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 いよいよ20th Century FOXがDISNEYに買収されることが本決まりとなり、かくして今後はFOXが映画化する権利を保有していたMARVEL COMIC作品も、DISNEYが展開するMCU、マーベル・シネマティック・ユニバースに参加する障壁がなくなったわけで、わたしとしては大歓喜となったわけだが、残念ながらFOX買収以前から企画開発が進行していたFOX版『X-MEN』は数作品残っていて、どうやら1本は企画がポシャった?ようだが(※『THE NEW MUTANTS』のことだけど、ホントに来年公開されるんだろうか??)、残念ながらもう1本は企画が生き残り、FOX JAPANの宣伝惹句によると「(FOXによる)最後のX-MEN」と銘打たれた映画が公開されることとなった。 
 そのタイトルは、『X-MEN DARK PHOENIX』。ま、そのタイトルを聞けば、X-MENファンならもう、すぐにピンとくる物語であるし、実のところこの物語は2006年に公開されたX-MEN:The Last Stand』(邦題=ファイナル・デシジョン)でも扱われた原作モチーフで、X-MENの中でも相当強いキャラの一人であるJean Greyが、ダークサイドに堕ちる話である。物語としてはもう、それ以上の説明は不要だろう。
 だが問題は、わたしがこのBlogで何度も批判しているように、もうFOX版X-MENは完全に破たんしているというか、おかしなことになってしまっていて、超問題作X-MEN:Days of Future Past』(邦題=X-MEN:フューチャー&パスト)で過去が書き換えられてしまい、おまけに前作X-MEN:APOCALYPSE』で決定的に、もう惰性で作っているとしか思えないような、浅~~い映画となり果ててしまったのである。なので、わたしは何度も、FOXはもうX-MEN映画を作ることを放棄して、DISNEYに権利を返してくれないかなあ、と書いてきたのだが……一方ではなんと、完全にパラレルワールド的にこれまでの歴史を無視したLOGANという映画で、超見事にWolvarineの最期を描き、完璧なる「X-MEN最終作」というべきウルトラ大傑作を世に送り出したのである。
 いやあ、アレはホントびっくりしたなあ……本当に『LOGAN』は素晴らしい映画だった(※『DEADPOOL』はわたしとしてはどうでもいいというか、まあ、面白かったけどちょっと別腹ってことで今回は触れません)。『LOGAN』がわたしにとって「FOX最後のX-MEN」であることはもう揺るがないし、そもそも「X-MEN」の物語は今後確実にDISNEYによって描かれることになるので、全くもって今回の『DARK PHOENIX』が「最後」では決してない。ちゃんと「FOX最後の」って言ってほしいもんだ。FOXのそういう点がいちいちわたしをイラつかせる理由でもある。
 そんなことはさておき。
 というわけで、FOX版「最後のX-MEN」と銘打たれた本作を、わたしは正直全く期待していなかった。なにしろわたしにとってはもう、『LOGAN』こそがFOX版「最後のX-MEN」なので、はっきり言って、今さらだし、内容的にも、今さら、であるのだから。そして実際に観てきた今思うことは、ホント今さらだったな、で終了である。じゃあなんで観に行ったかって? そりゃあアレですよ、惰性ってやつです。

