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 わたしはもうすっかりゲームはやらなくなってしまったが、わたしの周りにはゲーム好き、というよりもはやハードなゲーマーともいうべき人々はいて、中でも元部下のYくんは、わたしの知り合いの中では一番のゲーマー野郎である。彼は、もはやゲームはPlayStationなどのいわゆる「ゲーム機」でプレイすることは少なく、それよりもハイスペックなPCでのプレイが中心であり、遊んでいるゲームも10年前なら「洋ゲー」と呼ばれていたような、ガチムチ系のアクションゲームが多い。実際のところ、日本で発展したゲーム文化はもはや日本でしか売れないガラパゴス化の方向で進化し、もちろん、任天堂やスクウェア・エニックス、あるいはバンダイナムコなど、大手ゲームは売れてはいるが、世界規模ではあまり大したことがなく、その存在感は薄れるばかりと言ってもいいだろう。日本人がJ-RPGと呼ばれる作品やスマホをいじって喜んでいるうちに、世界の屈強なゲーマーたちはさっさと先へ進んでしまったわけである。
 ま、いずれにせよ、わたしとしてはゲームの世界も仕事上詳しくある必要があったのだが、自分自身がプレイしていなくても、隣に座っていたY君に話を聞けばいいし、そもそもY君に任せておけばよかったわけで、ゲームに関しては超ニワカである。そしてそんなニワカなわたしでも、当然幾つかの超有名タイトルのことは、だいぶ前から知っていたわけで、その中でも世界的に大人気であり、Y君も新作が出るたびにプレイしていたゲームの一つが、『Assassin's Creed』というシリーズである。わたしは、Y君が『Assassin's Creed』について、こっそり忍び寄って、サクッと殺るゲームっす、と熱く語るのを聞いて、それは要するに、往年の名作『天誅』みたいなゲームってこと? と質問したことがあるが、ええと、間違ってはいない、けど、違う、かな? と微妙な回答であった。曰く、物語がしっかりしていて、ストーリー自体が面白い、のだそうだ。なので、わたしはプレイしたこともないのにいつの間にか「テンプル騎士団」だの「アサシン教団」だの、「エデンの果実」だのといったゲームの世界観について知識を得ていったのである。
 というわけで、以上は前振りである。先週から公開になった映画版『Assassin's Creed』をやっと観てきたので、そのことをこれから書こうと思っているのだが、実はあまり書くことがなくて……つい無駄なことを書いてしまった……。一応、今回の映画版の予告編は、シリーズをすべてプレイしてきたY君をして相当期待できる! というものだったので、まあ、何も知らないに等しいわたしでも、楽しめるかな、と思ったのだが……結論から言うとかなり上級者向けの物語になっていて、Y君によれば、説明がいろいろと不足しているので、自分は楽しめたけどアンタにゃわからんかったでしょうよ、という若干の侮蔑を含んだ趣旨を丁寧な言葉で申し渡されることとなったのである。くそう。ああそうだよ、おれには良くわかんなかったよガッデム!
 
