タグ:マイケル・ペーニャ

 わたしは年間40本ぐらいは映画館で映画を観ているわけだが、そんなわたしが一番好きな映画監督は、現役では間違いなくClint Eastwoodおじいちゃんである。1930年5月生まれだからあと2カ月で89歳だよ? そんなおじいちゃんが、今もなお旺盛に映画を撮っていて、ほぼ毎年、多い年は年2本とか作品を生み出してるんだから、もうマジで信じられないよね。あっ!? ちょっと待って!? うおお、今まで全然気にしてなかったことを発見しちまった!! 1930年って、昭和5年じゃん? てことは、20年以上前に亡くなったわたしの親父より1つ年上じゃん! つうかほぼ同じかよ。すげえ、つうか、親父が生きてたら今年88歳か。そんな歳になってたんだなあ……。そうなんだ……。
 というわけで、わたしは今日、会社帰りにEastwoodおじいちゃんの最新作、『THE MULE』を観てきたのです。Muleってのは、騾馬のことですな。Wikiによると、騾馬ってのは雄のロバと雌の馬の交雑種で、、メキシコに多く生息しているそうだが、まあ、荷物運搬によく使われていたわけで、そこから転じて、メキシコから密輸されたドラッグの「運び屋」って意味で使われているわけだ。本作は、90歳になろうかという老人が、メキシカン・カルテルの末端として「運び屋」となった事件(?)に着想を得て作られたフィクション、のようだ。
 結論から言うと、わたしとしてはもう超最高に面白かったと思う。なお、Eastwoodおじいちゃんが自分で監督して自分で主演を務めるのは2008年公開の『GRAN TRINO』以来だそうだ。マジかよ、もう10年前の映画かよ……はあ……オレも年取ったなあ……。
 というわけで、以下、決定的なネタバレに触れるかもしれないので、まだ観ていない人はここらで退場してください。つうか、今すぐ映画館へGO!でお願いします。コイツは超おススメであります!

 というわけで、もう物語は上記の通りである。なので、問題は2つであろう。
 1つは、なんでまた運び屋になっちゃったのか? そしてもう1つは、最終的にどうなるのか、である。まあ、誰だってそう思うよね。わたしもそう思った。
 そして映画は、まず現在時制である2017年の12年前、2005年のとある情景から始まる。ここで説明されるのは、主人公のおじいちゃんが、ユリの栽培家で、品評会的なものの常連であり、メキシコからの違法移民の労働者と、口は悪いけど楽し気に働く姿だ。そして品評会でも、同業者に口汚いジョークをかまし、女性たちにも軽口を飛ばしつつ、賞を貰ったスピーチでも小粋なことを言って場内から拍手されるような、要するに、「営業トーク」が自然と出る、トークで相手の懐に入り込むのが得意な、口の達者なおじいちゃんという姿が描かれる。しかも、おそらく「狙ってる」ワケではなく、「天然」で面白トークをしてしまうおじいなのである。この点は後々極めて重要になるのだが、わたしは観ていて全然気が付かず、観終わって、そうか、冒頭のシーンにはそういう意味があったんだ、とハタと気づいた。
 そしてこの2005年のシーンではもう一つ、重要なことが描かれる。それは、その品評会のパーティーが、なんと娘(※娘と言っても結構歳がいっていて、既に娘(つまり孫)までいる)の結婚式の日で、思いっきりダブルブッキングしているのだ。だけど、おじいちゃんは結婚式にはいかず、パーティーにとどまる。そう、主人公は完全に「家族を顧みない」男であることが示されるのである。
 そして時は2017年に移る。いきなり映されるのは、12年前主人公が丹精込めて育てていた農園が荒れ果て、家は差し押さえにあい、荷物をおんぼろトラックに積んで出ていくシーンだ。どうやらインターネッツの通販によって事業が傾いてしまったらしい。そして主人公は、そのおんぼろトラックで成長した孫の婚約パーティー(?)会場に乗りつける。孫は唯一、おじいちゃん擁護派で、大喜びするも、娘と妻(しつこいけど孫にとっては母とおばあちゃん)がいて、険悪な雰囲気に。こっぴどくののしられて、しょんぼりなおじいちゃんは、一人おんぼろトラックで帰ろうとしたとき、娘の婚約者の友達(?)から、金に困ってて車の運転が好きなら、いい仕事があるよ、と言われ……てな展開で「運び屋」まっしぐらとなるお話であった。
