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 とうとう発売になりました! 2015年から2年ごと、ちょうど『STARWARS』の新作の公開が近づくと発売になる『ミレニアム』シリーズの新刊『Millennium6:Hon som måste dö』であります!
ミレニアム6-01
ミレニアム 6 上: 死すべき女
ダヴィド ラーゲルクランツ
早川書房
2019-12-04

ミレニアム 6 下: 死すべき女
ダヴィド ラーゲルクランツ
早川書房
2019-12-04

 わたしは今回、発売日に、本屋さんが開店するのも我慢できず、AM5時ごろに電子書籍版で買いました。そして、ええい、ままよ! とこれまでのシリーズ全巻も電子版で買い直しました。なぜなら、よっしゃ、買ったるわい! と思ったタイミングで、わたしの愛用する電子書籍販売サイトBOOK☆WALKERにて、50%コインバックフェアが実施中だったからであります。ありがとうB☆W!
 というわけで、発売日から約5日で読み終わってしまったのだが、感想をつづる時間がなくて、やっとこれを書き始めようと思います。
 まず結論としては、十分面白かったと言って差し支えなかろうと思います。ついに、とうとう、リスベットの宿敵である妹のカミラと完全決着ですよ! ただし、その決着は、結構ビターというか、今までのリスベットのキャラからは違った決着であったように思う。リスベット本人も動揺したりするわけで、当たり前だけど、リスベットも人間だったってことでしょうなあ……そしてその決着の前には、ミカエルが超ヤバイ拷問を受けたりして、アレはもう読んでるだけで痛そうだったすね。
 物語を簡単にまとめると、今回は2つの物語が同時並行で進む。一つは、リスベットVSカミラのお話。ただしこれは、ある意味では今回のメインではない、と言っていいだろう。今回の本筋は、もう一つの、ストックホルムの街中で死んだ、とある男のお話だ。この二つのお話は、実は根底ではつながっていて、ズバリ言うと諸悪の根源(?)は、リスベット&カミラ姉妹の父である悪党ザラチェンコであって、そこが共通点としてはあるのだが、実際のところ、今回のお話ではあまり明確なつながりはなく、それぞれ別のお話、と思ってもいいかもしれない。うおお、説明が難しい!
 今回、物語の舞台は8月、北欧スウェーデンとはいえ、夏真っ盛りだ。そんな季節なのに、ストックホルムの街中で、ダウンジャケットを着た、何やらアジア人のような男が静かに息を引き取る。調べてみると、彼のポケットには、我らが主人公ミカエルの電話番号が……という導入から始まる。
 そして一方そのころ、リスベットはモスクワで、カミラを監視していたが、すべての決着をつけるつもりで銃を手にカミラの前に! というところで、リスベットはどうしても引き金が引けず、撤退、という出来事が起きる。
 こうして、死んだ男の謎を追うミカエルと、カミラを「見逃してしまった」リスベットは、カミラの行動を監視しながらも、片手間(?)にミカエルの調査に協力し、最終的に二人の物語が交わっていく展開となるわけです。
 なお、タイトルの『Hon som måste dö』はいったいどんな意味なのかをGoogle翻訳してみたらこんな結果になりました。
ミレニアム6
 ははあ、なるほど、つまり今回の邦題「死すべき女」は、もうド直球の訳だったみたいすね。まあ、読み終わった今となっては、その「死すべき女」とはカミラのこと?だったのだろうとは思う。しかし、それだけではないような気もしますね。今までリスベットは常に「女の敵」を相手に戦ってきたわけで、そこが今までと決定的に違うと思うのだが、それが、冒頭でカミラを目の前にしながら引き金を引けなかったリスベットの気持ちに現れているのではなかろうか。
 リスベットは、ずっとカミラを「死すべき女」だと思っていたわけだけれど、今回、リスベットは女として、同じ女でしかも妹であるカミラに対して、ひょっとして自分は思い違いをしていたのでは? と気づく。カミラも助けを求めていた、カミラも、今までリスベットが守ってきた多くの女同様、守ってやるべき女だったのでは? と思うのだ。そもそも妹だし!
 こう思った時、リスベットは引き金が引けなかった。それが自分では納得不能?な感情で、リスベットはずっとイライラしている。そんな自分を直視したくないと思ってる。ちょっと逃避したい。そんな時、またミカエルが色々調べ物をしていて、困っている。じゃあ、そっちを調べてやるか、みたいに、なんつうか微妙に渡りに船で、今回のリスベットはホント、片手間にいろいろ手伝っただけ、な感じがとても面白い。
 そしてミカエルが追う、ストックホルムで死んだ男の話も面白かったすねえ。今回、結構スウェーデンの政治家も出てくるわけだけど、スウェーデン人が読んだら、これってアレのことだ、とか分かるようなモデルはあるんだろうか。スウェーデンの政治に全く無知なわたしには分からんかったす。しかし、それにしてもミカエルはいつもモテモテですな。わからん……描写的にはそれほどイケメンじゃなさそうだし、性格も結構問題ありそうなんだけどね。
 まあ、なんにしても、最終的にはリスベットは過去の呪縛から解放され、それが若干ビターな味わいもあったけれど、終わった今となっては晴れ晴れと、前を向いて生きはじめたみたいだから、結論としては大団円、だったと言えそうな気がしますね。本作をもって、「新三部作」は完結し、急逝されたオリジナル三部作の著者、Stieg Larsson先生からバトンを引き継いだLargercrantz先生も、役割を終えてホッとしているでしょう。今後については、あとがきに詳しく書いてありましたが、なんでも版権を持ってた出版社と、著作権を継承した遺族がまたもめて、別れてしまったそうで、別の出版社に移るみたいすね。ま、どうせ遺族が強欲なんでしょうな……。そんな遺族に印税が渡るのは不愉快ですが、わたしとしてはまだまだリスベットの活躍は読みたいし、リスベットにまた会いたいものですな。その意味では、想像を絶するプレッシャーの元、「新三部作」を書きあげ、我々にリスベットと再会させてくれたDavid Largercrantz先生には最大級の賛辞を送りたいと思います。いろいろ評価はあるけど、わたしはとても楽しめたし、面白かったです。

 というわけで、短いけど結論。

 シリーズ第6弾にして、新三部作最終章となる『Millennium6:Hon som måste dö』が発売となったので、今回初めて電子書籍で買ってみた。ついでにシリーズ全作も電子で買い直したわたしである。まず、今回の『6』に関していうと、リスベットがなんか人間味があって、今までとちょっと違うように感じる作品であった。そしてその違いは、より一層、物語を面白くしているようにも思うし、よりリスベットの魅力が増しているように思うす。完全なるデスゾーン、エベレストの描写も、ちょっと怖かったすね。ただ、このエベレストの件はリスベットの過去と、繋がってなくはないけどほんのりとしたつながりで、その点だけちょっとアレだったかな……でも、それでもそちらの死んだ男の話も実に面白かったす。あーあ、マジでこの先のリスベットに会いたいもんだなあ。きっとスーパーヒーロー的な正義の味方として活躍してんだろうなあ。正直ミカエルはどうでもいいんですが、リスベット・サランデルというキャラクターは、歴史に残るキャラクターだと思います。以上。

↓ このVerのミカエルは、もうホントにイケメンです。だって、007ことDaniel Craig氏だもの! そりゃモテるわ!


