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 Brad Pitt氏といえば、誰もが認めるスーパーイケメン野郎だ。1963年生まれの現在53歳。まあ、いつの間にか立派なおっさんだ。このところ、離婚問題でちょっと話題になっているわけだが、まあそんなプライベートはどうでもいい。実のところ、わたしはこのイケメン野郎は結構演技派だと思っている。意外と、というと大変失礼だが、この男、実に演技がしっかりしていて、わたしとしてはDiCaprio氏より断然上だと思っているので、2008年の『Benjamin Button』でオスカーを獲れなかったのが非常に残念に思っている。あの映画での演技は、わたしとしてはあの年ナンバーワンだと思ったのだが、『Milk』でのSean Penn氏にかっさらわれてしまったのが未だに惜しかったなあ、と思う次第である。
 そんなBrad Pitt氏の主演映画が、今日から公開になった。
 タイトルは、『ALLIED』。えーと、強いてカタカナで表記すると「アライド」。ありーど、じゃないす。ビジネス用語でよく使う「アライアンス」の動詞の「ally」の過去分詞であり、2次大戦の「連合国軍(=The Allied Force)」を表すのによく使われる単語だが、辞書的に訳すと「結びつけられた」という意味にもなるだろうし、そこから転じて「同類の」という形容詞でも使われる単語だ。物語はまさしく「連合国」内のお話で、フランス領モロッコのカサブランカで出会ったフランス人女性スパイと、カナダ人軍人という「同類の」二人が極秘作戦中に恋に落ちて「結び付けられ」、モロッコでの任務終了後に共にロンドンへ渡って結婚し、幸せに暮らす……のだが、実は女性はナチスドイツの二重スパイなんじゃねえかという嫌疑をかけられ、主人公たるカナダ人の軍人が 超ピンチに陥る、とまあそんなお話であった。なので、タイトルの『ALLIED』という言葉は、この映画にはいろいろな意味があると思う。
 しかし、日本語タイトルは「マリアンヌ」と若干メロドラマっぽいものになってしまったわけで、それがいいか悪いかはともかく、わたしは観終った印象として、なんとなく日本のメロドラマっぽいお話だったなと強く感じたのである。というわけで、以下、いつも通りネタバレ全開ですので、読む場合は自己責任でお願いします。