 というわけで、わたしが観る前に感じていたポイントの、「なんでまた運び屋に?」に関しては、冒頭10分ほどで、なーるほど、と理解できる展開になっている。そして、わたしが一番この映画で面白いと思ったことは、主人公のおじいちゃんが「トークで相手の懐に入っちゃう」その様相だ。
 まず最初に、おじいちゃんの面白トークで篭絡(?)されるのは、街の末端の連中だ。最初はおじいちゃんに、おいおいメールも打てねえのかよこのジジイ! ぶっ殺すぞ!的な悪党どもなのに、3回目ぐらいになると、おじいちゃんの車が入ってくれば、YO!元気かい!みたいにフレンドリーになってて、だからさ、ここをこうやんだよ、的にスマホの使い方を優しく教えてあげちゃったりするんだな。
 そして次はカルテルから直々に送り込まれてきた悪党だ。カルテルのボスが、ちゃんと見張っとけ、というので、おじいちゃんの車に盗聴器を仕掛けて、後ろをついてくるわけだけど、おじいちゃんが超のんきに、ラジオに合わせて歌なんか歌ってると、あのジジイ、のんきに歌ってんじゃねえよと最初はおっかない顔をしていたのに、つい、つられて歌っちゃったりするし、白人しかいないような店に寄って、おいジジイ、みんながジロジロ見るじゃねえか、なんでこんな店にしたんだよ!と凄んでみせると、おじいちゃんは、いやあ、この店のポークサンドは世界一美味いんだよ、どうだ、美味いだろ? なんて返され、まあ、美味いけどね……みたいな、悪党たちの調子が狂うというか、その篭絡ぶりが観ていてとても面白いのです。悪党だけじゃなくて、2回、ブツを運んでいる時に警官と遭遇しちゃうのだが、そのかわし方?が 上手すぎて最高だったし、1回目の時の、ど、どうしよう?という超不安な表情も演技として素晴らしかったすね。
 そして、あまりにおじいちゃんが仕事に次々と成功するので(DEA=麻薬取締局が網を張ってるのにおじいちゃんすぎてノーマークだった)、カルテルのボスが気に入っちゃって、メキシコの大邸宅に呼びつけて、二人で盛大に酒を飲んで女もあてがってもらって(!)、楽しいひと時まで過ごしちゃうんだから凄いよ。
 しかし、後半、そのカルテルのボスが暗殺されて別の人間に交代したことで、完全に空気が変わってしまう。その新ボスは、寄り道禁止、スケジュール通り運ばねえとぶっ殺す、と別の凶悪な手下を送り込んできたのでした。そして折しも元妻が病魔に侵されているという知らせも入り、そっちに行きたい、けど、おっかねえ連中が見張ってる、そこで主人公のおじいちゃんが取った行動とはーーーというクライマックス(?)になだれ込むというお話でありました。
 なので、果たして最終的な結末は―――という最初の疑問は、かなり美しく描かれますので、それはもう、映画館でご確認ください。わたしはあの結末はアリだと思います。大変面白かったすな。
 というわけで、以下、キャラ紹介とキャスト陣の紹介をして終わりにしよう。ホントは篭絡されていく悪党たちを紹介したいんだけど、知らない役者なので、有名な人だけにします。
 ◆アール:主人公のおじいちゃん。朝鮮戦争に従軍した退役軍人。そのギリギリセーフ、つうか若干アウトな毒舌トークで相手の懐に入っちゃうキャラは、Eastwood作品ではかなり珍しいような気がする。いつも、眉間にしわを寄せてる強面おじいですが、今回はちょっと違いますね。ボスの家に招かれたときのシーンも良かったすねえ。「こりゃあ凄い、あんた、この家を建てるのに何人殺したんだ?」なんて、周りの悪党どもがドキッツとしてしまうようなことを平気で口にしてしまっても、ボスも笑顔で「そりゃあもう、たくさんだよ、はっはっは!」と逆に気に入っちゃう流れは、アールのキャラをよく表してましたな。アールは、朝鮮戦争から帰ってきたことで、ある意味もはや「怖いものなんてない」わけで、「したいことをする・思ったことは口にする」男となったわけだ。だけど、一つだけ、どうしても心残りなのが、家族を蔑ろにして生きてきたことで、それが内心ではとっても悲しく、Eastwoodおじいちゃんの表情はもう、最高にそんなアールの心情を表していたと思う。ホントにお見事でしたなあ! あと、最初の仕事の成功でもらった金で、いきなりおんぼろトラックからゴッツイ最新モデルのピックアップ(ありゃクライスラーかな?)に乗り換えちゃうところなんて、わたし的にはとても微笑ましく思えました。ちょっと調子に乗りすぎたかもね……この人……。