 

 世界的大ベストセラーとなったスウェーデンの小説『ミレニアム』シリーズ。作者のStieg Larsson氏は、その刊行目前で急逝されてしまい、後に自らの作品がウルトラ大ヒットとなることを知らずに逝ってしまわれたわけだが、亡くなった後で第3作目までが刊行されたのち、第4作目から別の著者を立ててシリーズは復活を遂げ、今のところ第6作まで発売されることが確定している。現在は第5作目まで発売されていて、第6作目は一応今年2019年の終わりごろには日本語版も発売されるはずだ(※毎回本国では9月ごろの発売の後、日本では早川書房様が頑張って年内に発売してくれている)。
 ま、この経緯は、今まで第4作目第5作目が発売になった時にこのBlogでも感想を書いているので、そちらを参照願いたいが、この度、第4作目の『THE GIRL IN THE SPIDER'S WEB』がハリウッドで映画化され、先週から日本でも公開が始まったので、昨日、わたしもさっそく観てきた。
 感想をズバリ言うと、あれっ!? 第4作目ってこんな話だったっけ? と若干戸惑ったのだが、うーーーん……これは……どうかなあ……まあまあだったかな、ぐらいだろうか。残念ながら超絶賛! ではない。けど、つまらなかった、とも思わない。フツーに楽しめました、ぐらいの出来であったように思う。ひとつ、映像として、うおお!と大興奮したのは、リスベットがドカティで氷の張った湖(海?)を渡っていくシーンと、後半でランボルギーニ・アヴェンタドールをかっ飛ばすところすね。アレはとてもカッコ良かったです。
 というわけで、以下、ネタバレると思うので、まだ観ていない人は、ここらで読むのをやめて、劇場へGO!でお願いします。