 まあ、ストーリーの概要はもうすでに書いたけれど、上記予告で示されるとおりだ。このところ、Brad Pitt氏はいつも髭ボーボーだったり無精ひげだったりロン毛だったり、若干むさ苦しいツラが多いけれど、今回はやけにすっきりキレイなイケメンぶりである。そのせいか、確かどこかのプロモーションでは「久しぶりの正統派二枚目役」的な惹句を見かけたような気もする。たしかにその通りで、今回はキャラ的に突飛だったり癖のあるような役ではなく、その見かけ通り実に正統派で、いっそわたしの愛する宝塚歌劇でミュージカル化してもいいんじゃねえかしら、とすら思ったほどだ。そして物語も実にストレートで、ホント、わたしは何故だか、妙に昭和な日本ドラマを思い起こした。そうか、そうだよ! 物語もすげえ宝塚っぽいんだ! 王道って言えばいいのかな、とにかく、年に宝塚歌劇を10本以上観るわたしには、大変おなじみな展開というか、実に宝塚的なお話だとわたしは感じたのである。時代的にも、物語は1942年から1943年にかけて、だったかな、日本で言えば明確に昭和を舞台にしているわけで、その時代設定も影響したのかもしれないな。
 主人公がカナダ人という設定も、ちょっと珍しいかもしれないが、フランス領モロッコ(のカサブランカ)への潜入ということで、フランス語を話すシーンがいっぱいあるわけで、まあそのせいもあってカナダ人という設定になったのかもしれない。本作は、原作小説があるのかな、と思ったけれど、どうやら映画オリジナル脚本のようだ。おそらくは、Brad Pitt氏主演で2次大戦モノで恋愛ドラマを作ろう、という形で企画が動き、舞台はやっぱり、往年の名作『Casablanca』と同じにして、ヒロインはフランス人に設定し、それならフランスが誇る美女、Marion Cotillardさんをキャスティングしよう、みたいな流れだったのではないかと勝手に想像する。その過程で、フランス語をしゃべるならカナダ人にしよう、みたいな。いや、サーセン。これはわたしの勝手な妄想なので、本当のところは分かりません。
  しかしですね、とにかく、ヒロインを演じたMarionさんは美しく、これまた宝塚歌劇の娘役が演じてもいいような、強くて、そして愛の深い、実に印象的なヒロインだったと思う。この方も、すでにオスカーウィナーだし、演技のほどはもう素晴らしかった。こんな女性と夫婦を演じろ、なんて任務を受けたらですね、そりゃあ、常に冷静な軍人であろうと、恋に落ちますよ。恋に落ちない男はいないと断言してもいいね。とにかく超美人だし、なんというか……微妙に切なげだし。
 なので、上官からは、そんな作戦を共にした女と結婚するなんて、どうかしてるぞ、と注意されるけど、別れるなんてそりゃあ無理っすよ。いずれにせよ、カナダ人とフランス人の恋であり、舞台はモロッコ(の都市カサブランカ)とロンドン、というわけで、ちょっと珍しい。物語は、前半はモロッコでの作戦、後半はロンドンでの生活とスパイ疑惑、と明確に分かれている。時間配分もほぼ半分ずつであった。なので、映画として前半と後半は結構トーンが違っている。
 まず前半。やっぱり、本作の監督であるRobert Zemeckis氏はCGの使い方が実に巧みで、本作でもそれは存分に発揮されていたと思う。おそらく、二人がモロッコの砂漠にいる画は、CGだと思う。けど超自然すぎて全然自信はありませんが、Zemeckis監督ならありうる。あ!パンフに書いてあるな。やっぱりスタジオセット&CGだそうだ。ついでに言うと、オープニングシーンの、主人公が砂漠にパラシュート降下して降り立つ場面も完全にCGだろう。非常に独特な、Zemeckis監督らしい画だとわたしは冒頭から、すげえ、と感じた。
 そして後半、空襲にさらされるロンドンも、セットとCGの融合だろう。とりわけ、ヒロインが空襲のさなか、愛らしい女児を出産するのだが、あのシーンは相当なCGがつめこまれていると思うな。とにかくZemeckis監督の創造するCGは、超自然すぎて毎度ながらすげえと思う。去年の『THE WALK』もホントに凄かったもんな。そういった画としてのすごさは、Zemeckis監督の場合、そのすごさを感じさせない非常に自然だという点で世界一レベルだと思う。

 というわけで、役者は美男美女だし、お話も王道だし、これは女性に非常に受ける映画なのではないかと推察する。何度でも言うが、実に宝塚っぽい。なので、男が観た場合は、若干、ケッ!っと思われる方もいるかもしれないな……。
 しかしですね、まさしく、「だが、それがいい!」のですよ。わたしは、実は結構ラストはグッと来た。そう来たか、という意外性はあまりないとは思うが、やはりBrad Pittというある意味最強イケメンと、Marion Cotillardという世界有数の美女が真正面からド真面目に王道のラブロマンスを演じられたら、もうその世界にひたるのが正しい姿であり、そこをとやかく文句を言うのは、モテないブサメンに違いないと思う。まあ、わたしもモテないブサメンですが、わたしはこの作品をちゃんと楽しめました。なにしろわたし、宝塚歌劇が大好きなんでね。これで二人が歌っちゃったら、もう最高すぎて大感動!だったかもな。いやあ、実に良かったです。

 というわけで、もう何が言いたいかわからなくなってきたし眠いので結論。
 Brad Pitt氏主演の『ALLIED』(邦題:マリアンヌ)を、初日の今日、金曜の夜だってのに一人で観てきたわけだが、お話は、美男美女の正統派ラブロマンスということで、なんとなく昭和の香りのする恋愛ドラマであった。そして、宝塚歌劇が大好きなわたしは、実にその宝塚的王道ラブロマンスに酔う2時間を過ごしたわけである。一人で。なので、女性には特におすすめしたい。エンディングはかなり悲しい結末になるが、それがまたいいわけでですよ。これは……男には難しいかもな……という気もするが、わたしとしては万人にお勧めしたいところである。ぜひ、ブサメンの皆さんは女子とともに観に行こう! わたしは大変面白かったっす。以上。

