と、いうわけで、2週間前に先行上映会で観た『機動戦士ガンダム THE ORIGIN II 哀しみのアルテイシア』を、Blu-rayを手に入れるために再度観てきた。既に2週間前に散々書いた通り、非常に高いクオリティでアニメ化された『THE ORIGIN』。初日をむかえたという事で、今日は思いっきりネタバレで書くので、知りたくない人はここから先は自己責任でお願いしたい。一応予告を再度貼っときます。

 まずストーリーだが、今回の『哀しみのアルテイシア』は、ご存知の通り、いわゆる「ファースト・ガンダム」を完全に描いたコミック作品『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の、第10巻に当たる部分である。
 一応説明しておくと、『THE ORIGIN』は単行本全23巻+後日譚の24巻からなっており、「ファースト・ガンダム」と一部設定が修正されている部分も結構ある。特にキャラクターの年齢設定は大きく見直され、アニメよりも年齢が上げられたキャラクターが多い。基本的にはオリジナルのTVアニメのストーリーを大枠では踏襲しているが、ホワイトベースの進路だったり、マ・クベの最期だったり、結構いろいろな点でアニメとは違うストーリーになっている部分がある。その中で、おそらく、最大(?)の特徴は、一年戦争前史と言える、ジオン・ズム・ダイクンの死から一年戦争開戦までが回想としてきっちり描かれている点だろう。そこでは、ダイクンの遺児である後のシャア、セイラさんの二人の成長の物語が語られている。この長い回想が第9巻から第14巻までかな、6冊にわたって描かれており、今回のアニメ化では、一体どこまでやるんだろう? というのが大方のガンダムファンの注目点ではないかと思う。
 で。「機動戦士ガンダム」という作品で舞台となる「宇宙世紀」の時系列を、『THE ORIGIN』設定でごく簡単にまとめると、こうなる。

 ■宇宙世紀0068~0069
 ジオン・ズム=ダイクン死亡。その子供であるキャスバル(9~10歳)とアルテイシア(6~7歳)が地球へ逃れる。『THE ORIGIN』の第9巻に相当。映画の前作「蒼い瞳のキャスバル」でアニメ化済。
 ■宇宙世期0071~0074
 兄弟は地球で「マス家」の養子となるが、ザビ家によるジンバ・ラル暗殺事件があって再び宇宙に戻り、テキサスコロニーに逃れる。また、一方でキャスバルたちを地球に逃したことで軍籍を奪われた(?)ランバ・ラルは、ドズルの要請でダークコロニーへ。そこで「モビルスーツ」開発のテストパイロットになる。テキサスコロニーでは、キャスバルたち兄妹は、とある運命的な出会いを経験するが、ハモンさんから母が亡くなった知らせを受け、憎悪に駆られたキャスバルは、妹アルテイシアを置き去りにし、「シャア・アズナブル」となってジオン士官学校へ入学する。その入学式で新入生代表として宣誓したのは、ザビ家四男のガルマだった……。これが『THE ORIGIN』第10巻のお話。
 ■宇宙世期0075~0079
 『THE ORIGIN』第11~14巻に相当。シャアとなったキャスバルの士官学校での話しと、ジオン独立のきっかけとなった、「暁の蜂起事件」と呼ばれる士官学校蜂起事件を経て(ここまで11巻)、シャアは再び地球へ降り、ジャブローの建設現場で働くことになり、そこでララアと出会う。そのころ宇宙では、ジオニック社のミノフスキー博士によるモビルスーツ開発の進展と亡命事件、連邦軍とアナハイム社のテム・レイによる対抗機開発と初めてのモビルスーツ戦での惨敗などが描かれ、0079年ジオン公国の独立宣言&宣戦布告でによりついに戦争勃発(ここまで12巻)、人類の半数を死滅させた「コロニー落とし」から、のちにルウム戦役と呼ばれる、シャアが「赤い彗星」と異名をとることになる戦いが描かれる(13~14巻)。
 ■宇宙世紀0079~0080:いわゆる「一年戦争」=「ファースト・ガンダム」 
 
 ただ、明確な年号がはっきりと描かれる事が少ないので、上記のまとめはわたしがWeb上でwikiをはじめとしたいろいろな情報でまとめたものなので、ちょっと怪しいことは白状しておく。というわけで、映画の中では、前作から3年ほどが経過しており、地球に逃れた兄妹の運命を描いたのが今回の『哀しみのアルテイシア』だ。