 しかしなんつうか……このBlogは近年病的に記憶力の衰えた自分のための備忘録として書いているのだが……実はわたしは昨日、本作を観終わって、あまりに「こんな話だったっけ?」と自信がなかったので、小説版第4作目を読んだ時の自分の文章を読み直したのだが、ホント自分が嫌になるというかアホというか……ネタバレを避けるために、肝心のストーリーに関してはほとんど触れていない文章しか書いておらず、確かめられなかった。ならば原点に返ってチェックしよう、と思って本棚を漁って第4作目を探したのだが見つからず、あ、そうだ、4作目は友達に読めってあげちゃったんだ、ということを思い出した。まったくもって自分の愚かさが嫌になるわ……。
 ともあれ。
 わたしのうすらぼんやりした記憶では、映画版の本作『THE GIRL IN THE SPIDER'S WEB』は、原作小説とかなり違っているのは間違いないと思う。でも、それゆえ面白くない、とは言わない。わたしがこの映画版を観て、ううーむ? と思ってしまったのは、我らが主人公リスベットが、3回大ピンチに陥ってしまうのが、なんかリスベットらしくないぞ、とか思ってしまったことにあるような気がするのである。あれって原作通りだったかな……思い出せん。。。
 それらのことに触れる前に、映画版の物語をごく簡単にまとめておこう。
 本作は冒頭、どうやら必殺仕事人めいた、「女の敵」である男をぶっ飛ばすリスベットの活躍が描かれる。これが原作にあったか覚えてないが、まあとてもカッコ良く、原作未読の一見さんを世界に招き入れるには大変イイ活劇だと思う。このスークエンスは、ほぼ本筋に関係のないものだが、とてもクールで、リスベットがどんな人間か、よくわかるような、いわゆるアバン的役割を果たしていると思う。
 で、本編はというと、とある天才(?)プログラマー(スウェーデン人)が作った、世界各国のミサイル防衛システムをハッキング出来てしまうプログラムがアメリカNSA(National Security Agency=国家安全保障局)のサーバーにインストールしてあって、それを、作ったプログラマー本人から、強奪してほしいとリスベットに依頼されるというのがメインの筋である。そのソフトはCOPY不可、MOVEのみ可能という仕様で、ま、リスベットは描写的には超余裕でハッキングしてあっさり強奪に成功する。しかし、そのプログラムの起動には、謎のパスワードがかかっていて、いかな天才リスベットにも解除できない。へえ~と思った(?)リスベットは、起動を試さず、素直に依頼主たるプログラム開発者に渡そうとするが、その夜、謎の集団がリスベット邸を襲撃、リスベットは辛くも助かるが、まんまとプログラムをノートPCごと強奪されてしまうのだったーーーてな展開で、そのPCの争奪戦が描かれるのだが、その背後には、リスベットの妹の影があり、さらにプログラム起動には、プログラマーの息子の超頭脳が必要なため、その息子も連れ去られてしまい、その救出ミッションも加わって来る、という物語でありました。
 どうですか。小説を読んだ方。これって、原作小説通りだっけ? なんか全然違うような……? でもまあ、原作通りであろうとそうでなかろうと、別にそれは大きな問題じゃあないと思う。映画として面白くて興奮するものなら、それでいいんだし。しかし、どうもわたしは、前述のように、ううーむ? と思ってしまったのだ。それは以下の点においてである。
 ◆後手後手に回るリスベット
 まあ、たしかに原作小説のリスベットも、後手に回って大ピンチになることは今までもあったとは思うけど、今回はちょっと、なんつうか、リスベットを知らない一見さんが本作を観たら、リスベットの凄さが若干損なわれてしまうのではなかろうか……というぐらい、後手に回ってしまって苦戦する。ま、苦戦しても勝つけど。たとえば……
 ・自宅破壊:これはリスベットがうっかり風呂でうとうとしてしまったのが原因だよな……リスベットらしくないような……まあ、きっちり避難して脱出して、全てを録画していたため犯人の手がかりもちゃんと得ていたから、アリ、なんすかね……。
 ・プログラマーを守れず息子まで連れ去れさられる:これも、うっかり監視映像から目を離したことがそもそも原因だったような……これもリスベットらしくないような……そして肝心のプログラマーを守れず息子を連れ去られてしまうのは原作通りだったかも。でもここは、映画的にはとてもカッコ良くて、薬物を注射されて意識朦朧になっても、気合でアンフェタミンを砕いて自分で摂取してなんとか追いかける、という一連の流れはとても良かったす。原作にあったかどうか、記憶なし。
 ・アジトへの潜入失敗、妹にあと一歩のところで殺されかける:ここも、罠にまんまとかかって大ピンチ、どころかあと一歩で殺されそうになって、リスベットらしくないような気もしたけど、これも原作通りだったのかも。ただ、この場面では、リスベットの信頼するハッカー仲間プレイグが大活躍して、謎のモーションセンサー?か何かを使った、空間認識システムで建物内の人の動きを察知する流れになるのだが、これは、実際のところ無理があるように思えるけれど、映画的(映像的)にはとても見応えがあって、NSAの青年がアンチ・マテリアル・ライフルをドッカンドッカン撃ちまくって援護するシーンはとても良かったと思います。あれはカッコ良かったですね。ただ、そのスナイプ中に敵に近寄られて反撃されたのは、ちょっといただけないですな。アレは苦笑せざるを得ないす。このプレイグ&NSAマンの大活躍が原作にあったか、記憶になし。あったっけ? プレイグが拉致されたリスベット(あるいは息子だっけ?)をGPSで追うのは原作にあったと思う。
 ◆ほぼ活躍しないミカエル
 なんというか、もし原作を全く読んでいない人が本作を観たら、シリーズのそもそもの主人公(?)、ミカエル・ブルムクヴィストのことを理解できたのだろうか? 今回の映画版ではほぼ活躍せずで、非常に影が薄いのが残念であった。やっぱり、ミカエルも活躍してくれないと『ミレニアム』っぽさが薄まっちゃいますな。これはとても残念だったと思う。ただ、この『ミレニアム』シリーズの映画は今回で3回目なのだが、ミカエルを演じた役者はこれまでで一番原作のイメージに近かったような気もします。それは良かった点ですな。最初のスウェーデン本国での映画化は、最初の原作3部作全てをかなり見事に映像化してくれた作品だけど、ミカエルを演じたのはその映画の後にハリウッドでも活躍して、おととし急逝してしまったMichael Nyqvist氏で(→わたし的には『John Wick』のマフィアのボスでお馴染み)、ミカエルにしてはちょっと年を取り過ぎじゃねと思ったし、かといって2回目のハリウッドによる映画化では、ミカエルを天下のイケメン007でお馴染みDaniel Draig氏が演じて、これはこれでカッコ良すぎるというか、強そうに見え過ぎていたけど、今回ミカエルを演じたSverrir Gudnason氏は、ちょうどいい塩梅だったように思ったす。あ、この人、スウェーデン人なんですな。ならちょうどいいすね。
 ◆原作から明確にカットされた、アレの件:ま、これはカットされて当然だろうな、と思った。原作では、リスベットは「WASP」というハンドルネームを使ってハッカー活動をしていて、この4作目の敵は「THANOS」を名乗っていたけれけど、今回の映画ではそのネタは一切カットでした。ま、WASPもTHANOSも、マーベルコミックのキャラなので、SONYの作品である本作ではちょっと扱えなかったのでしょう。ま、だからどうってことはないけれど、『ミレニアム』シリーズではハッカーのハンドルネームは重要なので、ちょっと残念でした。

 というわけで、原作ファンとしては(といいつつ物語をちゃんと覚えてないオレのバカ!)なんとなく全体的に薄味になってしまったように感じたのだが、映像のキレや、役者陣は大変良かったと思います。最後に各キャラと演じた役者、それから監督を紹介して終わりにしよう。
 ◆リスベット・サランデル:ゴスパンクなファッションに身を包み、映像記憶能力を持つ超キレる超危険な女子。「女の敵」を心から憎む。バイで女子も男もイケるお方。ガリガリのやせぎす。今回3代目リスベットを演じたのはClaire Foyさん34歳。わたしとしては歴代リスベットの中で一番、身体的特徴はリスベットっぽかったと思う。ちびっ子でガリガリ、という意味で。ただ、メイクが普通なのとピアスが少ないのが残念だったかな……。それと、リスベットにしてはやけに表情が豊かというか、無表情&つっけんどんじゃないのも、若干リスベットぽくはなかったような……。初代リスベットのNoomi Rapaceさんはもう雰囲気抜群のキレてるリスベットだったけど若干可愛くないのが玉に瑕、かもだし、そして2代目リスベットのRooney Maraさんは、髪型とかピアスだらけとか、そういう点では一番だったし、一番美人だったと思う、けど、ガリガリじゃあなかったすね。いずれにせよ、三者三様のリスベットは、実際のところ全員アリ、だとわたしは思います。
 ◆ミカエル・ブルムクヴィスト:既に書いたので省略! 原作ではある意味ではリスベット=ホームズ、ミカエル=ワトソン、的に、主人公として読者に代わってリスベットの行動を折ってくれる重要キャラなのだが、本作では、いかんせん存在感が希薄な役回りで残念す……。
 ◆カミラ:リスベットの双子の妹で不倶戴天の敵。今回演じたのはSylvia Hoeksさん35歳。オランダ人だそうですが、まあお綺麗な方ですよ! このお方は、超名作『BLADERUNNER2049』で、超おっかないレプリカントLUVを演じたお方ですな。今回、リスベット=黒、カミラ=白(というより赤)と対比を意識して演出されているようだったが、原作を読んでいる人ならカミラの姿に、おお!と興奮したと思うけど、正直この映画版だけだと、どうしても若干意味不明なキャラに思えたのではなかろうか。まあ、やっぱり背景や行動の目的などが説明不足だと思うし、かなり唐突感もあって、若干浮いてたようにも感じた。ただし、原作と違うラストは、本作の中ではちゃんとしかるべき流れになっているように思えたので、違和感はなかったす。
 ◆フランス・バルデル:問題のプログラムを作った天才プログラマー。彼の設定はかなり原作と違うと思う。そして彼を演じたのはStephen Merchant氏というお方なのだが、この顔は絶対どっかで見た、けど誰だっけ……と思い出せなかったのだが、インターネッツ神にお伺いを立てたところ5秒で判明した。この人は、『LOGAN』でチャールズおじいちゃんを看護してくれてた日光に当たるとダメなキャリバン、を演じた方っすね。でもあの役、ほぼミイラのような感じだったけど、顔って出てたっけ……
 ◆エド・ニーダム:NSAの男で、まんまとリスベットにプログラムを奪われ、その奪還のためにスウェーデンへやってくるが、自分も元伝説のハッカーで、のちに(やむなく)リスベットの援護に。スウェーデン当局に拘束された彼をリスベットが救うシーンは原作通りだったような気がする。けど、伝説のハッカーって設定だったか覚えてない……。演じたのはLaleith Stanfield氏。何気に凄くイケメンだと思う。出番は少ないけど、なかなか活躍してくれました。あ、なんてこった! この人、Netflix版『デスノート』でLを演じた方なんすね。確かに頭が良さそうな感じですな。へえ~。
 そして監督は、数年前妙に話題になった『DON'T BREATHE』を撮ったFede Álvarez氏。ウルグアイの方ですな。まあ、本作は映像的にはとてもキレがあって、かなりクオリティは高かったとは思う。脚本的にも、まったく原作未読でもわかるような流れはきちんと整っていたとは思う。けど……散々書いた通り、薄味というか、厚みがないというか、いろいろとうーーんな点があって、つまらなかったとは全然思わないけど、超最高だったぜ、とも思わない、フツーな出来であったと思う。残念ながらUS本国でも全世界でも、興行的には全然売れておらず、予算43M$で全世界興収34M$のようで、これでは続編は作れそうにないだろうな……。ああ、Rotten Tomatoesでも評価は低いすね……これは厳しいな……最後に言うとしたら、原作小説は面白いっすよ。作者は別人だけど、わたしはもう十分楽しめたっす。なので、ぜひ、原作小説を読むことをオススメします。

