昨日は会社帰りに映画を観てきた。どこで観ようかな、と少し悩んだのだが、時間的に一番都合がいい、という理由で、新装OPENしたばかりの日比谷TOHOシネマズへ行ってみることにした。宝塚歌劇を愛するわたしとしては大変お馴染みの場所だし、そもそも80年代から映画オタク小僧として、当時その地に存在した有楽座や日比谷映画などへチャリンコで映画を観に行っていたわたしには、もう行き慣れた場所である。ま、わたしの会社から地下鉄で10分と近いし。
 しかし、わたしはもう、そのあまりの人込みと混雑に、日比谷を選んだことを深く後悔した。なにしろ、あのシャンテ前広場(というのかな?)に着いて、まず建物である日比谷ミッドタウンに入場するのだけで長ーい列だし、さらに、TOHOシネマズは4階にあるのだが、4階へどうやって行けばいいのか、一瞬ではよくわからない。エレベーターはいつまでたっても来やしない、頭にきてエスカレーターへ行こうとすると、これまたおっそろしく長蛇の列。おい、これ、間に合わねえかも? と若干焦りつつ、スットロイ歩みの人々にイラつきつつ、エスカレーターに乗り、イライライライラ……としながら3階へ。しかし3階から4階への導線も明確な案内がなく、いや、あるんだけど人込みでよく見えず、あ、こっちか!と気づいて4階へ。大げさではなく、わたしが有楽町についてチケットを発券するまでに30分ぐらいかかった。まあ、こりゃあ、当分の間は日比谷TOHOで映画を観ようと思うのはやめておいた方が良さそうですな。もう、なんでそんなに写真撮りたいわけ? ボサッと突っ立って撮影している人が異常に多くて、ホント勘弁してもらいたい。つうか、外から直接映画館に行けるか、専用のエレベーターとかエスカレーターがあるのかと思ってたわたしがアホだった。
 ともあれ。なんとか上映開始直前に無事到着し、ヤレヤレ、という気持ちでわたしが昨日見た映画、それは数カ月前に原作小説を読んだ『RED SPARROW』である。あ、数カ月じゃすまないか。読んだのは去年の6月だからだいぶ前だな……その時の記事はこちらです。
 で。のっけから結論を言うと、相当原作小説とは違っていて、かなり縮小圧縮されているのは間違いない。しかし、その縮小圧縮はなかなか上手で、テイストを生かしつつ、また物語としてきちんとまとまっていて、映画だけでも十分話は理解できるものとなっていた。のだが、やっぱり物語はヒロイン・ドミニカにフォーカスされ過ぎていて、事件そのもののカギであるロシア人スパイに関してはごく薄くしか描かれておらず、ちょっとクライマックスからエンディングへの流れはかなり駆け足展開であり、その点はもったいないな、とは思った。原作ではそのロシア人スパイのおじいちゃんの行動が一番グッとくるだけに、わたしとしては残念であった。
 というわけで、以下、ネタバレに一切配慮せずに書きなぐると思うので、まだ見ていない人は以下は読まない方がいいと思います。