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2012-02-24

 わたしがマラソンや登山、自転車など、主に持久系のスポーツををたしなんでいることは既に周りにはおなじみだが、このBlogでも何度か書いたように、「なんで走るの?」「なんでそんなつらいことをわざわざやるの?」と聞かれることがかなり頻繁にある。そして、その度に、わたしは心の中で、実際に走ったり山に登らんアンタには一生分かるわけねえだろうな、と思いつつ、「まあ、気持ちいいからっすね」と、さわやか営業スマイルで答えるようにしている。それは紛れもなく事実だから、そう答えているのだが、まあ、相手に伝わったかどうかは定かではない。わたしとしてはどうでもいいことだ。
 おととい観た映画は、そんなわたしの99億倍以上の冒険野郎(?)の実話を描くもので、なんと911で破壊されたワールド・トレード・センター(WTC)ビルの間に渡したワイヤーを、命綱なしで渡った男の物語、『THE WALK』である。

 もう、物語の説明は不要だろう。1974年、まだいろいろ細かい工事中のWTCビルの間にワイヤーを渡し、地上400m以上の上空を、本当に「命綱なし」で渡った男の実話を映画化したお話である。男の名前は、Philippe Petit。1949年生まれの現在69歳のフランス人。計算すると、当時は、誕生日前だから24歳ということか。
 わたしも、それなりに冒険野郎だし、高いところもそれほど苦手ではない。バンジージャンプもしたことがある。が、これは無理だ。まったくレベルというか次元が違う。おそらくはビル屋上のヘリに立つことすらできない。絶対無理。映画を観終わった今でも、なんでまたコイツはこんなことしたのか、さっぱりわからない。恐らくはもちろん、わたしのように、「気持ちいいから」というのが根本にあって、究極的には同じなんだろうと思う。でも、いくら何でも無理だ。イカれてる。
 ここにおそらく、「平凡人のわたし」と「本当にすげえ奴」を隔てる、乗り越えられない壁があるんだろうと思う。この壁は、おそらくは「命」そのものだ。命をかけられるか否か、が大きく違っている。命を落とすかも、というリスクを背負えるかどうかという話になるが、そもそも問題なのは、なぜ命をかけないといけないのか、ということだ。もちろん、当人は死ぬつもりは全くない。だから、映画でも描かれていたように、入念な準備を行って挑む。しかし幼いころから挑戦するまでの生き様や、準備の様子を非常に丁寧に描いてくれている映画であっても、やっぱり、なんでまた主人公がWTC綱渡りをやろうと思ったのか、本当のところはどうしても理解はできない。劇中では、主人公や仲間たちが、WTC綱渡りのことを「クーデター」と表現している。その言葉が指し示す意味は、法に則った正式な手続きを踏まない、暴力による政変ということだと思う。そして確かに主人公と仲間たちは、違法な手段によってある意味暴力的に、綱渡りを成し遂げる。が、一体何を変えたかったのか? 常識? という奴だろうか? おそらく、それが何なのかがこの映画での一番のポイントだろう。観た人それぞれが何かを感じるはずだと思う。
 というわけで、わたしも、いまだに主人公の本当の心の内はさっぱりわからないものの、それでもやはり、大いに感じるものがある映画であったが、今回はやっぱり監督と役者、そして音楽がとても良かったと思う。
 まず、監督は、『Back to the Future』シリーズや『Forest Gump』などでおなじみの、Robert Zemeckisである。この監督は一時期、3DCG作品にご執心だったものの、2012年の『Flight』からやっと実写に戻って来てくれたのだが、今回はとにかくすごい映像である。まあすでにWTCタワーはないわけで、CGがバリバリなわけだが、その映像の質感はもう、本物そのもの。凄いよ。まったく実物にしか見えない。やっぱり、アメリカ人にとっての、WTCビルへの愛と、今はもうなくなってしまったことへの哀しみがささげられてるんでしょうな。そして、肝心の綱渡りシーンも度肝を抜かされる映像で、いくら高いところが平気なわたしでも、本当に、大げさでなく、ものすごい手汗をかいた。この映画は、絶対に3Dで観た方がいい。それもなるべくでかいスクリーンで。IMAXがやっぱり一番オススメでしょうな。とにかく怖い.ぞくぞくすること請け合いであります。ちなみにわたしは、主人公がまだフランスで、師匠のサーカステントで綱渡りの特訓をしている頃に、あと3歩で渡り切るというところで、落っこちそうになるシーンがある。その時、持っていた安定棒を落としてしまうのだが、その棒が3Dで画面から降って来て、思わず客席で、「あっぶねえ!!」と思って避けちゃいました。とにかく、手に汗かきますよ。すごく。