 なんつうか……FOX作品の予告はいつもどうしようもないけれど、今回は非常にイイ感じだと思った……のだが、残念ながら本編は、いつものFOXクオリティで、はっきり言って相当問題アリだと思った。ただし、一方的にダメと切り捨てるのももったいないぐらい、超素晴らしく、良かった点もあるので、その点にもちゃんと触れようと思う。
 【ダメポイント:決定的にキャラ付けがマズイ】
 まずもって、この映画を観た人の中で、ある意味主人公のJeanや、Professor Xに共感できる人がいただろうか? そう、全く、1mmも共感できないキャラとして描かれちゃっているのは、もう根本的にマズい点だったと思う。
 まず、Jeanに関しては、幼少期からその能力の暴走が起きていて、ついうっかり、母をぶっ殺してしまい、それがトラウマとなっているのは、まあ分からんでもない。だけど、その忌まわしき記憶を封じたProfessor Xの処置を、責められるだろうか?? 「わたしをだましていたのね!!」と激怒して、怒り狂い、あまつさえMystiqueことレイブンをぶっ殺してしまうとは!! おまけに恩のあるレイブンをぶっ殺しても反省なしでバックレてどっか行っちゃうって、もう絶対ナシだよ、脚本的に。仮にこの点を100万歩譲ってアリだとしても、その後、彼女が嘆くのは、私はなんてことを……やっちまった……という後悔ではない。ただひたすら、自らの不幸についてのみ、ああなんて私はかわいそうなのかしら、という自己憐憫のみだ。なんなんだこのガキは!? とわたしはもう席を立ちたくなったぐらいである。
 というわけで、本作は強大な力を持つ子供を、大人たちがオロオロしながらなだめるお話であると言わざるを得ない。この映画には、「ガタガタ言ってんじゃねえぞこのクソガキが!」と、ぶん殴ってくれる大人がいないのだ。実はその「叱ってくれる大人」こそが、旧シリーズでのWolvarineの役割で、Wolvarineがジョーカー的に機能して事態を解決してくれていたからこそ、物語として成立していたのだが……残念ながらこの映画には登場しない。この映画では、新キャラの謎の勢力が、Jeanに取り込まれた謎のウルトラパワーを奪取しようとして、Jeanに耳障りのイイことを吹き込んで取り込もうとするのだが、残念ながらこの謎キャラ勢力が完全に滑ってしまったのも脚本的にいただけないポイントだろう。
 以下、キャラと演じた役者をメモしながら、各キャラの行動をチェックしておこう。
 ◆Professor Xことチャールズ・エグゼビア:わたしの眼には、チャールズの行動はなんら問題はなかったように思える。異端であるミュータントと人間の共存のためには、チャールズのような行動が必要だったと思うし。でもまあ、ちょっと調子に乗っちゃったということなのかな……。今回、さまざまなキャラから、「お前が悪い!!」と責めまくられるチャールズだが、じゃあどうしたら良かったんだよ!? とチャールズが思うのも無理ないと思う。演じたのはヤングProfessorでお馴染みのJames McAvoy氏40歳。
ホントお気の毒な役どころでした。
 ◆Mystiqueことレイブン:チャールズが若干調子に乗って、テレビに出てちやほやされたり、そのために仲間を危険にさらしたことを激怒している。しかし、チャールズの描く、人類との共生、ある意味でのミュータントの生存戦略もまた意味があることなので、いったんは怒りを鎮めるが……チャールズがかつてJeanの記憶を封印したことに激怒。そして、Jeanちゃん、かわいそうだったね、よしよし、大丈夫よ……と宥めようとして、あっさりJeanに殺されるというヒドイ目に遭うことに。確かに、脚本的にレイブン殉職はナシではないだろうけど……はっきり言って犬死だったのではと思えてならないすね。演じたのは当然、オスカ―女優Jennifer Lawrenceちゃん28歳。まさかこんな形で退場とは……彼女もまた大変お気の毒でした……。つうか、そもそも、この物語は『Days of Future Past』のエンディングを無視してるよね。そういう点が本当にガッカリというか、腹立たしいす。
 ◆Magnitoことエリック・レーンシャー:歴史が塗り替わったのちのこの世界では、US政府に居留地?的な安住の地を与えられていたようで、そこに、はぐれミュータントたちとともに住んでいたのだが、愛するレイブンの殉職を聞いて大激怒。あのガキはぶっ殺す!と立ち上がる! 本来ならエリックがWolvarine的な「叱ってくれる大人」の役割を演じてほしかったのだが……残念ながら本作ではJeanが強すぎて、ほとんどやられキャラとなり下がり、あまり活躍できずだったのが超残念。演じたのはMichael Fassbemder氏42歳。実にカッコ良く渋かったすねえ! ちなみに、Magnitoの息子であるQuicksilver君は、今回前半でJeanにやられて負傷、ほぼ出番ナシ、であった。
 ◆Beastことハンク・マッコイ:いつもチャールズの行き過ぎた?行動を押さえつつ、いろいろ無茶ぶりをかまされて、大忙しとなるハンクだが、今回はレイブンが大好き(だけどレイブンからはつれなくされる)キャラとして、レイブン殉職に大激怒。チャールズに反旗を翻し、恋のライバルであるエリックとともにJean討伐隊に加わることに。演じたのはNicholas Hoult君29歳。彼もホントお気の毒でした。
 ◆Cyclopsことスコット・サマーズ:兄貴のHavocことアレックスは前作『Apocalypse』で殉職してしまったので、今回は淋しく単独出演。Jeanと愛し合っていて、今回暴走するJeanを必死で止めようとするのだが……残念ながら全く聞く耳を持ってもらえず。それでもJeanを守るために、仲間であるはずのハンクたち討伐隊と戦うことに……演じたのはTye Sheridan君22歳。彼の行動は実に分かりやすく、理解できます。でも、やっぱり
ホントお気の毒でした。
 ◆Jean Grey:残念ながら本作では、どう見ても単なる問題児であり、困ったガキなのだが……恩師の言うことも聞かず、恋人の言うことも聞かず、ただただ暴走に身を任せる困ったちゃんにしか見えなかった。わたしが本作で最も驚いたのは、本作の決着が、Jeanの超上から目線からの、「わかった、許してあげるわ……」で収束するという結末である。あれって、アリなんすか? ま、その結果、お星さまとなったJeanだけど、それで贖罪がなされたと言ってもちょっと認めたくないですな……。演じたのはSophie Turnerちゃん23歳。わたしの趣味ではないので以下省略。
 ◆謎の女ことヴーク:本作での説明によると、Jeanの身に宿ったのは惑星を滅ぼすほどの謎のエネルギー(生命体?)で、ヴークたちはそれを追って地球にやってきたらしいのだが……その設定に問題はないと思うし、破たんもないのだが……ラスボスとしての存在感が希薄で、前作のApocalypse同様に、よくわからんキャラになってしまったのが超残念です。なんか、本当はスクラル人(=CAPTAIN MARVELに出てきた変身が得意な宇宙人)の設定にしたかったらしいけど、NG喰らっちゃったらしいですな。演じたのはJessica Chastainさん42歳。いつの間にか年取ったなあ? もっと若いと思ってた。Jessicaさんはとってもお綺麗でした。
 とまあ、以上がメインキャラで、残念ながらそのキャラ付けが、わたしにはかなり問題アリだったと思う。そして、一方では素晴らしいと賞賛したいポイントも当然ありました。
 【素晴らしい!! と思ったポイント(1):役者たちの演技は完璧!】
 上記の通り、ざんざんキャラに対してダメ出しをしたけれど、演じた役者たちの演技ぶりは極めて上質で素晴らしかったと思う。とりわけX-MENのみんなは、全員が深く「苦悩」しているわけです。その悩める姿は(悩める理由はともかくとしても)実にそれぞれ素晴らしかったと絶賛したい。とりわけ、わたし的には今回やられキャラになってしまったMagnitoことエリックを演じたFassbender氏、それから目をバイザーで隠されているにもかかわらず、つらい苦悩を上手に表現していたTye Shelidan君の二人がとても良かったすね。もちろんほかのメンバーもとても素晴らしい演技でした。
 【素晴らしい!! と思ったポイント(2):音楽がイイ!】
 今回は冒頭からずっと、何やら不穏な空気が感じられる音楽がとても効いているようにわたしは感じたのだが……誰が担当したんだろうとずっと謎に思っていて、エンドクレジットでその謎が解けた時、わたしは本作で一番、おお、そうだったんだ、とスッキリしたっすね。そうです。今回の音楽を担当したのは、なんとHans Zimmer氏だったのです! X-MENシリーズ初参加じゃないかなあ? 耳に残る明確なメロディはないんだけど、とにかく物語にマッチする不穏な曲、というか音、はとても巧みだったと思うすね。わたしとしては、この映画のMVPにしてもいいと思います。
 あとは、演出に関しても、シリーズに脚本やプロデュースで参加してきたSimon Kinberg氏が、初監督とは思えないいい仕事をしていたとは思います。画的にとても良かったすね。しかし、なんでUS映画の葬式シーンはいつもどしゃ降りなんですか? まあキャラの心の中はどしゃ降りな心情なんだろうけど、不自然なんすよね……。

