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 わたしは大学時代、19歳で中型自動二輪免許を取って以来、10年ぐらいバイクに乗っていたのだが、20代後半に父が亡くなった時、やたらと車を運転しなくてはいけないことが多くなった。その当時の家の車は、トヨタの9代目(8代目かも)クラウンだったのだが、その当時のクラウンは、とにかくハンドルもサスペンションもふわっふわで、なんつうか接地感がなく、恐ろしく運転がしにくい車だったため、くそう、やっぱオレの自分の車が必要だ、と思うに至り、わたしは人生で最初の「自分の車」としてマツダの初代デミオを買うことにしたのだった。
 以来、もう20年以上、わたしは自分の車を途切れることなく所有しているが、若かった当時は車よりバイクの方が楽しかったけど……いざ自分の車を持ってみると、バイクと比較してとにかく楽であり、荷物も人も積めるという点でも圧倒的に便利であるため、今やすっかり車の方が好きになってしまった。
 もちろん、ドライブも大好きだし、車の運転で疲れることもあまりない。バイクの時は(タンク容量が小さいので)180km程度でガソリンの心配をしなきゃいけないし、バイクに乗っている時特有の、360度全周囲への注意力に比べると、とにかく車は楽だ。
 そんな、今やすっかり車好きのおっさんと化したわたしは、ほぼ毎日車情報サイトをチェックするなど、恐らく普通の人以上に車に詳しいつもりだが、今週末から公開になっている映画『FORD v FERRARI』は、その題材は勿論超興味あるし、そして作品の出来としてもとても評判が良いこともあって、公開前から楽しみにしていたのであります。
 というわけで、さっそく観てきたのだが、噂にたがわぬ素晴らしい演技や、迫力あるレースシーンとその爆音、そして、なんつうかな、画面から感じられる「ガソリンの匂い」に酔いしれる153分であったと思う。わたしはもう、超大満足であります! もう、1991年のMAZDA 787B優勝の物語も映画にしてほしいわ!!

