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 現代の世において、「宗教」というものについて真面目に考えるのは、それなりに意義深いことだとわたしは思うが、残念ながら情報の溢れるこの現代では、ほとんどの人が「宗教」というものにほぼ無関心であろうと思う。形骸化した宗教の残滓にかかわるぐらいしか、現代のわれわれは体験したことがないのが普通だろう。
 それはいい悪いの問題ではなく、単純に現代人には「宗教」にまつわる行為や思考に費やす時間がないのだから、まあ、実際のところ仕方がないと言えるのではなかろうか。かく言うわたしも、それほど深い信仰は持ち合わせていないし、おそらく平均的な日本人と比較すれば、ちょっとだけ深い、ぐらいの程度なので偉そうなことは全く言う資格はなかろうと思う。
 というわけで、今日観てきた映画は、江戸初期に日本へやってきた宣教師の目を通して、キリスト教における「神の沈黙」について、真正面から 取り上げた作品『沈黙―サイレンス―』である。原作は、狐狸庵先生でおなじみの遠藤周作氏。そして監督は、偉大なる名匠とうたわれるMartin Scorsese氏。わたしはこの作品を日本人監督では撮れなかったことがなんとも残念に思う。映画として、わたしは久しぶりに完璧だと感じたスーパー大傑作であった。