 ◆コリン・ベイツ:DEA捜査官。NYやDCで実績を上げてシカゴ支局に異動してきた花形捜査官。「タタ(=じいさん)」と呼ばれる謎の運び屋を追う。このDEAサイドの話も並行して進むのだが、ベイツとアールがとあるカフェで出会う、けど、アールはヤバい!と気付いているのに、ベイツはまるで気付かず、のあのシーンも大変良かったですね。ベイツを演じたのは、Eastwoodおじいちゃんのウルトラスーパー大傑作『AMERICAN SNIPER』で主人公クリス・カイルを演じたBradley Cooper氏。今回は出番はそれほど多くないけれど、大変良かったです。ラスト、あんただったのか……と逮捕するシーンの表情も、実に素晴らしかったすね。そして役名を覚えてないけどベイツの相棒のDEAマンを演じたのがANT-MANのゆかいな仲間でお馴染みMichael Peña氏。彼もEastwoodおじいちゃんのウルトラスーパー大傑作『Million Dollar Baby』に出てましたな。陽気な役が多い気もするけど何気に演技派なんすよね、この人は。それから二人の上司のシカゴ支局の偉い人、をLaurence Fishburne氏が演じてました。相変わらずのすきっ歯でしたね。実に渋いす。
 ◆カルテルのボス:「タタ」と呼ばれる運び屋の仕事ぶりが気に入って、自宅に呼びつけるボス。残念ながらその若干甘い体制が身を滅ぼしたようで……残念でした。演じたのはAndy Garcia氏。すっかり渋くなりましたなあ。一時期トンと見かけなかったような気がするけれど、ここ数年、また出演作が増えてきたような気がするっすね。『The Untachable』はもう30年以上前か……あの頃はイケメンでしたなあ……。
 ◆メアリー:アールの元妻。仕事人間で家庭を顧みないアールに三下り半を突きつけ離婚したらしい。しかし最後の和解は、ちょっと泣けそうになったすね。あの時のEastwoodおじいちゃん演じるアールの表情が超見事でした。この元妻を演じたのがDianne Wiestさん70歳。わたしがこの人で一番覚えているのは、『Edward Scissorhands』のお母さん役ですな。エイボンレディーの仕事をしているちょっと抜けた?明るいお母さんという役だったすね。あれからもう約30年か……はあ……。
 ◆アイリス:アールとメアリーの娘。結婚式に来なかった父と12年口をきいていない。そりゃ怒るよ……。演じたのは、なんとEastwoodおじいちゃんの本当の娘であるAlison Eastwoodさん46歳。この方は過去何度かEastwood作品に出演しているし、自らも監督として映画を撮っている方ですが、顔はあまりお父さんに似てないすね。わたし、実は観ている時はAlisonさんだと気が付いてなかったです。ウカツ!
 ◆ジニー:アイリスの娘であり、アールとメアリーの孫。おじいちゃん擁護派だったけれど、おばあちゃんが大変なのに来てくれないなんて! と激怒してしまうことに。わたしはこの顔知ってる……けど誰だっけ? と分からなかったのだが、エンドクレジットで名前が出て思い出した。この女子はTaissa Farmigaちゃん24歳ですよ! 2013年公開の『MINDSCOPE(邦題:記憶探偵と鍵のかかった少女)』の主役の女の子ですな。あの頃はギリ10代だったのかな、すっかり大人びて美人におなりです。そしてこの方は、『The Diparted』のヒロインを演じたVera Farmigaさんの妹ですね。えーと、Wikiによると21歳年下の妹だそうです。ずいぶん離れてますな。あ、7人兄弟だって。そしてTaissaちゃんが末っ子か。なるほど。

 というわけで、もう書いておきたいことが亡くなったので結論。
 わたしが現役映画監督で一番好きなClint Eastwoodおじいちゃん最新作『THE MULE』が公開になったので、初日の今日、会社帰りに観てきた。ズバリわたしは超面白かったと結論付けたい。とにかく、10年ぶりの主役を自ら演じたEastwoodおじいちゃんの演技が超秀逸です。アカデミー賞にかすりもしなかったのが大変残念ですよ。いつもと違う軽妙さはすごく新鮮だったし、時に見せる、老人らしい慌てぶりの、ど、どうしたらいいんだ?的なオロオロ感は観ててとてもグッと来たっすね。グッと来たというか、毎日、80代のばあ様になってしまった母と暮らすわたしには、こっちまで心配になってしまうような、絶望感のような表情が素晴らしかったと思います。わたしとしては、本作は大いにお勧めいたしたく存じます! 是非映画館で! 以上。