 まあ……なんつうか、いつものFOXクオリティの予告はアカンというか……この予告のラストに、当時のFORDの社長(=Henry Ford II氏。FORD創始者Henry氏の孫)を「FORD GT40」に乗せて、泣かすシーンがあるじゃないすか。このシーンは、この予告では何かふざけた?ツッコミを入れているけれど、本編では超グッとくるシーンなんすよ! 泣きながら、「おじいちゃんにこの車を見せたかった、この車におじいちゃんを乗せたかった!」と感極まっているところで、これで主人公は社長の信頼を得る、重要なシーンなのに! FOX JAPANのセンスを疑うわマジで。
 ともあれ。
 物語は、1966年にFORDが念願の「ル・マン24時間」に勝利するまでの経緯を描いたプロジェクトXめいたお話である。まあ、その経緯はもはや伝説として有名かもしれないけれど、車好きのわたしでも知らなかった点が多くて、わたしはとても楽しめた。
 また、本作は、いわゆる「突き詰めた才能を持つ男」VS「大企業」の方がメインで、FERRARIはその男たちが超えることを誓った目標に過ぎず、男たちの本当の敵は「大企業=FORD社」の方だ。
 1960年代初頭、時代はオイルショック前。天下の大企業FORDも車が売れなくなってきており、打開策として、1945年の終戦を迎えた兵士たちが帰国して、いわゆるベビーブームが始まる直前に、その1945年以降に生まれた若者たちにアピールする車の開発が必要だった。そしてそれは、マーケティング的には「速くて強くてカッコいい車」が最適であり、そのためにFORDは、当時ル・マンを3連勝していたFERRARIをぶっ飛ばすのが一番の宣伝になると考えていた。
 さらに、当時FERRARIも深刻な経営危機に陥っていて、大企業FORDは、FERRARIを買収してレース部門を任せればいいじゃん、という案をひらめく。そしてすぐにイタリアに渡り、FERRARIの創始者Enzo Ferrari氏に合併話を持ち込むが……土壇場でイタリアのFIATがFERRARI救済に動き(※今でもFERRARIはFIATの子会社です)、合併はご破算に。あまつさえEnzo氏は、「FORDは醜い車を醜い工場で大量生産してればいい」とか捨て台詞を吐く。それを聞いたFord社長は激怒、フェラーリをぶっ飛ばせ! という方向に会社は舵を切る。ちなみにFORDのお偉方の大半はレース参戦に反対していたが、当時マーケティング担当役員だったLee Iacocca氏(=のちのFORD社長でMUSTANGを作った人、だけど、この人も凄いドラマがあるのでWiki参照)が社長のフェラーリブッ殺せ宣言をバックにのし上がると。
 で、Iacocca氏が目をつけていたのが、当時アメリカ人で唯一ル・マンを勝った男であり、自ら手掛けた車をデザイン設計販売まで行う会社も経営するCaroll Shellby氏だ。車好きなら絶対に知ってる名前でしょう、かの「シェルビー」のご本人ですよ! そして彼は心臓の持病でもうレースから離れていたため、開発のメカニック兼レーサーとして抜擢したのがKen Miles氏だ。イギリス人であり、偏屈なMiles氏はFORD重役たちと話が合うわけもなく、間にShellby氏が立って、何とかル・マンを戦う車FORD GT40を仕上げていく。たけど常にFORDの重役の邪魔が入ってさまざまなドラマが展開する様相は、非常に現代にも通じる「大企業病」のようで、観ていてほんとイラつくっすね。だけど、そんな様々な障害を乗り越えて勝利する様は、観ていてとても胸がすくし、フェラーリをブチ抜いた時はもう一緒に、グッと拳を握っちゃったぐらいだ。
 だけど、物語はラスト、非常にビターな展開になる。これはもう、劇場で見て確かめてほしい。Miles氏の、駆け抜けた人生は、とてもドラマチックで、非常にグッと来たっすわ。
 そしてそのドラマを盛り上げた役者陣の演技がもう本当に素晴らしくて、実に最高だったと思う。
 ◆ケン・マイルズ:イギリス人として第2次大戦に出征、壊れた戦車でベルリン陥落に乗り込むなどの経験あり。戦争後は、アメリカでしがない自動車整備工場をやりながらレースに参戦していたが、経営破綻したところでシェルビーに「FORDル・マン制覇PJ」に誘われる。天才肌のメカニックでもあり、車と対話しながら最強の車を作り上げ、自らレースに挑むカッコイイ男。車にのめり込んでいるけど、家族を愛した良き夫であり良き父でもあった。演じたのはChristian Bale氏。超熱演。まず喋り方からしてイギリス訛りがすごいというか、いつもと全然違うのに驚き。いい演技でしたなあ、ホントに。自らに「譲れないモノ」を持つ男ってのはカッコイイですなあ。Bale氏の徹底的な役作りは本作でもいかんなく発揮されており、変わり者の天才だけど愛妻家で息子を愛する父でもあって、ル・マンでの最後の決断と裏切られた表情は極めて上質だったすね。実にカッコ良かったよ!
 ◆キャロル・シェルビー:元々天才肌のレーサーでアメリカ人として初めてル・マンを勝った男(その時の車はアストンマーチン)。しかし心臓の持病でレーサーを引退、その後は自らの会社をたててスポーツカー「シェルビー・コブラ」などを作って販売していた。FORDにスカウトされ、「打倒フェラーリ」の陣頭指揮を執る。演じたのはMatt Damon氏。現場もよくわかってる、けど大人として(?)、お偉いさんたちへの対応もこなして間を取り持ち、まあ相当ストレスはたまったでしょうなあ。非常に素晴らしい演技でありました。FORDには「シェルビー」を関する名車がいっぱいあったわけで、自動車好きなら絶対知ってるお方ですよ。FORDはもう日本から撤退してしまったけれど、ホントはわたしが一番欲しい車はFORD MUSTANG GT Shellbyなんだよな……現行車は世界で一番かっこいいと思うすね。イギリス仕様の右ハンドル車が欲しい。。。
 ◆モリー・マイルズ:ケンの奥さんであり、ケンの理解者。非常に魅力的な女性で、「ゴムの焼ける匂いとガソリンの匂いが大好きな女よ!」と言って現れた時は、その台詞にグッときましたね。そしてケンが何も言わないでいろいろやっちゃうことにブチ切れて、ケンを助手席に乗せて一般道をぶっ飛ばすあのシーンも最高でした。舐めてんじゃないわよ!!とキレられたら、さすがのケンも、サーセン、俺が間違ってました! と認めざるを得ないすね。素晴らしい女性です。演じたのはCatriona Balfeさんで、モリーをとても魅力的に演じてました。Balfeさんは、アイルランド人か。すごい訛りのある英語だったけど、ありゃアイルランド訛りだったのか? 米語ではなかったすね、明らかに。いずれにせよとても良かったす。
 ◆リー・アイアコッカ:FORDのマーケティング担当役員で、一応、ケン&シェルビーコンビのFORD側の唯一の味方、と言っていいのかな。いや、実際は自らの野望のために味方したというべきかも。演じたのはテレビ版『PUNISHER』でお馴染みJon Brenthal氏。なかなかカッコイイすね。
 そして本作を撮ったのが、かの名作『LOGAN』を作り上げたJames Mangold氏ですよ。この人の撮る、乾いた砂漠っぽい、アメリカ中西部的な広大な景色ってのは味がありますねえ! 砂埃と夕焼けが似合うような画が、とても特徴的だと思う。そしてル・マンをはじめとするレースシーンもとてもダイナミックかつドラマチックで大変素晴らしかったと思います。
 とまあ、映画そのものについては以上かな。
 そして、わたしは本作を見ながら、マジでトヨタとホンダの人間は全員この映画を見てくれ!!と思ったすね。わたしはホンダもトヨタも買ったことがあし、現在もトヨタ製の車に乗ってるけれど、今、はっきり言ってこの車が欲しい! という車がまるでないんだよね。確かに日本では車が売れないし、海外を見据えるのは、そりゃあ企業として止む無いだろうと思う。だけど、自分の作った車に乗ってみてほしい。乗ってて楽しいか? だいたい、幅1845mmはデカすぎて、完全に日本の道に合わないし、メーター回りも古すぎるよ!! 明らかにBMWやAUDIやMercedezに負けてる部分が多いことをちゃんと自覚して、これでいいや、じゃなく、くそう奴らをブッ飛ばしてやる!! というガッツを見せてほしい。セダンが売れないから作らない!? そうじゃねえんだよ! 乗りたいセダンがないから、しょうがなくSUVに乗ってんだよ!! 次のISがまたデカくなっちゃったら、わたし、もうNXたたき売って次はLEXUS買ってやらんからな!!