 というわけで、もう書きたいことがなくなったので結論。

 FOX JAPANによる「最後のX-MEN」というキャッチで公開された『X-MEN DARK PHOENIX』を観てきたのだが、まず第一に、間違いなく「X-MEN」というIPは今後もDISNEYによって映画になるはずなので、「最後の」では決してない、というのが一つ。そしてようやくFOXの手を離れ、MCUへの参加ハードルが消滅し、本作をもってFOX版X-MENが最後になるのはファンとしては大変うれしい限りだ。しかし、内容的には……正直問題アリだと思った。なにしろ……Jeanにまったく共感できないし、大人たちの対処も、マズかったでしょうな……。。。こういう時は、本当ならWolvarineの一喝が必要だったのだが、それができる大人がおらず、なんだかみんながみんな、気の毒に思えた。ただし、そのキャラたちの苦悩は実に見事な演技で支えられており、クオリティはとても高かったと思う。今回は音楽もとても良かったです。ま、とにかく今後のMCUには期待しかありませんな! 楽しみだなあ! そしてFOX版が終わったのは何よりめでたいす。以上。

↓ オレ的FOX版最高傑作は『LOGAN』ですが、こちらも実に素晴らしい出来栄えでした。この映画は最高です。

 もはや誰もが知っている「エイリアン」という言葉は、おそらく映画『ALIEN』によって我々日本人にも通じる言葉となったと思うが、わたしはおっさんとして、シリーズ全てを映画館で観ている。今わたしの部屋には1000冊以上の映画のパンフレットがあるのだが、兄貴からもらったものを除いて、たぶん、わたしが自分で買ったパンフレットの中で、恐らくは最も古いものが『ALIEN』のパンフだと思う。もちろん、『STAR WARS』とかも一番最初の劇場公開時のものを持っているけれど、それらは正確には兄貴が買って、わたしが貰っちゃったもののはずで、明確に自分のお小遣いで買った最古のものは『ALIEN』であろうと思う。公開された1979年当時、わたしは小学生。確か、日本ではほぼ同時期に『SUPERMAN』も公開になっていて、親父に『SUPERMAN』と『ALIEN』どっちがいい? と言われ、ホントは『SUPERMAN』を観たかったけれど、既に兄貴が『SUPERMAN』を観ていて、なにかと自慢していたので、ちくしょうと思っていたわたしは「ALIENがいい!」と主張したのである。場所は日比谷の有楽座。今現在、日比谷シャンテの鎮座するあそこに存在した、日本有数のデカい映画館である。当時は、公開土日にデカい劇場でパンフを買うと、ちゃんと表1に映画館の名前が印刷してあったのだが、今わたしの手元にある、結構ボロボロになった『ALIEN』のパンフにもちゃんと「有楽座」と印刷してあるので間違いない。ホント、今でも『ALIEN』を親父に連れられて観に行った日のことを超覚えてるなあ……。なお、もちろん『SUPERMAN』も、その後近所の映画館に来たときに観に行きましたけどね。
 そしてその後順調に映画オタクの道を邁進してきたわたしは、『ALIENS』(エイリアン2)は高校生の時にマリオンの日本劇場(来年だっけ、閉館が決定済み)に観に行ったし、『3』も同じく日本劇場へ、そして『4』はもう社会人になってた頃であったはずだ。さらに、『PROMETHEUS』はつい最近というか5年前か、これは近所のシネコンで観たっすね。
 何が言いたいかというと、こんなわたしなので、『ALIEN』シリーズには深い思い入れがあり、その新作が公開となれば、100%間違いなくわたしは観に行くということである。そして当然のことながら、昨日の金曜日から公開になったシリーズ最新作『ALIEN COVENANT』も、今日の朝イチで近所のシネコンへ観に行ってきた。そして結論から言うと……うーーーん……やっぱり微妙と言わざるを得ないだろうな……正直、イマイチUSでの評判は良くないと聞いていたので、あまり期待していなかったのだが、その期待よりはずっと良かった、けれど、やっぱり……いろいろと突っ込みたくなっちゃう物語で、大変残念である……。というわけで、以下、『ALIEN』シリーズ全般にわたってネタバレ全開になる予定なので、気になる人は読まないでいただきたいと思います。