 というわけで、相変わらずFOXの予告はイマイチなセンスだが、どうだろうな……この予告から想像できる物語とはちょっと違うような気がする。物語に関しては、原作小説を読んだ時に書いたので、ごく簡単にまとめるに留めるが、要するにこんなお話である。
 ボリショイバレエ団で主役を務めるバレリーナ、ドミニカは、その美貌と実力で嫉妬を買い、故意に足を踏んずけられるという事故で将来を棒に振ってしまい、あまつさえ病身の母の看護は打ち切られ、さらにアパートを追い出されそうになる。しかし、その美貌は叔父であるロシアSVR高官の目に留まり、ハニートラップ要員として協力を迫られる。要するに、母のために、お国のために、協力しろ、という脅迫めいた勧誘だ。やむなくドミニカはその汚れた仕事を引き受けるが、ドミニカは誘惑してスマホを入れ替えろ、という指示で動いていたのに、その誘惑した男はドミニカの目の前で、ズバリ言うとセックス中に暗殺者に殺される。その殺人も当然叔父の仕業なわけで、殺人を目撃したドミニカは、死ぬか、今後もスパイとなるかの2択を突き付けられ、かくしてドミニカはスパロー・スクールと呼ばれる養成学校へ放り込まれ、そこでは超おっかない監督官のおばちゃんに目を付けられつつも、人間の尊厳を無視したような過酷な試練も乗り越え、次に、アメリカCIAの男を誘惑し、アメリカに情報提供しているロシア高官の名前を調べ上げろという任務に投入されるのであったーーてなお話である。
 何度も書くが、わたしは原作小説を読んでいるので大体は原作通り……ではあるのだが、結構重要なポイントはカットされていて、かなり映画は速いテンポで話が進んでいく。
 わたしは原作を読んだ時に、すでにJennifer Lawrenceちゃん主演でで映画化されることを知っていたのだが、わたしはJenniferちゃんが大好きだし、とてもかわいいと思うけれど、ドミニカ役はどうなんだろう? と大変失礼なことを考えていた。というのも、Jenniferちゃんはご存知の通り、かなりグラマラス&むっちりBODYなので、バレリーナとしてどうなの? とか思っていたのである。おまけに、まあ、ロシア人には見えないわな。
 しかし! これは本当に驚いたのだが、冒頭しかJenniferちゃんのバレリーナ姿は見られないけれど、実に素晴らしいバレエダンサーぶりで、性格の悪いわたしは、これって……CGで顔を合成しているのか? と勘ぐってしまうほど見事なバレエシーンであった。冒頭ダンスシーンは実に素晴らしく、これは相当特訓したのではなかろうか。はっきり言って、わたし的にこの映画の最大の見どころは、冒頭のバレエシーンであったようにさえ思う。あ、そうなんだ、Triviaによると、1日3時間の特訓を4週間、特訓したようですな。いやあ、ホントお見事なバレエダンサーぶりでした。
 あと、これは全くどうでもいいことだが、本作ではJenniferちゃんはかなりいい脱ぎっぷりで、それも全然想像していなかったので結構驚いた。近年、女優のヌードはめっきり減っているけれど、この映画はガッツリ脱いでますな。栄光のオスカー女優たるJenniferちゃんの気合は相当なものですよ。お見事でした。ついでに言っとくと、本作はボカシなど一切なく(だったと思う)、どうでもいい男優のナニがボロンと画面に映るのも驚いたすね。そういう時代なんだなあ。
 というわけで、以下、キャラ紹介しつつ思ったことをまとめて終わりにしよう。
 ◆ドミニカ・エゴロワ:本作のヒロイン。もう散々上に書いた通り、元バレエダンサー。父の弟、つまり叔父がロシアSVR高官のワーニャ・エゴロフで、幼いころから変態的視線でドミニカは見られていたそうな。小説版では「他人の感情が色で視える」という特殊能力があったのだが、本作では叔父とともに人間心理を見抜く才能、みたいなものに格下げされて説明されていた。なお、映画版では冒頭の足を踏んずけられるシーンがやけにリアルな描写で、観ていて、超痛そう!でありました。拷問シーンも、非常に痛そうだし、辛い役でしたね……。また、小説版では比較的CIAの若者ネイトに本気LOVEのような展開だけれど、映画版は、結局ネイトをも利用するかなりクールな女子だったってことなのかな……若干キャラ変しているように思う。いずれにせよ、演じたJenniferちゃんはかなりの熱演であったと思う。なんだか最近は若干お騒がせ女優的扱いをされることが多いような気がするけど、やっぱりJenniferちゃんはオスカー女優であり、実に演技派ですよ。
 ◆ネイト・ナッシュ:CIA諜報員。かなり小説版とキャラ変している。小説版は、非常に若々しいゆとり小僧のようなキャラなのだが、思うに、日本語翻訳の味付けがそうだったのではないかと思う。会話のセリフとか行動がガキ臭かったりした印象なのだが、映画版ではなんか小汚いおっさんでした。そしてネイトも、小説版ではドミニカに本気LOVEだったのに、映画版はもっとドライな感じの印象。はっきり言って、かなり、じゃすまない。全然キャラクターが変わっていたと思う。演じたのは、『STAR WARS』のEP:2~3で、若きオーウェン・ラーズ(ルークを引き取るアナキンの義兄弟)を演じたJoel Edgerton氏43歳。残念ながらわたしの審美眼では全くイケメンではない。作中でドミニカは、あのCIAのハンサム野郎に惚れたのか?的な質問をされて、「はあ?」という顔をするシーンがあるのだが、わたしも、はあ? ハンサム? 誰が? と思いました。映画版のネイトは職務に忠実な出来る男として一匹狼的に行動するが、小説版では重要なキャラであるネイトの左遷先のヘルシンキ支部の支部長フォーサイスとその部下ゲーブルは一切登場せず。つうか、左遷自体ナシ。なんとフォーサイスは、US国内のネイトの上司?の女性として登場。まあ、時間的制約からすれば仕方ないかな……。でもその影響でだいぶ映画版は薄味になっちゃっていたように思う。
 ◆ワーニャ・エゴロフ:SVR高官でドミニカの叔父。演じたのはMatthias Schoenaertsさん40歳。原作では完全におっさんだと思ってたのに映画版では驚異の若返り。どう見ても、いや実際の年齢でも、ネイトを演じたJoel氏より若いじゃん。あ、Mattihiasさんはベルギー人なんすね? 完全にロシア人のように見えたすね。つうか、プーチン大帝をイケメンにして若くしたような感じのハンサムガイでした。かなり多くの映画に出ているようだけれどわたしは全然知らない方でした。なかなかのイケメンなので、今後ハリウッドで活躍できるのではなかろうか。
 ◆コルチノイ:ロシアSVR高官で、実はアメリカに情報を流している「モグラ」。彼の行動が原作の下巻では一番のメインなのに、大幅にカットされて縮小されていた。しかし、彼のエピソードが本作の一番面白い部分なのに、実にもったいない……。かなり冒頭から登場シーンがあって、わたしは結末を知っているからどういう伏線を織り込むのだろうと思いながら見ていたのだが、どうもそういったヒントは全く提示されず、ラスト近くでいきなりの秘密の暴露になだれ込むので、映画版だけだと、ラスト20分はホントに理解できるのか、心配なレベル。小説版では大変泣けるエピソードです。なお、小説版ではかなりおじいちゃんのイメージだが、映画版で演じたのはオスカー俳優Jeremy Irons氏69歳。実にカッコイイ。最近では、バットマンの忠実な執事アルフレッド役でもお馴染みですな。
 ◆ステファニー・ブーシェ:US上院議員補佐官。ロシアにUS国家機密(防衛情報)を垂れ流す女。彼女も小説版からはかなり変わっている。小説だと上院議員そのものだったんじゃなかったっけ。そして彼女はUS国内で情報漏洩するので、FBIも絡んできて大変な事態になるのだが、その辺は大幅にカット。そういえば、ネイトが左遷後、US国内勤務になった時の上司も出てこなかったな。その上司とコルチノイの関係が泣けるのに……。演じたのは、Mary-Louise Parkerさん53歳。53歳!?もっと若く見えるすね。40代かと思ってた。
 とまあ、主なキャラは以上です。監督は、Jenniferちゃんの出世作『THE HUNGER GAMES』の2以降を撮ったFrancis Lawrence氏47歳なのだが、まあ、なんつうか、ここがすごい的な部分はあまり思い当たらないす。それより、本作は結構音楽が印象的だったすね。音楽を担当したのは、数々の作品を手掛けるJames Newton Howard氏。ああそうか、彼もまた『THE HUNGER GAMES』の音楽を担当してたんだな。冒頭のバレエに流れる白鳥の湖も印象的だし、エンドクレジットに流れる曲も良かったすね。それから、エンドクレジットの結構最初の方に、日本人と思われる名前が2つあって、IMDBによるとかなり多くの作品にかかわってこられた方みたいですな。一人目がUnit Production ManagerとしてMika Saitoさん、もう一人がSecond UnitのSecond Assistant DirectorとしてTakahide Kawakamiさんという方の名前がわたしの記憶に残った。先日のアカデミー賞では辻さんが特殊メイク賞を受賞したけど、こういうハリウッドで活躍する日本人は大いに応援したくなりますな。