 というわけで、最後は観ていてムラムラ感じた怒りになっちゃったので結論。

 車好きのわたしとしては非常に期待した映画『FORD v FERRARI』が公開になったので、さっそく観てきたところ、噂にたがわぬ素晴らしい映画でありました。役者陣の熱演も素晴らしいし、監督の技量も大変見事で、非常にクオリティの高い作品だったと思います。車好きは観てて燃えますよ、間違いなく。画面から感じられるガソリン臭はたまらんすね! この映画は、全日本車メーカーの社員全員が観るべきだと思います。そして、熱いハートを取り戻してほしい! 心からそう願います。ガッツあふれるカッコイイ車を作ってください! うるせーお偉方は、車そのものでで黙らせてほしい! 今、車が売れないのは、そりゃあ若者の経済力の問題もあるだろうし、公共交通機関網の発達もそりゃあるだろう。でも、はっきり言っておきますが、最大の問題は、魅力的な車がないからですよ。それはもう断言できるね。日本の道に合った、コンパクトで、カッコ良く、楽しい車があれば絶対売れると思う。圧倒的ナンバーワンであるトヨタが率先しないでどうする! 全トヨタ社員はこの映画を見て、心たぎらせてください! 以上。

↓ 今の愛車。2台乗り継いだISがいつまでたってもモデルチェンジしないので、しょうがなく去年のマイナーチェンジ版を選んだだけ。NXも最高にカッコ良くて気に入ってはいるけど、メーター回りが古すぎる……。。。

 今日は朝から映画を2本はしごしてきた。他にやることないのかよ、と我ながら残念なお知らせだが、そりゃあ、あるといえばありますよ? けど、映画を観ることが優先されるのである。それが映画オタクとしての現実なのだ。と、強がっておこう。はあ……。生きててもいいことないので、映画でも観て現実逃避しているのかもしれないな……わたしの場合は。
 というわけで、今日わたしが観てきたのは、『DOWNSIZING』と『THE SHAPE OF WATER』の2本だ。両作とも、ズバリ結論を言うと、期待以上ではなかったような気がする。なんか……残念です。それでは、観た順番に、まずは『DOWNSIZING』から書いていこう。

 わたしが劇場で何度も観た予告が見当たらないので、上記のものを張っておきます。ほかの予告は結構、ええっ!? とわたしが劇場で驚いたネタバレが含まれていたので、貼るのはやめときました。
 といいつつ、わたしもネタバレを書いてしまうと思うので、以下はまだ見ていない人は読まない方がいいと思います。ここらで退場してください。
 さてと。物語は、上記動画にある通り、人間を約7%(身長180cm→12.8cm)に縮小してしまう謎技術が発明された世界で、縮小されることを選択した一人の男の身に起こる悲喜劇を描いた作品だ。わたしはそのぐらいのぼんやりした知識しか予習していなかったので、次々に描写される「DOWNSIZING」技術とその結果としての小人生活のうさん臭さに、かなりの頻度で、心の中で突っ込みが発動してしまう事態となったのである。この作品はコメディだろうから、笑えればいいのだろうけど、結構深刻ですよ、この話は。
 ◆DOWNSIZING技術の原理:一切説明ナシ。謎の薬物を点滴投与して、謎の電子レンジめいた装置に入れて、チンするだけで出来上がり、である。その手軽さにわたしは笑っちゃった。まあ、映画としてそんな細かいことを説明する必要なんてないので、説明ナシ、は十分アリだろう。しかし、「小さくなる」と聞いてわたしが真っ先に思い出したのが、わたしの大好きなMARVELヒーロー『ANT-MAN』なのだが、なぜ、ANT-MANがフルフェイスのヘルメット&マスクを着用しているかご存知ですか? 第一にはピム粒子充填のためだけどそれはどうでもいいとして、実は、体を縮小化したことで、酸素分子が逆にデカすぎて、肺に直接摂取することができないから、そして微細なホコリなんかが縮小した体にはデカすぎて肺に詰まっちゃうから、それを防ぐためにマスクをしてるという設定なんすよね(ただしどう処理しているかの説明はANT-MANにもない)。そういった、生理科学的な説明も一切ないのはちょっと残念に思った。自らの体(細胞)が小さくなる=他の自然界に存在する物質は逆にがデカくなる、ということなわけで、何らかのケアをしないと、確実に呼吸器系・循環器系が適応できずに生きていけないと思うのだが……一切そういう説明はなかった。死んじまうぞ……。
 ◆小さくなったら超リッチ!のうさん臭さ:普通に考えて、確かに、自らが消費する食料やその他物品の物理的な量は減るだろう。そりゃそうだ。だけど、だからって、金持ちになるなんてあり得るか? まず第一に、小人たちは経済的にも物質的にも、自立できていない。間違いなく普通サイズの人間の世話が必要だ。たしかに、小人コロニーは自立しているように描写されてはいたが、小人サイズの服だって家だって食べ物だって、自給自足しているとは思えない。仮に自給自足しているとしても、小人社会の経済活動が普通に行われれば、金はそれなりにかかるだろう。そもそもは、人口爆発による地球環境の破壊を防ぐために発明された技術だけど、普通サイズの人間なしに生きていけないなら、意味なくね? DOWNSIZING技術の会社も、普通サイズの人間なしには運営不能なわけで、この辺の説明も、一切ナシ、であった。小人がリッチなのは、あくまで普通サイズの人間がいるからで、それと比較するとリッチ、という相対的な価値観だと思う。だとすれば……そもそものDOWNSIZING技術発明の趣旨に反してるじゃん。おかしくね? まあ、だからこその、あのエンディングにならざるを得なかったのだとわたしは思うし、あのエンディングは、実際のところ、人類滅亡が前提なので、なんというか……生きててもいいことねえな、という、わたしが常に感じる悲観的未来を象徴しているかのようであった。なお、本作のエンディングに関しては、もう書く気になれません。
 ◆小人と普通サイズの共存は可能か?:おそらく無理だろうとわたしは直感的に感じた。世界から戦乱がなくなることはないわけで、小人化した人間はその武力も縮小してしまうわけだし、まあ、ズバリ踏みつぶされたら終わりだ。だって、7%に縮小した状態というのは、逆に言うと自分以外が約14倍にデカくなるってことなわけで、えーと、例えば身長130cmの小学生が、小人化した人から見たら18メートルのガンダムぐらいデカく見えるってことだぜ? そりゃもう、あかんすわな。
 また、劇中では、小人化を決意した主人公夫婦が小人化される直前に開催された送別会が描かれ、そこに、酔っ払いが「へえ、そりゃ結構なこった、でも、小人の権利は普通サイズと一緒なのか? 社会貢献しないで自分の小人コロニーに閉じこもって、税金だってほとんど払わないのに? それなのにお前らに選挙権があるっつーの?」と、至極まっとうな疑問を振りかざして絡んでくるシーンがある。これは恐らく将来的な火種として決して解消されない、普通サイズVS小人たちの対立を予感させるものだと思う。そりゃそうだよな。実に危ういとしか思えない。また、どうやらこのDOWNSIZING技術の機密情報は、もう既に全世界に公開されているっぽい描写だったが(世界中の各地で縮小化は行われている)、作中でも描かれた通り、国によっては政治犯などの反政府思想の持ち主を強制的に小人にしてしまうという非人道的な利用も行われているらしく、事態はもう非常に深刻だと思う。