 というわけで、結論。
 世界的大ベストセラー『THE GIRL IN THE SPIDER'S WEB』が映画化されたので、原作ファンとしては楽しみにしていたのだが、そもそも、わたしの低下した記憶力では原作がどんなお話だったのか、詳細は覚えていないという状態であるけれど、どうも、かなり原作と違っていた、ような気がする。そして、別に原作と違っていても、映画として面白ければいいのだが、全くダメとは言わないけれど、どうもキャラクター的にこの映画だけでは味わいきれないというか、かなり薄味の物語であったように感じた。なんかもったいないというか、残念です。原作のリスベットは、本当に魅力的でグイグイ物語に引き込まれるのですが……ううーーむ……であります。やっぱり大ベストセラー作品の映画化というのは難しいですな。わたしのように原作をちゃんと覚えてないくせに、偉そうに文句を言われちゃうんだから。つうか、そんな文句は言いたくなくて、本当は、ここが良かった! とほめる文章を書こうと思ったのに、ダメだったす。サーセンした。少なくとも、映像のキレは感じたし、スタイリッシュではあったと思います。今年、第6作が発売になるはずなので、それまでにもう一回4巻目も電子で買って読もうと思います。以上。

↓ 紙版は友人にあげちゃったので、もう一回、電子版を買う所存であります。
ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女 上 (早川書房)
ダヴィド ラーゲルクランツ
早川書房
2015-12-18

ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女 下 (早川書房)
ダヴィド ラーゲルクランツ
早川書房
2015-12-18

 スウェーデンの作家、Stig Larsson氏は2004年の11月に50歳で、心筋梗塞により亡くなってしまったが、良く知られているように、その亡くなった時点では、作家デビューをしていなかった。その後、出版された処女作『Millennium』シリーズが世界的ベストセラーになるわけだが、そのことを知らずに、逝ってしまわれたのである。何とも残念で大変悲しいことだが、遺された作品の面白さはもう世界的にお馴染みであり、わたしも2008年に出版された日本語版を読んで大興奮した作品であった。
 そして、これもまたすでに知られていることだが、発売された第3巻まではいいとして、実はその続きがかなりの分量で未完成原稿として残っていたのである。我々読者としては、もう大変気になるというか超読みたい気持ちが募るわけだが、これまた大変残念なことに、おそらくは、今後永遠に(?)、我々はLarsson氏の遺稿を読むことはできない見通しだ。というのも、Larsson氏が長年パートナーとして苦楽を共にした女性(結婚していなかった)と、Larsson氏の親兄弟(加えて出版社)が、その遺稿の版権を巡って法廷闘争が行われてしまったからだ。わたしはその闘争の結末をよく知らないのだけれど、普通に考えれば、一緒に生活していたパートナーの女性の元にLarsson氏のPCがあって、そのHDD内に未完成原稿は残っているはずだし、実際の執筆にあたっても、その女性は大きな役割を果たしたのだろうと想像できるわけで、円満にちゃんとそれを発表できる体制が整えばよかったのだが……まあ、世間はそうままならぬものであり、残念ながら封印されてしまったわけである。
 しかし。
 2年前の2015年の暮れに、日本では第4巻となる「ミレニアム4:蜘蛛の巣を払う女」が発売になり、我々読者は再び、シリーズの主人公リスベット・サランデルに再会することができたのである。それは、出版社がたてた作家が創作した作品で、おそらくは現存しているという噂の遺稿をまったく考慮しないものであるはず、だが、その内容は非常に面白く、わたしとしては正直、遺稿の物語が反映されていない(であろう)ことには残念に思いながらも、再び各キャラクターたちに会えることには大歓迎で、大変楽しませていただいた作品であった。
 その、新たな『Millennium』シリーズを書いたのは、David Lagercrantz 氏。元々Larsson氏と同じくジャーナリストだそうだが、想像を絶するプレッシャーの中での執筆は、余人には計り知れないものであったはずで、わたしとしてはLagercrantz氏には惜しみない賛辞を贈りたいと思っている。
 というわけで、以上はいつも通りの無駄な前振りである。
 あれから2年が経ち、いよいよ待ちに待ったシリーズ第5弾、『Millenium5:Mannen Som Sökte Sin Skugga』(日本語タイトル:ミレニアム5 復讐の炎を吐く女)が発売になったので、わたしはもう大喜びで買い、読み始め、大興奮のうちに読み終わったのである。
ミレニアム 5 復讐の炎を吐く女 上 (早川書房)
ダヴィド ラーゲルクランツ
早川書房
2017-12-20