↓ 今週末は久しぶりにコイツを観ようかな。なんというか、キャラ的に今回と正反対、のような気がする。
グラン・トリノ (字幕版)
クリント・イーストウッド
2013-11-26

 わたしは現代戦を描いた戦争映画は比較的よく観る方だ。わたしが好きな作品は、基本的にリアリティのある作品で、『BLACK HAWK DOWN』だとか、『LONE SURVIVOR』だとか、あの辺りの作品が好みである。そこにあるのは、なんというか、本当に「怖い」と感じるような緊張感で、絶望的な状況に陥った男たちが、任務遂行のために全力を尽くす姿に、なんだかとてもグッとくるし、大変興奮するわけである。
 というわけで、何度か劇場で予告を観て、お、これは面白そうかも? と思っていた映画が昨日から公開となったので、さっそく観てきたわたしである。しかしまあ、なんつうか、お客さんはシニアのご夫婦ばっかりだったのが妙に印象的であったが、わたしが観てきた作品のタイトルは、『12 STRONG』というもので、『ホース・ソルジャー』という邦題が付けられている。まあ、その邦題のセンスのなさは後で触れるとして、結論先に言うと、うーん、ちょっとイマイチかなあ、という気がした。というのも、若干リアリティという面では、映画的に盛り過ぎているように感じてしまったからなのだが、どうも、12人の男たちの個性が発揮されず、主役のTHOR様無双のような気もしていて、なんか……わたしにはどうもリアリティが感じられなかったのである。
 というわけで、以下ネタバレ全開になる可能性があるので、まだ観ていない人はここらで退場してください。

 まあ、物語は基本的に上記予告の通りである。2001年9月11日。アメリカ同時多発テロ事件が発生し、その事件の首謀者たるアルカイダ引き渡しに応じなかったタリバン勢力掃討=アフガニスタン戦争の、US政府による最初の作戦を描いたものである。
 戦略目標は、敵拠点の制圧・奪取にあり、戦術としては空爆、を行うのだが、その空爆をピンポイントで誘導する地上部隊が必要で、主人公たち地上部隊であるUS-ARMY(合衆国陸軍)の12人のチームが派遣されると。そして彼らは地元の軍閥と協力し、敵拠点へ徐々に近づくのだが、軍閥にも種類があってしかも敵対しているような感情もあって、なかなかうまくいかない。おまけに、あのソ連が最終的にはさじを投げたアフガンの山岳地帯であり、寒さと峻烈な地形に当然機動兵器(車とか戦車とか)は使うことができず、馬しかない、という状況である。さらに言うと、敵勢力は5万。つまり、地の利もなく戦力差も激しいわけだ。ただし、あくまで彼らは空爆の誘導役であって、実は直接的な戦闘は主任務ではないのがポイントだ(それゆえ、12人と少数精鋭)。もちろん、敵に遭遇してしまっては戦闘にならざるを得ないわけだが、あくまでそれは遭遇戦で、突発的に起きる可能性が高い、というものである。
 何が言いたいかというと、実に地味、なのだ。作戦自体も、物語も。
 わたしは観ていて、これって……無人機RQ-1 PLEDETORを飛ばしてヘルファイアミサイルをぶっこめばいいだけじゃね? と思ったのだが、どうやら調べてみると、アフガンの寒さには弱いらしく、戦果はイマイチだったらしい。まあ、2001年当時の話なので、これが10年後だったらもっと改良されてたかもしれないけど、まあ、とにかく2001年当時、しかも冬(作戦は2001年11月~12月ごろ)にかけての作戦では投入できなかったようだ。なるほど。
 で、わたしが感じたリアリティ面で盛りすぎ、と感じたのは、ズバリ言うと、全然リロードする気配もなく撃ちまくり続けるシーンが多くて、なんだか興ざめだったのと、相当銃弾が行きかうバトルフィールドなのに、主要キャラには全く弾が当たる気配がなく、馬で突進するのも、なんかアレだなあと思うし、一方では主人公たちUS-ARMYの男たちの放つ銃弾はことごとく命中する、という、ある意味ハリウッド映画万歳的な描写が多くて、正直そういった点は微妙であった。