 まあ、上記はわたしは感じた謎のほんの一端だが、本作はほぼそういった謎についての回答を用意していない。これが、完全なるコメディーで明るい物語なら、そんな説明はなくても別に問題ないのだが……意外と本作はシリアスな問題が取り上げられていて、どうにも笑ってすます気にはなれなかったのである。わたしが結構驚いたのは、小人となって夢のような贅沢三昧の暮らしを送る、かと思いきや、小人社会にも厳然たる「持てる者と持たざる者」の階層社会になっていて、小人コロニーに貧民層の集まる汚い場所があったり、全然楽しいだけじゃない現実が描かれてゆくのだ。まあ、冷静に考えれば、小人社会であっても、誰かがごみ収集だってしないといけないし、遊んで暮らせるわけもないわけで、じゃあ、どうしてまた小人になってまでそんな仕事に従事する人々がいたんだ? という謎もわたしの頭には浮かんできてしまう。それも、一切回答ナシ、である。
 たぶん、この映画に求めるのはそんな夢の生活とその裏に暮らす貧民層、みたいな社会の縮図(文字通りの縮図!)なんかではなかったように思う。なので、後半は全く笑えない展開で、映画として実に微妙な作品になってしまったような気がした。ついでに言うと、上映時間135分は明らかに長い。テンポが非常に悪く感じられたのは、きっとわたしだけじゃあないと思う。
 わたしが言いたいのは、数々の謎に答えてほしい、というものではなく、そういう謎を感じさせないような明るい話だったらよかったのにね、ということだ。なんか……この人類縮小化というネタは、80年代にEddy Murphy氏主演で作ったら楽しく笑える作品になりそうだったのにね。そう考えると、ちょっと残念だ。
 
 なんだか文句ばっかりになってしまったので、最後に意外と真面目な物語を真面目に、時に明るく演じてくれた役者陣を紹介して終わりにしよう。役者陣は全く素晴らしい熱演だったので、わたしとしては一切文句はありません。
 ◆ポール:主人公。元の職業は食肉加工会社?専属の理学療法士(作業療法士か?)。夫婦で小人化を決意して、小人化して、目が覚めても、なかなか妻が現れない。どうしちゃったんだろ? と思っていたら、なんと妻が超土壇場で「やっぱりやめる!」と逃げてしまい、あえなく離婚。小人化したことをずっと後悔する失意の毎日を送る羽目に……演じたのは、マーク・ワトニー博士でお馴染みのMatt Damon氏。しかし……小人化する際、歯の詰め物とかそういった生体以外のものを全部外すというのは分かるとして(それらのものは縮小化されないので外しておかないとヤバいという設定)、なんで全身の毛を剃る必要があったんだろうか?? 毛髪は縮小できないのかな? うっそお? 0.1mmぐらい髭とか生えてたらどうすんだよ。そんな点も一切説明ナシ、であった。
 ◆オードリー:ポールの妻。髪をそられ、眉毛を片方剃られたところで、ビビッてばっくれるひどい人。前半30分で出番終了。演じたのはおととしの夏、大復活した女性版『GHOST BUSTERS』のリーダー役でお馴染みのコメディエンヌ、Kristen Wiigさん。この人、結構可愛いと思うんだ……。
 ◆ドゥシャン:小人化されたポールの住むマンション?の上階に住む、パーティー大好き人間。演じたのは助演男優賞ハンターとしてお馴染みのChristoph Waltz氏。今回のはじけたパーリィピーポー役は大変良かったすね! 非常に楽し気に演じておられましたな。さすがの演技派すね。
 ◆ユルゲン博士:DOWNSIZING技術を発明したノルウェー人医師。いや、スウェーデン人だっけ? ともかく、演じたのは、あの! わたしが原作小説を読んで大感動した『幸せなひとりぼっち』の映画版で主役のオーヴェおじさんを演じたRolf Lassgård氏ですよ! わたしは冒頭の発明完成シーンから、あれっ!? 今の博士、ひょっとして? と気が付き、後半、主人公が会いに行った博士として出てきて、やっぱりこの人は! オーヴェおじさんだ! と確信に至った。ハリウッドデビューおめでとう!
 ◆ノク・ラン・トラン:ベトナムで反体制思想の持ち主として収監され、強制的に小人化された気の毒な女性。テレビの箱に潜り込んで?アメリカに亡命。その時の劣悪な環境で左足を失った。演じたのは、Hong Chauさんという方で、ひどくなまりのある、いかにもな英語だったけれど、この方はタイ生まれだけど現在はれっきとしたUS国籍のアメリカ人だそうです。よーく見ると、かなり可愛いお方とお見受けしました。

