というわけで、10/19~10/21の金土日に台湾へ行ってきたのだが、メインイベントはわたしの愛する宝塚歌劇団の台湾公演を観ること、ではあったものの、ま、それだけじゃアレなので、台湾へ行ったらわたし的お約束の、「日本ではまだ公開が先なんだけど、早く観たいぜ!」という映画を観ることにした。
 で。本当は、US本国では10/12から公開になっている『FIRST MAN』を観るつもり満々であったのだが、残念なことに、ほぼすべてのハリウッド作品がほぼ同時公開される台湾であっても、なぜかこの『FIRST MAN』の台湾公開は10/26からだそうで、ギリ観ることが叶わず、じゃあしょうがねえ、台湾ではとっくに公開になっている『VENOM』を観るか、と思ったけれど、『VENOM』は日本でもあと2週間待てば公開になるし、何となく希少性がないような気がして、くっそう、どうすっか? と30秒ほど悩むことになった。
 というわけで台湾版Yahooの電影ページを観てみたところ、どうやら日本では12/21公開とまだちょっと先の、とある映画が既に台湾では公開されていることを発見し、よし、じゃあこれを観よう!という気になった。その映画こそ、こちらの作品であります!
starisborn
 そうです。台湾での公開タイトルは『一個巨星的誕生』。US原題を『A STAR IS BORN』、そしてなぜか日本語タイトルは『アリー/スター誕生』と微妙にダサくなっているこの作品であります。しかし台湾は、中国の簡体字と違って、日本人の我々にも読めるし意味も連想しやすい漢字(繁体字)なのでおもろいすね。全然関係ないけど、『VENOM』は台湾では『猛毒』、観たかった『FIRST MAN』は『登月先鋒』というタイトルになってました。
 で、この映画『A STAR IS BORN』に関しては、わたしの大好きなClint Eastwoodおじいちゃんが監督する、と当初話題になっていたものの、どうも主役を演じてもらおうと思っていたBeyonce氏の妊娠によって?流れてしまい、その後、紆余曲折あって、主役を天下の歌姫LADY GAGA様とロケットの声でお馴染みのイケメンBradley Cooper氏が演じることとなり、さらに、Bradley Cooper氏初監督作品として製作されるに至ったのであった。もちろん物語は、名作『スタア誕生』の3度目のリメイク……なのだが、サーセン。正直に白状すると、そのオリジナルをわたしは観てないのです。なので、名作、というのは世間的評価として使ってみました。観終わった今となっては、オリジナルも観ておくと、さらに違いなど味わい深かったかもな……と予習を怠ったことを少し後悔している。
 というわけで、以下、ネタバレ全開になる可能性が高いので、これから見ようと思っている方はここらで退場していただきたい。まずは予告だけ貼っておくか。

 さてと。物語は、上記予告からだいたい想像できる通りと言ってよさそうな気がするが、まあ、ズバリ、物語は結構ベタ、である。もちろんオリジナルと違って完全に現代の話ではあっても、物語自体には新鮮味はない。昼は真面目に働き、夜は場末のバーで歌を歌う女子、アリー。そんな彼女が歌っているところを、たまたま見かけた有名シンガー、ジャクソン。アリーの強力な歌力にほれ込んだジャクソンは、自らのコンサートツアーに招待し、ステージでデュエットする。その姿はYouTubeで拡散され、たちまち人気者となるアリー。そして二人は愛し合うに至るのだが、アリーはどんどんサクセスしていく一方で、ジャクソンの方の人気は、酒とドラッグでどんどん下方線に……てなお話である。まあ、いわゆる「格差婚」であったのに、その格差が逆転していく、というのはもうそこら中で見かける話だ。
 しかし、ありがちな話であっても、そして先が読めるお話であっても、はっきり言ってわたしはかなりグッと来た。この映画は相当イイ! そのポイントは2つあって、一つは、GAGA様の圧倒的なパフォーマンス、そしてもう一つは、Cooper氏の素晴らしい演技と、意外と見事な監督・演出ぶり、である。
 その1)GAGA様はやっぱりすごい!