 ズバリ言えば、本作『COVENANT』の物語はほぼ想像の範囲内であったのだが、本作は、明確に前作『PROMETHEUS』の続編であった。なので、前作を観ていない人には、まったく意味不明な部分が多く、あくまで前作を観ていること、もっと言えばシリーズ全作を観ていることが、本作を鑑賞する必要条件となっていると思う。
 しかし、である。前作『PROMETHEUS』は、あまりに微妙かつ謎すぎて、正直良く分からん物語であった。ここで、わたしが思う、前作での謎ポイントを2つ挙げておこう。
 1)一体全体、デイヴィットというアンドロイドの目的は何なのか?
 2)エンジニアと呼ばれる謎種族の目的は何なのか? 結局「黒い液体」は何だったのか?
 まず、1)については、本作『COVENANT』冒頭でかなり明確に描かれていた。本作は、まず『PROMETHEUS』の恐らく10年とか20年ぐらい前のシーンから始まる。前作ではヨボヨボのおじいちゃんだったウェイランド氏がまだちょっとだけマシな老人(なお、演じたのは前作同様Guy Pearce氏)として登場し、ディビットとの哲学問答めいた会話が描かれる。そこで、ウェイランド氏は、生命の誕生が分子科学的な偶然によるものだなんて信じたくない、なにか「偶然ではないこと」、すなわち「創造主」がいたはずだという信念が語られる。これは、デイヴィットの、「わたしを創造したのはあなたですが、あなたを創造したのは誰なんですか?」という問いに答えたもので、「人間の種の起源の謎を解明すること」が、ウェイランドとデイヴィットの解くべき至上命題であったことが描かれる。つまり、前作の謎1)デイヴィットの目的=人類の起源の解明=命をもたらしたのは誰なんだ? というものらしい。そういう意味で、人間に火を与えたプローメテウスを宇宙船の名にしたウェイランド氏の意図ともつながるわけだが、しかし、前作や本作を観ている限り、デイヴィットの目的は、人類の起源の解明から、「新種の生命の創造=自らが創造主となること」に方向が変わってしまっていて、本作ではもう完全にMADサイエンティストのような悪役扱いであった。なお、この冒頭のシーンで、デイヴィットはウェイランド氏に名を尋ねられ、「わたしは……ディヴィットです」と「ダヴィデ像」を見て、自らを命名するシーンがある。ここはディヴィットに搭載されているAIが超高位のAIで、自意識すら獲得している=目的を自ら変えられることを表すものとして重要だと思った。
 そして2)の方は、結論から言うと本作を観てもさっぱり不明、であった。そもそもの「黒い液体」も良く分からない。Wikiの『PROMETHEUS』のページにはかなり詳しいストーリーが記述してあるが、それによると「黒い液体=兵器」なんだそうだ。そして、本作『COVENANT』では、デイヴィットが謎の「黒い液体」をエンジニアの母星(=今回の舞台となる惑星)でばらまき、エンジニア種族を全滅させるシーンがチラッとあるが、どうやらそれは、自らの創造主であるウェイランド氏を前作でエンジニアに殺されたデイヴィットの復讐、であるようだ。でも、わたしにはその説は受け入れられないなあ……じゃあ『PROMETHEUS』冒頭の太古の地球と思われるシーンは何だったのよ? とまるでわたしには良く分からんままである。

 まあ、ともかく、本作『COVENANT』に話を戻そう。宇宙船COVENANT号は、人類の外宇宙への移民船で、15名のクルーのほかに2000名の移民者(真空パックみたいなのに入れられて熟睡中。本編では彼らは目覚めない)や、1140体の受精胚を載せていて、テラフォーミング機材も満載しており、とある星に向けて航行中である(つまりウェイランド氏の目的=人類の起源の探索には全く関係ない。ただしウェイランド社の船ではある)。起きているのはアンドロイドのウォルターと制御プログラムのマザーだけで、クルーたちはコールドスリープ中であったが、あと目的の星まで7年チョイの距離で、宇宙嵐的な障害で船体を損傷し、コールドスリープ中のクルーは全員強制起床させられ、対処にあたる。その際、船長はカプセルの不調で死亡。なお、船長を演じたのは面白イケメン野郎でおなじみのJames Franco氏で、本作ではほぼ出番なしであるが、事前に公開されていた「LAST SUPPER」は観ておいた方がいいだろう。こちらにはきちんと船長が出てくるし、クルーたちの関係性を知るうえで結構重要だ。どうもクルーたちはことごとくカップルというか夫婦で、そういう意味でも移民船という目的にかなっているのだろうと思う。

 で、クルーたちは船長を失って重い空気になるが、まあ航海を続けないといけないので、船外活動もして船を直していると、シリーズでおなじみの展開、謎の通信電波を受信、なんとその通信電波は、明らかに人類と思われる存在が、John Denverの「Country Roads」を歌っていることを発見するにいたる。カントリロ~ド、テイクミーホ~ム、のあの歌である。マザーが発信源を追跡した結果、その謎電波の発信地は現在位置から3週間ほどの近い位置にあるらしい。おまけに、どうもその星は人間が呼吸可能な大気組成で、水もあり、テラフォーミングには極めて適しているようだということが判明する。
 クルーたちは、またしても宇宙嵐に遭遇するかもしれず、また7年間もコールドスリープに入るのは嫌だという声が多数を占め、新たに船長になった男も、じゃあ、行ってみるか、と決定する。ひとり、ダニエルズという、亡くなった船長の嫁である航海士だけが、そんなバカな、今までの調査で一切引っかかってこなかった星があるなんて信じられないし、危険だし、私は反対!と声を上げるが、結局COVENANT号はその謎の星へ向かうことにする。しかしその星こそエンジニア種族の母星であり、前作で生き残ったアンドロイド・デイヴィットが待ち受ける、罠だったのだーーーてなお話である。
 なお、なぜCOVENANT号が旅立つ前にその星は調査に引っかからなかったか、という謎は、おそらく前作の物語のラストでエンジニアの母星に旅立ったデイヴィットが到着する以前に、COVENATN号は地球を出発していたから、なのだと思う。つまり入れ違いというか、COVENANT号が地球を出発して、ぐっすりクルーたちがコールドスリープに入っている間に、デイヴィットはエンジニアの母星にたどり着き、テラフォーミングして罠を張った、てなことだと思う。たぶん。
 わたしは、ここまでの展開は、非常に面白い作品になるのではないかという予感にゾクゾクしていたし、もちろん映像は、Sir Ridley Scott氏による超美しい映像で、ぐいぐい物語に引き込まれていたのは間違いない。とにかく映像が綺麗でおっそろしくハイクオリティである。しかし、この後の展開が……もう正直、あーあ……であった。