 というわけで、結論。
 予告を見て、これは面白そうだと思ったので観に行った『DOWNSIZING』という映画なのだが、実際に観てみたところ、どうもコメディーとしてはやや半端ではじけ切れておらず、意外とまじめな方向に話は進むという予想外の物語であった。縮小化技術そのものについては、別の細かいことまで描けとは全く思わないよ? でも、そこから発生するいろいろな「?」については、説明してほしいわけではなくて、そういう「?」を感じさせない物語にしてほしかったと思う。そのような数々の「?」を考えさせてしまった時点で、この映画は微妙としかわたしには判定できないす。もったいない……ホント、かつてのEddy Murphy主演作のような、腹を抱えてゲラゲラ笑える物語をわたしは期待していたのだが……残念ながらその期待はかなえられなかったす。ま、役者陣には何の罪はないので、役者陣に関しては素晴らしかったと賞賛の拍手を送りたいと存じます。以上。

↓ 例えばこれとか。最高に笑えるんすけどね……。


 Terry Gilliam監督と言えば、かのMonty Pythonのメンバーであり、その独特の映像美と妙な未来風景だったり心象風景だったり、とにかく一風変わった世界観を見せてくれることでお馴染みのイギリス人(うそ!この人、元々はアメリカ人だったんだ!! 知らなかった!!) 監督である。わたしは正直、あまり好きな作風ではないのだが、中学生ぐらいに、今はなき松戸輝竜会館という映画館で、何故か『幻魔大戦』と二本立てだった『TIME BANDITS(邦題:バンデットQ)』を30年以上前に観て以来なので、わたしとしてはこの監督の作品を観てきた歴史は結構長い。
 現在監督は75歳だそうだから、当時はまだ40歳そこそこだったんですな。あの『バンデットQ』は非常に面白かったけれど、以降、『BLAZIL(未来世紀ブラジル)』や『The Fisher King(フィッシャーキング)』『12Monkeys(12モンキーズ)』など、映画オタクどもを熱狂させる名作を数多く世に送り出している偉大な監督のうちの一人だが、いかんせん、その映像と物語は非常に癖があって、フツーの人をまったく寄せ付けない強烈な個性が発揮されているため、たぶん、単純に物語を追うだけでは「なんのこっちゃ?」とポカーンとせざるを得ない作品が多い。
 しかし世の人々は、「全然意味わからなかった」と素直に言うと、映画オタクどもに鼻で笑われて小馬鹿にされてしまうため、それを恐れて、分かったような分からないような、微妙な反応をするのが普通だろう。だが、安心してほしい。分かったようなことを抜かすオタク野郎の大半が、「分かったオレってカッコイイでしょ!!」というアピールがしたいだけのめんどくさい系の人間であるので、逆に、「あーなるほどねーふーん」と棒読みのリアクションでもしてあげれば十分である。そして、そいつとはもう、なるべく付き合わないことをお勧めする。
 というわけで、そのGilliam監督が2013年に発表したとある作品は、その製作段階からかなり話題になっていたのだが、日本では全然公開されず、こりゃあお蔵入りになっちまったのかな、とわたしは思っていた。しかし、いつの間にか、去年2015年の今ぐらいの時期だったとおもうけれど、ひっそり公開されていて、わたしが気が付いた時にはもう東京での公開が終わる寸前で、劇場に観に行きそびれてしまっていた。が、さすがWOWOW。先日、Gilliam監督の作品をまとめて放送しながら、その最新作も放送してくれたので、わたしも録画し、昨日の夜ぼんやりと見てみたのである。
 タイトルは『THE ZERO THEOREM』。日本語で言うと、「ゼロの定理」と訳せばいいのだろうか、日本での公開タイトルは『ゼロの未来』という作品で、結論を最初に言ってしまうと、いかな映画オタクのわたしでも、正直さっぱりわけが分からん映画なのであった。