 はっきり言って上記予告はかなり出来が悪い。余計なナレーションが入っていたり、映像の編集も時系列が乱れている。ので、あまり参考にならないかもしれないことは一応一言言っておこう。以下、いつも通りネタバレ満載ですので、読む場合は自己責任でお願いします。
 さて。キリスト教における「神の沈黙」。それをごく簡単に普通にわかりやすく言うと、「どうして神様は助けてくれないの? なぜ黙っているの?」ということに尽きるのだろうと思う。本作で舞台となるのは、江戸初期のキリスト教が禁止されていた時代で、禁止どころか時には死罪にもあたるほど、激しい弾圧が加えられていた時代だ。まさしく島原の乱が起こって鎮圧され、鎖国が始まったころの話である。本作は、そんな時代に日本にやってきた宣教師が、日本人なら誰しも習う、「踏み絵」を踏めるかどうかの話だ。踏めば、自由の身、そして信者たちもおとがめなしで解放される。しかし断るならば、信者を殺す。そう突き付けられたときに、宣教師は「踏める」のかどうか。そしてそんなウルトラ大ピンチに、神はどうして何も言ってくれないのか。信者の命を見捨てることで保たれる信仰とは何なんだ、というのが本作のポイントであろう。
 おそらく、わたしを含め、キリスト教信者でない現代の日本人から見ると、もうさっさと踏んじゃえばいいじゃん、それでも心の中ではバーカって言ってりゃ済むじゃん。死んじゃあどうしようもないでしょ、と思うのではないかと思う。実際、登場する日本の武士階級の役人たちも、形式的でいいし、軽く、ちょっと踏むだけでいい、だから頼むから踏んでくれ、オレたちはお前が憎いんじゃないしお前たちを傷つけたくはないんだ、と頼み込む。それは、武士たちにとっては完全に法であり、政策であり、行政ルールだからだ。ごみは分別して出してくれ、と同じぐらいのレベルの話であろう。そして主人公たるロドリゴは、悩みに悩みまくる。
 おそらくこの状況は、登場する日本人武士の方が現代的であり、ロドリゴの方がプリミティヴというか原始的な思考だと言えそうな気がする。どうしてもわたしには、ロドリゴの苦悩が、本質的によく分からない。というのも、わたしは信仰とは心の持ちようであり、生きてこそ、だと思っているので、いかに心の中で、相手に対してクソ野郎だと持っていても、殺すと言われればその靴を余裕で舐めるにやぶさかでないからだ。そこに、神様助けて、と思うような感情は間違いなく発生しないし、クソ野郎の靴を舐める行為が神罰に値するとも思わないし、クソ野郎の靴を舐めたからと言って傷つくプライドも信仰心もないからだ。
 だからもし、ロドリゴが最後まで「踏まず」に、信者を見殺しにして「殉教者」として自らの死を願ったとしたら、わたしの目にはロドリゴは現代のイカれた狂信テロリストと全く同じに見えただろう。だが、ロドリゴは、ある種の決意をもって、「踏んだ」。そして信者を救うことを選んだ。この葛藤は、絶望によるものなのか、神との決別なのか、生への執着なのか、これは観た人それぞれの判断に任せられるポイントだろう。いずれにしても、神は沈黙したままである。神がおわすならば、だが。
 しかし、本作では、どうもやはり、当時のいわゆる隠れ切支丹のキリスト教信者たちも、若干の原始的な信じ方をしているようで、祈れば救われる、天国、パライソへ行けると本気で信じている節がある。そういう意味では来世を信じる仏教的な思想(と言っていいのかな?)とまじりあっているような気がするが、おそらくそれは、キリスト教を侵略の手段として利用しようとしていたヨーロッパの思惑も影響しているのだろう。その点は現代テロリストたちと意外と共通しているのではなかろうか。その意図に気づいたからこそ日本ではキリスト教が禁止されたともいえるわけで、そこに気が付いていないロドリゴたち宣教師は一番の被害者だったのかもしれない。とりわけ信長あたりは、宗教と政治の対立には痛い目に遭ってきた経験もあるわけで、そのカウンターとしてキリスト教を利用しようとした信長と、逆に脅威とみなして禁止した家康と、キリスト教にとっては対照的だが、実際やっていることは同じだったのではなかろうかとも思う。当時の宗教と政治は、日本だけでなく世界中で切り離せないものであったのはきっと確かだろう。それは現代でも、狂信テロリストを生み出す土壌でもあるし、ある意味宗教は道具として使われてしまっている面があるのは間違いなかろう。要するに人心掌握の手段というわけだ。
 そして、本作で一番理解するのが難しいのが、ロドリゴの葛藤よりもキチジローの行動の方だ。キチジローは、家族の前で「踏み」、村の信者の前でも「踏み」、おまけに金のためにロドリゴの居場所を密告したりもする。そしてその度にロドリゴに告解し、許しを求める。こうして書くと、とんでもない裏切り者の、まさしくユダ的人物のように聞こえるかもしれないが、どうしてもわたしには、その時のキチジローの脳裏には、おそらく全く何の悪意もないように見える。死にたくないから「踏む」。金が欲しいから密告する。だけどそんな自分に猛烈に心が痛む。だから助けて司祭様、という、実際のところ心に素直に従っているだけ、の純粋な野郎と言ってもよさそうである。そしてその、言ってみれば「生への純粋さ」のようなものに、ロドリゴは苦しめられる。コイツ、何なんだよ、と、ロドリゴには若干不信もあっただろうし。しかし、キチジローのそういったある意味ボン・ソバージュ的なところは、聖職者であるロドリゴにとっては、どうしても切り捨てることができなかったのだろう。なぜなら、人間誰だってキチジローなる部分を持っているからだ。わたしはキチジローに対して、とんでもねえ野郎だ、とか、そりゃそうなるよなあ、とか、頭に来たり共感したりと色々な感情をもって観ていたのだが、それを苦しみながらも抱え込もうとするロドリゴの姿には、これが聖職者というものであり、また、キリスト教的(というより正確にはカトリック的か?)な許し、なんだろうなあ、と思うに至った。最終的に、ロドリゴは棄教し、江戸で生涯を終えるわけだが、その死までに何度も私は棄教しました、的なことを書類で提出させられたんだそうだ。しかし、ラストで描かれたように、ロドリゴの心には常に神があったわけで、周りからは「転んだ」卑怯者的な扱いを受けても生き抜いたその姿は、やっぱり立派というか、わたしの胸にはとても響くものがあったのである。
 というわけで、そのロドリゴを熱演したAndrew Garfield君は大変素晴らしかったと思う。わたしにとって彼は、SPIDER-MANをぶち壊した野郎ではあるものの、彼に非は全くなく、監督と脚本がダメだっただけで、実際のところ彼は何気に演技派だし、今回の演技は本当に素晴らしかったとほめたたえたい。USではとっくに公開されているけど日本ではこれから公開される『Hacksaw Ridge』も期待してます。
 また、同僚司祭として一緒に日本にやってきたガルペを演じたのが、宇宙一の親不孝者カイロ・レンでお馴染みのAdam Driver君。いつもの汚い長髪&髭面と、相変わらずひょろ長い手足で不気味な男ですが、今回はAndrew君とともに、やはり素晴らしい芝居ぶりでありました。まあ、後半は出番がないのでアレですが、殉教シーンはグッと来たね。STAR WARS次回作ではさっさと善に戻ることを期待します。
 次。二人の司祭の師匠であり、日本で消息を絶った先輩司祭を演じたのが、我らが戦うお父さんことLiam Neeson氏。この人はやっぱり師匠的な役が似合いますね。終盤登場してロドリゴと再会するシーンの問答は静かなシーンなのにすごい熱量でした。あそこも見どころの一つでしょうな。 
 そして日本人キャストも非常に素晴らしかった。キチジローを演じた 窪塚洋介氏、通詞を演じた浅野忠信氏ともに非常な熱演だったし、とりわけわたしは井上筑後守を演じたイッセー尾形氏の芝居が非常に印象に残った。どうやら、原作においては、通詞も井上筑後守も、もとは切支丹で棄教した男、という設定らしいですね。その設定は映画では触れられずであったけれど、そこも描いたらもっと深く感動があったのではないかと言う気がします。それから、可哀想な運命をたどる信者の女子を演じた小松菜奈嬢も大変可憐でしたなあ。芝居ぶりも大変素晴らしく、失礼ながらちょっと驚きました。
 あと、どうでもいいことだけれど、とにかく、役者の着る服、汚れたメイクなど、映像の質感もさすがのハリウッドクオリティで、まあ、ほぼ台湾ロケだったそうなので、風景や村の様子などは若干日本ぽくはないような気もするけれど、 日本映画ではこうはいかなかっただろうなと思う。予算規模も全然違うだろうしね。
 ところで、最後に語られる、「この国にはキリスト教は根付かない」。なぜならこの国は沼地だからだ、という話はどうなんだろう。あれは、要するにまだ日本は戦国を経て江戸幕府という政治形態が生まれたばかりであり、ぐちゃぐちゃだということを意味しているのか、それとも、日本という国の精神性・文化的歴史を沼地と例えたということなのか。このことについては、わたしはまだ理解は出来ていない。この解釈は難しいなあ……わからん……泥の沼……うーん……これを理解するには、原作小説を読むべきかもしれないな……。