 おそらく、本作を観た人なら誰しもが、以下の2点に全力で突っ込みを入れたい気持ちだろうと思う。少なくともわたしは、以下の2点さえきちんと改良されていたら、本作は相当素晴らしいものになったはずだと考えている。
 1)あの……みなさん、無防備すぎじゃあないですか?
 なんと、その謎の星に向かったクルーたちは、宇宙服もヘルメットもなく、フツーに上陸しちゃうんだな。いやいやいや、それはあり得んだろ……常識的に考えて。大気が呼吸可能だとしても、どんな未知の脅威、具体的に言えば細菌類やウィルスの類が存在しているかわからないんだから、完全防備で上陸するのが当然だと思うのだが……おまけに、思いっきり植物の繁栄している状態なんだから、どんな毒物があるかも分からないし、完全防備が当たり前だと思うけれど、作中キャラたちは普通に上陸し、結果的には、まんまとあの「黒い液体」から派生したと思われる「黒い微粒物」を吸い込んだり耳から侵入されたりして、体内で謎生物を宿すに至り、死亡する。そりゃあそうなりますわな。あれがきちんと完全防備だったら、本作の悲劇は相当軽減されていたと思うんだけど……この点は、もう、観た人なら必ず突っ込みを入れるはずだろうと思う。
 2)ダニエルズさん! 気づけよ!!
 ズバリ言うと、本作のエンディングは、実に後味が悪い。作中に登場するアンドロイド、デイヴィットとウォルターはともにウェイランド社謹製の同シリーズであるため、要するにまったく同じ顔をしており、Michael Fassbender氏の渾身の一人二役で演じ分けられている。そして、前作から引き続き登場するデイヴィットが、前述の通り悪党、そして今回初登場のウォルターがクルーの味方となってバトルとなるのだが……はっきり言って、観客全員、勝ち残ったのはウォルターではなくてデイヴィットだと見抜いていたのではなかろうか? 少なくともわたしは、こいつ、ウォルターです、みたいな澄ました顔してるけど、どうせデイヴィットなんでしょ? そしてダニエルズはそれを見破ってぶっ殺すんでしょ? と思っていた。が、なんとダニエルズは全く気づいておらず、物語は最悪の後味の悪さを残して終わるのである。ありゃあナイなあ……この脚本はナシだ、とわたしは極めて不満である。きちんとダニエルズはデイヴィットを始末して、気持ちよく眠りにつくべきだったと思う。せっかく、ダニエルズと新種エイリアンの最終バトルはかなりの迫力で映像的にも素晴らしかったし、なにより、かつてのリプリーVSクイーンを思い起こさせるような見事な展開だったのに! 正直台無しだよ、とわたしは極めて残念に思った。
 
 というわけで、わたしとしては本作『COVENANT』に関しては、結構微妙というか、はっきり言ってしまえばガッカリである。やっぱり、シリーズは『3』で終わらせるべきだったんじゃあないかなあ、とさえ思う。やるなら、きちんと最初から3部作ぐらいの構想を決めてからにしてほしかった。なんというか、場当たり的ですよ、実に。これじゃあダメだと思う。せっかくの超ハイクオリティな映像も、この物語じゃあどうしようもないとすら言いたい。
 キャストに関しては、もう今回の主人公、”うっかり”ダニエルズさん一人だけ取り上げて終わりにしよう。演じたのはKatherine Waterston嬢37歳。『Fantastic Beast』のヒロインを演じた彼女だが、ズバリわたしの趣味じゃあない。でもさっきいろいろ検索してみたところ、このお方は髪が長いときは結構美人すね。つまりショートカットが似合わないのではなかろうか。わたしとしては残念だが、なんだ、ロングだとかわいいじゃん、ということをさっき発見して驚いたっす。で、本作においては実に熱演で、演技自体はかなり素晴らしかったと称賛したい。
 また、わたしのようなおっさんファンにとっては、冒頭のタイトルの出方? が、第1作と同じで、その辺はもう、わたしは非常に興奮していました。これは期待できる、と最初は思ってたんすけどね……なんか、もったいないというか残念す。上記でわたしが挙げた2点が改善されていれば、相当面白かったなあ、という気持ちで劇場を後にすることが出来たのだが……ホント残念でした。

 というわけで、もうクソ長いので結論。
 わたしの大好きな『ALIEN』シリーズ最新作、『ALIEN COVENANT』が公開され、超ワクワクしながら劇場へ向かったわたしであるが、残念ながらあーあ……という気持ちで劇場を後にせざるを得ない内容であった。微妙というか、イマイチだったすねえ……。たった二つのポイントだけなんだけどなあ……映像は本当に素晴らしく、見ごたえバッチリだっただけに、本当に残念だ。どうしてあんなエンディングにしようと思ったんだろう? 続編を作るため? もうそういうの、ホント勘弁してもらえませんか? 続編を作る気があるなら、最初っから、全体の構想をきっちり設計してからにしてほしい。場当たり的な続編製作は、シリーズIPとしての価値を下げるだけですよ。ホントもったいないし、残念す。以上。