 一応、上記予告の通り、明確にストーリーはある。なので、雰囲気重視の、シャレオツ系自己満映画では決してない。なので、そういう意味での意味が分からないという方向ではない。単純に、時代や人物の背景が全く説明がないからわからんのであり、また、主人公が挑む「ゼロの定理」がどういうものか、良くわからんのだ。
 どうやら、作中のキャラクターの会話を聞いていると、どうも、万物の行く先はすべて混沌というブラックホールに飲み込まれ、1点(=ゼロ次元)に集約される、という事の証明をしたいようなのだが、そこは現代の賢い人ならピンとくる話なのかもしれないし、わたしも、へえ、なるほど? と思っていて観ていても、どうも実感として良くわからなった。
 しかし、その映像や設定など、結構面白い部分がたくさんあって、この映画を観てわたしはさっぱりわからんと結論付けたけれど、それでもやはり、これは面白い、と唸る部分はたくさんあったのである。
 わたしが面白いと思った部分を二つだけ紹介しよう。
 ■VRを進化させるのはやっぱりエロの力だ!!
 今現在、特にゲーム業界においては、「VR」が大変な流行で、鼻息荒く開発している会社が大変多いが、ゲーム好きなY君に言わせると、「VR」で一番重要なのはその映像やヘッドセット的な視覚効果装置ではなく、「入力インターフェイス」にあるんだそうだ。確かにそりゃそうだとわたしも同意である。どんなに映像的に没入感があっても、そのVR世界での操作コントローラー的なものが、例えばキーボードとか、ゲームコントローラーのようなモノから入力してたのでは話にならんし。
 で、この映画では、おそらく舞台は未来のロンドンなんだと思うが、やはりVRは日常的なものらしく、どうも、VRセックスが普通に普及しているようで、そのための「VRスーツ」なるものが出てくるのである。これがですね、まあ、全身スーツなんですが、ビジュアル的に非常におっかしいんだな。たとえて言うとですね、任天堂キャラでお馴染みの、「チンクル」っぽいんだな。とんがり頭でお馴染みの彼です。まあ、チンクルは緑だけど、この世界のVRセックス用(?)のVRスーツは赤なので、色は違うんすけど、なぜ頭(フード?)を尖らせたのか、Gilliam監督に聞いてみたいものだ。わたしはこのVRスーツのデザインを見て、「もう……これ、チンクルじゃねーか!!」と非常に笑ってしまった。まあ、全身スーツが今後開発されるかは分からないけれど、エロが今後のVR開発の原動力となるのは、結構真実ではなかろうか。
 ■エンティティ―解析
 主人公は、予告では天才プログラマーと説明されているけれど、正確に言うと「エンティティ―解析のプロ」である。これはコンピューターサイエンスに詳しくないとちょっと分からない言葉だと思うし、到底ど素人のわたしには上手く説明できないのだが、この映画で非常に面白いのが、いわゆる「Entity-Relationship Model(=実態関連モデル)」が、3Dポリゴンで描かれた広大な空間で表現されていて、その解析作業もまるでゲームのように描かれているのである。しかも、入力系も現代の我々が使うようなキーボートとマウスではなく、なんだろうあれは、一番近いのは、任天堂のWii-Uのゲームパッドかな? とにかく、そういったゲーム機のコントローラー的なものなのである。おそらく、あの解析作業の映画的表現は、本物のコンピューターサイエニストが観たら、かなり興奮するんじゃなかろうか、と思った。
 というわけで、相変わらずGilliam監督の描く映像美は、極めて独特で大変興味深いのだが、そういう意味で面白いとわたしは思うけれど、残念ながら物語的に不明な(勿論意図的に一切説明されていないだけ)部分が多くて、こりゃあ、フツーの人は見てもさっぱりわからんだろうな、と思うわけである。実際、わたしもさっぱりである。
 さて、最後にキャストをちょっとだけ紹介しておこう。
 主人公を演じたのが、Christoph Waltz氏である。Tarantino作品で2回のオスカー助演男優賞を受賞した男なので、まあ演技派と言ってよかろうと思う。今回はスキンヘッド&全裸での熱演であった。そしてこのキャラクターで特徴的なのは、自分を指す一人称に、「We=我々」を使うことであろう。その理由はちょっとだけ語れるが、サーセン、わたしは正直良くわからなかったです。
 そして、主人公が癒しを求める(??)、派遣されてきた女子を演じるのがMelanie Thierry嬢。全然知らない方ですな。フランス人だそうで、わたしとしてはほぼ初見の方であった。まあ、大変お綺麗な方です。芝居ぶりは、まあ、普通に良かったと思う。
 で、主人公が務める会社の「マネジメント」と呼ばれる謎の存在の社長を、Matt Damon氏が演じていたが、ほとんど出番はナシで、それよりも、その息子で、主人公の元に助っ人として派遣されてくる若者「ボブ」を演じたLucas Hedges君が非常に良かった。キャリアは始まったばかりのようだが、結構いろいろな作品に出ているようなので、今後の注目株かもしれない。おそらく、イケメンに成長すると思われます。その他、有名どころでは、ハリーポッターシリーズの「ルーピン先生」でお馴染みのDavid Thewlis氏や、リアルBLスターとしてお馴染みのBen Whishaw氏、SWのキャプテンファズマでお馴染みとなったGwendoline Christieさんあたりが超チョイ役で出ていたりしました。

 調べてみたところ、そうやらUSAでは極小規模公開しかされていないようで、まったく売れなかったようだし、評価的にもかなり低いようで、Giliam監督の今後が大変心配だ。わたし、『Lost in La Mancha』は観てないんすよね……。詳しいことはリンク先を見て下さい。

 というわけで、結論。
 久しぶりに見るTerry Giliam監督の作品『THE ZERO THEOREM』は、相変わらずの圧倒的な映像と独特のセンスから生まれる世界観は大変見ごたえがあるけれど、正直良くわかりません。なので、フツーの人は、とりあえず手を出さない方が良いかと思います。そして、この映画を執拗に勧める映画オタクが身の回りにいる場合は、心の中で、うぜえ、と思いながら、「今度観とくよー」と棒読みで返事をしてあげて下さい。以上。

↓ やっぱり一番面白いと思うけどな……わたしは実は『BLAZIL』はあまり好きではありません。
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2016-03-16