ミレニアム 5 復讐の炎を吐く女 下 (早川書房)
ダヴィド ラーゲルクランツ
早川書房
2017-12-20

 ズバリ、結論を先に言ってしまうと、今回は予想に反して、宿命の敵、であるリスベットの妹は登場せず、であり、リスベット本人の物語としてはそれほど進展はなかったような気がする。ただし、なぜリスベットが「ドラゴン・タトゥー」を背中に入れているのか、そしてなぜリスベットと妹のカミラは幼少期に離れ離れになったのか、という点は明確な回答が得られ、わたしとしては確かな満足である。また、今回シリーズではおなじみのキャラクターが1人退場してしまう残念な事件も描かれ、十分読みごたえアリの作品であったと思う。
 というわけで以下ネタバレに触れるはずなので、まだ読んでいない方は今すぐ立ち去ってください。確実に、知らないで読む方が面白いと思います。
Millenium05-02
 というわけで、上記はわたしがうちのダイニングテーブルで撮影した書影だ。なぜこれを載せたかというと、帯の「全世界9000万部突破!」という惹句に、すげえなあ!と激しく思ったからだ。仮に、1冊1000円としよう。そして印税が10%だとしよう。すると、1,000円×10%×90,000,000部=90億円ですよ。すっげえなあ、本当に。そりゃあもう、遺族との版権争いも起きますわな……。これはどんなに善人でも、心動いちゃう数字ですよ。亡くなったLarsson氏本人はどんな思いでしょうな……。
 ま、それはさておき、とうとう「ミレニアム」の第5巻、ここに見参、である。まずは物語をざっと説明すると、冒頭はいきなりリスベットが刑務所に入っている状態から幕開けする。どうやら、前作で大活躍のリスベットだったが、その際に犯した、いくつかの罪で逮捕されたのだとか。もちろん、周りのみんなはそんなバカな、であり、ミカエルも、妹で弁護士のアニカも、そして警察のブブランスキー警部さえリスベットが刑務所に入る謂れはないと思っているが、当のリスベットは、まったくどうでもいいという態度で、おとなしく刑務所務めである。そんなリスベットが、現在注目しているのは、同じく収監されているバングラデッシュからの移民の女性ファリアだ。どうやら彼女は、兄を窓から突き落とした殺人罪で収監されているらしい。しかし、そんな超美人のファリアを気に入ったのか?、刑務所内の女性囚人を支配している牢名主的な女ギャング、ベニートが、ことあるごとにファニアにちょっかいをかけ、あまつさえ暴力も日常的に振るっている。そんな状況下で、我らがヒロイン、リスベットが黙っているわけないすよね? なによりもリスベットが嫌いなのは、「女の敵」なわけで、対決は不可避なわけです。
 一方、リスベットは、シリーズではおなじみの、元・リスベットの法定後見人だったホルゲルおじいちゃんが面会にやってきて、とある話を聞く。なんでも、かつて幼いリスベットが入院(という名の監禁)させられていた時の病院の院長、の秘書をしていたという老婦人が訪ねてきて、診察記録を置いて行ったらしい。リスベットはその話を聞いてすぐさま行動開始するが刑務所内なので思うように進められず、面会に来たミカエルに、一人の男の名を告げ、調査を依頼するのだった―――てな展開である。
 というわけで、本作は2つの物語が交互に進んでいく感じである。
 一つはファリアとギャングのベニートの話。もう一つが、ミカエルが調査を進めるレオという男の話だ。ズバリ結論を言うと、2つの物語は別に交差したりしない。正直あまり関係もない。しかし、ともに非常に興味深く、とりわけ謎の男レオの話はリスベットが過去受けた「処置」に直結するもので、非合法(当時は合法なのか?)な調査研究により、双子をそれぞれ全く正反対の環境に置いたらどういう大人になるか? というある意味非人道的な実験が語られてゆく。つまり、リスベットと同じ目に遭った双子が、他にもいっぱいいたらしい、ということで、このレオという男を調べていくうちに、「一番悪い奴は誰なんだ」ということがだんだん分かる仕掛けになっている。
 もうこれ以上のストーリー説明はやめて、キャラ紹介に移りたいが、本作も、かなり多くの登場人物が出てくるので、早川書房は親切にもキャラクター一覧を別紙で挟み込んでくれている。しかし、実際物語的に重要なのは、結構少数で、ほんの少しだけ、紹介しておこう。
 ◆リスベット・サランデル:ご存知物語の主人公。超人的ハッキング技術や映像記憶力、あるいはボクシングで鍛えた攻撃力など、かなりのスーパーガール。あとがきによれば、リスベットがどんどんスーパー化するのを抑えるためにも、刑務所に入っててもらって自らが動けない状況にしたのではないか、とのこと。ホントかそれ? 今回、確かにリスベット本人の大活躍は、若干、抑え目、かも。
 今回わたしが一番なるほど、と思ったのは、背中の「ドラゴン・タトゥー」の由来で、これはストックホルム大聖堂のとある像を幼少期のリスベットが観て、自らの背中にタトゥーとして背負ったものだそうだ。詳しくは読んで味わった方がいいと思います。わたしは非常にグッと来た。リスベットのハッカーとしてのハンドルネーム「Wasp」に関しては、前作でまさかのMarvelコミックが由来という驚きの理由が明かされたが(Waspとは、Ant-Manの相棒の女性ヒーロー)、今回はもっとまじめというか、極めてリスベットらしい思いが込められて、ちょっと感動的でもあった。
 なお、本書のスウェーデン語のサブタイトルMannen Som Sökte Sin Skuggaは、日本語訳すると「自分の影を探す男」という意味だそうで、確かに内容的に非常に合っていることは、読み終わればよくわかると思う。そして「復讐の炎を吐く女」という日本語のタイトルは、若干仰々しさはある、けれど、このリスベットのタトゥーの意味を知ると、なるほど、と誰しもが思うような気がします。実はわたしは、また全然スウェーデン語の原題と違うなあ、とか思っていたけれど、読み終わった今では、いいタイトルじゃあないですか、とあっさり認めたい気分です。
 ◆ミカエル・ブルムクヴィスト:ご存知本作のもう一人の主人公。ジャーナリスト。何故コイツがこんなにモテるのか良くわからないほどの女たらし。リスベットも、一応信頼している。
 今回、複数の事件が同時多発的?に起こるので、肝心な時にミカエルは別のことをしていたり、と若干のすれ違いがあって、活躍が今一つか? というような気がする。ミカエルは基本的には謎の男レオの調査にかかりっきりだったとも言えそう。
 ◆レオ・マンヘイメル:とある証券会社の創業者(?)の息子で、相続を受けて現在自分が筆頭株主兼共同経営者兼チーフアナリスト。実際のところ、すぐに姿は現れるし、社会的な有名人でもあるので、散々「謎の」という形容をわたしは用いたが、実のところ謎の人物、ではない。ただし、行動が謎、であって、果たしてコイツは一体何を? というのがポイント。まあ、たぶん誰でも、下巻の冒頭辺りで、ははーん?と謎は解けるはず。ただし、作劇法として、レオの過去が別フォントを使って語られるパートがチョイチョイ出てくるのだが、ここが日記とか独白のような1人称ではなく、他と同じ3人称のままなので、誰が語っているのか良くわからず、おまけに結構いきなり、下巻の冒頭で秘密の暴露に繋がる第三者の描写に映るので、若干の違和感は感じた。なんか……若干まどろっこしさもあるような気がする。
 ◆ホルゲル・パルムグレン:リスベットの元法定後見人としてシリーズではお馴染みのおじいちゃん。元弁護士。リスベットがかつて唯一信頼していた人。いい人。それなのに……今回で退場となってしまって、とても残念です……そして、体の自由が利かない今のホルゲルおじいちゃんの苦しむさまが非常にリアルというか……。つらいっす……。
 ◆ファリア・カジ:バングラデッシュからの移民の美女。家族はイスラム原理主義の過激思想に染まっていて、非常に危険。そんな環境の中、抑圧され虐待され、という気の毒な女子。ただまあ、若干ゆとり集が漂っているのは、年齢からすればやむなしか。彼女のエピソードは、正直あまりストーリー本筋には関係ないとも言えそう。
 ◆ラケル・グレイン:今回のラスボス。このラスボスであることは結構前の方で明らかなので、書いてしまったけれど、なかなか怖いおばさま。何歳だったか覚えてないけれど、かなりの年配で、すでにガンに体は蝕まれている。しかし、常にキリッとしていて、威圧感バリバリな方。まったく記憶が定かではないが、すでにシリーズに登場してたような気もする。リスベットを「過酷な環境」に放り込んだ張本人。リスベットとしては不倶戴天の敵と言えそうな人。彼女の行った「実験」は、確かに人道的に許されるものではない。それは間違いないとは思う。しかし、同じような学問を研究している人なら、一度やってみたいと思う実験なのではなかろうか。故に彼女には罪悪感ゼロ。怖い。