 なんつうか、やっぱり主人公がスーパーマンすぎたように思う。主人公のネルソン大尉は、実戦経験ゼロで、地元の将軍には、「あいつ(=他の隊員)は人を殺した眼をしている。あいつも。あいつも。でも、あんたはそうじゃない」なんて言われてしまうような指揮官なのに、妙に隊員たちからの信頼も厚くて、その辺の説得力を増すような、何かの描写があってほしかったようにも思う。なんかあったっけ? ちなみにわたしが邦題についてセンスゼロだと思うのは、その地元の将軍が、「我々はSOLDIER(兵士)じゃない。WARRIOR(戦士)だ」というシーンがあって、最終的に主人公も、戦士になったな、と認められ、なんと本作に出てきた地元将軍は後にアフガンの副大統領にもなった男で、現在も本作の主人公(のモデルとなった実在の軍人)と親友なんだそうだが、ともかく、「戦士」というのが一つポイントなのに、邦題で「ソルジャー(兵士)」はどうなんだ? と思ったからです。
 ただし、である。さんざん文句を言ってしまったが、それはあくまでこの映画に対して、であって、実際にこの作戦に動員された12人の男たちが、全員生還できたのはもう、相当奇跡的なのではないかと想像する。恐らくは、本作で描かれたよりも数倍厳しい環境だっただろうというのは想像に難くなく、平和な日本の映画館でぼんやりスクリーンを眺めていたわたしには想像を絶する戦いだったのは間違いないと思う。なので、主人公のモデルとなった軍人は本当にスーパーマン的活躍をしたのだろうと思うことにしたい。ホント、全員生還できてよかった。
 しかしまあ、その後の歴史も我々は知っているわけで、ビン=ラーディン殺害までにはその後10年もかかったことを思うと、彼らの奮闘がどのような意味があったのか……本作は、数年がかりの作戦を3週間で終わらせたことへの賛辞しか示されていなかったけれど、もう少し、この作戦がどういう重要な意味があったのかについても深く教えてほしかったと思う。ま、それは自分で調べて勉強しろってことかな。
 というわけでもう言いたいことがなくなったので、最後にキャストと監督について短くまとめて終わりにしたい。
 ◆ミッチ・ネルソン大尉:チームリーダー。実戦経験ゼロながら、部隊をまとめるリーダー。演じたのはTHOR様ことChris Hemsworth氏。まあ、いつものTHOR氏で、とりわけ熱演とか、凄かったとは思わないけれど、カッコいいのは間違いないす。つうかですね、12人ということで、人数が微妙に多すぎて、各隊員の個性がほとんど描写されないというか、印象に残る隊員が少ないんすよね。活躍度合いも隊長のネルソン大尉が前面に出過ぎてて、他の隊員の印象が薄いんだよなあ……そういう意味では、THOR氏のTHOR氏によるTHOR氏のための映画になっちゃっているようにも感じた。これは脚本的な問題かもしれないし、監督の演出的な問題かも。ちなみに、本作で大尉の奥さんを演じたElsa Patakyさんは、実生活でもChirs氏の本当の奥さんです。夫婦共演って……よく出来るもんすね。いや、皮肉じゃなくて、演技的な意味で。
 ◆スペンサー准尉:実戦経験豊富なベテランの副官・サブリーダー。被弾して重傷を負うも、ギリギリ助かった模様。しかし……冒頭に、BASED ON A TRUE STORYと出るので、まあ事実だったのだろうけれど、椎間板ヘルニアで腰を痛めてほとんど動けないってどうなんだ? 足手まといでは……。そんな准尉を演じたのは、わたし的にはゾット将軍でお馴染みのMichael Shannon氏43歳。以前も『SHAPE OF WATER』の時も書いたけど、この人、完全に50代に見えるんですが、ホントに43歳なんですか?w とてもわたしより年下には見えない……。ま、そんなことはともかく、彼は印象には残る役柄だけど、物語的にはあまり活躍しませんでしたな。
 ◆サム・デイラー:チームのムードメイカー的な明るい男。演じたのは、ANT-MANの親友だったり、いつもコミカルな役の多いMichael Peña氏。彼も……クライマックスの戦闘には参加しておらず(?)、印象には残るけれど活躍度合いは薄い。なんつうか……やっぱり演出の問題なのではなかろうか。とにかく、THOR様やメジャーな役者以外はほぼ印象に残らないのはとても残念。
 ◆ドスタム将軍北部同盟のメンバーたる有力氏族の長。妻子を殺されたことからアメリカに協力している地元将軍。演じたのはNavid Negahban氏というイラン出身のお方。かなり多くの映画やTV作品に出演されているベテランの方らしいけど、わたしは知らない人でした。将軍のキャラは非常に立ってましたな。本当に味方なのか、腹に一物抱えているのか、はっきりしないような大物としてなかなか存在感がありました。前述の通り、彼はその後2014年にアフガニスタン副大統領に就任したそうです。現職かな? わからんす。