 

 アメリカでは2015年10月から公開され、わたしもNYでポスターを見かけ、観たいけど時間が合わず、早く日本で公開されないかな、と待ちに待った映画が公開された。そして、昨日の夜、さっそく観てきた。いやー、面白かった。映画を観終わってこんなに興奮したのは久しぶりである。
 その映画は『The Martian』である。
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 ↑NYではこんな感じ。しかし日本では、なぜか「オデッセイ」という日本語タイトルになってしまった。原作小説の日本語タイトルの通り、元々の意味は『火星の人』である。また、「70億人が彼の還りを待っている」という日本のキャッチコピーもどうもピントがズレているような気がする。元々のキャッチコピーは上の写真にある通り「Bring Him Home」。彼を生還させよ、という意味であって、それは火星で一人頑張る主人公を何とか生還させようと努力する人々の合言葉である。NYタイムズスクエアとロンドンのトラファルガー広場に集まって中継を見守る人々の様子が映されるけれど、観てるだけで別に何もしていない。あくまで努力を重ねている当事者たちの気持ちの言葉だ。
 わたしがこの映画で気に入らないのは、それだけ。いや、もうひとつあるな。それはあとで書きます。とにかくタイトルとキャッチコピーは全くダメだと思うが、映画自体は、それはもう、素晴らしかった。最高です。
 
 基本的に物語はこの予告に描かれている通りである。年代は明示されないが、現在NASAが進めている火星への有人探査飛行が達成されているのだから、まあ近未来と言っていいだろう。
 火星で地質調査をする6人の宇宙飛行士=科学者たち。全くどうでもいい無駄話をしながら、ある意味楽しげに作業を続ける彼らだったが、なにやら嵐がやってきそうだという気象情報を得る。着陸船が横倒しに倒れてしまっては、周回軌道上に残してきた宇宙船ヘルメス号に戻れない=地球に帰れなくなる。なので、調査途中で残念だけど、撤収するしかない。だが嵐の規模と速度は想定を超え、着陸船に戻る際に、吹っ飛んできたアンテナが一人の宇宙飛行士に直撃、LOST CONTACTとなってしまう。もはやどうすることも出来ず、女性船長は皆を守るため、5人で離陸し、火星から離脱する。が、吹っ飛ばされた宇宙飛行士は生きていた。もはや帰る手段のない彼には、残された食料も水も、とてもじゃないが次回の探査飛行までもつわけもない。そこから、たった一人の、人類の知恵と経験を武器とした生き残り大作戦が始まる――という、予告そのままのお話である。
 とにかく、彼の生き残り大作戦がいちいち素晴らしく、賞賛に値する戦いぶりなのだ。
 食料、水、通信手段。それらを次々と何とかしようとする姿は、恐ろしくカッコイイ。どうすればいいか、その方法に関して、科学者の彼には十分な知識がある。なので彼は、まず調査し、計算し、仮説を立て、実験し、うまく行くこともあれば失敗もし、また別の方法を次々に実践していく。 凄いよこの人は。わたしは観ていて、もう完全に物語りに入り込み、主人公と一緒に喜び、一緒にがっかりし、一緒に絶望したりと、まさしく映画の醍醐味とはこういうものだという2時間20分を堪能させてもらった。わたしが特に感動したのは、水の生産方法と、通信手段の確保の様子である。地球サイドでも、最初は完全に死んだと思って、盛大な葬式までやった後で、ほんのちょっとしたことから、主人公がまだ生きていることを確信するに至り、また、宇宙から撮影している遠い映像だけしかないのに、「アイツ……何やってるんだろう……あーーーっ!! 分かった!! そういうことか!!、 よし、じゃあこっちもアレを用意しよう!!」と、主人公の行動の意味が通じる様は、わたしは非常に感動した。しかもその、通信手段のキーとなるデバイスが、科学ファンにはお馴染みのアレ<マーズ・パスファインダー>だったりして、もう大興奮である。わたしはこのくだりが今回一番感動した。まさかアレを使うとは……!! しかも静止画しか送れないアレを使って、ASCIIコードを使ったTEXTでやりとりすることをひらめくなんて、もう科学技術好きにはたまらない展開である。素晴らしい!! やっぱり、このような頭のいい人たちのひらめきや行動は、全く無駄がなく、観ていてとても気持ちのいいものだ。
 映画や小説などを観たり読んだりしていて、わたしが一番イライラするのは、キャラクターの行動の意味が分からない時だ。なんでそんなことするの? という意味不明の行動をされると非常にイラッとする。そうじゃなくて、こうすればいいじゃん、と思ってしまうと、もうその世界から気持ちが離れてしまう。たとえアホらしい行動であっても、そのキャラクターならそう行動するだろう、と理解できればいいのであって、そこには頭の良し悪しはあまり関係がない。もちろん、アホらしい行動には、理解は出来たとしても気持ちが醒めてしまうので、あまり気持ちのいいものでないが、この映画には、そういう、理解できない行動やアホらしいことは一切ない。すべてがきっちりと筋が通っており、実に爽快なのだ。 
  また、わたしの心を打ったのは、膨大だったり複雑だったり、恐ろしく面倒なことも、黙ってせっせとコツコツ取り組む主人公の姿勢である。わたしが良く、部下を指導する際に言うことは、「難しいこと」と「めんどくさいこと」は全く別物だぞ、ということである。つまり、どうやったらいいかわからないことは、難しい問題だから一緒に考えるけれど、「こうすればいいんじゃね?」とひらめいたことは、それがどんなに作業量が膨大で複雑で時間がかかることでも、それはやればいいだけの話で難しいことじゃない、単にめんどくさいだけなんだから、さっさとはじめようぜ。とにかく手と頭を動かせ、という意味である。この映画では、主人公も、主人公を救おうとする人々も、あらゆる知識や経験をフル動員して、とにかく行動する。まったくもってお見事であった。ラスト近く、主人公が「オレは人類初の宇宙海賊だぜ!!」と名乗るところは、わたしはもう嬉しくてたまらなかったな。キャプテン・ハーロック誕生だよ!! ホント素晴らしい。
 