 まず第一に、演技がすごくイイじゃないですか! 完全に女優ですよ。ノーメイクで、完全にオーラを消した、フツーの女子、である姿がまず、えっ、と思うし、見出されてからどんどんと髪の色やメイクが洗練されて、まさしく「スター」のオーラをまとっていく過程がまたお見事としか言いようがないですな。もちろん歌唱シーンは最初から最後まで超パワフルで、完璧ですよ。これはアカデミー賞は取れるか分からないけど、ノミネートはカタイと思うすね。ラストの歌もグッときましたなあ! ほぼ全編GAGA様&Cooper氏の描き下ろしの歌だそうで、その歌詞の内容もしみるんすよ……これはCDを買うべきかもしれないす!
 ただ、これも正直に告白すると、わたしの英語力では、一つだけわからなかったところがあって、劇中でのお父さんとの関係性が、実はわたし、理解できなかったのです……情けなし……。これは日本公開されたらもう一度字幕版を観に行って確認したいですな。アリーとお父さんは、かなり仲のいい関係性なんだけど(?)、お父さんって、ありゃ何してる人だったんだ?? 競馬のノミ屋か? 堅気なのかアレ? アリーが歌うことに前向きで、自慢の愛娘、的な感じだったけど、アリーの家族(と、家にいるお父さんの友達?たち)の関係性が理解できなかったのが残念す。わたしの英語力ではどうしてもわからんかったわ……。いずれにしても、そもそもGAGA様って、上流家庭のお嬢様育ちなわけで、そんな点も、なんか大切に育てられた娘、というキャラクター像は共通していたと思う。GAGA様は、その奇抜なファッションとか見かけで強烈なインパクトのあるお方だけど、来日した時の態度とかを見たりすると、実のところ、この人って、すごいイイ子なんだな、とわたしは思っていたので、なんというか今回のアリーのみせる、「性根の曲がってない、真面目で真っ直ぐな人間」というイメージはとてもGAGA様らしいとわたしには感じられた。要するに、GAGA様は最高でした! そして全くどうでもいいですが、GAGA様は台湾では「女神卡卡」と表記するんすね。読み方がさっぱり分からんわ。★2018/12/23追記:日本語版を観ました。お父さんはリムジンの運転手ってことだったんだな。やっとわかったす。
 その2)Bradley Cooper監督デビュー作
 監督としてではなく、最初に役者としてのBradley氏について書いておこう。まず演じたジャクソンというキャラクターは、人気シンガーということで、まあセレブなわけだが、酒浸りであり、ドラッグもやってると。そして冒頭、一つのコンサートが終わって、ホテルに戻る途中で「酒が切れた」といって寄ったバーでアリーと運命の出会いをするわけだが、冒頭から、ジャクソンはどうも耳が難聴になりつつあるという描写があって、まあそのせいで若干もう歌うことに疲れていて、酒がないと歌えん、という心に孤独を抱えていた状況だ(※わたしの英語力では正確には分からんかった。難聴は酒とドラッグの影響か? ★2018/12/23追記:ジャクソンの耳は先天的?なもので、悪化の一途にあるという状況でした)。
 そしてジャクソンはアリーと出会ったことで、再び歌へのモチベーションも上がり、アリーを愛する幸せを手にするのだが、兄との確執で大喧嘩してしまったり、アリーの人気がどんどん高まっていく中で愛するアリーとも喧嘩してしまったり、孤独感が再ジャクソンの心に住み着いてしまう。そしてついに、アリーがグラミー賞を受賞した時に、とんでもない大失態をやらかしてしまう。しかし、そんなことがあっても、アリーはジャクソンを許すし、兄との和解も果たしたジャクソンも、ちゃんとリハビリに励むのだが……ラストはどうなるか、これは書けませんので、ぜひ劇場で見届けていただきたいと思う。
 こんなキャラクターを演じたBradley氏に関して、わたしが称賛したい点は3つあって、まず、この人、歌が超超超うまい!! すごいカッコイイ!! この見事な歌いぶりには結構驚いたよ。イケメンは何をやっても様になりますなあ! そして2番目は、まるでかのウルトラ大傑作、『AMERICAN SNIPER』の時のような、演技自体が素晴らしい! Bradley氏は、泣きの演技が相当うまいというか、なんか、見ているこっちまでホントに一緒に悲しくなってきちゃうんすよね……やっぱりイケメンだからなのか? 当たり前かもしれないけど、演技の質としてはGAGA様より上っすね。間違いない名演でした。