 で、本作の監督はNicolai Fuglsig氏という方だそうですが、本作が初監督先品だそうです。WikiによればナイキやソニーのCMを撮ったり報道写真家としてコソボ紛争を取材したりした人だそうです。まあ、要するにまだド新人ですな。なので彼の演出がどうとか、よりも、結局はプロデューサーのJerry Bruckheimer氏の目印たる、ドッカンドッカン爆発するシーンばかりが目立っちゃった感じなんすかねえ……そう考えると、同じBruckheimer氏プロデュース作品なのに、あれだけ大勢のキャラクターを登場させながら、きっちり各キャラの印象を残す演出をした『BLACK HAWK DOWN』のSir Ridley Scott監督がやっぱりスゲエってことなのかな。

 というわけで、さっさと結論。
 現代戦を描く戦争映画が好きなわたしとしては、結構楽しみにしていた映画『12 STRONG』(邦題:ホース・ソルジャー)をさっそく観てきたのだが、残念ながらイマイチ、というのが結論のようだ。なにしろ、映画的に嘘っぽくて、弾切れナシ・自分の弾は当たる・けど相手の弾は当たらない、というのはやっぱりちょっとアレっすね。そして、12人の勇者たちの印象が全然残らないのが一番問題だと思う。もったいないというか……残念す。それと、アフガンの自然も、ちょっと嘘くさく見えたかもな……なんかもっと、まさしく神の見捨てた地のような荒涼とした山岳なはずなんだが……意外と行軍自体はスムーズなのも、ちょっとアレだったかもすね。なので、ええ、要するに、しつこいですがイマイチでした。以上。

↓ ああ、なるほど、原作は早川書房から出てるんすね。そして原作がそもそも「12 Strong: The Declassified True Story of the Horse Soldiers」というタイトルなんすね。それならしょうがないか。失礼しました!


 アメリカでは2015年10月から公開され、わたしもNYでポスターを見かけ、観たいけど時間が合わず、早く日本で公開されないかな、と待ちに待った映画が公開された。そして、昨日の夜、さっそく観てきた。いやー、面白かった。映画を観終わってこんなに興奮したのは久しぶりである。
 その映画は『The Martian』である。
P_20151116_114031
 ↑NYではこんな感じ。しかし日本では、なぜか「オデッセイ」という日本語タイトルになってしまった。原作小説の日本語タイトルの通り、元々の意味は『火星の人』である。また、「70億人が彼の還りを待っている」という日本のキャッチコピーもどうもピントがズレているような気がする。元々のキャッチコピーは上の写真にある通り「Bring Him Home」。彼を生還させよ、という意味であって、それは火星で一人頑張る主人公を何とか生還させようと努力する人々の合言葉である。NYタイムズスクエアとロンドンのトラファルガー広場に集まって中継を見守る人々の様子が映されるけれど、観てるだけで別に何もしていない。あくまで努力を重ねている当事者たちの気持ちの言葉だ。
 わたしがこの映画で気に入らないのは、それだけ。いや、もうひとつあるな。それはあとで書きます。とにかくタイトルとキャッチコピーは全くダメだと思うが、映画自体は、それはもう、素晴らしかった。最高です。
 
 基本的に物語はこの予告に描かれている通りである。年代は明示されないが、現在NASAが進めている火星への有人探査飛行が達成されているのだから、まあ近未来と言っていいだろう。
 火星で地質調査をする6人の宇宙飛行士=科学者たち。全くどうでもいい無駄話をしながら、ある意味楽しげに作業を続ける彼らだったが、なにやら嵐がやってきそうだという気象情報を得る。着陸船が横倒しに倒れてしまっては、周回軌道上に残してきた宇宙船ヘルメス号に戻れない=地球に帰れなくなる。なので、調査途中で残念だけど、撤収するしかない。だが嵐の規模と速度は想定を超え、着陸船に戻る際に、吹っ飛んできたアンテナが一人の宇宙飛行士に直撃、LOST CONTACTとなってしまう。もはやどうすることも出来ず、女性船長は皆を守るため、5人で離陸し、火星から離脱する。が、吹っ飛ばされた宇宙飛行士は生きていた。もはや帰る手段のない彼には、残された食料も水も、とてもじゃないが次回の探査飛行までもつわけもない。そこから、たった一人の、人類の知恵と経験を武器とした生き残り大作戦が始まる――という、予告そのままのお話である。