 というわけで、キレが悪いですがもう長いので結論。
 Martin Scorsese監督による、遠藤周作先生原作の『沈黙―サイレンス―』は非常なる傑作だと思う。脚本・撮影・演技ともに素晴らしく、パーフェクトとわたしとしては激賞したい。まあ、なんでも神に頼っても、神は 沈黙でしか答えてくれないわけで、やはり自分自身の心のありようが信仰の最も核になるのだろうと思う。なんでも神任せにしたら、イカれた狂信テロリストと同じだもんね。そしてなんといっても、生きてこそ、なんでしょうな。そして、信仰の自由が一応認められている現代は、やっぱり少しは人類は進化したと言っていいのかもしれないすね。なんかどうもキレが悪いけど、以上。

↓ マジで読むしかないような気がします。
沈黙 (新潮文庫)
遠藤 周作
新潮社
1981-10-19
 

 つい先日、闘うパパでお馴染みのLiam Neeson氏主演映画『RUN ALL NIGHT』をWOWOWで観て、ここでもレビューを書いたが、先週もう1本、同じようなLiam Neeson映画がWOWOWで放送されていたので、彼の映画が大好きなわたしとしては当然録画し、観てみたわけである。そして結論としては、今回はパパではなかったけれど、実に渋い探偵モノのハードボイルドで、わたし的には大変楽しめたのであった。その映画のタイトルは、『A Walk Among the Tombstones』。直訳すると「墓石の間の散歩する」、ってことだが、日本での公開タイトルは『誘拐の掟』という作品である。 