↓ 久しぶりに、エイリアン祭りを家で開催しようと思います。でも対象はこの3本だけっす。





 わたしはもうすっかりゲームはやらなくなってしまったが、わたしの周りにはゲーム好き、というよりもはやハードなゲーマーともいうべき人々はいて、中でも元部下のYくんは、わたしの知り合いの中では一番のゲーマー野郎である。彼は、もはやゲームはPlayStationなどのいわゆる「ゲーム機」でプレイすることは少なく、それよりもハイスペックなPCでのプレイが中心であり、遊んでいるゲームも10年前なら「洋ゲー」と呼ばれていたような、ガチムチ系のアクションゲームが多い。実際のところ、日本で発展したゲーム文化はもはや日本でしか売れないガラパゴス化の方向で進化し、もちろん、任天堂やスクウェア・エニックス、あるいはバンダイナムコなど、大手ゲームは売れてはいるが、世界規模ではあまり大したことがなく、その存在感は薄れるばかりと言ってもいいだろう。日本人がJ-RPGと呼ばれる作品やスマホをいじって喜んでいるうちに、世界の屈強なゲーマーたちはさっさと先へ進んでしまったわけである。
 ま、いずれにせよ、わたしとしてはゲームの世界も仕事上詳しくある必要があったのだが、自分自身がプレイしていなくても、隣に座っていたY君に話を聞けばいいし、そもそもY君に任せておけばよかったわけで、ゲームに関しては超ニワカである。そしてそんなニワカなわたしでも、当然幾つかの超有名タイトルのことは、だいぶ前から知っていたわけで、その中でも世界的に大人気であり、Y君も新作が出るたびにプレイしていたゲームの一つが、『Assassin's Creed』というシリーズである。わたしは、Y君が『Assassin's Creed』について、こっそり忍び寄って、サクッと殺るゲームっす、と熱く語るのを聞いて、それは要するに、往年の名作『天誅』みたいなゲームってこと? と質問したことがあるが、ええと、間違ってはいない、けど、違う、かな? と微妙な回答であった。曰く、物語がしっかりしていて、ストーリー自体が面白い、のだそうだ。なので、わたしはプレイしたこともないのにいつの間にか「テンプル騎士団」だの「アサシン教団」だの、「エデンの果実」だのといったゲームの世界観について知識を得ていったのである。
 というわけで、以上は前振りである。先週から公開になった映画版『Assassin's Creed』をやっと観てきたので、そのことをこれから書こうと思っているのだが、実はあまり書くことがなくて……つい無駄なことを書いてしまった……。一応、今回の映画版の予告編は、シリーズをすべてプレイしてきたY君をして相当期待できる! というものだったので、まあ、何も知らないに等しいわたしでも、楽しめるかな、と思ったのだが……結論から言うとかなり上級者向けの物語になっていて、Y君によれば、説明がいろいろと不足しているので、自分は楽しめたけどアンタにゃわからんかったでしょうよ、という若干の侮蔑を含んだ趣旨を丁寧な言葉で申し渡されることとなったのである。くそう。ああそうだよ、おれには良くわかんなかったよガッデム!
 
 というわけで、FOXには珍しく、非常に観たくなるようないい出来の予告である。だいたいお話は上記予告の通りと言っていいだろう。ただし、なかなか複雑なお話で、正直なところ良くわからない部分も多いし、そもそものメインとなる機械「アニムス」が謎過ぎてついて行けないような気もした。
 ざっと物語を説明すると、中世十字軍にも参加したテンプル騎士団が、現代の世にもその力を保持して世界にこっそり存在していて、「エデンの果実」を探していると。その目的は、ざっくり言うと人類の洗脳で、そのキーアイテムとして「エデンの果実」が欲しいわけだが、「エデンの果実」とは、最初の人類(アダムとイブ)に、神への叛乱を起こさせたもので、無知なまま神へ従属するのではなく「自由」を人間にもたらせたものであって、それは人間の精神(をDNAレベルで?)改変させる力がある、と彼らは思っている。で、その「果実」を最後に目撃した、15世紀のスペインにいた「アサシン教団」の男がいて、そいつの末裔として現代を生きる男をとっ捕まえて、そいつの「DNAに刻まれた記憶」を紐解けば、その所在がわかるんじゃね? ということで、DNAから先祖の記憶をトレースできる「アニムス」なる謎マシーンを使って「果実」を追う――てなお話である。実はわたしはこれで正しい理解なのか、正直全然自信がない。テンプル騎士団は全員修道僧だから、「エデンの果実」は神に反抗する、あってはならないもの、だからそれを確保する、ってことなのかな? 一方の「アサシン教団」は、あくまで人間の自由を守るために、テンプル騎士団と戦ってると、まあそんな感じの対立構造かもしれない。なんというか、よく分からなかったのがわたしの頭の悪さのせいなのではないかと非常に残念である。そして、アニムスについてももうチョイ原理的な説明が欲しかった。だいたい、アニムスを開発製造できる技術があったら、もっと別のやり方で世界征服できるんじゃね?
 しかし……たぶん、実際のところ、この映画はもうそんなストーリーはどうでもいいんじゃないかとも思う。それよりも、見せ場はゲームの世界そのままの超人的なアクションにあるのだろうと思う。パルクール、あるいはフリーランと呼ばれる縦横無尽なアクションシーンこそがこの映画の最大のポイントだろう。
 だが……わたしはこのせっかくのアクションも、映画としてはかなりイマイチだと感じた。とにかく画がブレブレで、きちんと画面にとらえられていないのは大問題だ。せっかくすごいスタントなのに活かしきれていない。実に素人っぽい画でわたしは結構がっかりした。カメラのブレを臨場感と勘違いしている映画をよく見かけるが、本作もその傾向が大いにある。アレじゃあダメだと思うな……。まあ、『Assassin's Creed』の代名詞ともいうべき「イーグル・ダイブ」は凄かったすね。ゲームそのままの迫力はあった……のだが、これはやっぱり3Dで味わうべきだったんだろうなと思う。なのに、ぜんぜん字幕3D版が上映されないのはホントに意味が分からないというか……こういう点がFOXのダメなところで、極めて残念だ。本作は、イーグル=鷲が重要なモチーフになっていて、鷲が空を舞うショットも多いのだが、あれを3Dで見せないでどうすんだ……配給社の配慮のなさには失望しかない。そもそもFOXは『Avatar』で3Dの威力を世界に知らしめて世界中の映画館の設備を改めさせた張本人なのに。実に分かってないとしか言いようがない。
 というわけで、ストーリーも映像も、配給社のマーケテイング戦略も、わたしとしてはかなりイマイチに感じた。せっかくキャストは豪華なのに、実に残念であった。ただ、Y君のような、元のゲームの大ファンは大変楽しめたらしいので、結論としては一見さんお断りで、分かる人には分かるということなんだろうと思う。なんか、もういつものようにキャスト紹介する気も失せたので、ざっと流して終わりにします。
 主人公の現代の死刑囚カラム・リンチと、15世紀のアサシン教団のアギラールという2役を演じたのが、世界有数のイケメンと呼ばれるMichael Fassbender氏。そしてヒロインでアニムスを開発したソフィア博士を演じたのが、これまた世界有数の美女と呼ばれるMarion Cotillardさん。そしてその父で現代のテンプル騎士団に所属する、アニムス開発会社社長を演じたのが、オスカー男優Jeremy Irons氏。この人もカッコイイ。とまあ、そんな有名美男美女がそろっており、ビジュアル的には大変見栄えがする。とりわけFassbender氏のアギラールは、ゲームのイメージそのままで、大変カッコいい。散々イマイチだと言ったけれど、シーンのワンカットワンカットのビジュアルイメージはとてもイイので、物語や雑な撮影がきちんとしていれば、もっとだれでも楽しめる作品となったはずなのだが、まあ、なんというか、残念です。いろいろと。