 で。役者陣と監督についてちょっと触れておこう。
 まず、主人公マーク・ワトニーを演じたのは、Matt Damon氏。本作でアカデミー主演男優賞にノミネートされている。ほぼ完璧な演技で、今、この映画を観て興奮冷めやらないわたしとしては、アカデミー賞をあげてほしいと思うぐらい良かった。また、この映画はある意味漂流サバイバルを描いているので、今回もかなりげっそり痩せた彼の姿を観ることができる、いつもは結構マッチョな彼だが、相当減量したんでしょうな。あれまさかCGかな?? いずれにしても、前向きで明るいキャラクターは、Matt Damon氏ならではの持ち味であろうと思う。
 ほか、競演陣はかなりのメジャー級俳優が多くて、誰を取り上げたものかと思うが、ざっとチェックしておくと、まず彼を火星に置き去りにしてしまった仲間のクルーたちだが、女性船長を演じたのがJessica Chastainさん。今回は彼を置き去りにしてしまったことに強い後悔の気持ちを持ちながら、毅然とした実に立派な船長を見事に演じてくれた。特に、ラスト近くの主人公救出アクションは、わたしが行く!! という強い意志がとても伝わる素晴らしい表情だった。非常に良かったと思います。やっぱりこの人、綺麗だなあ……。で、他の4人の仲間は、『ANT-MAN』の親友役などでお馴染みMichael Pena氏がいつも通り、一番明るい面白キャラを演じて緊張を和らげてくれるし、主にコンピューター系で活躍してくれる生真面目な女性クルーは、『Fantastic 4』でインビジブル・ウーマンを演じたKate Maraちゃん。PCオタクとしての彼女の私物が主人公を救うところもあって何気に活躍してくれました。そしてその彼女と、若干いい雰囲気を醸し出して、事件後結婚したらしいイケメンクルーを演じたのは、『CAPTAIN AMERICA』の親友バッキーことウインターソルジャーでお馴染みのSebastian Stan氏。もう一人のドイツ人クルーはよく知らない方で、実際はドイツ人ではなく、ノルウェー人のAksel Hennie氏という俳優さんみたいですな。というわけで、Marvelヒーロー関連の方が3人いるのもちょっとした奇遇ですね。また、地球サイドでは、『12Years a Slave』でお馴染みとなったChiwetel Ejiofor氏や、イギリス人のコワモテの人、みたいな役の多いSean Bean氏など、結構なメジャー級が揃っている。 
 そして監督は、世界最強監督選手権で確実に優勝候補の一角に名が挙がるであろうSir Ridley Scott様78歳である。やっぱり、広大な火星をあれほど美しく撮れるのはこの人以外にはいないと思う。以前も書いた通り、正直ここ数年、若干イマイチな作品が続いたが、本作は本当に素晴らしい。光とスモークを撮らせたら世界最強なのは間違いなかろう。ただ今回は、意外とクリアと言うかパキッとした画作りで、ちょっと今までにないような感じがしなくもない。わたしは冒頭のタイトルが出るまでの2分ぐらいの画は、監督の代表作『ALIEN』の冒頭に非常に似ているような気がした。音楽のトーンやタイトルの出方など、たぶんわたしはここだけで、この作品の監督が誰だか分かったと思う。アカデミー監督賞にノミネートもされなかったのが非常に残念です。
 はーーー、もう語りたいことはまだまだあるが、この辺にしておこう。最後にひとつだけ、冒頭に書いた気に入らないことの3つ目を記しておきます。これは若干ネタバレなんだけど……『GRAVITY』(邦題:ゼロ・グラビティ)において中国が活躍するのを観てぐぬぬ……と思ったわたしだが、今回も、まーた中国だよ……。まあ、製作出資者にチャイナマネーが入っているのだろうなという邪推はともかく、事実として日本の宇宙開発は遅れているのだろうと思う。こういうところで日本じゃないのが、本当にわたしは残念だ。日本の科学者、技術者の皆さん、どうか頑張ってください。わたしは猛烈に悔しかったです。
 ※2016/02/07追記:この映画について、Web上では「まさに火星版DASH村」として盛り上がってるらしいtweetを見た。確かにw でも城島リーダーのコラは反則ですww  笑わせてもらいました。

 というわけで、結論。
 まだ2月だけれど、わたしにとってこの映画『The Martian』は、2016年暫定No.1ムービーである。今すぐ、劇場へGO!! でお願いします。超おススメですので。なお、本作は、US国内で2億ドル以上、全世界でも6億ほど稼いでおり、大ヒットしております。また、格付けサイトでも非常に高評価で、観ない理由は何ひとつありませんので、絶対に劇場へ観に行ってください。以上。

↓ 原作にも俄然興味が出てきた。読むか……? どうしよう。元々はオンライン小説だったそうですね。
火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)
アンディ・ウィアー
早川書房
2015-12-08


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