 というわけで、本作のシリーズの中における位置づけとしては、正直それほど重要ではないような気がする。リスベットは、本作で「倒すべき敵」を一人始末したわけだが、その代償としてホルゲルおじいちゃんを失ってしまったわけで、それはわたしには結構大きなことのような気がする。
 ま、いずれにせよ、再びミカエルの所属する雑誌「ミレニアム」は部数を伸ばせそうだし、意外と結末は良かった良かったで終わるが、うーん、若干物足りなかったような……。
 やはり、踏みつけられ、槍で体を串刺しにされたドラゴンは、起死回生のドラゴン・ブレス=「復習の炎」をぶちかましてやろうとあきらめていないわけで、リスベットは果たして、最大の敵である妹カミラをぶっ飛ばせるのでしょうか。まあ、そりゃあきっとぶっ飛ばせるでしょうな。しかしその代償はおそらく重いものになるという予感はするし、そして勝利した後のリスベットは、いったい何を世に求めるのか。なんか、もうやりたいことがなくなっちゃうような気もしますね。いわゆるひとつの「復讐は何も生まない」説は、きれいごとではあっても、結構真実だろうしな……。わたしとしては、リスベットがいつか心からの笑顔を見せてくれる日が来るのを楽しみにしたいと思います。

 というわけで、もう書きたいことがなくなったので結論。
 世界的大ベストセラー『ミレニアム』シリーズの第5弾、『Millennium5:Mannen Som Sökte Sin Skugga』の日本語版が発売されたので、さっそく買って読んだ私であるが、本作は若干物足りなさを感じたものの、わたしとしてはリスベットに再会できただけで大変うれしく、結局のことろ毎日大興奮で読み終えることができた。サブタイトルも、スウェーデン語の原題「自分の影を探す男」も大変内容に添ったいいタイトルだと思うし、意外と日本語タイトル「復讐の炎を吐く女」も、読み終わるとなんだかしっくり来るいいタイトルだと思います。亡くなったLarsson氏の後を引き継いだLagercrantz氏も大変だと思いますが、次の第6弾、楽しみにしてます。予定では2年後らしいすね。毎回、『STAR WARS』の公開と同じ時期なので、覚えやすくて助かるっす。以上。

↓ 正直、スウェーデンには今までほとんど興味がないというか、行ってみたいと思ったことはぼぼないのだが、リスベットが幼き頃に見上げた、ストックホルム大聖堂のあの像は観てみたいすね。

昨日の帰り、本屋に寄ったら、2年ぶりの新刊が出てたので、やった、待ってたぜ!と喜び勇んで買った本、それがコイツです。
Millenium05-02
 かの世界的大ベストセラー、『ミレニアム』シリーズの最新第5巻であります。
 スウェーデン語の原題は「Mannen Som Sökte Sin Skugga」といい、これをWeb翻訳にかけると「自分の影を探していた人」という意味が出た。Sökteは探す、検索するという動詞Sökaの過去形?のようで、Sinは人称代名詞で「彼の(=自分の)」、Skuggaは影、だそうだ。なるほど。
 そして英訳タイトルは「The Girl Who Takes an Eye for an Eye」というそうで、これは日本語訳すると「目には目をの女」てな意味になるんだろうと思う。
 そして日本語版のサブタイトルは、「復讐の炎を吐く女」となっています。それぞれ違いますなあ。
 というわけで、昨日の夜から読み始め、上巻の150ページほどしか読んでいないけれど、いきなりリスベット in Jail、で刑務所に入っているリスベットから始まる物語に、既にもう大興奮で読み進めております。まだ事件の全容はさっぱり見えてこないけれど、どうもまた過去と対決するお話のようで、大変楽しみですな! 今のところ、リスベットは前作ではまだ邪悪な妹との決着はついていないわけで、当然妹の暗躍も出てくる? と予想されるけれど、どうも本作は、そもそもリスベットの超絶能力はどうして身に着いたのか、的な、オリジンの話になる予感です。なので、今のところわたしとしては、母国スウェーデン版のサブタイトルが一番内容に合っているような気がしています。日本語のサブタイトルは、英語版に合わせたのかな。
 ま、その予感は全然テキトーなもので、読み終わったら全く違ってた、となるかもしれず、とにかくもう、ページをめくる手を、落ち着け! 今日はここまでだ! となだめるためには非常に強力な意志力が必要ですよ。

 というわけで、わたしは大変興奮して読み始めましたことを、以上ご報告申し上げます!