 そして役者陣は、やっぱり主人公を演じたJoseph Gordon-Levitt君でしょうな。どうもわたし、コイツが非常に気に入っているんですよね。恐ろしく人が好さそうで、インチキっぽさも併せ持っていて、非常に不思議な奴だと思う。『(500)Days of Summer』はやっぱり傑作だと思うし、Nolanの『INCEPTION』『The Dark Knight Rises』なんかも非常に良かった。この男が監督をした、『Don Jon』も、わたしは結構悪くないと思っている。なかなか才能あふれる野郎なので、今後も期待したいですね。多くの大物監督に気に入られてるっぽいので、一度Eastwood監督作品あたりに出てもらいたいものである。今回も、非常に良かった。特に、地上400mのワイヤー上で、師匠に一番最初に習った心意気を見せるシーンは、結構グッときました。また、フランス語なまりの英語がとてもよろしい。どうやらコイツ、フランス文学大好きで、フランス語が実際にできるらしいね。アカデミー賞に全くかすりもしなかったのが残念。
 ほか、主人公の綱渡りの師匠を名優Sir Ben Kingsleyが演じているがとても良かったし、主人公の彼女を演じたCherlotte Le Bon嬢も可愛かった。この人はわたしは初めて見た顔で、非常に特徴のある顔のお嬢さんですね。悪くなかったです。それから、主人公が「共犯者たち」と呼ぶ仲間が何人か出てくるのだが、その中では、重度の高所恐怖症なのに、猛烈にビビりながらも頑張って主人公をサポートした数学教師を演じたCesar Domboy君が印象的でしたね。まだほとんどキャリアはないようだけれど、今後またどこかで出会いたいですな。
 で、最後。この映画で、わたしがひょっとしたら一番良かったと言ってもいいのでは? と密かに思っているのが、音楽だ。メインテーマ(?)は非常に軽快なJAZZ調のアップテンポな曲で、これが非常に気持ちいい爽快感がある。音楽を担当したのは、Alan Silvestri。Zemeckis監督作品おなじみの作曲家で、もちろん『Back to the Future』の音楽も彼の仕事である。よく考えると、この計画は、我々には大変おなじみの「ルパン三世」っぽいのだ。特に、WTCに潜入して、ワイヤーを張って、という準備段階が、もう「ルパン」そのもので、曲もJAZZ調で非常に「ルパン」っぽいと思った。実際、犯罪そのもので、主人公たちは逮捕されるわけだけど、その背景に流れる曲は「ルパン」のような、あの軽快なJAZZである。そんなところが、わたしはなんだかとても気に入ったのだと思う。そしてもう一つ、綱渡りのクライマックスでかかるのは、かのBeethovenの、誰もが知っている曲である。この曲が何だったのか、知りたい人は今すぐチケットを予約してください。わたしはこの曲が流れるシーン、とても良かったと思う。ええと、今すぐ答えだけ知りたい人は、こちらをクリックして下さい。物凄くマッチしていて、キマってましたよ。

  というわけで、結論。
 『THE WALK』は、とにかく映像がすごい。そして音楽も非常に良い。また、主役のJoseph Gordon-Levitt君も良い。わたしは去年NYに旅した時、911の跡地にも行ったが、この映画のことは知っていたので、今、跡地の隣にあるONE WORLD TRADE CENTERビルを見上げて、うわーーー・・・と思ったが、 まさに狂気としか言えない主人公の行動は、おそらくは観た人に何かを感じさせると思う。それがどんなものか、ぜひ観に行っていただきたいと思います。以上。

↓一応、これが原作(?)ですな。本人による自叙伝というべきか?
マン・オン・ワイヤー
フィリップ プティ
白揚社
2009-06

↓ そしてこちらが、実際の映像や再現フィルムで構成したドキュメンタリー。2009年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞作品です。





 ※おまけ。適当にパワポで作ってみた。東京スカイツリーと比較すると、こういう事らしいです。
WTC比較

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