 というわけで、FOXには珍しく、非常に観たくなるようないい出来の予告である。だいたいお話は上記予告の通りと言っていいだろう。ただし、なかなか複雑なお話で、正直なところ良くわからない部分も多いし、そもそものメインとなる機械「アニムス」が謎過ぎてついて行けないような気もした。
 ざっと物語を説明すると、中世十字軍にも参加したテンプル騎士団が、現代の世にもその力を保持して世界にこっそり存在していて、「エデンの果実」を探していると。その目的は、ざっくり言うと人類の洗脳で、そのキーアイテムとして「エデンの果実」が欲しいわけだが、「エデンの果実」とは、最初の人類(アダムとイブ)に、神への叛乱を起こさせたもので、無知なまま神へ従属するのではなく「自由」を人間にもたらせたものであって、それは人間の精神(をDNAレベルで?)改変させる力がある、と彼らは思っている。で、その「果実」を最後に目撃した、15世紀のスペインにいた「アサシン教団」の男がいて、そいつの末裔として現代を生きる男をとっ捕まえて、そいつの「DNAに刻まれた記憶」を紐解けば、その所在がわかるんじゃね? ということで、DNAから先祖の記憶をトレースできる「アニムス」なる謎マシーンを使って「果実」を追う――てなお話である。実はわたしはこれで正しい理解なのか、正直全然自信がない。テンプル騎士団は全員修道僧だから、「エデンの果実」は神に反抗する、あってはならないもの、だからそれを確保する、ってことなのかな? 一方の「アサシン教団」は、あくまで人間の自由を守るために、テンプル騎士団と戦ってると、まあそんな感じの対立構造かもしれない。なんというか、よく分からなかったのがわたしの頭の悪さのせいなのではないかと非常に残念である。そして、アニムスについてももうチョイ原理的な説明が欲しかった。だいたい、アニムスを開発製造できる技術があったら、もっと別のやり方で世界征服できるんじゃね?
 しかし……たぶん、実際のところ、この映画はもうそんなストーリーはどうでもいいんじゃないかとも思う。それよりも、見せ場はゲームの世界そのままの超人的なアクションにあるのだろうと思う。パルクール、あるいはフリーランと呼ばれる縦横無尽なアクションシーンこそがこの映画の最大のポイントだろう。
 だが……わたしはこのせっかくのアクションも、映画としてはかなりイマイチだと感じた。とにかく画がブレブレで、きちんと画面にとらえられていないのは大問題だ。せっかくすごいスタントなのに活かしきれていない。実に素人っぽい画でわたしは結構がっかりした。カメラのブレを臨場感と勘違いしている映画をよく見かけるが、本作もその傾向が大いにある。アレじゃあダメだと思うな……。まあ、『Assassin's Creed』の代名詞ともいうべき「イーグル・ダイブ」は凄かったすね。ゲームそのままの迫力はあった……のだが、これはやっぱり3Dで味わうべきだったんだろうなと思う。なのに、ぜんぜん字幕3D版が上映されないのはホントに意味が分からないというか……こういう点がFOXのダメなところで、極めて残念だ。本作は、イーグル=鷲が重要なモチーフになっていて、鷲が空を舞うショットも多いのだが、あれを3Dで見せないでどうすんだ……配給社の配慮のなさには失望しかない。そもそもFOXは『Avatar』で3Dの威力を世界に知らしめて世界中の映画館の設備を改めさせた張本人なのに。実に分かってないとしか言いようがない。
 というわけで、ストーリーも映像も、配給社のマーケテイング戦略も、わたしとしてはかなりイマイチに感じた。せっかくキャストは豪華なのに、実に残念であった。ただ、Y君のような、元のゲームの大ファンは大変楽しめたらしいので、結論としては一見さんお断りで、分かる人には分かるということなんだろうと思う。なんか、もういつものようにキャスト紹介する気も失せたので、ざっと流して終わりにします。
 主人公の現代の死刑囚カラム・リンチと、15世紀のアサシン教団のアギラールという2役を演じたのが、世界有数のイケメンと呼ばれるMichael Fassbender氏。そしてヒロインでアニムスを開発したソフィア博士を演じたのが、これまた世界有数の美女と呼ばれるMarion Cotillardさん。そしてその父で現代のテンプル騎士団に所属する、アニムス開発会社社長を演じたのが、オスカー男優Jeremy Irons氏。この人もカッコイイ。とまあ、そんな有名美男美女がそろっており、ビジュアル的には大変見栄えがする。とりわけFassbender氏のアギラールは、ゲームのイメージそのままで、大変カッコいい。散々イマイチだと言ったけれど、シーンのワンカットワンカットのビジュアルイメージはとてもイイので、物語や雑な撮影がきちんとしていれば、もっとだれでも楽しめる作品となったはずなのだが、まあ、なんというか、残念です。いろいろと。

 というわけで、もう飽きたのでぶった切りで結論。
 映画『Assassin's Creed』は、そのゲームのビジュアルイメージをかなり忠実に再現しているけれど、まず物語は一見さんお断りの分かりにくさがあり、せっかくのアクションシーンもブレブレの映像できちんとわからない部分があって、一言で言うと残念、であった。もちろん、役者は美男美女だし、アクションスタントもすっごいので、そういう点では見事ではある。けど、話がよく分からんという決定的な部分はどうしようもないというか……PV的ですね、ゲームの。ただ、ゲームの大好きなYくんは楽しめたというのだから、ま、そういうことです、はい。以上。

↓ 日本では一応これが最新作かな? でも、Y君曰く、PCでやるのが一番、だそうです。キーボードでよくできるなあ、と言ったら、そんなの当たり前ですよ!と鼻で笑われました。 