 しかし、映画の前作が原作9巻を完全に描いたのと違い、今回は、実は原作10巻の「途中まで」だった。わたしはちょっとこの点については、あれっ!? と思った。原作コミックを読んでいるわたしには、微妙に切りが悪く感じられたのだ。上記の通り、原作10巻の最後は、士官学校入学式の、ガルマの「宣誓!!」というところで終わる。そこでは、キャスバルは既にシャアになっているわけで、その部分までは今回描かれていない。今回の映画は、キャスバルがアルテイシアに別れを告げるところで終わる。この「キャスバル兄さぁーーーーん!!」と叫ぶアルテイシアは、オリジナルのTVアニメでも回想で描かれていた名シーンであり、そこに至るまでの前史が『THE ORIGIN』で初めて描かれたわけだが、ここで終わり!? というのが、今回の映画では一番驚いた。
 その直後の、キャスバルがシャアになる部分が非常に重要だと思うのだが……ただ、ここも描いて、原作10巻通りのところまでを描くとなると、若干、今回のサブタイトルである『哀しみのアルテイシア』にそぐわなくなってしまうとは思う。ので、おそらくは監督も安彦先生も相当悩んで、ここまで、としたのだと思う。実際のところ、原作コミックを読んでいない人ならば、ここまでというのは非常に切りはいいかもしれない。なので、まあ、これもアリか、と納得することにした。映像クオリティは前作同様に非常に素晴らしく、この作品は金を払って見に行く価値が十分以上にある、と断言したい。
 ただまあ、今回ここまでとなると……次回の映画は、そのシャア誕生のエピソードだけでも15分ぐらいは必要だろうから、どうなんだろう、11巻を一気に描けるのかな……とちょっと心配だ。実は、2週間前の最速上映会では、毎回最後に流れる次作の予告がなかったので、どうなんだろうと心配だったのだが、今日公開された劇場では、きちんと次作の予告も流れていた。次回、第3話のサブタイトルは『暁の蜂起』である。それはまさに原作11巻で描かれた物語であるので、たぶん、次作は10巻の最後40ページくらい+11巻全部を描いてくれるものと思われる。
 となると……安彦先生は今回の映画は4部作、とおっしゃっていたので、最後は12巻を描いて終わり、となるのかもしれない。いやーーそうなったらちょっと……残念だなあ……話的にちょっとだけ中途半端になっちゃうんだよな……ルウム戦役はやらないのかなぁ……ここも見せ場が多いのになあ。

 で。最速上映会での安彦先生を交えたキャストトークショーで聞いた話である。
 今回、10代前半~中盤のキャスバルだが、既に発表されている通り、池田秀一さんが声を担当している。この、若いキャスバルの声だが、トークショーで聞いたところによると、ちゃんとオーディションをやって、池田さんが役を獲得したんだそうだ。そして実は一度アフレコが終わって、OKが出たのにもかかわらず、池田さんは終わったその日、夜、飲んでいて、「ごめん! やっぱりもう一回やらせてくれ!!」と監督に直訴したんだそうだ。本人的には、思うところがあったのだろう。安彦先生曰く、非常に驚いたそうで、最初のアフレコでも十分な出来だったらしいが、2回目となる一人録りは、さらに良い出来となったのだそうだ。その池田さん渾身の若きキャスバルの声は、ぜひ劇場でご確認いただきたい。ちなみに、池田さんの弁によると、「僕はさ、ちゃんとオーディション受けたのに、(古谷)徹ちゃんはそんなのなかったって言ってたよ(笑)」だそうです。そう、今回、幼きアムロ・レイが一瞬出てきます。ついでに言うと、キャスバルたちをテキサスコロニーに移すことを勧めたのは、ヤシマ・カンパニーCEO。つまりミライさんのお父さん。なので、15歳のミライさんもちらっと出てきます。
 あともうひとつ。トークショーで聞いて、へえ~、マジか、と思ったのは、途中でハモンさんが恐ろしく色っぽく、クラブエデンで歌を歌うシーンがあるのだが、このシーンは、実際に歌担当の澤田かおりさんの歌っている姿を元に作画されているんだそうだ。いや、別にモーションキャプチャーしたわけじゃなくて、歌っている姿を見ながら動きを手描きでトレースしたそうですよ。しかし、ハモンさんやランバ・ラルの大活躍ぶりは、その後の運命を知っているだけになんとも悲しいですのう……

  というわけで、結論。
 原作コミック『THE ORIGIN』を読んだ人も、読んでいない人も、今すぐ劇場へGO!!
 特に、かつてガンプラを作って遊んだ40代のおっさんはぜひ。金はあるんだから、前作を見てないなら今すぐ、Blu-rayをポチって購入し、まず観て、そして翌日にでも劇場へ行くべし!! 絶対に後悔しない。と思う。

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機動戦士ガンダム THE ORIGIN I [Blu-ray]
田中真弓
バンダイビジュアル
2015-04-24





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機動戦士ガンダム THE ORIGIN II [Blu-ray]
池田秀一
バンダイビジュアル
2015-11-26