 というわけで、なんかまとまらないのでさっさと結論。
 昨日の夜、会社帰りに新装OPENしたばかりの日比谷TOHOシネマズにて、約10カ月前に原作小説を読んだ作品『RED SPARROW』を観てきた。まあ、原作小説を大幅に縮小圧縮したもので、ちょっと薄味であるのは間違いないのだが、意外と破綻なく話はまとまっていて、実は結構上手な映像化だったんじゃないかという気もする。ただし、わたし的に一番面白いと思っていたエピソードが大幅に縮小されていたのは残念。しかしそれよりも、小説を読んだ時はJenniferちゃんにバレリーナはどうなんだ、とか思ってたのに、非常に美しいダンスシーンを見せてくれて、実にお見事なバレリーナぶりであったと思う。そしてヌードも辞さない女優魂はお見事でした。やっぱり、Jennifer Lawrenceという女優は演技派ですよ。オスカー女優の看板は伊達じゃないね、と思いました。以上。

↓ まあ、実際のところ、小説の方が面白いと思います。確かシリーズ化されるんじゃなかったっけ? なお、作者については小説版を読んだ時の記事を参照してください。元CIAの本物が描いた作品です。
レッド・スパロー(上)
ジェイソン・マシューズ
早川書房
2013-10-29

レッド・スパロー(上)
ジェイソン・マシューズ
早川書房
2013-10-29

 ↓そうそう、こちらが続編だ。日本語化希望! 読みたい!