昨日の夜、本を読んでいたところ、急にHDDレコーダーが動き出してビクッとしたわたしだが、なんだなんだ、何を録ろうってんだいお前さんは? と電源を入れて確認したところ、『MAD MAX:Fury Road』が放送されたようで、おお、そうか、じゃ録画してるけど放送でもう一度観ようかな、と思ったものの、イマイチ『MAX』を観るテンションではなかったので、電源を落とそうとしたところ、そういやHDDの空き容量がそろそろまたヤバイかも……と思い、録画一覧を見てみた。
 すると、そこに、前日録画されたばかりの『リピーテッド』なる映画があることに気が付いた。はて……? なんじゃこりゃ? というわけで、時間も95分と短いので、とりあえず見てみるか、と再生を始めたわけである。結果、思わぬ豪華キャストに感心しつつ、内容はあまり感心できない微妙作であることが判明したのである。

 物語はまあ上記予告の通りである。冒頭、一人の女性が目を覚ます。全裸。隣には男が。しかし、どうやら女性は、ここがどこだかわからないならしい。しかも、洗面所の鏡に映る自分の顔が妙に老けているような気もする。部屋に戻ると男も起きていた。そして告げる。「君の名前はクリスティーン。40歳。そして私は君の夫のベン。君は事故に遭い、朝、目が覚めると、昨日までの記憶を失ってしまうんだ」。そして結婚生活や過去の写真を見せられ、良くわからないけど大ショックなクリスティーン。「君は毎朝同じ質問をし、私も同じ答えを返しているんだ」とのこと。そしてベンは会社に行き、一人家に取り残されるクリスティーン。すると電話がかかって来る。「おはよう。私は君の主治医のナッシュ。覚えていないだろうけどね。まずはクローゼットに隠してある靴箱を探してくれ。その中にデジカメがある。撮影されている動画を見てくれ。落ち着いたころ、家に行くよ」。探してみると、そこには昨日の自分が事情を話している動画が記録されていて……みたいなお話である。まあ、こういう話だと、誰もが思い浮かべるのはChristopher Nolan監督の出世作『Memento』だと思うが、あそこまでスタイリッシュというかトリッキーではないかな。
 カギとなるのは、次々と出てくる出来事が、一体本当なのかどうか、主人公クリスティーンにはさっぱりわからないことだ。かつての友人だった女性の登場、そしてどうやら自分には子供がいたはずだという事、そして毎日を一緒に過ごしているらしいベンが、本当にベン本人なのかという謎。さらに、自分は襲われて重傷を負った影響で記憶障害がおきてしまったという事実と、一体全体、犯人は誰なのかという謎。
 この作品は、原題を『Before I Go to Sleep』というらしく、小説原作があるらしい。そして思うに、映画だとモロに映像として描かれてしまっているので、想像の余地があまりないのだが、きっとこの作品は、小説で読んだ方が面白いのではなかろうかという気がした。お、今、知ったのだが、原作小説では、デジカメの動画を毎日残すのではなくて、手書きの日記という設定みたいですな。それはそれでアリかも。でも、そうするとちょっと『GONE GIRL』っぽくなってしまうような気もするね。動画の方が、インチキできない性が高くて、説得力は高いかも。
 物語は、かなりサクサクと進み、ラストでどんでん返しもあって劇的ではあるけれど、正直想像の範囲内の物語で、わたしとしてはそれほど面白いとは思えなかった。おそらく、一番の問題点は、クリスティーンが事故に遭ったのがいつで、どのぐらいの期間、ベンが毎朝同じことを言っているのかが良くわからない点であろうと思う。10年前って言っていたような気がするけど、それはないよな? 良くわからなかったっす。
 最終的には、一応GOOD ENDとなるので、まあ、良かった良かったなのだが、正直、記憶を失う前のクリスティーンにもかなり問題があって、わたしとしてはどうも釈然としなかった。以上のようなことから、わたしは本作を微妙作と評価したい。
 ただ、役者陣は妙に豪華である。まず、主人公のクリスティーンを演じたのが、オスカー女優Nocloe Kidmanさん。まあ、大変お美しい方だが、本作では非常に疲れた表情の40代を演じていて、妙に生活感というか人生にくたびれた中年女性を演じており、その点は大変良かったと思う。しかし、だいぶ、皺が増えましたなあ……ま、しょうがないよね。人間だもの。それでもやっぱり、Nicoleさんはスーパー美人ですよ。
 で、超あやしい旦那、ベンを演じたのが、これまたオスカー男優のColin Firth氏。なんか最近この人の映画をよく見ますな。しかし今回はスーパーDV野郎のクソ野郎でした。普段いい人っぽいのに、急に狂気を宿した目でDV野郎に変身すると、ホントにおっかないすね。正直、この映画のこの役に彼を使うのは相当な無駄遣いのような気がしてならないが、彼が演じていることでこの映画の質が向上しているのは間違いなかろうと思う。
 そして、これまた若干あやしさを漂わせる医者のナッシュを演じたのが、セクシーハゲでお馴染みのMark Strong氏である。絶対悪い奴じゃね? と思っていたら、今回この人はいい人でした。疑ってごめんなさい。ホントどういうわけか、わたしはこの人の出ている映画をことごとく見ているんだよな……別に彼目当てでなく、全然意識してないのに、あれ、まーたこのハゲオヤジ出てるな、と偶然出会うのだが、その出会い率がやけに高い不思議なおっさんであります。ただ、最近はいい人率の方が高いような気がする。悪党を演じるのが少なくなってきてますね、この人。ぜひ一度、Mark Strong氏 VS Jason Statham兄貴のセクシーハゲ対決アクションが見てみたいものですね。完璧キャラかぶってるからダメかなあ……兄弟役でもいいんですけど……。

 というわけで、結論。
 昨日の夜、ふとしたきっかけで観た『Before I Go to Sleep』(邦題:リピーテッド)は、役者が豪華だけれど若干微妙な作品でありました。原作小説が大変気になるけれど、まあ、今すぐ読みたいという気も起きないので、とりあえず保留です。なお、先ほど確認してみたところ、格付けサイトRottenTomatoesでは、結構な低評価でありました。以上。

↓原作小説。世界的ベストセラーだったらしいですな。若干、『GONE GIRL』に似てます。
わたしが眠りにつく前に (ヴィレッジブックス)
SJ・ワトソン
ヴィレッジブックス
2012-07-20