いやーーー。これは難しい。そして素晴らしい! 今年2017年の暫定1位だな。
 なんの話かって!? 映画『ARRIVAL』(邦題:メッセージ)を今日会社帰りに観てきたのだが、その感想である。これは相当歯ごたえあるぞ……そして、映画としての出来はものすごくイイ! 撮影、そして音楽(というより音響設計か)。実にクオリティが高い。いやはや、素晴らしかった。
 そして、わたしは実に愚かなことに、本作が有名なSF小説が原作だということを全然知らなかった。知ってれば読んでから観に行ったのに……ちくしょー! 原作小説に関するプロモーションってあったのかなあ? 有名な作品らしいが、わたし、恥ずかしながら読んだことのない小説で、その作品の名は『Story of Your Life』(邦題:あなたの人生の物語)。わたしの大好きな早川書房から発売されているので、わたしは帰りの電車内で即、電子書籍版を買いました。くっそーーー読んでから観るべきだったかもなあ……。
あなたの人生の物語
テッド チャン
早川書房
2014-09-30

 なぜそう思うかというと、冒頭に記したように、本作『ARRIVAL』は、正直かなり理解が難しい、非常に歯ごたえのある作品なのだ。もちろん、きちんとストーリーは追えるし、あ、そういうことなんだ!? という最終的なオチというか結末も、ちゃんと映画を観ていれば理解できるとは思う。しかし、ええと、ホントにオレの理解は合ってるのかな? と自信が持てないんすよね……。
 一応、パンフレットを読む限り(パンフには結構詳しい解説が何本も収録されているのでおススメ!)、わたしの理解は正解だったようだが、やっぱり、これはさっそく買った原作を読んでみた方がいいような気がしますね。多分この映画、ゆとりKIDSには全く理解できないと思う。これはホント、早川文庫が似合う、正統派なハードSFですよ。以上。
 で、終わらせるにはまだまだ語りたいことがいっぱいあるので、まずはいつも通り予告を貼り付けて、以下で少し語らせていただくッッッ!! もちろんネタバレもあると思うので、読む場合は自己責任でお願いします。

 今回は、この映画について、いくつかのポイントに絞って、その素晴らしさを記録に残しておこう。いやあ、すげえクオリティですよ。こいつは本物だ。
 【1.物語】
 まあ、物語としては、上記予告の通りである。ある日突然、地球に飛来した謎の宇宙船。しかも12機が地球の各地に「同時に」降り立った(※ちなみに日本(の北海道)にもやって来る)。しかし、地上から数メートルのところで静止し、とりわけ何もアクションを起こさない。世界各国は調査にあたるが、US国内にやってきた宇宙船の調査には、まずはコミュニケーションをとるため、言語学者のルイーズが選ばれる。そして、重力制御された宇宙船内で異星人とのコミュニケーションが始まるのだが―――というお話である。
 わたしも、上記予告はさんざん何度も見ていたので、おそらく物語のカギは、「一体全体、なにをしにやってきたのか?」という点にあるのだろうと予想していた。
 まあ、その予想は誰でもできるし、実際上記予告にもそう書いてあるのだが、最終的に明かされる「目的」について、正確な理解はちょっと難しいと思う。なにしろ、彼らは我々地球人と全く異なる思考をする生命体だ。それを、地球人の常識で計ろうとしても、そりゃあ難しいに決まっている。一番のカギになるのは「時間」の概念なのだが、我々地球人が、時間は一直線に流れ、不可逆なものと考えている一方で、異星人たちはそうではない。それがだんだんわかる仕掛けになっているのである。
 そして、それが決定的に判明するのはかなり後半だ。わたしは中盤のルイーズのある一言(「科学のことはお父さんに聞きなさい」のシーン。これは白黒反転させておきます)で、えっ!? ちょっと待った、てことは……まさか!? と仕組みが理解できたのだが、ここは相当注意深く観ていないと難しいと思う。実は冒頭から、ルイーズは愛する子を病気で亡くし、深い失意にある、というような、その愛する娘とのシーンが何度も何度もフラッシュバックで描かれるのだが、その意味が分かるラストは、やられた――!! やっぱりそういうことなのか!!! と誰しもが驚くものだと思う。
 ただ、最終的にわかっても、この作品は、そういう「理解するのが非常に難しい」という意味において、素晴らしい脚本だったと称賛すべきか、トリッキーで不親切な脚本で、もうチョイ説明が欲しかったと思うべきか、わたしとしては正直微妙だと感じた。観終わった後でも、じゃあなんで……? という疑問がわたしには結構多く残っている。ある意味、ぶった切りのエンディングと言ってもいいぐらいかもしれない。少なくとも万人向け、ではないと思う。
 しかし、だからと言ってつまらなかったとはこれっぽっちも思わない。それは、この難解な物語を支える、映画としての技術的なポイントが、おっそろしく高品位で、すさまじくクオリティが高いからである。
 【2.演出、撮影・映像そのもの】
 ちょっと前に、この作品のメイキング的な映像をチラッと観たけれど、画面は全く自然で本物そのものにしか見えないのだが、宇宙船をはじめ、実はすさまじくCGバリバリである。そして、宇宙船の全貌が画面に現れるまでの、チラ見せ具合も大変上品かつ上質だ。この映画はなるべくデカいスクリーンで観た方がいいと思う。その圧倒的な存在感は本当にそこに存在するようにしか見えないし、完璧に計算されてCG処理された風景の色味、それから雲、時にすごいスピードで画面を横切る戦闘機やヘリなど、まさしく本物にしか見えないCGは超見事である。宇宙船の巨大感も申し分なしで、これは日本の映画界では絶対に撮れない画だ。なんというか、マグリットの絵画を実写化したような、まさしく超現実(シュール・レアリスム)で、わたしはもう大興奮である。
 また、異星人の描写も、当然フルCGだと思うが、もう本当に生きているとしか思えない質感だし(デザイン的にも超秀逸!)、スモーク越しに現れる映像・演出も実に品がある。重要なキーとなる、異星人の描く文字も、そのデザインや描かれた方も、書道をたしなむ我々日本人には完璧に美しく、お見事だ。
 とにかく、本物そのもの、圧倒的な存在感。そして、全編に漂う、尋常ではない「緊張感」。わたしはこの映画を撮ったDenis Villeneuve監督の作品を観るのは4本目だが、去年、Denis監督の前作『SICARIO』を観た時もこのBlogで書いたけれど、その映像には、まるでJOJOで言うところの「ゴゴゴゴゴ」「ドドドドド」という書き文字が見えるような、あの緊張感が常に感じられるのが、Denis Villeneuve監督の作品に共通する特徴であろう。これは、観てもらわないと伝わらないだろうなあ。多分、観てもらえればわたしが言いたいことは通じるような気がする。この、Denis監督の作品に共通する「画面から伝わる緊張感」に非常に大きな役割を果たしているとわたしが考えているのは、音楽、音響設計、というか音そのものである。
 【3.音楽、音響設計、音そのもの】
 本作は、冒頭、非常に印象的な、弦楽器の奏でる音楽から始まる。わたしは音楽にはさっぱり詳しくないのでわからないのだが、おそらくはヴィオラかチェロで奏でられる、重く低い曲。それはエンドクレジットによるとMax Richterというドイツ(生まれのイギリス)人の「On The Nature of Daylight」という曲だそうだ。お、公式動画があるみたいだから貼っとこう。