 とにかく、彼の生き残り大作戦がいちいち素晴らしく、賞賛に値する戦いぶりなのだ。
 食料、水、通信手段。それらを次々と何とかしようとする姿は、恐ろしくカッコイイ。どうすればいいか、その方法に関して、科学者の彼には十分な知識がある。なので彼は、まず調査し、計算し、仮説を立て、実験し、うまく行くこともあれば失敗もし、また別の方法を次々に実践していく。 凄いよこの人は。わたしは観ていて、もう完全に物語りに入り込み、主人公と一緒に喜び、一緒にがっかりし、一緒に絶望したりと、まさしく映画の醍醐味とはこういうものだという2時間20分を堪能させてもらった。わたしが特に感動したのは、水の生産方法と、通信手段の確保の様子である。地球サイドでも、最初は完全に死んだと思って、盛大な葬式までやった後で、ほんのちょっとしたことから、主人公がまだ生きていることを確信するに至り、また、宇宙から撮影している遠い映像だけしかないのに、「アイツ……何やってるんだろう……あーーーっ!! 分かった!! そういうことか!!、 よし、じゃあこっちもアレを用意しよう!!」と、主人公の行動の意味が通じる様は、わたしは非常に感動した。しかもその、通信手段のキーとなるデバイスが、科学ファンにはお馴染みのアレ<マーズ・パスファインダー>だったりして、もう大興奮である。わたしはこのくだりが今回一番感動した。まさかアレを使うとは……!! しかも静止画しか送れないアレを使って、ASCIIコードを使ったTEXTでやりとりすることをひらめくなんて、もう科学技術好きにはたまらない展開である。素晴らしい!! やっぱり、このような頭のいい人たちのひらめきや行動は、全く無駄がなく、観ていてとても気持ちのいいものだ。
 映画や小説などを観たり読んだりしていて、わたしが一番イライラするのは、キャラクターの行動の意味が分からない時だ。なんでそんなことするの? という意味不明の行動をされると非常にイラッとする。そうじゃなくて、こうすればいいじゃん、と思ってしまうと、もうその世界から気持ちが離れてしまう。たとえアホらしい行動であっても、そのキャラクターならそう行動するだろう、と理解できればいいのであって、そこには頭の良し悪しはあまり関係がない。もちろん、アホらしい行動には、理解は出来たとしても気持ちが醒めてしまうので、あまり気持ちのいいものでないが、この映画には、そういう、理解できない行動やアホらしいことは一切ない。すべてがきっちりと筋が通っており、実に爽快なのだ。 
  また、わたしの心を打ったのは、膨大だったり複雑だったり、恐ろしく面倒なことも、黙ってせっせとコツコツ取り組む主人公の姿勢である。わたしが良く、部下を指導する際に言うことは、「難しいこと」と「めんどくさいこと」は全く別物だぞ、ということである。つまり、どうやったらいいかわからないことは、難しい問題だから一緒に考えるけれど、「こうすればいいんじゃね?」とひらめいたことは、それがどんなに作業量が膨大で複雑で時間がかかることでも、それはやればいいだけの話で難しいことじゃない、単にめんどくさいだけなんだから、さっさとはじめようぜ。とにかく手と頭を動かせ、という意味である。この映画では、主人公も、主人公を救おうとする人々も、あらゆる知識や経験をフル動員して、とにかく行動する。まったくもってお見事であった。ラスト近く、主人公が「オレは人類初の宇宙海賊だぜ!!」と名乗るところは、わたしはもう嬉しくてたまらなかったな。キャプテン・ハーロック誕生だよ!! ホント素晴らしい。
 
 で。役者陣と監督についてちょっと触れておこう。
 まず、主人公マーク・ワトニーを演じたのは、Matt Damon氏。本作でアカデミー主演男優賞にノミネートされている。ほぼ完璧な演技で、今、この映画を観て興奮冷めやらないわたしとしては、アカデミー賞をあげてほしいと思うぐらい良かった。また、この映画はある意味漂流サバイバルを描いているので、今回もかなりげっそり痩せた彼の姿を観ることができる、いつもは結構マッチョな彼だが、相当減量したんでしょうな。あれまさかCGかな?? いずれにしても、前向きで明るいキャラクターは、Matt Damon氏ならではの持ち味であろうと思う。