 わたしが大学および大学院で専攻したのは、ドイツの近現代演劇である。しかし、だからと言ってドイツの作品だけ読んでいればいい訳では全然なく、当然ギリシャ悲劇やフランス喜劇も読んだし、あくまで日本語翻訳で読める範囲だが、名作と言われる世界の戯曲類は、おそらくほぼ全て一度は読んだつもりでいる。そして散々作品を読んでみて思ったのは、やっぱりSHAKESPEAREはすげえ、つか、どう考えても一番面白い、という結論であった。
 シェイクスピア作品の中で、わたしの趣味としては、一番好きな作品は『Henry IV part 1&2』か『The Marchant of Venice』なのだが、いわゆる4大悲劇の中では、『MACBETH』が一番面白いと思う。 実は、わたしにとって『MACBETH』は、とりわけ思い入れのある作品なのだ。
 あれはたしか約25年前、戯曲を読んだすぐ後の頃だと思うけれど(さっき調べたら、わたしが持っている岩波文庫の「マクベス」は1990年発行の第54刷だった)、当時、銀座のプランタンの裏手の並木通りにあった名画座で、「黒澤明の世界」と題して、全作品を1週間ずつ、二本立てで延々上映する企画をやっていて、わたしも毎週足しげく通って全作制覇したのだが、その時に観た『蜘蛛巣城』という黒澤明監督作品は、まさしく『MACBETH』を原作とした戦国時代劇だったのである。まあ、その事実は有名なので、世の中的にはお馴染みだと思うが、約25年前にわたしは初めてそれを知り、観て、猛烈に興奮したのである。コイツはすげえ、つか、もうSHAKESPEAREの原作越えてるじゃん!! 黒澤すげえ!! と、当時の仲間に興奮して話をしたことを良く覚えている。
蜘蛛巣城 [Blu-ray]
三船敏郎
東宝
2010-02-19

 この、黒澤明監督によるスーパー大傑作『蜘蛛巣城』は、『MACBETH』原作だし、他にも、『』は『KING LEAR(リア王)』を原作としたウルトラ傑作、そしてわたしがロシア文学にハマったきっかけとなった『どん底』『白痴』など、25年前のわたしをとにかく興奮させた一連の黒澤映画は、今の若造どもにも観てもらいたい、傑作中の傑作だとわたしは考えている。実際わたしは、今の世の中には、映画好きを名乗る人間はやたらと多いが、黒澤映画を観ていない奴は一切認めないことにしている。まあ、わたしはこう見えて、心が狭いのである。
 というわけで、先日、世界イケメン選手権開催時にはTOP10に入るような気がするMichael Fassbender氏が、先日のSteve Jobs氏の次に演じるのはMACBETHだと聞いて、はあそうですか、とわたしが黙っていられるわけがない。な、何だと!? ほほう、そいつは要チェックだぜ!! というわけで、最新の『MACBETH』をさっそく観に行って来た。そして結論から言うと、この映画は相当上級者向けのMACBETHで、事前知識がないと、さっぱり意味が分からない出来栄えとなっていたので、ちょっと驚いたのである。