 この非常に印象に残る曲から始まる本作は、これもDenis監督作品に共通してみられる特徴なのだが、とにかく音の使い方が非常に素晴らしい。まったくの無音部分とのコントラスト、メリハリもきっちり効いていて、映像に緊張感を与えることに成功しているとわたしは思う。冒頭、主人公ルイーズが大学から外に出て、空には戦闘機が行きかい、いったい何事が起きているんだ? という最初のドキドキ感は本当に素晴らしいし、その緊張感は最後まで貫かれていると思う。ズズズズズ……ビリビリビリ……といった、ある意味では不快な重低音が重要なシーンでは常に背後に流れていて、観ている我々の不安を掻き立て、ドキドキさせるわけで、その使い方は、下手を打つと不愉快なものになるけれど、Denis監督の使い方は決してそんなことにならない。本作は、今年2月のアカデミー賞で作品賞をはじめ8部門でノミネートされたが、受賞できたのは音響編集賞のみ、であった。実にお見事であるし、この特徴は少なくともわたしが観た4本すべてに共通する、Denis監督の目印といってもいいだろう。おそらくは、Denis監督の次回作、『BLADERUNNER2049』においても、まず間違いなく発揮されるであろうと思うので、ぜひその点はチェックしたいと思う。

 というわけで、物語・映像・音楽(音そのもの)の3点について、まあテキトーなことを書いたが、役者陣の熱演ももちろん素晴らしい。今回は3人だけ挙げておこう。
 まずは主人公ルイーズを演じた、Amy Adamsさん42歳。おぅ……マジか、もう40超えてるのか……わたしがこの人が演じた中で一番好きな映画は、もちろん『Enchanted』(邦題:魔法にかけられて)だろう。あのジゼル姫は最高でしたなあ。2007年公開だからもう10年前か。最近では、DCヒーロー作品でスーパーマンの恋人、ロイス役でおなじみだけど、すっかり年を感じさせるというか……最近はちょっとアレすね……。でも『her』でのAmyさんはホントに可愛かったので、髪形やメイクで随分変わるんだと思う。本作では、若干疲れたような40代女子であったけれど、その美しく澄んだBlue Eyesが非常に印象的であった。そして娘とのシーンや、すべてを理解した時の表情、大変素晴らしかったと思う。
 次は、わたしの大好きなMCUにおけるHawk EyeでおなじみのJeremy Renner氏46歳。彼は、出世作『The Hurt Locker』でのジェームズ軍曹役や、今やレギュラーとなった『Mission Impossible』シリーズ、あるいはMCUでのHawk Eyeでもおなじみのように、不敵で抜け目ない男という印象が強いけれど、今回は知的な科学者である。登場時はちょっと生意気ないつものRenner氏だが、だんだんとルイーズに惹かれ、協力していく今までとはちょっと違う役柄であったようにお見受けした。本作では実はほぼ活躍しない、けれど、物語において重要な役割で、それが判明する流れはお見事である。まあ、この人の演技ぶりはほぼ関係なく、脚本のおかげだけど。
 最後。調査班の現場責任者?の軍人を演じたのが、ベテランForest Whitker氏55歳。わたしがこの人を知ったのは、かの名作『PLATOON』だが、ホントこの人、若いころは鶴瓶師匠そっくりだったんですが、最近ではすっかり渋い、脇を固める大ベテランですな。声に特徴のある人で、妙にカン高いんすよね。『ROGUE ONE』でのソウ・ゲレラ役も渋かったすねえ。まあ、役的にかなり微妙だったけど。彼もまた、本作ではほぼ何も活躍はしません、が、やっぱり非常に印象に残る芝居ぶりだったと思う。もうチョイ、活躍してほしかったなあ。
 