 ほか、競演陣はかなりのメジャー級俳優が多くて、誰を取り上げたものかと思うが、ざっとチェックしておくと、まず彼を火星に置き去りにしてしまった仲間のクルーたちだが、女性船長を演じたのがJessica Chastainさん。今回は彼を置き去りにしてしまったことに強い後悔の気持ちを持ちながら、毅然とした実に立派な船長を見事に演じてくれた。特に、ラスト近くの主人公救出アクションは、わたしが行く!! という強い意志がとても伝わる素晴らしい表情だった。非常に良かったと思います。やっぱりこの人、綺麗だなあ……。で、他の4人の仲間は、『ANT-MAN』の親友役などでお馴染みMichael Pena氏がいつも通り、一番明るい面白キャラを演じて緊張を和らげてくれるし、主にコンピューター系で活躍してくれる生真面目な女性クルーは、『Fantastic 4』でインビジブル・ウーマンを演じたKate Maraちゃん。PCオタクとしての彼女の私物が主人公を救うところもあって何気に活躍してくれました。そしてその彼女と、若干いい雰囲気を醸し出して、事件後結婚したらしいイケメンクルーを演じたのは、『CAPTAIN AMERICA』の親友バッキーことウインターソルジャーでお馴染みのSebastian Stan氏。もう一人のドイツ人クルーはよく知らない方で、実際はドイツ人ではなく、ノルウェー人のAksel Hennie氏という俳優さんみたいですな。というわけで、Marvelヒーロー関連の方が3人いるのもちょっとした奇遇ですね。また、地球サイドでは、『12Years a Slave』でお馴染みとなったChiwetel Ejiofor氏や、イギリス人のコワモテの人、みたいな役の多いSean Bean氏など、結構なメジャー級が揃っている。 
 そして監督は、世界最強監督選手権で確実に優勝候補の一角に名が挙がるであろうSir Ridley Scott様78歳である。やっぱり、広大な火星をあれほど美しく撮れるのはこの人以外にはいないと思う。以前も書いた通り、正直ここ数年、若干イマイチな作品が続いたが、本作は本当に素晴らしい。光とスモークを撮らせたら世界最強なのは間違いなかろう。ただ今回は、意外とクリアと言うかパキッとした画作りで、ちょっと今までにないような感じがしなくもない。わたしは冒頭のタイトルが出るまでの2分ぐらいの画は、監督の代表作『ALIEN』の冒頭に非常に似ているような気がした。音楽のトーンやタイトルの出方など、たぶんわたしはここだけで、この作品の監督が誰だか分かったと思う。アカデミー監督賞にノミネートもされなかったのが非常に残念です。
 はーーー、もう語りたいことはまだまだあるが、この辺にしておこう。最後にひとつだけ、冒頭に書いた気に入らないことの3つ目を記しておきます。これは若干ネタバレなんだけど……『GRAVITY』(邦題:ゼロ・グラビティ)において中国が活躍するのを観てぐぬぬ……と思ったわたしだが、今回も、まーた中国だよ……。まあ、製作出資者にチャイナマネーが入っているのだろうなという邪推はともかく、事実として日本の宇宙開発は遅れているのだろうと思う。こういうところで日本じゃないのが、本当にわたしは残念だ。日本の科学者、技術者の皆さん、どうか頑張ってください。わたしは猛烈に悔しかったです。
 ※2016/02/07追記:この映画について、Web上では「まさに火星版DASH村」として盛り上がってるらしいtweetを見た。確かにw でも城島リーダーのコラは反則ですww  笑わせてもらいました。

 というわけで、結論。
 まだ2月だけれど、わたしにとってこの映画『The Martian』は、2016年暫定No.1ムービーである。今すぐ、劇場へGO!! でお願いします。超おススメですので。なお、本作は、US国内で2億ドル以上、全世界でも6億ほど稼いでおり、大ヒットしております。また、格付けサイトでも非常に高評価で、観ない理由は何ひとつありませんので、絶対に劇場へ観に行ってください。以上。

↓ 原作にも俄然興味が出てきた。読むか……? どうしよう。元々はオンライン小説だったそうですね。
火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)
アンディ・ウィアー
早川書房
2015-12-08


↑このページのトップヘ