 というわけで、もう飽きたのでぶった切りで結論。
 映画『Assassin's Creed』は、そのゲームのビジュアルイメージをかなり忠実に再現しているけれど、まず物語は一見さんお断りの分かりにくさがあり、せっかくのアクションシーンもブレブレの映像できちんとわからない部分があって、一言で言うと残念、であった。もちろん、役者は美男美女だし、アクションスタントもすっごいので、そういう点では見事ではある。けど、話がよく分からんという決定的な部分はどうしようもないというか……PV的ですね、ゲームの。ただ、ゲームの大好きなYくんは楽しめたというのだから、ま、そういうことです、はい。以上。

↓ 日本では一応これが最新作かな? でも、Y君曰く、PCでやるのが一番、だそうです。キーボードでよくできるなあ、と言ったら、そんなの当たり前ですよ!と鼻で笑われました。 

 わたしが大学および大学院で専攻したのは、ドイツの近現代演劇である。しかし、だからと言ってドイツの作品だけ読んでいればいい訳では全然なく、当然ギリシャ悲劇やフランス喜劇も読んだし、あくまで日本語翻訳で読める範囲だが、名作と言われる世界の戯曲類は、おそらくほぼ全て一度は読んだつもりでいる。そして散々作品を読んでみて思ったのは、やっぱりSHAKESPEAREはすげえ、つか、どう考えても一番面白い、という結論であった。
 シェイクスピア作品の中で、わたしの趣味としては、一番好きな作品は『Henry IV part 1&2』か『The Marchant of Venice』なのだが、いわゆる4大悲劇の中では、『MACBETH』が一番面白いと思う。 実は、わたしにとって『MACBETH』は、とりわけ思い入れのある作品なのだ。
 あれはたしか約25年前、戯曲を読んだすぐ後の頃だと思うけれど(さっき調べたら、わたしが持っている岩波文庫の「マクベス」は1990年発行の第54刷だった)、当時、銀座のプランタンの裏手の並木通りにあった名画座で、「黒澤明の世界」と題して、全作品を1週間ずつ、二本立てで延々上映する企画をやっていて、わたしも毎週足しげく通って全作制覇したのだが、その時に観た『蜘蛛巣城』という黒澤明監督作品は、まさしく『MACBETH』を原作とした戦国時代劇だったのである。まあ、その事実は有名なので、世の中的にはお馴染みだと思うが、約25年前にわたしは初めてそれを知り、観て、猛烈に興奮したのである。コイツはすげえ、つか、もうSHAKESPEAREの原作越えてるじゃん!! 黒澤すげえ!! と、当時の仲間に興奮して話をしたことを良く覚えている。
蜘蛛巣城 [Blu-ray]
三船敏郎
東宝
2010-02-19

 この、黒澤明監督によるスーパー大傑作『蜘蛛巣城』は、『MACBETH』原作だし、他にも、『』は『KING LEAR(リア王)』を原作としたウルトラ傑作、そしてわたしがロシア文学にハマったきっかけとなった『どん底』『白痴』など、25年前のわたしをとにかく興奮させた一連の黒澤映画は、今の若造どもにも観てもらいたい、傑作中の傑作だとわたしは考えている。実際わたしは、今の世の中には、映画好きを名乗る人間はやたらと多いが、黒澤映画を観ていない奴は一切認めないことにしている。まあ、わたしはこう見えて、心が狭いのである。
 というわけで、先日、世界イケメン選手権開催時にはTOP10に入るような気がするMichael Fassbender氏が、先日のSteve Jobs氏の次に演じるのはMACBETHだと聞いて、はあそうですか、とわたしが黙っていられるわけがない。な、何だと!? ほほう、そいつは要チェックだぜ!! というわけで、最新の『MACBETH』をさっそく観に行って来た。そして結論から言うと、この映画は相当上級者向けのMACBETHで、事前知識がないと、さっぱり意味が分からない出来栄えとなっていたので、ちょっと驚いたのである。