↓ 電子では明日発売のようですな。わたしは、読み終わったら友人に差し上げる予定なので、さっさと紙の本で買いました。電子の方が、いくばくか、お安くなってるみたいすね。2年後ぐらいに発売になるであろう、文庫版まで待つ理由は一切ないと存じます。
ミレニアム 5 復讐の炎を吐く女 上 (早川書房)
ダヴィド ラーゲルクランツ
早川書房
2017-12-20

ミレニアム 5 復讐の炎を吐く女 下 (早川書房)
ダヴィド ラーゲルクランツ
早川書房
2017-12-20

 はーーー……昨日書いた通り、わたしはとある海外翻訳ミステリーを一昨日から興奮して読み始めているわけだが、今、読み終わってしまった。やれやれ。たぶん、読書を習慣にしている人ならば、上巻・下巻ともに4時間かからないぐらいで読めると思う。合計約8時間弱。はーーー……面白かった。幸せです。続きが読めたなんて。
  というわけで、これである。
ミレニアム 4 蜘蛛の巣を払う女 (上)
ダヴィド ラーゲルクランツ
早川書房
2015-12-18

ミレニアム 4 蜘蛛の巣を払う女 (下)
ダヴィド ラーゲルクランツ
早川書房
2015-12-18

 昨日も書いたので、もはや紹介の必要はなかろう。全世界で8000万部売れた、大ベストセラー。しかし、著者は刊行前に亡くなっており、その続きは読めないものと誰しもががっかりしていたあの『ミレニアム』シリーズの、まさかの続編である。
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 ※2016/01/29追記:やたらと「ミレニアム4」「文庫」で検索してここにたどり着く方が多いので、余計なお世話の蛇足ですが、文庫が出るのは出版界の常識からすると2年以上あとです。わたしもかつては文庫が出るまで待つ派でしたが、よく考えると、どうせ文庫でも1冊1000円近くするので、それならもう、さっさと読みたいときに読む派に変わりました。かつて、「ミレニアム」の1~3を文庫が出るまで待ったわたしが言うのもアレですけど。置き場所に困る人にも、電子書籍というソリューションがありますよ。超便利です。
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 昨日は、この続編は出版社側が、存在するとされている第4巻の途中までの原稿や、シリーズ全体のプロットをなかったものとして、まったく別の作家に書かせたいわゆる二次創作らしいと書いたが、出版社だけでなく、亡くなった作家の父と弟も、続編を書くことを出版社とともにお願いしたそうだ。どうやら、正当な版権所持者は遺族である父・弟・出版社であるらしい。なので、亡くなった作家Stieg Larsson氏と長年パートナーとして苦楽をともにしたであろう女性は、一切関与していないようだ。なんかそれも残念な話ですが。まあ、100%間違いなく断言できるのは、亡くなった作家のためではなく金儲けのための刊行であろうということだ。だって、そうでないなら、存在するといわれる未完原稿をないがしろにするわけないもの。そういう点では非常に、どこか素直に大歓迎する気持ちにはなりにくいが、まずは味わってみたいという誘惑には抗えないのも事実である。

 ともあれ。
 実際に発売された『ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女』を読み終わった今、確かな自信を持って言えることは、シリーズを読んできた方なら、この『4』を十分楽しめることは間違いなかろうということである。非常に面白かった。巻末の解説によれば、文体も非常にLarssonを思わせるもので、きっちりと勉強して書かれているそうだが、はっきり言って『ミレニアム』シリーズを読んだのはもうだいぶ前でそんなこと言われてもわたしには全然記憶にないし、そもそも翻訳で読んでいるので、わかりっこない。ただ、これも昨日書いたが、ちょっと場面転換は上手じゃないかも、とは思う。主体のキャラが変わったとき、すぐに物語の筋を追わず、その人物描写が若干長めに入るので、そこで流れが一瞬切れてしまう箇所がいくつもあるのは、おそらく誰でも感じるのではなかろうか。しかし、そんなことはどうでもいい。物語として面白ければ。で、実際のところ、非常に面白かったわけで、わたしとしては大満足である。

 おそらく、これまでの3部作を読まないで、いきなりこの作品を読もうとする人はまずいないであろう。いるとしたらよっぽど変な人だと思うな。ま、そんなこともどうでもいいので、あくまで『ミレニアム』3部作を読んでいることを前提に話を進めますが、明らかに、『ミレニアム』3部作は、まだ未完であったと誰もが感じているはずだと思う。あいつって結局どうなった? というキャラクターが一人、残っていたことを覚えているだろうか? わたしは明確に覚えていた。なので、絶対に今回の『4』では、そのキャラクターとの対決の話になるであろうと思って、最初の上巻のページを開いたのである。