 そして3番目が演出だ。初監督とは思えない堂々としたものですよ。わたしは好みとして、手持ちカメラで揺れる映像は好きではないのだが、冒頭、そういう手持ちカメラの絵があって、これはどうだろう……とか思ったのに、もう途中から全く気にならなかったすね。そしてお見事な演出として端的なのは、ラストカットですよ。あのラストの見せ方というか演出?は、やっぱりEastwoodおじいちゃんの影響が入ってるように感じたす。わたしは、今回のラストカットに相当心震えたし(GAGA様の最後の表情にグッと来た!)、同時に、Eastwoodおじいちゃんの『WHITE HUNTER, BLACK HEART』という作品を思い浮かべたのであります。あのエンディングにちょっとだけ似ているような気がしますね。わたしは現役の映画監督でEastwoodおじいちゃんはナンバーワンの一人だと思っており、その後継者になるのはひそかにBen Affleck氏なのではないかとにらんでいるのだが、これはひょっとすると、Bradley Cooper氏も今後は監督として大成する可能性はあるんじゃないかしら。Kevin Costner氏も30年前は素晴らしかったのに、全然撮らなくなっちゃったのは残念す。
 最後に、GAGA様とBradley氏以外に、一人だけメモしておきたい役者が出演していたので、その方について書いて終わりにしよう。実は、観ている時、全く気が付かず、エンドクレジットを観ていて、えっ!? うそ! マジかよ!? と驚いたのだが、なんと、アリーのお父さんを演じていたのは、Andrew Dice Clay氏だったのです! Clay氏は日本じゃまったく知られてないだろうから、説明してもわからんだろうな……わたしは、彼が主演した『The Adventure of Ford Fairlane』という作品が超大好きなのです。この映画は、見事ラジー賞「最低映画賞」を受賞し、Clay氏もその年のラジー賞「最低主演男優賞」を受賞してしまったおバカ映画なんだけど、いやいやいや、あの映画はですね、脚本がもの凄くしっかりしていて、伏線が見事に張り巡らされた超傑作なのに、ラジー賞「最低脚本賞」も獲ってしまったのは、ホントにもう、わたしとしては観る目がねえなあ! と憤死寸前に至った思い出がある作品なのです。しかしあのフォードフェアレーンが、いまや白髪のおじちゃんとは……あ、なんだ、Clay氏はまだ61歳か。最高にCOOLなロックンロール探偵のイメージしかなかったので、ホント、クレジット観るまで全く気が付かなかったす。日本でまた字幕版を観る時は超注目しよっと!

 というわけで、もう書いておきたいことがなくなったので結論。

 台湾は、大抵のハリウッド映画がほぼUS公開と同時、という映画オタとしては大変うらやましいところなわけで、わたしは台湾に行くと必ず「日本では公開がまだ先だけど、もう早く観たくて堪らん!」という映画を観るのを楽しみにしているわけだが、今回の台湾旅行では、日本では2か月後の12月に公開になる『A STAR IS BORN』を観ることとした。そして観終わった今言えることは、この映画はとても素晴らしく、とりわけ、GAGA様の役者としてのポテンシャルの高さと、Bradley Cooper氏の歌唱力の高さ、そして監督としての腕の見事さについて、わたしは最大級の賛辞を贈りたいと思う。もちろん、GAGA様の圧倒的な歌唱力とBradley氏の演技の素晴らしさは、もはやお馴染みであり、その点もこの映画ではいかんなく発揮されていると思う。いやあ、GAGA様って、ホントにイイ子なんでしょうな、きっと。やっぱり、育ちの良さって、明確に現れてるような気がしますね。そしてBradley氏の泣き顔は、ホント、つられて悲しくなっちゃいますな。お見事です。これは今年観た映画TOP10に余裕で入るっすね。何位になるかはまた年末考えます。以上。

↓ わたしとしては、このウルトラ大傑作でBradley氏がオスカーを逃したのはいまだに残念に思うす。完璧だったのになあ。今回の作品で、Bradley氏はオスカー獲れるだろうか……ノミネートは堅いように思うっす。
アメリカン・スナイパー(字幕版)
ブラッドリー・クーパー
2015-06-10