 物語の大筋は、上記予告の通りである。ただし、時系列が相当ぐちゃぐちゃに編集されており、この映画の良さは一切伝わらない予告なので要注意だ。わたしはまったく予備知識なく観たわけだが、観終わって、これひょっとして……? と思い、調べてみたところ、やはり、明確に原作小説の存在するハードボイルドであった。著者はLawrence Blockという大ベテラン作家。わたしは読んだことがない作家だが、なんと80年代にわたしが観てかなり好きだった映画『800万の死にざま(Eight Million Ways to Die)』の原作者で、さらに言うと、なんと、同じ主人公の「マット・スカダー」シリーズであったのだ。これは全然知らなかった。1986年公開の『800万の死にざま』において、Jeff Bridges氏が演じたキャラクター、マシューが、今回Liam Neeson氏が演じた主人公マットその人だったわけで、わたしとしては、マジか!? と大変驚いた。というわけで、今回の原作となったのはこの作品らしい。

 ほえ~、そうだったんだ、とわたしは30年前に観た『800万の死にざま』という映画を懐かしく思い出したが、今回の『誘拐の掟』を観終わって、これってひょっとして……? と思ったのは、なんというか……妙に文学的な匂いのする映画なのだ。なので、これは原作があるんじゃねえかしら、と思ったのだが、とりわけ主人公マットの雰囲気がイイ。また、予告に一切現れない、ホームレスの少年も非常にキャラが立っていて、過去を持つ男と、彼にあこがれる少年のやり取りは大変好ましく、ハードボイルド小説の香りがぷんぷんしてくる物語であった。
 主人公、マット・スカダーは元警官。1991年にとある事件が起こり、警察をやめ、1999年の現在は、免許登録をしていないいわばもぐりの私立探偵として生きている。そんな彼が、アル中克服プログラムで出会った男から、弟に会って欲しいと依頼され、しぶしぶ会いに行くと、その弟は、妻を誘拐した犯人を捜して欲しいとマットに依頼する。そんなのはFBIの仕事だぜ、と断るマット。しかし、既に誘拐された妻は惨殺されていて、その異様な様に、やむなく手を貸すことにするのだが――という話である。
 ストーリーとしては、その異常殺人誘拐魔を追う話と、マット自身の物語の2つの流れがあって、捜査の中で知り合った少年が、二つの物語を結びつける役割をしている。わたしとしては、正直なところ重要なのはマット自身の物語の方だと思えた。過去を悔やんでいる男。どうにも取り返しの付かない過去を抱えながら、それでも何とか正しく生きて行こうとする疲れたおっさんの姿は、やっぱり我々おっさんの心には響くものがあって、Liam Neeson氏の素の状態に近い芝居振りも大変良かった。今回は別にスーパー腕利き殺し屋でもないし、ある意味普通の人なので、少年とのやり取りも、態度こそぶっきらぼうだけれど意外と優しいおっさんで観ていて安心できる。
 ただ、だいぶ褒めてしまったけれど、映画として微妙な点もあって、例えば1991年の事件から現在時制の1999年まで何をしてどんな生活だったのかはよくわからないし、意外と家や家具は整然として金はかかってそうだし(=つまり金にはあまり困ってないっぽい)、あるいはまた、別れたとだけ語られる奥さんや、子供がいたのかとか、背景はほぼ描かれない。これはきっと原作小説だともう少し補完されているんじゃなかろうかという気はする。また、なんでまた、いまさら1999年を舞台にしているのかもよくわからない。これは原作小説がそうだから、そのまま採用しているのだと思うが、あまり意味がなく、別に2015年にしても良かったようには思う。それと、肝心の、異常な誘拐殺人事件の方も、あまり背景は語られないので、犯人の異常性の説明はほぼなく、単に異常者だったとしか語られない点も、原作小説ではもっと細かい背景があるんじゃなかろうかとは感じた。
 さて、最後に役者陣と監督についてチェックしておこう。
 主人公のLiam Neeson氏はもういいよね。この主人公に、弟と話をしてみてくれと依頼に来る、ヤク中のダメ兄貴を演じたのは、Boyd Holbrook氏34歳。特徴ある顔で、フィルモグラフィーを見ると意外といろいろな映画でわたしは見かけているはずなのだが、明確な役は全然覚えていない。ただ、先日レビューした、Liam Neeson作品『RUN ALL NIGHT』で、組織のボスのバカ息子を演じていたのが彼でしたな。
 それから、彼の兄貴で、主人公に妻を誘拐した野郎を探してくれと依頼する弟を演じたのがDan Stevens氏33歳。彼は、これまた以前ここでレビューを書いた『靴職人と魔法のミシン』にも出てましたな。あの映画では、主人公の隣に住むイケメン・リア充青年の役だったかな。
 あと、主人公に懐いてくる少年ホームレスを演じたのが、Brian "ASTORO" Bradley君19歳。え、19歳!? もっとガキに見えたけどな……。映画が2014年の作品らしいので、出演時は16歳ぐらいってことか。それなら納得かも。彼は本職はラッパーだそうですな。意外と今後、活躍するような気がしますね。名前は覚えておこう。
 最後、監督はScott Frank氏56歳。この人は元々脚本家みたいで、本作の脚本も自身によるものみたいすな。監督としては本作が2本目ぐらいだけど、脚本家としてのキャリアは長いすね。わたしが観た映画もいっぱいあって驚きだ。日本ロケで話題になった『WOLVARINE:SAMURAI』の脚本も、この人がクレジットされてるみたいすね。そうなんだ。へえ~。