 物語はもう有名なので説明しないが、おそらく、『MACBETH』を上演あるいは映像化するに当たって、問題というか、どう表現するかポイントとなる点が2つあると思う。
 一つは、世界の文学史上最も有名な悪女の一人である、「マクベス夫人」をどういうキャラクターとして表現するかという点だ。 主人公マクベスより場合によってはクローズアップされる、「マクベス夫人」。彼女についてはいろいろな解釈があると思うが、マクベスを操ると言ったらちょっと言い過ぎかもしれないけれど、間違いなく本作では一番カギとなる人物である。
 そしてもう一つは、有名な「三人の魔女」とその「予言」をどう表現するか、という点である。本作に限らず、SHAKESPEAREの作品には幽霊とか亡霊とか、そういうSuper Natural要素が頻繁に出てくるが、『MACBETH』という作品には「三人の魔女(Three Witches)」が出てきて、極めて重要な「予言」をする。その予言にマクベスは翻弄され破滅に至るわけで、これもまた物語のカギとなる部分であろう。
 ちなみに、上記2点のポイントを知らない人は、恐らくこの映画を観ても、さっぱり分からなかったと思う。というのも、実に……なんというか、特に説明がないし、シャレオツ臭漂う雰囲気重視の映像で、どうも物語自体が薄いのだ。簡単な方から言うと、「三人の魔女」は、この映画では、まったく何者かよくわからない存在で、ビジュアル的にも魔女には見えないし、ただの良くわからない普通のおばさんたちなのである。しかも、これはわたしの記憶が失われているだけかもしれないが、なんと今回は「三人の魔女+謎の幼女」の4人組である。黒澤監督の『蜘蛛巣城』では確か一人の謎の老女だったように、改変するのは全然構わないのだが、なんというか、今回の魔女は全然雰囲気がなくて、ふらーっと現れては消える存在で、十分超常の存在ではあるけれど、もうチョイ、マクベスやバンクォウは驚いたり怖がったりしてもいいように思った。なんか、フツーに受け入れてしまっては、観客的には、あのおばさんたち何なの? と思うばかりで、どうにも物足りないようにわたしは感じた。知らない人が観て、通じたのかどうか、わたしにはさっぱり分からない。
 で、問題の「マクベス夫人」である。ほとんど彼女のキャラクターを説明するような部分がないので、おそらく、『MACBETH』を知らない人が観たら、一体この奥さん何なの? と訳が分からなかったのではないかと思う。そして『MACBETH』を知っている人なら、ズバリ、イマイチに感じたのではなかろうか。狂気が足りないし、迫力もない。マクベスを鼓舞するようなところも乏しい。元々、マクベスが結構クヨクヨ悩むところを、しっかりしろ!! とたきつけるようなキャラなのだが、ま、はっきり言って存在感が薄すぎるとわたしは思った。おまけに泣くとは!! こりゃあ、ちょっと問題ありであろう。
 わたしは、観終わって、一体こんな演出をした監督は何者なんだ!? と思ってパンフを読んでみたところ、まあ、ズバリ、ド新人と言っていいようなJustin Kurzelという男であった。自然光を基本とした撮影やそれっぽい雰囲気重視の画作りは、まあ、確かにセンスは非常にイイものがあるとは感じられるものだったが、キャラ付けという面での演出は、ちょっと相当イマイチだったと思う。とはいえ、パンフの解説を書かれている東大の教授はかなり高い評価をしていたので、まあ、所詮はわたしの好みに合わなかっただけなのかもしれない。何と言っても、わたしにとっての『MACBETH』は、完全に黒澤監督の『蜘蛛巣城』なのである。あの映画の、三船敏郎氏や山田五十鈴さんのギラギラした凄まじい演技と比較するわたしが特殊なのかもしれないので、そういう意味で、この映画は上級者向けだと冒頭に記した次第である。例えば、原作通りの台詞がきちんと使われていたり、その台詞を発する人物が巧妙に原作と入れ替わっていたりと、そういう点ではかなり真面目に作られている作品であることは間違いないと思う。
 では、最後に役者をちょっとおさらいしておこう。
 今回、主役のマクベスを演じたのは、前述の通り、Michael Fassbender氏である。まあ、イケメンですわな。わたし的には、この人は『X-MEN』におけるヤング・マグニートーなわけだが、カッコイイだけじゃなく、なかなか演技もいいですね、この人は。なので、今回大変期待して劇場へ向かったのだが……うーーーん……やっぱり、ちょっと雰囲気重視でマクベスっぽくはなかったかなあ。なんか落ち着いていて、もっと感情を爆発させて欲しいのだが、特に王座に付いてからの狂い方が全然足りないと思う。『蜘蛛巣城』での三船は、本当に凄まじいですよ。何度観ても最高です。
 あと、マクベスの友人で、マクベスに殺されることになるバンクォウを演じたPaddy Considine氏も、わたしは初めて見る方だったが、ちょっとイマイチかなあ……『蜘蛛巣城』でのバンクォウの役を演じたのは千秋実氏だが、亡霊となって現れるあのシーンは、三船の狂いぶりも強烈だけど、千秋氏の亡霊ぶりも最高です。完全落ち武者スタイルで登場する亡霊は、超雰囲気ありますよ。
 そして最後はやはりマクベス夫人を演じたMarion Cotillard嬢である。非常に美しく、雰囲気のある彼女だが、やっぱりなあ……迫力不足は否めないだろうな……一番のキーパーソンなのに……。『蜘蛛巣城』での山田五十鈴さんはホントにハンパなくヤバイ、完璧なマクベス夫人だったと思います。

 というわけで、結論。
 もし、この映画に興味がある人は、事前に原作を読んだことがある、芝居を観たことがある、なら、どうぞ行ってらっしゃいませ。いろいろ今までのマクベスと違うので、その点は面白く感じるかもしれません。が、そうでない人は、おとなしく原作を読んでからにした方がいいと思います。つーかですね、まずは『蜘蛛巣城』を観ることを強くおススメします。『蜘蛛巣城』の方が、100,000,000倍面白いですよ。以上。

↓ 本作の監督とMichael Fassbender氏とMarion Cotillard嬢が再度集まって撮影している次回作は、全世界で超売れてる有名なこのゲームを映画化するものです。

↓そしてこれがその予告編。ゲーム大好きなY君も、この予告を観て「これは期待できる!!」と相当興奮してました。

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