 物語はもう有名なので説明しないが、おそらく、『MACBETH』を上演あるいは映像化するに当たって、問題というか、どう表現するかポイントとなる点が2つあると思う。
 一つは、世界の文学史上最も有名な悪女の一人である、「マクベス夫人」をどういうキャラクターとして表現するかという点だ。 主人公マクベスより場合によってはクローズアップされる、「マクベス夫人」。彼女についてはいろいろな解釈があると思うが、マクベスを操ると言ったらちょっと言い過ぎかもしれないけれど、間違いなく本作では一番カギとなる人物である。
 そしてもう一つは、有名な「三人の魔女」とその「予言」をどう表現するか、という点である。本作に限らず、SHAKESPEAREの作品には幽霊とか亡霊とか、そういうSuper Natural要素が頻繁に出てくるが、『MACBETH』という作品には「三人の魔女(Three Witches)」が出てきて、極めて重要な「予言」をする。その予言にマクベスは翻弄され破滅に至るわけで、これもまた物語のカギとなる部分であろう。
 ちなみに、上記2点のポイントを知らない人は、恐らくこの映画を観ても、さっぱり分からなかったと思う。というのも、実に……なんというか、特に説明がないし、シャレオツ臭漂う雰囲気重視の映像で、どうも物語自体が薄いのだ。簡単な方から言うと、「三人の魔女」は、この映画では、まったく何者かよくわからない存在で、ビジュアル的にも魔女には見えないし、ただの良くわからない普通のおばさんたちなのである。しかも、これはわたしの記憶が失われているだけかもしれないが、なんと今回は「三人の魔女+謎の幼女」の4人組である。黒澤監督の『蜘蛛巣城』では確か一人の謎の老女だったように、改変するのは全然構わないのだが、なんというか、今回の魔女は全然雰囲気がなくて、ふらーっと現れては消える存在で、十分超常の存在ではあるけれど、もうチョイ、マクベスやバンクォウは驚いたり怖がったりしてもいいように思った。なんか、フツーに受け入れてしまっては、観客的には、あのおばさんたち何なの? と思うばかりで、どうにも物足りないようにわたしは感じた。知らない人が観て、通じたのかどうか、わたしにはさっぱり分からない。
 で、問題の「マクベス夫人」である。ほとんど彼女のキャラクターを説明するような部分がないので、おそらく、『MACBETH』を知らない人が観たら、一体この奥さん何なの? と訳が分からなかったのではないかと思う。そして『MACBETH』を知っている人なら、ズバリ、イマイチに感じたのではなかろうか。狂気が足りないし、迫力もない。マクベスを鼓舞するようなところも乏しい。元々、マクベスが結構クヨクヨ悩むところを、しっかりしろ!! とたきつけるようなキャラなのだが、ま、はっきり言って存在感が薄すぎるとわたしは思った。おまけに泣くとは!! こりゃあ、ちょっと問題ありであろう。
 わたしは、観終わって、一体こんな演出をした監督は何者なんだ!? と思ってパンフを読んでみたところ、まあ、ズバリ、ド新人と言っていいようなJustin Kurzelという男であった。自然光を基本とした撮影やそれっぽい雰囲気重視の画作りは、まあ、確かにセンスは非常にイイものがあるとは感じられるものだったが、キャラ付けという面での演出は、ちょっと相当イマイチだったと思う。とはいえ、パンフの解説を書かれている東大の教授はかなり高い評価をしていたので、まあ、所詮はわたしの好みに合わなかっただけなのかもしれない。何と言っても、わたしにとっての『MACBETH』は、完全に黒澤監督の『蜘蛛巣城』なのである。あの映画の、三船敏郎氏や山田五十鈴さんのギラギラした凄まじい演技と比較するわたしが特殊なのかもしれないので、そういう意味で、この映画は上級者向けだと冒頭に記した次第である。例えば、原作通りの台詞がきちんと使われていたり、その台詞を発する人物が巧妙に原作と入れ替わっていたりと、そういう点ではかなり真面目に作られている作品であることは間違いないと思う。
 では、最後に役者をちょっとおさらいしておこう。
 今回、主役のマクベスを演じたのは、前述の通り、Michael Fassbender氏である。まあ、イケメンですわな。わたし的には、この人は『X-MEN』におけるヤング・マグニートーなわけだが、カッコイイだけじゃなく、なかなか演技もいいですね、この人は。なので、今回大変期待して劇場へ向かったのだが……うーーーん……やっぱり、ちょっと雰囲気重視でマクベスっぽくはなかったかなあ。なんか落ち着いていて、もっと感情を爆発させて欲しいのだが、特に王座に付いてからの狂い方が全然足りないと思う。『蜘蛛巣城』での三船は、本当に凄まじいですよ。何度観ても最高です。
 あと、マクベスの友人で、マクベスに殺されることになるバンクォウを演じたPaddy Considine氏も、わたしは初めて見る方だったが、ちょっとイマイチかなあ……『蜘蛛巣城』でのバンクォウの役を演じたのは千秋実氏だが、亡霊となって現れるあのシーンは、三船の狂いぶりも強烈だけど、千秋氏の亡霊ぶりも最高です。完全落ち武者スタイルで登場する亡霊は、超雰囲気ありますよ。
 そして最後はやはりマクベス夫人を演じたMarion Cotillard嬢である。非常に美しく、雰囲気のある彼女だが、やっぱりなあ……迫力不足は否めないだろうな……一番のキーパーソンなのに……。『蜘蛛巣城』での山田五十鈴さんはホントにハンパなくヤバイ、完璧なマクベス夫人だったと思います。

 というわけで、結論。
 もし、この映画に興味がある人は、事前に原作を読んだことがある、芝居を観たことがある、なら、どうぞ行ってらっしゃいませ。いろいろ今までのマクベスと違うので、その点は面白く感じるかもしれません。が、そうでない人は、おとなしく原作を読んでからにした方がいいと思います。つーかですね、まずは『蜘蛛巣城』を観ることを強くおススメします。『蜘蛛巣城』の方が、100,000,000倍面白いですよ。以上。

↓ 本作の監督とMichael Fassbender氏とMarion Cotillard嬢が再度集まって撮影している次回作は、全世界で超売れてる有名なこのゲームを映画化するものです。

↓そしてこれがその予告編。ゲーム大好きなY君も、この予告を観て「これは期待できる!!」と相当興奮してました。

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