 というわけで、結論。
 本作『A Walk Among the Tombstones』(邦題:『誘拐の掟』)は、わたしとしては結構気に入った。しかし、映画としてはまったく売れなかったようだし、評価もかなり微妙なラインなので、せっかく原作はシリーズモノなのだが、映画の続編は期待できないだろうと思う。本作が気に入ったわたしとしては、主人公マットをもっと知りたいと思うので、大変残念だ。原作読んでみるかな……。以上。

↓ シリーズの5作目っぽいな……よくわからんけど、映画は大変面白かった。そして肝心の映画は古くてBlu-rayは発売されていない模様……。
八百万の死にざま (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ローレンス ブロック
早川書房
1988-10



 

 ここ数年、闘う無敵のパパ、という妙なジャンルを開拓したことでお馴染みのLiam Neeson氏。現在63歳。アイルランド出身で身長193cmとデカくてゴツイおっさんだが、わたしが彼を初めて知ったのは、たぶんSam Raimi監督の『DARKMAN』という作品だと思う。わたしはこの映画が大好きで、ある意味ヒーローもの的な映画で大変興奮するB級映画だが、ここでLiam Neeson氏を知って、おお、コイツなかなかいいな、と思っていたら、その数年後にかのオスカー作品賞受賞作『Schindler's List』では主役のOskar Schindlerを堂々と演じ、その後ハリウッドきっての役者となって、数々の役を演じるに至った。『STAR WARS Episode I』でのマスター・クワイ・ガンや、『BATMAN Begins』でのラーズ・アル・グールなど、デカイ体と特徴あるしゃがれ声で、若い主人公を鍛えたり、その前に立ちふさがる役が多いような気がする。まあとにかく、たいていが強くておっかないおっさん役である。確か、Liam Neeson氏が出演した数々の映画の中で、合計何人ぶっ殺したかを数えるKILL COUNT動画がYou Tubeにあったような気がするが、とにかくまあ、いろいろな映画でやたら人を殺しまくっている恐ろしいオヤジだ。
  昨日の夜、例によってWOWOWで録画しておいたのを観た映画『RUN ALL NIGHT』は、16時間という一夜の中で、我らがLiam Neesonパパが相当な数の人間をぶっ殺す、ノンストップアクションムービーであった。まったくもって恐ろしい男である。

