だと感じた。
 なので大変気になって、この監督は何者なんだ!? と調べてみた。
 監督はWilliam Eubankという1982年生まれの現在33歳の小僧らしい。うーん、知らん。英語版Wikiによると、どうやら撮影が専門のようで、まだ監督はそれほど経験がないようだ。なるほどね、「画」のこだわりはそういうことかと納得である。全然関係ないけど、日本のMIKASA(=知ってるかな? バレーボールの球を作ってことでお馴染みの会社。世界的に有名)のCMを18歳の時に撮ってるらしい。へえ~。まあ、いずれにせよ、やっぱり「画」には大変こだわりのある小僧なのだろう。ちょっと名前を覚えておくことにしたい。
 役者は、主人公ニックを演じたのがBrenton Thwaites君26歳、その友達で眼鏡のGeek青年ジョナをBeau Knapp君26歳、そしてニックの彼女ヘイリーをOlivia Cooke嬢22歳がそれぞれ演じている。が、残念ながらみな知らない若者たちだ。それぞれも調べてみると、そうやらまずBrenton君は、かの『Maleficent』で全く役に立たなくて空気だったフィリップ王子を演じていた彼だそうで、全然そんなこと忘れていたというか分からなかった。彼は、どうやら次の『Piretes of the Caribbean』にジャック・スパロウ船長に次ぐ主役級で出演するみたいですね。意外と期待の若者なのかもしれない。で、次にBeau君は、かのJJ.Abrams監督作品『SUPER 8』に出演していたらしいが、サーセン、もう、どの役だったのか、さっぱりわからないです。そして最後、ヒロインのOlivia嬢は、今までどこでも出会ってないようですな。それなりに出演しているようだが知らない作品ばかりだ。
 こんな若者ぞろいの中にあって、一人、異彩を放つ怪しい防護服のおっさんを演じたのが、Matrixシリーズのモーフィアス役でお馴染みのLaurence Fishburne氏である。最近ではBatman v Supermanにも、クラーク・ケントが勤務するデーリー・プラネットの編集長でもお馴染みですな。相変わらずの怪しさと雰囲気は大変貫禄がありました。正直いつも通りの芝居ぶりであったが、彼の芝居ぶりはこの映画の質をちょっとだけ高めることに貢献していると思う。悪くないですね。
 まあ、この作品は、予算400万ドルの低予算作品である。しかし、だ。日本で予算約4億円でここまでの映像を撮れる才能は存在しているのだろうか? この予算で、このCGの質感を日本で出せる人はいるのか? と考えると、この映画をそう簡単につまらんと切り捨てるわけにもいかないような気がします。まあ無理だろうな、日本では。物語がもう少ししっかりしていれば良かったのだが、まあ、物語としてのこの作品にキャッチコピーを付けるとしたら、「ぼくは戦う――きみを守るために。」みたいな、ラノベ中2的なものの方がいいと思いますね。そういう意味では、物語力は日本は決してUS作品に引けはとっていないと信じています。

 というわけで、結論。
 監督も役者も、全然知らない若者たちで作られた本作は、とにかく物語的にかなり物足りないというか、もう少し中2成分を増量して、ドラマチックに展開できたのではないかと思うものの、その芝居ぶりは決して悪くないし、映像的には非常にクオリティは高いと思う。悪くないじゃん、と言うのがわたしの感想であります。ただまあ、映画オタク向けで、普通の人が見たら、たぶん、ポカーン……となることだと思います。以上。

↓ MIKASAと言えば、これっすね。

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