 最後に、ここまで絶賛しておいてアレですが、ここはちょっとなあ……という点も3つ挙げておこう。まず、一つ目がズバリ、中国に対する扱いだ。本作では、地球に飛来した12機の宇宙船の一つが、上海に現れ、あの国だけ宇宙船に対して好戦的というか、軍事行動を起こそうとする流れになる。ま、それに乗っかるロシアもおそろしあだが、その中国でキーとなるのが、軍人のなんとか将軍なのだが……あの国のシステムにおいて、あんなに軍人が突出して行動を開始しようとするなんてことがありえるのかな? いや、あり得るのか、あの国だからこそ。なんか、なんとか将軍が大物なんだか実感がわきにくかったす。
 二つ目のわたし的いちゃもんは、邦題である。なんなの「メッセージ」って。なんで「アライヴァル」じゃ駄目だったんだ? 作中では、arrivalという単語は何回も出てくる。ほぼ毎回「出現」という字幕がついてたかな。いっぽうのmessageという単語は、わたしのヒアリング能力では1度も出てこなかったように思う(字幕では1回だけあった)。メッセージ……どうかなあ……。物語的にも違う、ような気がするのだが……。arrivalというタイトルの意味は、わたしなりに思うところがあるのだが、これはクリティカルなネタバレすぎるので書くのはやめときます。とにかく、メッセージは違う、と思ったことだけ記しておこう。
 最後、三つ目のわたし的いちゃもんは……これは、完全に映画オタクとしてのどうでもいい文句なのだが……わたしはマジで、結構腹が立ったので書いておくけれど……あのですね、わたしはもう35年以上映画館に通う、40代後半のおっさん映画オタなんですよ。せっせと劇場に通い、パンフも必ず買う、業界的には模範的というか、大切にしてもらってしかるべき、だとすら思うオタク野郎なわけです。なので、言わせてもらいますが……あのさあ! パンフレット! 変なサイズにするのやめてよ!!! 保管するのに困るんだよ、妙に小さい判型は!!! そりゃあね、デザインに凝りたくなる気持ちはよーくわかりますよ? でもね、配給会社の皆さん、そんなデザイナーのこだわりなんて、まったく迷惑以外の何物でもないんすよ、購買者にとっては。今、入場者のどれぐらいがパンフ買ってくれるか、ちゃんとデータ取ってるでしょ? どんどん減っているって、知ってるでしょ? そして買ってるのが、もはや希少種のオタク野郎だけだって、分かってるでしょ? せっかく内容的には読みがいのあるいいパンフなのに、このふざけた判型だけはホント許せんわ……!! はーー。興奮してサーセン。邦題といい、パンフの判型といい、さらに言えばUS公開から半年経っての公開といい……SONYピクチャーズの人々は大いに反省していただきたいものです。

 というわけで、結論。
 わたしが今、一番注目している映画監督、Denis Villeneuve監督による『ARRIVAL』が、US公開から半年経ってやっと公開されたので、初日の金曜夜、早速観てきた。そのクオリティはすさまじく、極めて上物であったのは間違いない。そしてその物語にも大興奮だったわけだが、一方で、この映画が万人向けかというと、その難解な物語はかなりハードルは高いように思えた。しかしそれでも、わたしとしては、現時点における今年ナンバーワンに認定したいと思う。こいつはすごい。この作品を観ると、もう、Denis監督の次回作『BLADERUNNER2049』に対する期待がいやがうえにも高まりますな!! SONYよ、BLADERUNNERのパンフの判型がまーた変なサイズだったら許さないぞ。1982年のオリジナルのパンフ、貸してあげてもいいので、ちゃんと研究してくれ。頼むよマジで。以上。

↓ わたしは中学生の時、たしか臨海学校から帰ってきた翌日に、今は亡き東銀座に存在した「松竹セントラル」という映画館にチャリで観に行きました。いろんなVerがあるけれど、当然、劇場公開版が正典です。ファイナルカットじぇねえっつーの。