 はっきり言うと、上記予告ではどんな映画かさっぱり分からないと思う。ので、ちょっとストーリーをまとめてみよう。主人公ジミーは、元(?)伝説の殺し屋である、のだが、今はすっかり老け、組織の若造からも舐められるような若干アル中気味の嫌われ者のおっさんである。そしてその組織を貫禄たっぷりにまとめているのがショーンというハゲオヤジで、今はまともな商売をやっているが、過去には親友であるジミーと共に殺しも散々やってきた悪党であると。で、ある日、ダニーというショーンのバカ息子が、もう絶対に手を出さないとショーンが決めているドラッグ商売を持ちかけてきて、ショーンは絶対ダメだ、と言っているのに、アルバニア・マフィアと揉めてしまって、あまつさえアルバニア人をぶっ殺してしまう。そして、真面目に堅気で働いていた、ジミーの息子のマイクが、その殺しの現場を目撃してしまうと。で、マイクを殺しにきたダニーを、ジミーはぶっ殺してしまう。そこから先は、予告の通りである。
 親友ショーンの息子をぶっ殺してしまったジミーは、ショーンの放つ殺し屋どもの攻撃を撃退しながら、息子マイクと共に逃亡を続けるわけで、NYCの警官もショーンに買収されている奴が多くて味方ゼロの状況で、NYC中を逃げまくり撃ちまくりの映画である。まあ、結論から言うと、まずまず、な程度で、大興奮とまでは行かなかったのが正直な感想である。物語的にわたしが良くわからなかったのが、「この夜を乗り越えれば何とかなる」という設定で、なんでこの夜だけ何とか逃れれば大丈夫なのか、この点はさっぱり分からなかった。あれは……うーーん……わからん。どうしてなんだろう。こういう、脚本上の謎ポイントが他にもいくつかあって、バカ息子がぶっ殺したアルバニアマフィアは全然この逃走劇に関与してこないし、ライバル腕利き暗殺者も、背景が良くわからなかったりと、物語的には若干の微妙作であった。
 しかし、役者はやけに豪華である。
 もう、主役のLiam Neeson氏は散々書いたからいいよね。本作では、相当くたびれて自堕落な生活を送る元暗殺者ジミーの孤独ぶりを物悲しく演じてくれていました。
 で、その息子で、堅気に生きる元ボクサーのマイクを演じたのが、Joel Kinnaman氏36歳。コイツの顔、絶対どっかで見た、つーかコイツひょっとして……と思って調べたら、まさしくこの役者は、新・ロボこと、2014年にリメイクされた『ROBOCOP』の主役・マーフィーを演じた彼であった。元々スウェーデンで生まれ育ったそうですな。そういや『CHILD 44』のあの嫌~な元部下もこの人だったね。おっと、今年公開の『Suicide Squad』で、DCコミックでは有名なRick Flagを演じるんだ。マジか。へえ~。そいつは楽しみだ。結構なイケメンだと思います。若干、強面系だけど。
 次。主人公の親友で、バカ息子を殺される組織のボス・ショーンを、おっかなく貫禄たっぷりに演じたのは、ハリウッドのセクシーハゲ界の大御所、Ed Harris氏65歳である。もうこの人が出ている映画はどれぐらい観たのだろうか、と思うほどのベテランで、わたし的に好きなのは、やはり『The RIGHT STUFF』のジョン・グレン役と、『THE ROCK』での国に裏切られたエリート軍人役だろうか。とにかくいろいろな作品に出ていて、ある意味、彼が出てくるとなんとなく、ああ、この映画は大丈夫だ、と安心するような、安定感ある名優と言っていいのではなかろうか。まだオスカーは獲ってないんですな。ノミネートが数回あるだけか。いつか、オスカーを手にしてもらいたいものですね。
 そして、長年主人公ジミーを逮捕しようとしている、唯一まともな警官を演じたのが、Vincent D'Onofrio氏56歳である。彼と言えば、もう、名作『FULL METAL JACKET』前半の主人公と言っても過言ではない、かの「ほほえみデブ」ことゴーパー・パイル2等兵ですね。もう28年前の映画か……わたしは地元映画館で観たのだが、あの映画の凄さは今でもはっきり覚えている。今でも、年に1回ぐらいは観たくなるんだよな……。いずれにせよ、「ほほえみデブ」ことVincent氏はその後かなり多くの映画に出演していて、以前このBlogでも取り上げた『The JUDGE』でも味わい深い演技を見えてくれており、いつの間にか渋い演技派としてお馴染みになっている。
 最後、この映画には、出演時間3分ほどしかないジミーの兄貴というチョイ役で、Nick Nolte氏が出てきて驚いた。しかも調べたら、もう75歳なんだと言うことを知って2度びっくりである。作中でも相当老けていて驚いたが、そうか、そんな歳なんだ……と感慨深い。この人と言えば、だれもが『48HRS』を思い出すだろうと思う。うおお、もう33年前の映画か。これは中学生の頃に見たなあ。そしてテレビ放送でも何度も観たよ。若きEddie Murphyの映画デビュー作として、わたしは日本語吹き替えのイメージのほうが強いかも。最高だったなあ、あの作品は。まあ、とにかく、Nick Nolte氏は比較的コンスタントに毎年何らかの映画に出ていて、わたしもちらほらスクリーンでお見かけしているが、とにかく想像以上に老けている姿が印象的であった。しかし、たった3分に起用するにはもったいないような気がしてならない……。
 そうだ、あと監督ですな。正直全然知らない人でJaume Collet-Serraというスペイン人らしい。ああ、なるほど、Liamパパの『Unkown』と『Non-Stop(邦題はフライト・ゲーム)』を撮った監督なんですって。あれか……両方とも相当微妙作だったなあ。しかし、本作では、妙な、トリッキーなカメラアクションを多用していて、ミュージックビデオっぽいと感じる部分がある。どうなんだろう、センスがあると褒めるべきか……ううむ……これまた微妙だなあ……どうなんだろう……まあ、いずれにしてもLiamパパとは仲がいいんでしょうな。てことは、それなりに腕を見込まれてるんでしょうな。ちょっと、今後名前を覚えておくことにしたい。