 上巻は、とあるコンピューターサイエンスの天才の話から始まる。まだ一体、どんな話になるか分からない。また次に描かれるのは、我らが主人公ミカエル・ブルムクヴィストが所属する出版社の看板雑誌「ミレニアム」が、またもや存続の危機に陥っており、うっかり受けた資本提携先から、「ミレニアム」の誌面について横槍が入りそうだということが分かる。おいおい、せっかく資金を出してくれたハリエット(第1部のヒロイン)はどうなっちゃったんだよ? と思いつつも、現在の世界的な出版不況からすれば、そりゃ、雑誌だけでは出版社が生きていけないことは、嫌というほどわたしは承知しているので、この展開は、痛いほど良く分かる。ああ、「ミレニアム」もそりゃヤバイわな、と。増資を引き受けてもらって、その時は「経営には口出ししません、今まで通りやっていただければ」なんて口約束があっても、その後に、しっかりと経営に口出ししてくるなんてことは、残念ながら世には普通に起こることである。なので、主人公ミカエルが、「ミレニアム」を救うには部数を回復し、どうしても売上を伸ばさないといけないわけだが、残念ながら前3作でモノにしたスクープの栄光も落日のものとなり、やたらとバッシングにさらされてしまっていた。あいつは古い、過去の人だ、みたいな。
 そんな、もうしょんぼりな状態のミカエルに、冒頭のコンピューターサイエンスの天才と会って話しを聞いてみて欲しいという情報提供者が現れる。なんでも、天才はとある画期的な発明をなしている、が、ハッキングの被害にあった。それは間違いないことで、天才もそう言っているし、その天才が唯一認めている「凄腕ハッカー」もそう断言している、と。ミカエルは、まーたどうせ、与太話でしょうよ、と思って適当に話を聞いていたものの、その「凄腕ハッカー」なる人物が、「女」であり、「タトゥーとピアスだらけで、ゴスとかパンクとか、そういう感じでした。あと、がりがりに痩せていました」という話を聞いて、な、なにーーー!! ということになる。ここまで読めば、当然シリーズを読んできた我々も、な、なんだってーーーーー!? ですよね。わたしも大興奮。とうとう来た。我らがヒロイン、リスベット・サランデル様の登場ですよ!!!
 とまあ、ここまでの間に、実はもっといろいろな出来事があるのだが、ネタバレになるので書きません。いずれにせよ、ここから先はわたしはもう、ページをめくる手がどんどん加速していくわけです。そして、あの、シリーズ三部作では結局ほとんど出てこなかったアイツが、やっぱり黒幕であることが下巻ではっきりする。これはネタバレかも、とは思いましたがその人物に心当たりがある人なら、結構はじめの方、上巻の真ん中あたりでピンと来ると思います。

 しかし、きっちりこの『4』で、想像通りアイツとの対決が描かれたことは、ファンとしては大変嬉しい展開であったと思う。なかなか分かってるじゃあないか、とわたしとしてはこの作品を高く評価したい。ただ、結末は若干の、ほんの少しだけど、ここで終わり!? 感はある。まあ、確実に今後も描くためのヒキとしては非常にアリだし、事件自体はきっちりと、そして結構美しく終わるので、十分以上にお見事ではあると思う。こうなったら、早く次を出版していただきたいですな。予定では、次の『5』が2017年、『6』が2019年だそうで、まるで『STAR WARS』と同じ展開だそうです。
 また、映画の方も、シリーズ第1作目をせっかくDaniel Craigという現代最強イケメン007を主役としてハリウッドリメイクしたのに、その後のシリーズの映画化は全然進んでいませんが、どうやら次は、今回の『4』を映画化するらしいという情報も既に出ている。それはそれで、わたしとしては十分アリだと思う。『2』と『3』は明確に前編後編といった構成なので、長いし、シリーズとしては絶対に欠かせない物語が描かれているけれど、映画としてその部分を飛ばすことは、小説をちゃんと読んでいれば、という前提条件の下ではあるけど、アリですね。とはいえ、キャストとして、主人公ミカエルはもっとおっさんイメージなので、Daniel Craigだとカッコ良すぎるし、強そうに見えすぎると思うけどな。リスベットは、ハリウッド版のRooney Maraちゃんよりも、スウェーデン版のNoomi Rapaceさんの方がイメージに合っているとは思うけど、もう、今のNoomi Rapaceさんではダメでしょうな。歳を取りすぎてるので。↓こちらがスウェーデン版の映画の予告

 とまあ、わたしとしては非常に楽しい8時間を過ごせたわけで、今回大抜擢されて本作を書いてくれたDavid Lagererantzs氏を大いに賞賛したい。そりゃあまあ想像を絶するプレッシャーであったろうに、良くぞ頑張ってくれました。その辺のことは上巻のあとがきに結構書いてあります。
 また、どうでもいいのだが、今回の『4』のサブタイトルは、スウェーデン版オリジナルでは「われわれを殺さないもの」というものらしい。これは……要するに監視社会のことだろうか? いろいろ書くとネタバレになるのでやめときます。なお、「蜘蛛の巣を払う女」 というサブタイトルは、英語版のサブタイトルの翻訳ですね。ちなみに、第1作の「ドラゴン・タトゥーの女」というサブタイトルも、実は英語版のサブタイトルで、スウェーデン版のサブタイトルを訳すと「女を憎む男」という意味らしい。まさしく、リスベットの敵、ですな。

 最後に、既に読んだ人、これから読む人に、昨日も挙げた参考となるものを挙げておこう。
 冒頭の方に出てくる、リスベットとフランス・バルデルが大学で出会ったときの議論、あれを理解したい人は、これを観た方がいい。これを観た人なら、あのシーンの二人の会話がすんなり理解できると思う。映画として超傑作。わたしはかなり好き。
インターステラー [Blu-ray]
マシュー・マコノヒー
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
2015-11-03

 それから、フランス・バルデルが研究していた内容を理解したい人は、これを読むとかなり具体的に分かると思う。まあ、本の内容としては、かなりつまらないけど、知識としては十分以上に人工知能の危険性を理解できるものです。
人工知能 人類最悪にして最後の発明
ジェイムズ・バラット
ダイヤモンド社
2015-06-19

 わたしは偶然、↑の映画も観てたし、本も読んでいたので、非常に本作を楽しめたし、フランス・バルデルが命を狙われる背景も実感として理解できた。
 また、このBlogを読んでいる人にはお馴染みのように、わたしはクソ映画オタであり、Marvel コミックのヒーローが大好きなわけです。本作『ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女』を既に読み終わった人なら、わたしが何を言いたいか、分かるよね? わたしは、敵が「サノス」と名乗っていると判明した時点から、もうリスベットのハンドルネームについて、まさか!? と思いました。そしてそれが的中したときは、もう大興奮でしたw

 というわけで、結論。
 『ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女』はわたしはもの凄く面白いと思います。たぶん、亡くなったStieg Larsoon氏の書こうとしていた作品とはまったくの別物だとは思う、けれど、もう二度と会えないと思っていたリスベットと、再び出会えた我々は、やっぱり幸せだと思います。シリーズを読んできた人は、是非とも今すぐ書店へGO!! でお願いします。以上。

↓ やっぱ、一度は行ってみたいですなあ……。
るるぶ北欧 (るるぶ情報版海外)
ジェイティビィパブリッシング
2015-02-25

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