 というわけで、結論。
 闘うパパでお馴染みのLiam Neeson主演作『RUN ALL NIGHT』は、わたし的にはどうにも微妙作であった。さきほどUS格付けサイトRotten Tomatoesをチェックしたら、これまた微妙な判定で、大傑作ではないけどクソでもない、ということのようだ。そして興行も、まったく売れなかったみたいです。なので、万人にはおススメできないが、役者は豪華であるし、Liam Neeson作品に無条件で反応してしまうわたしのようなオタク野郎や、元祖セクシーハゲの大御所Ed Harris氏を観たい方にはおススメです。以上。

↓ おっと!? 何故かいまさら、まさかのBlu-ray発売中だ。一体何を考えてこれをまた売ろうと思ったのだろう。そそして売れると思ったのだろうか……まったく意図不明だ。ま、わたしは非常に嬉しいですが。
ダークマン [Blu-ray]
リーアム・ニーソン
KADOKAWA / 角川書店
2016-06-24

 日本における2013年の洋画興行において、おそらく業界関係者が一番驚いた作品は、なんと42.3億もの興行収入を上げた『TED』であろう。わたしも、こういう下ネタ満載のアメリカンギャグ映画が売れるとは全然思ってもみなかった。事実、 公開時は253スクリーンとやや小さめの規模で封切られ、3.2億、3.3億、2.98億と恐ろしく好調な週末興収を稼ぐに至って4週目からは373スクリーンにまで拡大され、その後も順調に興収を重ねたという近年まれに見る「後伸びヒット」をかました作品である。まあ要するに、当初はまったく期待されていなかった作品がグイグイ伸びたという非常に珍しい映画だ。
 監督したのは、Seth MacFarlane。いかにもモテそうにない愉快なおっさんだが、この『TED』はUS国内では2012年の6月公開で2億ドル以上の大ヒットとなり、2013年のアカデミー賞授賞式の司会を務めることとなった。しかし、生来の空気を読まないギャグ体質が残念ながら顰蹙を買い、本人ももう二度とアカデミー賞の司会はやらんと言っているようで、わたしもその年のアカデミー賞授賞式をWOWOWの中継で見たけれど、確かにひどかった。
 ま、そんなSeth MacFaelane氏だが、『TED』の大ヒットを受けて 調子に乗って制作した映画が『A Million Ways to Die in the West』(邦題:荒野はつらいよ~アリゾナより愛をこめて~)である。WOWOW放送を録画しておいた奴を、今日やっと観てみた。

 残念ながらこの映画は、US本国でも4313万ドルと、『TED』の5分の一程度しか稼げなかったし、日本でもまったく売れなかった作品である。あまりに売れなくてあっという間に公開が終わってしまったのでわたしもすっかり見逃してしまっていたのだが、改めて観てみて、なるほど、こりゃアカンと思った次第である。
 物語は、1882年アリゾナを舞台に、彼女に振られてふてくされて引きこもる羊飼いのまったくイケてないおっさん主人公が、街にやってきた悪党をやっつける話である。脚本的には特に見るところもなく、とにかくストーリーに関係ないギャグがそこらじゅうにちりばめられた、Seth MacFarlaneの、Seth MacFarlaneによる、Seth MacFarlaneのための映画であった。そのノリはまさしく悪ノリであり、ギャグもほぼすべてうんこ、SEX、人種差別的なもので、実に下品きわまる映画であった。別にわたしも下ネタに抵抗があるわけではないし、ギャグはギャグとして十分受け止めることのできる男だと思っているが、いかんせん、やりすぎというか、残念ながらまったく面白くないのが致命的である。
 この作品がWOWOWで放送されたのが1月4日なのだが、その日は放送をわたしは観ていたものの、開始19分で寝てしまい、おとといの夜、また観てみようと思って73分ぐらいのところでまた寝てしまい、ようやく今日、3度目にしてやっと最後までちゃんと見た。まあ、そんな映画です。
 この、Seth MacFarlaneという男は、脚本も書くし声優もやればアニメーター、歌手もこなすなど、恐ろしく才能あふれる男なのだとは思うが、ちょっとね……ちょっと無理です、わたしは。ただまあ、すべて確信犯としてやっているわけで、ファンはきっといるのだろう。実際、『TED』は大ヒットしたわけだし。まあ、去年公開された『TED2』は、US本国で8100万ドルに留まり、前作の半分以下に落ちてしまった。ただ日本では25億も稼いだのかな。それは非常に立派な数字である。ちなみにわたしは『TED』はそれほど面白いとは思っていないので、どうでもいいです。この人は。

 じゃあ、なんでわざわざ録画までして観たかというと、出演者がかなり豪華だからである。まず、主人公を振る元彼女を演じているのは、わたしが大好きな三大ハリウッド美女の一人、Amanda Seyfriedちゃんである。『TED2』でもヒロインを演じた彼女だが本作では、またひどい役で、彼女と言えばその大きな目がチャームポイントだが、「このギョロ目女が!!」とひどい言われようであった。そして主人公と恋に落ちて(?)拳銃のコーチをしてくれる女性を演じたのが、MADMAXのフェリオサでお馴染みのCharlize Theronで、本作でも非常に綺麗な美人さんであった。彼女は非常に良かったです。可愛くてカッコイイ。なんでまた主人公のようなイケてない男に恋に落ちたのかは全く理解できなかったけど。そして悪党を演じたのが、マスター・クワイ=ガン、あるいは戦うお父さん・ブライアン・ミルズこと、Liam Neeson氏である。しかしまた、なんでこの映画に出ることをOKしたんだろうか……と思うぐらいひどい扱いで、ケツ出しで失神するぐらいなら5万歩譲ってよしとしよう、だけど、そのケツにお花をブッ刺されて放置されるって……ここはさすがに笑わせてもらいました。そして、恋敵のイヤミな金持ちをNeil Patrick Harrisが演じていて、彼はブロードウェー・ミュージカルの活躍でも有名で、何度もTONNY賞授賞式の司会をしている男だ(2015年も彼でしたね)。本作では、これはたぶんミュージカルが元ネタなのでは? というギャグも多かったのだが、残念ながらわたしにはよく分からなかった。
 そのほか、カメオ出演でいろいろな有名役者が出ていて、おそらくはSeth MacFarlaneがそれだけUS本国では愛されキャラなんだろうな、ということは察することが出来た。チラッと、Back to the Futureのドク本人も出てくるし、今年公開の『DEAD POOL』でお馴染みのRyan Reynoldsも出てたし、ラストはJamie Foxxも当たり役Djangoの姿で出てくるし。まあ、そういう楽屋落ちめいたワイワイガヤガヤ感も、はっきり言って鼻につくと言うか、一人でよがってろ!! というわけで、わたしとしては冷める一方であった。

 というわけで、結論。
 『A Million Ways to Die in the West』、邦題『荒野はつらいよ~アリゾナより愛をこめて~』は、ちょっと日本人にはかなりのビーンボールで、悪球好きの岩鬼でも手が出せない、相当な大暴投であろうと思う。よって、普通のストライクゾーンの持ち主は、黙って見送るほうがよさそうだと思います。以上。

↓ 『TED』ならまだ普通の人にもかろうじて通じるんですが……。サーセン。『2』は観てないです。
テッド&テッド2 ブルーレイ・パック(初回生産限定) [Blu-ray]
マーク・ウォールバーグ
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
2016-01-20

 

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